JP4702870B2 - 3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブに関し、さらに詳細には、半導体レーザーや光導波路などを構成する際に用いて好適な、任意に光位相制御領域(欠陥領域)を挿入可能な3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、固体結晶との類似性を持つ人工的な周期構造を備えたフォトニック結晶が知られている。より詳細には、フォトニック結晶とは、光の波長程度の周期で2種類以上の誘電体、半導体、金属または空気が交互に繰り返すように形成された2次元的または3次元的な周期構造を有する結晶である。
【0003】
なお、本明細書においては、2次元的な周期構造を備えたフォトニック結晶を「2次元フォトニック結晶」と称することとし、3次元的な周期構造を備えたフォトニック結晶を「3次元フォトニック結晶」と称することとする。
【0004】
固体結晶では原子が周期的に配列されており、その中で電子の波は結晶の周期性を感じながらある特殊な振る舞いをする。これと同様に、フォトニック結晶の周期構造の中では、電子の波ではなく光の波が、フォトニックバンドと称される分散特性によって決定されるある特殊な振る舞いをする。さらに、フォトニック結晶においては、フォトニックバンドギャップと称される光の存在を許さない禁制帯を生じさせることができる。
【0005】
以上のようなことから、半導体デバイスが電子を自由に制御することができるのと同様に、3次元フォトニック結晶で構成した光学デバイスは光を自由に制御することができる可能性が高いものと見なされている。
【0006】
このため、3次元フォトニック結晶で構成した光学デバイスを製造するための前提として、3次元フォトニック結晶を製造するための手法の提案がこれまでになされてきており、例えば、立体エッチング法、基板融着積層法あるいはオートクローニング法などが知られている。
【0007】
ここで、立体エッチング法とは、基板を様々な角度からエッチングし、立体的な構造を備えた3次元フォトニック結晶を作成する手法である。また、基板融着積層法とは、ストライプ状に形成された複数の半導体を、レーザー光回折パターンを用いて精密に位置あわせして積層し、立体的な構造を備えた3次元フォトニック結晶を作成する手法である。さらに、オートクローニング法とは、基板に予め凹凸を形成しておき、その凹凸の上に結晶を成長させて、立体的な構造を備えた3次元フォトニック結晶を作成する手法である。
【0008】
しかしながら、上記した従来の手法は、いずれも光学デバイスを構成するための3次元フォトニック結晶の製造には十分なものではなく、実用上有効な新たな手法の提案が強く望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、実用上有効な3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブを提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブは、2次元フォトニック結晶を形成した複数のプレートを位置合わせして積層することにより、立体的な構造を備えた3次元フォトニック結晶を作成しようとするものである。
【0012】
即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、第1の枠に第1の貫通孔を備えるとともに、上記第1の枠の内側の領域に第1の2次元フォトニック結晶を備えた平板状の第1の2次元フォトニック結晶プレートと、第2の枠に上記第1の貫通孔と位置合わせされた第2の貫通孔を備えるとともに、上記第2の枠の内側の領域に第2の2次元フォトニック結晶を備えた平板状の第2の2次元フォトニック結晶プレートと、上記第1の貫通孔と上記第2の貫通孔とを連通するように配置される位置合わせ部材とを有し、上記第1の2次元フォトニック結晶プレートの上記第1の貫通孔と上記第2の2次元フォトニック結晶プレートの上記第2の貫通孔とを連通するように上記位置合わせ部材を配置して位置合わせして、上記第1の2次元フォトニック結晶プレートと上記第2の2次元フォトニック結晶プレートとを光の波長に応じた周期構造になるように積層したものである3次元フォトニック結晶において、上記第1の貫通孔と上記第2の貫通孔とはそれぞれ円孔であり、上記円孔の半径と上記第1の2次元フォトニック結晶プレートおよび上記第2の2次元フォトニック結晶プレートの厚さとが略一致し、上記位置合わせ部材はその直径が上記円孔の半径の略2倍とされた球体状であるようにしたものである。
【0022】
また、本発明のうち請求項12に記載の発明は、金属よりなる内部芯と、上記内部芯の周囲に形成された絶縁層と、上記絶縁層の先端部を除く外周上に形成された外部金属膜とを有し、上記絶縁層の先端部が平坦面の形状を備えるものであり、上記内部芯と上記外部金属膜との間に電圧をかけることによって、上記先端部の縁部付近に電界がかかり物体を静電吸着するようにしたものである
また、本発明のうち請求項13に記載の発明は、先端部が平坦面とされた絶縁体針と、上記絶縁体針の上記先端部の上記平坦面において櫛形電極を構成するように、上記絶縁体針に配設された第1の電極と第2の電極と、上記第1の電極と第2の電極を配設された上記絶縁体針を被覆する絶縁膜と、上記絶縁体針の上記平坦面とされた上記先端部側を除く上記絶縁膜の外周上に形成された金属シールドとを有し、上記第1の電極と上記第2の電極とに、上記金属シールドに対して異なる電圧をかけることによって、上記絶縁体針の上記先端部の上記平坦面に電界がかかり物体を静電吸着するようにしたものである。
【0023】
従って、上記した本発明によれば、実用上有効な3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブを提供することができる。
【0024】
より詳細には、2次元フォトニック結晶のパターンがどんなに複雑になっても、正確に積層することが可能である。
【0025】
また、サブミクロン〜ミクロンオーダーの2次元フォトニック結晶プレートや位置合わせ部材などのパーツを自由に組み立てることができるため、光制御領域(欠陥領域)として発光体や屈折率の異なる物質を点状や任意の領域で導入することができる。このように3次元の構造を自由に作製することができる手法は、フォトニック結晶の光学デバイス化に不可欠な技術である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面に基づいて、本発明による3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0027】
図1(a)(b)には、本発明の実施の形態の一例による3次元フォトニック結晶が示されており、図1(a)は正面斜視図であり、図1(b)は図(1)(a)の分解斜視図である。
【0028】
即ち、3次元フォトニック結晶10は、互いに種類の異なる2種類の2次元フォトニック結晶12aと2次元フォトニック結晶12bとをそれぞれ備えた平板状の2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとを、光の波長程度の周期で交互に積層させて形成したものである(2次元フォトニック結晶プレート14aは2次元フォトニック結晶12aを備えており、2次元フォトニック結晶プレート14bは2次元フォトニック結晶12bを備えている。)。
【0029】
ここで、2次元フォトニック結晶プレート14a、14bは、枠16a、16bの内側の領域に、光の波長程度の周期で2種類以上の誘電体、半導体、金属、有機物または空気などが交互に繰り返すようにして2次元フォトニック結晶12a、12bを形成している。なお、この実施の形態においては、枠16a(16b)の内側の領域に形成された2次元フォトニック結晶12a(12b)は互いに同一のパターンを備えるものであるが、これら同一のパターンの2次元フォトニック結晶を互いに90°回転させて積層することにより、2種類の2次元フォトニック結晶が積層されるようにしている。
【0030】
2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、図1(a)に示すように、両者を重ね合わせたときに一致するように2次元フォトニック結晶12a、12bならびに枠16a、16bの領域が寸法設定されている。なお、2次元フォトニック結晶12a、12bは両者を重ね合わせたときに一致するように寸法設定する必要があるが(即ち、枠16a、16bの内側部位の寸法は両者を重ね合わせたときに一致するように設定する必要があるが)、枠16a、16bの外側部位に関しては、両者を重ね合わせたときに必ずしも一致する必要はない。
【0031】
また、この実施の形態においては、2次元フォトニック結晶12a、12bの外側部位(即ち、枠16a、16bの内側部位)ならびに枠16a、16bの外側部位は正方形状に構成されているが、このような形状に限られるものではないことは勿論である。
【0032】
ここで、2次元フォトニック結晶プレート14aならびに2次元フォトニック結晶プレート14bの厚さtは、例えば、3nm〜1mm程度の厚さである。また、正方形状の2次元フォトニック結晶プレート14aならびに2次元フォトニック結晶プレート14bの一辺をLとすると、一辺Lの長さは、例えば、10nm〜10mm程度の大きさである。さらに、「L×L」により得られる2次元フォトニック結晶プレート14aならびに2次元フォトニック結晶プレート14bの面積は、例えば、「10nm×10nm=100nm2」〜「10mm×10mm=100mm2」程度の大きさである。
【0033】
さらに、枠16aと枠16bとの適宜の箇所には、複数の円形状の貫通孔18がそれぞれ形成されている。これら枠16aと枠16bとに形成された複数の貫通孔18は、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bと重ね合わせたときに、少なくともそれらの一部が互いに一致して連通するように寸法ならびに配置が設定されている。また、貫通孔18の半径r(貫通孔18の直径を2rとする。)と2次元フォトニック結晶プレート14aならびに2次元フォトニック結晶プレート14bの厚さtとは、互いに一致するように寸法設定されている。
【0034】
そして、この3次元フォトニック結晶10においては、位置合わせ部材として貫通孔18の直径2rと一致する直径2rを備えた球体状の微小体20を、積層した際に互いに隣り合う2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとの貫通孔18に配置して位置合わせすることにより、積層した際に互いに隣り合う2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとの位置合わせが行われ、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとが適正な位置に積層されることになる。
【0035】
以上の構成を備えた3次元フォトニック結晶10は、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bと重ね合わせることにより製造するものであるが、その重ね合わせの処理は、マイクロマニュピュレーションによりプローブを利用して行われる。
【0036】
即ち、まず、マイクロマニュピュレーションによりプローブを利用して、微小体20を2次元フォトニック結晶プレート14a(または2次元フォトニック結晶プレート14b)の貫通孔18内に嵌入して配置する。
【0037】
ここで、プローブとは、先端の径がサブミクロン〜ミクロンオーダーに寸法設定された針や、内部に静電吸着のための電極構造を有するものや、先端に微細なピンセットなどの把持機構を有するものを含むものとする。
【0038】
微小体20が2次元フォトニック結晶プレート14a(または2次元フォトニック結晶プレート14b)の貫通孔18内に嵌入された際には、微小体20の半球分の部位が2次元フォトニック結晶プレート14a(または2次元フォトニック結晶プレート14b)の表面から突出することになる。
【0039】
そして、貫通孔18内に微小体20を嵌入された2次元フォトニック結晶プレート14a(または2次元フォトニック結晶プレート14b)の2次元フォトニック結晶a(または2次元フォトニック結晶12b)のパターンとは90度回転したパターンを備えるようにして、2次元フォトニック結晶プレート14a(または2次元フォトニック結晶プレート14b)の表面から突出した微小体20の半球分の部位に、2次元フォトニック結晶プレート14b(または2次元フォトニック結晶プレート14a)の貫通孔18を嵌入させて位置合わせを行い、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとを積層する。
【0040】
上記した作業を繰り返すことにより、3次元的な周期構造を備えた3次元フォトニック結晶10を製造することができる。
【0041】
以下、3次元フォトニック結晶10の製造方法について、実施例を示しながら詳細に説明する。
【0042】
(1)結晶成長
まず、はじめに、図2(a)(b)(c)を参照しながら、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとを製造する際の手法について説明する。2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、所定の基板上に結晶層を成長させることにより製造されるものである。
【0043】
この実施例においては、
基板 InP(面方位(100)±0.5度
インジウム源 トリメチルインジウム(TMI:In(CH3)3)
ガリウム源 トリエチルガリウム(TEG:Ga(CH2CH3)3)
燐源 ホスフィン(PF3)
ヒ素源 アルシン(AsH3)
成長温度 640度〜680度
という条件を用いた。
【0044】
また、結晶成長の手法としては、有機金属気相反応成長法(MOVCD:Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)を用いた。TMIは常温で固体であり、また、TEGは常温で液体であるので、それぞれが密封された容器を20度〜30度の恒温漕に設置し、内部に水素を送り込んで、水素にTMIとTEGとを飽和させ、それを反応器に送るようにした。InP基板上にインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)を1μm〜3μm成長させ、その上にインジウム・燐(InP)を0.5μm〜2μm成長させた(図2(a)参照)。
【0045】
(2)マスク作製
後のドライエッチングの際のマスクとして使用するため、上記した「(1)結晶成長」で作製した基板上に、蒸着によりチタンを20nm積層し、チタン上にニッケルを400nm〜1μm積層する。
【0046】
(3)描画
フォトリソグラフィのレジストとしては、ZEP520−22(商標)を使用した。上記「(2)マスク作成」で作成したニッケル層の上にZEP520−22(商標)を500nmの厚さ塗布し、180度で20分間加熱した。
【0047】
ここで、2次元フォトニック結晶12a、12bのパターン描画に用いた装置は、JBX−5D II(JEOL製)である。パターンは、図2(b)に示すように、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)が細いブリッジ32により基板の外郭領域30と連結され、ブリッジ32により支えられた構造である。枠16a(16b)の部位には、微小体20を嵌入するための貫通孔18を形成するようになされている。この実施例においては、貫通孔18としては直径1μmの円孔を作製した。
【0048】
なお、現在までのところ、フォトニックバンドギャップができるのはダイアモンドおよびダイアモンドライク構造だけである。この実施例に示すパターン、即ち、図1乃至図2に示す2次元フォトニック結晶12a、12bのパターンは、所謂、ウッドパイル構造というダイヤモンドライク構造を構成するためのものである。ウッドパイル構造とは、ストライプ状に並べた角材の上に、下のストライプに対して直角となるようにストライプ状の角材を並べていき、第1層と第3層および第2層と第4層は半周期ずつずれている構造である。
【0049】
図1に示す2次元フォトニック結晶12a、12bのパターンは、位置合わせの孔たる貫通孔18と位置合わせ部材たる微小体20により、2次元フォトニック結晶プレート14a、14bを正確な位置に固定しながら積層すると、自動的にウッドパイル構造になるように設計されている。InPを材料として4μm帯にフォトニックバンドギャップが開くように設計した場合には、板の厚さを0.5μmに固定すると、フォトニックバンドギャップが開く角材の幅と周期との関係は図3に示すようになる。2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの大きさは、一辺Lを60μm程度まで大きくするようにしてもよい。
【0050】
パターンの描画後に、以下の条件でパターンの現像を行った。即ち、現像液と洗浄液とは、
現像液:オルトキシレン(o−Xylene;ベンゼン環の隣り合った角にそれぞれメチル基(CH3−)が結合した有機化合物):イソプロピルアルコール(isopropylalcohol;(CH3)2CHOH)=8:1
洗浄液:イソプロピルアルコール
である。
【0051】
そして、現像液中で20秒間〜3分間保持し、その後、洗浄液中で20秒間〜3分間保持する。その後に、エアーガンで洗浄液中を乾燥させる。
【0052】
(4)ドライエッチング
(4−1)レジストから金属マスクへのパターンの転写
金属マスクのドライエッチングには、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotoron Resonance)イオンシャワー装置を用いた。Ni層をエッチングするための条件は、
ガス:アルゴン
圧力:0.5×10−4Torr〜1.5×10−4Torr
加速電圧:0.5kV〜1.0kV
マイクロ波出力:50W〜100W
イオン電流密度:0.4mA/cm2〜0.8mA/cm2
エッチング時間:5分〜10分
温度:室温
である。
【0053】
続いて、チタンをエッチングするが、そのときの条件は、
ガス:四フッ化炭素(CF4)
圧力:0.5×10−4Torr〜1.5×10−4Torr
加速電圧:0.5kV〜1.0kV
マイクロ波出力:50W〜100W
イオン電流密度:0.4mA/cm2〜0.8mA/cm2
エッチング時間:5分〜10分
温度:室温
である。
【0054】
最後に残ったレジストを完全に除去するため、以下の条件でレジストを燃焼させた。
【0055】
ガス:酸素
圧力:0.5×10−4Torr〜1.5×10−4Torr
加速電圧:0.5kV〜1.0kV
マイクロ波出力:50W〜100W
イオン電流密度:0.4mA/cm2〜0.8mA/cm2
エッチング時間:5分〜10分
温度:室温
(4−2)金属マスクからInP層へのパターン転写
InPのエッチングにはICPを用いた。塩素(Cl2)雰囲気下で、30秒〜3分のエッチングを行った。
【0056】
(5)ウエットエッチング
(5−1)金属マスクの剥離
上記(4)で説明したドライエッチング処理で残った金属マスクを剥離するため、バッファードフッ酸(20.8%)中で10分程度振り、最後に純水洗浄する。バッファードフッ酸にはニッケル層は溶解しないが、下のチタン層が溶解するため、金属マスクを完全に除去することができる。
【0057】
(5−2)InGaAs層の部分溶解
InPの2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の下にあるInGaAs層を溶出・除去し、InPの2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)がブリッジ32で外郭領域30に支えられているのみの状態(図2(c)参照)にするために、エッチング溶液(硫酸:過酸化水素:水=1:1:3)中で10秒〜60秒間振り、その後に純水洗浄する。
【0058】
図4には、上記のようにして得られた2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の電子顕微鏡写真が示されている。
【0059】
なお、本明細書においては、外郭領域30に細いブリッジ30のみで連結されて、ブリッジ32により空中に浮いたように支持された状態の2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を「エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート」と称することとする。
【0060】
(6)積層
上記のように形成されたエアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を、マイクロマニピュレーション装置に固定する。
【0061】
ここで、マイクロマニピュレーション装置とは、サブミクロン〜ミクロンオーダーの物質を操作するための装置である。マイクロマニピュレーション装置には試料台やプローブが設けられており、プローブなどを自由に操作することにより、エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を外郭領域30から切り離したり持ち上げることができる。
【0062】
このマイクロマニピュレーション装置を走査型電子顕微鏡の試料室内に設置し、電子顕微鏡観察下で、マイクロマニピュレーション装置の可動軸に電気的に接続されたジョイスティックを操作しながら、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の積層をおこなった。マイクロマニピュレーション装置には、3本のプローブを一度に装着できるので、用途別に太さの異なるプローブを取り付けておき、種々の操作を一々真空を破ることなく連続して行うことができる。
【0063】
以下、図5〜図7を参照しながら、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を積層して3次元フォトニック結晶30を構成する手順について説明する。
【0064】
(1)手順1
エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の周囲に、微小体20をばらまいておく。この際に、エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の上に微小体20が乗らないように注意する。
【0065】
それから、プローブ40の先端に微小体20を付着させ、微小体20を付着させたプローブ40の移動により、枠16a(16b)に形成された貫通孔18に微小体20を嵌入する(図5(a)参照)。
【0066】
ここで、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)に形成された貫通孔18の半径と2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の厚さとは同じである。つまり、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとを二枚重ねたときに、二枚の2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の同じ位置に開けられた貫通孔18が形成する円柱の直径と高さは同じである。微小体20の直径は、上記した円柱の直径および高さと一致する。微小体20の材料は、例えば、ポリスチレンなどのプラスチック、シリカなどの無機化合物あるいは2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)と同じ材料の物質である。
【0067】
この微小体20を操作するためには、先端の径が0.5μm程度のプローブ40を用いる。プローブ40で微小体20の頂部を触ると、静電力および/あるいはファンデルワールス力で微小体20がプローブ40の先端に吸着する。これを、第一層目となるエアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の貫通孔18に嵌入するか(図5(b)参照)、あるいはフォトニック結晶パターンがInP基板に到達するまでエッチングした際は、エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を取り除き、InP基板に刻まれた2次元フォトニック結晶パターンの孔(貫通孔18に対応する。)に嵌入した(図6(a)参照)。
【0068】
(2)手順2
次に、第二層目のエアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)にプローブ40を押しつけて、エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)をブリッジ32から切り離し、プローブ40により持ち上げ、微小体20を挿入済みの第一層の上に載せる(図6(a)(b)または図7(a)(b)参照)。この操作には、先端の径が10マイクロメートル程度のプローブ40を用いる。
【0069】
なお、エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)をブリッジ32から切り離す際に、予めブリッジ32の破断したい箇所に鋭い切り込みを入れておくと、当該切り込みの箇所でブリッジ32を破断することができるようになるので有効である。
【0070】
2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)とブリッジ32との接合部位に切り込みを形成しておくと、この切り込み部分をプローブ40で押すことにより、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)とブリッジ32とは簡単に切り離される。切り離した2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)は、微小体20をプローブ40で持ち上げる際と同様に、プローブ40の先端で触れればプローブ40の先端に吸着される。
【0071】
(3)手順3
2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を、貫通孔18に微小体20を挿入済みの2次元フォトニック結晶プレート14b(14a)へ積層する際に、微小体20の半球分の突出部位が位置合わせのガイドとなり、正しい積層位置付近に2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を近づけると、微小体20と2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の貫通孔18とが係合し、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)は自動的に正しい位置へ固定される。さらに、積層された2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を下のプレートへ押しつけると、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)同士が密着する。
【0072】
(4)手順4
上記した手順1乃至手順3の操作を繰り返す。
【0073】
なお、図8(a)には2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を1層積層した状態の電子顕微鏡写真が示されており、図8(b)には図8(a)の白枠部分を拡大した電子顕微鏡写真が示されている。
【0074】
同様に、図9(a)には2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を2層積層した状態の電子顕微鏡写真が示されており、図9(b)には図9(a)の白枠部分を拡大した電子顕微鏡写真が示されている。
【0075】
また同様に、図10(a)には2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を3層積層した状態の電子顕微鏡写真が示されており、図10(b)には図10(a)の白枠部分を拡大した電子顕微鏡写真が示されている。
【0076】
また、図11には、ブリッジ32をプローブ40で押して、基板の外郭領域30から2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を切り離して破断した状態の電子顕微鏡写真が示されている。
【0077】
図12には、貫通孔18に位置合わせ用の微小体20を挿入してある2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の上に、破断してプローブ40に吸着させた2次元フォトニック結晶14b(14a)を持ってきたところを示す電子顕微鏡写真が示されている。
【0078】
図13には、2枚の2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)をほぼ完全に重ね合わせた状態の電子顕微鏡写真が示されている。
【0079】
次に、上記した実施例の光学特性について説明する。なお、光学特性の測定条件は、
測定装置:反射波のスペクトル測定装置
分解能:16cm−1
入射角:20度(広がり角度±10度)
20度を中心にコーン状の光が試料に入射している状態。
【0080】
偏光:なし
検出器:MCT,77K冷却
スキャン回数:1024回
走査波長域:1.43μm〜14.3μm
検出した光:反射光
である。
【0081】
実施例に示す3次元フォトニック結晶は、4μm域にフォトニックバンドギャップが開くよう設計してあるので、反射波を測定した場合には、4μm域の光は3次元フォトニック結晶から完全に反射されるはずである。
【0082】
図14は、1層(1/4周期)、3層(3/4周期)ならびに4 層(1周期)の2次元フォトニック結晶プレートをそれぞれ積層した際に、1層増えるごとに上記の条件で反射波を測定したときのスペクトルである。層が増やされるにつれ、4μm帯の波長のピークが大きくなった。これは、徐々にフォトニックバンドギャップが形成されていることを示す。また、ピークの中央に現れている鋭いギャップは空気中の二酸化炭素のC=0伸縮よる吸収によるものである。2μm帯に現れているピークは、より高次のモードによる反射である。
【0083】
なお、フォトニックバンドギャップの波長閾は、例えば、100nm〜1mmに設定することができる。
【0084】
以上において説明した通り、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)において、プレートの面に対して垂直方向の位相を任意に変化させ、それ設計通りに積層することができる。これは、フォトニックバンド結晶の作製に適した方法である。
【0085】
また、上記した実施の形態においては、リソグラフィの技術を用いているため、任意の光位相制御領域(欠陥領域)の導入が可能となる。
【0086】
即ち、上記のようにして2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を積層して3次元フォトニック結晶10を作製する際に、単にプローブ40を用いて2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)を積層するのみではなく、光位相制御領域(欠陥領域)を構成するための発光体や欠陥部品などの微小部品を、プローブ40を用いて3次元フォトニック結晶を作製する際の2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の積層中に挿入(埋め込み)をすることができる。
【0087】
これら微小部品の材質は、積層中の2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)と同じ材質である必要はなく、上記した発光体や屈折率の異なる材質を用いることができる。
【0088】
さらに、上記した実施の形態においては、リソグラフィの技術を用いているため、サブミクロン程度の3次元微細構造を構築することができる。その結果、波長0.2μm〜10μmの光の波長域に用いる光学素子に応用可能である。
【0089】
なお、上記した実施の形態ならびに実施例は、以下の(1)乃至(8)に示すように変形してもよい。
【0090】
(1)上記した実施の形態においては、プローブ40として、ガラスファイバーの周囲を金属コーティングしたプローブを用いており、このプローブの先端(ガラスファイバーの部分)の径が0.5μm程度であるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、プローブの材質としては、ガラスや金属などを適宜に用いることができる。また、プローブの先端に2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)や微小体20を吸着する際の吸着力を、電界のオン/オフにより制御することができるようなものでもよい。さらに、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)との接触面積を大きくして吸着能力を向上するために、プローブの先端の径をミクロンオーダーよりも大きくしてもよく、例えば、10nm〜1mmとすることができる。
【0091】
より詳細には、例えば、図15(a)(b)(c)に示すようなプローブを用いることができる。この図15(a)(b)(c)に示すプローブ400は、内部芯402と、内部芯402の周囲に形成された絶縁層404と、絶縁層404のの先端部Tを除く外周上に形成された外部金属膜406とを有して構成されている。
【0092】
ここで、内部芯402はタングステンなどのかたい金属を用い、絶縁層404はCVDなどを用いてSiO2やSiNxなどを成膜して形成する。また、外部金属膜406は、NiやAuを蒸着などの方法で成膜して形成する。
【0093】
絶縁層404により形成されている先端部Tは、平坦面の形状を備えるように構成されており、その大きさは、例えば、先端部Tが正方形であるならば、「1μm×1μm=1μm2」〜「10mm×10mm=100mm2」である。
【0094】
このプローブ400においては、内部芯402と外部金属膜406との間に電圧をかけることによって、先端部Tの縁部付近に電界がかかり、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)や微小体20を静電吸着することができる。
【0095】
ここで、外部金属膜406は、外部へ電界を漏らさないシールドの機能も達成している。なお、シールドがないと、電子顕微鏡で観察する場合に画像を乱すことになる。このため、シールドを設けるようにすることが好ましい。
【0096】
また、外部金属膜406は、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の電位を安定させる役割も果たしている。一般に、電子顕微鏡観察下の微小物体は、そのときの観察条件やそれまでの履歴により、様々な電位に帯電している。従って、必ずしも電圧を加えたプローブに対して吸着されるとは限らない。
【0097】
しかしながら、外部金属膜406が2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)に接触するようにしておけば、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)の電位が外部金属膜406と等電位に固定されるので、常に目的通りに再現性よく吸着あるいは離脱できる。
【0098】
また、図16(a)(b)には、他のプローブの構成が示されている。このプローブ410は、図15(a)(b)(c)に示すようなプローブの先端電極を櫛形にして、吸着能力を高めたものである。
【0099】
即ち、このプローブ410は、先端部が平坦面とされた絶縁体針412に第1電極414と第2電極416とを形成する。この際に、第1電極414と第2電極416とは、絶縁体針412の先端部の平坦面において櫛形電極(第1電極414と第2電極416との凸部と凹部とが、互いに噛み合うように配置されている電極である。)を構成するように配設する。
【0100】
上記したように第1電極414と第2電極416とを形成した後に、その上にSiO4などの絶縁膜418を成膜して被覆し、絶縁体針412の平坦面とされた先端部側を除く絶縁膜418の外周上に金属シールド420を形成するようにしたものである。
【0101】
上記したプローブ410においては、第1電極414と第2電極416とに、金属シールド420(アース)に対して異なる電圧をかけることによって、絶縁体針412の先端部の平坦面に電界がかかり、2次元フォトニック結晶プレート14a(14b)や微小体20を静電吸着することができる。
【0102】
(2)上記した実施の形態においては、2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bに形成された貫通孔18に微小体20を嵌入させることにより、2次元フォトニック結晶プレート14a、14bを重ね合わせるときの位置合わせを行ったが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、壁面などの所定の形状を備えた構造体に2次元フォトニック結晶プレート14a、14bを突き当てて位置合わせを行うようにしてもよい。なお、この場合には、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、各部位が同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0103】
具体的には、図18(a)に示すように、少なくとも一つの角部を備えるとともに凹凸を形成された壁面500を構築し、この壁面500に2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bの外側面を突き当てて位置合わせを行うようにしてもよい。なお、この場合にも、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、各部位が同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0104】
同様に、図18(b)に示すように、少なくとも一つの角部を備えた平坦な壁面502を構築し、この壁面502に2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bの外側面を突き当てて位置合わせを行うようにしてもよい。なお、この場合にも、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、各部位が同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0105】
また、図18(c)に示すように、円柱体504を複数立設し、これら円柱体504に2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bの外側面を突き当てて位置合わせを行うようにしてもよい。なお、この場合にも、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、各部位が同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0106】
また、図18(d)に示すように、凹所を形成し、凹所506によって形成される壁面506aに2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bの外側面を突き当てて位置合わせを行うようにしてもよい。なお、この場合にも、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、各部位が同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0107】
また、図19(a)に示すように、直方体508を複数立設し、これら直方体508に2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bの外側面を突き当てて位置合わせを行うようにしてもよい。なお、この場合にも、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、各部位が同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0108】
また、図19(b)に示すように、L字形状部材510を複数立設し、これらL字形状部材510に2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bの外側面を突き当てて位置合わせを行うようにしてもよい。なお、この場合にも、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとは、各部位が同一の寸法に設定されていることが好ましい。
【0109】
上記したような手法によれば、2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bに貫通孔18などを形成する必要がなく、また微小体20を用いる必要もないので、2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの位置合わせを簡便に行うことができる。
【0110】
(3)2次元フォトニック結晶プレートの材質としては、例えば、
・III−V族、V1族、II−VI族半導体
例えば、InP、GaAs、InGaAsP系半導体
Si,Ge、SiGe系半導体
AlInGaN系半導体
ZnMgCdTeSe系半導体など
・SiNx,SiO2,TiO2などの絶縁体
・PMMA、ポリイミドなどの有機質
などを用いることができる。
【0111】
(4)上記した実施の形態においては、2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bに形成された貫通孔18の形状を円形とし、微小体20を球体状に構成したが、これに限られるものではないことは勿論である。
2次元フォトニック結晶プレート14a、14bの枠16a、16bに形成された貫通孔18の形状は、正方形や長方形などの任意の形状としてよく、また、微小体20の形状も、貫通孔18の形状に適合するように立方体や直方体などの任意の形状としてよい。
【0112】
(5)上記した実施の形態においては、2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとの2種類の2次元フォトニック結晶プレートを用い、これらを光の波長に応じた周期構造になるように交互に積層して3次元フォトニック結晶10を形成する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、3種類以上の2次元フォトニック結晶プレートを用い、これら3種類以上の2次元フォトニック結晶プレートを光の波長に応じた周期構造になるように積層して3次元フォトニック結晶を構成するようにしてもよい。
【0113】
(6)上記した実施の形態においては、説明は省略したが、上記した実施の形態における2次元フォトニック結晶プレート14aと2次元フォトニック結晶プレート14bとのように、三次元フォトニック結晶を構成するために必要な複数種類の2次元フォトニック結晶プレートを1枚の基板上に一括して作成してもよいし、それぞれ異なる基板上に作成するようにしてもよい。
【0114】
(7)上記した実施の形態においては、貫通孔18は枠16a、16bに形成したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0115】
例えば、図17(a)に示すように、複数の2次元フォトニック結晶プレートのうちの互いに隣り合う2次元フォトニック結晶プレートを正確に張り合わせた場合に、当該張り合わせた2次元フォトニック結晶プレートの2次元フォトニック結晶のパターンの中で、当該張り合わせた2次元フォトニック結晶プレートのそれぞれを貫通するパターンが一致する箇所を貫通孔として用いてもよい。
【0116】
また、図17(b)に示すように、2次元フォトニック結晶プレートの2次元フォトニック結晶のパターンに囲まれた領域に貫通孔を形成し、この貫通孔に位置合わせ部材を配置するようにしてもよい。
【0117】
(8)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(7)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【0118】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、実用上有効な3次元フォトニック結晶およびその製造方法ならびにプローブを提供することができるという優れた効果を奏する。
【0119】
より詳細には、本発明により3次元フォトニック結晶を用いた光学デバイスの実現が可能になる。3次元フォトニック結晶を用いた光学デバイスとは、例えば、低閾値レーザー素子、発光素子、無損失回路、分波器などである。レーザー素子、発光素子などの能動素子を3次元フォトニック結晶で作製した場合には、低駆動電力化および第一波長発振などの効果が得られる。また、無損失回路分波器などの受動素子を3次元フォトニック結晶で作製した場合には、従来の光ファイバーなどに比べて非常に素子が小さいので、光学回路の高集積化が可能である。
【0120】
即ち、上記した本発明による3次元フォトニック結晶の製造方法は、特に以下の点で優れている。
【0121】
(1)2次元フォトニック結晶プレートを積層するという手法を用いるので、作製の際に構造や部品の変形などがないため、光波長に対応した高精密な3次元フォトニック結晶を製造することができる。
【0122】
(2)2次元フォトニック結晶プレートを積層するという手法を用いるので、任意の構造体を積層によって作製することができ、ダイアモンドおよびダイアモンドライク周期結晶の作成も可能であり、フォトニックバンドギャップ結晶の作製が可能となる。
【0123】
(3)2次元フォトニック結晶プレートを積層するという手法を用いるので、3次元フォトニック結晶中に光位相制御領域(欠陥領域)を簡単に挿入することができる。
【0124】
従って、本発明による3次元フォトニック結晶の製造方法は、光学デバイスを作製するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1には、本発明の実施の形態の一例による3次元フォトニック結晶が示されており、(a)は正面斜視図であり、(b)は(a)の分解斜視図である。
【図2】エアーブリッジ型2次元フォトニック結晶プレートの作製手法を示す説明図である。
【図3】InPを材料としてウッドパイル構造を形成した場合における、フォトニックバンドギャップが開く角材の幅と周期との関係を示すグラフである。
【図4】2次元フォトニック結晶プレートの電子顕微鏡写真である。
【図5】2次元フォトニック結晶プレートを積層して3次元フォトニック結晶を構成する手法を示す説明図である。
【図6】2次元フォトニック結晶プレートを積層して3次元フォトニック結晶を構成する手法を示す説明図である。
【図7】2次元フォトニック結晶プレートを積層して3次元フォトニック結晶を構成する手法を示す説明図である。
【図8】(a)は2次元フォトニック結晶プレートを1層積層した状態の電子顕微鏡写真であり、(b)は(a)の白枠部分を拡大した電子顕微鏡写真である。
【図9】(a)は2次元フォトニック結晶プレートを2層積層した状態の電子顕微鏡写真であり、(b)は(a)の白枠部分を拡大した電子顕微鏡写真である。
【図10】(a)は2次元フォトニック結晶プレートを3層積層した状態の電子顕微鏡写真であり、(b)は(a)の白枠部分を拡大した電子顕微鏡写真である。
【図11】ブリッジをプローブで押して、基板の外郭領域から2次元フォトニック結晶プレートを切り離した状態の電子顕微鏡写真である。
【図12】貫通孔に位置合わせ用の微小体を挿入してある2次元フォトニック結晶プレートの上に、切り離してプローブに吸着させた2次元フォトニック結晶を持ってきたところを示す電子顕微鏡写真である。
【図13】2枚の2次元フォトニック結晶プレートをほぼ完全に重ね合わせた状態の電子顕微鏡写真である。
【図14】1層(1/4周期)、3層(3/4周期)ならびに4 層(1周期)の2次元フォトニック結晶プレートをそれぞれ積層した際に、1層増えるごとに反射波を測定したときのスペクトルを示す。
【図15】他の形態のプローブを示す説明図である。
【図16】他の形態のプローブを示す説明図である。
【図17】(a)は2次元フォトニック結晶のパターンの一部を用いて位置合わせを行う場合を示した斜視説明図であり、(b)は2次元フォトニック結晶のパターンの中に形成された貫通孔を用いて位置合わせを行う場合を示した斜視説明図である。
【図18】(a)、(b)、(c)ならびに(d)は、それぞれ2次元フォトニック結晶プレートの他の位置合わせ手法を示す説明図である。
【図19】(a)ならびに(b)は、2次元フォトニック結晶プレートの他の位置合わせ手法を示す説明図である。
【符号の説明】
10 3次元フォトニック結晶
12a、12b 2次元フォトニック結晶
14a、14b 2次元フォトニック結晶プレート
16a、16b 枠
18 貫通孔
20 微小体
Claims (1)
- 第1の枠に第1の貫通孔を備えるとともに、前記第1の枠の内側の領域に第1の2次元フォトニック結晶を備えた平板状の第1の2次元フォトニック結晶プレートと、
第2の枠に前記第1の貫通孔と位置合わせされた第2の貫通孔を備えるとともに、前記第2の枠の内側の領域に第2の2次元フォトニック結晶を備えた平板状の第2の2次元フォトニック結晶プレートと、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを連通するように配置される位置合わせ部材と
を有し、
前記第1の2次元フォトニック結晶プレートの前記第1の貫通孔と前記第2の2次元フォトニック結晶プレートの前記第2の貫通孔とを連通するように前記位置合わせ部材を配置して位置合わせして、前記第1の2次元フォトニック結晶プレートと前記第2の2次元フォトニック結晶プレートとを光の波長に応じた周期構造になるように積層したものである3次元フォトニック結晶において、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とはそれぞれ円孔であり、
前記円孔の半径と前記第1の2次元フォトニック結晶プレートおよび前記第2の2次元フォトニック結晶プレートの厚さとが略一致し、
前記位置合わせ部材はその直径が前記円孔の半径の略2倍とされた球体状である
3次元フォトニック結晶。
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