JP4702538B2 - 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
組成式:[Ti1-(X+Y) AlX SiY]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Yは0.01〜0.10を示す)、
を満足するTiとAlとSiの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Si)Nで示す]層からなる硬質被覆層を0.1〜20μmの平均層厚で蒸着形成してなる表面被覆超硬工具が知られており、かかる従来の表面被覆超硬工具においては、硬質被覆層を構成する前記(Ti,Al,Si)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さ、同Tiによって高温強度、さらに同Siによって耐熱性が向上した特性をもつようになることも知られている。
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記従来の表面被覆超硬工具においては、これを鋼や鋳鉄などの切削を通常の切削加工条件で行うのに用いる場合には、切削加工条件に応じた組成を選択すれば問題はないが、特に合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などのビッカース硬さ(Cスケール)で50以上の高い硬さを有する高硬度鋼などの切削加工を、高熱発生を伴なう高速切削加工条件で行うのに用いた場合には、特に硬質被覆層の耐熱性不足が原因で、摩耗進行がきわめて速く、このため比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
(a) 硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Si)N層において、Si成分の含有割合を多くすれば耐熱性が向上するが、上記の従来(Ti,Al,Si)N層における1〜10原子%程度のSi含有割合では、高硬度鋼の高速切削加工に要求される高い耐熱性を確保することができず、これらの要求に満足に対応させるためには前記1〜10原子%をはるかに越えた20〜35原子%のSi含有が必要であり、一方20〜35原子%のSi成分を含有した(Ti,Al,Si)N層を硬質被覆層として実用に供するには、所定量のTiを含有させて所定の高温強度を確保する必要があるが、この場合Al成分の含有割合は著しく低い状態となるのが避けられず、この結果高温硬さのきわめて低いものとなること。
ここで、薄層A、薄層Bの組成式は、次のとおりである。
薄層Aの組成式:[Ti1-(E+F)AlESiF]N(但し、原子比で、Eは0.15〜0.30、Fは0.20〜0.35を示す)
薄層Bの組成式:[Ti1-(M+N)AlMSiN]N(但し、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)
組成式:[Ti1-(X+Y)AlXSiY]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Yは0.01〜0.10を示す)を満足する、単一相構造の(Ti,Al,Si)N層、
を設けた構造にすると、この上部層と下部層からなる硬質被覆層は、すぐれた耐熱性とともに、すぐれた高温硬さと高温強度を備えたものとなるので、この硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆超硬工具は、上記の高熱発生を伴う高硬度鋼の高速切削加工でも、チッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮すること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、あるいは、高速度工具鋼基体の表面に、
(a)いずれもTiとAlとSiの複合窒化物からなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Ti1-(E+F)AlESiF]N(ただし、原子比で、Eは0.15〜0.30、Fは0.20〜0.35を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層、
上記薄層Bは、
組成式:[Ti1-(M+N)AlMSiN]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[Ti1-(X+Y)AlXSiY]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Yは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具に特徴を有するものである。
(a)下部層を構成する硬質被覆層の組成式および平均層厚
硬質被覆層(Ti,Al,Si)N層におけるAl成分には高温硬さを向上させ、一方同Ti成分には高温強度、さらに同Si成分には耐熱性を向上させる作用があり、下部層ではAl成分の含有割合を多くして、高い高温硬さを具備せしめるが、Alの含有割合を示すX値がTiとSiとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.50未満では、相対的にTiの割合が多くなって、高硬度鋼の高速切削加工に要求されるすぐれた高温硬さを確保することができず、摩耗進行が急激に促進するようになり、一方Alの割合を示す同X値が同0.65を越えると、相対的にTiの割合が少なくなり過ぎて、高温強度が急激に低下し、この結果チッピング(微少欠け)などが発生し易くなることから、X値を0.50〜0.65と定めた。
また、Siの割合を示すY値がTiとAlの合量に占める割合で、0.01未満では、所定の耐熱性を確保することができず、一方同Y値が0.10を超えると、高温強度に明確な低下傾向が現れるようになることから、Y値を0.01〜0.10と定めた。
さらに、その平均層厚が2μm未満では、自身のもつすぐれた高温硬さを硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その平均層厚が6μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を2〜6μmと定めた。
上部層の薄層Aの(Ti,Al,Si)NにおけるSi成分は、耐熱性を向上させ、もって高熱発生を伴う高硬度鋼の高速切削加工に適応させる目的で含有させるものであり、したがって、その含有割合を示すF値がTiとAlの合量に占める割合で、0.20未満では、高速切削加工時に所望のすぐれた耐熱性を確保することができず、一方同F値が0.35を越えると、高温強度が急激に低下し、これが上部層全体の高温強度低下の原因となり、チッピングが発生し易くなることから、F値を0.20〜0.35と定めた。
また、Alの割合を示すE値がTiとSiの合量に占める割合で、0.15未満では、最低限の高温硬さを確保することができず、摩耗促進の原因となり、一方同E値が0.30を超えると、高温強度が低下し、チッピング発生の原因となることから、E値を0.15〜0.30と定めた。
薄層Bは、薄層Aと薄層Bの交互積層構造からなる上部層において、云わば、薄層Aに不足する特性(高温硬さ)を補うことを主たる目的とするものである。
すでに述べたように、上部層の薄層Aは、Si成分の含有割合を高めその耐熱性の向上を図ったものであるが、上部層には所定の高温強度も求められており、これを確保するためには薄層Aに所定量のTiを含有する必要がある。そうすると、薄層AにおけるAlの含有割合は、少なくならざるを得ず、その結果として、薄層Aは高温硬さが不十分となり、ひいては、耐摩耗性の低下につながる。
そこで、上部層の薄層Bにおいては、薄層Aに比してSi成分の含有割合を相対的に低くするが、一方Al成分の含有割合を相対的に高く維持することで、相対的に高い高温硬さを具備せしめ、隣接する薄層Aの高温硬さ不足を補い、もって、前記薄層Aのもつすぐれた耐熱性と、前記薄層Bのもつ所定の高温硬さを具備した上部層を形成する。
薄層Bの組成式におけるAlの含有割合を示すM値が0.50未満になると、Alの含有割合が少なくなり過ぎて、所定の高温硬さを確保することができず、この結果摩耗進行が促進するようになり、一方同M値が0.65を越えると、相対的にTi成分の含有割合が低下して、上部層の高温強度低下は避けられず、チッピング発生の原因となることから、M値を0.50〜0.65と定めた。
また、Siの割合を示すN値がTiとAlの合量に占める割合で、0.01未満では、上部層全体の耐熱性低下が避けられず、一方同N値が0.10を超えると、高温強度が低下し、チッピングが発生し易くなることから、N値を0.01〜0.10と定めた。
上部層の薄層Aと薄層B、それぞれの一層平均層厚が5nm未満ではそれぞれの薄層を上記の組成のものとして明確に形成することが困難であり、この結果上部層に所望のすぐれた耐熱性、さらに所定の高温硬さを確保することができなくなり、またそれぞれの一層平均層厚が20nmを越えるとそれぞれの薄層がもつ欠点、すなわち薄層Aであれば高温硬さ不足、薄層Bであれば耐熱性不足が層内に局部的に現れるようになり、これが原因で摩耗が急速に進行するようになることから、それぞれの一層平均層厚は5〜20nmと定めた。
すなわち、薄層Bは、薄層Aの特性を補強するために設けられたものであるが、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚が5〜20nmの範囲内であれば、薄層Aと薄層Bの交互積層構造からなる上部層は、すぐれた耐熱性、所定の高温硬さおよびすぐれた高温強度を具備したあたかも一つの層であるかのように作用するが、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚が20nmを越えると、薄層Aの高温硬さ不足、あるいは、薄層Bの耐熱性不足が層内に局部的に現れるようになり、上部層が全体として一つの層としての良好な特性を呈することができなくなるため、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚を5〜20nmと定めた。
薄層Aと薄層Bの一層平均層厚を5〜20nmの範囲内とした交互積層構造からなる上部層を下部層表面に形成することにより、優れた耐熱性、高温硬さ、高温強度を兼ね備えた硬質被覆層が得られる。
上部層全体の平均層厚が0.5μm未満では、自身のもつすぐれた耐熱性、さらに所定の高温硬さを硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方上部層全体の平均層厚が1.5μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜1.5μmと定めた。
(a)ついで、上記の超硬基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、一方側のカソード電極(蒸発源)として、それぞれ表3,4に示される目標組成に対応した成分組成をもった上部層の薄層A形成用Ti−Al−Si合金、他方側のカソード電極(蒸発源)として、同じくそれぞれ表3,4に示される目標組成に対応した成分組成をもった上部層の薄層Bおよび下部層形成用Ti−Al−Si合金を前記回転テーブルを挟んで対向配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を400℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記薄層Bおよび下部層形成用Ti−Al−Si合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Ti−Al−Si合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記薄層Bおよび下部層形成用Ti−Al−Si合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3,4に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Ti,Al,Si)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)ついで装置内に導入する反応ガスとしての窒素ガスの流量を調整して2Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加した状態で、前記薄層A形成用Ti−Al−Si合金のカソード電極とアノード電極との間に50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、前記超硬基体の表面に所定層厚の薄層Aを形成し、前記薄層A形成後、アーク放電を停止し、代って前記薄層Bおよび下部層形成用Ti−Al−Si合金のカソード電極とアノード電極間に同じく50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、所定層厚の薄層Bを形成した後、アーク放電を停止し、再び前記薄層A形成用Ti−Al−Si合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Aの形成と、前記薄層Bおよび下部層形成用Ti−Al−Si合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Bの形成を交互に繰り返し行い、もって前記超硬基体の表面に、層厚方向に沿って表3,4に示される目標組成および一層目標層厚の薄層Aと薄層Bの交互積層からなる上部層を同じく表3,4に示される全体目標層厚で蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
被削材:JIS・SKD61の焼入れ材(硬さ:HRC56)の丸棒、
切削速度: 80 m/min.、
切り込み: 0.8 mm、
送り: 0.08 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Aという)での合金工具鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は40m/min.)、
被削材:JIS・SUJ2の焼入れ材(硬さ:HRC56)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 40 m/min.、
切り込み: 1.0 mm、
送り: 0.1 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Bという)での軸受鋼の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)、
被削材:JIS・SKD11の焼入れ材(硬さ:HRC57)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 45 m/min.、
切り込み: 0.6 mm、
送り: 0.1 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Cという)での合金工具鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
(ロ)また、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の寸法の高速度工具鋼(JIS・SKH55)素材から、機械加工にて、表7に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもった高速度工具鋼(以下、HSSという)基体(エンドミル)E−1〜E−6をそれぞれ製造した。HSS基体(エンドミル)E−1〜E−2、E−3〜E−4、E−5〜E−6の寸法・形状は、それぞれ、前記超硬基体(エンドミル)C−1〜C−3、C−4〜C−6、C−7〜C−8のそれと同じである。
(a)つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1〜8および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、
(a−1)本発明被覆超硬エンドミル1〜3および従来被覆超硬エンドミル1〜3については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD11の焼入れ材(硬さ:HRC58)の板材、
切削速度: 45 m/min.、
溝深さ(切り込み): 0.2 mm、
テーブル送り: 100 mm/分、
の条件での合金工具鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(a−2)本発明被覆超硬エンドミル4〜6および従来被覆超硬エンドミル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SUJ2の焼入れ材(硬さ:HRC56)の板材、
切削速度: 40 m/min.、
溝深さ(切り込み): 0.4 mm、
テーブル送り: 100 mm/分、
の条件での軸受鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(a−3)本発明被覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD61の焼入れ材(硬さ:HRC55)の板材、
切削速度: 75 m/min.、
溝深さ(切り込み): 0.8 mm、
テーブル送り: 40 mm/分、
の条件での合金工具鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は40m/min.)を行い、
上記(a−1)〜(a−3)のいずれの溝切削加工試験でも、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。
(b)つぎに、本発明被覆HSSエンドミル9〜14および従来被覆HSSエンドミル9〜14のうち、
(b−1)本発明被覆HSSエンドミル9、10および従来被覆HSSエンドミル9、10については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD61(硬さ:HRC52)の板材、
切削速度: 35 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3.5 mm、
テーブル送り: 120 mm/分、
の条件での合金工具鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(b−2)本発明被覆HSSエンドミル11、12および従来被覆HSSエンドミル11、12については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD11(硬さ:HRC56)の板材、
切削速度: 35 m/min.、
溝深さ(切り込み): 5.0 mm、
テーブル送り: 100 mm/分、
の条件での合金工具鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(b−3)本発明被覆HSSエンドミル13、14および従来被覆HSSエンドミル13、14については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SUJ2(硬さ:HRC55)の板材、
切削速度: 35 m/min.、
溝深さ(切り込み): 7.0 mm、
テーブル送り: 50 mm/分、
の条件での軸受鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
上記(b−1)〜(b−3)のいずれの溝切削加工試験でも、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。
上記(a−1)〜(a−3)、(b−1)〜(b−3)の測定結果を表8,9にそれぞれ示した。
上記の実施例2で製造した直径が8mm(超硬基体C−1〜C−3形成用)、13mm(超硬基体C−4〜C−6形成用)、および26mm(超硬基体C−7、C−8形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ 4mm×13mm(超硬基体D−1〜D−3)、 8mm×22mm(超硬基体D−4〜D−6)、および16mm×45mm(超硬基体D−7、D−8)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体(ドリル)D−1〜D−8をそれぞれ製造した。
また、上記の実施例2で用いた高速度工具鋼(JIS・SKH55)素材を用い、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ 4mm×25mm(HSS基体F−1、F−2)、 8mm×45mm(HSS基体F−3、F−4)、および16mm×90mm(HSS基体F−5、F−6)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもった高速度工具鋼製のHSS基体(ドリル)F−1〜F−6をそれぞれ製造した。
(c−1)本発明被覆超硬ドリル1〜3および従来被覆超硬ドリル1〜3については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD61(硬さ:HRC54)の板材、
切削速度: 40 m/min.、
送り: 0.08 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での合金工具鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(c−2)本発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SUJ2(硬さ:HRC55)の板材、
切削速度: 50 m/min.、
送り: 0.1 mm/rev、
穴深さ: 16 mm、
の条件での軸受鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は25m/min.)を行い、
(c−3)本発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD11(硬さ:HRC56)の板材、
切削速度: 45 m/min.、
送り: 0.12 mm/rev、
穴深さ: 32 mm、
の条件での合金工具鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は25m/min.)を行い、
上記(c−1)〜(c−3)のいずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表10、11にそれぞれ示した。
(d)つぎに、上記本発明被覆HSSドリル9〜14および従来被覆HSSドリル9〜14のうち、
(d−1)本発明被覆HSSドリル9、10および従来被覆HSSドリル9、10については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD11(硬さ:HRC55)の板材、
切削速度: 30 m/min.、
送り: 0.12 mm/rev、
穴深さ: 12 mm、
の条件での合金工具鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は15m/min.)を行い、
(d−2)本発明被覆HSSドリル11、12および従来被覆HSSドリル11、12については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SUJ2(硬さ:HRC55)の板材、
切削速度: 30 m/min.、
送り: 0.15 mm/rev、
穴深さ: 24 mm、
の条件での軸受鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は15m/min.)を行い、
(d−3)本発明被覆HSSドリル13、14および従来被覆HSSドリル13、14については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったJIS・SKD61(硬さ:HRC52)の板材、
切削速度: 40 m/min.、
送り: 0.16 mm/rev、
穴深さ: 48 mm、
の条件での合金工具鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
上記(d−1)〜(d−3)のいずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。
上記(c−1)〜(c−3)、(d−1)〜(d−3)の測定結果を表10、11にそれぞれ示した。
また、上記の硬質被覆層の構成層の平均層厚を透過型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
上述のように、この発明の表面被覆切削工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工は勿論のこと、特に高硬度鋼の高熱発生を伴なう高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、あるいは、高速度工具鋼基体の表面に、
(a)いずれもTiとAlとSiの複合窒化物からなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Ti1-(E+F)AlESiF]N(ただし、原子比で、Eは0.15〜0.30、Fは0.20〜0.35を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層、
上記薄層Bは、
組成式:[Ti1-(M+N)AlMSiN]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[Ti1-(X+Y)AlXSiY]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Yは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具。
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