JP4688735B2 - 高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材 - Google Patents

高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材 Download PDF

Info

Publication number
JP4688735B2
JP4688735B2 JP2006154062A JP2006154062A JP4688735B2 JP 4688735 B2 JP4688735 B2 JP 4688735B2 JP 2006154062 A JP2006154062 A JP 2006154062A JP 2006154062 A JP2006154062 A JP 2006154062A JP 4688735 B2 JP4688735 B2 JP 4688735B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
precipitates
rolled material
hot
heating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006154062A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007321211A (ja
Inventor
俊夫 村上
正裕 野村
浩 家口
睦久 永濱
陽介 新堂
洋一 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2006154062A priority Critical patent/JP4688735B2/ja
Publication of JP2007321211A publication Critical patent/JP2007321211A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4688735B2 publication Critical patent/JP4688735B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材に関し、詳細には、自動車などの輸送機器、建設機械、その他の産業機械などにおいて、浸炭処理して使用される機械部品用の素材となる熱間圧延材に関するものである。本発明の熱間圧延材は、特に、高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性が強く要求される軸受、CVT用プーリー、シャフト類、歯車、軸付き歯車などの素材に好適に用いられる。
自動車、建設機械、その他の各種産業機械に用いられる機械部品であって、特に高強度が要求される機械部品には、従来から浸炭、窒化および浸炭窒化などの表面硬化熱処理(肌焼処理)が行なわれている。これらの機械部品は、通常、SCr、SCM、SNCMなどのJIS G 4053で定められた機械構造用合金鋼(肌焼鋼)を使用し、鍛造、切削等の機械加工によって所望の部品形状に成形した後、浸炭、浸炭窒化などの表面硬化熱処理を施して表面硬化層を形成し、その後、研磨などの仕上工程を経て製造される。
近年、機械部品の製造原価の低減化、リードタイムの短縮化の要請に応えるため、例えば、浸炭処理や浸炭窒化処理を高温下で行なって熱処理時間の短縮を図る方法が行なわれている。また、鍛造加工を、従来の熱間鍛造(加熱温度:約1100℃超)から、寸法精度が高い温間鍛造(加熱温度:約900〜1100℃)に変更して、鍛造後の切削コスト低減を図る方法も行なわれている。
しかし、上記のように浸炭処理や浸炭窒化処理の温度を高めると、鋼材のオーステナイト結晶粒が粗大化(異常粒成長)し、熱処理歪量が増大するという問題が新たに生じる。オーステナイト結晶粒の粗大化は、温間鍛造によって一層促進されると考えられる。
そこで、温間鍛造を行なっても、浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材を得るための方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3)。
特許文献1には、プラズマ浸炭処理などの高温表面硬化処理を行なっても粗粒化を防止できるよう、NbとTi/Zrとの複合炭窒化物(最大直径がおおむね0.5μm〜10μm)が分散した、被削性に優れた耐粗粒化肌焼鋼材が提案されている。
特許文献2には、熱間加工後のTi化合物が1万個以下/μmである結晶粒粗大化防止特性および切削性に優れた浸炭鋼製品が提案されている。ここには、Ti化合物の具体的なサイズは記載されていない。
特許文献3には、大きさ(最も長い部分の長さ)が10nm以上のAlN、Nb(C,N)の単独/複合析出物が3〜20個/μm析出した高温浸炭用鋼が記載されている。特許文献3では、浸炭時の異常粒成長を防止するため、従来のように、AlNやNbの炭窒化物を単純に微細析出させるのではなく、所定の熱処理を施して最も結晶粒の異常成長が起きにくい大きさ、数となる析出物を均一に分散させることを狙っている。
特開平11−323482号公報 特開2003−321710号公報 特開2003−27135号公報
本発明の目的は、温間鍛造を行なった後に高温浸炭処理を行っても、オーステナイト結晶粒の粗大化防止特性に優れた熱間圧延材を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明の熱間圧延材は、鋼中成分が、C:0.10〜0.30%(質量%の意味、以下同じ。)、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.2%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.003〜0.030%、Nbおよび/またはTi:0.010〜0.20%、残部:Feおよび不可避不純物であり、フェライト中に下記(1)〜(4)の要件を満足する、Nb及び/又はTi含有析出物を含有し、前記Nb及び/又はTi含有析出物は、Nb炭化物、Nb炭窒化物、Ti炭化物、Nb−Ti複合炭化物、及びNb−Ti複合炭窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種であることに要旨を有している。
(1)析出物の平均粒径(nm)/析出物の面積率<5.0×10(nm)、
(2)析出物の平均粒径:6nm以上、
(3)析出物の密度:20個/μm以上、
(4)(析出物中のNb量及び/又はTi量)/(鋼中のNb量及び/又はTi量)
の比率:95%以上
好ましい実施形態において、前記鋼中成分は、更に、Cr:2.0%以下、Mo:1.0%以下、Ni:3.0%以下、Cu:1.0%以下、およびB:0.010%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有している。
好ましい実施形態において、前記鋼中成分は、更に、Pb:0.1%以下および/またはBi:0.1%以下を含有している。
好ましい実施形態において、前記鋼中成分は、更に、Mg:0.02%以下、Ca:0.02%以下、およびTe:0.02%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有している。
好ましい実施形態において、前記鋼中成分は、更に、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下、およびV:0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有している。
また、上記の熱間圧延材を用いて得られる機械部品も、本発明の範囲内に包含される。
本発明によれば、温間鍛造を行なった後に高温浸炭処理を行っても、オーステナイト結晶粒の粗大化防止特性に優れた熱間圧延材を提供することができた。
本発明者は、Nb、Tiの少なくも一種を含有する鋼を用い、温間鍛造を行なった後に高温浸炭処理を行ってもオーステナイト結晶粒の粗大化防止特性(以下、単に「結晶粒粗大化防止特性」と略記する場合がある。)に優れた熱間圧延材を提供するため、鋭意検討してきた。
その結果、結晶粒粗大化防止に寄与するパラメータとして、従来のように、Nb及び/又はTiを含有する炭窒化物(析出物)の平均粒径(1)および密度(2)を規定するだけでなく、新たに、面積率を指標とした「析出物の平均粒径(nm)/析出物の面積率の比」で表されるパラメータ(3)(以下、Q値と呼ぶ場合がある。)、および「(析出物中のNb量及び/又はTi量)/(鋼中のNb量及び/又はTi量)の比」で表されるパラメータ(4)(以下、R値と呼ぶ場合がある。)を設け、これら(1)〜(4)の要件をすべて適切に制御すれば所期の目的が達成することを見出した。本発明者が、特に、析出物の面積率に着目した理由は、後に詳しく説明する。
そして、上記(1)〜(4)の要件をすべて満足する熱間圧延材を得るためには、特に、熱間圧延時の加熱温度および加熱時間(とりわけ、加熱時間)を適切に制御することが重要であることを突き止め、本発明を完成した。
本明細書における「Nb及び/又はTi含有析出物」とは、前述したとおり、Nb炭化物、Nb炭窒化物、Ti炭化物、Nb−Ti複合炭化物、Nb−Ti複合炭窒化物を意味する。これらのうち少なくとも一種を含んでいるものはすべて、本明細書における「Nb及び/又はTi含有析出物」に包含される。また、本発明における「Nb及び/又はTi含有析出物」の存在形態は、特に限定されず、例えば、上記のNb炭化物などが単独で存在しても良いし、あるいは、上記のNb炭化物に他の析出物(例えば、Al窒化物など)が結合した状態で存在しても良い。
以下では、説明の便宜のため、「Nb及び/又はTi含有析出物」を「Nb/Ti析出物」、または単に「析出物」と呼ぶ場合がある。
また、上記析出物は、後に詳しく説明するように、フェライト組織中に観察されるNb/Ti析出物を測定しているが、フェライト組織に限定したのは、析出物の観察の便宜のためである。本発明の熱間圧延材は、フェライト組織を主とするフェライト−パーライト組織から構成されるが、以下に詳述する析出物の測定方法によれば、フェライト組織中の析出物が観察されやすいからである。
本明細書における「高温浸炭」とは、1100℃(好ましくは1110℃)での浸炭処理を意味しており、「高温浸炭時の結晶粒粗大化特性に優れた」とは、少なくとも、1100℃の浸炭温度域でのオーステナイト結晶粒粗大化特性に優れていることを意味している(詳細は、後記する実施例の欄を参照)。
また、本明細書における「熱間圧延材」とは、熱間圧延を行なったものであって、鍛造(温間鍛造)が施される前のものを意味する。
以下、本発明の熱間圧延材を特徴付ける下記要件(1)〜(4)について説明する。以下では、説明の便宜上、Nb及び/又はTiを含有する析出物を単に「析出物」と記載している。
(1)Q値=[析出物の平均粒径(nm)/析出物の面積率]
<5.0×10 (nm)
Q値は、オーステナイト結晶粒の微細化作用に寄与するパラメータとして本発明者が新たに設けたパラメータの一つであり、析出物の面積率(観察面積に対する析出物の面積の総和の比、詳細は実施例の欄で詳述する。)に対する平均粒径の比で表される。
これまで、結晶粒粗大化防止のために、析出物の平均粒径や密度(個数)に着目した技術は多数提案されているが、析出物の面積率に着目して結晶粒粗大化防止特性の改善を図った技術は提案されていない。
本発明者が面積率に着目した理由は、従来のように、析出物の平均粒径(大きさ)や密度(個数)を単純に規定するだけでは、結晶粒粗大化特性を充分改善することはできないことが、本発明者による多くの基礎実験により判明したからである。具体的には、例えば、析出物の個数が多くても平均粒径が小さいと所望の特性は得られない場合があり、一方、析出物の個数が少なくても平均粒径が大きければ所望の特性が得られる場合があることが判明した。これに対し、「面積率」は、析出物の大きさと個数との積で実質的に表される概念であるため、個々の因子の変動による影響を最小限に抑えられる。
上記の観点に基づき、本発明者は、面積率を中心にして更に検討を重ねてきた。その結果、面積率を含む上記パラメータ(Q値)の上限が結晶粒粗大化防止特性に極めて大きな影響を及ぼしていることを突き止め、上記要件(1)を定めた(後記する実施例を参照)。
Q値の上限を5.0×10nmに定めることにより、高温浸炭時のオーステナイト粒成長が有効に抑制される(後記する実施例を参照)。Q値は、4×10nm以下であることが好ましく、3×10nm以下であることがより好ましい。
なお、Q値の下限は特に限定されないが、以下に説明するように、本発明では、析出物の平均粒径を6nm以上、析出物の密度を20個/μm以上に設定しているため、これらとのバランスを考慮して適切に定められる。従って、Q値の下限を一義的に定めることは困難であるが、おおむね、5×10nmであることが好ましく、1×10nmであることがより好ましい。
Q値の算出方法は、後記する実施例の欄に詳しく説明する。
(2)析出物の平均粒径≧6nm
析出物の平均粒径も、オーステナイト結晶粒の微細化作用に寄与する因子であり、本発明では、特に、析出物の平均粒径の下限を6nmに定めている。前述したように、Q値は小さい方が好ましく、そのためには、析出物の平均粒径を出来るだけ小さくした方が良いが、析出物が微細になり過ぎると、異常粒の成長が発生してしまうためである。すなわち、浸炭前の熱間圧延時に存在する析出物の平均粒径が6nm未満の場合、浸炭時における析出物の粗大化により析出物の数(密度)の減少速度が大きくなり、その結果、浸炭後に析出物の局所的なバラツキが生じて結晶粒の成長が部分的に促進され、異常粒の成長が発生するようになる(後記する実施例を参照)。
析出物の平均粒径は、7nm以上であることが好ましく、8nm以上であることが好ましい。なお、その上限は、主に、前述したQ値などとのバランスによって定められ、一義的に定めることは困難であるが、おおむね、30nmであることが好ましく、20nmであることがより好ましい。
析出物の平均粒径は、後記する実施例の欄に記載した方法で算出される。
(3)析出物の密度≧20個/μm
析出物の密度も、オーステナイト結晶粒の微細化作用に寄与する因子であり、本発明では、特に、析出物の密度の下限を20個/μmに定めている。析出物の密度は、好ましい順に、40個以上/μm以上、50個以上/μm以上、70個以上/μm以上である。なお、その上限は、主に、前述したQ値や析出物の平均粒径とのバランスによって定められ、一義的に定めることは困難であるが、おおむね、1000個/μmであることが好ましく、600個/μmであることがより好ましい。
析出物の密度は、後記する実施例の欄に詳しく記載するように、(析出物の個数/観察面積)で算出される。析出物の密度の算出に当たっては、結晶粒粗大化防止に寄与しない非常に粗大な析出物(ここでは平均粒径が100nm以上)を除いた析出物を対象にし、その個数を測定した。具体的には、後記する実施例の欄に記載の方法で観察される析出物であって、平均粒径が100nm未満の析出物の個数をカウントした。このなかには、平均粒径が6nm未満の析出物も含まれる。
本発明における析出物は、少なくとも上記(1)〜(3)の要件を満足していることが必要である。具体的な析出物のサイズ(大きさ)や分散状態(個数)は、前述したQ値(5.0×10nm未満)と平均粒径(6nm以上)と密度(20個/μm以上)とをすべて満足するように適切に定められるべきであって、一義的に定めることは困難であるが、本発明では、例えば、平均粒径がおおむね7〜30nmの析出物を約70個以上/μm、1000個以下/μmの範囲内で分散させることを意図している。
(4)R値≧95%
R値=(析出物中のNb量及び/又はTi量)/(鋼中のNb量及び/又はTi量)
×100
R値は、オーステナイト結晶粒の微細化作用に寄与するパラメータとして本発明者が新たに設けたパラメータの一つである。
本発明者による数多くの実験結果によれば、所望の特性を有効に発揮させるためには、鋼中に添加したNb及び/又はTiを、熱間圧延の段階で出来るだけ多く析出物として析出させることが有用であり、これにより、浸炭後の析出物の固溶や粗大化が抑制され、当該析出物が均一に分散されるため、結晶粒粗大化防止特性に極めて優れた機械部品が得られることが判明した。
R値の下限は95%である。R値が95%未満の場合、後記する実施例に示すように、上記作用が有効に発揮されない。R値は高いほど良く、例えば、98%以上であることが好ましく、最も好ましいのは100%である。
Nb/Ti析出物が「R値≧95%」の要件を満足しているかどうかは、以下の方法で確認した。
まず、熱間圧延後の試料について、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロリドを含むメタノール溶液を電解液として電気分解を行い、マトリックスを溶解して析出物を表面に露出させた。次いで、超音波洗浄を行なって析出物を剥離し、メッシュサイズ0.1μmのフィルターを用いて吸引濾過を行ない、残渣を得た。この残渣をICP発光分析にかけ、NbおよびTiの定量分析をおこなった。
R値を上記の範囲に制御するためには、所定の熱間圧延(特に、加熱時間の確保)を行なうことが必要である(後記する実施例の欄を参照)。
以上、本発明を特徴付ける上記(1)〜(4)の要件について説明した。
次に、鋼の化学成分を説明する。
C:0.0.10〜0.30%
Cは、機械部品に必要な芯部硬さの確保に重要な元素である。C量が0.10%未満の場合、硬さ不足により、機械部品としての静的強度が不足するため、下限を0.10%とする。ただし、C量が過剰になると、芯部硬さが過度に高くなって脆化し、機械部品の衝撃特性が劣化するため、上限を0.30%とする。C量は、0.15%以上0.25%以下であることが好ましく、0.17%以上0.23%以下であることがより好ましい。
Si:0.01〜1.0%
Siは固溶強化元素であり、また、浸炭後の焼戻し処理時の硬さ低下を抑制し、芯部硬さを確保する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Si量の下限を0.01%とする。ただし、Si量が過剰になると、素材の硬さが高くなりすぎて機械部品の衝撃特性が劣化するため、上限を1.0%とする。Si量は、0.02%以上0.8%以下であることが好ましく、0.05%以上0.6%以下であることがより好ましい。
Mn:0.2〜2.0%
Mnは、焼入性を高め、浸炭焼入れ−焼戻し後の芯部硬さの確保に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Mn量の下限を0.2%とする。ただし、Mn量が過剰になると、偏析が顕著になって衝撃特性が低下するため、Mn量の上限を2.0%とする。Mn量は、0.20%以上1.5%以下であることが好ましく、0.30%以上1.0%以下であることがより好ましい。
P:0.03%以下
Pは、結晶粒界に偏析して機械部品の衝撃特性を低下させるため、P量の上限を0.03%とする。P量は極力低減することが良く、例えば、0.015%以下に抑制することが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。
S:0.2%以下
Sは、被削性改善に寄与する一方、過剰に添加すると、MnまたはTiと結合してMnS系介在物やTiS系介在物等を生成し、機械部品の衝撃強度低下を招く元素である。従って、S量は、目的に応じて適切な範囲に定められる。本発明では、S量の上限を0.2%としているが、被削性を考慮しない場合、S量は極力低減することが良く、例えば、0.05%以下であることが好ましい。一方、被削性の改善を目的とする場合には、S量は、0.05%超であることが好ましく、これにより、Sによる被削性改善作用が有効に発揮される。被削性とのバランスを考慮すれば、S量は、0.01%以上0.07%以下であることが好ましい。
Al:0.01〜0.10%
Alは、鋼中のNと結合してAlNを生成し、浸炭時のオーステナイト結晶粒粗大化防止作用に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Al量の下限を0.01%とする。ただし、過剰に添加すると、Alの介在物が多量に形成され、機械部品の衝撃特性が劣化するため、上限を0.10%とする。Al量は、0.015%以上0.090%以下であることが好ましく、0.020%以上0.070%以下であることがより好ましい。
N:0.003〜0.030%
Nは、TiやNbと結合して析出物を形成し、浸炭時の加熱工程でオーステナイト粒の微細化および異常粒成長の抑制に寄与する元素である。Nは、通常、製造過程などで鋼中に不可避的に含まれるが、所望とする析出物形成のため、下限を0.003%とする。ただし、Nを過剰に添加すると熱間加工性が低下し、鋳造時、熱間圧延時、または熱間鍛造時に割れが発生するため、上限を0.030%とする。N量は、0.005%以上0.028%であることが好ましく、0.008%以上0.025%以下であることがより好ましい。
Nbおよび/またはTi:0.010〜0.20%
NbおよびTiは、鋼中のN及び/又はCと結合して炭化物や炭窒化物を生成し、浸炭時のオーステナイト粒の微細化および異常粒成長の抑制に寄与する元素である。NbおよびTiは、単独で用いても良いし、併用しても良い。上記作用を有効に発揮させるため、上記元素の合計量(単独で用いる場合は単独の量)の下限を0.010%とする。ただし、過剰に添加しても上記作用が飽和するため、上限を0.20%とする。上記元素の下限は、0.02%以上0.18%以下であることが好ましく、0.03%以上0.15%以下であることがより好ましい。
本発明の熱間圧延材は、上記成分を含有し、残部:Feおよび不可避不純物である。不可避不純物として、例えば、Oが挙げられる。Oは、鋼材の強度特性を低下させるため出来るだけ少ない方が良く、例えば、0.002%以下に抑制されていることが好ましく、0.001%以下であることがより好ましい。
更に、本発明の熱間圧延材は、他の特性改善などを目的として、下記の成分を含有しても良い。
Cr:2.0%以下、Mo:1.0%以下、Ni:3.0%以下、Cu:1.0%以下、およびB:0.010%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
これらの元素は、焼入れ性を高めて浸炭焼入れ−焼戻し後の芯部硬さ向上に寄与する元素である。上記の元素は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても構わない。このような作用を有効に発揮させるため、Crを0.1%以上、Moを0.01%以上、Niを0.01%以上、Cuを0.01%以上、Bを0.0005%以上含有することが好ましい。但し、過剰に添加しても上記作用が飽和してしまうため、上限をそれぞれ、Cr:2.0%、Mo:1.0%、Ni:3.0%、Cu:1.0%、B:0.010%とすることが好ましく、Cr:1.5%、Mo:0.7%、Ni:1.0%、Cu:0.5%、B:0.003%とすることがより好ましい。
Pb:0.1%以下および/またはBi:0.1%以下
Pb及びBiは被削性改善元素であり、単独で使用しても良いし、併用しても良い。このような作用を有効に発揮させるため、Pbを0.01%以上、Biを0.01%以上含有することが好ましい。ただし、過剰に添加すると機械部品の衝撃特性が劣化するため、上限をそれぞれ、Pb:0.1%、Bi:0.1%とすることが好ましく、Pb:0.05%、Bi:0.05%とすることがより好ましい。
Mg:0.02%以下、Ca:0.02%以下、およびTe:0.02%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
Mg、Ca,Teは、酸化物系介在物を微細化して機械部品の衝撃特性向上に寄与する元素であり、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。このような作用を有効に発揮させるため、Mgを0.0001%以上、Caを0.0001%以上、Teを0.0001%以上とすることが好ましい。ただし、過剰に添加しても上記作用は飽和するため、上限をそれぞれ、Mg:0.02%、Ca:0.02%、Teを0.02%とすることが好ましく、Mg:0.01%、Ca:0.01%、Te:0.01%とすることがより好ましい。
Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下、およびV:0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
Zr、Hf、Vは、Nb及び/又はTiを含有する析出物と結合して複合析出物を形成し、結晶粒粗大化防止作用の促進に寄与する元素である。これらの元素は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。このような作用を有効に発揮させるため、Zrを0.01%以上、Hfを0.01%以上、Vを0.01%以上とすることが好ましい。ただし、過剰に添加しても上記作用は飽和するため、上限をそれぞれ、Zr:0.1%、Hf:0.1%、Vを0.1%とすることが好ましく、Zr:0.08%、Hf:0.08%、V:0.08%とすることがより好ましい。
以上、本発明の鋼中成分について説明した。
次に、図1を参照しながら、本発明に係る熱間圧延材の製造方法の一実施形態について説明する。
本発明の熱間圧延材は、前述した成分組成を満たす鋼を溶製した後、図1に示すように、2回の熱間圧延工程(加熱工程1および加熱工程2)を行なうことによって得られる。図1には、熱間圧延を2回行なったパターンを示しているが、これに限定されず、例えば、図1に示す加熱工程1を複数回(2回以上)行なってもよい。
(加熱工程1)
加熱工程1は、1200℃以上の温度(図1中、T1)に加熱した後、室温まで冷却する工程を包含する。1200℃以上の温度で加熱するのは、溶製時の冷却過程で形成される50nm超の粗大な析出物を一旦溶解するためであり、これにより、次の加熱工程2で再析出する析出物の分布状態が適切に制御される。加熱温度T1が1200℃を下回ると、後記する実施例に示すように、その後の加熱工程2を適切に制御したとしても粗大な析出物が固溶せず、前述したQ値が上昇するため、浸炭後の結晶粒が粗大化してしまう。加熱温度T1は1230℃以上であることが好ましく、1250℃以上であることがより好ましい。なお、加熱温度T1の上限は特に限定されないが、設備などとの関係で、約1350℃以下に制御することが好ましい。また、加熱時間(図1中、t1)は加熱温度T1との関係で適切に制御すれば良いが、おおむね、30分間〜30時間の範囲内であることが好ましい。
上記のように加熱を行なった後、室温まで冷却する。冷却速度は特に限定されず、おおむね、0.01〜5℃/sの範囲内であることが好ましい。
(加熱工程2)
加熱工程2は、本発明の製造工程を最も特徴付ける部分であり、以下に詳述するように、熱間圧延時、または熱間圧延前・後にそれぞれ施される加熱処理時の加熱温度および加熱時間を適切に制御することにより、前述した要件(1)〜(4)をすべて満足する熱間圧延材が得られる(後記する実施例を参照)。
加熱工程2の加熱条件は、要するに、「Ac3点以上1000℃以下の範囲内での加熱を、合計で2時間以上24時間以下行なう。」というものである。加熱温度がAc3点を下回る(フェライト域になる)と、析出物の生成速度が小さくなり、所望のサイズの析出物を得ることができない。また、加熱時間が2時間未満では、所望のサイズの析出物を得るための時間が確保できず、不充分である。一方、加熱温度が1000℃を超えると、析出物が部分的に固溶するために析出物の面積率が小さくなり、Q値が本発明の範囲を満足しなくなる。また、加熱時間が24時間を超えると、析出物が粗大化し、Q値が本発明の範囲を満足しなくなる。
ここで、Ac3点は、以下に示すように、鋼中成分によって定められる。
Ac3点(℃)=910−203√C+44Si−30Mn−11Cr−31.5Mo−20Cu−15Ni
特に、加熱工程2の加熱時間は、本発明を最も特徴付けるQ値およびR値に大きな影響を及ぼしており、加熱時間が2時間未満の場合、後記する実施例に示すように、所定のQ値およびR値に制御することができない。加熱温度は、Ac3点以上950℃以下であることが好ましく、加熱時間は3時間以上18時間以下であることが好ましい。詳細な加熱条件は、加熱温度と加熱時間とのバランスによって適切に定めればよい。
熱間圧延の前・後の加熱処理は1回以上行なえば良く、例えば、図1の条件Bに示すように、熱間圧延前に1回加熱を行なっても良いし、図1の条件Cに示すように、熱間圧延後に1回加熱を行なっても良い。あるいは、熱間圧延前後にそれぞれ1回ずつ、合計2回の加熱処理を行なってもよい(図示せず)。あるいは、図1の条件Aに示すように、熱間圧延のみを行ない、加熱処理を全く行わなくても良い。これらのいずれの態様も、本発明の範囲内に包含される。
以下、図1の加熱工程2に記載の条件A〜条件Cを参照しながら、詳細に説明する。
(条件A)
図1の条件Aは、熱間圧延のみを行なう方法である。ここでは、熱間圧延時の加熱温度T2をAc3点以上1000℃以下の範囲内に制御し、且つ、当該加熱温度での加熱時間t2を2時間以上24時間以下の範囲内に制御する。熱間圧延後の冷却速度は特に限定されず、例えば、0.1〜10℃/sの範囲内に制御すれば良い。
(条件B)
図1の条件Bは、熱間圧延の前に加熱処理を1回行なう方法である。ここでは、熱間圧延前の加熱処理時の加熱温度T2aおよび熱間圧延時の加熱温度T2を、いずれも、Ac3点以上1000℃以下の範囲内に制御し、且つ、当該加熱温度T2aでの加熱時間t2aと当該加熱温度T2での加熱時間t2の合計を2時間以上24時間以下の範囲内に制御する。
上記のように、加熱処理および熱間圧延を行なった後は、一旦、室温まで冷却するが、冷却速度は特に限定されず、例えば、0.1〜10℃/sの範囲内に制御すれば良い。
(条件C)
図1の条件Cは、熱間圧延の後に加熱処理を1回行なう方法である。ここでは、熱間圧延時の加熱温度T2および熱間圧延後の加熱処理時の加熱温度T2bを、いずれも、Ac3点以上1000℃以下の範囲内に制御し、且つ、当該加熱温度T2での加熱時間t2と当該加熱温度T2bでの加熱時間t2bとの合計を2時間以上24時間以下の範囲内に制御する。
上記のように、熱間圧延および加熱処理を行なった後は、一旦、室温まで冷却するが、冷却速度は特に限定されず、例えば、0.1〜10℃/sの範囲内に制御すれば良い。
上記のようにして得られた熱間圧延材は、公知の方法に基づき、鍛造を行なって所定の形状に加工した後、浸炭、浸炭窒化などの表面硬化熱処理を施して機械部品とする。
本発明の熱間圧延材は、高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れているため、温間鍛造を行なっても、オーステナイト結晶粒の粗大化が防止された浸炭部品が得られる(後記する実施例を参照)。
以下、実施例を挙げて本発明の構成および作用効果をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適切に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1
小型真空溶製炉を用いて表1に示す組成の鋼(残部:鉄および不可避不純物)を溶製した後、表2に示す加熱工程1(表2に記載の加熱温度T1で2時間保持)を行ない、縦155mm、横155mmの角柱に熱間鍛造した後、室温まで空冷した。
次に、表2に示す加熱工程2(図1に示す条件A〜条件C)を行なって熱間圧延を模擬した実験を行ない、φ30mmの棒鋼に鍛造した。
条件A〜条件Cの詳細は以下のとおりである。
(条件A)
図1のT2:表2に示すように、920〜1100℃の範囲内で変更
図1のt2:表2に示すように、0.5〜50時間の範囲内で変更
上記のように種々の加熱温度および加熱時間で熱間圧延を行なった後、φ30mmの棒鋼に鍛造し、空冷した。
(条件B)
図1のT2a=900℃(注:Ac3点以上)、t2a=0.5時間
図1のT2=900℃(注:Ac3点以上)、t2=4.5時間
まず、900℃の温度に加熱して0.5時間加熱した後、室温まで空冷した。次に、熱間圧延(900℃の温度で4.5時間加熱)を行った後、φ30mmの棒鋼に鍛造し、空冷した。表2には、加熱工程2での加熱時間の合計(t2a+t2)を記載している。
(条件C)
図1のT2=900℃(注:Ac3点以上)、t2=0.5時間
図1のT2a=900℃(注:Ac3点以上)、t2a=4.5時間
まず、熱間圧延(900℃の温度で0.5時間加熱)を行なった後、φ30mmの棒鋼に鍛造し、空冷した。次に、900℃の温度で4.5時間加熱した後、空冷した。表2には、加熱工程2での加熱時間の合計(t2+t2a)を記載している。
次に、上記のようにして得られた熱間圧延材をφ8mm×12mmの円柱状試料に加工し、以下に示すように、温間鍛造または冷間鍛造を模擬した実験を行なった。
(温間鍛造)
表2のNo.1〜No.34、No.36〜No.43の試料について、富士電波工機製「THERMECMASTER−Z」を用いて1000℃の温度で10分加熱した後、950℃で加工率70%の圧縮加工を行い、1℃/sの冷却速度で200℃以下まで冷却した。
(冷間鍛造)
表2のNo.35の試料について、プレス機を用い、室温にて加工率70%の圧縮加工を行った。
(浸炭処理)
次に、鍛造後の試料を用い、以下に示すように、浸炭を模擬した実験を行なった。
具体的には、1075℃、1100℃、または1110℃の温度に加熱した後、3時間保持し、その後、水冷した。
(熱間圧延材の析出物の同定および評価)
熱間圧延後の試料(表2のNo.1〜No.42)を用い、D/4(Dは直径)位置から抽出レプリカを作製し、これを日立製作所製の透過型電子顕微鏡(商品名「H−800」、TEM)を用いて、高角散乱暗視野法(HAADF)にて倍率100,000倍で5視野(約1μm/視野)を写真撮影し、HAADF像を得た。
(析出物の評価)
次に、画像解析ソフト(Micromedia社製Image Pro)を用いて、上記のようにして得られたHAADF像(観察面積約5μm)を解析し、個々の析出物の面積および個数を測定した。ただし、円相当径が100nm超の非常の粗大な析出物性は除外した。この結果に基づいて下記(a)〜(c)を算出し、Q値を算出した。
(a)析出物の平均粒径
下式に基づき、円相当径に換算したものを析出物の平均粒径とした。
(b)析出物の面積率
=(観察面積中に測定される析出物の面積の総和)/(観察面積)
(c)析出物の密度=(析出物の個数)/(観察面積)
析出物のR値[析出物中のNb量及び/又はTi量)/(鋼中のNb量及び/又はTi量)×100]は、前述したように抽出残渣分析によって分析した。
(結晶粒粗大化防止特性の評価)
浸炭後の試料を用い、光学顕微鏡(倍率100倍)で10視野(約0.5mm/視野)観察し、JIS G 0551に規定のオーステナイト結晶粒度番号5番(結晶粒サイズ約50μm)より大きいものを粗大化している領域(粗粒域)とし、粗粒域が視野面積(10視野の合計面積)に占める比率(粗粒率)を算出した。
上記のようにして算出された粗粒率に基づき、結晶粒粗大化状況を下記基準で評価した。
○:粗粒化率0%
△:粗粒化率1%以上4%以下
×:粗粒化率5%以上
表3の「結晶粒粗大化状況」の欄には、各浸炭条件の温度ごとに粗粒率の結果(○、△、×)を記載している。
上記の粗圧率の結果に基づき、結晶粒粗大化特性を評価した。評価に当たっては、鍛造条件の違いにより、以下のように、結晶粒粗大化特性の基準を変更して評価した。
(温間鍛造を行なった試料について)
1100℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率が○または△の場合、「結晶粒粗大化防止特性に優れている。」と判定した。
更に、1110℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率が○または△の場合、「結晶粒粗大化防止特性に極めて優れている。」と判定した。
表3の「結晶粒粗大化特性」の欄には、1110℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率は○または△のものに「◎」を、1110℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率は×であるが1100℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率が○または△のものに「○」を、1100℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率が×のものに「×」を付けた。
(冷間鍛造を行なった試料について)
1075℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率が○または△の場合、「結晶粒粗大化防止特性に優れている。」と判定した。
表3の「結晶粒粗大化防止特性」の欄には、1075℃の温度で浸炭を行なった後の粗粒化率が○または△のものに「◎」を付けている。
これらの結果を表3にまとめて示す。表3には、使用した鋼種(表1の鋼種No.)も併記している。
表1に記載の種々の鋼種のうち、鋼種No.A〜Wは、化学成分が本発明の範囲を満足する鋼であり、表1の鋼種No.X〜Z、aは、化学成分のいずれかが本発明の範囲を満足しない鋼である。
表2〜表3より、以下のように考察することができる。
まず、表3のNo.1〜23、28〜29、32〜33、39〜41(以上、温間鍛造を行なった例)、No.35(冷間鍛造を行なった例)は、いずれも、本発明の範囲を満足する鋼種を用い、本発明で規定する条件で熱間圧延材を製造した本発明例であり、本発明で定める上記(1)〜(4)の要件をすべて満足しているため、温間鍛造および冷間鍛造のいずれを行なったとしても、浸炭後のオーステナイト結晶粒粗大化防止特性に優れている(表3を参照)。
これに対し、本発明で規定する要件のいずれかを満足しない下記の熱間圧延材は、浸炭後のオーステナイト結晶粒粗大化防止特性に劣っている。
表3のNo.24は、Nb量が少ない表1の鋼種Xを用いた比較例であり、析出物のQ値が上昇し、密度も低下した。
表3のNo.25は、NbとTiの合計量が多い表1の鋼種Yを用いた比較例であり、析出物のQ値が上昇し、密度も低下した。
表3のNo.26は、N量が多い表1の鋼種Zを用いた比較例であり、熱間圧延時に割れが発生した。
表3のNo.27は、本発明の範囲を満足する鋼種Eを用いたが、表2に示すように、加熱工程1の温度T1が低いため、析出物のQ値が上昇した。
表3のNo.30は、本発明の範囲を満足する鋼種Eを用い、加熱条件Aで加熱した例であるが、表2に示すように、加熱工程2の加熱温度T2が高いため、析出物のQ値が上昇し、密度が低下した。
表3のNo.31は、本発明の範囲を満足する鋼種Eを用い、加熱条件Aで加熱した例であるが、表2に示すように、加熱工程2の加熱時間t2が短いため、析出物の平均粒径が微細化し、且つ、R値が低下した。
表3のNo.34は、本発明の範囲を満足する鋼種Eを用い、加熱条件Aで加熱した例であるが、表2に示すように、加熱工程2の加熱時間t2が長いため、析出物のQ値が上昇した。
表3のNo.36は、本発明の範囲を満足する鋼種Fを用い、加熱条件Aで加熱した例であるが、表2に示すように、加熱工程1の温度T1が高いため、析出物のQ値が上昇した。
表3のNo.37は、本発明の範囲を満足する鋼種Fを用い、加熱条件Aで加熱した例であるが、表2に示すように、加熱工程2の加熱温度T2が高いため、析出物のR値が低下した。
なお、No.37(鋼種Fを使用)では、表3に示すように、析出物のQ値は上昇していない。これに対し、No.37と同様、加熱工程2の加熱温度T2が高いNo.30(鋼種Eを使用)では、析出物のQ値が上昇している。このように、同じヒートパターンを行なったにもかかわらず、析出物のQ値が相違する理由は、詳細なメカニズムは不明であるが、化学成分の相違によって両者の面積率が相違するためと推察される。すなわち、No.30のようにNbのみを含みTiを含まない鋼種Eを使用した場合の面積率は2.1×10−4nmであるのに対し、No.37のようにTiとNbの両方を含む鋼種Fを使用した場合の面積率は1.2×10−3nmと、No.30に比べて大きくなっており、このような面積率の相違が、最終的に、析出物のQ値の相違となって表れていると考えられる。
表3のNo.38は、本発明の範囲を満足する鋼種Fを用い、加熱条件Aで加熱した例であるが、表2に示すように、加熱工程2の加熱時間t2が短いため、析出物の平均粒径が微細化し、且つ、R値が低下した。
表3のNo.42は、本発明の範囲を満足する鋼種Fを用い、加熱条件Aで加熱した例であるが、表2に示すように、加熱工程2の加熱時間t2が長いため、析出物のQ値が上昇し、密度が低下した。
表3のNo.43は、前述した特許文献3の実施例の欄に記載の方法を模擬して行なったものである。具体的には、本発明の範囲を満足する鋼種Bを用い、加熱条件Bで加熱したが、表2に示すように、加熱工程2の加熱時間t2が短いため、析出物の平均粒径が微細化し、且つ、R値が低下した。
参考のため、図2に、本発明の要件を満足する表3のNo.7(本発明例)のHAADF像(図2(a))と、本発明の要件を満足しない表3のNo.31(比較例)のHAADF像(図2(b))とを対比して示す。図中、白いコントラストが析出物である。
これらを対比すると明らかなように、本発明例のNo.7では、比較例のNo.31に比べ、平均粒径が大きい析出物が非常に多く分散していることがわかる。
更に、参考のため、図3および図4に、本発明の要件を満足する鋼種Eおよび鋼種Fを用いて得られた熱間圧延材について、析出物のQ値および平均粒径が、結晶粒粗大化特性に及ぼす影響をグラフ化して示す。
図3、図4は、表3の実験結果(温間鍛造を行なった例のみ)をプロットしたものである。図3、図4の縦軸(異常粒成長防止温度)は、浸炭時の加熱温度である。
図3、図4には、1075℃、1100℃、1100℃の各温度で浸炭を行なった後の粗粒化率(×、△、○)をそれぞれ、示している。
これらの図より、析出物のQ値が5.0×10(nm)以下であり、且つ、平均粒径が6nm以上の要件を満足するものは、いずれも、1100℃の粗粒化率が○または△であり、結晶粒粗大化防止特性に優れている。
更に、析出物のQ値が4×10(nm)以下であり、且つ、平均粒径が7nm以上と、本発明の好ましい要件を満足するものは、1110℃での粗粒化率も○であり、結晶粒粗大化防止特性に極めて優れている。
なお、上記と同様の結果は、表1の鋼種Eおよび鋼種Fを用いたときだけでなく、本発明の要件を満足する他の鋼種を用いたときにも見られたことを、実験により確認している(図には示さず)。
図1は、本発明に係る熱間圧延材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。 図2(a)は、実施例1において、表2のNo.7(本発明例)の析出物の分散状態を示すHAADF像であり、図2(b)は、表2のNo.31(比較例)の析出物の分散状態を示すHAADF像である。 図3は、実施例1において、鋼種Eを用いたときの、析出物のQ値および平均粒径と、結晶粒粗大化特性との関係を示すグラフである。 図4は、実施例1において、鋼種Fを用いたときの、析出物のQ値および平均粒径と、結晶粒粗大化特性との関係を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 鋼中成分は、
    C :0.10〜0.30%(質量%の意味、以下同じ。)、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.2〜2.0%、
    P :0.03%以下、
    S :0.2%以下、
    Al:0.01〜0.10%、
    N :0.003〜0.030%、
    Nbおよび/またはTi:0.010〜0.20%、
    残部:Feおよび不可避不純物であり、
    フェライト中に下記(1)〜(4)の要件を満足する、Nb及び/又はTi含有析出物を含有し、前記Nb及び/又はTi含有析出物は、Nb炭化物、Nb炭窒化物、Ti炭化物、Nb−Ti複合炭化物、及びNb−Ti複合炭窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材。
    (1)析出物の平均粒径(nm)/析出物の面積率<5.0×10(nm)、
    (2)析出物の平均粒径:6nm以上、
    (3)析出物の密度:20個/μm以上、
    (4)(析出物中のNb量及び/又はTi量)/(鋼中のNb量及び/又はTi量)
    の比率:95%以上
  2. 更に、Cr:2.0%以下、Mo:1.0%以下、Ni:3.0%以下、Cu:1.0%以下、およびB:0.010%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1に記載の熱間圧延材。
  3. 更に、Pb:0.1%以下および/またはBi:0.1%以下を含有する請求項1または2に記載の熱間圧延材。
  4. 更に、Mg:0.02%以下、Ca:0.02%以下、およびTe:0.02%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱間圧延材。
  5. 更に、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下、およびV:0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の熱間圧延材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱間圧延材を用いて得られる機械部品。
JP2006154062A 2006-06-01 2006-06-01 高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材 Expired - Fee Related JP4688735B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006154062A JP4688735B2 (ja) 2006-06-01 2006-06-01 高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006154062A JP4688735B2 (ja) 2006-06-01 2006-06-01 高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007321211A JP2007321211A (ja) 2007-12-13
JP4688735B2 true JP4688735B2 (ja) 2011-05-25

Family

ID=38854284

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006154062A Expired - Fee Related JP4688735B2 (ja) 2006-06-01 2006-06-01 高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4688735B2 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5350181B2 (ja) * 2009-10-27 2013-11-27 株式会社神戸製鋼所 結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼
JP5432105B2 (ja) 2010-09-28 2014-03-05 株式会社神戸製鋼所 肌焼鋼およびその製造方法
JP5643622B2 (ja) * 2010-11-30 2014-12-17 株式会社神戸製鋼所 肌焼鋼、およびこれを用いた機械構造部品
JP5458048B2 (ja) 2011-03-29 2014-04-02 株式会社神戸製鋼所 肌焼鋼およびその製造方法、並びに肌焼鋼を用いた機械構造部品
JP5796406B2 (ja) * 2011-04-28 2015-10-21 Jfeスチール株式会社 冷間鍛造性および結晶粒粗大化抑制能に優れた肌焼鋼の製造方法
JP6265048B2 (ja) * 2014-05-26 2018-01-24 新日鐵住金株式会社 肌焼鋼
JP6705344B2 (ja) * 2016-09-01 2020-06-03 日本製鉄株式会社 浸炭時の粗大粒防止特性と疲労特性に優れた肌焼鋼およびその製造方法
JP2020164936A (ja) * 2019-03-29 2020-10-08 Jfeスチール株式会社 浸炭用鋼およびその製造方法
CN109972024B (zh) * 2019-05-13 2020-06-05 中天钢铁集团有限公司 一种齿轮钢钢棒用钢及其制备方法和钢棒的制备方法
CN110863158B (zh) * 2019-12-05 2021-06-29 马鞍山钢铁股份有限公司 一种高性能Mn-Cr系风电输出齿轮用钢及其生产方法
CN112899560B (zh) * 2021-01-13 2022-04-22 江阴兴澄特种钢铁有限公司 一种高强度齿轮用钢23CrMnMoS及其制造方法
JP7287448B1 (ja) 2021-12-23 2023-06-06 愛知製鋼株式会社 浸炭用温間鍛造部品及びその製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005133153A (ja) * 2003-10-30 2005-05-26 Kobe Steel Ltd 冷間鍛造性及び肌焼処理時の耐粗粒化特性に優れた肌焼用鋼及びその製造方法
JP2005139523A (ja) * 2003-11-07 2005-06-02 Aichi Steel Works Ltd 減圧高温浸炭される熱間鍛造部品の製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04371522A (ja) * 1991-06-21 1992-12-24 Daido Steel Co Ltd 浸炭用鋼材の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005133153A (ja) * 2003-10-30 2005-05-26 Kobe Steel Ltd 冷間鍛造性及び肌焼処理時の耐粗粒化特性に優れた肌焼用鋼及びその製造方法
JP2005139523A (ja) * 2003-11-07 2005-06-02 Aichi Steel Works Ltd 減圧高温浸炭される熱間鍛造部品の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007321211A (ja) 2007-12-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4688735B2 (ja) 高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材
JP5397247B2 (ja) 熱間圧延棒鋼または線材
EP2418296B1 (en) Case hardening steel superior in cold workability, machinability and fatigue characteristics after carburized quenching and method of production of same
KR101824352B1 (ko) 고주파 ??칭용 강재
JP2007162128A (ja) 鍛造性と結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼およびその製造方法並びに浸炭部品
JP5736936B2 (ja) 熱間圧延棒鋼または線材、および冷間鍛造用鋼線の製造方法
JP4964063B2 (ja) 冷間鍛造性および結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼およびそれから得られる機械部品
JP5858204B2 (ja) 熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材の製造方法
JP4464862B2 (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた軟化焼鈍の省略可能な肌焼用鋼
KR20130108403A (ko) 열간 단조용 압연 봉강 또는 선재
JPWO2017090738A1 (ja) 鋼、浸炭鋼部品、及び浸炭鋼部品の製造方法
JP4384592B2 (ja) 高温浸炭特性と熱間鍛造性に優れた浸炭用圧延鋼材
JP3738004B2 (ja) 冷間加工性と浸炭時の粗大粒防止特性に優れた肌焼用鋼材とその製造方法
JP4073860B2 (ja) 高温浸炭後の耐粗粒化特性に優れた浸炭鋼の製造方法
JP5871085B2 (ja) 冷間鍛造性および結晶粒粗大化抑制能に優れた肌焼鋼
JP4369250B2 (ja) 高温浸炭用鋼およびその製造方法
JP4464861B2 (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた肌焼用鋼
JP2004183064A (ja) 冷間加工性と浸炭時の粗大粒防止特性に優れた肌焼用鋼材およびその製造方法
JP6658981B1 (ja) 浸炭部品及びその製造方法
JP4807949B2 (ja) 高温浸炭特性に優れた肌焼用圧延棒鋼
JP7436779B2 (ja) 浸炭歯車用鋼、浸炭歯車及び浸炭歯車の製造方法
WO2020090739A1 (ja) 軟窒化用鋼および軟窒化部品並びにこれらの製造方法
JP2005163168A (ja) 熱間鍛造後の焼きならしの省略可能な高温浸炭鋼の製造方法
JP2005023360A (ja) 切り屑処理性に優れた肌焼鋼
JP2020094236A (ja) 浸炭部品、浸炭部品用の素形材、及び、それらの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080926

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101124

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110208

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110215

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4688735

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140225

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees