以下、本発明に係る光源の実施の形態例を図1〜図85を参照しながら説明する。
第1の実施の形態に係る光源10Aは、図1に示すように、複数の電子放出素子12Aが二次元的に配列された発光部14Aと、該発光部14Aの各電子放出素子12Aに対して駆動電圧Vaを印加する駆動回路16Aとを有する。
駆動回路16Aは、外部(点灯/消灯スイッチ等)からの点灯/消灯を示す制御信号Scに基づいて、各電子放出素子12Aの第1の電極(例えば上部電極)18及び第2の電極(下部電極)20に駆動電圧Vaを印加して、各電子放出素子12Aを駆動制御する。駆動回路16Aの好ましい例については後述する。
各電子放出素子12Aは、図1に示すように、板状のエミッタ部22と、該エミッタ部22の表面に形成された前記上部電極18と、エミッタ部22の裏面に形成された前記下部電極20とを有する。このように、電子放出素子12Aは、エミッタ部22を上部電極18と下部電極20でサンドイッチした構造となっているため、容量性負荷となる。従って、この電子放出素子12Aは一種のコンデンサC(図12参照)としてみることができる。
上部電極18と下部電極20間には、駆動回路16Aからの駆動電圧Vaが印加される。図1の例では、下部電極20を抵抗R1を介してGND(グランド)に接続することにより、該下部電極20の電位をゼロにした場合を示しているが、もちろん、ゼロ電位以外の電位にしてもかまわない。なお、上部電極18と下部電極20間への駆動電圧Vaの印加は、例えば図2A及び図2Bに示すように、上部電極18に延びるリード電極24と下部電極20に延びるリード電極26を通じて行われる。
そして、図1に示すように、この電子放出素子12Aを光源として利用する場合は、上部電極18の上方に、例えばガラスやアクリル製の透明板30が配置され、該透明板30の裏面(上部電極18と対向する面)に、例えば透明電極にて構成されたコレクタ電極32が配置され、該コレクタ電極32には蛍光体34が塗布される。なお、コレクタ電極32にはバイアス電源36(バイアス電圧Vc)が抵抗R2を介して接続される。
また、電子放出素子12Aは、当然のことながら、真空空間内に配置される。この電子放出素子12Aは、図1に示すように、電界集中ポイントAが存在するが、ポイントAは、上部電極18/エミッタ部22/真空が1つのポイントに存在する3重点を含むポイントとしても定義することができる。
そして、雰囲気中の真空度は、102〜10-6Paが好ましく、より好ましくは10-3〜10-5Paである。
このような範囲を選んだ理由は、低真空では、(1)空間内に気体分子が多いため、プラズマを生成し易く、プラズマが多量に発生され過ぎると、その正イオンが多量に上部電極18に衝突して損傷を進めるおそれや、(2)放出電子がコレクタ電極32に到達する前に気体分子に衝突してしまい、コレクタ電位(Vc)で十分に加速した電子による蛍光体34の励起が十分に行われなくなるおそれがあるからである。
一方、高真空では、電界集中ポイントAから電子を放出し易いものの、構造体の支持、及び真空のシール部が大きくなり、小型化に不利になるという問題があるからである。
ここで、エミッタ部22は誘電体にて構成される。誘電体は、好適には、比誘電率が比較的高い、例えば1000以上の誘電体を採用することができる。このような誘電体としては、チタン酸バリウムのほかに、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらの任意の組み合わせを含有するセラミックスや、主成分がこれらの化合物を50重量%以上含有するものや、前記セラミックスに対して更にランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、もしくはこれらのいずれかの組み合わせ、又は他の化合物を適切に添加したもの等を挙げることができる。
例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)とチタン酸鉛(PT)の2成分系nPMN−mPT(n,mをモル数比とする)においては、PMNのモル数比を大きくすると、キュリー点が下げられて、室温での比誘電率を大きくすることができる。
特に、n=0.85〜1.0、m=1.0−nでは比誘電率3000以上となり好ましい。例えば、n=0.91、m=0.09では室温の比誘電率15000が得られ、n=0.95、m=0.05では室温の比誘電率20000が得られる。
次に、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、チタン酸鉛(PT)、ジルコン酸鉛(PZ)の3成分系では、PMNのモル数比を大きくする他に、正方晶と擬立方晶又は正方晶と菱面体晶のモルフォトロピック相境界(MPB:Morphotropic Phase Boundary)付近の組成とすることが比誘電率を大きくするのに好ましい。例えば、PMN:PT:PZ=0.375:0.375:0.25にて比誘電率5500、PMN:PT:PZ=0.5:0.375:0.125にて比誘電率4500となり、特に好ましい。更に、絶縁性が確保できる範囲内でこれらの誘電体に白金のような金属を混入して、誘電率を向上させるのが好ましい。この場合、例えば、誘電体に白金を重量比で20%混入させるとよい。
また、エミッタ部22は、上述したように、圧電/電歪層や反強誘電体層等を用いることができるが、エミッタ部22として圧電/電歪層を用いる場合、該圧電/電歪層としては、例えば、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらのいずれかの組み合わせを含有するセラミックスが挙げられる。
主成分がこれらの化合物を50重量%以上含有するものであってもよいことはいうまでもない。また、前記セラミックスのうち、ジルコン酸鉛を含有するセラミックスは、エミッタ部22を構成する圧電/電歪層の構成材料として最も使用頻度が高い。
また、圧電/電歪層をセラミックスにて構成する場合、前記セラミックスに、更に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、もしくはこれらのいずれかの組み合わせ、又は他の化合物を、適宜、添加したセラミックスを用いてもよい。また、前記セラミックスにSiO2、CeO2、Pb5Ge3O11もしくはこれらのいずれかの組み合わせを添加したセラミックスを用いてもよい。具体的には、PT−PZ−PMN系圧電材料にSiO2を0.2wt%、もしくはCeO2を0.1wt%、もしくはPb5Ge3O11を1〜2wt%添加した材料が好ましい。
例えば、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛及びチタン酸鉛とからなる成分を主成分とし、更にランタンやストロンチウムを含有するセラミックスを用いることが好ましい。
圧電/電歪層は、緻密であっても、多孔質であってもよく、多孔質の場合、その気孔率は40%以下であることが好ましい。
エミッタ部22として反強誘電体層を用いる場合、該反強誘電体層としては、ジルコン酸鉛を主成分とするもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分を主成分とするもの、更にはジルコン酸鉛に酸化ランタンを添加したもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分に対してジルコン酸鉛やニオブ酸鉛を添加したものが望ましい。
また、この反強誘電体膜は、多孔質であってもよく、多孔質の場合、その気孔率は30%以下であることが望ましい。
さらに、エミッタ部22にタンタル酸ビスマス酸ストロンチウム(SrBi2Ta2O9)を用いた場合、分極反転疲労が小さく好ましい。このような分極反転疲労が小さい材料は、層状強誘電体化合物で、(BiO2)2+(Am-1BmO3m+1)2-という一般式で表される。ここで、金属Aのイオンは、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Pb2+、Bi3+、La3+等であり、金属Bのイオンは、Ti4+、Ta5+、Nb5+等である。さらに、チタン酸バリウム系、ジルコン酸鉛系、PZT系の圧電セラミックスに添加剤を加えて半導体化させることも可能である。この場合、エミッタ部22内で不均一な電界分布をもたせて、電子放出に寄与する上部電極18との界面近傍に電界集中を行うことが可能となる。
また、圧電/電歪/反強誘電体セラミックスに、例えば鉛ホウケイ酸ガラス等のガラス成分や、他の低融点化合物(例えば酸化ビスマス等)を混ぜることによって、焼成温度を下げることができる。
また、圧電/電歪/反強誘電体セラミックスで構成する場合、その形状はシート状の成形体、シート状の積層体、あるいは、これらを他の支持用基板に積層又は接着したものであってもよい。
また、エミッタ部22に非鉛系の材料を使用する等により、エミッタ部22を融点もしくは蒸散温度の高い材料とすることで、電子もしくはイオンの衝突に対し損傷しにくくなる。
そして、エミッタ部22を形成する方法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法、エアロゾルデポジション法等の各種厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種薄膜形成法を用いることができる。特に、圧電/電歪材料の粉末化したものを、エミッタ部22として形成し、これに低融点のガラスやゾル粒子を含浸する方法をとることが好ましい。この手法により、700℃あるいは600℃以下といった低温での膜形成が可能となる。
ここで、上部電極18と下部電極20間のエミッタ部22の厚さd(図1参照)の大きさについて説明すると、上部電極18と下部電極20間の電圧(駆動回路16Aから出力される駆動電圧Vaが上部電極18と下部電極20間に印加されることによって、該上部電極18と下部電極20間に現れる電圧)をVakとしたとき、E=Vak/dで表される電界Eで分極反転あるいは分極変化が行われるように、前記厚さdを設定することが好ましい。つまり、前記厚さdが小さいほど、低電圧で分極反転あるいは分極変化が可能となり、低電圧駆動(例えば100V未満)で電子放出が可能となる。
上部電極18は、以下に示す材料にて構成される。即ち、スパッタ率が小さく、真空中での蒸発温度が大きい導体が好ましい。例えば、Ar+で600Vにおけるスパッタ率が2.0以下で、蒸気圧1.3×10-3Paとなる温度が1800K以上のものが好ましく、白金、モリブデン、タングステン等がこれに該当する。また、高温酸化雰囲気に対して耐性を有する導体、例えば金属単体、合金、絶縁性セラミックスと金属単体との混合物、絶縁性セラミックスと合金との混合物等によって構成され、好適には、白金、イリジウム、パラジウム、ロジウム、モリブデン等の高融点貴金属や、銀−パラジウム、銀−白金、白金−パラジウム等の合金を主成分とするものや、白金とセラミック材料とのサーメット材料によって構成される。更に好適には、白金のみ又は白金系の合金を主成分とする材料によって構成される。また、電極として、カーボン、グラファイト系の材料、例えば、ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブも好適に使用される。なお、電極材料中に添加されるセラミック材料の割合は、5〜30体積%程度が好適である。
更に、焼成後に薄い膜が得られる有機金属ペースト、例えば白金レジネートペースト等の材料を用いることが好ましい。また、分極反転疲労を抑制する酸化物電極、例えば酸化ルテニウム、酸化イリジウム、ルテニウム酸ストロンチウム、La1-xSrxCoO3(例えばx=0.3や0.5)、La1-xCaxMnO3、La1-xCaxMn1-yCoyO3(例えばx=0.2、y=0.05)、もしくはこれらを例えば白金レジネートペーストに混ぜたものが好ましい。
上部電極18は、上記材料を用いて、スクリーン印刷、スプレー、コーティング、ディッピング、塗布、電気泳動法等の各種の厚膜形成法や、スパッタリング法、イオンビーム法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種の薄膜形成法による通常の膜形成法に従って形成することができ、好適には、前者の厚膜形成法によって形成するとよい。
上部電極18の平面形状は、図2Aに示すように、楕円形状としてもよいし、図2Bに示す第1の変形例に係る電子放出素子12Aaのように、リング状にしてもよい。あるいは、図3に示す第2の変形例に係る電子放出素子12Abのように、くし歯状にしてもよい。
上部電極18の平面形状をリング状やくし歯状にすることによって、電界集中ポイントAでもある上部電極18/エミッタ部22/真空の3重点が増え、電子放出効率を向上させることができる。
上部電極18の厚みtc(図1参照)は、20μm以下がよく、好適には5μm以下であるとよい。従って、上部電極18の厚みtcを100nm以下にしてもよい。上部電極18の厚みtcを極薄(10nm以下)とした場合には、該上部電極18とエミッタ部22との界面から電子が放出されることになり、電子放出効率を更に向上させることができる。
一方、下部電極20は、上部電極18と同様の材料及び方法によって形成されるが、好適には上記厚膜形成法によって形成する。下部電極20の厚さも、20μm以下であるとよく、好適には5μm以下であるとよい。
エミッタ部22、上部電極18及び下部電極20をそれぞれ形成するたびに熱処理(焼成処理)することで、一体構造にすることができる。なお、上部電極18及び下部電極20の形成方法によっては、一体化のための熱処理(焼成処理)を必要としない場合もある。
エミッタ部22、上部電極18及び下部電極20とを一体化させるための焼成処理に係る温度としては、500〜1400℃の範囲、好適には、1000〜1400℃の範囲とするとよい。更に、膜状のエミッタ部22を熱処理する場合、高温時にエミッタ部22の組成が不安定にならないように、エミッタ部22の蒸発源と共に雰囲気制御を行いながら焼成処理を行うことが好ましい。
また、エミッタ部22を適切な部材によって被覆し、エミッタ部22の表面が焼成雰囲気に直接露出しないようにして焼成する方法を採用してもよい。
次に、電子放出素子12Aの電子放出原理について図1、図4〜図9Bを参照しながら説明する。先ず、駆動回路16Aから出力される駆動電圧Vaは、図4に示すように、上部電極18の電位が下部電極20の電位よりも高い電圧Va1が出力される期間T1と、上部電極18の電位が下部電極20の電位よりも低い電圧Va2が出力される期間T2とが繰り返される。ここで、期間T2で出力される電圧Va2を駆動パルスPdと記す。
駆動パルスPdの振幅Vinは、電圧Va1から電圧Va2を差し引いた値(=Va1−Va2)で定義することができる。
期間T1は、図5に示すように、上部電極18と下部電極20間に電圧Va1を印加してエミッタ部22を分極する期間である。電圧Va1としては、図4に示すように直流電圧でもよいが、1つのパルス電圧もしくはパルス電圧を複数回連続印加するようにしてもよい。ここで、期間T1は、分極処理を十分に行うために、期間T2よりも長くとることが好ましい。例えば、この期間T1としては100μsec以上が好ましい。これは、電圧Va1の印加時の消費電力及び上部電極18の損傷を防止する目的で、分極を行うための電圧Va1の絶対値を、電圧Va2の絶対値よりも小さく設定しているからである。
また、電圧Va1及びVa2は、各々正負の極性に分極処理を確実に行うことが可能な電圧レベルであることが好ましく、例えばエミッタ部22の誘電体が抗電圧を有する場合、電圧Va1及びVa2の絶対値は、抗電圧以上であることが好ましい。
そして、上部電極18と下部電極20間に所定レベルの振幅を有する駆動パルスPdが印加されることによって、図6に示すように、少なくともエミッタ部22の一部が分極反転あるいは分極変化される。ここで、分極反転あるいは分極変化される部位は、上部電極18の真下部分はもちろんのこと、真上に上部電極18を有しておらず、表面が露出した部分についても、上部電極18の近傍では、同様に分極反転あるいは分極変化が行われる。つまり、上部電極18の近傍で、エミッタ部22の表面が露出した部分は、分極のしみ出しが起きているからである。この分極反転あるいは分極変化によって、上部電極18とその近傍の双極子の正極側とで局所的な集中電界が発生することにより、上部電極18から1次電子が引き出され、上部電極18から引き出された前記1次電子がエミッタ部22に衝突して、該エミッタ部22から2次電子が放出される。
この実施の形態のように、上部電極18、エミッタ部22及び真空の3重点Aを有する場合には、上部電極18のうち、3重点Aの近傍部分から1次電子が引き出され、この3重点Aから引き出された1次電子がエミッタ部22に衝突して、該エミッタ部22から2次電子が放出される。なお、上部電極18の厚みが極薄(〜10nm)である場合には、該上部電極18とエミッタ部22との界面から電子が放出されることになる。
ここで、所定レベルの振幅を有する駆動パルスPdが印加されることによる作用を更に詳細に説明する。
先ず、上部電極18と下部電極20間に所定レベルの振幅を有する駆動パルスPdが印加されることによって、上述したように、エミッタ部22から2次電子が放出されることになる。即ち、分極が反転あるいは変化されたエミッタ部22のうち、上部電極18の近傍に帯電する双極子が放出電子を引き出すこととなる。
つまり、上部電極18のうち、エミッタ部22との界面近傍において局所的なカソードが形成され、エミッタ部22のうち、上部電極18の近傍の部分に帯電している双極子の+極が局所的なアノードとなって上部電極18から電子が引き出され、その引き出された電子のうち、一部の電子がコレクタ電極32(図1参照)に導かれて蛍光体34を励起し、外部に蛍光体発光として具現されることになる。また、前記引き出された電子のうち、一部の電子がエミッタ部22に衝突して、エミッタ部22から2次電子が放出され、該2次電子がコレクタ電極32に導かれて蛍光体34を励起することになる。
ここで、2次電子の放出分布について図8を参照しながら説明する。図8に示すように、2次電子は、ほとんどエネルギーがゼロに近いものが大多数であり、エミッタ部22の表面から真空中に放出されると、周囲の電界分布のみに従って運動することになる。つまり、2次電子は、初速がほとんど0(m/sec)の状態から周囲の電界分布に従って加速される。このため、図1に示すように、エミッタ部22とコレクタ電極32間に電界Eaが発生しているとすると、2次電子は、この電界Eaに沿って、その放出軌道が決定される。つまり、直進性の高い電子源を実現させることができる。このような初速の小さい2次電子は、1次電子のクーロン衝突でエネルギーを得て、エミッタ部22の外へ飛び出した固体内電子である。
ところで、図8からもわかるように、1次電子のエネルギーE0に相当するエネルギーをもった2次電子が放出されている。この2次電子は、上部電極18から放出された1次電子がエミッタ部22の表面近くで散乱したもの(反射電子)である。そして、本明細書内で述べている2次電子は、前記反射電子やオージェ電子も含んで定義するものとする。
上部電極18の厚みが極薄(〜10nm)である場合、上部電極18から放出された1次電子は、上部電極18とエミッタ部22の界面で反射してコレクタ電極32に向かうことになる。
ここで、図6に示すように、電界集中ポイントAでの電界の強さEAは、局所的なアノードと局所的なカソード間の電位差をV(la,lk)、局所的なアノードと局所的なカソード間の距離をdAとしたとき、EA=V(la,lk)/dAの関係がある。この場合、局所的なアノードと局所的なカソード間の距離dAは非常に小さいことから、電子放出に必要な電界の強さEAを容易に得ることができる(電界の強さEAが大きくなっていることを図6上では実線矢印によって示している)。これは、電圧Vakの低電圧化につながる。
そして、上部電極18からの電子放出がそのまま進行すれば、ジュール熱によって蒸散して浮遊するエミッタ部22の構成原子が前記放出された電子によって正イオンと電子に電離され、この電離によって発生した電子が更にエミッタ部22の構成原子等を電離するため、指数関数的に電子が増え、これが進行して電子と正イオンが中性的に存在すると局所プラズマとなる。なお、2次電子も前記電離を促進させることが考えられる。前記電離によって発生した正イオンが例えば上部電極18に衝突することによって、上部電極18が損傷することも考えられる。
しかし、この電子放出素子12Aでは、図7に示すように、上部電極18から引き出された電子が、局所アノードとして存在するエミッタ部22の双極子の+極に引かれ、上部電極18の近傍におけるエミッタ部22の表面の負極性への帯電が進行することになる。その結果、電子の加速因子(局所的な電位差)が緩和され、2次電子放出に至るポテンシャルが存在しなくなり、エミッタ部22の表面における負極性の帯電が更に進行することになる。
そのため、双極子における局所的なアノードの正極性が弱められ、局所的なアノードと局所的なカソード間の電界の強さEAが小さくなり(電界の強さEAが小さくなっていることを図7上では破線矢印によって示している)、電子放出は停止することになる。
即ち、図9Aに示すように、上部電極18と下部電極20間に印加される駆動電圧Vaとして、電圧Va1を例えば+100V、電圧Va2を例えば−100Vとしたとき、電子放出が行われたピーク時点P1における上部電極18と下部電極20間の電圧変化ΔVakは、20V以内(図9Bの例では10V程度)であってほとんど変化がない。そのため、正イオンの発生はほとんどなく、正イオンによる上部電極18の損傷を防止することができ、電子放出素子12Aの長寿命化において有利となる。
ここで、エミッタ部22の絶縁破壊電圧として、少なくとも10kV/mmを有していることが好ましい。この例では、エミッタ部22の厚さdを例えば20μmとしたとき、上部電極18と下部電極20間に−100Vの駆動電圧を印加しても、エミッタ部22が絶縁破壊に至ることはない。
ところで、エミッタ部22から放出された電子が再びエミッタ部22に衝突したり、エミッタ部22の表面近傍での電離等によって、該エミッタ部22が損傷を受け、結晶欠陥が誘発し、構造的にも脆くなるおそれがある。
そこで、エミッタ部22を、真空中での蒸発温度が大きい誘電体で構成することが好ましく、例えばPbを含まないBaTiO3等にて構成するようにしてもよい。これにより、エミッタ部22の構成原子がジュール熱によって蒸散しにくくなり、電子による電離の促進を妨げることができる。これは、エミッタ部22の表面を保護する上で有効となる。
また、コレクタ電極32のパターン形状や電位を適宜変更したり、エミッタ部22とコレクタ電極32との間に図示しない制御電極等を配置することによって、エミッタ部22とコレクタ電極32間の電界分布を任意に設定することにより、2次電子の放出軌道を制御し易くなり、電子ビーム径の収束、拡大、変形も容易になる。
このように、電子放出素子12Aにおいては、エミッタ部22から放出される2次電子を出力としたので、電子放出素子12Aを用いた光源10Aの長寿命化及び信頼性の向上を図ることができる。しかも、この第1の実施の形態では、複数の電子放出素子12Aを二次元的に配列するようにしたので、長寿命化及び信頼性の向上を図ることができる面光源が実現されることになる。
ここで、面光源の利点をディスプレイとの差異で説明すると、面光源は、ディスプレイと異なり、常に全面発光でよいため、例えば行走査等の複雑な駆動を行う必要がなく、一括のスタティック駆動でよい。また、電子放出による発光スポット径の制御が不要になることから、電子放出素子と蛍光体間に例えばフォーカスレンズとしての機能を果たす制御電極等を設置する必要がない。これは、機械的構成並びに回路構成の簡略化につながる。
ディスプレイは、画像信号に応じて高速に変化するデータ信号を扱う必要がある。従って、駆動電圧は、階調に応じて変調された複雑な波形となる。一方、面光源は、画像信号に応じて高速に変化するデータ信号を扱う必要がないため、駆動電圧として単純な波形(パルス周期やパルス幅がそれぞれ一定とされた波形)を用いることができる。その結果、面光源に後述する電力回収回路を接続する場合に、該電力回収回路の回路定数、回路切り換えタイミング等を高精度に設定できるだけでなく、駆動電圧のほぼ100%を電力回収させることも可能となる。
上述の例では、透明板30の裏面にコレクタ電極32を形成し、該コレクタ電極32の表面(上部電極18と対向する面)に蛍光体34を形成するようにしたが、その他、図10に示す第1の変形例に係る光源10Aaのように、透明板30の裏面に蛍光体34を形成し、該蛍光体34を覆うようにコレクタ電極32を形成するようにしてもよい。この場合、コレクタ電極32がメタルバックとして機能する。エミッタ部22から放出された2次電子はコレクタ電極32を貫通して蛍光体34に進入し、該蛍光体34を励起する。従って、コレクタ電極32は2次電子が貫通できる程度の厚さであり、100nm以下が好ましい。2次電子の運動エネルギーが大きいほど、コレクタ電極32の厚みを厚くすることができる。
このような構成とすることで以下の効果を奏することができる。
(1)蛍光体34が導電性でない場合、蛍光体34の帯電(負)を防ぎ、2次電子の加速電界を維持することができる。
(2)コレクタ電極32が蛍光体34の発光を反射して、蛍光体34の発光を効率よく透明板30側(発光面側)に放出することができる。
(3)蛍光体34への過度な2次電子の衝突を防ぐことができ、蛍光体34の劣化や蛍光体34からのガス発生を防止することができる。
また、他の変形例としては、図11の第2の変形例に係る光源10Abのように、透明板30に蛍光体34を形成し、複数の電子放出素子12Aを有する発光部14Aと蛍光体34間の雰囲気中に、例えば水銀粒子40等を封入して構成するようにしてもよい。この場合、電子放出素子12Aから放出された2次電子のうち、一部の電子が水銀粒子40に衝突し、水銀粒子40が励起状態になって紫外線42を発する。この紫外線42が、周辺の蛍光体34に当たることによって、蛍光体34が励起して外部に蛍光体発光として具現される。
そして、駆動回路16Aは、図12に示すように、タイミング発生回路44と駆動電圧生成回路46とを有する。
タイミング発生回路44は、点灯/消灯を示す制御信号ScとクロックPcに基づいて、駆動パルスPdの出力タイミングを規定するためのタイミングパルスPtを生成し、出力する。具体的には、前記タイミング発生回路44は、例えば図13Aに示すように、制御信号Scが高レベル(点灯を示すレベル)となった時点からクロックPc(図13B参照)の計数を開始し、図13Cに示すように、mクロックに相当する期間T2において高レベル、nクロックに相当する期間T1において低レベルのタイミングパルスPtを繰り返し生成し、出力する。このタイミングパルスPtは、制御信号Scが点灯を示す期間(点灯期間Ts)においてのみ連続して出力される。制御信号Scが低レベル(消灯を示すレベル)の期間、すなわち、消灯期間Tnにおいては、前記タイミング発生回路44からは低レベルの信号のみが出力されることになる。
駆動電圧生成回路46は、前記タイミング発生回路44からのタイミングパルスPtに基づいて、各電子放出素子12Aの上部電極18と下部電極20間に印加すべき駆動電圧Vaを生成し、出力する。具体的には、この駆動電圧生成回路46は、図13Dに示すように、タイミング発生回路44の出力が低レベルの期間T1に電圧Va1を出力し、タイミング発生回路44の出力が高レベルの期間T2に電圧Va2を出力する。すなわち、駆動電圧生成回路46から出力される駆動電圧Vaは、タイミング発生回路44のタイミングパルスPtに同期して駆動パルスPdが連続して現れる波形を有する。
従って、点灯期間Tsにおいては、各電子放出素子12Aの上部電極18と下部電極20間への駆動パルスPdの印加に伴って連続的に電子が放出され、蛍光体34を励起する。その結果、点灯期間Tsにおいて、蛍光体発光が持続されることになる。なお、消灯期間Tnにおいては、各電子放出素子12Aの上部電極18と下部電極20間への駆動パルスPdの印加が行われないため、電子放出素子12Aからの電子放出は停止されており、次の点灯指示まで消灯が持続されることになる。
次に、駆動回路16Aの好ましい実施の形態について図14及び図15を参照しながら説明する。この実施の形態に係る駆動回路16Aは、図14に示すように、上述したタイミング発生回路44と、駆動電圧生成回路46に加えて電力回収回路50が接続されている。この図14では、発光部14Aに配列された全ての電子放出素子12Aを代表的に1つのコンデンサCとして示す。従って、コンデンサCの一方の電極は、全ての電子放出素子12Aの上部電極18を指し、コンデンサCの他方の電極は、全ての電子放出素子12Aの下部電極20を指す。
電力回収回路50の概念的な構成を説明すると、コンデンサCの両電極(上部電極18と下部電極20)間にバッファコンデンサCfと第1の直列回路52がそれぞれ並列に接続され、更に、コンデンサCとバッファコンデンサCfとの間に、第2の直列回路54が接続されている。
図14の例では、1つのコンデンサCに対して1つのバッファコンデンサCfが接続された形態をとっているが、これに限らず、1つのコンデンサCに対して2以上のバッファコンデンサCfを接続してもよく、バッファコンデンサCfの個数は任意である。
第1の直列回路52は、第1のスイッチング回路SW1と電流抑制用の抵抗rと正電源56(電圧Va1)とが直列に接続されて構成され、第2の直列回路54は、第2のスイッチング回路SW2とインダクタ58(インダクタンスL)とが直列に接続されて構成されている。
そして、駆動電圧生成回路46は、タイミング発生回路44からのタイミングパルスPtに基づいて、第1及び第2のスイッチング回路SW1及びSW2を制御するための制御信号Sc1及びSc2を生成し、出力する。
ここで、本実施の形態に係る駆動回路16Aの動作を図15の波形図も参照しながら説明する。
先ず、点灯期間Tsの開始前においては、予め第1のスイッチング回路SW1がON、第2のスイッチング回路SW2がOFFとされており、コンデンサCの両端電圧は正電源56の電圧Va1とほぼ同じ電圧となっている。
そして、点灯期間Tsに入った後における期間T2の開始時点t1において、駆動電圧生成回路46の制御によって第1のスイッチング回路SW1がOFFとされ、第2のスイッチング回路SW2がONとされる。これによって、インダクタ58とコンデンサCとの正弦波振動が開始され、コンデンサCにおける両端電圧の共振的な減衰が開始する。このとき、コンデンサCに蓄積されていた電荷がバッファコンデンサCfに回収されることになる。
次の時点t2、すなわち、コンデンサCの振動波形(電圧波形)が最も低レベル(電圧:−Va1=Va2)となった時点において、駆動電圧生成回路46の制御によって第2のスイッチング回路SW2がOFFとされ、コンデンサCとバッファコンデンサCfの系は高インピーダンス状態となる。従って、この時点t2以降、期間T2の終了時点t3まで電圧Va2が維持される。特に、上述したように、電圧Va1から電圧Va2に低下する時点で、各電子放出素子12Aのエミッタ部22から2次電子の放出が行われ、この電子放出によって透明板30の全面を通じて発光が行われる。
その後、期間T2の終了時点t3において、駆動電圧生成回路46の制御によって第2のスイッチング回路SW2がONとされる。これによって、インダクタ62とコンデンサCとの正弦波振動が開始され、コンデンサCにおける両端電圧の共振的な増幅が開始する。このとき、バッファコンデンサCfに蓄積されていた電荷がコンデンサCに充電される。
次の時点t4、すなわち、コンデンサCの振動波形(電圧波形)が最も高レベル(電圧:Va1)となった時点において、駆動電圧生成回路46の制御によって第2のスイッチング回路SW2がOFFとされ、第1のスイッチング回路SW1がONとされる。この時点t4以降、次の期間T2の開始時点t2まで電圧Va1が維持される。
図13A〜図13Dに示すように、期間T2と期間T1の連続期間を1ステップとしたとき、この1ステップが点灯期間Tsにおいて繰り返される。そのため、電子放出素子12Aにおいて電子放出の自己停止がなされても、再び期間T2が到来して電子放出が行われることから、見かけ上、点灯期間Tsにわたって透明板30の全面を通じての発光が維持された状態となる。つまり、1回の電子放出による発光が消光する前に次の電子放出が行われ、これにより、連続発光が行われることになる。
なお、消灯期間Tnに入った場合は、図13A〜図13Dに示すように、各電子放出素子12Aに電圧Va1が印加されつづけることから、各電子放出素子12Aから電子放出は行われず、従って、消灯期間Tnにわたって消光状態が維持されることになる。
このように、駆動回路16Aに電力回収回路50を接続することにより、駆動電圧Vaのほぼ100%を電力回収することが可能となり、消費電力の低減において有利となる。この例では、第1の直列回路52を設けて、コンデンサCの両端電圧を所定のタイミングで電圧Va1に強制的に振らせるようにしたので、インダクタ58での電力消費に伴う駆動電圧の減衰を回避することができる。もちろん、この光源10Aの使用開始時点においてコンデンサCの両端電圧を電圧Va1にしておき、その後、第2のスイッチング回路SW2でのON/OFF動作のみで、コンデンサCでの充放電とバッファコンデンサCfでの充放電を交互に行わせるようにしてもよい。
ところで、上述した第1の実施の形態に係る光源10Aは、全ての電子放出素子12Aの上部電極18と下部電極20間に駆動電圧Vaを印加することによって、発光部14Aから透明板30の全面を通じて発光させるようにしたが、その他、図16に示す第3の変形例に係る光源10Acのように、発光部14Aを2つのグループ(第1及び第2のグループG1及びG2)に分け、第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Aの発光時に、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Aにおいて第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Aの電力を回収し、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Aの発光時に、第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Aにおいて第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Aの電力を回収するようにしてもよい。
この場合、第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Aを代表的にコンデンサC1と示し、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Aを代表的にコンデンサC2と示したとき、駆動回路16Aとしては、図14において括弧書きに示すように、コンデンサCに代えてコンデンサC1とし、バッファコンデンサCfに代えてコンデンサC2とすればよい。
ここで、この駆動回路16Aの動作を図17の波形図を参照しながら説明する。先ず、点灯期間Tsの開始前においては、予め第1のスイッチング回路SW1がON、第2のスイッチング回路SW2がOFFとされており、コンデンサC1の両端電圧は正電源56の電圧Va1とほぼ同じ電圧となっている。
そして、点灯期間Tsに入った後における期間T2の開始時点t1において、駆動電圧生成回路46の制御によって第1のスイッチング回路SW1がOFFとされ、第2のスイッチング回路SW2がONとされる。これによって、コンデンサC1では、インダクタ58とコンデンサC1との正弦波振動が開始され、コンデンサC1における両端電圧の共振的な減衰が開始する。このとき、コンデンサC1に蓄積されていた電荷がコンデンサC2に回収されることになる。
すなわち、コンデンサC2から見れば、前記時点t1において、インダクタ58とコンデンサC2との正弦波振動が開始され、コンデンサC2における両端電圧の共振的な増幅が開始する。このとき、コンデンサC1に蓄積されていた電荷がコンデンサC2に充電される。
次の時点t2、すなわち、コンデンサC1の振動波形(電圧波形)が最も低レベル(電圧:−Va1=Va2)となった時点において、駆動電圧生成回路46の制御によって第2のスイッチング回路SW2がOFFとされ、コンデンサC1とコンデンサC2の系は高インピーダンス状態となる。従って、コンデンサC1では、この時点t2以降、期間T2の終了時点t3まで電圧Va2が維持され、コンデンサC2では、電圧Va1が維持される。
特に、時点t1から時点t2にかけて、コンデンサC1の両端電圧が電圧Va1から電圧Va2に急速に低下することから、図16に示すように、第1のグループG1に属する各電子放出素子12Aのエミッタ部22から2次電子の放出が行われる。この電子放出によって、透明板30のうち、第1のグループG1に対応する領域を通じて発光が行われる。
この期間T2は、コンデンサC1での電子放出に関わる期間であるが、コンデンサC2から見た場合は、電子放出までの準備期間T1となる。従って、期間T1=期間T2として設定することが好ましい。
その後、期間T2の終了時点t3において、駆動電圧生成回路46の制御によって第2のスイッチング回路SW2がONとされる。これによって、インダクタ62とコンデンサC1との正弦波振動が開始され、コンデンサC1における両端電圧の共振的な増幅が開始する。このとき、バッファコンデンサCfに蓄積されていた電荷がコンデンサCに充電される。
すなわち、コンデンサC2から見れば、前記時点t3において、インダクタ58とコンデンサC2との正弦波振動が開始され、コンデンサC2における両端電圧の共振的な減衰が開始する。このとき、コンデンサC2に蓄積されていた電荷がコンデンサC1に回収されることになる。
次の時点t4、すなわち、コンデンサC1の振動波形(電圧波形)が最も高レベル(電圧:Va1)となった時点において、駆動電圧生成回路46の制御によって第2のスイッチング回路SW2がOFFとされ、第1のスイッチング回路SW1がONとされる。従って、コンデンサC1では、この時点t4以降、次の期間T2の開始時点t2まで電圧Va1が維持され、コンデンサC2では、電圧Va2が維持される。
また、時点t3から時点t4にかけて、コンデンサC2の両端電圧が電圧Va1から電圧Va2に急速に低下することから、図16に示すように、第2のグループG2に属する各電子放出素子12Aのエミッタ部22から2次電子の放出が行われる。この電子放出によって、透明板30のうち、第2のグループG2に対応する領域を通じて発光が行われる。
時点t3から期間T1となる。この期間T1は、コンデンサC1では次の電子放出のための準備期間となるが、コンデンサC2から見た場合は、電子放出に関わる期間T2となる。
そして、期間T2と期間T1の連続期間(1ステップ)が点灯期間Tsにおいて繰り返されることで、第1のグループG1における各電子放出素子12Aでの電子放出と、第2のグループG2における各電子放出素子12Aでの電子放出が交互に行われることになる。従って、期間T1又は期間T2の周期を適宜設定することで、見かけ上、点灯期間Tsにわたって透明板30の全面を通じての発光が維持された状態となる。もちろん、期間T1又は期間T2を意図的に長く設定して、第1のグループG1での発光と第2のグループG2での発光の区別を人間の目でも認識できるようにしてもよい。
このように、第3の変形例に係る光源10Acにおいては、発光動作を行っているグループ以外のグループに含まれる電子放出素子12Aが、電力回収のための、いわゆるバッファコンデンサCfとして兼用することから、別途バッファコンデンサCfを設置する必要がなく、実装面積の縮小化、消費電力の低減を有効に図ることができる。また、第1のグループG1の電子放出素子12Aと、第2のグループG2の電子放出素子12Aを、ある単位で分散させて配置することにより、常に見かけ上、均一な面発光を得ることもできる。
上述の例では、各電子放出素子12Aから一定量の電子を放出させる場合について説明したが、その他、図18に示す変形例に係る駆動回路16Aaのように、前記タイミング発生回路44、駆動電圧生成回路46に加えて変調回路60を接続するようにしてもよい。変調回路60は、各電子放出素子12Aの電子放出量を、外部に設置された調光ボリューム(図示せず)からの調光信号Shに応じて制御する回路である。
変調回路60での変調方式としては、4つの変調方式がある。第1の変調方式は、図19Aに示すように、調光信号Shのレベル(電圧レベル等)に基づいて、図19Bや図19Cに示すように、電圧Va2のパルス幅を変調する方式である。この場合、図19Bに示すように、期間T2自体を変調するようにしてもよいし、図19Cに示すように、期間T2は一定で、電圧Va2の印加期間τaを変調するようにしてもよい。図19Cの変調方式は、図20に示すように、電圧Va2のパルス幅と輝度とが線形関係になることを利用したものである。例えばパルス幅を0から約600μsecに振ることによって、輝度を0〜約1020(cd/m2)にかけて変化させることができる。しかも、電圧Va2のパルス幅を制御すればよいため、安価なデジタル制御で高精細度の階調表現を実現させることができる。
第2の変調方式は、コレクタ電圧Vcを制御する方法であり、図21に示すように、コレクタ電圧Vcと輝度とが線形関係であることを利用するものである。コレクタ電圧Vcを4kVから7kVに振ることによって、輝度を0〜600(cd/m2)にかけて変化させることができる。
第3の変調方式は、駆動電圧Vaの電圧Va2(電圧レベル)を制御する方法であり、図22に示すように、電圧Va2と輝度とが線形関係であることを利用するものである。例えば電圧Va2を約118Vから188Vに振ることによって、輝度を0〜1600(cd/m2)にかけて変化させることができる。
第4の変調方式は、駆動電圧Vaの電圧Va1を制御する方法であるが、図23に示すように、電圧Va1と輝度とが非線形関係であることから、制御が難しく、しかも、電圧Va1に対するアナログ電圧制御が必要であるため、回路の工夫が必要となる。
従って、第1〜第4の変調方式のうち、電圧Va2のパルス幅を変調する第1の変調方式を採用することが好ましい。
第1の実施の形態に係る光源10Aは、図1に示すように、複数の電子放出素子12Aに対して1つのコレクタ電極32を配置し、該コレクタ電極32に抵抗R2を介してバイアス電圧Vcを印加するようにしたが、その他、図24に示す第4の変形例の係る光源10Adのように、例えば光源10Adの列数と同じ数だけのコレクタ電極32(1)、32(2)、・・・、32(N)を配列し、各コレクタ電極32(1)、32(2)、・・・、32(N)に対してそれぞれ抵抗Rc1、Rc2、・・・、RcNを接続するようにしてもよい。この場合、製造段階でのばらつき、例えば各電子放出素子12A毎の輝度ばらつきを、コレクタ電極32(1)、32(2)、・・・、32(N)に接続された抵抗Rc1、Rc2、・・・、RcNを通じて調整することができる。
以下に、輝度ばらつきの調整について図25〜図28を参照しながら説明する。
従来のばらつき低減方法は、例えば文献「電子技術2000−7、p38〜p41:フィールドエミッションディスプレイの最新技術動向」に記載されているように、エミッタに電流抑制用の抵抗を接続することでばらつきを低減するようにしている。
ただ、この方法は、エミッタに流れる電流とゲート電圧との関係となっており、輝度ばらつきを低減するための最適な抵抗値を得るまでに何度もシミュレーションを行わなければならない。
そこで、本実施の形態では、実際に放出電子が到達するコレクタ電極32と上部電極18間の電界を調整する方法を採用した。これにより、輝度ばらつきの調整を直接的に行うことができ、迅速に、かつ、精度よく輝度ばらつきを低減することができる。
具体的に、本実施の形態に係る輝度ばらつきの低減方法を説明する。図25に示すように、上部電極18と、該上部電極18と下部電極20間に負電圧Vk(例えば上述した電圧Va2と同じ電圧)を印加するための負電源70との間に接続された抵抗Rkと、コレクタ電極32とバイアス電源36(バイアス電圧Vc)との間に接続された抵抗Rcとを調整する。図25において、抵抗Rkcは、上部電極18とコレクタ電極32間のギャップによる抵抗を示し、電圧Vkcは、ギャップ間の電圧を示す。また、Cは上部電極18と下部電極20間の容量、電圧Vakは上部電極18と下部電極20間の電圧を示す。
ここで、2つの電子放出素子12A(1)及び12A(2)を想定し、これら2つの電子放出素子12A(1)及び12A(2)の出力特性(Vkc−Ikc特性)が図27に示すようにばらつきがあったとき、前記抵抗Rk及びRcが存在しない場合、これら2つの電子放出素子12A(1)及び12A(2)における電流変動はΔI1となる。
しかし、前記抵抗Rk及びRcを接続することで、前記電流変動ΔI1を、負荷線80上での電流変動ΔI2まで小さくすることができる。
負荷線80は以下のようにして導くことができる。すなわち、図25に示す構成図に基づいて上部電極18とコレクタ電極32との間に流れる電流Ikcを主体にした等価回路を示すと図26のようになる。
この等価回路から、以下の式が導かれる。
Ikc=(Vk+Vc)/(Rc+Rkc+Rk)
ここで、Rkc=0のとき、Ikcが最大となるから、図27の縦軸上、
Ikc=(Vk+Vc)/(Rc+Rk)
を示すポイントPaと、横軸上、Vkc=Vk+Vcを示すポイントPbとを結ぶ線が負荷線80となる。
そして、Rc+Rkが大きいほど、電流Ikcは小さくなるが、電子放出素子12A(1)及び12A(2)間の輝度ばらつきは小さくなる。
また、上部電極18とコレクタ電極32間に図示しない制御電極を設置した場合、コレクタ電極32に流れるコレクタ電流Icと制御電極に流れる制御電流Igを主体にした等価回路を示すと図28のようになる。このとき、制御電極と、該制御電極と下部電極20間に負電圧Vgを印加するための負電源72との間に抵抗Rgを接続する。なお、図28の抵抗Rkgは、上部電極18と制御電極間のギャップによる抵抗を示す。また、この例では、コレクタ電流Icはカソード電流Ikの60%とし、制御電流Igはカソード電流Ikの40%としている。
図28の等価回路から、以下の式が導かれる。
Ig=(Vg+Vk)/(Rg+Rkg+Rk)
この式に基づいて負荷線を引き、輝度ばらつきが最小となる電圧Vgと抵抗Rgを決定すればよい。電圧Vg及び抵抗Rgが決定することによって、制御電流Ig並びにカソード電流Ikが決定し、必然的にコレクタ電流Icも決定する。
上述の第1の実施の形態に係る光源10Aでは、全ての電子放出素子12Aを含む1つの発光部14Aを有し、該発光部14Aに対して1つの駆動回路16Aを接続するようにしたが、その他、図29の第5の変形例に係る光源10Aeのように、2以上の面光源部Z1〜Z6を有するようにしてもよい。図29の例では、6つの面光源部Z1〜Z6を具備させた場合を示す。各面光源部Z1〜Z6は、複数の電子放出素子12Aが二次元的に配列されて構成され、それぞれ独立に駆動回路16Aが接続されている。
これによって、面光源部Z1〜Z6単位に発光/消光を制御することができ、段階的な調光(デジタル的な調光)を行うことができる。特に、各面光源部Z1〜Z6にそれぞれ独立に接続される駆動回路16Aに変調回路60(図18参照)を設けることによって、各面光源部Z1〜Z6の発光分布をそれぞれ独立に制御することができる。つまり、デジタル的な調光に加えて、アナログ的な調光を実現でき、きめ細かな調光を行うことができる。
図29の例では、各面光源部Z1〜Z6の面積をそれぞれ同じにした場合を示したが、各面光源部Z1〜Z6の面積を異ならせるようにしてもよい。例えば図30に示す第6の変形例に係る光源10Afでは、第1及び第6の面光源部Z1及びZ6をそれぞれ横長で、かつ、長辺の長い長方形状とし、第2及び第5の面光源部をそれぞれ縦長で、かつ、長辺が第1及び第6の面光源部Z1及びZ6よりも短い長方形状とし、第3及び第4の面光源部をそれぞれ横長で、かつ、長辺が第1及び第6の面光源部Z1及びZ6よりも短い長方形状とした場合を示す。
また、図31に示す第7の変形例に係る光源10Agのように、各面光源部Z1〜Z6に含まれる複数の電子放出素子12Aをそれぞれ2つのグループ(第1及び第2のグループG1及びG2)に分け、各面光源部Z1〜Z6において、第1のグループに含まれる電子放出素子12Aの発光時に、該第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Aの電力を、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Aに回収し、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Aの発光時に、該第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Aの電力を、第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Aに回収するようにしてもよい。
あるいは、図32に示す第8の変形例に係る光源10Ahのように、6つの面光源部Z1〜Z6を2つのグループ(第1及び第2のグループG1及びG2)に分け、第1のグループG1に関する面光源部Z1〜Z3の各電子放出素子12Aの発光時に、これら電子放出素子12Aの電力を、第2のグループG2に関する面光源部Z4〜Z6の電子放出素子12Aに回収し、第2のグループG2に関する面光源部Z4〜Z6の各電子放出素子12Aの発光時に、これら電子放出素子12Aの電力を、第1のグループG1に関する面光源部Z1〜Z3の電子放出素子12Aに回収するようにしてもよい。
上述した第5〜第8の変形例に係る光源10Ae〜10Ahでは、発光部14Aを6つの面光源部Z1〜Z6に分離した例を示したが、面光源部の数は任意に設定することができる。
ところで、第1の実施の形態に係る光源10Aは、図1に示すように、1つのエミッタ部22の表面にそれぞれ独立に複数の上部電極18を形成し、エミッタ部22の裏面にそれぞれ独立に複数の下部電極20を形成して複数の電子放出素子12Aを形成するようにしたが、その他、以下に示すような他の実施の形態が考えられる。なお、図33〜図37において、コレクタ電極32や蛍光体34の表記を省略する。
すなわち、図33の第9の変形例に係る光源10Aiは、1つのエミッタ部22の表面にそれぞれ独立に複数の上部電極18を形成し、エミッタ部22の裏面に1つの下部電極20(共通の下部電極)を形成して複数の電子放出素子12Aを形成した場合を示す。
図34の第10の変形例に係る光源10Ajは、1つのエミッタ部22の表面に1つの極薄(〜10nm)の上部電極18(共通の上部電極)を形成し、エミッタ部22の裏面にそれぞれ独立に複数の下部電極20を形成して複数の電子放出素子12Aを形成した場合を示す。
図35の第11の変形例に係る光源10Akは、基板90上に複数の下部電極20をそれぞれ独立に形成し、これら下部電極20を覆うように1つのエミッタ部22を形成し、更に、エミッタ部22上に複数の上部電極18をそれぞれ独立して形成して複数の電子放出素子12Aを形成した場合を示す。各上部電極18は、それぞれ対応する下部電極20上にエミッタ部22を間に挟んで形成される。
図36の第12の変形例に係る光源10Alは、基板90上に1つの下部電極20を形成し、該下部電極20を覆うように1つのエミッタ部22を形成し、更に、エミッタ部22上に複数の上部電極18をそれぞれ独立に形成して複数の電子放出素子12Aを形成した場合を示す。
図37の第13の変形例に係る光源10Amは、基板90上に複数の下部電極20をそれぞれ独立に形成し、これら複数の下部電極20を覆うように1つのエミッタ部22を形成し、更に、エミッタ部22上に1つの極薄の上部電極18を形成して複数の電子放出素子12Aを形成した場合を示す。
次に、第2の実施の形態に係る光源10Bについて図38〜図77を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
第2の実施の形態に係る光源10Bの電子放出素子12Bは、図38に示すように、上述したエミッタ部22、上部電極18及び下部電極20並びに上部電極18と下部電極20との間に、駆動電圧Vaを印加するパルス発生源100とを有する。
上部電極18は、エミッタ部22が露出される複数の貫通部102を有する。特に、エミッタ部22の表面は、誘電体の粒界による凹凸104が形成されており、上部電極18の貫通部102は、前記誘電体の粒界における凹部106に対応した部分に形成されている。図38の例では、1つの凹部106に対応して1つの貫通部102が形成される場合を示しているが、複数の凹部106に対応して1つの貫通部102が形成される場合もある。エミッタ部22を構成する誘電体の粒径は、0.1μm〜10μmが好ましく、さらに好ましくは2μm〜7μmである。図38の例では、誘電体の粒径を3μmとしている。
さらに、この第2の実施の形態では、図39に示すように、上部電極18のうち、貫通部102の周部108におけるエミッタ部22と対向する面108aが、エミッタ部22から離間している。つまり、上部電極18のうち、貫通部102の周部108におけるエミッタ部22と対向する面108aとエミッタ部22との間にギャップ110が形成され、上部電極18における貫通部102の周部108が庇状(フランジ状)に形成された形となっている。従って、以下の説明では、「上部電極18の貫通部102の周部108」を「上部電極18の庇部108」と記す。なお、図38、図39、図41A、図41B、図42A、図42B、図44、図46〜図49、図54の例では、誘電体の粒界の凹凸104の凸部112の断面を代表的に半円状で示してあるが、この形状に限るものではない。
また、この第2の実施の形態では、上部電極18の厚みtを、0.01μm≦t≦10μmとし、エミッタ部22の上面、すなわち、誘電体の粒界における凸部112の表面(凹部106の内壁面でもある)と、上部電極18の庇部108の下面108aとのなす角の最大角度θを、1°≦θ≦60°としている。また、エミッタ部22の誘電体の粒界における凸部112の表面(凹部106の内壁面)と、上部電極18の庇部108の下面108aとの間の鉛直方向に沿った最大間隔dを、0μm<d≦10μmとしている。
さらに、この第2の実施の形態では、貫通部102の形状、特に、図40に示すように、上面から見た形状は孔114の形状であって、例えば円形状、楕円形状、トラック状のように、曲線部分を含むものや、四角形や三角形のように多角形状のものがある。図40の例では、孔114の形状として円形状の場合を示している。
この場合、孔114の平均径は、0.1μm以上、10μm以下としている。この平均径は、孔114の中心を通るそれぞれ異なる複数の線分の長さの平均を示す。
なお、エミッタ部22の構成材料は、上述した第1の実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
エミッタ部22を形成する方法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法、エアロゾルデポジション法等の各種厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種薄膜形成法を用いることができる。特に、圧電/電歪材料の粉末化したものを、エミッタ部22として形成し、これに低融点のガラスやゾル粒子を含浸する方法をとることが好ましい。この手法により、700℃あるいは600℃以下といった低温での膜形成が可能となる。
上部電極18は、焼成後に薄い膜が得られる有機金属ペーストが用いられる。例えば白金レジネートペースト等の材料を用いることが好ましい。また、分極反転疲労を抑制する酸化物電極、例えば、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化イリジウム(IrO2)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、La1-xSrxCoO3(例えばx=0.3や0.5)、La1-xCaxMnO3(例えばx=0.2)、La1-xCaxMn1-yCoyO3(例えばx=0.2、y=0.05)、もしくはこれらを例えば白金レジネートペーストに混ぜたものが好ましい。
また、上部電極18として、図41A及び図41Bに示すように、複数の鱗片状の形状を有する物質116(例えば黒鉛)の集合体118や、図42A及び図42Bに示すように、鱗片状の形状を有する物質116を含んだ導電性の物質120の集合体122も好ましく用いられる。この場合、前記集合体118や集合体122でエミッタ部22の表面を完全に覆うのではなく、エミッタ部22が一部露出する貫通部102を複数設けて、エミッタ部22のうち、貫通部102を臨む部分を電子放出領域とする。
上部電極18は、上記材料を用いて、スクリーン印刷、スプレー、コーティング、ディッピング、塗布、電気泳動法等の各種の厚膜形成法や、スパッタリング法、イオンビーム法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種の薄膜形成法による通常の膜形成法に従って形成することができ、好適には、前者の厚膜形成法によって形成するとよい。
一方、下部電極20は、導電性を有する物質、例えば金属が用いられ、白金、モリブデン、タングステン等によって構成される。また、高温酸化雰囲気に対して耐性を有する導体、例えば金属単体、合金、絶縁性セラミックスと金属単体との混合物、絶縁性セラミックスと合金との混合物等によって構成され、好適には、白金、イリジウム、パラジウム、ロジウム、モリブデン等の高融点貴金属や、銀−パラジウム、銀−白金、白金−パラジウム等の合金を主成分とするものや、白金とセラミック材料とのサーメット材料によって構成される。さらに好適には、白金のみ又は白金系の合金を主成分とする材料によって構成される。
また、下部電極20として、カーボン、グラファイト系の材料を用いてもよい。なお、電極材料中に添加されるセラミック材料の割合は、5〜30体積%程度が好適である。もちろん、上述した上部電極18と同様の材料を用いるようにしてもよい。
下部電極20は、好適には上記厚膜形成法によって形成する。下部電極20の厚さは、20μm以下であるとよく、好適には5μm以下であるとよい。
エミッタ部22、上部電極18及び下部電極20をそれぞれ形成するたびに熱処理(焼成処理)することで、一体構造にすることができる。
エミッタ部22、上部電極18及び下部電極20を一体化させるための焼成処理に係る温度としては、500〜1400℃の範囲、好適には、1000〜1400℃の範囲とするとよい。さらに、膜状のエミッタ部22を熱処理する場合、高温時にエミッタ部22の組成が不安定にならないように、エミッタ部22の蒸発源と共に雰囲気制御を行いながら焼成処理を行うことが好ましい。
焼成処理を行うことで、特に、上部電極18となる膜が例えば厚み10μmから厚み0.1μmに収縮すると同時に複数の孔等が形成されていき、結果的に、図38に示すように、上部電極18に複数の貫通部102が形成され、貫通部102の周部108が庇状に形成された構成となる。もちろん、上部電極18となる膜に対して事前(焼成前)にエッチング(ウェットエッチング、ドライエッチング)やリフトオフ等によってパターンニングを施した後、焼成するようにしてもよい。この場合、後述するように、貫通部102として切欠き形状やスリット形状を容易に形成することができる。
なお、エミッタ部22を適切な部材によって被覆し、該エミッタ部22の表面が焼成雰囲気に直接露出しないようにして焼成する方法を採用してもよい。
次に、電子放出素子12Bの電子放出原理について説明する。先ず、上部電極18と下部電極20との間に駆動電圧Vaが印加される。この駆動電圧Vaは、例えば、パルス電圧あるいは交流電圧のように、時間の経過に伴って、基準電圧(例えば0V)よりも高い又は低い電圧レベルから基準電圧よりも低い又は高い電圧レベルに急激に変化する電圧として定義される。
また、エミッタ部22の上面と上部電極18と該電子放出素子12Bの周囲の媒質(例えば、真空)との接触箇所においてトリプルジャンクションが形成されている。ここで、トリプルジャンクションとは、上部電極18とエミッタ部22と真空との接触により形成される電界集中部として定義される。なお、前記トリプルジャンクションには、上部電極18とエミッタ部22と真空が1つのポイントとして存在する3重点も含まれる。雰囲気中の真空度は、102〜10-6Paが好ましく、より好ましくは10-3〜10-5Paである。
第2の実施の形態では、トリプルジャンクションは、上部電極18の庇部108や上部電極18の周縁部に形成されることになる。従って、上部電極18と下部電極20との間に上述のような駆動電圧Vaが印加されると、上記したトリプルジャンクションにおいて電界集中が発生する。
ここで、電子放出素子12Bの第1の電子放出方式について図43及び図44を参照しながら説明する。図43の第1の出力期間T1(第1段階)において、上部電極18に基準電圧(この場合、0V)よりも低い電圧V2が印加され、下部電極20に基準電圧よりも高い電圧V1が印加される。この第1の出力期間T1では、上記したトリプルジャンクションにおいて電界集中が発生し、上部電極18からエミッタ部22に向けて電子放出が行われ、例えばエミッタ部22のうち、上部電極18の貫通部102から露出する部分や上部電極18の周縁部近傍の部分に電子が蓄積される。すなわち、エミッタ部22が帯電することになる。このとき、上部電極18が電子供給源として機能する。
次の第2の出力期間T2(第2段階)において、駆動電圧Vaの電圧レベルが急減に変化、すなわち、上部電極18に基準電圧よりも高い電圧V1が印加され、下部電極20に基準電圧よりも低い電圧V2が印加されると、今度は、上部電極18の貫通部102に対応した部分や上部電極18の周縁部近傍に帯電した電子は、逆方向へ分極反転したエミッタ部22の双極子(エミッタ部22の表面に負極性が現れる)により、エミッタ部22から追い出され、図44に示すように、エミッタ部22のうち、前記電子の蓄積されていた部分から、貫通部102を通じて電子が放出される。もちろん、上部電極18の外周部近傍からも電子が放出される。
次に、第2の電子放出方式について説明する。先ず、図45の第1の出力期間T1(第1段階)において、上部電極18に基準電圧よりも高い電圧V3が印加され、下部電極20に基準電圧よりも低い電圧V4が印加される。この第1の出力期間T1では、電子放出のための準備(例えばエミッタ部22の一方向への分極等)が行われる。次の第2の出力期間T2(第2段階)において、駆動電圧Vaの電圧レベルが急減に変化、すなわち、上部電極18に基準電圧よりも低い電圧V4が印加され、下部電極20に基準電圧よりも高い電圧V3が印加されると、今度は、上記したトリプルジャンクションにおいて電界集中が発生し、この電界集中によって上部電極18から1次電子が放出され、エミッタ部22のうち、貫通部102から露出する部分並びに上部電極18の外周部近傍に衝突することとなる。これによって、図46に示すように、1次電子が衝突した部分から2次電子(1次電子の反射電子を含む)が放出される。すなわち、第2の出力期間T2の初期段階において、前記貫通部102並びに上部電極18の外周部近傍から2次電子が放出されることとなる。
そして、この電子放出素子12Bにおいては、上部電極18に複数の貫通部102を形成したことから、各貫通部102並びに上部電極18の外周部近傍から均等に電子が放出され、全体の電子放出特性のばらつきが低減し、電子放出の制御が容易になると共に、電子放出効率が高くなる。
また、第2の実施の形態では、上部電極18の庇部108とエミッタ部22との間にギャップ110が形成された形となることから、駆動電圧Vaを印加した際に、該ギャップ110の部分において電界集中が発生し易くなる。これは、電子放出の高効率化につながり、駆動電圧の低電圧化(低い電圧レベルでの電子放出)を実現させることができる。
上述したように、第2の実施の形態では、上部電極18は、貫通部102の周部において庇部108が形成されることから、上述したギャップ110の部分での電界集中が大きくなることとも相俟って、上部電極18の庇部108から電子が放出され易くなる。これは、電子放出の高出力、高効率化につながり、駆動電圧Vaの低電圧化を実現させることができる。これにより、例えば電子放出素子12Bを多数並べて構成された第2の実施の形態に係る光源10Bの高輝度化を図ることができる。
また、上述した第1の電子放出方式(エミッタ部22に蓄積された電子を放出させる方式)や第2の電子放出方式(上部電極18からの1次電子をエミッタ部22に衝突させて2次電子を放出させる方式)のいずれにしても、上部電極18の庇部108がゲート電極(制御電極、フォーカス電子レンズ等)として機能するため、放出電子の直進性を向上させることができる。これは、電子放出素子12Bを多数並べて例えばディスプレイの電子源として構成した場合に、クロストークを低減する上で有利となる。
このように、第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、高い電界集中を容易に発生させることができ、しかも、電子放出箇所を多くすることができ、電子放出について高出力、高効率を図ることができ、低電圧駆動(低消費電力)も可能となる。
特に、第2の実施の形態では、エミッタ部22の少なくとも上面は、誘電体の粒界による凹凸104が形成され、上部電極18は、誘電体の粒界における凹部106に対応した部分に貫通部102が形成されるようにしたので、上部電極18の庇部108を簡単に実現させることができる。
また、エミッタ部22の上面、すなわち、誘電体の粒界における凸部112の表面(凹部106の内壁面)と、上部電極18の庇部108の下面108aとのなす角の最大角度θを、1°≦θ≦60°とし、エミッタ部22の誘電体の粒界における凸部112の表面(凹部106の内壁面)と、上部電極18の庇部108の下面108aとの間の鉛直方向に沿った最大間隔dを、0μm<d≦10μmとしたので、これらの構成により、ギャップ110の部分での電界集中の度合いをより大きくすることができ、電子放出についての高出力、高効率、並びに駆動電圧の低電圧化を効率よく図ることができる。
また、この第2の実施の形態では、貫通部102を孔114の形状としている。図39に示すように、エミッタ部22のうち、上部電極18と下部電極20(図38参照)間に印加される駆動電圧Vaに応じて分極が反転あるいは変化する部分は、上部電極18が形成されている直下の部分(第1の部分)124と、貫通部102の内周から貫通部102の内方に向かう領域に対応した部分(第2の部分)126であり、特に、第2の部分126は、駆動電圧Vaのレベルや電界集中の度合いによって変化することになる。従って、この第2の実施の形態では、孔114の平均径を、0.1μm以上、10μm以下としている。この範囲であれば、貫通部102を通じて放出される電子の放出分布にばらつきがほとんどなくなり、効率よく電子を放出することができる。
なお、孔114の平均径が0.1μm未満の場合、電子を蓄積する領域が狭くなり、放出される電子の量が少なくなる。もちろん、孔114を多数設けることも考えられるが、困難性を伴い、製造コストが高くなるという懸念がある。孔114の平均径が10μmを超えると、エミッタ部22の前記貫通部102から露出した部分のうち、電子放出に寄与する部分(第2の部分)126の割合(占有率)が小さくなり、電子の放出効率が低下する。
上部電極18の庇部108の断面形状としては、図39に示すように、上面及び下面とも水平に延びる形状としてもよいし、図47に示すように、庇部108の下面108aがほぼ水平であって、庇部108の上端部が上方に盛り上がっていてもよい。また、図48に示すように、庇部108の下面108aが、貫通部102の中心に向かうに従って徐々に上方に傾斜していてもよいし、図49に示すように、庇部108の下面108aが、貫通部102の中心に向かうに従って徐々に下方に傾斜していてもよい。図47の例は、ゲート電極としての機能を高めることが可能であり、図49の例では、ギャップ110の部分が狭くなることから、より電界集中を発生し易くなり、電子放出の高出力、高効率を向上させることができる。
また、この第2の実施の形態においては、図50に示すように、電気的な動作において、上部電極18と下部電極20間に、エミッタ部22によるコンデンサC1と、各ギャップ110による複数のコンデンサCaの集合体とが形成された形となる。すなわち、各ギャップ110による複数のコンデンサCaは、互いに並列に接続された1つのコンデンサC2として構成され、等価回路的には、集合体によるコンデンサC2にエミッタ部22によるコンデンサC1が直列接続された形となる。
実際には、集合体によるコンデンサC2にエミッタ部22によるコンデンサC1がそのまま直列接続されることはなく、上部電極18への貫通部102の形成個数や全体の形成面積等に応じて、直列接続されるコンデンサ成分が変化する。
ここで、図51に示すように、例えばエミッタ部22によるコンデンサC1のうち、その25%が集合体によるコンデンサC2と直列接続された場合を想定して、容量計算を行ってみる。先ず、ギャップ110の部分は真空であることから比誘電率は1となる。そして、ギャップ110の最大間隔dを0.1μm、1つのギャップ110の部分の面積S=1μm×1μmとし、ギャップ110の数を10,000個とする。また、エミッタ部22の比誘電率を2000、エミッタ部22の厚みを20μm、上部電極18と下部電極20の対向面積を200μm×200μmとすると、集合体によるコンデンサC2の容量値は0.885pF、エミッタ部22によるコンデンサC1の容量値は35.4pFとなる。そして、エミッタ部22によるコンデンサC1のうち、集合体によるコンデンサC2と直列接続されている部分を全体の25%としたとき、該直列接続された部分における容量値(集合体によるコンデンサC2の容量値を含めた容量値)は0.805pFであり、残りの容量値は26.6pFとなる。
これら直列接続された部分と残りの部分は並列接続されているから、全体の容量値は、27.5pFとなる。この容量値は、エミッタ部22によるコンデンサC1の容量値35.4pFの78%である。つまり、全体の容量値は、エミッタ部22によるコンデンサC1の容量値よりも小さくなる。
このように、複数のギャップ110によるコンデンサCaの集合体については、ギャップ110によるコンデンサCaの容量値が相対的に小さいものとなり、エミッタ部22によるコンデンサC1との分圧から、印加電圧Vaのほとんどはギャップ110に印加されることになり、各ギャップ110において、電子放出の高出力化が実現される。
また、集合体によるコンデンサC2は、エミッタ部22によるコンデンサC1に直列接続された構造となることから、全体の容量値は、エミッタ部22によるコンデンサC1の容量値よりも小さくなる。このことから、電子放出は高出力であり、全体の消費電力は小さくなるという好ましい特性を得ることができる。
次に、上述した第2の実施の形態に係る光源10Bの電子放出素子12Bにおける3つの変形例について図52〜図54を参照しながら説明する。
先ず、第1の変形例に係る電子放出素子12Baは、図52に示すように、貫通部102の形状、特に、上面から見た形状が切欠き128の形状である点で異なる。切欠き128の形状としては、図52に示すように、多数の切欠き128が連続して形成されたくし歯状の切欠き130が好ましい。この場合、貫通部102を通じて放出される電子の放出分布のばらつきを低減し、効率よく電子を放出する上で有利となる。特に、切欠き128の平均幅を、0.1μm以上、10μm以下とすることが好ましい。この平均幅は、切欠き128の中心線を直交するそれぞれ異なる複数の線分の長さの平均を示す。
第2の変形例に係る電子放出素子12Bbは、図53に示すように、貫通部102の形状、特に、上面から見た形状がスリット132である点で異なる。ここで、スリット132とは、長軸方向(長手方向)の長さが短軸方向(短手方向)の長さの10倍以上であるものをいう。従って、長軸方向(長手方向)の長さが短軸方向(短手方向)の長さの10倍未満のものは孔114(図40参照)の形状として定義することができる。また、スリット132としては、複数の孔114が連通してつながったものも含まれる。この場合、スリット132の平均幅は、0.1μm以上、10μm以下とすることが好ましい。貫通部102を通じて放出される電子の放出分布のばらつきを低減し、効率よく電子を放出する上で有利になるからである。この平均幅は、スリット132の中心線を直交するそれぞれ異なる複数の線分の長さの平均を示す。
第3の変形例に係る電子放出素子12Bcは、図54に示すように、エミッタ部22の上面のうち、貫通部102と対応する部分、例えば誘電体の粒界の凹部106にフローティング電極134が存在している点で異なる。この場合、フローティング電極134も電子供給源となることから、電子の放出段階(上述した第1の電子放出方式における第2の出力期間T2(図43参照))において、多数の電子を貫通部102を通じて外部に放出させることができる。この場合、フローティング電極134からの電子放出は、フローティング電極134/誘電体/真空のトリプルジャンクションにおける電界集中によるものが考えられる。
ここで、第2の実施の形態に係る光源10Bの電子放出素子12Bの特性、特に、電圧−電荷量特性(電圧−分極量特性)について説明する。
この電子放出素子12Bは、真空中において、図55の特性に示すように、基準電圧=0(V)を基準とした非対称のヒステリシス曲線を描く。
この特性について説明すると、先ず、エミッタ部22のうち、電子が放出される部分を電子放出部と定義したとき、基準電圧が印加されるポイントp1(初期状態)では、前記電子放出部に電子がほとんど蓄積されていない状態となっている。その後、負電圧を印加すると、前記電子放出部において、エミッタ部22が分極反転した双極子の正電荷の量が増し、それに伴って、第1段階における上部電極18から電子放出部へ向けた電子放出が起きて、電子が蓄積されていくこととなる。負電圧のレベルを負方向に大きくしていくと、前記電子放出部への電子の蓄積に伴って、ある負電圧のポイントp2において正電荷の量と負電荷の量が平衡な状態となり、負電圧のレベルを負方向に大きくしていくと、さらに電子の蓄積量が増加し、これに伴って、負電荷の量が正電荷の量よりも多い状態となる。ポイントp3において電子の蓄積飽和状態となる。ここでの負電荷の量は、蓄積したまま残っている電子の量と、エミッタ部22が分極反転した双極子の負電荷の量の合計である。
その後、負電圧のレベルを小さくしていき、さらに、基準電圧を超えて正電圧を印加していくと、ポイントp4において、第2段階における電子の放出が開始される。この正電圧を正方向に大きくすれば、電子の放出量が増加し、ポイントp5では、正電荷の量と負電荷の量が平衡な状態となる。そして、ポイントp6では、蓄積されていた電子がほとんど放出され、正電荷の量と負電荷の量の差が初期状態とほぼ同じになる。すなわち、電子の蓄積はほとんどなくなり、エミッタ部22が分極した双極子の負電荷のみが電子放出部に現れている状態である。
そして、この特性の特徴ある部分は、以下の点である。
(1)正電荷の量と負電荷の量が平衡な状態であるポイントp2における負電圧をV1、ポイントp5における正電圧をV2としたとき、
|V1|<|V2|
である。
(2)より詳しくは、1.5×|V1|<|V2|である。
(3)ポイントp2における正電荷の量と負電荷の量の変化の割合をΔQ1/ΔV1、ポイントp5における正電荷の量と負電荷の量の変化の割合をΔQ2/ΔV2としたとき、
(ΔQ1/ΔV1)>(ΔQ2/ΔV2)
である。
(4)電子が蓄積飽和状態となる電圧をV3、電子の放出が開始される電圧をV4としたとき、
1≦|V4|/|V3|≦1.5
である。
次に、図55の特性を電圧−分極量特性の立場で説明する。初期状態において、エミッタ部22が一方向に分極されて、例えば双極子の負極がエミッタ部22の上面に向いた状態(図56A参照)となっている場合を想定して説明する。
先ず、図55に示すように、基準電圧(例えば0V)が印加されるポイントp1(初期状態)では、図56Aに示すように、双極子の負極がエミッタ部22の上面に向いた状態となっていることから、エミッタ部22の上面には電子がほとんど蓄積されていない状態となっている。
その後、負電圧を印加し、該負電圧のレベルを負方向に大きくしていくと、負の抗電圧を超えたあたり(図55のポイントp2参照)から分極が反転しはじめ、図55のポイントp3にて全ての分極が反転することになる(図56B参照)。この分極反転によって、上記したトリプルジャンクションにおいて電界集中が発生し、第1段階における上部電極18からエミッタ部22に向けた電子放出が起こり、例えばエミッタ部22のうち、上部電極18の貫通部102から露出する部分や上部電極18の周縁部近傍の部分に電子が蓄積される(図56C参照)。特に、上部電極18から、エミッタ部22のうち、上部電極18の貫通部102から露出する部分に向けて電子が放出(内部放出)されることになる。そして、図55のポイントp3において電子の蓄積飽和状態となる。
その後、負電圧のレベルを小さくしていき、さらに、基準電圧を超えて正電圧を印加していくと、ある電圧レベルまでは、エミッタ部22の上面の帯電状態が維持される(図57A参照)。正電圧のレベルをさらに大きくいくと、図55のポイントp4の直前において、双極子の負極がエミッタ部22の上面に向き始める領域が発生し(図57B参照)、さらに、レベルを上げて図55のポイントp4以降において、双極子の負極によるクーロン反発力により、電子の放出が開始される(図57C参照)。この正電圧を正方向に大きくすれば、電子の放出量が増加し、正の抗電圧を超えたあたり(ポイントp5)から分極が再び反転する領域が拡大して、ポイントp6では、蓄積されていた電子がほとんど放出され、このときの分極量は初期状態の分極量とほぼ同じになる。
そして、この電子放出素子12Bの特性の特徴ある部分は、以下の点となる。
(A)負の抗電圧をv1、正の抗電圧をv2としたとき、
|v1|<|v2|
である。
(B)より詳しくは、1.5×|v1|<|v2|である。
(C)負の抗電圧v1を印加した際における分極の変化の割合をΔq1/Δv1、正の抗電圧v2を印加した際における分極の変化の割合をΔq2/Δv2としたとき、
(Δq1/Δv1)>(Δq2/Δv2)
である。
(D)電子が蓄積飽和状態となる電圧をv3、電子の放出が開始される電圧をv4としたとき、
1≦|v4|/|v3|≦1.5
である。
この電子放出素子12Bは、上述のような特性を有することから、複数の画素に応じて配列された複数の電子放出素子12Bを有し、各電子放出素子12Bからの電子放出によって発光を行う第2の実施の形態に係る光源10Bに簡単に適用させることができる。
次に、上述した電子放出素子12Bを使用した構成された光源10Bについて説明する。
この第2の実施の形態に係る光源10Bは、液晶ディスプレイ用のバックライト等の画像表示を行うディスプレイに準拠した光源であって、図58に示すように、多数の電子放出素子12Bが例えば画素等の発光素子に対応してマトリックス状あるいは千鳥状に配列された発光部14Bと、該発光部14Bを駆動するための駆動回路16Bとを有する。この場合、1発光素子当たり1つの電子放出素子12Bを割り当ててもよいし、1発光素子当たり複数の電子放出素子12Bを割り当てるようにしてもよい。この実施の形態では、説明を簡単にするために、1発光素子当たり1つの電子放出素子12Bを割り当てた場合を想定して説明する。
この駆動回路16Bは、発光部14Bに対して行を選択するための複数の行選択線144が配線され、同じく発光部14Bに対してデータ信号Sdを供給するための複数の信号線146が配線されている。
さらに、この駆動回路16Bは、行選択線144に選択的に選択信号Ssを供給して、例えば1行単位に電子放出素子12Bを順次選択する行選択回路148と、信号線146にパラレルにデータ信号Sdを出力して、行選択回路148にて選択された行(選択行)にそれぞれデータ信号Sdを供給する信号供給回路150と、入力される制御信号Sv(映像信号等)及び同期信号Scに基づいて行選択回路148及び信号供給回路150を制御する信号制御回路152とを有する。
行選択回路148及び信号供給回路150には電源回路154(例えば50V及び0V)が接続され、特に、行選択回路148と電源回路154間の負極ラインとGND(グランド)間にパルス電源156が接続されている。パルス電源156は、後述する電荷蓄積期間Tdに基準電圧(例えば0V)、発光期間Thに電圧(例えば−400V)とされたパルス状の電圧波形を出力する。
行選択回路148は、電荷蓄積期間Tdに、選択行に対して選択信号Ssを出力し、非選択行に対して非選択信号Snを出力する。また、行選択回路148は、発光期間Thに電源回路154からの電源電圧(例えば50V)とパルス電源156からの電圧(例えば−400V)が加わった一定電圧(例えば−350V)を出力する。
信号供給回路150は、パルス生成回路158と振幅変調回路160とを有する。パルス生成回路158は、電荷蓄積期間Tdにおいて、一定のパルス周期で一定の振幅(例えば50V)を有するパルス信号Spを生成、出力し、発光期間Thにおいて、基準電圧(例えば0V)を出力する。
振幅変調回路160は、電荷蓄積期間Tdにおいて、パルス生成回路158からのパルス信号Spをそれぞれ選択行に関する発光素子の輝度レベルに応じて振幅変調し、それぞれ選択行に関する発光素子のデータ信号Sdとして出力し、発光期間Thにおいて、パルス生成回路158からの基準電圧をそのまま出力する。これらのタイミング制御並びに選択された複数の発光素子の輝度レベルの振幅変調回路160への供給は、信号供給回路150を通じて行われる。
例えば図59A〜図59Cにおいて3つの例を示すように、輝度レベルが低い場合は、パルス信号Spの振幅を低レベルVslとし(図59A参照)、輝度レベルが中位の場合は、パルス信号Spの振幅を中レベルVsmとし(図59B参照)、輝度レベルが高い場合は、パルス信号Spの振幅を高レベルVshとする(図59C参照)。この例では、3つに分けた例を示したが、光源10Bに適用する場合には、パルス信号Spを、発光素子の輝度レベルに応じて、例えば128段階や256段階に振幅変調される。
ここで、信号供給回路150の変形例について図60〜図61Cを参照しながら説明する。
変形例に係る信号供給回路150aは、図60に示すように、パルス生成回路162とパルス幅変調回路164とを有する。パルス生成回路162は、電荷蓄積期間Tdにおいて、電子放出素子12Bに印加される電圧波形(図61A〜図61Cにおいて実線で示す)において、立ち上がり部分の波形が連続的にレベルが変化するパルス信号Spa(図61A〜図61Cにおいて破線で示す)を生成、出力し、発光期間Thにおいて、基準電圧を出力する。そして、パルス幅変調回路164は、電荷蓄積期間Tdにおいて、パルス生成回路162からのパルス信号Spaのパルス幅Wp(図61A〜図61C参照)をそれぞれ選択行に関する発光素子の輝度レベルに応じて変調し、それぞれ選択行に関する発光素子のデータ信号Sdとして出力する。発光期間Thにおいてはパルス生成回路162からの基準電圧をそのまま出力する。この場合も、これらのタイミング制御並びに選択された複数の発光素子の輝度レベルのパルス幅変調回路164への供給は、信号供給回路150aを通じて行われる。
例えば図61A〜図61Cにおいて3つの例を示すように、輝度レベルが低い場合は、パルス信号Spaのパルス幅Wpを短くして、実質的な振幅を低レベルVslとし(図61A参照)、輝度レベルが中位の場合は、パルス信号Spaのパルス幅Wpを中位の長さにして、実質的な振幅を中位レベルVsmとし(図61B参照)、輝度レベルが高い場合は、パルス信号Spaのパルス幅Wpを長くして、実質的な振幅を高レベルVshとする(図61C参照)。ここでは、3つの例を示したが、光源10Bに適用する場合には、パルス信号Spaを、発光素子の輝度レベルに応じて、例えば128段階や256段階にパルス幅変調される。
ここで、上述した電子の蓄積に係る負電圧のレベルを変化させた場合の特性図の変化を、図59A〜図59Cに示すパルス信号Spに対する3つの振幅変調の例と、図61A〜図61Cに示すパルス信号Spaに対する3つのパルス幅変調の例との関連でみると、図59A及び図61Aに示す負電圧のレベルVslでは、図62Aに示すように、電子放出素子12Bに蓄積される電子の量が少ない。図59B及び図61Bに示す負電圧のレベルVsmでは、図62Bに示すように、蓄積される電子の量が中位であり、図59C及び図61Cに示す負電圧のレベルVshでは、図62Cに示すように、蓄積される電子の量が多く、ほぼ飽和状態となっている。
しかし、これら図62A〜図62Cに示すように、電子の放出が開始されるポイントp4の電圧レベルはほとんど同じになっている。すなわち、電子を蓄積した後、ポイントp4に示す電圧レベルまで印加電圧が変化したとしても、電子の蓄積量にほとんど変化はなく、メモリ効果が発揮されることがわかる。
また、この電子放出素子12Bを光源10Bの発光素子として利用する場合は、図63に示すように、上部電極18の上方に、例えばガラスやアクリル製の透明板166が配置され、該透明板166の裏面(上部電極18と対向する面)に例えば透明電極にて構成されたコレクタ電極168が配置され、該コレクタ電極168には蛍光体170が塗布される。なお、コレクタ電極168にはバイアス電圧源172(コレクタ電圧Vc)が抵抗を介して接続される。また、電子放出素子12Bは、当然のことながら、真空空間内に配置される。雰囲気中の真空度は、102〜10-6Paが好ましく、より好ましくは10-3〜10-5Paである。
このような範囲を選んだ理由は、低真空では、(1)空間内に気体分子が多いため、プラズマを生成し易く、プラズマが多量に発生され過ぎると、その正イオンが多量に上部電極18に衝突して損傷を進めるおそれや、(2)放出電子がコレクタ電極168に到達する前に気体分子に衝突してしまい、コレクタ電圧Vcで十分に加速した電子による蛍光体170の励起が十分に行われなくなるおそれがあるからである。
一方、高真空では、電界が集中するポイントから電子を放出し易いものの、構造体の支持、及び真空のシール部が大きくなり、小型化に不利になるという問題があるからである。
図63の例では、透明板166の裏面にコレクタ電極168を形成し、該コレクタ電極168の表面(上部電極18と対向する面)に蛍光体170を形成するようにしたが、その他、図64に示すように、透明板166の裏面に蛍光体170を形成し、該蛍光体170を覆うようにコレクタ電極168を形成するようにしてもよい。
これは、CRT等で用いられる構成であって、コレクタ電極168がメタルバックとして機能する。エミッタ部22から放出された電子はコレクタ電極168を貫通して蛍光体170に進入し、該蛍光体170を励起する。従って、コレクタ電極168は電子が貫通できる程度の厚さであり、100nm以下が好ましい。電子の運動エネルギーが大きいほど、コレクタ電極168の厚みを厚くすることができる。
このような構成とすることで以下の効果を奏することができる。
(a)蛍光体170が導電性でない場合、蛍光体170の帯電(負)を防ぎ、電子の加速電界を維持することができる。
(b)コレクタ電極168が蛍光体170の発光を反射して、蛍光体170の発光を効率よく透明板166側(発光面側)に放出することができる。
(c)蛍光体170への過度な電子の衝突を防ぐことができ、蛍光体170の劣化や蛍光体170からのガス発生を防止することができる。
次に、この第2の実施の形態に係る光源10Bに用いられる電子放出素子12Bについての4つの実験例(第1〜第4の実験例)を示す。
第1の実験例は、電子放出素子12Bの電子の放出状態をみたものである。すなわち、図65Aに示すように、電子放出素子12Bに対して−70Vの電圧を有する書込みパルスPwを印加して、電子放出素子12Bに電子を蓄積させ、その後、280Vの電圧を有する点灯パルスPhを印加して電子を放出させた。電子の放出状態は、蛍光体170の発光を受光素子(フォトダイオード)にて検出して測定した。検出波形を図65Bに示す。なお、書込みパルスPwと点灯パルスPhのデューティ比は50%とした。
この第1の実験例から、点灯パルスPhの立ち上がり途中から発光が開始され、該点灯パルスPhの初期段階で発光が終了していることがわかる。従って、点灯パルスPhの期間をより短くしても発光には影響はないものと考えられる。これは、高電圧の印加期間の短縮化につながり、消費電力の低減化を図る上で有利になる。
第2の実験例は、電子放出素子12Bの電子の放出量が、図66に示す書込みパルスPwの振幅によってどのように変化するかをみたものである。電子の放出量の変化は第1の実験例と同様に、蛍光体170の発光を受光素子(フォトダイオード)にて検出して測定した。実験結果を図67に示す。
図67において、実線Aは、点灯パルスPhの振幅を200Vとし、書込みパルスPwの振幅を−10Vから−80Vに変化させた場合の特性を示し、実線Bは、点灯パルスPhの振幅を350Vとし、書込みパルスPwの振幅を−10Vから−80Vに変化させた場合の特性を示す。
この図67に示すように、書込みパルスPwを−20Vから−40Vに変化させた場合、発光輝度は、ほとんど直線的に変化していることがわかる。特に、点灯パルスPhの振幅が350Vの場合と200Vの場合とで比較すると、350Vの場合が書込みパルスPwに対する発光輝度変化のダイナミックレンジが広くなっており、発光輝度の向上を図る上で有利であることがわかる。また、第2の実施の形態に係る光源10Bをディスプレイに適用した場合、該ディスプレイのコントラストの向上を図ることができる。この傾向は、点灯パルスPhの振幅設定に対して発光輝度が飽和するまでの範囲において、点灯パルスPhの振幅を上げるほど有利になると思われるが、信号伝送系の耐圧や消費電力との関係で、最適な値に設定することが好ましい。
第3の実験例は、電子放出素子12Bの電子の放出量が、図66に示す点灯パルスPhの振幅によってどのように変化するかをみたものである。電子の放出量の変化は第1の実験例と同様に、蛍光体170の発光を受光素子(フォトダイオード)にて検出して測定した。実験結果を図68に示す。
図68において、実線Cは、書込みパルスPwの振幅を−40Vとし、点灯パルスPhの振幅を50Vから400Vに変化させた場合の特性を示し、実線Dは、書込みパルスPwの振幅を−70Vとし、点灯パルスPhの振幅を50Vから400Vに変化させた場合の特性を示す。
この図68に示すように、点灯パルスPhを100Vから300Vに変化させた場合、発光輝度は、ほとんど直線的に変化していることがわかる。特に、書込みパルスPwの振幅が−40Vの場合と−70Vの場合とで比較すると、−70Vの場合が点灯パルスPhに対する発光輝度変化のダイナミックレンジが広くなっており、発光輝度の向上、並びにディスプレイに適用した場合のコントラストの向上を図る上で有利であることがわかる。この傾向は、書込みパルスPwの振幅設定に対して発光輝度が飽和するまでの範囲において、書込みパルスPwの振幅(この場合、絶対値)を上げるほど有利になると思われるが、この場合も、信号伝送系の耐圧や消費電力との関係で、最適な値に設定することが好ましい。
第4の実験例は、電子放出素子12Bの電子の放出量が、図63又は図64に示すコレクタ電圧Vcのレベルによってどのように変化するかをみたものである。電子の放出量の変化は第1の実験例と同様に、蛍光体170の発光を受光素子(フォトダイオード)にて検出して測定した。実験結果を図69に示す。
図69において、実線Eは、コレクタ電圧Vcのレベルを3kVとし、点灯パルスPhの振幅を80Vから500Vに変化させた場合の特性を示し、実線Fは、コレクタ電圧Vcのレベルを7kVとし、点灯パルスPhの振幅を80Vから500Vに変化させた場合の特性を示す。
この図69に示すように、コレクタ電圧Vcを7kVとした方が、3kVの場合よりも、点灯パルスPhに対する発光輝度変化のダイナミックレンジが広くなっており、発光輝度の向上、並びにディスプレイに適用した場合のコントラストの向上を図る上で有利であることがわかる。この傾向は、コレクタ電圧Vcのレベルを上げるほど有利になると思われるが、この場合も、信号伝送系の耐圧や消費電力との関係で、最適な値に設定することが好ましい。
ここで、上述した第2の実施の形態に係る光源10Bの1つの駆動方法について図70及び図71を参照しながら説明する。図70は、代表的に1行1列、2行1列及びn行1列の画素の動作を示す。なお、ここで使用する電子放出素子12Aは、図55のポイントp2における抗電圧v1が例えば−20V、ポイントp5における抗電圧v2が+70V、ポイントp3における電圧v3が−50V、ポイントp4における電圧v4が+50Vの特性を有する。
また、図70に示すように、全部の行を選択する期間を1フレームとしたとき、該1フレーム内に1つの電荷蓄積期間Tdと1つの発光期間Thが含まれており、1つの電荷蓄積期間Tdには、n個の選択期間Tsが含まれる。各選択期間Tsはそれぞれ対応する行の選択期間Tsとなるため、対応しないn−1個の行については非選択期間Tnとなる。
そして、この駆動方法は、電荷蓄積期間Tdに、全ての電子放出素子12Bを走査して、ON対象(発光対象)の画素に対応した複数の電子放出素子12Bにそれぞれ対応する発光素子の輝度レベルに応じた電圧を印加することにより、ON対象の発光素子に対応した複数の電子放出素子12Bにそれぞれ対応する発光素子の輝度レベルに応じた量の電荷(電子)を蓄積させ、次の発光期間Thに、全ての電子放出素子12Bに一定の電圧を印加して、ON対象の発光素子に対応した複数の電子放出素子12Bからそれぞれ対応する発光素子の輝度レベルに応じた量の電子を放出させて、ON対象の発光素子を発光させるというものである。
具体的に説明すると、図71にも示すように、先ず、1行目の選択期間Tsにおいては、1行目の行選択線144に例えば50Vの選択信号Ssが供給され、その他の行の行選択線144に例えば0Vの非選択信号Snが供給される。1列目の発光素子のうち、ON(発光)とすべき発光素子の信号線146に供給されるデータ信号Sdの電圧は、0V以上、30V以下の範囲であって、かつ、それぞれ対応する発光素子の輝度レベルに応じた電圧となる。輝度レベル最大であれば0Vとなる。このデータ信号Sdの輝度レベルに応じた変調は、図58に示す振幅変調回路160や図60に示すパルス幅変調回路164を通じて行われる。
これにより、1行目のONとすべき各発光素子にそれぞれ対応する電子放出素子12Bの上部電極18と下部電極20間にはそれぞれ輝度レベルに応じて−50V以上、−20V以下の電圧が印加される。その結果、上述した各電子放出素子12Bには、印加された電圧に応じた電子が蓄積されることになる。例えば1行1列目の発光素子に対応する電子放出素子12Bは、例えば最大輝度レベルであることから、図55の特性のポイントp3の状態となり、エミッタ部22のうち、上部電極18の貫通部102から露出する部分に最大量の電子が蓄積されることになる。
なお、OFF(消光)を示す発光素子に対応する電子放出素子12Bに供給されるデータ信号Sdの電圧は、例えば50Vであり、これにより、OFF対象の発光素子に対応する電子放出素子12Bには0Vが印加され、これは、図55の特性のポイントp1の状態となり、電子の蓄積は行われない。
1行目へのデータ信号Sdの供給が終了した後、2行目の選択期間Tsにおいては、2行目の行選択線144に50Vの選択信号Ssが供給され、その他の行の行選択線144に0Vの非選択信号Snが供給される。この場合も、ON(発光)とすべき発光素子に対応する電子放出素子12Bの上部電極18と下部電極20間にはそれぞれ輝度レベルに応じて−50V以上、−20V以下の電圧が印加される。このとき、非選択状態にある例えば1行目の発光素子に対応する電子放出素子12Bの上部電極18と下部電極20間には0V以上、50V以下の電圧が印加されるが、この電圧は、図55の特性のポイント4に達しないレベルの電圧であることから、1行目のうち、ON(発光)とすべき発光素子に対応する電子放出素子12Bから電子が放出されるということはない。つまり、非選択状態の1行目の発光素子が、選択状態の2行目の画素に供給されるデータ信号Sdの影響を受けるということがない。
以下同様に、n行目の選択期間Tsにおいては、n行目の行選択線144に50Vの選択信号Ssが供給され、その他の行の行選択線144に0Vの非選択信号Snが供給される。この場合も、ON(発光)とすべき発光素子に対応する電子放出素子12Bの上部電極18と下部電極20間にはそれぞれ輝度レベルに応じて−50V以上、−20V以下の電圧が印加される。このとき、非選択状態にある1行〜(n−1)行の各発光素子に対応する電子放出素子12Bの上部電極18と下部電極20間には0V以上、50V以下の電圧が印加されるが、これら非選択状態の各発光素子のうち、ON(発光)とすべき発光素子に対応する電子放出素子12Bから電子が放出されるということはない。
n行目の選択期間Tsが経過した段階で、発光期間Thに入る。この発光期間Thでは、全電子放出素子12Bの上部電極18には、信号供給回路150を通じて基準電圧(例えば0V)が印加され、全電子放出素子12Bの下部電極20には、−350Vの電圧(パルス電源156の−400V+行選択回路148の電源電圧50V)が印加される。これにより、全電子放出素子12Bの上部電極18と下部電極20間に高電圧(+350V)が印加される。全電子放出素子12Bは、それぞれ図55の特性のポイントp6の状態となり、図57Cに示すように、エミッタ部22のうち、前記電子の蓄積されていた部分から、貫通部102を通じて電子が放出される。もちろん、上部電極18の外周部近傍からも電子が放出される。
つまり、ON(発光)とすべき発光素子に対応する電子放出素子12Bから電子が放出され、放出された電子は、これら電子放出素子12Bに対応するコレクタ電極168に導かれて、対応する蛍光体170を励起し、発光する。この発光は、透明板166の表面を通じて外方に放射されることになる。
以後同様に、フレーム単位に、電荷蓄積期間Tdにおいて、ON(発光)とすべき発光素子に対応する電子放出素子12Bに電子を蓄積し、発光期間Thにおいて、蓄積されていた電子を放出して蛍光発光させることで、その発光が、透明板166の表面を通じて外方に放射されることになる。
このように、この第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、上述したように、1フレーム内の電荷蓄積期間Tdに、全ての電子放出素子12Bを走査して、ON対象の発光素子に対応した複数の電子放出素子12Bにそれぞれ対応する発光素子の輝度レベルに応じた電圧を印加することにより、ON対象の発光素子に対応した複数の電子放出素子12Bにそれぞれ対応する発光素子の輝度レベルに応じた量の電荷を蓄積させ、次の発光期間Thに、全ての電子放出素子12Bに一定の電圧を印加して、ON対象の発光素子に対応した複数の電子放出素子12Bからそれぞれ対応する発光素子の輝度レベルに応じた量の電子を放出させて、ON対象の発光素子を発光させることが可能となる。
また、この第2の実施の形態の光源10Bに使用される電子放出素子12Bにおいては、例えば電子が蓄積飽和状態となる電圧V3と、電子の放出が開始される電圧V4との関係が、1≦|V4|/|V3|≦1.5である。
通常、例えば、電子放出素子12Bをマトリックス状に配列して、水平走査期間に同期させて1行単位に電子放出素子12Bを選択し、選択状態にある電子放出素子12Bに対してそれぞれ発光素子の輝度レベルに応じたデータ信号Sdを供給するとき、非選択状態の発光素子にも、データ信号Sdが供給されることになる。
非選択状態の電子放出素子12Bがデータ信号Sdの影響を受けて例えば電子放出してしまうと、光源10Bの輝度ムラ等を招くという問題がある。
しかし、この電子放出素子12Bでは、上述した特性を有するため、選択状態の電子放出素子12Bに供給されるデータ信号Sdの電圧レベルを、基準電圧から電圧V3までの任意の電圧とし、非選択状態の電子放出素子12Bに対して、例えばデータ信号Sdの逆極性の信号が供給されるように設定するという簡単な電圧関係にしても、非選択状態の発光素子が、選択状態の発光素子へのデータ信号Sdによって影響を受けることがない。すなわち、各発光素子の選択期間Tsにおいて蓄積された各発光素子の電子蓄積量(各電子放出素子12Bにおけるエミッタ部22の帯電量)が、次の発光期間Thにおいて電子放出が行われるまで維持されることになり、その結果、各発光素子でのメモリ効果を実現でき、高輝度、高コントラスト化を図ることができる。
一方、この第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、電荷蓄積期間Tdに、全ての電子放出素子12Bに必要な電荷を蓄積し、その後の発光期間Thに、全ての電子放出素子12Bに対して電子放出に必要な電圧を印加して、ON対象の発光素子に対応した複数の電子放出素子12Bから電子を放出させて、ON対象の発光素子を発光させるようにしている。
通常、電子放出素子12Bで発光素子を構成した場合、発光素子を発光させるには、電子放出素子12Bに高電圧を印加する必要がある。そのことから、発光素子への走査時に電荷を蓄積してさらに発光を行わせる場合、1つの発光素子を発光させる期間(例えば1フレーム)にわたって高電圧を印加する必要があり、消費電力が大きくなるという問題がある。また、各電子放出素子12Bを選択し、データ信号Sdを供給する回路も高電圧に対応した回路にする必要がある。
しかし、この例では、全ての電子放出素子12Bに電荷を蓄積した後に、全ての電子放出素子12Bに電圧を印加して、ON対象の電子放出素子12Bに対応する発光素子を発光させるというものである。
従って、全ての電子放出素子12Bに電子放出のための電圧(放出電圧)を印加する期間Thは、当然に、1フレームよりも短くなり、しかも、図65A及び図65Bに示す第1の実験例からもわかるように、放出電圧の印加期間を短くすることができることから、発光素子への走査時に電荷の蓄積と発光とを行わせる場合と比して消費電力を大幅に低減させることができる。
また、電子放出素子12Bに電荷を蓄積する期間Tdと、ON対象の発光素子に対応する電子放出素子12Bから電子放出させる期間Thとを分離したため、各電子放出素子12Bにそれぞれ輝度レベルに応じた電圧を印加するための回路の低電圧駆動を図ることができる。
また、データ信号Sd及び電荷蓄積期間Tdの選択信号Ss/非選択信号Snは、行又は列毎に駆動する必要があるが、上述した実施の形態にみられるように、駆動電圧は数10ボルトでよいため、蛍光表示管等で使用される安価な多出力ドライバを使用することができる。一方、発光期間Thにおいては、電子を十分に放出させる電圧は、前記駆動電圧よりも大きくなる可能性があるが、全てON対象の発光素子を一括して駆動すればよいため、多出力の回路部品を必要としない。例えば高耐圧のディスクリート部品で構成した1出力だけの駆動回路があればよいため、コスト的に安価で済む上に、回路規模も小さく済むという利点がある。上記の駆動電圧及び放電電圧は、エミッタ部22の膜厚を薄くすることで、低電圧化を図ることが可能である。従って、膜厚の設定により、例えば駆動電圧を数ボルトにすることも可能となる。
さらに、本駆動方法によれば、行走査による第1段階と分離して、行走査によらない第2段階の電子放出が全発光素子一斉に行われることから、解像度、画面サイズによらず発光時間を確保し易く、輝度を大きくすることができる。
次に、第2の実施の形態に係る光源10Bに使用される電子放出素子12Bの各種変形例について図72〜図77を参照しながら説明する。
先ず、第1の変形例に係る電子放出素子12Baは、図72に示すように、上述した電子放出素子12Bとほぼ同様の構成を有するが、上部電極18の構成材料が下部電極20と同じである点と、上部電極18の厚みtが10μmよりも厚い点と、貫通部102をエッチング(ウェットエッチング、ドライエッチング)やリフトオフ、レーザ等を使用して人為的に形成している点で特徴を有する。貫通部102の形状は、上述した電子放出素子12Bと同様に、孔114の形状、切欠き128の形状、スリット132の形状を採用することができる。
さらに、上部電極18における貫通部102の周部108の下面108aは、貫通部102の中心に向かうに従って徐々に上方に傾斜している。この形状は、例えばリフトオフを使用することで簡単に形成することができる。
この第1の変形例に係る電子放出素子12Baを使用した光源10Bにおいても、上述した電子放出素子12Bを用いた場合と同様に、高い電界集中を容易に発生させることができ、しかも、電子放出箇所を多くすることができ、電子放出について高出力、高効率を図ることができ、低電圧駆動(低消費電力)も可能となる。
また、図73に示す第2の変形例に係る電子放出素子12Bbのように、エミッタ部22の上面のうち、貫通部102と対応する部分にフローティング電極174を存在させてもよい。
また、図74に示す第3の変形例に係る電子放出素子12Bcのように、上部電極18として、断面形状がほぼT字状とされた電極を形成するようにしてもよい。
また、図75に示す第4の変形例に係る電子放出素子12Bdのように、上部電極18の形状、特に、上部電極18の貫通部102の周部108が浮き上がった形状としてもよい。これは、上部電極18となる膜材料の中に、焼成工程中においてガス化する材料を含ませておけばよい。これにより、焼成工程において、前記材料がガス化し、その跡として、上部電極18に多数の貫通部102が形成されると共に、貫通部102の周部108が浮き上がった形状になる。
次に、第5の変形例に係る電子放出素子12Beについて図76を参照しながら説明する。
この第5の変形例に係る電子放出素子12Beは、図76に示すように、上述した電子放出素子12Bとほぼ同様の構成を有するが、例えばセラミックスで構成された1つの基板176を有する点と、下部電極20が基板176上に形成され、エミッタ部22が基板176上であって、かつ、下部電極20を覆うように形成され、さらに上部電極18がエミッタ部22上に形成されている点で異なる。
基板176の内部には、各エミッタ部22が形成される部分に対応した位置に、後述する薄肉部を形成するための空所178が設けられている。空所178は、基板176の他端面に設けられた径の小さい貫通孔180を通じて外部と連通されている。
前記基板176のうち、空所178の形成されている部分が薄肉とされ(以下、薄肉部182と記す)、それ以外の部分が厚肉とされて前記薄肉部182を支持する固定部184として機能するようになっている。
つまり、基板176は、最下層である基板層176Aと中間層であるスペーサ層176Bと最上層である薄板層176Cの積層体であって、スペーサ層176Bのうち、エミッタ部22に対応する箇所に空所178が形成された一体構造体として把握することができる。基板層176Aは、補強用基板として機能するほか、配線用の基板としても機能するようになっている。なお、前記基板176は、基板層176A、スペーサ層176B及び薄板層176Cの一体焼成で形成してもよいし、これら層176A〜176Cを接着して形成するようにしてもよい。
薄肉部182は、高耐熱性材料であることが好ましい。その理由は、エミッタ部22を有機接着剤等の耐熱性に劣る材料を用いずに、固定部184によって直接薄肉部182を支持させる構造とする場合、少なくともエミッタ部22の形成時に、薄肉部182が変質しないようにするため、薄肉部182は、高耐熱性材料であることが好ましい。
また、薄肉部182は、基板176上に形成される上部電極18に通じる配線と下部電極20に通じる配線との電気的な分離を行うために、電気絶縁材料であることが好ましい。
従って、薄肉部182の材料としては、高耐熱性の金属あるいはその金属表面をガラス等のセラミック材料で被覆したホーロウ等の材料であってもよいが、セラミックスが最適である。
薄肉部182を構成するセラミックスとしては、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を使用することができる。その中でも、酸化アルミニウム及び安定化された酸化ジルコニウムが、強度及び剛性の観点から好ましい。安定化された酸化ジルコニウムは、機械的強度が比較的高いこと、靭性が比較的高いこと、上部電極18及び下部電極20との化学反応が比較的小さいこと等の観点から特に好適である。なお、安定化された酸化ジルコニウムとは、安定化酸化ジルコニウム及び部分安定化酸化ジルコニウムを包含する。安定化された酸化ジルコニウムでは、立方晶等の結晶構造をとるため、相転移が生じない。
一方、酸化ジルコニウムは、1000℃前後で単斜晶と正方晶との間を相転移し、このような相転移の際にクラックが発生するおそれがある。安定化された酸化ジルコニウムは、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、希土類金属の酸化物等の安定剤を、1〜30モル%含有する。なお、基板176の機械的強度を向上させるために、安定化剤が酸化イットリウムを含有すると好適である。この場合、酸化イットリウムを、好適には1.5〜6モル%、さらに好適には2〜4モル%含有し、さらに0.1〜5モル%の酸化アルミニウムを含有することが好ましい。
また、結晶相を、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相等とすることができるが、その中でも、主たる結晶相を、正方晶又は正方晶+立方晶の混合相としたものが、強度、靭性及び耐久性の観点から最適である。
基板176をセラミックスから構成した場合、比較的多数の結晶粒が基板176を構成するが、基板176の機械的強度を向上させるためには、結晶粒の平均粒径を、好適には0.05〜2μmとし、さらに好適には0.1〜1μmとするとよい。
一方、固定部184は、セラミックスからなることが好ましいが、薄肉部182の材料と同一のセラミックスでもよいし、異なっていてもよい。固定部184を構成するセラミックスとしては、薄肉部182の材料と同様に、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を用いることができる。
特に、この電子放出素子12Beで用いられる基板176は、酸化ジルコニウムを主成分とする材料、酸化アルミニウムを主成分とする材料、又はこれらの混合物を主成分とする材料等が好適に採用される。その中でも、酸化ジルコニウムを主成分としたものがさらに好ましい。
なお、焼結助剤として粘土等を加えることもあるが、酸化珪素、酸化ホウ素等のガラス化し易いものが過剰に含まれないように、助剤成分を調節する必要がある。なぜなら、これらのガラス化し易い材料は、基板176とエミッタ部22とを接合させる上で有利ではあるものの、基板176とエミッタ部22との反応を促進し、所定のエミッタ部22の組成を維持することが困難となり、その結果、素子特性を低下させる原因となるからである。
すなわち、基板176中の酸化珪素等は重量比で3%以下、さらに好ましくは1%以下となるように制限することが好ましい。ここで、主成分とは、重量比で50%以上の割合で存在する成分をいう。
また、前記薄肉部182の厚みとエミッタ部22の厚みは、同次元の厚みであることが好ましい。なぜなら、薄肉部182の厚みが極端にエミッタ部22の厚みより厚くなると(1桁以上異なると)、エミッタ部22の焼成収縮に対して、薄肉部182がその収縮を妨げるように働くため、エミッタ部22と基板176との界面での応力が大きくなり、はがれ易くなる。反対に、厚みの次元が同程度であれば、エミッタ部22の焼成収縮に基板176(薄肉部182)が追従し易くなるため、一体化には好適である。具体的には、薄肉部182の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmがさらに好ましく、5〜20μmがより一層好ましい。一方、エミッタ部22は、その厚みとして5〜100μmが好ましく、5〜50μmがさらに好ましく、5〜30μmがより一層好ましい。
そして、基板176上にエミッタ部22を形成する方法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法、エアロゾルデポジション法等の各種厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)、めっき等の各種薄膜形成法を用いることができる。特に、圧電/電歪材料の粉末化したものを、エミッタ部22として形成し、これに低融点のガラスやゾル粒子を含浸する方法をとることが好ましい。この手法により、700℃あるいは600℃以下といった低温での膜形成が可能となる。
また、電子放出素子12Beの焼成処理としては、基板176上に下部電極20となる材料、エミッタ部22となる材料及び上部電極18となる材料を順次積層してから一体構造として焼成するようにしてもよいし、下部電極20、エミッタ部22、上部電極18をそれぞれ形成するたびに熱処理(焼成処理)して基板176と一体構造にするようにしてもよい。なお、上部電極18及び下部電極20の形成方法によっては、一体化のための熱処理(焼成処理)を必要としない場合もある。
基板176と、エミッタ部22、上部電極18及び下部電極20とを一体化させるための焼成処理に係る温度としては、500〜1400℃の範囲、好適には、1000〜1400℃の範囲とするとよい。さらに、膜状のエミッタ部22を熱処理する場合、高温時にエミッタ部22の組成が不安定にならないように、エミッタ部22の蒸発源と共に雰囲気制御を行いながら焼成処理を行うことが好ましい。
また、エミッタ部22を適切な部材によって被覆し、エミッタ部22の表面が焼成雰囲気に直接露出しないようにして焼成する方法を採用してもよい。この場合、被覆部材としては、基板176と同様の材料を用いることが好ましい。
この第5の変形例に係る電子放出素子12Beにおいては、焼成時においてエミッタ部22が収縮することになるが、この収縮時に発生する応力が空所178の変形等を通じて開放されることから、エミッタ部22を十分に緻密化させることができる。エミッタ部22の緻密化が向上することにより、耐電圧が向上すると共に、エミッタ部22での分極反転並びに分極変化が効率よく行われることになり、電子放出素子12Beとしての特性が向上することになる。
上述した第5の変形例では、基板176として3層構造の基板を用いたが、その他、図77の第6の変形例に係る電子放出素子12Bfに示すように、最下層の基板層176Aを省略した2層構造の基板176aを用いてもよい。
この第2の実施の形態に係る光源10Bは、図16に示す第3の変形例に係る光源10Acと同様に、発光部14Bを2つのグループ(第1及び第2のグループG1及びG2)に分け、第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Bの発光時に、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Bにおいて第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Bの電力を回収し、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Bの発光時に、第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Bにおいて第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Bの電力を回収するようにしてもよい。
また、第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、図29の第5の変形例に係る光源10Aeのように、2以上の面光源部Z1〜Z6を有するようにしてもよい。図29の例では、6つの面光源部Z1〜Z6を具備させた場合を示す。各面光源部Z1〜Z6は、複数の電子放出素子12Bが二次元的に配列されて構成され、それぞれ独立に駆動回路16Bが接続されている。
これによって、面光源部Z1〜Z6単位に発光/消光を制御することができ、段階的な調光(デジタル的な調光)を行うことができる。特に、各面光源部Z1〜Z6にそれぞれ独立に接続される駆動回路16Bに変調回路60(図18参照)を設けることによって、各面光源部Z1〜Z6の発光分布をそれぞれ独立に制御することができる。つまり、デジタル的な調光に加えて、アナログ的な調光を実現でき、きめ細かな調光を行うことができる。
また、第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、図30に示す第6の変形例に係る光源10Afのように、第1及び第6の面光源部Z1及びZ6をそれぞれ横長で、かつ、長辺の長い長方形状とし、第2及び第5の面光源部をそれぞれ縦長で、かつ、長辺が第1及び第6の面光源部Z1及びZ6よりも短い長方形状とし、第3及び第4の面光源部Z3及びZ4をそれぞれ横長で、かつ、長辺が第1及び第6の面光源部Z1及びZ6よりも短い長方形状としてもよい。
また、第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、図31に示す第7の変形例に係る光源10Agのように、各面光源部Z1〜Z6に含まれる複数の電子放出素子12Bをそれぞれ2つのグループ(第1及び第2のグループG1及びG2)に分け、各面光源部Z1〜Z6において、第1のグループに含まれる電子放出素子12Bの発光時に、該第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Bの電力を、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Bに回収し、第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Bの発光時に、該第2のグループG2に含まれる電子放出素子12Bの電力を、第1のグループG1に含まれる電子放出素子12Bに回収するようにしてもよい。
また、第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、図32に示す第8の変形例に係る光源10Ahのように、6つの面光源部Z1〜Z6を2つのグループ(第1及び第2のグループG1及びG2)に分け、第1のグループG1に関する面光源部Z1〜Z3の各電子放出素子12Bの発光時に、これら電子放出素子12Bの電力を、第2のグループG2に関する面光源部Z4〜Z6の電子放出素子12Bに回収し、第2のグループG2に関する面光源部Z4〜Z6の各電子放出素子12Bの発光時に、これら電子放出素子12Bの電力を、第1のグループG1に関する面光源部Z1〜Z3の電子放出素子12Bに回収するようにしてもよい。
また、第2の実施の形態に係る光源10Bにおいては、図33〜図37に示す第9〜第13の変形例に係る光源10Ai〜10Amに示すような構成を採用してもよい。
第1の実施の形態に係る光源10A(各種変形例を含む)及び第2の実施の形態に係る光源10B(各種変形例を含む)は、以下のような効果を奏することができる。
(1)高輝度化、低消費電力化が実現できるという面から、輝度仕様として2000ルーメンが必要なプロジェクタ用の光源に最適である。
(2)高輝度二次元アレー光源を容易に実現できることと、動作温度範囲が広く、屋外環境でも発光効率に変化がないことから、LEDの代替用途として有望である。例えば信号機等の二次元アレーLEDモジュールの代替として最適である。なお、LEDは、25℃以上で許容電流が低下し、低輝度となる。
(3)電子放出素子を二次元配列して構成される面光源は、素子単位で点灯/消灯が制御可能であるため、発光領域の一部分を点灯/消灯するような用途に好適である。また、瞬時点灯が可能であるため、ウォーミングアップの時間が不要である。さらに、液晶ディスプレイ用のバックライトとして適用した場合は、高速点灯による動画画質の改善(動画ぼやけの改善)も可能である。
ここで、面光源として作製する場合の好ましい構成例(第3の実施の形態に係る光源10C)について図78〜図81を参照しながら説明する。
この第3の実施の形態に係る光源10Cは、図78に示すように、背面ガラス基板200と、一方の板面が前記背面ガラス基板200の主面に対向して配された前面ガラス基板202とを有する。前面ガラス基板202の一方の板面には白色蛍光体(図示せず)が塗布されている。また、背面ガラス基板200の主面には、例えば図38に示すような複数の電子放出素子12Bが二次元的に配列されている。なお、背面ガラス基板200と前面ガラス基板202間は真空とされている。
電子放出素子12Bの二次元配列は、例えば図79に示すように、矩形状の複数の電子放出ユニット204(後述する)を二次元的に配列することにより形成することができる。
この電子放出ユニット204は、図80に示すように、1つの強誘電体シート206(エミッタ部22)の上面に例えば16個の上部電極18が例えばマトリックス状に配列され、強誘電体シート206の下面のうち、前記上部電極18と対応する箇所にそれぞれ下部電極20(図示せず)が形成されて構成されている。つまり、1つの電子放出ユニット204に16個の電子放出素子12Bがマトリックスに配列された形態となっている。
特に、図80の例では、16個の上部電極18が4行4列に配列され、各行における4つの上部電極18がそれぞれリード線208を介して電気的に接続され、最も左側に存する4列目における4つの上部電極18がそれぞれリード線210を介して電気的に接続されている。下部電極20においても同様の配列と電気的接続がなされている。
そして、背面ガラス基板200の主面に複数の下部電極配線212が形成され、これら複数の下部電極配線212が形成された背面ガラス基板200の主面に枠体214が設置される。枠体214は、列方向及び行方向に配列された複数の堰216によって複数の升目が例えばマトリックス状に配列された形態を有し、各升目にそれぞれ電子放出ユニット204が挿入設置されている。各升目の大きさ(平面形状)は1つの電子放出ユニット204の平面形状よりもわずかに大きく設定され、各電子放出ユニット204をそれぞれ升目内に挿入設置し易い構成にしている。なお、図79及び図80は、下部電極配線212が見えるように、いくつかの電子放出ユニット204を取り外して図示してある。
図80に示すように、枠体214の堰216上には上部電極配線218が形成され、さらに、下部電極配線212のコモンリード線220と上部電極配線218のコモンリード線222が背面ガラス基板200の1つの側面に引き出されている。
また、上部電極配線218と各電子放出ユニット204における上部電極18との電気的接続は、4列目の上部電極18から延びるリード線224とこれら4列目の上部電極18に近接する堰216上に配線された上部電極配線218とが導電ペースト226によって電気的に接続されることで行われる。
下部電極配線212と各電子放出ユニット204における下部電極20(図示せず)との電気的接続は、背面ガラス基板200の主面に形成された下部電極配線212と、下部電極20が導体ペースト(図示せず)等で電気的に接続されることで行われる。
そして、図78に示すように、各電子放出ユニット204における複数の電子放出素子12Bから放出された電子が前面ガラス基板202の一方の板面に形成された白色蛍光体(図示せず)に当たることによって、白色蛍光体が励起して外部に白色蛍光体発光として具現されることになる。
発光パルス幅は、発光周期が300Hzの場合、例えば図81に示すように、立ち上がり時間taが1.7msec(発光開始時点t0を基準)、立ち下がり時間tbが3.3msec(発光開始時点t0を基準)であった。
この第3の実施の形態に係る光源10Cにおいては、各電子放出ユニット204での電子励起による蛍光体発光を効率よく行わせることができ、LEDの発光効率以上の発光効率を実現させることができる。しかも、水銀を用いる必要がないため、環境に対する負荷が低いという利点もある。
ところで、以上に述べた電子放出素子から放出される電子を利用して放出電子を蛍光体に衝突させて直接励起発光させる光源以外に以下のものが考えられる。
(1)放出電子を放電の点弧又は支援に利用する放電ランプ(蛍光体を用いず封入ガスから可視光を発生するものを含む)。
(2)光源を構成する空間に封入されたガスから発生する紫外線で蛍光体を励起発光する光源において、放出電子がガスの紫外線発生を支援するもの。
(3)光源を構成する空間に封入されたガスの分子に、電子が衝突することによってガス分子がイオン化して得られる電子及び/又はイオンが蛍光体に衝突することによって光を発生する光源。この場合、放出電子がガス分子に衝突することでガス分子のイオン化が促進される。
前記(1)、(2)、(3)のいずれにおいても、電子放出素子を二次元的に配列することで、放電もしくは紫外線発生もしくはガス分子のイオン化を均一化して、均一な発光を得る面光源を構成することができる。
図82にその一例(第4の実施の形態に係る光源10D)を示す。この第4の実施の形態に係る光源10Dは、背面ガラス基板200と、一方の板面が前記背面ガラス基板200の主面に対向して配された前面ガラス基板202とを有する。前面ガラス基板202の一方の板面には蛍光体(図示せず)が塗布されている。また、背面ガラス基板200の主面には、例えば図38に示すような複数の電子放出素子12Bが二次元的に配列され、さらに、背面ガラス基板200と前面ガラス基板202間に形成される空間230(光源を構成する空間)にガス232が封入されている。ガス232としては、例えばHg(水銀)ガスやXe(キセノン)ガスを用いることができる。
そして、電子放出素子12Bから放出された電子のうち、一部の電子はガス232(例えばHgガス)中の水銀粒子に衝突し、水銀粒子が励起状態になって紫外線UVを発する。この紫外線UVが、前面ガラス基板202の蛍光体に当たることによって、蛍光体が励起して外部に蛍光体発光234として具現されることになる。
次に、第5の実施の形態に係る光源10Eを図83〜図85を参照しながら説明する。この第5の実施の形態に係る光源10Eの蛍光体発光の原理は、上述した第4の実施の形態に係る光源10Dと同様である。
この第5の実施の形態に係る光源10Eは、背面ガラス基板200と、一方の板面が前記背面ガラス基板200の主面に対向して配された前面ガラス基板202とを有する。前面ガラス基板202の一方の板面に白色蛍光体(図示せず)が塗布され、背面ガラス基板200の主面には、例えば図38に示すような複数の電子放出素子12Bが二次元的に配列されると共に、白色蛍光体240も塗布されている。さらに、背面ガラス基板200と前面ガラス基板202間に形成される空間230(光源を構成する空間)にガス232が封入されている。ガス232としては、第4の実施の形態と同様に、例えばHg(水銀)ガスやXe(キセノン)ガスを用いることができる。
背面ガラス基板200の主面は、複数の電子放出素子12Bが形成される複数の第1の領域Za1と、白色蛍光体240が形成される複数の第2の領域Za2と、アノード電極242(機能的には図1のコレクタ電極32等に相当)が形成される複数の第3の領域Za3が割り付け、例えば左側から第1の領域Za1、第2の領域Za2、第3の領域Za3、第2の領域Za2、第1の領域Za1・・・という順番で配列されている。
図85に示すように、第1の領域Za1には、下部電極配線212と上部電極配線218がそれぞれ間を置いて隣接して形成され、これら下部電極配線212と上部電極配線218を跨ぐようにそれぞれ複数の電子放出素子12Bが設置されている。各電子放出素子12Bは、強誘電体チップ244(エミッタ部22)の上面に上部電極18が形成され、誘電体チップ244の下面に下部電極20(図示せず)が形成された形態を有する。そして、上部電極18と上部電極配線218とが導電ペースト246によって電気的に接続され、下部電極20(図示せず)と下部電極配線212とが導電ペースト248によって電気的に接続されている。なお、図84に示すように、下部電極配線212のコモンリード線220は、背面ガラス基板200の一方の側面に引き出され、上部電極配線218のコモンリード線(図示せず)は、背面ガラス基板200の他方の側面(例えば他方の側面の反対側の側面:図示せず)に引き出されている。第3の領域Za3に形成されたアノード電極242も背面ガラス基板200の前記他方の側面に引き出されている。
そして、図83に示すように、第1の領域Za1に配列された複数の電子放出素子12Bから放出された電子は、第3の領域Za3に配線されたアノード電極242に向かって進行し、そのうちの一部の電子がガス232(例えばHgガス)中のガス粒子(例えば水銀粒子)に衝突し、これによって、ガス粒子(例えば水銀粒子)が励起状態になって紫外線UVを発する。この紫外線UVが、第2の領域Za2に形成された白色蛍光体240や前面ガラス基板202の白色蛍光体(図示せず)に当たることによって、白色蛍光体が励起して外部に蛍光体発光として具現されることになる。
発光パルス幅は、発光周期が300Hzの場合、第3の実施の形態に係る光源10Cと同様に、立ち上がり時間taが1.7msec、立ち下がり時間tbが3.3msecであった(図81参照)。
この第5の実施の形態に係る光源10Eにおいては、蛍光ランプ用の蛍光体が使用可能であって、原理的に冷陰極管の同等の発光効率を得ることができる。
上述した第3の実施の形態に係る光源10C並びに第5の実施の形態に係る光源10Eにおいては、例えば液晶ディスプレイ用のバックライト等における冷陰極管、LEDの代替、熱陰極管の代替としても利用することができる。
車載用途では、バックライトに対しても、保存温度で−40〜+95℃、動作温度(パネル温度)で−30〜+85℃が要求されるが、第3の実施の形態に係る光源10C並びに第5の実施の形態に係る光源10E(特にガスとして水銀を使用しない場合)においては、上述の温度範囲による使用を実現することができる。
なお、この発明に係る光源は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。