JP4666558B2 - 濾水性向上方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、濾水性向上方法に関するものであり、詳しくは特定の構造単位を必須成分として含有するカチオン性及び/又は両性重合体を、抄紙前の製紙原料中に添加することを特徴とする濾水性向上方法関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙を製造する場合、生産性を向上させるには種々のアプロ−チが考えられるが、ワイヤ−上の濾水性と脱水プレス後の含水率を低下して、抄速アップ、またドライヤ−の蒸気使用量を減少させ生産性を向上させるために抄紙前の製紙原料中に添加されるのが濾水性向上剤である。古くからポリエチレンイミンが使用されてきたが、添加量が多くコストがかかること、用水が発泡することなどの欠点があり、種々の改良発明がなされてきた。例えばポリアクリルアミドのホフマン反応物を添加する方法(特開平2−175706号公報)、ポリビニルアミン系高分子を添加する方法(特開昭63−165412号公報)、あるいはベンジル基含有アクリル系カチオン性共重合体とコロイダルシリカを併用する方法(特開平9−279498号公報)などが開示されている。しかしこれら薬剤は、それぞれ問題点を抱えている。即ち、ポリビニリアミン系重合体は、製造過程が煩雑であり、ベンジル基含有アクリル系カチオン性共重合体とコロイダルシリカを併用する方法は、最適なコロイダルシリカを使用するには、非常に厳密な品質管理が必要になるなどである。
【0003】
一方、一級アミンを有する高分子の代表例であるポリビニルアミン系高分子を合成するには、N−ビニルカルボン酸アミドを重合した後、あるいはポリビニルアミジン系高分子はN−ビニルカルボン酸アミドとアクリロニトリルとの共重合の後、それぞれ側鎖のN−アシル基を酸またはアルカリによって加水分解し、一級アミノ基あるいはアミジン基を生成させていた。一級アミノ基を有する高分子は、分子内に多数の一級アミノ基が存在するため他の高分子に較べ、種々の特異な性質を有する。特に親水性微粒子への吸着性が高いため、例えば色素定着性が高い、汚泥脱水用凝集剤として使用すると、脱水ケ−キの含水率が低下する、濾水性向上剤として有用である種々の特徴を有する。
【0004】
一級アミンを有するビニルアミン系重合体は、一級アミノ基であるため抄紙pHが7〜9など比較的高い領域であると、凝集性能が低下するという問題が存在する。N−ビニルカルボン酸アミドと他の単量体との共重合体を酸により加水分解し、一級アミノ基含有重合体を製紙用添加剤として応用する技術は、特開昭63−165412公報に開示されていて、N−ビニルホルムアミドに対しアクリロニトリルを10〜60モル%を共重合した重合体を塩酸により加水分解し、一級アミノ基含有重合体を製造している。また、特開平6−123096公報に記載されている発明は、前記ニ物質単量体からなる共重合体の酸加水分解により、一級アミノ基及びアミジン構造含有重合体を製造している。しかし、カチオン性アクリル系単量体との共重合体の酸加水分解については記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ビニルアミン系重合体の性能のうち、抄紙pHが7〜9など高pH領域で、凝集性能が低下するという欠点を解決し、抄紙pHが中性、アルカリ性でも優れた効果を発揮するカチオン性重合体を用いて、濾水性を向上させる抄紙方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため詳細な検討を行った結果、以下のような発明に達した。すなわち、本発明の請求項1の発明は、下記一般式(1)及び(2)で表わされる構造単位を必須成分として含有するカチオン性及び/又は両性重合体を、抄紙前の製紙原料中に添加することを特徴とする濾水性向上方法である。
【化1】
R1は水素またはメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキルまたアルコキシ基あるいはベンジル基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキルまたアルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは水酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基あるいはアルコキシレン基、X − 1 は陰イオンをそれぞれ表わす
【化2】
X − 2 は陰イオンを表わす
【0007】
請求項2の発明は、前記カチオン性重合体が、N−ビニルカルボン酸アミド50〜90モル%、下記一般式(3)で表わされるカチオン性単量体10〜50モル%及び他の非イオン性単量体からなる単量体混合物を重合した後、酸により加水分解して製造することを特徴とする請求項1に記載の濾水性向上方法である。
【化3】
R5は水素またはメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキルまたアルコキシ基あるいはベンジル基、R8は水素、炭素数1〜3のアルキルまたアルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基あるいはアルコキシレン基、X − 3 は陰イオンをそれぞれ表わす
【0008】
請求項3の発明は、前記カチオン性重合体が、前記一般式(1)で表わされる構造単位を10〜50モル%、前記一般式(2)で表わされる構造単位を10〜80モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の濾水性向上方法である。
【0009】
請求項4の発明は、前記N−ビニルカルボン酸アミドが、N−ビニルホルムアミド及び/またはN−ビニルアセトアミドであることを特徴とする請求項2に記載の濾水性向上方法である。
【0010】
請求項5の発明は、前記カチオン性重合体の分子量が100万〜2000万であることを特徴とする請求項1に記載の濾水性向上方法である。
【0011】
請求項6の発明は、前記酸が、塩酸であることを特徴とする請求項2に記載の濾水性向上方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のカチオン性重合体は、前記一般式(1)及び(2)で表わされる構造単位を必須として含有する。このような重合体は、N−ビニルカルボン酸アミドとカチオン性アクリル系単量体からなる共重合体を酸加水分解することによって製造することができる。以下、具体的に製造方法を説明する。まず、カチオン性アクリル系単量体とN−ビニルカルボン酸アミド、例えばN−ビニルホルムアミドあるいはN−ビニルアセトアミドなどの混合した水溶液を調製し、pHを約4〜約6に合わせる。N−ビニルカルボン酸アミドは、あまり強酸性側に水溶液を調整すると、重合前に加水分解する確立が高まるのでpH3以下にはしないよう注意が必要である。また、pHが6より高くなると重合後、アクリル系カチオン構造単位が加水分解しやすくなるので、やはり注意が必要である。
【0013】
単量体溶液調整後、窒素雰囲気中、温度を10〜70℃、好ましくは20〜60℃でラジカル重合開始剤によって重合を開始させ、共重合物を得た後、酸類によって加水分解反応を行い目的物を合成する。重合方法は特には制限は無く、水溶液重合法、分散重合法、油中水型エマルジョン重合法など用い加水分解前の共重合物を得るが、製紙用添加剤として用いるには、水溶液重合を用いるのが便利である。
【0014】
加水分解反応は、通常、70〜100℃、好ましくは80〜90℃で行う。使用する酸は、一価の酸が好ましく塩酸や硝酸を用いるが、塩酸が好ましい。硫酸は硫酸イオンが一級アミノ基と複合体を形成しやすく、加水分解後、重合体が不溶化しやすい。リン酸は使用できるが、反応がやや遅く効率的ではない。酸の添加量としては、カルボン酸アミド基に対し、25当量%〜300当量%であり、好ましくは50モル%〜150モル%である。通常N−カルボン酸アミドの共重合率が高くなると酸の使用量を増加させないと、定量的に一級アミノ基が生成しない。
【0015】
共重合するアクリル系単量体の例としては、三級アミノ基や四級アンモニウム基含有単量体である。三級アミノ基含有単量体の例として、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどである。四級アンモニウム基含有単量体の例としては、前記三級アミノ基含有単量体の(メタ)の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられる。
【0016】
本発明のカチオン性重合体は、性能を低下させない範囲で共重合可能であって、酸加水分解し難い他の非イオン性単量体を共重合することができる。例えばN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミドなどがあげられ、非イオン性の単量体のうちから一種または二種以上と組み合わせ共重合することも可能である。
【0017】
酸加水分解後のカチオン性重合体中の一般式(1)で表わされる構造単位のモル%としては、10〜50モル%であり、好ましくは15〜50モル%である。一般式(1)で表わされる構造単位のモル%が、10モル%未満では、製紙原料の高pH領域での性能が低下し、また、50モル%より高ければ一級アミノ基含有量が少なくなりやはり性能が低下する。一般式(2)で表わされる構造単位のモル%としては、10〜80モル%であり、好ましくは20〜70モル%である。
【0018】
重合を開始させるラジカル重合開始剤はアゾ系,過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)などがあげられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。これら開始剤で最も好ましいものは、水溶性のアゾ系開始剤である2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物などである。
【0019】
酸加水分解後のカチオン性重合体中の一般式(1)で表わされる構造単位のモル%としては、10〜50モル%であり、好ましくは15〜50モル%である。一般式(1)で表わされる構造単位のモル%が、10モル%未満では、製紙原料の高pH領域での性能が低下し、また、50モル%より高ければ一級アミノ基含有量が少なくなりやはり性能が低下する。一般式(2)で表わされる構造単位のモル%としては、10〜80モル%であり、好ましくは20〜70モル%である。
【0020】
これらカチオン性及び/又は両性重合体の分子量は、100万〜2000万であるが、好ましくは300万〜1000万である。100万以下では凝集力が不足しワイヤ−上の濾水性が低下し、また2000万以上になっても、凝集力はあまり変わらず、溶液粘度も高くなり過ぎ分散性も悪くなるほか、水溶液の取り扱いも悪くなり、特にメリットはない。
【0021】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0022】
(合成例)
表1に記載したような各単量体のモル%からなる25重量%の混合溶液のpHを4.0〜4.5に調整し、窒素雰囲気中で、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物を対単量体0.02%添加することにより、20℃において重合を開始させ、ゲル上の重合物を得た。その後、ミ−トチョッパ−により造粒し、塩酸をし込み、し込み単量体濃度が20重量%に成るよう脱イオン水を加えた。次ぎにN−ビニルホルムアミド当たり表1に記載したよう割合で塩酸を添加し、攪拌下、85℃、6時間で加水分解反応を行った(試作−1〜試作−7)。反応後、pH4.0と11.0でコロイド滴定することにより全カチオン当量値と四級アンモニウム当量値を測定し、一級アミン量を計算した。また、静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS−7000)によって重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
(比較合成例)
合成例と同様な操作により、カチオン性単量体とアクリルアミド共重合物(比較−1)、N−ビニルホルムアミドとカチオン性単量体からなる共重合物の未加水分解(比較−2)及びN−ビニルホルムアミド単独重合物の加水分解物(比較−3)をそれぞれ合成した。結果を表1に示す。
【0024】
【実施例1〜14】
新聞古紙を2%分散液に離解した後、カナデイアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(CSF)値表示で150mLに叩解した。この分散液を0.4重量%に希釈し濾水性の試験に用いた。紙料調整後のパルプスラリ−のpHは7.13であった。調製した0.4重量%分散液を1000mLのメスシリンダ−に採取し、試作−1〜試作−7を対液300ppm添加し、メスシリンダ−を5回転倒することにより攪拌しCSFテスタ−に投入し濾水量を測定した。この後、CSFテスタ−のメッシュ上に残ったパルプを低部が100メッシュの濾布を敷いてある二重底になった遠心管に充装し、デジタル式遠心分離機を用い3000rpm、5分の条件によりパルプの脱水を行った(マシン上の脱水ク−チロ−ルを想定)。脱水されたパルプの重量を測定後、105℃、20時間乾燥しその重量を測定する。その後、900℃、2時間の条件で焼却し無機分重量を測定することにより灰分歩留率の測定を行う。また同様の試験につき、硫酸バンドを対パルプ2%添加した場合についてもおこなった。結果を表2に示す。
【0025】
【比較例1〜6】
比較−1〜比較−3を用いた他は、実施例1〜7と同様に試験を行った。結果を表2に示す。
【0026】
表2を見て明らかなように、硫酸バンド無添加の場合でも、本発明の試作−1〜試作−7を用いた実施例1〜14は、比較−1〜比較−3の試料に較べ、濾水量は上回り、含水率は低下しているのがわかる。また、硫酸バンド無添加の場合は、比較−1〜比較−3の試料に較べて濾水量はそれほど差がないが、含水率が良く低下しているのがわかる。
【0027】
【実施例15〜21】
実施例1〜14と同様な操作により、中芯原紙用原料(pH7.85、全ss2.83%、灰分0.25%)を用い、中性抄紙の条件で濾水性と脱水性を試験した。添加薬品として、表1の試作−1〜試作−7を350ppm添加し、濾水性、脱水性及び灰分をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。
【0028】
【比較例7〜9】
実施例15〜22と同様な操作により、比較−1〜比較−3につき試験を行った。結果を表3に示す。
【0029】
表3を見て明らかなように、試作−1〜試作−7を用いた実施例15〜22は、
比較−1〜比較−3を用いた比較例7〜9に較べ、濾水量は上回り、含水率が良く低下しているのがわかる。
【0030】
【表1】
一級アミン、四級アミン:単位はモル%、分子量の単位は万(カッコ付きは、未加水分解物)
(a:メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(モル%)
(b:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(モル%)
(c:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物(モル%)
NVF:N−ビニルホルムアミド(モル%)、AAM:アクリルアミド(モル%)
【0031】
【表2】
硫酸バンド:対乾燥パルプ、350ppm、濾水量:ml
パルプ含水率:重量%、灰分歩留率:重量%
【0032】
【表3】
硫酸バンド:対乾燥パルプ、350ppm、濾水量:ml
パルプ含水率:重量%、灰分歩留率:重量%
Claims (6)
- 下記一般式(1)及び(2)で表わされる構造単位を必須成分として含有するカチオン性及び/又は両性重合体を、抄紙前の製紙原料中に添加することを特徴とする濾水性向上方法。
- 前記カチオン性重合体が、N−ビニルカルボン酸アミド50〜90モル%、下記一般式(3)で表わされるカチオン性単量体10〜50モル%及び他の非イオン性単量体0〜20モル%からなる単量体混合物を重合した後、酸により加水分解して製造することを特徴とする請求項1に記載の濾水性向上方法。
- 前記カチオン性重合体が、前記一般式(1)で表わされる構造単位を10〜50モル%、前記一般式(2)で表わされる構造単位を10〜80モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の濾水性向上方法。
- 前記N−ビニルカルボン酸アミドが、N−ビニルホルムアミド及び/またはN−ビニルアセトアミドであることを特徴とする請求項2に記載の濾水性向上方法。
- 前記カチオン性重合体の分子量が100万〜2000万であることを特徴とする請求項1に記載の濾水性向上方法。
- 前記酸が、塩酸であることを特徴とする請求項2に記載の濾水性向上方法。
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