JP4658958B2 - セキュリティ要素を有するデータ保持装置とその製造方法 - Google Patents

Description

本発明は、金属層を有する積層構造のセキュリティ要素に関する。この金属層内にレーザビームで、パターン、文字、数字、イメージの形態で識別子が導入される。本発明は、更にこの様なセキュリティ要素を製造する方法及びこのセキュリティ要素を具備したデータ保持装置に関する。

身分証明書（例、クレジットカード、銀行引き出しカード、身分証明カード）を、レーザ彫り込み手段により、個人用データを入れる（個人化する）ことは公知である。レーザによる彫り込みにより個人データを入れるに際し、カード材料の光学特性を取り消し不可能の形で変化させるが、これは、レーザビームを適宜誘導しながら、所望の識別子の形態で行われる。身分証明書を現在のコピー機で再生することを阻止するために、個人化用データは、暗いバックグラウンドの上にある金属層内に導入される。金属製基板は、入射光ビームの反射を方向付け、オリジナルから広く散乱した光のみをピックアップするようコピー機内にはディテクタが通常配置されているため、金属表面と導入された識別子は、コピー内で真っ黒に見える。

ドイツ特許第３１５１４０７Ｃ１号明細書

特許文献１から、記録媒体としてプラスティック製ホイル（薄膜）を具備した積層構造の身分証明書（ＩＤカード）は公知である。このプラスティック製ホイルは、可視波長範囲で完全に透明であるが、情報を刷り込むために用いられた赤外線レーザの波長を強く吸収するので、ホイルの局部的黒化がレーザビームの影響から発生する。かくしてイメージと／又はデータが、良好な解像度で、プラスティック製ホイルに刷り込まれる。

上記により、本発明の目的は、データ保持装置にセキュリティ要素を書き込むことである。データ保持装置は、特に有価ドキュメント（例、身分証明書、銀行券等）であり、パターン、文字、数字、イメージの形態で識別子を具備し、同時に写真あるいはゼロックスによる偽造（再生）に対し、高度の保護を提供することである。

本発明の目的は、特許請求の範囲に記載した特徴を有するセキュリティ要素により解決できる。この様なセキュリティ要素とセキュリティ要素を具備したデータ保持装置（データキャリア）の製造方法も特許請求の範囲に記載される。本発明の変形例は、従属クレームに記載されている。

本発明のセキュリティ要素は、金属層が２枚の半透明コーティング層の間に配置される。これにより金属層内の識別子が透かし効果を現す。識別士は、透過光で見たときにはポジティブのイメージで、反射光で見たときにはネガティブのイメージで見える。

本明細書において、「透明」とは材料が完全な透明性を意味する。「半透明」とはある透明性の観点からは、透き通って見えるが、透明材料とは異なり、半透明材料の背後に配置された目的物は、拡散してのみ見えるかあるいは全く見えない状態を言う。「不透明」とは、材料が光を遮ることを意味する。

コーティング層の透明性に起因して、金属層内に導入されたギャップは透過光に対しては明るく見え、残った金属層領域は暗く見える。この見え方を、ポジティブなイメージと称し、一方反射光においては、金属層内のギャップは、金属層領域よりも暗く見え、イメージの印象はネガティブなイメージに反転する。この反転は、従来の紙の透かし効果に対応させて、本明細書でも透かし効果と称する。しかしこの透かし効果の形成は、紙の透かし効果の場合に比べると全く異なる。

コーティング層の透明性を最適化して、レーザ照射手段により変化した領域と照射していない領域との良好な対比がでるようにするのが好ましい。特に本発明の好ましい実施例においては、可視スペクトル範囲において、半透明コーティング層の透明度は、１０％未満、好ましくは５％未満である。

半透明コーティング層を着色する、特に、反射光に対し白くあるいはパステルカラーに見えるようにすることもできる。

好ましくは、金属層ないへの識別子の形成／導入は、金属層の局部的材料の剥離により、あるいは、金属を透明あるいは半透明に局部的に変換することにより行われる。

金属層は、好ましくはアルミ層、銅層、金層である。好ましくは金属層の厚さは、５−１０μｍの間である。コーティング層は、紙、ＰＶＣ，ポリエステル、ＰＣあるいはそれらの化合物からなる層が好ましい。コーティング層の層厚は、１００−２５０μｍの間である。

半透明コーティング層は、ラベリング用に使用されるレーザ波長で大きな吸収を示さないように、選択するのが好ましい。この為レーザ波長は、赤外線スペクトル範囲内で、例えば１．０６μｍである(Ｎｄ：ＹＡＧレーザ又はＮｄ：ガラスレーザ)、あるいは１０．６μｍ(ＣＯ_２レーザ)である。これらの波長に関しては、身分証明書のようなデータキャリアに適し、かつ可視スペクトル波長における必要な透明性とレーザ波長における低吸収性と組み合わせ持った材料は、当業者に公知である。

しかし、当業者にとって、少なくとも１つのコーティング層がレーザ光を吸収し、光吸収カバー層が有る側から見たときに、黒化(blackening)により生成された従来のイメージが存在し、他側から見たときに、透過した光が見ることができるものも考えられる。

識別子は、個人用データ、例えば署名、生年月日、ポートレート等を含む。あるいは、データキャリアに関連するデータ、例えば、シリアル番号、有効期限、発行元と発行機関に関する情報等を含む。スクリーンされた識別子は、レーザ刷り込みに特に適したものである。このスクリーンドットは、パルスレーザ照射により容易に生成可能である。

本発明の好ましい実施例においては、金属層は、前記半透明コーティング層の一方の層上に、蒸着あるいは刷り込みにより、形成される。別の構成においては、金属層は、前記半透明コーティング層の間に配置された透明な中間層上に、蒸着あるいは刷り込みにより、形成される。

好都合なことは、半透明コーティング層の一方又は好ましくは両方は、少なくとも前記識別子の領域で、透明な保護層を具備する。

本発明は、上記のセキュリティ要素を有する、データキャリア（データ保持装置）特に、銀行券、識別カード等の有価文書を含む。前記のセキュリティ要素は、データキャリアの内部に埋め込まれ、データキャリアの一部を構成する。あるいは、後からデータキャリアの表面に形成、例えば、取り付けられる。後者の場合、データキャリアは、セキュリティ要素の識別子の領域で、透明あるいは半透明に形成するのが好ましい。セキュリティ要素は、データキャリアの開口上、例えば銀行券の孔の空いた部分上に配置することも可能である。データキャリアそのものは、金属層をその間に挟んだ２枚の紙層から形成することも考え得る。

上記のセキュリティ要素に加えて、データ保持装置（データキャリア）は、１つあるいは複数のセキュリティ特徴を有する。特に発光性物質、磁気物質あるいは電気物質、更にはホログラフ構造体のような光学的可変物質を有することもできる。

上記のセキュリティ要素を製造する本発明の方法は、金属層を２枚の半透明コーティング層（その可視スペクトル範囲での透過度は１０％未満であり）の間に配置して組み合わせるステップと、前記ステップにより形成された積層構造に、レーザビームで照射するステップとを有する。これにより、前記金属層内にパターン、文字、数字、イメージの形態で識別子を導入する。好ましくは、この識別子は、パルスレーザ放射、特に赤外線スペクトル範囲でのパルスレーザ放射で導入される。この際、レーザ放射の波長と半透明コーティング層の材料は、前記レーザ放射は、金属層には吸収されるが、半透明コーティング層には吸収されないように、組み合わされるのが好ましい。

図１に示す一実施例において、セキュリティ要素１２は、身分証明書１０のカード本体１４の一部である。

本発明の他の実施例においては、セキュリティ要素１２は、カード本体１４のようなデータ保持装置に形成された、例えば取り付けられた別個に製造された要素でもよい。

図２に示す一実施例において、セキュリティ要素１２は、金属層２０を有する。この金属層２０内に識別子１６がレーザビームによって形成／導入される。この実施例の場合、識別子１６は「ＡＢ」の文字列である。更に身分証明書１０は、個人データ又は一般データ１８を有する。この個人データ又は一般データ１８は、適宜の方法でカードに形成される。身分証明書１０のアプリケーションによっては、データである識別子１６，個人データ又は一般データ１８は、所有者の名前、誕生日、国籍、ポートレート、及び発行元と発行機関と発行日等を含む。

図２から分かるように、セキュリティ要素１２は、金属層２０に加えて更に、半透明コーティング上層２６と半透明コーティング下層２８とを有する。これらは、それぞれ透明プラスティック膜３０，３２により保護される。この一実施例においては、半透明コーティング層２６，２８は、約１５０μｍ厚の白色ポリカーボネート製のホイル（薄膜）からなる。この様なホイル（薄膜）は、他の用途においては不透明であることもあるが、本発明においては、このホイル（薄膜）は完全には不透明ではなく、カードの裏側から光を当てたとき光のある程度の部分が透過すると言う事実を利用している。従って、この様なホイル（薄膜）は、本明細書においては、半透明と称する、言い換えると、光透過性を有する。

識別子１６を身分証明書１０に形成／導入するために、カードに赤外線レーザからのレーザパルスを当てる。例えばこのレーザは、１．０６４μｍの波長のＮｄ：ＹＡＧレーザである。赤外線放射に対し、透明プラスティック膜３０，３２と半透明コーティング層２６，２８は、光の吸収は無視できる程度であり、レーザ照射によってはその性質は変化しない。これに対して、金属層２０は、レーザ照射を強く吸収し、当たったエネルギーで金属層２０に局部的な状態変化を引き起こす。金属層２０のこの状態変化は、例えば金属層２０の部分的あるいは完全な局部的な剥離(ablation)、あるいは金属層２０の透明状態あるいは半透明状態への局部的変質からなる。

かくして、ビーム直径とパルスエネルギーとを適宜選択することにより、識別子は、パターン、文字、数字、イメージの形態で金属層２０内に導入される。その結果、金属層２０は、金属層が変化した領域２２と、金属層が変化しない領域２４とからなる。

透過光で身分証明書１０を見たときは、光が領域２２を通して人の目に到達し明るく見えるので、識別子１６のポジティブなイメージが人に看取される。一方領域２４内の残った金属層は、カードの裏面から入った光を完全に遮断し、かくしてこの領域は暗く見える。

識別子のイメージの印象は、反射光では逆になる。反射光で見るときには、入射した光は、金属層２０の金属領域２４は透過領域２２よりもより強く反射する。その結果金属領域２４は明るく見え、金属層の無い透過領域２２は、暗く見える。この変化は、従来の透かし(watermarks)で起きた効果と類似するので、本発明でも透かし効果と称する。

本発明によるセキュリティ要素４０の他の実施例を図３に示す。同図において、セキュリティ要素４０は、約１００μｍの厚さのポリカーボネート製透明膜４２を有し、その上に金属層４４例えばアルミ層、銅層、金層が蒸着される。コーティングされたポリカーボネート製透明膜４２が、２枚の半透明カバー膜４６，４８の間に埋め込まれる。半透明カバー膜４６，４８のそれぞれは、ポリエステル製透明膜５０，５２と、それに形成されたプリント層５４，５６からなる。保護用に、更にポリエステル製透明膜５８，６０が半透明カバー膜４６，４８の上に配置される。

この実施例においては、半透明カバー膜４６，４８の半透明性は、プリント層５４，５６を介して実現され、印刷インクのカバレッジの程度とプリント層の厚さにより、必要に応じで幅広い範囲で調整可能である。

更に、印刷インクは、プリント層がラベルリングのためのレーザ放射に対し透明となるよう、選択される。個人データを入れるために、セキュリティ要素４０の金属層４４は、上記の識別子１６とを具備する。かくして透かし効果がセキュリティ要素を具備したデータ保持装置内に生成される。

以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

本発明によるセキュリティ要素１２を有する身分証明書の上面図。 図１のラインＩＩ−ＩＩに沿った切った身分証明書の断面図。 本発明の他の実施例によるセキュリティ要素の断面図。

１０ 身分証明書
１２ セキュリティ要素
１４ カード本体
１６ 識別子
１８ 個人データ又は一般データ
１６，１８ データ
２０ 金属層
２２ 透過領域
２４ 金属領域
２６ 半透明コーティング上層
２８ 半透明コーティング下層
２６，２８ 半透明コーティング層
３０，３２ 透明プラスティック膜
４０ セキュリティ要素
４２ ポリカーボネート製透明膜
４４ 金属層
４６，４８ 半透明カバー膜
５０，５２ ポリエステル製透明膜
５４，５６ プリント層
５８，６０ ポリエステル製透明膜

Claims (18)

1. 金属層を有する積層構造セキュリティ要素において、
   前記金属層内に、レーザビームにより、パターン、文字、数字、イメージの形で識別子が形成され
   前記金属層は、２枚の半透明コーティング層の間に配置され、
   前記半透明コーティング層の可視スペクトル範囲の光透過度は、１０％未満であり、
   これにより、前記金属層内の識別子は、透過光で見たときにはポジティブなイメージとなり、反射光で見たときにはネガティブなイメージとなる透かし効果を有する
   ことを特徴とする積層構造セキュリティ要素。
2. 前記半透明コーティング層の可視スペクトル範囲の光透過度は、５％未満である
   ことを特徴とする請求項１記載のセキュリティ要素。
3. 前記半透明コーティング層は、着色され、特に反射光で見たときには白あるいはパステルカラーに見える
   ことを特徴とする請求項１または２記載のセキュリティ要素。
4. 前記識別子の形成は、金属層内における金属の材料の剥離（ablation）により行われる
   ことを特徴とする請求項１−３のいずれかに記載のセキュリティ要素。
5. 前記識別子の形成は、金属を、透明あるいは半透明に局部的に変換することにより行われる
   ことを特徴とする請求項１−４のいずれかに記載のセキュリティ要素。
6. 前記半透明コーティング層は、ラベルリング用のレーザ放射の波長においては、大きな吸収を示さない
   ことを特徴とする請求項１−５のいずれかに記載のセキュリティ要素。
7. 前記識別子は、個人用データ、例えば署名、生年月日、ポートレート等を含む
   ことを特徴とする請求項１−６のいずれかに記載のセキュリティ要素。
8. 前記識別子は、シリアル番号、有効期間を含む
   ことを特徴とする請求項１−７のいずれかに記載のセキュリティ要素。
9. 前記識別子は、スクリーンドットの形態で現れる
   ことを特徴とする請求項１−８のいずれかに記載のセキュリティ要素。
10. 前記金属層は、前記半透明コーティング層の一方の層上に、蒸着あるいは刷り込みにより、形成される
    ことを特徴とする請求項１−９のいずれかに記載のセキュリティ要素。
11. 前記金属層は、前記半透明コーティング層の間に配置された透明な中間層上に、蒸着あるいは刷り込みにより、形成される
    ことを特徴とする請求項１−１０のいずれかに記載のセキュリティ要素。
12. 前記半透明コーティング層の一方又は両方は、少なくとも前記識別子の領域で、透明な保護層を具備する
    ことを特徴とする請求項１−１１のいずれかに記載のセキュリティ要素。
13. 請求項１−１２のいずれかに記載されたセキュリティ要素を有するデータ保持装置において、前記データ保持装置が、銀行券、識別カードを含む有価文書である
    ことを特徴とするデータ保持装置。
14. 前記セキュリティ要素が、データ保持装置の内部に埋め込まれるか、あるいはデータ保持装置の表面に形成される
    ことを特徴とする請求項１３記載のデータ保持装置。
15. 前記データ保持装置は、１つあるいは複数のセキュリティ特徴を有し、特に発光性物質、磁気物質あるいは電気物質、更にはホログラフ構造体のような光学的可変物質を有する
    ことを特徴とする請求項１３または１４記載のデータ保持装置。
16. 請求項１−１２のいずれかに記載のセキュリティ要素を製造する方法において
    （Ａ） 金属層を２枚の半透明コーティング層の間に、配置するステップと、
    前記半透明コーティング層の可視スペクトル範囲での透過度は、１０％未満であり、
    （Ｂ） 前記ステップにより形成された積層構造に、レーザビームを照射するステップと、
    これにより、前記金属層内にパターン、文字、数字、イメージの形態で識別子を導入する
    を有する
    ことを特徴とするセキュリティ要素の製造方法。
17. 前記識別子は、パルスレーザ放射、特に赤外線スペクトル範囲でのパルスレーザ放射で、生成される
    ことを特徴とする請求項１６記載のデータ保持装置。
18. 前記レーザ放射の波長と半透明コーティング層の材料は、前記レーザ放射は、金属層には吸収されるが、半透明コーティング層には吸収されないように、組み合わされる
    ことを特徴とする請求項１６または１７記載のデータ保持装置。

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