JP4652891B2 - 車両に搭載された蓄電池の残存容量測定方法と装置 - Google Patents
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Description
本発明は特に、蓄電池を搭載した車両において一時停車時に内燃機関を停止するアイドリングストップを行うかを処理などに適用して好適な、車両に搭載した蓄電池の残存容量を測定する方法およびその装置に関する。
このようなアイドリングストップを行う場合、アイドリングストップ後に自動車を再起動できるだけ車載の蓄電池に残存容量があることが必要である。そこで、アイドリングストップする際、アイドリングストップ後に自動車を再起動できるだけの残存容量が蓄電池にあることを知る必要がある。
以下、これまで知られている蓄電池の残存容量の測定方法について概観する。
しかしながら、この方法は自動車の起動時という特定のタイミングにおける初期残存容量を基準としており、タイミングとして、そのままアイドリングストップに適用できない。しかも、電流測定のために抵抗を設けているので、電池容量を消費するという不利益がある。
しかしながら、この方法も自動車の起動時という特定のタイミングにおけるバッテリの端子電圧の降下分を残存容量を検出するための基準としており、アイドリングストップの判定には向かない。加えて、この方法は上述した条件が課されているので、アイドリングストップの判断には適用できない。
しかしながら、この方法もスタータの起動時を条件としているから、アイドリングストップの判断には適切ではない。さらにこの方法の処理は複雑である。
しかしながら、この発明を、走行に伴って発電機から鉛蓄電池に充電される車載の鉛蓄電池の残存容量に適用することはできない。その理由は、発電機から鉛蓄電池への影響、自動車に搭載された装備の負荷変動などの影響を受けて鉛蓄電池の内部インピーダンスの測定が困難になる。鉛蓄電池の内部インピーダンスが測定できなければ、初期値と比較できず、寿命も判定できない。さらにこの発明を実施すると、測定装置の構成が複雑で寸法も大きくなり、価格も高くなる。したがって、この発明を乗用車などの通常の自動車に適用するには課題がある。
そのような電流積算法においては、電流値の測定誤差により積算値の誤差が次第に大きくなり、蓄電池の状態が正確に求めることができなくなる。そのため、「電流積算法」を改良した方法が、特許文献5及び特許文献6などに提案されている。
この方法は自動車用蓄電池の残存容量の検査法として有用であり、鉛蓄電池の残存容量を正確に知る必要がある電気自動車においては重要な技術である。
しかしながら、この発明は、電流積算法による測定に加えて、内部インピーダンスによる測定も実施する必要があり、この方法を実現する測定装置を製造した場合、装置価格が高くなる。特に、この発明は上述した内部インピーダンスを測定することが困難な事態があることから、内燃機関を搭載した自動車のアイドリングストップに適用できない。
そして、算出した補正用残存容量で、事前に求めた電流積算法の残存容量を補正する。
この発明は、電気自動車などのような電動車両に搭載された蓄電池(バッテリ)の残存容量を測定するに適した技術である。その理由は、電気自動車においては、その車両が常用する走行速度での放電電流値を、上記の特定の放電電流値とすることにより蓄電池の残存容量を求める機会が多いからである。
しかしながら、この発明は、内燃機関で動作する自動車(通常の自動車)に搭載した蓄電池の残存容量に適さない。その理由は、通常の自動車においては、自動車走行中に、頻繁に、一定時間継続するような特定の電流値が出現する機会が少ないので、蓄電池の残存容量を求める機会が極めて少なく補正すべき残存容量を求めることができないからである。
しかしながら、そのような方法を実施するためには、複数個のデータテーブルを用意する必要があり、処理が複雑になる。正確な残存容量の測定のためには、温度と劣化状態により該蓄電池の端子電圧と残存容量の関係が変化する場合、それに応じてさらに多くのデータテーブルを用意することが必要になるので、多量のデータを記憶させ、処理させるには複雑な装置が必要になると推察される。また、そのような多量のデータを作成する作業も厄介である。蓄電池の劣化状態の判断も難しい。
前記近似式を求める工程において、(1)満充電時の電池容量が前記複数の放電容量のいずれより大きな蓄電池について、所定の端子電圧に降下するまで、それぞれ一定の複数の第1の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧および放電経過時間を測定する第1の測定工程と、(2)前記それぞれ一定の放電電流値と放電時間経過との積である放電容量に対する、前記放電経過時間ごとに測定した前記端子電圧との関係を示す第1の特性を、前記複数の放電電流について求める、第1の特性算出工程と、(3)前記所定の端子電圧まで降下した前記蓄電池について、前記所定の端子電圧に降下するまで、前記複数の放電電流より低い一定の第2の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧と放電経過時間を測定する第2の測定工程と、(4)前記複数の放電容量Aにそれぞれについて、前記第1の測定工程におけるそれぞれ一定の複数の第1の放電電流Id1とそのときの放電経過時間T1との積として規定される第1の放電容量と、前記第2の測定工程における一定の第2の放電電流Id2とそのときの放電経過時間T2との積として規定される第2の放電容量と、前記放電容量Aについて、下記の演算による第3の放電容量を演算し、
(Id1×T1)+(Id2×T2)−A
(5)演算した前記第3の放電容量を前記第1の特性算出工程において求めた、放電容量・端子電圧特性に当てはめて該当する端子電圧を算出して、各放電容量について、放電電流と端子電圧との関係を示す第2の特性を求める第2の特性算出工程と、(6)前記第2の特性の結果を近似式に表す近似工程とを有する、
蓄電池の残存容量の測定方法が提供される。
前記近似式を求める手段は、
(1)満充電時の電池容量が前記複数の放電容量のいずれより大きな蓄電池について、所定の端子電圧に降下するまで、それぞれ一定の複数の第1の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧および放電経過時間を測定し、
(2)前記それぞれ一定の放電電流値と放電時間経過との積である放電容量に対する、前記放電経過時間ごとに測定した前記端子電圧との関係を示す第1の特性を、前記複数の放電電流について求め、
(3)前記所定の端子電圧まで降下した前記蓄電池について、前記所定の端子電圧に降下するまで、前記複数の放電電流より低い一定の第2の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧と放電経過時間を測定し、
(4)前記複数の放電容量Aにそれぞれについて、それぞれ一定の複数の第1の放電電流Id1とそのときの放電経過時間T1との積として規定される第1の放電容量と、一定の第2の放電電流Id2とそのときの放電経過時間T2との積として規定される第2の放電容量と、前記放電容量Aについて、下記の演算による第3の放電容量を演算し、
(Id1×T1)+(Id2×T2)−A
(5)演算した前記第3の放電容量を前記求めた放電容量・端子電圧特性に当てはめて該当する端子電圧を算出して、各放電容量について放電電流と端子電圧との関係を示す第2の特性を求め、
(6)前記第2の特性の結果を近似式に表す、
蓄電池の残存容量の測定装置が提供される。
好ましくは、前記蓄電池は鉛蓄電池であり、前記近似式を求める手段において、各放電容量について、前記放電電流と端子電圧との関係を一次式で近似し、一次式で近似した傾きデータと切片データを記憶手段に記憶させる。
本実施の形態の車両のアイドリングストップ処理装置20は、メモリ手段21と、蓄電池の残存容量の測定手段22と、アイドリングストップ判定手段23と、アイドリングストップ処理手段24と、再始動手段25とを有する。
蓄電池の残存容量の測定手段22は、図3を参照して詳述する蓄電池の残存容量を検出する手段である。
アイドリングストップ判定手段23は、蓄電池の残存容量の測定手段22で検出した蓄電池の残存容量がアイドリングストップ可能な水準にあるか否かを判定する手段である。
アイドリングストップ処理手段24は、アイドリングストップ判定手段23でアイドリングストップ可能であると判断したとき、エンジンを停止してアイドリングストップ状態にする手段である。
再始動手段25は、アイドリングストップ終了後、エンジンを再始動して自動車を走行させる手段である。
メモリ手段21に記憶する本発明の残存容量の判定基準について述べる。本願発明者は、残存容量をを判定する実用的な方法および装置を製作するに際して、下記の判定基準を策定した。
すなわち、本発明は、アイドリングストップ機能を有する自動車の鉛蓄電池の残存容量を測定するという限定のもとで、図2に図解したように、鉛蓄電池の残存容量の判定水準を規定し、これらの水準と該当する電池容量を後述する車両のアイドリングストップ処理装置のメモリに記憶し、蓄電池の残存容量の判断に使用する。
(3)第3水準:第2水準の電池容量に第1の所定の電池容量を加算した電池容量
(4)第4水準:第3水準の電池容量に第2の所定の電池容量を加算した電池容量
(5)第5水準:第4水準の電池容量に第3の所定の電池容量を加算した電池容量
エンジンを停止してからエンジンを再始動するまでの間に、自動車の装備を稼働するために必要な電池容量を求めるためには、エンジンを停止してからエンジンを再始動するまでの時間、即ち、アイドリングストップ時間を規定する必要がある。さらに、アイドリングストップ中に稼働される自動車装備で消費する電力量を知る必要がある。
しかしながら、アイドリングストップ前に、アイドリングストップ時間およびその期間の電力消費量を求めることは困難である。
そこで、本発明の実施の形態においては、標準的なアイドリングストップ時間と、その間に消費する電池容量を推定しておく。これらはメモリ手段21に記憶しておく。
そのため、アイドリングストップ処理手段24は、たとえば、標準的なアイドリングストップ時間が経過した直後、または、アイドリングストップ期間に消費電力が標準的な電池容量を超過した直後に、エンジンを再始動して発電機を動作して蓄電池に充電する、あるいは、アイドリングストップ期間中に稼働中の装備の一部を停止する。
付加的な水準はこのように複数設定できるが、このような付加的な水準を多く設定すると残存容量測定装置が複雑になり、価格も高くなる。さらに、ドライバなど利用者にとって蓄電池の残存容量の認識が複雑になる。
そのような観点からは、実用的には、付加的な水準は、1〜3程度が好ましい。したがって、合計の水準は3〜5程度である。
水準の決定例を、実施例として、詳細を後述する。
残存容量の絶対値または残存容量の満充電時の容量との比率を求める従来の方法と比較すると、本発明の実施の形態の車両のアイドリングストップ処理装置20において、3〜5段階の水準のどの水準にあるかを判定するだけなので、装置の簡略化が可能で、コストを抑えることができ、装置の外形を小さくでき、実用上の効果が極めて高いものになる。
アイドリングストップ処理手段24においてアイドリングストップを実施するに際して、第2水準以上の残存容量が車載の鉛蓄電池にあるか否かを決定するため、蓄電池の残存容量の測定手段22により、蓄電池の残存容量を知る必要がある。
そのような蓄電池の残存容量の測定手段22としては、特開昭53−127646号公報、特開昭63−27776号公報、特開平1−39068号公報、特許第2536257号公報(特開平4−95788号公報)、特許第2791751号公報(特開平8−19103号公報)、特開平9−171065号公報などに記載された、従来技術として述べた方法を適用することもできる。
しかしながら、本実施の形態による好適な蓄電池の残存容量の測定手段22として、図3を参照して本実施の形態による好適な方法と装置について述べる。
図3に図解した鉛蓄電池の残存容量測定装置は、スタータ1と、発電機2と、鉛蓄電池3と、空調機、暖房機、照明器具、運行案内装置、音楽装置、ラジオなどの電気装備4とを有する自動車に、電流計6と、電圧計7と、電流計6と電圧計7との計測値を用いて演算処理する演算処理装置8と、液晶表示器などの結果を表示する表示器9を有する。
図3には、自動車の種々の制御を行う制御用コンピュータ10も図解されている。この制御用コンピュータ10として、図1に図解した車両のアイドリングストップ処理装置20のメモリ手段21、アイドリングストップ判定手段23、アイドリングストップ処理手段24、再始動手段25を組み込むこともできる。
一般に、電流計6、電圧計7、演算処理装置8および制御用コンピュータ10で消費する電池容量は、電気装備4などで消費する電池容量より少ない。
なお、本実施の形態においては、便宜的に、第2水準の電池容量として、考察した、電気装備4の電池容量に、電流計6、電圧計7、演算処理装置8および制御用コンピュータ10で消費する電池容量を含めたものとする。
電圧計7は鉛蓄電池3の端子電圧を測定する。
電流計6も、電圧計7も周知の計測計を用いることができる。
演算処理装置8には、本実施の形態の鉛蓄電池の残存容量の測定方法に関係する自動車の動作(停止も含む)、運行に関する情報が、自動車の制御用コンピュータ10から伝達される。したがって、演算処理装置8は下記に述べる鉛蓄電池3の残存容量の算出、および、上述した水準の判定に必要な情報は保持されているものとする。
なお、演算処理装置8と制御用コンピュータ10とは一体構成にすることもできるが、本実施の形態においては、それぞれ、演算処理装置8と制御用コンピュータ10とが独立している場合について述べる。
自動車の設計者は、事前に、第1〜第3水準、あるいは、第1〜第4水準、または、第1〜5水準ごとに、それぞれの水準の電池容量に対応する、鉛蓄電池3の放電電流値と、鉛蓄電池3の端子電圧値を関係づけたデータを求めておき、メモリにテーブルとして記憶しておく。
このように、本実施の形態においては、上記複数の水準の電池容量に対応する特定の残存容量を示す、鉛蓄電池3の放電電流値と鉛蓄電池3の端子電圧との関係をデータとして準備し、そのデータを演算処理装置8内のメモリにデータテーブルとして記憶する。すなわち、本実施の形態は、定電流放電時の放電電流値と端子電圧の関係を用いることを特徴としている。
満充電時の電池容量が複数の水準で規定する放電容量のいずれより大きな電池容量を有する蓄電池について、所定の端子電圧に降下するまで、それぞれ一定の複数の第1の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧および放電経過時間を測定する。
一定の第1の放電電流の値としては、それぞれの水準の電池容量において放電されたと仮定した値である。
所定の端子電圧とは、放電しても鉛蓄電池3が正常に動作可能な端子電圧である。
前記それぞれ一定の放電電流値と放電時間経過との積である放電容量に対する前記放電経過時間ごとに測定した前記端子電圧との関係を示す第1の特性を、前記複数の放電電流について求める。
そのような特性としては、たとえば、図6に図解したグラフとして示すことができる。
前記所定の端子電圧まで降下した前記蓄電池について、前記所定の端子電圧に降下するまで、前記複数の放電電流より低い一定の第2の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧と放電経過時間を測定する。
前記複数の放電容量Aにそれぞれについて、第1の測定工程におけるそれぞれ一定の複数の第1の放電電流Id1とそのときの放電経過時間T1との積として規定される第1の放電容量と、第2の測定工程における一定の第2の放電電流Id2とそのときの放電経過時間T2との積として規定される第2の放電容量と、前記放電容量Aについて、下記の演算による第3の放電容量を演算する。
第2の特性の結果を近似式に表す。
このように、特定の残存容量を示す、鉛蓄電池3の放電電流値と端子電圧の関係は、一次式で近似できることが判った。一次式で近似できることは、メモリに記憶するべきデータ数が非常に少なくてすむし、その後の演算処理を簡単になる。その結果、演算処理装置8の製造が容易になり、低価格で製造できるという利点がある。
そのような観点からも、本実施の形態の鉛蓄電池の残存容量の測定装置と車両のアイドリングストップ処理装置20の蓄電池の残存容量の測定手段22として好ましい。
電流計6で鉛蓄電池3の充放電電流を計測し、同様に、電圧計7で鉛蓄電池3の端子電圧を計測する。この計測処理は演算処理装置8の動作に関係なく、連続的に行われる。電流計6で計測した放電電流、および、電圧計7で検出した鉛蓄電池3の端子電圧は連続的なアナログ信号、たとえば、電圧信号として出力される。
演算処理装置8のコンピュータは、A/D変換器でディジタル信号に変換された電流計6の電流計測値および電圧計7の電圧計測値を所定のサンプリング周期で入力する。
演算処理装置8は入力した電流計6の計測値mを、メモリに記憶されている、各水準の放電容量ごとの、傾きデータaと、切片データbとを用いて、(m×a)+bを演算して、鉛蓄電池3の端子電圧を推定する。この推定端子電圧を各放電容量について計算する。
演算処理装置6は、電圧計7で計測した端子電圧を、上記推定した複数の端子電圧と比較して、計測した端子電圧が推定した端子電圧のどれに近似しているか、どの端子電圧に近いかを判断する。
そして、演算処理装置8は、最も近似する推定端子電圧に対応する放電容量が、鉛蓄電池3の残存容量として推定する。図6に例示した特性から、その時の鉛蓄電池3の残存容量が推定できる。
このようにして推定した鉛蓄電池3の残存容量は、上述した水準を規定した電池容量に対応している。
したがって、演算処理装置8で算出した残存容量は図1に図解した車両のアイドリングストップ処理装置20のアイドリングストップ判定手段23において容易に判定に利用できる。
そのため、本発明の実施の形態のように、広範囲な電流値において蓄電池の残存容量の判定ができることは、実用上、極めて有用である。
以下、上記車両のアイドリングストップ処理装置20および鉛蓄電池の残存容量の測定装置の第1実施例を述べる。
本発明の実施の形態の車両のアイドリングストップ処理装置20および鉛蓄電池の残存容量の測定装置の第1実施例として、アイドリングストップ機能を有し、かつ、バッテリーとして鉛蓄電池を有する自動車において、図3に示した鉛蓄電池の残存容量の測定装置を用いて、各種温度条件で、エンジン始動に必要な鉛蓄電池の容量を試験した。
鉛蓄電池3として、満充電時の容量が20Ahのものを用いた。
実測の結果、スタータ1を起動してエンジン始動に必要な鉛蓄電池の容量は余裕をみて、8Ahであった。したがって、この8Ahを第1水準とした。
第1水準の電池容量は、満充電時の電池容量の、40%であった。
アイドリングストップを行なう標準時間を3分間と仮定し、アイドリングストップ期間、鉛蓄電池3から車載の電気装備4に最高30Aの電流が流れると仮定した。したがって、アイドリングストップ時の電気装備4で消費する電池容量の標準値は、1.5Ahとなる。
第1水準の電池容量が8Ahであり、アイドリングストップ期間の電気装備4の消費電力が1.5Ahであるから、合計9.5Ahであるが、余裕をみて、第2水準の電池容量を10Ahとした。
第2水準の10Ahと、満充電時の電池容量20Ahとの間に、第3水準の電池容量として13Ah、第4水準の電池容量として18Ahを設定した。
本実験例では、付加的な水準は第3および第4の水準だけにした。
満充電時の電気容量が20Ahの鉛蓄電池を試料(サンプル)とし、公知の方法によって放電を行ない、その際の供試蓄電池の端子間電圧を実測した。
定電流放電は、供試鉛蓄電池に対して、5A、10A、20A、30Aで行った。このような定電流放電値は、鉛蓄電池から車載の電気設備に最高30Aが流れることから、0A〜30Aの間で適当な値として仮定したものである。
図6は上記実験で求められた、供試鉛蓄電池の放電電流値に対する端子電圧の関係を示したグラフである。
図6の横軸は鉛蓄電池の放電容量Dを示し、縦軸に鉛蓄電池の端子電圧を示す。
図6に図解のように、定電流で放電した場合、その電流値の相違により、そのときの端子電圧の垂下特性が異なる。
鉛蓄電池に対し、その端子電圧が10.5Vに低下するまで定電流放電を継続し、定電流放電を行った時間T1を測定した。時間T1とそれぞれの定電流放電の電流値を乗じて第1の放電容量D1を求めた。
12Vの鉛蓄電池は、1セル当たり約2Vの電池を6セル直列に接続し構成されている。1セルの電池が1.75V以下になるまで放電させた場合、過放電の為に電池自身にダメージを与えることとなる。従って、1.75Vの6倍である10.5Vを、放電における下限電圧とした。
4Aでの定電流放電放電を開始すると、一時的に鉛蓄電池の端子電圧が上昇したが、再び、端子電圧が10.5Vに低下するまで放電を継続した。この4Aで定電流放電していた時間T2を測定した。
この時間T2と放電電流値=4Aを乗じて第2の放電容量D2を求めた。
図6により、演算した放電容量D38 に相当する端子電圧Vd8 を読みとった。ここで読みとった定電流放電の電流値と電圧Vd8 をプロットして、図7(A)の特性を得た。
図7(B)は、供試鉛蓄電池の残存容量が第2水準の電池容量である10Ahの放電電流値と鉛蓄電池の端子電圧との関係を示す特性曲線L2を図解したグラフである。
図7(C)は、供試鉛蓄電池の残存容量が第3水準の電池容量である13Ahの放電電流値と鉛蓄電池の端子電圧との関係を示す特性曲線L3を図解したグラフである。
図7(D)は、供試鉛蓄電池の残存容量が第4水準の電池容量である18Ahの放電電流値と鉛蓄電池の端子電圧との関係を示す特性曲線L4を図解したグラフである。
図7(A)に図解した供試鉛蓄電池の残存容量が8Ahの時の放電電流値と端子電圧の関係を示す曲線L1は、傾きがa1、縦軸の切片がb1で示され、横軸の放電電流をxとすれば、下記式で表すことが出来る直線である。
L3=a3・x+b3 ・・・(3)
L4=a3・x+b4 ・・・(4)
このように、残存容量は基本的に、放電電流と端子電圧との一次式の関係式で表すことができる。
以上の処理が、図4に図解したステップ1の準備作業である。
Um4 >Vm>Um3
Um3 >Vm>Um2
Um2 >Vm>Um1
その後、電気装備4の動作を停止した。
この間、演算処理装置8は、電流計6の計測値を累積して、鉛蓄電池3から放電された電流値の積算を行なった。実験によれば、その値は7Ahに相当した。
Un4 >Vn>Un3
Un3 >Vn>Un2
Un2 >Vn>Un1
そこで、その後、エンジンの始動実験を行なったところ、エンジンの始動を行なうことができた。
エンジンを停止した状態で、電流値Apの定電流放電を5秒間行ない、その間に、鉛蓄電池3の端子電圧を電圧計7で測定し、電圧Vpを得た。
その後、電圧計7で測定した電圧値Vpについて、下記の判定を行った。
Up4 >Vp>Up3
Up3 >Vp>Up2
Up2 >Vp>Up1
本実施例の方法は、図4に示したステップ1に示した準備作業の後の、電流計6と電圧計7の測定結果を用いた演算処理装置8で行う処理は、簡単であり、実施が容易である。したがって、図3に図解した電流計6、電圧計7および演算処理装置8を有する本実施の形態の鉛蓄電池の残存容量の測定装置は低価格で容易に大量生産できるので、種々の自動車などに搭載して適用することができる。
温度または劣化状態により、鉛蓄電池3の残存容量の水準における、放電電流量と端子電圧値の関係が変化する特性を有する鉛蓄電池を用いた場合、必要に応じて、判定すべき残存容量のそれぞれの水準において、温度及び/または劣化状態に応じた、放電電流値と端子電圧値のデータテーブルを用意して、その結果で上述した値を補正することが望ましい。
温度及び/または劣化状態に応じてデータテーブルを追加して用意する場合、用意するべきデータテーブルが多くなることによって、装置のコストが高くなるという問題が起こる可能性がある。その場合、予め、温度及び/または劣化状態による補正パラメータを求めておき、補正パラメータにより、鉛蓄電池の残存容量の水準ごとの、放電電流値と端子電圧値の関係の補正を行なうことが望ましい。こうすることによって、判定すべき水準ごとに一つのデータテーブルを用意すればいいことになり、装置のコストを抑えることが可能になる。
本発明の第2実施の形態として、上述した第1実施の形態による鉛蓄電池の残存容量の水準を判定して第2水準以上の残存容量が判った時、次の停止における鉛蓄電池の残存容量の測定装置が上述した水準判定を行う動作をするまでの間、電流計6で連続的に計測した放電電流値を演算処理装置8において累積して、公知技術のように、累積した積算電流値を用いて蓄電池の残存容量の水準を判定することもできる。
第2実施の形態によれば、最も近くに行なった残存容量の判定水準に加えて、その判定を行なった時点からこの判断の時点までの充放電電流の積算値によって判断を行なうことによって、判断の精度を高めることが可能になる。
第3実施の形態は、図3〜図7を参照して述べた方法および装置に代えて、特開平9−171065号公報に開示された方法を適用して、鉛蓄電池の残存容量を算出して、水準の判定を行う。
特開平9−171065号公報に開示された方法は、(1)予め特定の放電電流値での定電流放電における、蓄電池の端子電圧と残存容量との関係を示すデータテーブルを用意しておき、(2)電流計6で計測した電流値が特定の放電電流になった時を演算処理装置8で検出して、そのとき、演算処理装置8で蓄電池の残存容量を求める。
しかしながら、第3実施の形態によって蓄電池の残存容量を算出し、演算処理装置8がその結果を判定して水準を決定することができる。
第4の実施の形態としては、特開昭53−127646号公報、特許公報第1554660号、特許公報第1927445号に記載された発明、すなわち、エンジンのスタートキーを回す際に生じる電流と電圧の関係を用いて蓄電池の残存容量を算出する。
蓄電池の残存容量は演算処理装置8で演算する。
しかしながら、第4実施の形態によって蓄電池の残存容量を算出し、演算処理装置8がその結果を判定して水準を決定することができる。
2・・発電機
3・・鉛蓄電池
4・・電気装備
6・・電流計
7・・電圧計
8・・演算処理装置
9・・表示器
10・・制御用コンピュータ
20・・車両のアイドリングストップ処理装置
21・・メモリ手段
22・・蓄電池の残存容量の測定手段
23・・アイドリングストップ判定手段
24・・アイドリングストップ処理手段
25・・再始動手段
Claims (4)
- 予め、複数の放電容量における放電電流と蓄電池の端子電圧との関係を、放電電流を変数として端子電圧を求める、前記複数の放電容量に対応した複数の近似式を求める工程と、
車両の動作中、車載の蓄電池の実際の放電電流と、前記蓄電池の実際の端子電圧とを連続的に測定する測定工程と、
測定した放電電流を前記求めた複数の近似式に代入して複数の端子電圧の推定値を算出する推定端子電圧算出工程と、
前記蓄電池の実測した端子電圧を前記算出した複数の推定端子電圧と比較して、どの範囲の推定端子電圧にあるかを判定する判定工程と、
前記複数の放電容量のうち、その範囲にある推定端子電圧に対応する放電容量を決定してその放電容量を前記蓄電池の残存容量と決定する残存容量決定工程と
を有し、
前記近似式を求める工程において、
満充電時の電池容量が前記複数の放電容量のいずれより大きな蓄電池について、所定の端子電圧に降下するまで、それぞれ一定の複数の第1の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧および放電経過時間を測定する第1の測定工程と、
前記それぞれ一定の放電電流値と放電時間経過との積である放電容量に対する、前記放電経過時間ごとに測定した前記端子電圧との関係を示す第1の特性を、前記複数の放電電流について求める、第1の特性算出工程と、
前記所定の端子電圧まで降下した前記蓄電池について、前記所定の端子電圧に降下するまで、前記複数の放電電流より低い一定の第2の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧と放電経過時間を測定する第2の測定工程と、
前記複数の放電容量Aにそれぞれについて、前記第1の測定工程におけるそれぞれ一定の複数の第1の放電電流Id1とそのときの放電経過時間T1との積として規定される第1の放電容量と、前記第2の測定工程における一定の第2の放電電流Id2とそのときの放電経過時間T2との積として規定される第2の放電容量と、前記放電容量Aについて、下記の演算による第3の放電容量を演算し、
(Id1×T1)+(Id2×T2)−A
演算した前記第3の放電容量を前記第1の特性算出工程において求めた、放電容量・端子電圧特性に当てはめて該当する端子電圧を算出して、各放電容量について、放電電流と端子電圧との関係を示す第2の特性を求める第2の特性算出工程と、
前記第2の特性の結果を近似式に表す近似工程と
を有する、
蓄電池の残存容量の測定方法。 - 前記近似式を求める工程において、各放電容量について、前記放電電流と端子電圧との関係を一次式で近似する、
請求項1に記載の蓄電池の残存容量の測定方法。 - 予め、複数の放電容量における放電電流と蓄電池の端子電圧との関係を、放電電流を変数として端子電圧を求める、前記複数の放電容量に対応した複数の近似式を求める手段と、
前記蓄電池の放電電流を測定する電流計と、
前記蓄電池の端子電圧とを測定する電圧計と、
前記電流計で測定した放電電流を前記求めた複数の近似式に代入して複数の端子電圧の推定値を算出する推定端子電圧算出手段と、
前記電圧計で測定した蓄電池の端子電圧を前記算出した複数の推定端子電圧と比較して、どの範囲の推定端子電圧にあるかを判定する判定手段と、
前記複数の放電容量のうち、その範囲にある推定端子電圧に対応する放電容量を決定して、その放電容量を前記蓄電池の残存容量と決定する残存容量決定手段と
を有し、
前記近似式を求める手段は、
満充電時の電池容量が前記複数の放電容量のいずれより大きな蓄電池について、所定の端子電圧に降下するまで、それぞれ一定の複数の第1の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧および放電経過時間を測定し、
前記それぞれ一定の放電電流値と放電時間経過との積である放電容量に対する、前記放電経過時間ごとに測定した前記端子電圧との関係を示す第1の特性を、前記複数の放電電流について求め、
前記所定の端子電圧まで降下した前記蓄電池について、前記所定の端子電圧に降下するまで、前記複数の放電電流より低い一定の第2の放電電流で放電を継続してその時の前記蓄電池の端子電圧と放電経過時間を測定し、
前記複数の放電容量Aにそれぞれについて、それぞれ一定の複数の第1の放電電流Id1とそのときの放電経過時間T1との積として規定される第1の放電容量と、一定の第2の放電電流Id2とそのときの放電経過時間T2との積として規定される第2の放電容量と、前記放電容量Aについて、下記の演算による第3の放電容量を演算し、
(Id1×T1)+(Id2×T2)−A
演算した前記第3の放電容量を前記求めた放電容量・端子電圧特性に当てはめて該当する端子電圧を算出して、各放電容量について放電電流と端子電圧との関係を示す第2の特性を求め、
前記第2の特性の結果を近似式に表す、
蓄電池の残存容量の測定装置。 - 前記蓄電池は鉛蓄電池であり、
前記近似式を求める手段において、各放電容量について、前記放電電流と端子電圧との関係を一次式で近似し、一次式で近似した傾きデータと切片データを記憶手段に記憶させる、
請求項3に記載の蓄電池の残存容量の測定装置。
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