JP4645470B2 - 潤滑性、接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

潤滑性、接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車分野等におけるプレス成形の成形性向上のために使用されている潤滑性、接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその連続亜鉛めっきラインにおける製造方法に関する。
近年、自動車等に用いられる鋼板の防錆対策として、亜鉛系めっき鋼板が用いられている。自動車に用いられる場合のほとんどにおいて、該亜鉛系めっき鋼板にはプレス成形が施される。ところが、亜鉛系めっき鋼板は冷延鋼板と比較して、プレス成形性が劣ることが知られている。これは、電気亜鉛めっき(EG)鋼板又は溶融亜鉛めっき(GI)鋼板については表面の亜鉛が軟質であるため摺動時に金型と焼付現象を生じ、摺動性を低下させるものである。また、合金化溶融亜鉛めっき(GA)鋼板については、合金化時にめっき表面にζ相などの軟質な合金層が形成されることで、上記と同様に摺動性を低下させている。
これらの問題の解決手段として、亜鉛めっき皮膜の上層に、さらに鉄−亜鉛合金電気めっき皮膜を設けて、潤滑性を向上させる技術が特許文献1に開示されており、広く実用化されている。ところが該技術では、電気めっき設備が必要となるため、製造コストが大幅に増加する。
一方、ワックスや油脂等の有機物固形潤滑皮膜を亜鉛系めっき表面に施す技術も古くから開示(特許公報3006455号公報等)されているが、プレス成形時の金型へのプレスカスの凝着やそれに起因する、プレス品欠陥の発生、さらには溶接接合時の臭気問題(有機物が溶接の熱で分解し作業環境に悪影響を及ぼす)がある。
このようなことから、製造コスト削減の要求に応えて上記鉄−亜鉛電気めっき皮膜の代替として、亜鉛めっき上層にリン酸系皮膜(材料とプロセス,11(1998)p.546)、Mn−P酸化物皮膜(材料とプロセス,6(1993)p.1545)やNi系皮膜(材料とプロセス,11(1998)p.384)等を施したいわゆる無機潤滑皮膜の適用拡大が進められている。
無機潤滑皮膜は溶接接合時にも異臭等の問題がなく、安定した成形性が得られることが特徴である。その中でもリン酸系皮膜は従来から使用されており、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献2には、Mgを含むリン酸亜鉛皮膜を亜鉛めっき表面に設け、自動車車体用として好適に用いられることが開示されている。
ところが当該無機潤滑皮膜は、他の部材との接着性に問題が生じる場合があった。無機潤滑皮膜を有する亜鉛めっき鋼板は他の部材と接着されることにより製品を組み上げていくことが多く、この接着性は非常に重要な課題であった。過去よりこの無機潤滑皮膜を有する鋼板の接着性について検討が進められている。例えば特許文献3及び特許文献4ではめっき層表面にZnO酸化物を形成し、その表面にMn−Zn−OH−P系結晶性酸化物を形成することで潤滑性、化成処理性及び接着剤適合性に優れた亜鉛系めっき鋼板が得られることを開示している。
また、特許文献5にはマスチックタイプも含む多様な接着剤においても十分に接着強度を示す無機潤滑皮膜を有する鋼板について開示されている。
一方、このような無機潤滑皮膜、その中でもリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板においては、均一な成膜状態を確保するとともに、自動車用防錆鋼板として各種性能を確保することが必要である。また摺動性や潤滑性の向上だけでなく、溶接性や接着性等の他の特性についても従来と同等以上の性能が要求される。かかる観点から、リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、煩雑で精度の高い製造工程を必要としていた。
具体的には、これらリン酸系皮膜を形成する技術は、いわゆる反応型の表面化成処理と称され、第一リン酸、亜鉛、Ni、Mn、Mg、硝酸、亜硝酸、フッ素化合物などを含有する処理剤を亜鉛めっき鋼板表面に接触、反応させることで成膜する技術である。さらに詳しくは、該処理剤を亜鉛めっき表面にスプレー等により供給し、亜鉛めっきのエッチングを伴いながら成膜反応が進行する。このとき該エッチングで溶出した亜鉛は処理剤中に亜鉛イオンとして存在するが、亜鉛イオン濃度が上昇することで処理剤のpHが上昇し、エッチング反応が行われにくくなることから、処理剤全体にリン酸などを補給しpHやZn濃度等をある一定の値に保つことが均一な成膜状態を保つために必要である。
通常、処理剤を保管するタンク等の容量は限られており、上昇した亜鉛濃度やpHを一定に保つためには処理剤の一部をドレインとして排出しながら、補給液を添加するといった手法がとられることが多かった。
特開平1−319661号公報 特開平11−315386号公報 特許第3153097号公報 特許第3199980号公報 特開2002−53974号公報
しかし、無機潤滑皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の接着性については、特許文献3及び4に記載のものは、確認されている接着剤の種類が1つであり、多種多様の副資材が使用される現在の自動車車体製造工程では必ずしも適合するものではない。
また、特許文献5に記載の無機潤滑皮膜を有する鋼板では、特に非晶質のリン酸塩系皮膜の場合、加工時に特に高面圧がかかるような成形あるいは摺動試験において性能が不足する虞があった。従って、これまで多種の接着剤に対して十分な接着性を確保できかつ十分な摺動性、成形性を有する無機潤滑皮膜を有する亜鉛めっき鋼板は存在しなかった。
一方、上述した従来のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法では、昨今における製造コスト削減及び廃液に関する環境負荷低減の観点からは改善についての社会的要請も強い。
そこで本発明は、潤滑性及び接着性に優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板及び製造コスト削減及び環境負荷低減可能なその製造方法を提供することを課題とする。
発明者らは鋭意検討の結果、以下のような知見を得て本発明を完成した。
(a)亜鉛めっき鋼板表面に形成されたリン酸亜鉛のP−O結合の配向が鋼板表面において、該鋼板表面に対して垂直方向の配向が多いと優れた潤滑性を維持したまま接着性を改善することができる。これは、P−O結合と接着剤(主に樹脂)のC−O結合との相互作用が増すためであると考えられる。なおリン酸亜鉛のP−O結合の配向についてはその鋼板の表面法線に対して60゜方向から赤外光を入射し表面から吸収する赤外光を測定する吸収スペクトル測定法で得られるスペクトルで、P−O結合伸縮振動での吸収においてp偏光(鋼板表面に垂直な成分の偏光)及びs偏光(鋼板表面に水平な成分の偏光)の積分吸収強度比で判断することができる。
(b)さらに詳細にP−O結合の配向を知るためには、特定のP−O結合に関する吸収に着目し、そのp偏光及びs偏光に対する吸光度の比率を得ると精度良く判断できる。本発明の亜鉛めっき鋼板表面の結晶質のリン酸亜鉛のスペクトル吸収においては波長8.4〜9.2μmの範囲と波長10.2〜11.0μmの範囲に特徴的な吸収帯を有する。従って、この範囲の吸収帯についてp偏光の吸光度とs偏光の吸光度との比率を測定することで接着性についてさらに詳しく判断することができる。つまり該吸収帯のp偏光とs偏光との吸光度の比率を高めることでより潤滑性、接着性に優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を得ることが可能となる。
さらに発明者らは、以上に説明したリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造することができるとともに、製造コスト削減及び環境負荷低減可能である製造方法に関して次のような知見を得た。
(c)はじめにリン酸亜鉛の結晶核形成剤が分散した水性液である表面調整剤をロールコータで供給し、直後に乾燥を行う。その後リン酸亜鉛皮膜形成剤である処理剤をロールコータで供給し、その後乾燥する。かかる工程を採用することで、表面調整剤の処理剤への混入を抑制することができる。さらにロールコータで供給した後に乾燥するという工程を有することで亜鉛めっき表面と処理剤との反応時間を短縮化することが出来、処理剤への亜鉛の混入を低減することができる。ここで、表面調整剤とは、リン酸亜鉛の結晶核形成剤を含む水性液のことであり、例えば、ピロリン酸Na水溶液にTiコロイドが分散した水性液や、リン酸亜鉛の粒子が分散した水性液等を指す。また、前記処理剤を供給する工程において、ロールコータによる供給は亜鉛めっきと処理剤との接触時間が他の供給法に比べて短い。よって処理剤の煩雑な成分調整及び煩雑なpH管理が不要となり、処理剤の減少分に対して全く同じ組成の処理剤を加えて行くだけで良いので、1成分の処理剤成分、濃度、pHを管理するだけで済む。また処理剤成分の変動が抑えられるため、処理剤の排出も不要となりコスト面、環境負荷低減が可能となる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、表面に結晶質のリン酸亜鉛皮膜が形成されたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板であって、リン酸亜鉛皮膜の表面の法線に対して60゜方向から該表面に入射された赤外光の反射光から得られる吸収スペクトルが波長8〜12μmの範囲で複数の吸収帯を有するとともに、さらに該波長範囲におけるp偏光に対するs偏光の積分吸収強度比が1.2以上であることを特徴とするリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を提供することにより前記課題を解決する。
ここで、「亜鉛系めっき鋼板」のとは、「電気亜鉛めっき鋼板」、「溶融亜鉛めっき鋼板」及び「合金化溶融亜鉛めっき鋼板」を含んだ総称である。
また、「p偏光」とは表面に垂直な成分の偏光をいい、「s偏光」とは表面に水平な成分の偏光をいう。また、「積分吸収強度比」とはp偏光及びs偏光の吸収スペクトルの積分強度比を意味する。
さらに、「リン酸亜鉛皮膜」の「リン酸亜鉛」とは、通常のX線回折分析においてHopeiteの回折が生じる結晶質のリン酸亜鉛(Zn(PO・4HO)を意味する。
請求項2に記載の発明は、表面に結晶質のリン酸亜鉛皮膜が形成されたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板であって、リン酸亜鉛皮膜の表面の法線に対して60゜方向から該表面に入射された赤外光の反射光から得られる吸収スペクトルが波長8〜12μmの範囲で複数の吸収帯を有するとともに、該吸収スペクトルの波長8.4〜9.2μmの範囲のp偏光の吸光度がs偏向の吸光度の2倍以上であり、かつ、波長10.2〜11.0μmの範囲のp偏光の吸光度がs偏光の吸光度の2倍以上であることを特徴とするリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を提供することにより前記課題を解決する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、亜鉛系めっきの表面に表面調整剤を供給する表面調整剤供給工程(S1)と、表面調整剤供給工程の後工程で、表面調整剤を乾燥させる前乾燥工程(S2)と、前乾燥工程の後工程で、亜鉛系めっきの表面にリン酸亜鉛水溶液を含む処理剤を供給する処理剤供給工程(S3)とを有することを特徴とするリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、表面調整剤供給工程の表面調整剤がリン酸亜鉛粒子を含有する水性液であることを特徴とする請求項3に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、表面調整剤供給工程の表面調整剤のpHが5以上であり、かつリン酸亜鉛粒子の平均粒径が0.1〜3μmであることを特徴とする請求項4に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、表面調整剤供給工程から前乾燥工程を経た亜鉛系めっき鋼板表面に、リン酸亜鉛粒子がP換算で0.01〜5mg/m付着していることを特徴とする請求項4又は5に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
ここで「P換算」におけるP付着量は、化学溶解による測定又は蛍光X線による測定から算出することができる。化学溶解による方法は、所定面積の亜鉛めっき鋼板のめっき層を、所定量の強酸(例えば塩酸)で溶解し、該溶解液をICP(誘導結合プラズマ発光分析)にて溶解液中のP濃度を測定し換算するものである。一方、蛍光X線による方法は、種々のP付着量の試料を作製し、蛍光X線法にてPKαに起因する蛍光X線強度を測定し、上記化学溶解による方法でP付着量を求め、検量線を作成することで、以後の試料について同様の方法で蛍光X線強度を得るものである。これによれば非破壊にてP付着量を求めることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、処理剤供給工程の処理剤が亜鉛及びリン酸根を含有し、pHが4以下であり、かつ、亜鉛及びリン酸根以外にリン酸根1に対してモル比で硝酸根が0.2以下、亜硝酸根が0.2以下、弗酸根が0.1以下、硫酸根が0.05以下の強電解質アニオンから選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項8に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、処理剤供給工程の後工程で、処理剤を乾燥させる後乾燥工程を有し、後乾燥工程後にP換算で30〜250mg/mのリン酸亜鉛皮膜が付着されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項9に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、表面調整剤供給工程の表面調整剤の供給方法、及び処理剤供給工程の処理剤の供給方法のうちいずれか一方、又はいずれもがロールコート法であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項1に記載の発明によれば、接着性に優れるとともに潤滑性にも優れるリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、摺動性を維持しつつ、さらに接着性に優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を提供することが可能である。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する際に、該鋼板の効果を保持しつつ、さらにその製造においてもコスト及び環境の観点から利得のあるリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する際に、該鋼板の効果を保持しつつ、表面調整剤の安定性を向上させることができ、さらにその製造においてもコスト及び環境の観点から利得のあるリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、表面調整剤の安定性をさらに向上させることができ、コスト、環境の観点からさらに利得のあるリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することができる。また、供給されたリン酸亜鉛粒子がより均一に亜鉛めっき表面に供給される。
請求項6に記載の発明によれば、表面調整剤の安定性が向上するとともに、処理剤供給時におけるP付着量の総量の調整を容易に行うことができ、ひいては潤滑性を向上させることができる。
請求項7に記載の発明によれば、処理剤の安定性を向上させることができ、コスト、環境の観点からさらに利得のあるリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、潤滑性を向上させることが出来る。
請求項9に記載の発明によれば、表面調整剤の供給及び/又は処理剤の供給がロールコータで行われるので、必要以上に濃度の高いこれら薬剤を補充する必要がなく、この補充そのものも少なくて済むので、コスト、環境の観点からさらに利得のあるリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
本発明のこのような作用および効果は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
以下、本発明の最良の形態、及びその好ましい範囲等について説明する。
はじめに1つの実施形態にかかる本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板について説明する。リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板は、母材と、該母材の表面に被覆された亜鉛系めっきと、該亜鉛系めっきの外側に形成されたリン酸亜鉛皮膜とを有している。以下それぞれについて説明する。
(1)母材
母材となる鋼板の種類は特に限定されるものではなく、あらゆる種類の冷間圧延鋼板や熱間圧延鋼板を適用することができる。母材の化学組成も特に限定されるものではなく、Ti、Nb等を必要に応じて含有させた極低炭素鋼、低炭素鋼、又はさらに、Si、Mn、P、Cr、Ni、Cu、V等を適宜含有させた高強度鋼又は高張力鋼等を適用することができる。
(2)亜鉛系めっき
本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の亜鉛系めっきには、溶融亜鉛系めっき又は電気亜鉛めっきを適用することができる。上記母材に対して該亜鉛系めっきを施すことにより亜鉛系めっき鋼板とされる。
溶融亜鉛系めっき鋼板としては、例えば加熱による合金化処理を行わないGI鋼板及び加熱による合金化処理を施したGA鋼板を挙げることができる。GI鋼板とは溶融亜鉛めっき後に合金化処理を行っていない鋼板であってFe含有量を2質量%以下としたものである。これは2質量%より多くすると表面に一部、Fe−Zn合金層が出現し、外観上好ましくないためである。一方、GA鋼板は、溶融亜鉛めっき後に合金化処理を行った鋼板であって、Fe含有量をめっき層に対して7〜15質量%としたものである。Fe含有量が7質量%に満たない場合には、合金化された溶融亜鉛めっき層の表面近傍にη相が残存するので外観上好ましくない。好ましくは8質量%以上である。Fe含有量が15質量%を超えるとプレス成形時にパウダリングが発生しやすくなる。好ましくは13質量%以下である。
上記GI鋼板及びGA鋼板の溶融亜鉛系めっき層にはAlを0.05〜0.5質量%含有させても良い。これにより、溶融亜鉛系めっきと母材との密着性を向上させることができる。また、溶融亜鉛系めっき層中には他に、Cu、Ni、Cr、Si、Mn、Pb、Sb、Sn及びミッシュメタル等が微量含有又は添加されていてもよい。また、合金相も特に限定されるものではなく、GI鋼板中にはη相、ζ相、δ相、GA鋼板中にはζ相、δ1相、Γ1相、Γ相が混在していても良い。
また、溶融亜鉛系めっきの付着量も特に限定されるものではない。ただし加工性、溶接性及び生産性の観点から、溶融亜鉛系めっきの付着量は150g/m以下であるのが好ましい。
ここでは、GI鋼板及びGA鋼板について説明したが、この他にも5質量%Al−Znめっき鋼板(GF鋼板)、55質量%Al−Znめっき鋼板(GL)及び3質量%Mg−Al−Znめっき鋼板(MZ鋼板)等でも良い。
電気亜鉛めっき鋼板としては、例えばη相からならEG鋼板、10質量%Fe−Zn電気亜鉛めっき鋼板(FZ鋼板)、13質量%Ni−Zn(ZnNi鋼板)等を挙げることができる。その中でもEG鋼板に本発明のリン酸亜鉛皮膜を適用することが好ましい。
本発明で使用する亜鉛系めっき鋼板の製造は、あらゆる亜鉛系めっきの方法を適用することができる。例えばGI鋼板ではめっき浴に浸漬してそのまま冷却を行う。一方GA鋼板ではめっき浴に浸漬してその後に合金化処理を施す。また、必要に応じて調質圧延(スキンパス)、平坦化処理(レベラー)等を種々付与しても良い。また、調質圧延によりGI鋼板及びGA鋼板の表面状態、表面粗度は種々変化するがこれらを変化させても良い。この変化によって接着性等には影響を及ぼさない。
(3)リン酸亜鉛皮膜
リン酸亜鉛皮膜は、上記亜鉛系めっきの外層に形成された結晶質のリン酸亜鉛の皮膜である。本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板のリン酸亜鉛皮膜は、次のうちいずれかの構成を有する。
(i)当該リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の法線方向に対する60°傾いた方向から入射された赤外光の表面反射光を測定する吸収スペクトル測定法により得られるスペクトルで、波長8〜12μmの範囲で複数の吸収帯を有し、さらに該波長の範囲におけるp偏光(P)とs偏光(S)との吸収スペクトルの積分強度比(P/S)が1.2以上である。
(ii)当該リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の法線方向に対する60°傾いた方向から入射された赤外光の表面反射光を測定する吸収スペクトル測定法により得られるスペクトルで、波長8〜12μmの範囲で複数の吸収帯を有し、かつ、波長8.4〜9.2μmの吸収(吸収A)でのp偏光の吸光度(Pa)とs偏光の吸光度(Sa)と、及び波長10.2〜11.0μmの吸収(吸収B)でのp偏光の吸光度(Pb)とs偏光の吸光度(Sb)との間でその比(Pa/Sa、及びPb/Sb)がいずれも2以上である。
上記(i)及び(ii)のいずれの場合においても、本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板のリン酸亜鉛皮膜は、該リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の法線方向に対する60°傾いた方向から入射された赤外光の表面反射光を測定する吸収スペクトル測定法により得られるスペクトルで、波長8〜12μmの範囲で複数の吸収帯を有する。これは、当該リン酸亜鉛皮膜を形成するリン酸亜鉛のP−O結合に起因するもので、通常は5本程度の吸収帯を有する。
ここで、赤外光を60゜方向から入射するのは、亜鉛系めっき鋼板からの反射光が吸収スペクトルに影響を与えないようにするためである。これによりSN比の良好なスペクトルを得ることができる。反射光は入射光に対応する60゜方向から検出する。鋼板表面の粗さによって反射光が乱反射し、検知器に入る反射光が少ない場合があるので、その場合は検出機の手前に集光装置を設けても良い。
上記(i)に説明したリン酸亜鉛皮膜は、p偏光(P)とs偏光(S)との吸収スペクトルの積分強度比(P/S)が1.2以上である構成を有する。これは、リン酸亜鉛皮膜を構成するP−O結合の配向度を表している。すなわち、P/Sが1.2以上であるとは、p偏光がs偏光よりも強いことを意味する。従って、本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板のリン酸亜鉛皮膜は、鋼板に対して垂直に近い配向が強いという構成を有するものである。P/Sが2以上であることがさらに好ましい。
さらに好ましいP−O結合の配向は(ii)で説明した範囲における構成を有するリン酸亜鉛皮膜である。(ii)で説明した配向は上述したP−O結合における波長8〜12μmの範囲のうち、波長8.4〜9.2μm及び波長10.2〜11.0μmの2つの波長範囲について注目して、本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板に用いられるリン酸亜鉛皮膜の吸光度の構成を示したものである。該2つの波長範囲としたのは特徴的なスペクトルの吸収が生じることによる。
具体的には、波長8.4〜9.2μmの吸収スペクトルにおける(吸収A)p偏光の吸光度(Pa)とs偏光の吸光度(Sa)との比(Pa/Sa)が2以上であり、かつ波長10.2〜11.0μmの吸収スペクトルにおける(吸収B)p偏光の吸光度(Pb)とs偏光の吸光度(Sb)との比(Pb/Sb)が2以上である構成とされている。いずれも3以上であることがさらに好ましい。
以上のように、(i)及び(ii)の構成のいずれにおいても、P−O結合の配向が鋼板表面において鋼板表面に対して垂直方向の配向が多い(p偏光が強い)構成のリン酸亜鉛皮膜とすることにより、優れた潤滑性を維持しつつ接着性にも優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を提供することができる。これは、当該配向により、P−O結合と副資材(主に樹脂)のC−O結合との相互作用が増すためと考えられる。そして、これによって自動車用の副資材、特に構造接着に用いられる塩ビ系接着剤、シール機能を有するマスチック系接着剤との適合性に優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を提供することができる。
リン酸亜鉛皮膜の付着量は30mg/m以上であればよい。より好ましくは50mg/m以上である。これは、潤滑性に影響を与え、30mg/mより少ないと良好な潤滑性を得られない虞があるからである。また、リン酸亜鉛皮膜の付着量は250mg/m以下が好ましく、200mg/m以下であることがさらに好ましく、150mg/m以下であることが最も好ましい。これは、リン酸亜鉛皮膜の付着量が多いと接着性が低下することがあることによるものである。
以上のような構成のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板により、潤滑性及び接着性に優れた鋼板を提供することが可能となる。
次に、本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法について説明する。
図1に1つの実施形態にかかる本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法の流れを示した。本製造方法は、表面調整剤を亜鉛系めっき鋼板に供給する表面調整剤供給工程(S1)と、供給された表面調整剤を乾燥させる前乾燥工程(S2)と、処理剤を供給する処理剤供給工程(S3)と、該処理剤供給工程後に乾燥させる後乾燥工程(S4)とを含んでいる。以下に各工程について説明する。
表面調整剤供給工程(S1)は、結晶核形成剤を含有する表面調整剤を亜鉛系めっき鋼板に供給する工程である。当該表面調整剤供給工程(S1)の表面調整剤の供給方法は、特に限定されるものではない。これには例えばロールコータやスプレー塗布さらにはスプレー後エアナイフ、スプレー後リンガーロール、スクイズロール絞りなどが挙げられるが、操業性の観点から、ロールコータ、スプレー後のスクイズロール絞りが好ましい。さらに、この中でも、ロールコータ法が亜鉛系めっきと表面調整剤との接触時間を他の方法に比べより短くすることができることから好ましい。これによって、表面調整剤の煩雑な成分調整及び煩雑なpH管理が不要となり、表面調整剤の減少分に対して全く同じ組成の表面調整剤を加えるだけで良いので、1成分の表面調整剤成分、濃度、pHを管理するだけで済む。また表面調整剤成分の変動が抑えられるため、該表面調整剤の排出も不要となりコスト、環境負荷低減の観点から好ましい。
表面調整剤に含有される結晶核形成剤は、特に限定されるものではなく、通常の自動車車体の塗装下地処理工程で使用されているものを使用することができる。これには例えばピロリン酸Na水溶液にTiコロイドが分散した水性液、又はリン酸亜鉛の粒子が分散した水性液等を挙げることができる。この中でも、リン酸亜鉛粒子が分散した水性液が特に好ましい。該水性液とすると供給した後、後述する前乾燥工程(S2)で乾燥しても粒径を維持したまま凝集することなく、亜鉛系めっき表面に吸着し、粒子形態を維持することができるからである。一方、Tiコロイド等は前乾燥工程(S2)で結晶核生成剤が乾燥凝集する虞がある。
表面調整剤供給工程(S1)におけるリン酸亜鉛粒子が分散した水性液の供給量は乾燥時のリン酸亜鉛中のP換算で0.01〜5mg/mとすることが好ましい。0.01mg/m未満では接着性が得られ難くなり、5mg/mを超えるとその効果が飽和するためである。好ましくは0.1〜2mg/mである。また、リン酸亜鉛の濃度は0.05〜5mol/Lであれば良い。その理由は、0.05mol/L未満では所定の付着量を得るためにはwet膜厚が大きくなり過ぎ、塗布ムラが生じやすくなる。一方5mol/Lを超えると表面調整剤の粘度が大きくなり過ぎ同じく塗布ムラが生じやすくなるためである。
結晶核形成のために用いるリン酸亜鉛粒子は結晶質であっても非晶質であっても、又はその混合物であっても良い。結晶質であるかどうかは一般的なX線回折分析によって判断することができる。
表面調整剤のpHは5以上であることが好ましい。pHが5未満であると亜鉛系めっきに表面調整剤を供給した際に亜鉛系めっきからの亜鉛の溶出が生じるためである。さらにリン酸亜鉛粒子が分散した水性液自体でリン酸亜鉛粒子の溶解反応も微少ながら生じる虞があるため、粒子自体の安定性も損なわれる可能性がある。pH7〜10であることがさらに好ましい。pHが10より大きくなるとリン酸亜鉛自体の溶解反応が生じるためである。また、表面調整剤にはpHを調整するための緩衝溶液が添加されても良い。緩衝溶液としては、例えばKHPOとNaOHとからなる緩衝溶液を挙げることができる。該緩衝溶液の表面調整剤中での濃度は0.1〜2g/Lであることが好ましい。0.1g/L未満では所望の供給量が得られ難く、2g/Lを超えると均一な供給に影響を与える虞があるからである。
また、分散したリン酸亜鉛粒子の粒子径は3μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは1μm以下である。リン酸亜鉛粒子の粒子径は微細なほど良いが、水性液の粘性が上がったり分散の際にコストが増大するので、粒子径は0.1μm以上が好ましい。粒子径は分散した水性液の状態でレーザー回折計にて調査することができる。
次に前乾燥工程(S2)について説明する。前乾燥工程(S2)は、亜鉛系めっき鋼板表面に供給された表面調整剤を水洗いすることなく乾燥させる工程である。前乾燥工程(S2)における乾燥温度は表面調整剤が乾燥すれば良い。鋼板温度として30℃以上が好ましく、さらに好ましくは40℃以上である。なお乾燥温度の上限は特に限定されないが鋼板温度が高くなりすぎると熱せられた鋼板を冷却するために水冷をする必要があり、また、乾燥後接触する設備(金属ロールやゴムロール)の耐熱温度等の観点から150℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは50〜120℃である。また、乾燥時間は上記の通り表面調整剤が乾燥すれば良いが、5〜20秒が好ましい。乾燥させるための方法は特に限定されるものではなく、適宜選択可能である。これには例えばエアナイフ、ドライヤやオーブン等を挙げることができる。
当該前乾燥工程(S2)により表面調整剤が後述する処理剤供給工程(S3)に液剤として持ち込まれる虞がなく、該処理剤供給工程(S3)で循環使用される処理剤への表面調整剤の混入を抑えて処理剤の組成バランスの変動を小さくすることができる。これにより処理剤の組成バランスを維持するために従来必要であった処理剤の補給及び排出を抑えることが可能となった。
これは、表面調整剤の供給後に乾燥を行うことにより、亜鉛めっき系鋼板の活性化を一度制止することができるからである。また、該乾燥によりリン酸亜鉛粒子が粒径を維持したまま凝集することなく亜鉛系めっき表面に吸着し、粒子形態を維持することができ、次の乾燥工程で鋼板を反応させることができるようになったことも挙げられる。一方、ピロリン酸Na水溶液にTiコロイドが分散した水性液の場合は、結晶核形成剤が乾燥凝集する虞がある。
次に処理剤供給工程(S3)について説明する。処理剤供給工程(S3)は上述の前乾燥工程(S2)をおこなった亜鉛系めっき鋼板上にリン酸亜鉛皮膜を形成するための処理剤を供給する工程である。具体的には前乾燥工程(S2)後の亜鉛系めっき鋼板の表面にリン酸根を0.001〜0.7mol/Lを含有し、かつリン酸根に対してモル比で0.7以下の亜鉛を含有するリン酸亜鉛水溶液を含む処理剤を供給するものである。ここで、リン酸根とはHPO 、HPO 2−、PO 3−の総称とし、[PO 3−]で表す。リン酸亜鉛の濃度が0.7mol/Lより大きくなると処理剤の安定性が低下し、リン酸亜鉛の濃度が0.001mol/L未満であると処理剤のpHが高くなり、結晶質のリン酸亜鉛の化成反応が不足し潤滑性が得られない虞があるからである。また、リン酸根に対してモル比で0.7以下の亜鉛を含有するのは、亜鉛を含有させることによりさらに均質な結晶質のリン酸亜鉛皮膜を形成させることができることによる。好ましくは0.5以下である。
さらに詳しくは、結晶質のリン酸亜鉛の生成反応は、下に示す式(A)、又は式(B)のような反応であり、処理剤中のリン酸根に対して亜鉛原子が1.5倍必要となる。
2HPO+Zn⇔Zn(HPO+H (A)
3Zn(HPO⇔Zn(PO・4HO (B)
このため、本来は処理剤供給工程(S3)の処理剤にはさらに過剰な亜鉛が含まれていなければならないが、亜鉛が過剰に含まれるとpHが増大し、処理剤が固化してしまう。
また、処理剤はpH4以下であることが好ましい。pHが4より大きくなると処理剤の安定性が低下し、スラッジが発生して表面品質を損ねる可能性が高くなること、及び反応がスムーズに進行せずにリン酸亜鉛の皮膜が生成されない虞があるからである。pH3以下であることがさらに好ましい。
さらに亜鉛及びリン酸根以外にリン酸根に対してモル比で、硝酸根(NO )が0.2以下、亜硝酸根(NO )が0.2以下、弗酸根(F)が0.1以下、及び硫酸根(SO 2−)が0.05以下の強電解質アニオンから選ばれる少なくとも1種以上が含有されていることが好ましい。ここで上記強電解質アニオンから選ばれる少なくとも1種以上を添加するのは、亜鉛系めっき表面の酸化膜を均一にエッチングすることで皮膜の均質性を向上させるためである。上記比率を超えて添加した場合には、処理剤の安定性が低下して処理剤の寿命が低下する虞がある。
処理剤には、適宜有用な物質を添加しても良い。例えばpH調整の目的でアルカリ金属、アンモニアを添加しても良い。その量はリン酸根に対してモル比で0.02以下が好ましい。
リン酸亜鉛の皮膜付着量は、表面調整剤供給工程(S1)と処理剤供給工程(S3)との合計でP換算して30〜250mg/mとする。これは、30mg/m未満であると潤滑性の効果が発揮されにくく、250mg/mを超えるとその効果が飽和することによるものである。好ましくは50〜150mg/mである。
処理剤の供給方法は、特に限定されるものではなく、これには例えば、処理剤中に液を浸漬する方法、鋼板にスプレーを行う方法、ロールコート法等を挙げることができる。その中でも処理剤成分への亜鉛等の溶出を最小限にする観点からロールコート法によるものが好ましい。
このように処理剤供給工程(S3)の前工程である前乾燥工程(S2)が設けられていることにより、処理剤供給工程(S3)に表面調整剤が液剤として持ち込まれなく、処理剤のバランスを長い期間に亘って適切に維持することができる。また、その製造に関して処理剤管理及び排水設備を簡易なものとすることができる。
次に後乾燥工程(S4)について説明する。後乾燥工程(S4)は、亜鉛系めっき鋼板表面に供給された処理剤を水洗いすることなく乾燥させる工程である。乾燥設備は特に限定されるものではなく、これには例えばエアナイフ、ドライヤ、オーブン等を挙げることができる。また、乾燥温度も特に限定されないが鋼板温度で40℃〜150℃が好ましい。乾燥時間についても特に限定されるものではないが60秒以下が好ましい。
後乾燥工程(S4)により均質なリン酸亜鉛の結晶皮膜が形成される。
以上、本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法により潤滑性及び接着性に優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛めっき鋼板を得ることができる。これにより、処理剤の制御や無駄な薬剤の排出が不要になる。
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例)
板厚0.8mmの極低炭素鋼板の両面に各種の亜鉛系めっきを施した鋼板に日本パーカライジング株式会社製FCL4480(20g/L、45℃)にて30秒間スプレー脱脂を行った後、水洗乾燥をして供試材とした。その後、表面調整剤供給工程(S1)〜後乾燥工程(S4)を施し、リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造した。そして該リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板について各種評価を行った。
以下に、条件、評価項目及び評価結果等について説明する。また、比較として表面調整剤供給工程(S1)及び前乾燥工程(S2)のみを行ったもの、並びに処理剤供給工程(S3)及び後乾燥工程(S4)のみを行ったものをそれぞれ作製した。さらに、従来の例として亜鉛めっき上層に80質量%Fe−20質量%Znの組成の電気めっき層(付着量片面につき2g/m)を成膜した試料も作製した。本実施例に用いた各種亜鉛系めっき鋼板を表1に示す。さらに、本実施例で使用した表面調整剤を表2に、処理剤を表3にそれぞれ示す。
Figure 0004645470
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(1)製造条件
製造条件について説明する。
(1−1)表面調整剤供給工程(S1)
表2に示した表面調整剤を亜鉛系めっき鋼板に供給した。供給方法は、スプレー(表4中のS)、スプレー後のスクイズロール絞り(表4中のSR)、スプレー後のエアナイフ(表4中のAK)及びロールコート(表4中のRC)のいずれかとした。付着量は蛍光X線により得た。
(1−2)前乾燥工程(S2)
前乾燥工程(S2)における乾燥は熱風ドライヤを用いた。乾燥温度は鋼板温度を基準に設定し、乾燥なし〜150℃の範囲で実施した。乾燥時間は、前乾燥工程を行うものについては10秒間で統一した。
(1−3)処理剤供給工程(S3)
表3に示した処理剤を亜鉛系めっき鋼板に供給した。供給方法はスプレー後のスクイズロール絞り、又はロールコートのいずれかとした。
(1−4)後乾燥工程(S4)
後乾燥工程(S4)における乾燥は熱風オーブンを用いた。乾燥温度は鋼板温度を基準に設定し、後乾燥をする場合には80℃で統一した。乾燥時間は、後乾燥を行うものについては10秒間で統一した。
(2)評価項目及びその評価方法
(2−1)赤外吸収分光によるP/Sの算出
得られた皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を25×100mmに切断し、以下の方法で測定した。測定には、BiO−Rad社製のQS−300を用いた。
測定は、被測定物である鋼板の表面の法線方向から60°の方向から赤外光を入射させて、対応する60°の方向に反射される反射赤外光を検出することにより行う。この時、入射する赤外光をKRS−5偏光子によって表面に対して垂直方向(p偏光)と平行方向(s偏光)とに偏光させ、反射された赤外光を全て検出した。具体的には次の手順で行った。
はじめにAu蒸着膜を標準試料としてp偏光、s偏光それぞれの赤外反射率スペクトルを測定する。次に、p偏光ではAu蒸着膜のp偏光反射率に対する鋼板表面のp偏光相対反射率スペクトル、s偏光ではAu蒸着膜のs偏光反射率に対する鋼板表面の相対反射率スペクトルを測定する。そして、次式(C)、(D)
p偏光吸光度=−log(p偏光相対反射率) (C)
s偏光吸光度=−log(s偏光相対反射率) (D)
を用いて、p偏光、s偏光それぞれの赤外吸収(吸光度)スペクトルを得る。図2に得られた波長と吸光度との関係をグラフで表した一例を示す。図2(a)はp偏光に関するグラフ、図2(b)がs偏光に関するグラフである。ここでPa、Saは、波長8.4〜9.2μmにおけるp偏光、s偏光の吸光度、Pb、Sbは、波長10.2〜11.0μmにおけるp偏光、s偏光の吸光度をそれぞれ表している。
また、積分強度P、Sは、得られたp偏光、s偏光の赤外吸収スペクトルについて、波長8μm〜12μmの範囲における各波長の吸光度から波長12μmにおける吸光度をそれぞれ差し引くことによってバックグランド補正を行い、該各波長の吸光度を加算して算出した。具体的には次式(E)、(F)による。
P=(P8μm−P12μm)+・・・+(P12μm−P12μm) (E)
S=(S8μm−S12μm)+・・・+(S12μm−S12μm) (F)
そして得られたP及びSより、P/Sを算出することができる。
(2−2)リン酸亜鉛皮膜の付着量および結晶性の評価
リン酸亜鉛皮膜の付着量は、得られた鋼板について蛍光X線測定法でP付着量を得ることにより得た。
リン酸亜鉛の結晶性については、理学電機製 RINT2500測定装置を用いて、以下の方法により評価した。
2θ(CoKα)5〜60°にてX線回折測定を行い、リン酸亜鉛・4水和物に起因する回折線2種A、Bを確認し、A、B共に回折線があるものを結晶質と判断した。ここで、A、Bはそれぞれ
A リン酸亜鉛・4水和物の(020)面 2θ=10.8°
B リン酸亜鉛・4水和物の(311+241+151)面 2θ=36.7°
である。
(2−3)接着性
(2−3−1)塩ビ系接着剤を用いた評価
得られた鋼板を25×200mmに切断し、防錆油を片面当り2g/m塗布した後、セメダインヘンケル製PV5308の接着剤を、塗布面積25×150mm、塗布厚0.15mmで塗布し、その後焼き付けた。焼き付けは170℃で、20分、30分、40分、50分として、焼き付け後にT剥離試験を行った。図3にT剥離の試験方法の概要図を示す。試験は、図3に示したように、接着された鋼板1、1のうち、接着剤2が塗布されていないそれぞれの端部を掴み、該端部のそれぞれを接着面とは垂直で、互いに反対である矢印T、Tで示した方向に引っ張ることにより行われる。評価は、凝集破壊面積率が90%以上となる焼き付け時間を基準とし、次のようなものとした。
◎:20分以下
○:20分超え30分以下
△:30分超え40分以下
×:40分超え
(2−3−2)マスチック系接着剤を用いた評価
得られた鋼板を25×100mmに切断し、防錆油を片面当り2g/m塗布した後、イイダ産業製OROTEX580の接着剤を、塗布面積を25×25mm、塗布厚0.1mmで塗布し、その後焼き付けた。焼き付けは170℃で、20分、30分、40分として、焼き付け後にせん断引張試験を行った。図4にせん断引張試験の方法の概要を示した。試験は、図4に示したように、接着された鋼板3、3のうち、接着剤4が塗布されていないそれぞれの端部を掴み、該端部のそれぞれを接着面と平行で互いに反対である矢印S、Sで示した方向に引っ張ることにより行われる。評価は、凝集破壊面積率が90%以上となる焼き付け時間を基準とし、次のようなものとした。
◎:20分以下
○:20分超え30分以下
△:30分超え40分以下
×:40分超え
(2−4)潤滑性
得られた皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の潤滑性は、摩擦係数の測定により行った。具体的には、ピンオンディスク型摩擦試験機を用いて、鋼板にパーカ興産製防錆油ノックスラスト550Sを片面当り2g/m塗布した状態で摩擦係数測定を行った。以下に試験条件と、評価基準を示す。
試験条件
荷重:30kN
スライダ材質:SUJ2(軸受け鋼)
スライダ形状:φ5mm
試験温度:60℃
回転半径:10mm
摺動速度:1rpm
試験回転数:20回転
測定回数等:1回転毎に12個の測定値から平均値を算出し、20回のうちの最大のもの
評価基準
◎:摩擦係数0.12以下(潤滑処理として極めて良好(Fe−Zn上層めっきと同等))
○:摩擦係数0.12超え0.15以下(潤滑処理として良好)
×:摩擦係数0.15超え(潤滑処理として不適(通常めっき鋼板と同等))
(2−5)操業性
(2−5−1)処理剤中の亜鉛及びアルカリ金属の濃度変化
操業性の評価の1つとして、処理剤の成分保持があり、これを処理剤中の亜鉛の濃度測定及びアルカリ金属の濃度測定により行った。具体的には、処理剤供給工程における処理剤10Lに対して亜鉛系めっき鋼板の切り板を合計10m施したときの処理剤中の亜鉛及びアルカリ金属の濃度を測定し、処理前との濃度変化を比較した。評価基準は次の通りである。
○:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の2質量%以下(濃度調整不要)
×:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の2質量%超え(濃度調整必要)
(2−5−2)塗装性
表面調整剤供給工程、及び前乾燥工程において表面調整剤の状態が不安定であったり、乾燥不足などが生じると、後乾燥工程後の亜鉛系めっき鋼板の表面状態に悪影響を与える場合がある。これをムラとして目視にて評価した。評価基準は次の通りである。
○:目視でムラ有り
×:目視でムラ無し
(3)結果
以上の条件、評価項目に基づき実施した結果を表4〜6に示す。表4は各実施例、比較例及び参考例の条件を示した表である。表4において、工程の別をS1工程、S2工程、S3工程、S4工程で表している。S1工程は表面調整剤供給工程、S2工程は前乾燥工程、S3工程は処理剤供給工程、S4工程は後乾燥工程をそれぞれ意味する。また、めっき種は表1に示した略称で、表面調整剤の種類は表2に示した代符で、処理剤の種類は表3に示したNo.でそれぞれ示している。さらに表面調整剤及び処理剤の供給方法は、スプレーをSで、スプレー後のスクイズロール絞りをSRで、スプレー後のエアナイフをAKで、ロールコータをRCでそれぞれ表示している。表5、6は表4に示したそれぞれの条件の例に対する結果を示したものである。
Figure 0004645470
Figure 0004645470
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表4及び表5からわかるように、備考の欄に実施例と記載された例においては、いずれもP/Sが1.2以上であり、このときの接着性は塩ビ及びマスチックともに良好である。試番15においてマスチックにおける適合性が△であるが、S2工程で乾燥を行ったもののうち、P/Sが1.2より小さい他の比較例、参考例が×評価であることから良好であるといえる。また、従来からリン酸亜鉛皮膜より接着性が良いとされる試番45〜47の比較例と比べても、本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板は、該比較例と同等の接着性を示すものが多く、従来より安いコストで従来と同等の接着性・潤滑性を得ることができるという本発明の効果が顕著に現れている。
また、P/Sが1.2以上の実施例間における接着性を見ると、該P/S、Pa/Sa、Pb/Sbの値が大きい方が接着性が高い傾向にある。従って、P−O結合において表面に垂直である配向が強い方が接着性に優れると考えられるものである。
さらに試番1〜4は、リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する工程であるS1工程〜S4工程のうちいずれかの工程が省略された場合の例の結果を示したものである。これによるといずれかの工程を省略すると適切な値のP/Sを得ることができず、接着性も好ましくない。従って、上記S1工程〜S4工程の製造工程を備えることにより再現性高く、接着性及び潤滑性に優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造することができる。ここで、工程を省略していない試番12はP/Sが0.1しかない。これは表面調整剤のpHが5以下のものであることから、より適切なP/Sを得るためには、工程を省略しないことと表面調整剤のpH管理を行うことが好ましい。
表6は、操業性に関する結果を示す表である。これを見ると、各工程に適用される表面調整剤、処理剤の種類、及び前、後の乾燥条件によって操業性が異なることがわかる。従って、適切な条件の製造工程を備えることにより、さらにコスト及び環境の観点から優れたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造することができる。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、リン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の流れを模式的に表した図である。 赤外吸収スペクトルにより得られた波長と吸光度との関係の一例を示すグラフである。 T剥離の試験方法の概要図である。 せん断引張試験の方法の概要図である。
符号の説明
1 亜鉛系めっき鋼板
2 接着剤
3 亜鉛系めっき鋼板
4 接着剤
S1 表面調整剤供給工程
S2 前乾燥工程
S3 処理剤供給工程
S4 後乾燥工程

Claims (9)

  1. 表面に結晶質のリン酸亜鉛皮膜が形成されたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板であって、
    前記リン酸亜鉛皮膜の表面の法線に対して60゜方向から該表面に入射された赤外光の反射光から得られる吸収スペクトルが波長8〜12μmの範囲で複数の吸収帯を有するとともに、さらに該波長範囲におけるp偏光に対するs偏光の積分吸収強度比が1.2以上であることを特徴とするリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板。
  2. 表面に結晶質のリン酸亜鉛皮膜が形成されたリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板であって、
    前記リン酸亜鉛皮膜の表面の法線に対して60゜方向から該表面に入射された赤外光の反射光から得られる吸収スペクトルが波長8〜12μmの範囲で複数の吸収帯を有するとともに、該吸収スペクトルの波長8.4〜9.2μmの範囲のp偏光の吸光度がs偏光の吸光度の2倍以上であり、かつ、波長10.2〜11.0μmの範囲のp偏光の吸光度がs偏光の吸光度の2倍以上であることを特徴とするリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、
    亜鉛系めっきの表面に表面調整剤を供給する表面調整剤供給工程と、
    前記表面調整剤供給工程の後工程で、前記表面調整剤を乾燥させる前乾燥工程と、
    前記前乾燥工程の後工程で、前記亜鉛系めっきの表面にリン酸亜鉛水溶液を含む処理剤を供給する処理剤供給工程と、を含むリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、
    前記表面調整剤供給工程の表面調整剤がリン酸亜鉛粒子を含有する水性液であることを特徴とする請求項3に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、
    前記表面調整剤供給工程の前記表面調整剤のpHが5以上であり、かつ前記リン酸亜鉛粒子の平均粒径が0.1〜3μmであることを特徴とする請求項4に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、
    前記表面調整剤供給工程から前乾燥工程を経た亜鉛系めっき鋼板表面に、前記リン酸亜鉛粒子がP換算で0.01〜5mg/m付着していることを特徴とする請求項4又は5に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  7. 請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、
    前記処理剤供給工程の前記処理剤が亜鉛及びリン酸根を含有し、pHが4以下であり、かつ、前記亜鉛及びリン酸根以外にリン酸根1に対してモル比で硝酸根が0.2以下、亜硝酸根が0.2以下、弗酸根が0.1以下、硫酸根が0.05以下の強電解質アニオンから選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  8. 請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、
    前記処理剤供給工程の後工程で、前記処理剤を乾燥させる後乾燥工程を有し、
    前記後乾燥工程後にP換算で30〜250mg/mの前記リン酸亜鉛皮膜が付着されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  9. 請求項1又は2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を製造する方法であって、
    前記表面調整剤供給工程の前記表面調整剤の供給方法、及び前記処理剤供給工程の前記処理剤の供給方法のうちいずれか一方、又はいずれもがロールコート法であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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