JP4644363B2 - 無機塩により安定化されたセルラーゼ調製物およびその製造方法 - Google Patents

無機塩により安定化されたセルラーゼ調製物およびその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工、貯蔵時においてセルラーゼが安定化された固体セルラーゼ
調製物とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルラーゼは、その特性を活かしてさまざまな産業分野で利用されている。具体的な利用分野の一つは繊維加工分野であり、特にセルロース含有繊維に所望の特性を与えるための処理がなされている。すなわち、セルロース含有繊維の肌ざわり及び外観を改善するために、そして、着色されたセルロース含有繊維に色の局所的な変化を提供する「ストーンウオッシュ」様外観を与える「バイオウオッシュ」のためにセルラーゼが使用されている。また、近年では木材パルプ由来のセルロースを有機溶媒に溶解して紡糸する再生セルロース系繊維であるリヨセルが、その強度や吸水性等の性質、さらには環境汚染を起こしにくい製造法から注目を集めているが、その製造工程で発生する織物表面の毛羽を除く加工にセルラーゼが用いられている。
【0003】
従来、セルラーゼは複数の酵素の共同作用によりセルロースを分解する作用があるとされてきた。近年、蛋白分離技術や遺伝子技術の進展により、複合酵素であるセルラーゼから、上記の繊維加工に適した酵素成分を分離し製造する試みがなされている。とりわけ、糸状菌のトリコデルマ(Trichoderma)属、フミコーラ(Humicola)属由来のセルラーゼについては研究が進み、フミコーラ属では、CBHI、EGV、NCE4、NCE2などが、トリコデルマ属では、CBHI、CBHII、EGII、EGIIIなどの成分が単離され、遺伝子操作によって過剰発現酵素やモノコンポーネント酵素などを調製することにより、種々の特定セルラーゼ成分を多量に含むセルラーゼ調製物が製造されるようになってきた。
【0004】
また、従来からセルラーゼを利用するためにさまざまな手法の製剤化が行われてきた。一般的には、セルロースを分解する能力を有する微生物を液体培養し、その培養濾過液や膜濾過液を噴霧乾燥や凍結乾燥などの手法により粉末製剤としたり、添加物を加えて液体製剤とする方法などがある。さらに、粉末製剤を無機塩や土などに混ぜ込んで造粒加工して粒状製剤とする方法もある。
【0005】
さらに、製剤化した酵素を安定化する方法についても検討され、培養濾過液や膜濾過液に合成高分子等を主成分とする酵素安定化剤や防腐剤を添加する試みがなされている。例えば、特許3009692号では、水溶性ポリマーを用いた安定化水性酵素分散液を開示しているが、多種類セルラーゼ成分を含む混合セルラーゼ液状製剤を安定化させるものであって、特定のセルラーゼ成分を多量に含むセルラーゼ調製物の安定化については何ら開示がない。また、特開平9−154576号では塩で安定化させた酵素配合物を開示しているが、添加する塩の種類によっては酵素の加工安定性や貯蔵安定性は低下している。そのため、添加物による酵素の安定化においては、各々の酵素成分ごとに適切な添加物の組合せを十分に検討する必要がある。
【0006】
近年の技術の進展により得られるようになった特定のセルラーゼ成分を多量に含有するセルラーゼ調製物は、従来の混合セルラーゼ製剤と比較して著しく安定性が低い。そのため、製剤化する工程中、あるいは製剤後や製剤をさらに加工した後の貯蔵期間中における酵素活性の損失が特に問題となっている。そのため、商業的に安定なセルラーゼ酵素製剤を調製するために、従来よりも高い安定性が得られ、かつ簡便で経済的な安定化法の開発が望まれてきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特定のセルラーゼ成分を含有するセルラーゼ調製物を、簡便かつ経済的に安定化する手法の開発を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、種々の化合物を液体状態のセルラーゼの溶液に添加後、噴霧乾燥して得られたセルラーゼ粉末調製物の加工安定性と貯蔵安定性を評価した。その結果、フミコーラ属セルラーゼの繊維加工に有効な酵素成分である国際公開第WO98/03640に記載されたエンドグルカナーゼNCE4を多量に含む溶液に、塩化カルシウムなどの二価のカチオンからなる無機塩を特定量添加することによって安定性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は
(1)下記の成分を含む安定化された固体セルラーゼ調製物。
a)エンドグルカナーゼを全蛋白質重量の10重量%以上含有する。
b)ニ価カチオンと塩化物からなる無機塩をエンドグルカナーゼ重量の90重量%以上含有する。
(2)二価のカチオンと塩化物からなる無機塩が、塩化カルシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛のいずれかである、(1)記載の固体セルラーゼ調製物。
【0010】
(3)エンドグルカナーゼがフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)由来のエンドグルカナーゼNCE4もしくはNCE5、接合菌由来のエンドグルカナーゼRCE I、RCE II、RCEIII、MCE I、MCE II、もしくはPCEIのいずれかである、(1)または(2)のいずれか一項に記載の固体セルラーゼ調製物。
【0011】
(4)エンドグルカナーゼを全蛋白質重量の10重量%以上含有するセルラーゼ溶液に、二価カチオンと塩化物からなる無機塩をエンドグルカナーゼ重量に対して90重量%以上添加し、乾燥することを特徴とする安定化された固体セルラーゼ調製物の製造方法
に関する。
【0012】
本発明は、繊維加工、紙パルプ加工、洗剤用途で有効とされるセルラーゼの安定性を高める方法を提供するものである。本発明は、繊維加工、紙パルプ加工、洗剤用途で有効とされるセルラーゼの培養濃縮液及び加工液に二価カチオンの塩化物塩を有効量添加することを特徴とし、その後乾燥させて得られたセルラーゼ酵素乾燥粉末は、乾燥工程での失活が抑制され、保存安定性が向上する。また、得られた乾燥粉末を原料にして加工操作性に優れる粒状製剤を製造する際は、製造工程での失活が抑制され、貯蔵時の安定性が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明が適用できるセルラーゼ酵素は、繊維加工、紙パルプ加工、洗剤用途で有効とされる特定の成分、及び特定の成分を多量に含むものである。特定の成分とは、例えば国際公開第WO91/17243号記載の成分、国際公開第WO94/21801号記載の成分、国際公開第WO98/03640号記載の成分などで、糸状菌やグラム陽性棹菌由来のセルラーゼ成分であるエンドグルカナーゼ(以下EGと略す)、セロビオヒドラーゼ(以下CBHと略す)を挙げることができる。
【0014】
更に詳しくは、 国際公開第WO98/03640号記載のフミコーラ属由来のエンドグルカナーゼであるNCE4、特願2000−150463記載のNCE5、国際公開第WO00/24879号記載の接合菌由来のエンドグルカナーゼであるRCE I、RCE II、RCEIII、MCE I、MCE II、及びPCEIなどである。
【0015】
NCE4については、国際公開第WO98/03640号の記載に従い、フミコーラ・インソレンスMN200−1にNCE4エンドグルカナーゼ遺伝子を含む発現プラスミドpEGD01(図1)を導入することによって得られた形質転換体を培養することにより得られる。なお、上記プラスミドpEGD01を導入した大腸菌はFERM BP−5973(原寄託:FERM P−15729、原寄託日:1996年7月12日)の受託番号のもと工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0016】
また、上記フミコーラ・インソレンスMN200−1は、FERM BP−5977(原寄託:FERM P−15736、原寄託日:1996年7月15日) の受託番号のもと工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0017】
NCE5については、特願2000−150463の記載に従い、前述のフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)MN200−1の培養液から精製することにより得られる。すなわち、(N)培地でフミコーラ・インソレンスMN200−1を培養し、得られた培養液をSource PHEカラム、Source ISOカラム、SP SepharoseFFカラム、Mono Sカラムを用いて分画し、綿毛羽除去活性を示す画分を採取する。最終的に、SDS−PAGEにて約25kDaを示す単一成分であるNCE5が得られる。またはフミコーラ・インソレンスMN200−1にNCE5エンドグルカナーゼ遺伝子を含む発現プラスミドpJND−c5を導入することによって得られた形質転換体を培養することにより得られる。すなわち、特願2000−354296号に記載のように、プラスミドpM21を用いて、遺伝子組換えによりプラスミドpM21−m−A1を作製し、プラスミドpMKD01(pMKD01で形質転換された大腸菌JM109株:FERM BP−5974)と連結したpJD01を作製する。特願2000−150463の記載に従い、pJD01とプラスミドpNCE5Bam(pNCE5Bamで形質転換された大腸菌JM109株:FERM BP−7138)とを連結した発現プラスミドpJND−c5を作製し、フミコーラ・インソレンスMN200−1に導入した形質転換体を得る。この形質転換体を培養し、NCE5増強品が得られる。
【0018】
このフミコーラ・インソレンス由来のエンドグルカナーゼ酵素NCE5は、セルロース含有繊維の毛羽立ち、肌触りや外観を改善する活性、及び着色セルロースの色の澄明化や色の局所的変化を提供する活性、紙パルプの濾水性を改善する活性を有する。また、分子量が約25 kDaと小さく、かつ、セルロース結合部位(CBD)が構造中に存在しないというフミコーラ由来のファミリ−45に属するエンドグルカナーゼとしては例がない構造を有している。
【0019】
接合菌としては、国際公開第WO00/24879号に記載されているように、リゾプス・オリゼー(FERM BP−6889の受託番号のもと工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託)、ムコール・サーシネロイデス(FERM BP−6890の受託番号のもと工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託)及びファイコマイセス・ニテンス(FERM BP−6891の受託番号のもと工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託)が代表的である。
【0020】
また、セルラーゼは分子構造上共通の組成を持つことが知られている。すなわち、セルラーゼを基質であるセルロース上に集中させて反応の効率を向上させるセルロースバインディングドメイン(以下CBDと略す)、セルロースを加水分解する活性部位(以下CADと略す)、CADとCBDを連結させるリンカー部位である。また、一次構造の共通性から、糖分解酵素を分類したアンリサットらの分類(Henrissat B. A classification of glycosyl hydrolases based on amino-acid sequence similarities. Biochem. J. 280:309-316(1991).、Henrissat B., Bairoch A. New families in the classification of glycosyl hydrolases based on amino-acid sequence similarities. Biochem. J. 293:781-788(1993).等)に従えば、以上のエンドグルカナーゼ群は、ファミリー45のエンドグルカナーゼに属する。すなわち、本発明の安定化方法は、特にファミリー45に属するエンドグルカナーゼに有効である。
【0021】
本発明において、エンドグルカナーゼはエンド−β−1,4−D−グルカナーゼを指すものである。
上述の繊維加工、紙パルプ加工、洗剤用途で有効とされる高活性エンドグルカナーゼを多量に含むセルラーゼは、遺伝子操作による過剰発現により、培養、調製することができ、本発明で好ましいエンドグルカナーゼの含有量は、全蛋白質重量の10重量%以上といえる。また、セルラーゼ調製物に含まれる好ましいエンドグルカナーゼの含有量は、全蛋白質重量の10重量%以上といえる。
【0022】
例えば、NCE4含有セルラーゼ培養物の場合、エンドグルカナーゼの含有量が全蛋白質重量の10重量%未満の場合は、貯蔵により活性がほとんど失活しないために、二価カチオンの塩化物塩の安定化効果がほとんど認められない。しかしながら、エンドグルカナーゼの含有量が全蛋白質重量の10重量%以上になると、貯蔵による活性の失活が生じてくるために、二価カチオンの塩化物塩の安定化効果が認められてくる。
【0023】
セルラーゼを含む溶液中、およびセルラーゼ調製物中におけるエンドグルカナーゼの全蛋白質重量中の重量%は以下の方法により決定することができる。まず、全蛋白質重量は、蛋白質量標準として牛血清アルブミンを用いたブラッドフォード法で決定することができる。より具体的には、バイオラッドラボラトリー社より販売されているプロテインアッセイキットを用い決定することが好ましい。
【0024】
次に、セルラーゼ調製物に含まれるエンドグルカナーゼの重量は、例えば前述のNCE4においては、セルラーゼ調製物のCMCアーゼ活性を精製NCE4のCMCアーゼ活性で割った値に精製NCE4の重量を乗じた値として求めることができる。ここで、精製NCE4の蛋白質重量は、国際公開第WO98/03640号記載の方法でフミコーラ・インソレンス培養液から単離精製したものを、プロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)により求めることができる。(蛋白質量標準として牛血清アルブミンを用いる。)また、CMCアーゼ活性は、セルラーゼ酵素、1%のカルボキシメチルセルロース(CMC、東京化成工業株式会社製)、および50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6)を含んだ1mlの溶液にて、50℃で30分間反応させた後、遊離してくる還元糖量を測定することにより求めることができる。この場合、1分間に1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する酵素量を1単位と定義する。
【0025】
本発明が適用できるセルラーゼ調製物は、その製造過程により定義することが可能である。微生物由来セルラーゼ調製物は、通常、以下の方法で調製できる。セルラーゼ生産微生物や繊維加工、紙パルプ加工、洗剤用途で有効とされる特定のセルラーゼ成分の遺伝子を過剰発現させた形質転換体を、前記セルラーゼ成分の製造に適した培地で培養し、得られた培養液を適切な方法で除菌する。除菌方法の一例として、フィルタープレスなどの濾過機を用いた濾過や遠心分離機を用いた除菌を挙げることが出来る。得られた除菌液に適切な防腐剤や酵素安定化剤などの化学物質を加えた後、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、及びマイクロ波乾燥などの手法を用いて水分を除去、乾燥させ、セルラーゼ酵素粉末を得ることが出来る。除菌液は、一般的な限外濾過法等の手法を用いて濃縮した後、以降の操作を行うことも可能である。得られたセルラーゼ酵素粉末は、ベントナイトなどの鉱物や硫酸曹達に代表される無機の塩類、セルロース末、スターチなどの天然高分子などと混合し、水、天然高分子、合成高分子などを結着剤やバインダーとして用いて、押し出し造粒、熱溶融造粒、転動造粒など一般的に粒剤を製造する際に用いられる方法を用いて粒剤や造粒剤に加工することができる。さらに、このようにして得られたセルラーゼ酵素粉末、及び粒剤、造粒剤に他の添加物を混合し、それぞれの産業用途に適した組成、形態に加工した組成物を調製することができる。本発明における固体セルラーゼ調製物とは、セルラーゼ酵素粉末、粒剤、造粒剤、及びこれらに添加物を混合してさらに加工した組成物をいう。
【0026】
本発明では、上述の培養液、除菌液(濾過液、遠心分離上清、濃縮液含む)及び酵素粉末を再溶解させた溶液のようなセルラーゼを含む溶液に対して、二価カチオンの塩化物塩を添加することにより、噴霧乾燥、凍結乾燥する際に生じる繊維加工、紙パルプ加工、洗剤用途で有効とされる特定成分セルラーゼの失活を防止し、貯蔵安定性が向上する。
【0027】
本発明に用いることのできる二価カチオンの塩化物塩は、使用目的により安定化度合い、毒性、溶解性を勘案し、通常入手可能な化合物を選択して使用することができる。また、無水塩、結晶水を含む塩いずれをも用いることが可能である。詳しくは、塩化カルシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛をあげることができる。
【0028】
本発明でセルラーゼを含む溶液中に添加される二価カチオンの塩化物塩の濃度は、好ましくは、エンドグルカナーゼ重量の90重量%以上といえる。また、セルラーゼ調製物に含まれる好ましい二価カチオンの塩化物塩の濃度は、エンドグルカナーゼ重量の90重量%以上といえる。
【0029】
本発明の固体セルラーゼ調製物の安定性は、以下のようにして確認することができる。すなわち、前述のセルラーゼ調製物をビニール袋を二重にした袋に封入し、40℃で3ヶ月間保存し、残存する酵素活性をデニム染めセルロース繊維の脱色活性により評価する。デニム染めセルロース含有繊維の脱色活性評価方法は、20kgワッシャー(三洋電機株式会社製 全自動洗濯機 SCW5101)中に、糊抜きした 12オンスのブルージーンズパンツを入れ、水道水を用いて調製した6.7mMリン酸緩衝液(pH6.2)15Lと前記セルラーゼ調製物からなる処理液、ゴムボールを適当量加え、55℃、60分間脱色処理を行う。処理後のブルージーンズパンツの脱色度は、分光測色計(ミノルタ社製 CM-5251)を用い、Lab表示系のL値(明度)で評価する。コントロール(脱色処理をしていないブルージーンズパンツ)に対する脱色処理後のブルージーンズパンツのL値の増加(白色度の増加)=ΔL値を求め、このΔL値により脱色の度合いを評価する。すなわち、各試験区につき10点のΔL値を測定し(n=10)、その平均値を算出し、ΔL値=7となるのに必要なセルラーゼの重量を基準に、脱色度からセルラーゼ活性の残存度%を算出する。
(活性の残存度%)=(保存前サンプルにおけるΔL値=7となるために必要なセルラーゼ重量)/(保存後サンプルにおけるΔL値=7となるために必要なセルラーゼ重量)×100
活性の残存度%の数値が高い試験区は、安定性が高いといえる。
【0030】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例1) 非組換え株由来のセルラーゼと特定成分酵素を過剰発現させたセルラーゼの安定性比較
フミコーラ・インソレンスMN200−1株(非組換え株)と国際公開第WO98/03640号に記載のエンドグルカナーゼNCE4を過剰発現させたフミコーラ・インソレンス株それぞれを5.0 %アビセル、2.0 %酵母エキス、0.1 %ポリペプトン、0.03 %塩化カルシウム、0.03 %硫酸マグネシウムを含むpH 6.8に調整した液体培地に接種し、培養し得られた培養液を、遠心分離(7,000 r.p.m.、20分間)し除菌体後、培養上清液を限外濾過機を用いBrix15 %まで濃縮した。
それぞれの膜濃縮液に、膜濃縮液固形重量と同じ重量の乳糖を溶解添加し、凍結乾燥し酵素粉末を得た。得られた粉末各々を、ビニール袋を2重にした袋に封入し、40℃で3ヶ月間保存し、残存する酵素活性をデニム染めセルロース繊維の脱色活性により評価した。
【0031】
デニム染めセルロース含有繊維の脱色活性評価方法
糊抜きした 12オンスのブルージーンズパンツを下記の条件で脱色処理をした。
試験機械:20kgワッシャー(三洋電機株式会社製 全自動洗濯機 SCW5101)
温度:55℃
時間:60分
pH:6.2
処理液:水道水を用いて調製した6.7mMリン酸緩衝液15Lに、セルラーゼ調製液とともにゴムボールを適当量加えた。
【0032】
脱色度を分光測色計(ミノルタ社製 CM-5251)を用い、Lab表示系のL値(明度)を測定した。コントロール(脱色処理をしていないブルージーンズパンツ)に対する脱色処理後のブルージーンズパンツのL値の増加(白色度の増加)=ΔL値を求め、このΔL値により脱色の度合いを評価した。すなわち、各試験区につき10点のΔL値を測定し(n=10)、その平均値を算出した。そして、ΔL値=7となるのに必要なセルラーゼの重量を基準に、脱色度からセルラーゼ活性の残存度%を算出した。
(活性の残存度%)=(保存前サンプルにおけるΔL値=7となるために必要なセルラーゼ重量)/(保存後サンプルにおけるΔL値=7となるために必要なセルラーゼ重量)×100
【0033】
以上の値を用い、フミコーラ・インソレンスMN200−1株由来のセルラーゼ(非組換え株由来)と、国際公開第WO98/03640号記載のフミコーラ・インソレンス株をホストとし特定成分酵素(具体的にはNCE4)を過剰発現させたセルラーゼの安定性を比較した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004644363
【0035】
以上表1に示したように、同様の製造過程を経た非組換え株由来セルラーゼと過剰発現NCE4では、40℃、3ヶ月保存でのジーンズ脱色活性の残存活性に約39 %の差異を生ずることがわかった。すなわち、繊維加工に有用な成分であるNCE4を多量に含む調製品(エンドグルカナーゼの含有量が全蛋白質重量の約33重量%)は、複数のセルラーゼ成分を含む非組換え株酵素(エンドグルカナーゼの含有量が全蛋白質重量の10重量%未満)よりも保存安定性が著しく低い傾向がみられた。
【0036】
(実施例2) 無機塩を添加したNCE4セルラーゼの粉末の保存安定性
国際公開第WO98/03640号記載のNCE4を過剰発現させたフミコーラ・インソレンスを5.0 %アビセル、2.0 %酵母エキス、0.1 %ポリペプトン、0.03 %塩化カルシウム、0.03 %硫酸マグネシウムを含むpH 6.8に調整した液体培地に接種し、培養し得られた培養液を、遠心分離(7,000 r.p.m.、20分間)し除菌体後、培養上清液を限外濾過機を用いBrix15 %まで濃縮し、得られた濃縮液を用い試験を行った。無機塩を含有する酵素粉末は、上の濃縮液1mlに0.1M各種無機塩溶液1ml、脱イオン水3mlを混合後、凍結乾燥を行い調製した。得られた酵素粉末を密閉容器に入れ、120℃、24時間保存後、ジーンズ脱色活性を測定し、保存前後のΔLを測定し、セルラーゼの安定化効果を評価した。この結果を表2に示した。ここで、120℃、24時間の保存試験は常温での長期保存試験を加速するために行った。
【0037】
【表2】
Figure 0004644363
【0038】
表2より、塩化カルシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛など二価カチオンの塩化物塩に顕著なセルラーゼ安定化効果が確認できた。
【0039】
(実施例3) 保存安定性の増したNCE4セルラーゼ調製に必要な塩化カルシウム量
実施例2記載の方法に基づき、NCE4セルラーゼの培養濃縮液を得た。得られた濃縮液1mlに、濃縮液の含有するセルラーゼ重量を基準に、種々の濃度の塩化カルシウム溶液1mlと脱イオン水3mlを混合後凍結乾燥し、種々の濃度の塩化カルシウムを含有するNCE4セルラーゼ酵素粉末を得た。得られたセルラーゼ酵素粉末は、密封後120℃、24時間保存し残存ジーンズ脱色活性を評価した。この結果を表3に示した。
【0040】
【表3】
Figure 0004644363
【0041】
この結果、塩化カルシウムをNCE4セルラーゼ重量の90%以上添加し得られたNCE4セルラーゼ粉末は、無添加セルラーゼに比べ格段に安定性に優れると結論できる。
【0042】
Figure 0004644363
【0043】
上記の原材料を混合後、10 %の水を添加し混錬する。混錬物をディスクペレッターに送り成形加工する。得られた射出物をマルメライザー(不二パウダル社製)を用い粒状とし、乾燥、篩かけし造粒物を得た。上記調製物中には、二価カチオンの塩化物塩として塩化マグネシウムをエンドグルカナーゼ重量に対して約110重量%、エンドグルカナーゼを全タンパク質重量中約33%含有する。
【0044】
【発明の効果】
本発明によって、エンドグルカナーゼの含量が多い固形セルラーゼ調製物の貯蔵安定性を改善することができ、流通や在庫中の貯蔵における失活を抑制し、経済的損失を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発現プラスミドpEGD01を示す図。

Claims (3)

  1. 下記の成分を含む安定化された固体セルラーゼ調製物。
    a)エンドグルカナーゼを全蛋白質重量の10重量%〜33重量%含有する。
    b)塩化カルシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛のいずれかからなる無機塩をエンドグルカナーゼ重量の90重量%〜225重量%含有する。
  2. エンドグルカナーゼがフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)由来のエンドグルカナーゼNCE4もしくはNCE5、接合菌由来のエンドグルカナーゼRCE I、RCE II、RCE III、MCE I、MCE II、もしくはPCE Iのいずれかである、請求項1記載の固体セルラーゼ調製物。
  3. エンドグルカナーゼを全蛋白質重量の10重量%〜33重量%含有するセルラーゼ溶液に、塩化カルシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛のいずれかからなる無機塩をエンドグルカナーゼ重量に対して90重量%〜225重量%添加し、乾燥することを特徴とする安定化された固体セルラーゼ調製物の製造方法。
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