JP4639629B2 - 偽陽性を低減可能なリボ核酸増幅試薬組成、およびそれを用いたリボ核酸の増幅方法 - Google Patents

偽陽性を低減可能なリボ核酸増幅試薬組成、およびそれを用いたリボ核酸の増幅方法 Download PDF

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Description

本発明は、偽陽性を低減可能なリボ核酸増幅試薬組成、および該組成を用いたリボ核酸の増幅方法ならびに該方法を使用するための試薬またはキットに関する。
ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)法に代表される核酸増幅法は、特定の配列を有する核酸を短時間で特異的に検出する目的において優れた方法である。しかし、PCR法による増幅の鋳型となる核酸はデオキシリボ核酸(DNA)の形で提供される必要があるため、リボ核酸(RNA)を対象とする場合は、直接、PCR法によって増幅することはできない。RNAをPCR法により検出するためには、RNAが有する遺伝情報を逆転写活性を有する酵素などを用いてDNAに変換する必要がある。このような逆転写とPCRを組み合わせた方法においては、特にRNAのみが検出対象である場合、特定の予防処理をしない限り、RNA試料に混入したDNAによって肯定的な結果が導かれることによる偽陽性が大きな問題となる。
上記問題を解決するための1つの可能性は接合プライマーの使用である。接合プライマーは、ゲノムDNAがRNAに転写されるエキソン配列と、プロセシングによりRNAに転写されないイントロン配列を含むことを利用し、その5'末端がエキソンの5'末端の配列に相補的で、その3'末端が隣接したエキソンの3'末端のヌクレオチドに相補的だが、ゲノム上の該2つのエキソンの間に位置するイントロンの3'末端のヌクレオチドに相補的でないヌクレオチドを含むように配列が選択されたオリゴヌクレオチドである。この場合、試料へのDNAの混入による偽陽性は少なくとも部分的に回避できる。しかしながら、該方法では、イントロンを含まない遺伝子に対しては無効である。
さらに、ゲノム上に存在する偽遺伝子は長さにおいて転写されたRNAと同一であるため、PCRにおいて両者を区別することができないという同じ問題を提示する。このような場合、転写反応の前に試料をDNアーゼで処理することが有効である(例えば、非特許文献1および2、参照)。偽陽性を低減させるためのDNアーゼの使用に関しては、例えば反応試薬に添加する2価イオンとしてマグネシウムの代わりにマンガンイオンを存在させることでDNアーゼを効率的に作用させる、などの改良が行われている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、従来公知のいずれの技術においても、試料をDNA分解活性を有する酵素と反応させた後、煩雑な抽出操作などにより該酵素を除去したRNA試料を逆転写反応に供している。すなわち、試料を入手してからリボ核酸の増幅を行うまでに煩雑な偽陽性予防処理を行う必要があり、これは研究や診断の現場において人的または時間的な効率を低下させる要因の一つとなり得る。
特表平11−503325号公報 BioTechniques、第9巻、第262−268頁、1990年 BioTechniques、第13巻、第726−729頁、1992年
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、簡便に偽陽性を低減可能なリボ核酸増幅試薬組成、および該組成を用いたリボ核酸の増幅方法ならびに該方法を使用するための試薬またはキットを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために種々鋭意検討したところ、試料に含まれるDNAの分解(偽陽性予防処理)とリボ核酸の増幅を1工程で行うことが可能な試薬組成を見出した。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)少なくとも一種類の酵素を含有することによりDNA分解活性および逆転写活性およびDNAポリメラーゼ活性を有することを特徴とする、リボ核酸増幅用試薬組成。
(2)DNA分解活性を有する酵素、および逆転写活性および/またはDNAポリメラーゼ活性を有する少なくとも一種類の酵素を含有することを特徴とする、リボ核酸増幅用試薬組成。
(3)少なくとも一種類の酵素を用いて1工程でリボ核酸を増幅することを特徴とするリボ核酸増幅用試薬組成であって、
(a)DNA分解活性を有する酵素により試料に含まれるデオキシリボ核酸を分解し、
(b)逆転写活性を有する酵素により試料に含まれるリボ核酸をデオキシリボ核酸に変換し、
(c)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により標的RNAに相補的なデオキシリボ核酸を増幅するための成分を含有する試薬組成。
(4)DNA分解活性を有する酵素がDNアーゼIであることを特徴とする、(1)から(3)のいずれかに記載のリボ核酸増幅用試薬組成。
(5)マンガンイオンを含まないことを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載のリボ核酸増幅用試薬組成。
(6)反応容器中にDNA分解活性を有する酵素、逆転写活性および/またはDNAポリメラーゼ活性を有する酵素を一緒に存在させ、1工程でリボ核酸を増幅することを特徴とするリボ核酸の増幅方法。
(7)少なくとも一種類の酵素を用いて1工程でリボ核酸を増幅することを特徴とするリボ核酸増幅方法であって、下記工程
(a)DNA分解活性を有する酵素により試料に含まれるデオキシリボ核酸を分解し、
(b)逆転写活性を有する酵素により試料に含まれるリボ核酸をデオキシリボ核酸に変換し、
(c)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により標的RNAに相補的なデオキシリボ核酸を増幅することから成る方法。
(8)DNA分解活性を有する酵素がDNアーゼIであることを特徴とする、(6)または(7)に記載のリボ核酸増幅方法。
(9)マンガンイオンを含まないことを特徴とする、(6)から(8)のいずれかに記載のリボ核酸増幅用試薬組成。
(10)(6)から(9)のいずれかに記載の方法を用いてリボ核酸を増幅するための試薬またはキット。
本発明により、試料に含まれるデオキシリボ核酸の分解(偽陽性予防処理)とリボ核酸の増幅を1工程で行うことができ、特に研究や診断の現場において人的または時間的な効率を大きく向上させることが可能となる。また、本発明の波及効果として、該現場において大きな問題となっている、増幅反応の途中で容器の蓋を開閉することによるコンタミネーションの予防策を提供することができる。
本発明においてリボ核酸の増幅とは、試料中のリボ核酸から増幅したい核酸(標的核酸)をその固有の配列の相補性を利用して増幅することを指し、具体的には、該リボ核酸を自身に相補的なデオキシリボ核酸(cDNA)に変換した後、該cDNAを増幅する一連の流れを指す。本発明におけるリボ核酸増幅試薬組成およびそれを用いたリボ核酸の増幅方法が適用可能な該cDNA増幅の方法としては、PCR法、LAMP法、SDA法など特に限定されるものではないが、一般的に熱安定性の高い酵素を用いるPCR法の使用がより好ましい。
RNAを含む試料に混在するDNAによる擬陽性を防止するためには、まずRNAを含む試料に混在するDNAをDNアーゼで分解するが、次のRNAからcDNAに変換した際にこのDNアーゼが残存している場合にはcDNAが分解すると考えられていた。しかしながら発明者らの検討によると、逆転写酵素によりcDNAに変換した際のRNA-cDNAハイブリッド状態では、DNアーゼが存在していても分解されることなくcDNAが維持されることを見出し、さらに、引き続くPCR反応の高温下によってDNアーゼ、逆転写酵素の活性を失活させることができることにをヒントに、各酵素の組み合わせ、各酵素量の最適化、各酵素のいずれもが有効に働く試薬液組成の最適化を検討することにより、本発明を完成させた。
本発明の偽陽性を低減可能なリボ核酸増幅試薬組成の好ましい一例としては、まず、(a)DNA分解活性を有する酵素、(b)逆転写活性を有する酵素、(c)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、を含むことが好ましい。
さらに、(d)RNアーゼ阻害剤、(e)核酸増幅用プライマー、(f)dNTP、(g)反応バッファー、(h)リボ核酸含有試料などを含むことができる。
(a)DNA分解活性を有する酵素としては、各種のDNA依存的エキソヌクレアーゼまたはDNA依存的エンドヌクレアーゼを使用し得るが、DNA−RNAハイブリッド2本鎖を分解する活性を有しない酵素の使用が望ましい。具体的にはDNアーゼの使用が好ましく、DNアーゼIの使用がより好ましい。該酵素の使用量としては、おおよそ0〜25℃程度の温度範囲にて60分以内に偽陽性の原因となる試料中のデオキシリボ核酸を分解し、かつ後工程の酵素反応を阻害しない量であることが必要である。また、RNA-cDNAハイブリッドを実質上分解しない量であること、加熱のみで失活させうる量であることが大切である。具体的には、DNアーゼIの場合は5〜5000単位/ml程度の使用が好ましく、100〜1000単位/ml程度の使用がより好ましい。
(b)逆転写活性を有する酵素としては、従来公知のレトロウイルス、特にモロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)、ヒト後天性免疫不全ウイルス(HIV)、トリ骨髄芽症ウイルス(AMV)などに由来する各種の逆転写酵素を特に限定されることなく使用できる。また、レトロウイルス由来の逆転写酵素の多くでDNA−RNAハイブリッド2本鎖のRNAを分解する活性、すなわちRNaseH活性を有することが知られており、この活性の存在はRNAを鋳型としてcDNAを合成する際に鋳型−プライマー複合体の鋳型を分解し、その分解位置がプライマーの3'端に近い場合は鋳型−プライマー複合体が解離されるため伸長性が低下するという結果を招く。このような問題を排除するため、本発明の逆転写活性を有する酵素としては、実質的にRNaseH活性を有していない逆転写酵素を使用することが好ましい。具体的には、M−MLV由来のRNaseH活性除去変異体の場合は5〜5000単位/ml程度の使用が好ましく、100〜1000単位/ml程度の使用がより好ましい。
(c)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素としては、T4またはT7ファージ、大腸菌、サーモコッカス(Thermococcus)属、サーマス(Thermus)属、パイロコッカス(Pyrococcus)属、バシラス(Bacillus)属など種々の起源のDNAポリメラーゼおよびその改良変異体を特に限定されることなく使用できるが、核酸の増幅方法としてPCR法を使用する場合はKOD DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼなど熱安定性の酵素を使用することが好ましい。中でもKOD DNAポリメラーゼまたは該酵素を改良したDNAポリメラーゼは増幅量および反応速度の観点から最も好ましい。具体的には、KOD Dash DNAポリメラーゼの場合は1〜200単位/ml程度の使用が好ましく、10〜100単位/ml程度の使用がより好ましい。
なお、(b)逆転写活性を有する酵素および(c)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素については逆転写活性を有するDNAポリメラーゼによる代替も可能であり、このような性質の酵素としてはTth DNAポリメラーゼが最も代表的である。
本発明において、1工程で反応を行うためには、上述の各酵素の組み合わせの相性も考慮することが重要である。具体的な個々の酵素を選択するときには、各酵素が有効に作用するバッファー組成(pH、塩濃度等)が共通するもの、近いものを組み合わせることが好ましい。
(d)RNアーゼ阻害剤としては、ヒト胎盤やブタ肝臓などに由来する各種のRNアーゼ阻害剤を特に限定されることなく使用でき、5〜5000単位/ml程度の使用が好ましく、100〜1000単位/ml程度の使用がより好ましい。
(e)核酸増幅用プライマーは1〜1000nM程度を含む。中でも特異性を高めるために、100〜500nM程度がより好ましく、200nM程度がさらに好ましい。
(f)dNTPは50〜1000μM程度を含む。100〜700μM程度がより好ましく、200〜400μM程度がさらに好ましい。
(g)反応バッファーについては、本発明のリボ核酸増幅試薬に含まれる酵素の能力を最大限に発揮する目的で、緩衝液や金属塩の濃度、溶液のpHなどが適宜選択され得る。
これらは、組み合わせる酵素により、最適な範囲は異なるが、例えば実施例で示したDNaseI(ロシュ製)、M−MLV由来逆転写酵素RNaseH活性除去変異体(東洋紡績製)、熱安定性DNAポリメラーゼKOD Dash(東洋紡績製)の組み合わせの場合では、pHは室温下で測定した場合に6.5〜9.5、さらには室温下で測定した場合に8.0〜9.0が好ましく、Mg濃度は1.0mM〜5.0mM、さらには1.5〜4.0mMが好ましい。
特に、1工程で反応を行うためには、試薬に含まれる酵素のいずれもがその能力を発揮できる試薬組成に調整する必要がある。特にMgは各酵素の依存性が高いため、各酵素の適正濃度範囲にすることが好ましい。なお、やむを得ない場合には反応中に塩などを追加しても良いが、操作性等の面で、反応開始時にはすべての添加物が反応溶液中に含まれる様にすることが好ましい。
また、酵素の安定性を高める目的で、該試薬にウシ血清アルブミンなどの添加剤を適宜混合しても良い。
さらに、試薬組成物中のマンガンイオンの含有量は1mM以下であることが好ましい。マンガンイオンは通常、例えばTth DNAポリメラーゼに代表される熱安定性DNAポリメラーゼの逆転写活性を増強するために添加することがあるが、マンガンイオンの存在は非特異的な増幅やスメア状の増幅を引き起こしやすくなる、または核酸を増幅する効率が低下するなどの理由で好ましくない。
マンガンイオンの含有量はさらに好ましくは0.5mM以下であり、特に好ましくは0.1mM以下であり、 最も好ましくは実質的に含有されないことである。実質的に含有されないとは、非特異的な増幅やスメア状の増幅を引き起こしやすくなる、または核酸を増幅する効率が低下するなどの不具合を生じない量以下である。
(h)リボ核酸は本発明において、例えば、mRNA、tRNA、rRNAなどの、いずれのリボ核酸であってもよい。また本発明は、イントロンを含まないmRNA試料、および偽遺伝子が存在するまたは偽遺伝子が存在するかどうかわからないmRNA試料において、特に効果的に作用する。本発明によれば、偽陽性の原因となるデオキシリボ核酸が高度に混入した場合でさえ、リボ核酸を選択的に増幅し得る(実施例1を参照)。したがって、本発明のリボ核酸増幅方法において、完全には精製されていないRNAを含有する試料を用いることが可能である。特にデオキシリボ核酸の含有量は、標的となるリボ核酸に対応するかどうかに関わらず、リボ核酸を増幅するための従来技術にしたがって用いられた試料中の含有量を越えることができる。試料は、例えば、バクテリア、動物または植物組織、個体細胞由来の溶解物などのあらゆる材料から調製することができる。また、リボ核酸は試料中に溶解させてもよいし、固相に固定させてもよい。
増幅反応は、DNA分解反応、逆転写反応、PCR反応を含む。これらの反応は1ステップで行われることが好ましい。ここで言う1工程とは、これらの反応を途中に抽出・分離工程を入れることなく行うことであり、さらには途中で添加物等を加えることなく行われる行われることが好ましい。特には、測定サンプルを含めた反応溶液を調整した後は、温度コントロールおよび必要に応じて攪拌のみで各反応が順次進められることが好ましい。
以下に、DNA分解活性を有する酵素としてDNアーゼIを、逆転写活性を有する酵素としてM−MLV由来のRNaseH活性除去変異体(東洋紡績製)を、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素としてKOD Dash(東洋紡績製)をそれぞれ用いることを例に挙げて、本発明について具体的に説明する。なお、該発明の最大の新規性は、増幅反応系からDNA分解活性を有する酵素を除去する工程および途中で酵素を含有する溶液などを添加する工程を省略し、1工程で、偽陰性の原因となり得るDNAの分解から標的RNAに相補的なDNA増幅の反応までを行うことにある。したがって、以下に開示する例において構成成分の一部、すなわち酵素の変更または該変更に合わせた試薬組成の改良などは、前述の指針に従えば当業者にとって容易である。したがって、以下の事例は、本発明の内容を何ら限定するものではない。
実施例1
本発明のリボ核酸増幅試薬組成における偽陽性低減効果の確認
(1)試料の調製
HeLa細胞よりRNAおよびDNAをそれぞれ抽出した。該核酸を1%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した後、紫外線照射下での蛍光を検出した。このとき核酸抽出に用いた細胞数および電気泳動に用いた核酸の量を表1に示し、該電気泳動によって得られた写真を図1に示す。なお、図1のレーン番号は表1のサンプル番号に対応する。電気泳動の条件は、定電圧100V、30分間にて行った。反応液の他に分子量マーカーも同時に泳動し、検出されたDNA断片の鎖長を比較する際の参考とした。操作方法ならびに他の条件は、マニアティス(Maniatis)らのモレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)(1982年)に記載の技法に従った。
(2)試料に含まれるリボ核酸の増幅
表1におけるサンプル番号1〜4の核酸について、それぞれ電気泳動に用いた量を試料としてG3PDH遺伝子を標的リボ核酸とする増幅反応を行った。反応液組成は、DNaseI(ロシュ製)500単位/ml、M−MLV由来逆転写酵素RNaseH活性除去変異体(東洋紡績製)500単位/ml、熱安定性DNAポリメラーゼKOD Dash(東洋紡績製)25単位/ml、RNアーゼ阻害剤(東洋紡績製)500単位/ml、G3PDHプライマーセット(東洋紡績製)各200nM、dATPおよびdGTPおよびdCTPおよびdTTPを各0.4mM、および1倍濃度の増幅用緩衝液(東洋紡績製、室温下で測定した場合のpHが8.6のトリス緩衝液および3.7mMのMgを含む)である。 また、Mnイオンの添加は行われていない。ただし、本検討におけるDNaseIおよびM−MLV由来逆転写酵素RNaseH活性除去変異体の有効性を確認する目的で、表2に示すように一部の酵素を添加しない反応液も用意した。実際の使用にあたっては、反応液に試料溶液を添加し、反応液量を50μlとして、以下の反応に供した。反応条件は以下の通りである:
DNA分解反応 4℃、15分
逆転写反応 42℃、20分
PCR反応 熱変性 :98℃、10秒
アニーリング:60℃、2秒
伸長反応 :74℃、30秒
上記DNA分解反応および逆転写反応は1回のみ、PCR反応(熱変性、アニーリング、伸長反応)は35回繰り返した。これらの操作はパーキンエルマー社のDNAサーマルサイクラー(GeneAmp9700)を用いて行った。増幅反応後の反応液5μlを2%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した後、紫外線照射下での蛍光を検出した。アガロース電気泳動で得られた写真を図2に示す。なお、図2のレーン番号は表2のサンプル番号に対応する。電気泳動の条件は、定電圧100V、30分間にて行った。反応液の他に分子量マーカーも同時に泳動し、検出されたDNA断片の鎖長を比較する際の参考とした。
(3)結果
図1(および表1)のサンプル番号1〜3より明らかなように、細胞試料によっては、抽出したリボ核酸(RNA)に大量のデオキシリボ核酸(DNA)が混入することがある。図1のサンプル番号4に対照として電気泳動した抽出DNAと比較すると、例えば図1のサンプル番号2の抽出RNAに混入しているDNAは試料とした細胞の10%前後に相当する量に及ぶ。DNAとRNAは化学的に極めて類似した物質であるため、このように特に両核酸を含有する生体細胞などを試料とする場合では、抽出RNAからDNAを完全に排除することは極めて困難である。同様に図1のサンプル番号4に電気泳動した抽出DNAにも、電気泳動で検出できない量のRNAが混入していることが予想される。
図2(および表2)より明らかなように、本発明の試薬組成(サンプル番号1〜4)では約450bpの部分に明瞭な増幅を確認できるが、RNA増幅試薬組成に逆転写酵素が含まれない、すなわち本発明のリボ核酸増幅試薬組成から逆転写活性を有する酵素を除去した場合(サンプル番号5〜8)には増幅を確認できない。したがって、図2のサンプル番号1〜4で確認された増幅は各試料に含まれるRNAに起因する。一方、RNA増幅試薬組成にDNA分解酵素が含まれない、すなわち本発明のリボ核酸増幅試薬組成からDNA分解活性を有する酵素を除去した場合では、該組成に逆転写酵素が含まれる場合(サンプル番号9〜12)および逆転写酵素が含まれない場合(サンプル番号13〜16)ともに約450bpの部分に明瞭な増幅を確認できる。すなわち、図2のサンプル番号13〜16で確認された増幅は各試料に含まれるDNAに起因する偽陽性である。このように本発明のリボ核酸増幅試薬組成ではDNA分解活性を有する酵素を含んでいることにより、試料に含まれるRNAのみに起因する増幅を確認することが可能である。
実施例2
既存のリボ核酸増幅試薬組成との増幅効率の比較
(1)試料の調製
実施例1においてHeLa細胞より抽出したRNA溶液(図1におけるサンプル番号1)を10倍ずつ希釈した段階希釈液を調製し、試料とした。
(2)試料に含まれるリボ核酸の増幅
I.本発明のリボ核酸増幅試薬組成による増幅
実施例1と同様の方法により、表3に示す試料についてそれぞれG3PDH遺伝子を標的リボ核酸とする増幅反応を行った。
II.従来のリボ核酸増幅試薬組成による増幅
表3に示す試料にそれぞれDNaseI(ロシュ製)500単位/mlを添加し、4℃で15分間反応させ、試料に含まれるDNAを分解した。反応後の溶液を99℃で10分間加熱してDNaseIを失活させた後、該溶液にM−MLV由来逆転写酵素RNaseH活性除去変異体(東洋紡績製)500単位/ml、RNアーゼ阻害剤(東洋紡績製)500単位/ml、G3PDHプライマーセット(東洋紡績製)各200nM、dATPおよびdGTPおよびdCTPおよびdTTPを各0.4mM、および1倍濃度の増幅用緩衝液(東洋紡績製)を添加し、42℃で20分間反応させ、逆転写反応を行った。反応後の溶液を99℃で10分間加熱して逆転写酵素を失活させた後、熱安定性DNAポリメラーゼKOD Dash(東洋紡績製)25単位/mlを添加し、増幅反応を行った。増幅反応の条件は以下の通りである:
熱変性: 98℃、10秒
アニーリング:60℃、2秒
伸長反応: 74℃、30秒
上記熱変性、アニーリング、伸長反応は35回繰り返した。これらの操作はパーキンエルマー社のDNAサーマルサイクラー(GeneAmp9700)を用いて行った。
I.本発明のリボ核酸増幅試薬組成による増幅、II.従来のリボ核酸増幅試薬組成による増幅ともに、増幅反応後の反応液5μlを2%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した後、紫外線照射下での蛍光を検出した。アガロース電気泳動で得られた写真を図3に示す。なお、図3のレーン番号は表3のサンプル番号に対応する。電気泳動の条件は、定電圧100V、30分間にて行った。反応液の他に分子量マーカーも同時に泳動し、検出されたDNA断片の鎖長を比較する際の参考とした。
(3)結果
図3(および表3)のサンプル番号1〜3より明らかなように、本発明のリボ核酸増幅試薬組成によって1工程でリボ核酸を増幅させた場合(サンプル番号1〜7)および従来のリボ核酸増幅試薬組成によって3工程でリボ核酸を増幅させた場合(サンプル番号8〜14)について、増幅効率は同様であった。すなわち、本発明のリボ核酸増幅試薬組成では従来の方法と同様の増幅効率を実現しながら、増幅に必要な作業工程数を大幅に短縮することが可能である。また、該工程数の短縮は単に手間が軽減されるだけでなく、研究や診断の現場において大きな問題となっている、増幅反応の途中で容器の蓋を開閉することによるコンタミネーションの予防策としても重要な効果である。
本発明により、試料に含まれるデオキシリボ核酸の分解(偽陽性予防処理)とリボ核酸の増幅を1工程で行うことができ、特に研究や診断の現場において人的または時間的な効率を大きく向上させることが可能となる。また、本発明の波及効果として、該現場において大きな問題となっている、増幅反応の途中で容器の蓋を開閉することによるコンタミネーションの予防策を提供することができる。
HeLa細胞より抽出したRNAおよびDNAを示す図面に代わる電気泳動写真である。 HeLa細胞より抽出したRNAおよびDNAについて、本発明のリボ核酸増幅試薬組成を用いて増幅したDNA断片を示す図面に代わる電気泳動写真である。 HeLa細胞より抽出したRNAについて、本発明のリボ核酸増幅試薬組成および従来のリボ核酸増幅試薬組成を用いて増幅したDNA断片を示す図面に代わる電気泳動写真である。

Claims (9)

  1. DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素、並びに逆転写活性およびDNAポリメラーゼ活性を有する酵素の少なくとも2種類の酵素を含有することを特徴とする、RT−PCR用試薬。
  2. DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素、逆転写活性を有する酵素、およびDNAポリメラーゼ活性を有する酵素の少なくとも3種類の酵素を含有することを特徴とする、RT−PCR用試薬。
  3. 少なくとも2種類の酵素を用いて1工程でRT−PCRを行うことを特徴とするRT−PCR用試薬であって、
    (a)DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素により試料に含まれるDNAを分解し、
    (b)逆転写活性を有する酵素により試料に含まれるRNAと相補的なDNA鎖を合成し、
    (c)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により標的RNAと相補的なDNAを増幅するための成分を含有する試薬。
  4. DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素がDNアーゼIであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRT−PCR用試薬。
  5. マンガンイオン含有量が1mM以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のRT−PCR用試薬。
  6. 反応容器中にDNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素、並びに逆転写活性およびDNAポリメラーゼ活性を有する酵素の少なくとも2種類の酵素を一緒に存在させ、1工程でRT−PCRを行うことを特徴とするRT−PCR方法。
  7. 反応容器中にDNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素、逆転写活性を有する酵素、およびDNAポリメラーゼ活性を有する酵素の少なくとも3種類の酵素を一緒に存在させ、1工程でRT−PCRを行うことを特徴とするRT−PCR方法。
  8. 少なくとも2種類の酵素を用いて1工程でRT−PCRを行うことを特徴とするRT−PCR方法であって、下記工程
    (d)DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素により試料に含まれるDNAを分解し、
    (e)逆転写活性を有する酵素により試料に含まれるRNAと相補的なDNA鎖を合成し、
    (f)DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により標的RNAと相補的なDNAを増幅すること、からなる方法。
  9. DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素がDNアーゼIであることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
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