JP4636339B2 - 義歯安定剤及び義歯安定剤を義歯床に裏装した義歯 - Google Patents

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Description

本発明は義歯の固定に使用する義歯安定剤及び義歯安定剤を義歯床に裏装した義歯に係わり、特に優れた接着性と剥離性並びに咀嚼圧力によって生ずる顎堤当接部安定剤の粘弾性(軟らかさ)を増大せしめ、維持固定を増進して良好な使用感を長期に亘って保持し得る義歯安定剤及びその義歯安定剤を義歯床に裏装した義歯に関するものである、
義歯の装着に際して、長期間にわたる使用に伴う顎堤の吸収や変化などにより義歯の口腔粘膜への適合が悪くなり、装着維持や安定が不良になって不適合となる義歯がある。このような不適合義歯を口腔粘膜に適合性を保つよう固定し、咬合、咀嚼、会話などを補うために、義歯安定剤は使用されるものである。そして、この義歯安定剤にあっては、義歯装着にあたって長期に亘って不快感を生じることなく、快適に装着可能に保持し得るように、例えば、特開2002−95681号公報、及び特開2002−113023号公報等に開示されている如く、種々改良が提案されて来ている。
然るに、高度に吸収した無歯顎患者にあっては、義歯装着するに際して総義歯床下の粘膜は事実上疼痛が生じて、咀嚼が不可能となり、難症例患者では義歯そのものが廃用状態になる。そして、血行、栄養状態が益々悪化して、疼痛を益々増長せしめる状況になる。また、粘膜の下には益々吸収された歯槽骨残骸がギザギザ状に残された2列の鋸歯状の骨鋭縁や棘などのほか、吸収が顎骨にまで達して辺縁皮質骨が義歯床を拒絶する状態で分布していて、義歯床の固さが粘膜を通して、疼痛は想像を絶する以上に激痛化し、到底義歯を装着せしめ得る顎堤状態ではない。
そこで、上記した状態にあっては、義歯床の粘膜接触部との接触面積を小さくするようにして、受圧を小さくするために、必然的に義歯の咬合高径が低く、かつ舌房が狭く調整され勝ちで、高齢者特有の顔貌となり、食する食物も極度に限定されるようになり、極端には咀嚼不要の流動食に限定されてしまうことさえある。
更に、口腔粘膜は脳幹に最も近い粘膜の一つであるから、痛感覚は特に過敏であって、又、本来あるべき歯槽壁の歯根膜は歯を吊り下げて、強大な咀嚼圧に耐える巧妙なクッション構造であって「歯応え」を感じる大切な部位であるが、これに対処し得る柔軟でソフトな義歯安定剤の出現が切望されている。そして、このような難症患者は、健康維持と脳の活性化に絶対必要とされ、例えば「80才迄に20本の歯を残す」とする「80−20運動」の対局に置かれており、ひたすら噛める義歯の出現や、これを補助するために、限りなく粘膜に近い粘弾性(軟らかさ)を有する義歯安定剤の出現が切望されている。
特開2002−95681号公報 特開2002−113023号公報
本発明は上記した事情に鑑みなされたもので、義歯装着、使用に当たって、顎堤部位の床下粘膜に当接する義歯に裏装された安定剤受圧部の粘弾性(軟らかさ)を増大せしめて、強大な咀嚼咬合圧力を吸収分散して、褥瘡性潰瘍、骨鋭縁の炎症などの治療や発生の予防効果を発揮せしめ、長期にわたって快適で良好な適合装着状態を保持し得る義歯安定剤、特に無歯顎患者にとって顎堤の型取りが精密であって、好適なペースト状義歯安定剤と安定した型取りにより安定剤を裏装した義歯を提供することを本発明の課題とするものである。
本発明は、上記課題を解決するため以下の如き手段を講ずるものである。
請求項1に係わる発明として、脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに7.0乃至17.0wt%の低重合ポリ酢酸ビニル樹脂を添加攪拌して溶解せしめた軟粘着物であることを特徴とする義歯安定剤としたものである。なお、以下において、低重合ポリ酢酸ビニル樹脂を「低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニル樹脂」または「低流動性ポリ酢酸ビニル樹脂」ともいう。
請求項2に係わる発明として、軟粘着物が、それを大気と遮断処理して得られる粘弾性の軟粘着物の下記測定法による軟らかさ値が6秒以上を少なくとも90日間保持するものであることを特徴とする請求項1記載の義歯安定剤としたものである。
測定法:試料(高さ19mm、直径30mmの円柱状)を20mm/minの一定速度で上昇せしめ、その上方に配置固定した荷重測定円盤(直径10mm、厚さ1mm)に当接せしめて、上昇してくる試料から荷重測定円盤が受ける荷重が1.226N(0.125kgf)から11.033N(1.125kgf)迄の9.807N(1kgf)増加する時間(秒)を軟らかさ値とする。
請求項3に係わる発明として、義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯であって、請求項1または2記載の義歯安定剤を義歯床に塗布後、大気と遮断処理して粘弾性にさせた義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯としたものである。
請求項4に係わる発明として、義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯であって、請求項1または2記載の義歯安定剤を義歯床に塗布後、炭酸水素ナトリウムの水溶液で漱いでおいた顎堤の型取りをした後に、大気と遮断処理して粘弾性にさせた義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯としたものである。
本発明の義歯安定剤にあっては、義歯装着のための使用に当たって、口腔粘膜に不均一な圧力を加えて、疼痛や潰瘍、炎症を発生せしめることなく、ソフトに顎堤の型取りが行うことが出来ると共に、長期にわたって快適で、良好な適合装着状態を保持し得、特に無歯顎患者に好適な義歯安定剤として著しい効果を奏する。
更に、本発明の義歯安定剤にあっては、義歯床への接着性、剥離性が好適であるばかりか、適度な粘弾性(軟らかさ)並びに圧縮歪みが大きいことによる咀嚼咬合力負荷部の粘弾性(軟らかさ)増進と義歯の安定した装着を保持する効果を奏する。
そして、本発明の義歯安定剤の使用方法にあっては、用意する器具も少なく、しかも脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに7.0乃至17.0wt%の低流動性ポリ酢酸ビニル樹脂を添加攪拌して溶解せしめた後、空気と遮断する極めて簡単な操作で、長期間にわたって高い適度な軟らかさと強度を保持する粘弾性にさせた義歯安定剤を、安価にかつ容易に得る効果を奏する。
又、本発明の義歯装着方法にあっては、放出酢酸の中和並びにドライマウス対策として、予め口内を炭酸水素ナトリウムの水溶液で漱いでおいて、脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに7.0乃至17.0wt%の低流動性ポリ酢酸ビニル樹脂を添加攪拌して溶解せしめた本発明の義歯安定剤の軟粘着物を義歯床に塗布した義歯を、口腔粘膜の顎堤に配して型取りをし、取り外した後直ちにこれを密封容器に入れて大気と遮断処理した後、義歯床における顎堤の粘膜上の位置に義歯を配置装着せしめるので、放出する酢酸を中和して酸度を低減せしめ得るばかりでなく、酢酸臭を弱めて、粘膜を保護してこれを傷めたり、爛れたりして疼痛が生じることもなく、ゆっくりと適合する型取りが、ソフトで粘弾性(軟らかさ)を保って快適に出来る効果を奏する。
本発明の義歯安定剤は、その材料としてゴム類の中でも架橋度が低く、粘弾性(軟らかさ)を有し、耐久性や耐酸性にも勝れ、その上、加工性が良いシリコーンゴムを用いてなるものである。これは、熱伝導性も良く、しかも柔軟度の温度依存性が高く、ほぼ体温で一定の粘弾性(軟らかさ)を維持することが出来ることに着目したものである。そして、このシリコーンゴムを更に義歯床としてより一層好適な粘弾性(軟らかさ)の確保と長期にわたる粘弾性(軟らかさ)と強度の維持との改質をするために、低流動性ポリ酢酸ビニルを適切な特定濃度に調整して添加すると共に、添加後に大気との接触を適宜遮断して大気水分との結合反応を制限処理するようようにしたものである。
<材料の選定>
本発明の義歯安定剤を得るため、これに使用するシリコーンゴムとしては、具体的には一液型の酢酸放出タイプ常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムを選定するもので、例えば観賞魚用水槽のガラス回り、水槽、サスペンション工法のシーリング材として上市されているもので、これらとしてはスズ触媒を添加している酢酸放出タイプ常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム、又は硬化時間が長くなるがスズ触媒を添加していない酢酸放出タイプ常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムが用いられる。このタイプは、シーリング材として硬化後の固さがより軟粘性を保持するものである。また、スズ触媒に由来する、超純水及び0.02wt%塩酸抽出の液中スズ濃度は、ICP発光分析で検出下限(0.06wt.ppm)以下であり、安全性の点で、口腔内での利用は可能であるものである。しかも、有機スズ触媒を添加しなくても、放出酢酸がその機能を代行するので、硬化時間の延長が許容される場合には無添加を可能とする。
また、上記低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルとしては、安全性の見地から、市販されている医療用具承認済みのものより義歯安定剤として適切なものを選び、粘弾性(軟らかさ)の経時変化と実用試験を行った。
上記材料の選定に当たって、先ず安全性を検証確認した。即ち、常温縮合型(RTV)酢酸タイプシリコーンゴムに低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルを溶解した時に副生する酢酸以外のガスについて、GCーMS(ガスクロマトグラフーマススペクトログラフ)法によって分析した。その結果、極微量のメタノール、エタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、及びトルエンを検出した。かかる事象から、問題となる副生ガス成分は、多量に発生し、数日にわたって減衰しながら放出し続ける酢酸である。なお、減衰以後については口内に酸味を感じない程度の放出量となり、義歯の快適な装着が可能となる。
上記の如き酢酸の放出は、義歯の装着に当たって、型取りのために義歯床に上記常温縮合型(RTV)酢酸タイプシリコーンゴムに低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルを溶解した軟粘着物を塗布して、義歯を口腔内の顎堤粘膜上に当接した際にも、盛んに発生するが、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で中和処理することにより、酢酸による炎症及び酸味を抑制することが出来る。実際には、前記義歯床に混合材料を塗布した義歯を口腔内の顎堤粘膜上に当接する際に、予め事前に口腔内を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で漱いをしておけば良く、この時5分乃至10分の間は酸味を感じることなく、ゆっくりと型取りが出来、粘膜を保護することが出来る。
次に常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムの中で、特に酢酸放出タイプを採用した理由は以下の通りである。
一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムには、オキシムタイプ、アルコールタイプ、アセトンタイプ、及び酢酸(アセトキシ)タイプと大別して4種類のシリコーンゴムがあり、これらは大気中の水分と反応して架橋基の構造の差異により、硬化時における副生放出物が決まり、それぞれメチルエチルケトオキシム(MEKO)、メタノール、アセトン、及び酢酸を放出する。
そして、この一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムは、保存上大気中の水分による架橋反応を遅延させるために、遅延剤が余分に添加されている。このため硬化終了までの時間が極めて長く、硬化時に副生するガスの放出が長時間にわたるので、義歯安定剤として使用するに当たっては、上記大別した4種類の中から、使用に適するタイプを選別するには、その安全性を充分考慮検討する必要がある。
即ち、上記大別した4種類の一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムの中で最も普遍的に使用されるオキシムタイプは、これより副生放出されるメチルエチルケトオキシム(MEKO)が動物実験段階で発癌性を有するとされていて[MSDS,Canadian Centre for Occupational Health and Safety, Issue:2000−4]、その他にも発癌情報があるので、このタイプのシリコーンゴムは義歯安定剤には採用し得ない。
また、アルコールタイプにあっては、メタノールを副生放出するが、人体の代謝過程で生成するホルムアルデヒドが蟻酸に分解し、最終的に水と二酸化炭素に分解される速度が極めて遅く、代謝性アシドシス(酸性血症)と重篤な眼毒性を有することから、これも義歯安定剤として採用し得ない。
更に、アセトンタイプにあっては有毒性は無く無難であるが、表面硬化が早いので好ましくなく、実用上使用できない。
以上のことから、酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムを採用することとしたものである。そして、これは幸い低流動性酢酸ビニルとの親和性が強く、しかも空気中に副生放出される成分は、酢酸以外の成分は前記した如くGCーMS分析による分析で明らかなように微量であって、無視し得るものである。
その上、副生放出される酢酸は局方炭酸水素ナトリウム(胃薬)の飽和水溶液により中和処理することで、酢酸の影響を容易に除くことが出来る。また、実用に当たっては、義歯を装着する前の義歯床の型取りに際し、予め口内を局方炭酸水素ナトリウム(胃薬)の飽和水溶液で漱ぐことが、該飽和水溶液を顎堤粘膜へ吸収せしめるのに、意外なほど容易で有効である。これにより、義歯床の型取り装着時に、義歯床に塗布した安定剤より放出される酢酸と反応してこれを中和処理し、この結果5分乃至10分の間は酸味を感じることもなく、ゆっくりと型取りが出来、粘膜を保護することができる。
<ポリ酢酸ビニルの添加量の選定>
次に、上記した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムの粘弾性(軟らかさ)を高め、且つこの粘弾性(軟らかさ)の保持を延長せしめ、特に咀嚼の加圧効果によって義歯の裏装部と顎堤粘膜間に圧縮・開放による柔軟化が加味され、且つ義歯床へのシリコーンゴム特有の強力な接着力を、適切に緩和すると共にシリコーンゴム同士の接着を可能ならしめる改質のため、上記シリコーンゴムに添加する低流動性ポリ酢酸ビニルの適切な添加量を選定した。これは、前記脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに低流動性ポリ酢酸ビニルを添加し、その添加量の変化に伴う硬度(軟らかさ)の変化を試験し、適切な硬度(軟らかさ)が得られる添加量を選定した。
硬度試験は以下の如き粘弾性(軟らかさ)測定方法で行った。
試料(高さ19mm、直径30mmの円柱状)をテーブルに載せて、テーブルを20mm/minの一定速度で上昇せしめる。そして試料の上方に配置固定した荷重測定円盤に、上昇してきた試料に当接せしめて、円盤が受ける荷重を0N(0kgf)から17.65N(1.8kgf)までになるまでの時間を計測した。
試料が硬ければ、固定した円盤による試料の凹みが少なく、短時間に荷重が増大する。また、試料が軟らかければ、固定した円盤による試料の凹みが大きく、荷重が増大するのに長時間を要する。そこで、荷重測定円盤が受ける荷重が1.226N(0.125kgf)から11.033N(1.125kgf)迄の9.807N(1kgf)増加する時間(秒)を測定して、この時間(秒)を「軟らかさ」を表す数値としたものである。
なお、荷重測定円盤の寸法諸元は、直径10mm(面積:78.5mm)、厚さ1mmとした。計測器は食品の粘弾性測定に多用される商品名「FUDOH RHEOMETER NMR−2002J」を用いた。
試験した試料は、脱酢酸タイプの一液タイプ常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムとして信越化学工業(株)社製KE422(観賞用水槽のシーリング材)を用いた。なお、この脱酢酸タイプの一液タイプ常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムは、硬化前の状態がペースト状で、空気中水分と架橋剤が反応して次第に架橋が進んでゴム状となる。このペースト状シリコーンゴムに低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルの量を変化せしめて添加し、表1に表示する試料A、B、C、D、E、Fとした。各試料は、高さ19mm、直径30mmφの円柱状に形成した。
これらの試料について、経過日数に伴う上記軟らかさの変化について試験した。
この結果を図1に、横軸に経過日数(日)、縦軸に軟らかさ(秒)として示し、経過日数に伴う軟らかさ(秒)の変化を図示した。図1から以下のことが確認された。なお、低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルを添加した混合軟粘着物は全て粘液状であるので、経過日数の0点での軟らかさは、測定可能な硬化状態になった時点の軟らかさを示した。
この試験より、次のことが確認された。
(1)ポリ酢酸ビニルを添加していない添加量0wt%で、常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムの単体である試料A(図中「ー◎ー◎ー」表示線)を基準にして、ポリ酢酸ビニルを添加した各試料B、C、D、E、Fは添加初期においては、前記試料Aより軟らかさは軟らかくなっていること。そして添加量3.0wt%の試料B(図中「ー◆ー◆ー」表示線)が一番軟らかくなっていること。
Figure 0004636339
(2)経時と共に各試料B、C、D、E、Fは軟らかさが低下し、硬化して来るが、添加量16.7wt%の試料E(図中「ー×ー×ー」表示線)、及び添加量24.8wt%の試料F(図中「ー*ー*ー」表示線)は、それぞれ早々に前記基準の添加量0wt%である試料Aの軟らかさと同程度又はそれ以下の軟らかさまで硬化した。この結果、試料E、Fは軟らかさの保持を可及的長期に亘って遅延せしめることが出来ず、軟らかさを保持し得ないことが確認された。
(3)一方、添加量3.0wt%の試料B(図中「ー◆ー◆ー」表示線)、添加量5.0wt%の試料C(図中「ー●ー●ー」表示線)、及び添加量6.9wt%の試料D(図中「ー▲ー▲ー」表示線)では、それぞれ約20〜30日間近くまで、上記した基準の試料Aの軟らかさ以上の軟らかさを保持した。しかし添加量6.9wt%の試料Dは順次減少して行き、以後基準の試料Aの軟らかさより幾分軟らかいが、基準試料Aの値に近似した軟らかさの状態に落ち着くことが確認された。なお、参考までに蒟蒻の軟らかさは、22.3秒である。
以上の結果、脱酢酸タイプの一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムにポリ酢酸ビニルは良く溶解し、化学反応による遅延作用によって粘弾性(軟らかさ)を増進する。しかし、溶解後大気中の水分を自由に取り込み、ポリ酢酸ビニルの添加量3.0wt%を中心にして、より低濃度の添加量域及びより高濃度の添加量域については、いずれも軟らかさが低下して硬さを増す。そして強度的には、低濃度添加量域では弱く、より高濃度の添加量域で強く一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム単体の硬度に匹敵する硬さとなる。又、極めて良好な軟らかさを形成する添加量3.0wt%、添加量5.0wt%及び添加量6.9wt%にあっても、その軟らかさが6秒以上を保持し得るのは週単位に留まり、特に添加量6.9wt%の試料Dの6秒以上の軟らかさ保持期間は20日間に過ぎず、月単位の長期にわたっての軟らかさの保持は困難であり、強度的にも満足し得ない等々が確認された。
そこで、粘弾性(軟らかさ)がより軟らかく、且つ強度的にもより強く、月単位の長期にわたって良好な粘弾性(軟らかさ)を保持する義歯安定剤を得るため、以下の如き操作をすることに着目した。
(I)強度を高めるため、低流動性ポリ酢酸ビニルの添加量を6.9wt%以上にすること。
(II)粘弾性(軟らかさ)を得るため、脱酢酸タイプの一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに添加したポリ酢酸ビニルは良く溶解し、これによるビニル基の作用で架橋反応を遅延制御せしめること。即ち、添加溶解後に架橋反応の進行を抑止するため大気中の水分との接触を制限するため、架橋反応の形成に寄与する水分を含む大気を遮断すること。
<大気遮断処理操作>
かくして、本発明の義歯安定剤を得るため、脱酢酸タイプの一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに、低流動性ポリ酢酸ビニルを6.9wt%以上添加して良く溶解せしめた後、これを密封容器に収容して大気と遮断処理をした。この大気遮断処理した試料として、脱酢酸タイプの一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに添加する低流動性ポリ酢酸ビニルの添加量として、7.0wt%(試料V)、10.0wt%(試料W)、15.0wt%(試料X)、17.0wt%(試料Y)、及び25.0wt%(試料Z)の5種の試料を作成し、それぞれ密封容器に収容して大気と遮断処理をした。そしてそれらの遮断処理解放後の硬度(軟らかさ)の経時変化を検証した。なお、大気との遮断処理は7日〜10日間とした。
上記した各試料について経時変化に伴う硬度(軟らかさ)の変化を検証して、長期にわたって良好な粘弾性(軟らかさ)を有する適切な硬度(軟らかさ)が得られる添加量を選定した。
硬度(軟らかさ)試験は、上記低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルの添加量を変化せしめた時の硬度変化を測定した方法と同様の粘弾性(軟らかさ)測定方法で行った。試料はそれぞれ高さ19mm、直径30mmの円柱状に形成した。この結果を図2に、横軸に経過日数(日)、縦軸に軟らかさ(秒)として示し、経過日数に伴う軟らかさ(秒)の変化を図示した。図2中、試料V(添加量7.0wt%)は「ー〇ー〇ー」の表示線で示し、試料W(添加量10.0wt%)は「ー☆ー☆ー」の表示線で示し、試料X(添加量15.0wt%)は「ー▽ー▽ー」表示線で示し、試料Y(添加量17.0wt%)は「ー◇ー◇ー」の表示線で示し、試料Z(添加量25.0wt%)は「ー+ー+ー」の表示線で示した。なお、低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルを添加した混合軟粘着物である本発明の安定剤は、粘液状であるので、測定可能な硬化状態になった時点より測定し、その軟らかさの時点より示した。
この試験より、次のことが確認された。
脱酢酸タイプの一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに、ポリ酢酸ビニルを添加、混合した後、空気遮断処理したものにあっては、
(1)ポリ酢酸ビニルの添加量が7.0wt%(試料V)、10.0wt%(試料W)、15.0wt%(試料X)、17.0wt%(試料Y)では、その軟らかさは6秒以上を保有し、しかも80日を経過しても、その値を維持していろことが確認された。この値は、図1に図示した、大気を遮断処理をしない試料B(添加量3.0wt%)、C(添加量5.0wt%)、D(添加量6.9wt%)の各試料の軟らかさより軟らかく、その上、より長期にわたって高い柔らかさを保持することが確認された。
(2)しかし、ポリ酢酸ビニルの添加量が25.0wt%(試料Z)にあっては、経過日数が50日を過ぎると、軟らかさが降下し始めて、60日の経過で軟らかさは6秒となり以後順次それ以下に降下し、ポリ酢酸ビニルを添加しない常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムそのもの(図1中の試料A)と同等に近い軟らかさにまで硬化することが確認され、粘弾性(軟らかさ)が所望する、より高い軟らかさを有する安定剤として、満足し得ないこが判明した。
(3)この処理操作では、脱酢酸タイプの一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに、7.0乃至17.0wt%と比較的多めにポリ酢酸ビニルを添加、混合した後、空気遮断処理することにより、ポリ酢酸ビニルを添加、混合時に大気中の水分を取り込んで、液状シリコンゴム中のポリアルキルシロキサンとポリ酢酸ビニルとの重合体架橋の反応が進行し、直ちに大気との接触を遮断することで水分供給が不足して、前記の重合体架橋反応をその時点で止めて、これにより粘弾性(軟らかさ)を獲得し、余分なポリ酢酸ビニルは一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム内に留めておき、粘弾性(軟らかさ)を長期にわたって維持するものと推定される。
(4)17.0wt%以上のポリ酢酸ビニルの添加では、一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム内に残余する余分なポリ酢酸ビニルの量が多めになって、硬化が進み、義歯安定剤としては不適格であることが判明した。
(5)又、大気との遮断処理を一定期間(7日〜10日間)継続した後、大気に開放した際、反応で放出する酢酸臭は極めて少なく、直ちに装着可能で、義歯装着開始時から気持良く快適に装着し得る。この現象は大気遮断処理で水の介在で進行する架橋反応を抑止し、放出酢酸が別反応に消費されたことを示しているものである。
<圧縮応力負荷による粘弾性(軟らかさ)の増進変化>
次に、義歯装着状態で咀嚼行為を行って生じる圧縮応力負荷による、本発明安定剤の粘弾性(軟らかさ)に及ぼす影響効果について検証した。
試料としては、上記<大気遮断処理操作>項で、義歯安定剤として実用に供し得るものと確認された、ポリ酢酸ビニルを7.0wt%添加した一液型の常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム(試料V)と、ポリ酢酸ビニルを10.0wt%添加した一液型の常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム(試料W)と、ポリ酢酸ビニルを15.0wt%添加した一液型の常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム(試料X)、及びポリ酢酸ビニルを17.0wt%添加した一液型の常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム(試料Y)について行った。
各試料はそれぞれ高さ19mm、直径30mmの円柱状に形成した。そして、負荷する圧縮応力としては、高さ方向に沿って10kgf/cmの圧力とし、加圧直後に計測を行った。
そして、これらの各試料W、試料X,及び試料Yについて、経時変化(経過日数)に伴う軟らかさ(硬度)の変化を試験した。
軟らかさ(硬度)試験は、上記低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルの添加量を変化せしめた時の硬度変化を測定した方法と同様の粘弾性(軟らかさ)測定方法で行った。
即ち、試料(高さ19mm、直径30mmの円柱状)をテーブルに載せて、テーブルを20mm/minの一定速度で上昇せしめる。そして試料の上方に配置固定した荷重測定円盤に、上昇してきた試料に当接せしめて、円盤が受ける荷重を0N(0kgf)から17.65N(1.8kgf)までになるまでの時間を計測した。
試料が硬ければ、固定した円盤による試料の凹みが少なく、短時間に荷重が増大する。また、試料が軟らかければ、固定した円盤による試料の凹みが大きく、荷重が増大するのに長時間を要する。そこで、荷重測定円盤が受ける荷重が1.226N(0.125kgf)から11.033N(1.125kgf)迄の9.807N(1kgf)増加する時間(秒)を測定して、この時間(秒)を「軟らかさ」を表す数値としたものである。
なお、荷重測定円盤の寸法諸元は、直径10mm(面積:78.5mm)、厚さ1mmとした。計測器は商品名「FUDOH RHEOMETER NMR−2002J」を用いた。
この結果を図3に、横軸に経過日数(日)、縦軸に軟らかさ(秒)として示し、経過日数に伴う軟らかさ(秒)の変化を図示した。そして、図3において、試料Vは「ー〇ー〇ー」の表示線で示し、試料Wは「ー☆ー☆ー」の表示線で示し、試料Xは「ー▽ー▽ー」表示線で示し、更に試料Yは「ー◇ー◇ー」表示線で示した。なお、低流動性(低重合)ポリ酢酸ビニルを添加した混合軟粘着物である本発明の安定剤は、粘液状であるので、測定可能な硬化状態になった時点より測定し、その軟らかさの時点より示した。
かくして、図3から以下のことが確認された。
(1)圧縮応力を負荷した試料V、試料W、試料X、及び試料Yは、いずれもその軟らかさ(硬度)は、先の図2に図示した圧縮応力を負荷していない試料の軟らかさより大幅に軟らかく、その軟らかさは経過日数10日から50日の間、9〜3秒ほど圧縮応力を負荷した方が、より軟らかいことが図3より読みとれる。従って、圧縮応力の負荷によって粘弾性(軟らかさ)を高める圧縮効果が確認された。
(2)圧縮応力の負荷による各試料V、W、X及びYの経過日数による軟らかさの変化は、初期段階のペースト状から経過日数の経過と共に粘弾性(軟らかさ)を有するゴム状態に変化して行くが、約50日程度の経過以後90日を経ても、ほぼ安定した状態で6〜10秒の軟らかさの粘弾性(軟らかさ)を保持した。
(3)長期に亘る経過日数については、念のため経過日数271日、288日について、その軟らかさを測定したところ、いずれもその軟らかさは、ほぼ6秒以上を保持していることが確認された(図3には図示せず)。
(4)圧縮応力を負荷すると、粘弾性(軟らかさ)の軟らかさを増すことが検証されたことから、これを義歯安定剤として用いると、咀嚼圧による圧縮でこの安定剤は容易に軟らかさが高く保持されるので、義歯安定剤として極めて好都合であることが確認された。即ち、このような軟らかいクッションタイプの義歯安定剤を裏床した義歯床は、口腔内を動揺しやすく、歯槽骨に始まる顎堤吸収の原因になるとされているが、後述する粘弾性(軟らかさ)の硬軟分布によって、斯様な難症例の高齢患者であっても、義歯の主として頬筋に包接される部位の固定力(低粘弾性(軟らかさ)部)によって安定な状態に保持されるので、脳の活性化と栄養状態を保つとされる咀嚼運動に見放されることなく、これにより解消されることが見込まれた。
かくして、本発明の脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに7.0乃至17.0wt%の低流動性ポリ酢酸ビニル樹脂を添加攪拌して溶解せしめた軟粘着物であることを特徴とする義歯安定剤は、型取りの段階で、安定剤ペーストを義歯の裏床に塗り込むだけでなく、頬筋側にも充分塗布して、ゴム化後義歯が頬筋に維持されて動揺を防ぐ役割を果たし、義歯を安定化させる。この際、咀嚼圧を受圧する顎堤部分の安定剤は、咀嚼圧で粘弾性(軟らかさ)が相当増加し、圧縮後の軟らかい状態が保持され、受圧しない頬筋側の安定剤は、柔らかさが増加しない状態で頬筋に抱き込まれ、粘弾性(軟らかさ)が口腔内で好適に分布し、義歯の動揺防止の効果を奏する。
(i)低流動性ポリ酢酸ビニルを15.0wt%の割合で脱酢酸タイプの一液型常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに添加混合してペースト状の軟粘着物を得る。
(ii)この軟粘着物を義歯床に顎堤部のみならず、頬筋に張り出す部分の義歯の側面にも充分塗布した後、これを予め局方炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で漱いだ状態にある口内に収め、義歯装着位置に配して軽く噛み合わせて型押しをして型取りする。
(iii)次いで、口内より取り出し、直ちに密閉容器に収納し大気との接触を遮断し、これを7日間継続した。
(iv)そして、7日間経過後大気中に取り出して、義歯床に本発明の義歯安定剤を塗布して裏装した義歯を口内に収めて、所定個所の顎堤粘膜上に配置装着した。
このようにして、本発明の義歯安定剤を使用して、義歯を装着した結果、安定剤が義歯の裏床に塗り込むだけでなく、頬筋側にも充分塗布して、良好な軟らかなクッション性で義歯が頬筋に維持されて動揺を防ぐ役割を果たし、義歯を安定化させる。この際、咀嚼圧を受圧する顎堤部分の安定剤は、咀嚼圧で粘弾性(軟らかさ)の軟らかさが相当増加し、圧縮後の軟らかい状態が保持され、受圧しない頬筋側の安定剤は、柔らかさが増加しない状態で頬筋に抱き込まれ、粘弾性(軟らかさ)が口腔内で好適に分布し、義歯の動揺防止し得た。
義歯の装着部の顎堤粘膜上で疼痛部がある場合には、弱い受圧に耐えながら完治するが、難症の場合は、別の場所にも多発することとなるので、より軟らかさの高い安定剤を用いることにした。即ち、添加するポリ酢酸ビニルの量をより少なくして、7.0wt%添加量にし、前記と同様に混合、型取り、大気遮断処理をして本発明の安定剤に調合製作した。この添加量7.0wt%のペースト状安定剤を裏装した義歯の装着で、軟らかさが増し、疼痛部の当たりを緩めて疼痛を緩和することとなった。
なお、義歯床を傷めない程度の温風で加熱することによって軟粘着物の軟化を促進することが出来、特に秋、冬等の季節に適宜これを有効に活用することが出来る。また、ポリ酢酸ビニルの添加濃度約7.0wt%から約17.0wt%迄の範囲では、濃度が低くなるほど軟らかくなるので、疼痛の場合、疼痛の分布状態及び面積に応じて、添加濃度を選択すれば良いが、耐久性、耐用性の点では出来る限り構造的に強い、高めの添加濃度を選択する方が良い。
上記ポリ酢酸ビニル添加量7.0wt%の義歯安定剤の使用例では、強度的耐久性は別として、易裂性のリンゴ、柿、タクアン等を咀嚼できるようになる。そして、同じ材料で補修することが出来るので、使用条件によっては4ヶ月以上、通常は6ヶ月以内にわたって、耐用性能を維持することができる。
顎堤(難症例の実際では骨鋭縁とその間の溝)全体で受圧し、痛みに応じて圧力を減ずるが、極小の範囲で受圧を弱めることによって、全体の粘膜の痛覚が過敏になっていても、受圧の不均等化によって難症患者の咀嚼活動を復活させることが可能となった。
また、本発明の安定剤は痛む処にも受圧させ得ることが特徴であるが、そのためにも本発明の安定剤の塗布に当たっては、義歯の口腔内挿入での型取りを取り出しの横幅が限度一杯になる程度に、下顎一杯に横に張り出させて、頬筋にも受圧させるようにすると良い。
なお、本発明の安定剤は、義歯床に塗布するに当たっては、その厚みが1mm以下では、咬合の際に、剤の粘弾性(軟らかさ)が咬合圧を充分吸収することが出来ず、義歯床が直接粘膜に直接当接する態様となって、痛感を増長せしめて、咬合圧を吸収する安定剤としての効果を発揮しない。他方、塗布厚みを3mm以上にすると、咬合圧を咀嚼に充分満足して活用し得る程度に作動せしめ得ない。特に、総義歯の下顎義歯床の受圧部にあっては約3mmの厚さ、上顎義歯床の受圧部にあっては約1mmの厚みに塗布すると好都合である。
なおまた、本発明の義歯安定剤を裏装した義歯の洗浄には、上市中の義歯洗浄剤を従前通り使用することが出来ることは勿論である。
本発明の義歯安定剤は、上記した通り限りなく粘膜に近い軟らかな粘弾性(軟らかさ)を有するので、これを塗布使用して装着した義歯は、痛感を減少せしめ得るとともに、軟らかさの保持を長期に亘って維持することが出来るので、痛覚を抑制して咀嚼活動を可能とすることが出来る。特に無歯顎患者への総義歯装着や、難症患者への義歯装着に有効に活用することが出来る。これにより、これら無歯顎患者や難症患者の健康維持と脳の活性化に多大の寄与が期待される。
脱酢酸タイプの一液タイプ常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに低流動性ポリ酢酸ビニルを添加する量の変化での、経過日数(日)に伴う軟らかさ(秒)の変化を示すグラフ。 脱酢酸タイプの一液タイプ常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに低流動性ポリ酢酸ビニルを添加混合し、大気遮断処理操作して得られる粘弾性の軟粘着物の、ポリ酢酸ビニル添加量の変化での、経過日数(日)に伴う軟らかさ(秒)の変化を示すグラフ。 本発明の義歯安定剤の圧縮応力負荷による粘弾性(軟らかさ)の増進効果を説明する、経過日数(日)に伴う軟らかさ(秒)の変化を図示したグラフ。
符号の説明
A…低流動性ポリ酢酸ビニルを0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム、
B…低流動性ポリ酢酸ビニルを3.0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム、
C…低流動性ポリ酢酸ビニルを5.0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム、
D…低流動性ポリ酢酸ビニルを6.9wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム、
E…低流動性ポリ酢酸ビニルを16.7wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム、
F…低流動性ポリ酢酸ビニルを24.8wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴム、
V…低流動性ポリ酢酸ビニルを7.0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムを大気遮断処理した軟粘着物、
W…低流動性ポリ酢酸ビニルを10.0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムを大気遮断処理した軟粘着物、
X…低流動性ポリ酢酸ビニルを15.0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムを大気遮断処理した軟粘着物、
Y…低流動性ポリ酢酸ビニルを17.0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムを大気遮断処理した軟粘着物、
Z…低流動性ポリ酢酸ビニルを25.0wt%添加した脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムを大気遮断処理した軟粘着物。

Claims (4)

  1. 脱酢酸タイプの常温縮合型(RTV)液状シリコーンゴムに7.0乃至17.0wt%の低重合ポリ酢酸ビニル樹脂を添加攪拌して溶解せしめた軟粘着物であることを特徴とする義歯安定剤。
  2. 軟粘着物が、それを大気と遮断処理して得られる粘弾性の軟粘着物の下記測定法による軟らかさ値が6秒以上を少なくとも90日間保持するものであることを特徴とする請求項1記載の義歯安定剤。
    測定法:試料(高さ19mm、直径30mmの円柱状)を20mm/minの一定速度で上昇せしめ、その上方に配置固定した荷重測定円盤(直径10mm、厚さ1mm)に当接せしめて、上昇してくる試料から荷重測定円盤が受ける荷重が1.226N(0.125kgf)から11.033N(1.125kgf)迄の9.807N(1kgf)増加する時間(秒)を軟らかさ値とする。
  3. 義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯であって、請求項1または2記載の義歯安定剤を義歯床に塗布後、大気と遮断処理して粘弾性にさせた義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯。
  4. 義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯であって、請求項1または2記載の義歯安定剤を義歯床に塗布後、炭酸水素ナトリウムの水溶液で漱いでおいた顎堤の型取りをした後に、大気と遮断処理して粘弾性にさせた義歯安定剤が義歯床に裏装されていることを特徴とする義歯。
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