JP4627548B2 - 帯域拡張装置、帯域拡張方法および帯域拡張プログラム - Google Patents
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Description
本発明は、オーディオ信号などのデジタル信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張技術に関する。
帯域制限されたオーディオ信号や圧縮符号化信号などのデジタル信号の周波数帯域を拡張して高品質の広帯域信号を生成するための帯域拡張技術が多数提案されている。このような帯域拡張技術は、たとえば、狭い電話帯域にある音声信号の周波数帯域を拡張して高品質の音声信号を再生したり、MP3(MPEG−1 Audio Layer 3)などの圧縮方式で圧縮符号化された低品質のオーディオ信号の帯域を拡張して高音域を持つ信号を再生したりする場合に適用され得るものである。
オーディオ信号の帯域拡張技術として非線形処理を用いた技術が知られている。たとえば、特許文献(国際公開番号WO00/70769)に開示されている非線形処理を用いた帯域拡張技術においては、オーバサンプリング型ローパスフィルタが、原信号であるオーディオ信号にフィルタリングを施してサンプリング周波数fsの略1/2の周波数以上の成分を減衰させる。次いで、非線形処理回路が、オーバサンプリング型ローパスフィルタの出力に非線形処理を施すことで高調波成分を生成し、この高調波成分を含むデジタル・オーディオ信号を出力する。さらに、高域通過フィルタが、前記デジタル・オーディオ信号にフィルタリングを施して高周波数成分すなわち拡張帯域成分を生成する。この高周波数成分は、オーバサンプリング型ローパスフィルタの出力に加算され、これにより、周波数帯域が拡張された信号が生成されることとなる。しかしながら、前記非線形処理回路は、非線形処理を行うので、高調波成分だけでなく、複数の周波数成分の和音成分や差音成分などの混変調成分も発生させるが、この混変調成分は、原信号の周波数成分とは無関係な成分であり信号品質を低下させるという問題がある。
非線形処理を使用しない帯域拡張技術としては、たとえば、非特許文献(H.Yasukawa,“Spectrum Broadening of Telephone Band Signals Using Multirate Processing for Speech Quality Enhancement,”IEICE Transactions on Fundamentals Electronics,Communications and Computer Sciences,Vol.E78−A,No.8,pp.996−998,1995.)に開示されている技術が知られている。図1は、この非特許文献に開示される帯域拡張装置100の構成を概略的に示す図である。この帯域拡張装置100は、アップサンプラ101、高域通過フィルタ(HPF)102A、整形フィルタ103A、レベル調整器104A、低域通過フィルタ(LPF)102B、遅延器103B、レベル調整器104Bおよび加算器105で構成されている。
アップサンプラ101は、入力信号に2倍のレートでアップサンプリングを施す。たとえば、図2Aに示される周波数スペクトル(ω:角周波数)を持つ入力信号に2倍のレートでアップサンプリングを施した場合、図2Bに示される周波数スペクトルを持つアップサンプリング信号が生成される。低域通過フィルタ102Bは、アップサンプラ101から供給されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施してベースバンド成分を生成する。ベースバンド成分は遅延器103Bで遅延され、レベル調整器104Bでレベル調整された後に加算器105に供給される。たとえば、|ω|<π/2の通過帯域を有する低域通過フィルタ102Bが、図2Bに示されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施した場合、図2Cに示されるスペクトルを持つベースバンド成分が得られる。
他方、高域通過フィルタ102Aは、アップサンプラ101から供給されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施して拡張帯域成分を生成する。この拡張帯域成分は、整形フィルタ103Aで整形され、レベル調整器104Aでレベル調整された後に加算器105に供給される。加算器105は、レベル調整器104Bから供給されたベースバンド成分に、レベル調整器104Aから供給された拡張帯域成分を加算して帯域拡張信号を生成することとなる。たとえば、|ω|>π/2の通過帯域を有する高域通過フィルタ102Aが、図2Bに示されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施した場合、図2Dに示されるスペクトルを持つ拡張帯域成分が得られる。この拡張帯域成分と図2Cのベースバンド成分とを加算すると、図2Eに示されるスペクトルを持つ帯域拡張信号が生成されることとなる。
しかしながら、図2Eに示す通り、帯域拡張信号は、ベースバンド成分のスペクトルに対してスペクトルが反転した拡張帯域成分を含むので、ω=±π/2の周波数でベースバンド成分と拡張帯域成分とが滑らかに接続しないという問題点がある。また、拡張帯域成分のスペクトルは、ベースバンド成分のスペクトルに対して反転しているので、レベル調整器104A,104Bは、ベースバンド成分と拡張帯域成分の各レベルを適切なレベルに調整するのが難しいという問題点もある。したがって、上記非特許文献の技術では、高品質で自然な音質の帯域拡張信号を生成することが難しい。
オーディオ信号の帯域拡張技術として非線形処理を用いた技術が知られている。たとえば、特許文献(国際公開番号WO00/70769)に開示されている非線形処理を用いた帯域拡張技術においては、オーバサンプリング型ローパスフィルタが、原信号であるオーディオ信号にフィルタリングを施してサンプリング周波数fsの略1/2の周波数以上の成分を減衰させる。次いで、非線形処理回路が、オーバサンプリング型ローパスフィルタの出力に非線形処理を施すことで高調波成分を生成し、この高調波成分を含むデジタル・オーディオ信号を出力する。さらに、高域通過フィルタが、前記デジタル・オーディオ信号にフィルタリングを施して高周波数成分すなわち拡張帯域成分を生成する。この高周波数成分は、オーバサンプリング型ローパスフィルタの出力に加算され、これにより、周波数帯域が拡張された信号が生成されることとなる。しかしながら、前記非線形処理回路は、非線形処理を行うので、高調波成分だけでなく、複数の周波数成分の和音成分や差音成分などの混変調成分も発生させるが、この混変調成分は、原信号の周波数成分とは無関係な成分であり信号品質を低下させるという問題がある。
非線形処理を使用しない帯域拡張技術としては、たとえば、非特許文献(H.Yasukawa,“Spectrum Broadening of Telephone Band Signals Using Multirate Processing for Speech Quality Enhancement,”IEICE Transactions on Fundamentals Electronics,Communications and Computer Sciences,Vol.E78−A,No.8,pp.996−998,1995.)に開示されている技術が知られている。図1は、この非特許文献に開示される帯域拡張装置100の構成を概略的に示す図である。この帯域拡張装置100は、アップサンプラ101、高域通過フィルタ(HPF)102A、整形フィルタ103A、レベル調整器104A、低域通過フィルタ(LPF)102B、遅延器103B、レベル調整器104Bおよび加算器105で構成されている。
アップサンプラ101は、入力信号に2倍のレートでアップサンプリングを施す。たとえば、図2Aに示される周波数スペクトル(ω:角周波数)を持つ入力信号に2倍のレートでアップサンプリングを施した場合、図2Bに示される周波数スペクトルを持つアップサンプリング信号が生成される。低域通過フィルタ102Bは、アップサンプラ101から供給されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施してベースバンド成分を生成する。ベースバンド成分は遅延器103Bで遅延され、レベル調整器104Bでレベル調整された後に加算器105に供給される。たとえば、|ω|<π/2の通過帯域を有する低域通過フィルタ102Bが、図2Bに示されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施した場合、図2Cに示されるスペクトルを持つベースバンド成分が得られる。
他方、高域通過フィルタ102Aは、アップサンプラ101から供給されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施して拡張帯域成分を生成する。この拡張帯域成分は、整形フィルタ103Aで整形され、レベル調整器104Aでレベル調整された後に加算器105に供給される。加算器105は、レベル調整器104Bから供給されたベースバンド成分に、レベル調整器104Aから供給された拡張帯域成分を加算して帯域拡張信号を生成することとなる。たとえば、|ω|>π/2の通過帯域を有する高域通過フィルタ102Aが、図2Bに示されるアップサンプリング信号にフィルタリングを施した場合、図2Dに示されるスペクトルを持つ拡張帯域成分が得られる。この拡張帯域成分と図2Cのベースバンド成分とを加算すると、図2Eに示されるスペクトルを持つ帯域拡張信号が生成されることとなる。
しかしながら、図2Eに示す通り、帯域拡張信号は、ベースバンド成分のスペクトルに対してスペクトルが反転した拡張帯域成分を含むので、ω=±π/2の周波数でベースバンド成分と拡張帯域成分とが滑らかに接続しないという問題点がある。また、拡張帯域成分のスペクトルは、ベースバンド成分のスペクトルに対して反転しているので、レベル調整器104A,104Bは、ベースバンド成分と拡張帯域成分の各レベルを適切なレベルに調整するのが難しいという問題点もある。したがって、上記非特許文献の技術では、高品質で自然な音質の帯域拡張信号を生成することが難しい。
上記に鑑みて本発明の目的は、非線形処理を使用せずに高品質の帯域拡張信号を生成し得る帯域拡張装置、帯域拡張方法および帯域拡張プログラムを提供する点にある。
本発明の第1の態様による帯域拡張装置は、入力信号の周波数帯域を拡張するものである。この帯域拡張装置は、前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するベースバンド処理部と、前記入力信号から拡張帯域成分を生成する拡張帯域処理部と、前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合する混合部と、を備え、前記拡張帯域処理部は、前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するスペクトル反転部と、前記反転信号にアップサンプリングを施すアップサンプラと、前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成する帯域通過フィルタと、を含む。
本発明の第2の態様による帯域拡張方法は、入力信号の周波数帯域を拡張するものである。この帯域拡張方法は、(a)前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するステップと、(b)前記入力信号から拡張帯域成分を生成するステップと、(c)前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合するステップと、を備え、前記ステップ(b)は、(b−1)前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するステップと、(b−2)前記反転信号にアップサンプリングを施すステップと、(b−3)前記ステップ(b−2)でアップサンプリングされた反転信号にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成するステップと、を含む。
本発明の第3の態様による帯域拡張プログラムは、入力信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張処理をプロセッサに実行させるものである。前記帯域拡張処理は、前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するベースバンド処理と、前記入力信号から拡張帯域成分を生成する拡張帯域処理と、前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合する混合処理と、を備え、前記拡張帯域処理は、前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するスペクトル反転処理と、前記反転信号にアップサンプリングを施すアップサンプリング処理と、前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成するフィルタ処理と、を含む。
本発明の第1の態様による帯域拡張装置は、入力信号の周波数帯域を拡張するものである。この帯域拡張装置は、前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するベースバンド処理部と、前記入力信号から拡張帯域成分を生成する拡張帯域処理部と、前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合する混合部と、を備え、前記拡張帯域処理部は、前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するスペクトル反転部と、前記反転信号にアップサンプリングを施すアップサンプラと、前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成する帯域通過フィルタと、を含む。
本発明の第2の態様による帯域拡張方法は、入力信号の周波数帯域を拡張するものである。この帯域拡張方法は、(a)前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するステップと、(b)前記入力信号から拡張帯域成分を生成するステップと、(c)前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合するステップと、を備え、前記ステップ(b)は、(b−1)前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するステップと、(b−2)前記反転信号にアップサンプリングを施すステップと、(b−3)前記ステップ(b−2)でアップサンプリングされた反転信号にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成するステップと、を含む。
本発明の第3の態様による帯域拡張プログラムは、入力信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張処理をプロセッサに実行させるものである。前記帯域拡張処理は、前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するベースバンド処理と、前記入力信号から拡張帯域成分を生成する拡張帯域処理と、前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合する混合処理と、を備え、前記拡張帯域処理は、前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するスペクトル反転処理と、前記反転信号にアップサンプリングを施すアップサンプリング処理と、前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成するフィルタ処理と、を含む。
図1は、従来の帯域拡張装置の構成を概略的に示す図であり、
図2A〜図2Eは、従来の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図3は、本発明に係る第1実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図4A〜図4Cは、第1実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図5A〜図5Eは、第1実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図6Aおよび図6Bは、第1実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図7Aおよび図7Bは、第1実施例の帯域拡張方法に従って生成された帯域拡張信号の周波数スペクトルと原信号の周波数スペクトルとを示す図であり、
図8は、混合係数の算出方法の他の例を説明するための周波数スペクトルを示す図であり、
図9は、混合係数の算出方法のさらに他の例を説明するための図であり、
図10は、本発明に係る第2実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図11A〜図11Dは、第2実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図12Aおよび図12Bは、第2実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図13は、本発明に係る第3実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図14A〜図14Fは、第3実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図15は、本発明に係る第4実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図16は、第4実施例の帯域拡張装置で使用される混合部の構成を概略的に示す図であり、
図17A〜図17Dは、第4実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図18A〜図18Gは、第4実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図19A〜図19Cは、種々の適用例を示す図である。
図2A〜図2Eは、従来の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図3は、本発明に係る第1実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図4A〜図4Cは、第1実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図5A〜図5Eは、第1実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図6Aおよび図6Bは、第1実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図7Aおよび図7Bは、第1実施例の帯域拡張方法に従って生成された帯域拡張信号の周波数スペクトルと原信号の周波数スペクトルとを示す図であり、
図8は、混合係数の算出方法の他の例を説明するための周波数スペクトルを示す図であり、
図9は、混合係数の算出方法のさらに他の例を説明するための図であり、
図10は、本発明に係る第2実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図11A〜図11Dは、第2実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図12Aおよび図12Bは、第2実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図13は、本発明に係る第3実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図14A〜図14Fは、第3実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図15は、本発明に係る第4実施例の帯域拡張装置の構成を概略的に示す機能ブロック図であり、
図16は、第4実施例の帯域拡張装置で使用される混合部の構成を概略的に示す図であり、
図17A〜図17Dは、第4実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図18A〜図18Gは、第4実施例の帯域拡張方法を説明するための周波数スペクトルを概略的に示す図であり、
図19A〜図19Cは、種々の適用例を示す図である。
本出願は、日本国特許出願第2005−260541号を基礎とし、この基礎出願の内容を引用して援用するものである。
以下、本発明に係る種々の実施例について説明する。
以下、本発明に係る種々の実施例について説明する。
1.第1実施例
図3は、本発明に係る第1実施例の帯域拡張装置1の構成を概略的に示す機能ブロック図である。帯域拡張装置1は、ベースバンド処理部10、係数決定部20、拡張帯域処理部30および混合部40で構成されている。ベースバンド処理部10は、入力信号x(n)(nは整数)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成する。入力信号x(n)は、オーディオ信号などのデジタル信号である。
ベースバンド処理部10は、アップサンプラ11、低域通過フィルタ(LPF)12および遅延器13を有している。アップサンプラ11は、N倍のレート(Nは2以上の整数)すなわちNのファクタで入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施してアップサンプリング信号xU(n)の系列を生成する。低域通過フィルタ12は、|ω|<π/N(ωは角周波数)の通過帯域を有し、アップサンプリング信号xU(n)の系列にフィルタリングを施して、−π/N〜+π/Nの周波数帯域に制限されたフィルタ信号xL(n)の系列を生成する。遅延器13は、所定の遅延時間だけフィルタ信号xL(n)を遅延させ、その遅延信号をベースバンド信号として出力する。図4A〜図4Cに、Nが「2」である場合の周波数スペクトルを例示する。図4Aに示される入力信号x(n)が供給された場合、アップサンプラ11は、2倍のレートすなわち2のファクタで入力信号x(n)にアップサンプリングを施して、図4Bに示される周波数スペクトルを有するアップサンプリング信号xU(n)を生成する。低域通過フィルタ12は、図4Bのアップサンプリング信号xU(n)にフィルタリングを施して、−π/2〜+π/2の周波数帯域に制限されたフィルタ信号xL(n)を生成することとなる。
他方、拡張帯域処理部30は、入力信号x(n)の系列から拡張帯域成分zB(n)を生成する機能を有する。この拡張帯域処理部30は、高域通過フィルタ(HPF)31、ダウンサンプラ32、スペクトル反転部33、アップサンプラ34および帯域通過フィルタ(BPF)35を有している。高域通過フィルタ31は、|ω|>π/2の通過帯域(第2周波数帯域)を有し、入力信号x(n)の系列にフィルタリングを施してフィルタ信号xH(n)の系列を生成する。次いで、ダウンサンプラ32は、1/2倍のレートすなわち2のファクタでフィルタ信号xH(n)の系列にダウンサンプリングを施して、ダウンサンプリング信号すなわち帯域信号xD(n)の系列を生成する。図5A〜図5Bに周波数スペクトルを例示する。図4Aに示される入力信号x(n)が供給された場合、|ω|>π/2の通過帯域を有する高域通過フィルタ31は、図5Aに示される周波数スペクトルを持つフィルタ信号xH(n)を生成する。また、ダウンサンプラ32は、1/2倍のレートすなわち2のファクタでフィルタ信号xH(n)にダウンサンプリングを施して、図5Bに示される周波数スペクトルを持つダウンサンプリング信号xD(n)を生成することとなる。
スペクトル反転部33は、ダウンサンプリング信号xD(n)のスペクトルを反転して反転信号zD(n)を生成する。以下に数式を用いて説明するように、「スペクトル反転」とは、信号の周波数スペクトルを角周波数πだけシフトさせることを意味する。ダウンサンプリング信号xD(n)の極性を1つ置きに反転させた信号が反転信号zD(n)となるので、ダウンサンプリング信号xD(n)と反転信号zD(n)との間の関係は、次式(1)で表現される。
zD(n)=xD(n)×(−1)n=xD(n)exp(−jnπ). (1)
ここで、jは、虚数単位(j2=−1)であり、Lは、フーリエ変換のサンプル数であり正整数である。よって、反転信号zD(n)の離散フーリエ変換ZD(k)は次のように展開される。
したがって、XD(k)をダウンサンプリング信号xD(n)の離散フーリエ変換としたとき、次式(2)が成立する。
式(2)によれば、周波数領域(frequency domain)において、ZD(k)は、XD(k)をL/2点すなわち角周波数πだけシフトさせたものである。したがって、「スペクトル反転」とは、信号の周波数スペクトルを角周波数πだけシフトさせることを意味する。
次に、図3を参照すると、アップサンプラ34は、2×N倍のレートすなわち2×Nのファクタで反転信号zD(n)の系列にアップサンプリングを施して、アップサンプリング信号zU(n)の系列を生成する。さらに、帯域通過フィルタ35は、2π/(2×N)<|ω|<3π/(2×N)の通過帯域を有し、アップサンプリング信号zU(n)の系列にフィルタリングを施すことで拡張帯域成分zB(n)の系列を生成する。この拡張帯域成分zB(n)の帯域の低域端(低域側端部)の周波数がベースバンド信号xL(n)の帯域の高域端(高域側端部)の周波数と略同一になるように、帯域通過フィルタ35のフィルタ特性(通過帯域、阻止域および遮断周波数など)が構成されている。本実施例の場合、拡張帯域成分zB(n)の低域端の周波数は略±2π/(2×N)であり、ベースバンド信号xL(n)の高域端の周波数も±π/Nであるので、両周波数は略一致することとなる。
図5C〜図5EにNが「2」である場合の周波数スペクトルを例示する。このとき、スペクトル反転部33は、図5Bのダウンサンプリング信号xD(n)のスペクトルを反転して、図5Cに示されるスペクトルを持つ反転信号zD(n)を生成する。また、アップサンプラ34は、4倍のレートすなわち4のファクタで反転信号zD(n)にアップサンプリングを施して、図5Dに示されるスペクトルを持つアップサンプリング信号zU(n)を生成する。そして、2π/4<|ω|<3π/4の通過帯域を有する帯域通過フィルタ35は、アップサンプリング信号zU(n)にフィルタリングを施して、図5Eに示されるスペクトルを持つ拡張帯域成分からなるフィルタ信号zB(n)を生成することとなる。かかる場合、図4Cに示したベースバンド信号xL(n)の帯域の高域端の周波数±π/2は、図5Eの拡張帯域成分zB(n)の低域端の周波数±π/2と一致する。
上記のベースバンド信号xL(n)と拡張帯域成分zB(n)とは、混合部40で混合される。係数決定部20は、入力信号x(n)の周波数スペクトルを算出しこれに基づいて拡張帯域成分zB(n)に乗ずるべき混合係数を決定する処理ブロックである。係数決定部20は、FFT部(高速フーリエ変換部)21、スペクトル算出部22および係数算出部23を有している。FFT部21は、入力信号x(n)の系列を高速フーリエ変換して周波数領域の信号系列を算出する。また、スペクトル算出部22は、FFT部21から供給された周波数領域の信号系列に基づいて入力信号x(n)の周波数スペクトルを算出する。係数算出部23は、スペクトル算出部22で算出された周波数スペクトルに基づいて、π/2〜πの周波数範囲で線形または非線形の回帰曲線を算出し、この回帰曲線を利用して混合係数を算出することができる。具体的には、回帰曲線として、1次関数で表現された線形の回帰直線を使用すればよい。
第1実施例の場合、入力信号x(n)から、図5Aに示されるような周波数帯域(第2周波数帯域π/2〜π)の成分が抽出され、かかる成分が、ダウンサンプリング、スペクトル反転、アップサンプリングおよびフィルタリングを施されることで、図5Eに示されるような拡張帯域成分zB(n)が生成される。よって、混合係数C(n)は、低域端の周波数ω=π/2またはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LAに対する、高域端の周波数ω=πまたはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LBの比率LB/LAで与えられる。
図6Aは、入力信号x(n)の周波数スペクトルと回帰曲線LRとを例示する図である。スペクトル曲線CSに基づいてπ/2〜πの周波数範囲の回帰曲線LRが算出されている。この周波数スペクトルはデシベル(dB)で示されているので、ω=π/2の点での振幅をVA、ω=πの点での振幅をVBで表すとき、混合係数C(n)は、C(n)=LB/LA、LB=10(VB/20)、LA=10(VA/20)、で与えられる。
混合部40は、乗算器41と加算器42とで構成されている。乗算器41は、係数決定部20から供給された混合係数C(n)を拡張帯域成分zB(n)に乗算し、加算器42は、その乗算結果を、ベースバンド処理部10から供給されたベースバンド信号に加算する。その加算結果として帯域拡張信号y(n)が生成される。図6Bに、Nが「2」である場合の帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルを示す。この帯域拡張信号y(n)は、図4Cのベースバンド信号xL(n)に図5Eの拡張帯域成分zB(n)を混合した信号である。
図7Aは、サンプリング周波数fsが11025Hzである場合の原信号の周波数スペクトル(横軸:Hz)の測定値を例示するグラフであり、図7Bは、第1実施例の帯域拡張装置1を用いてこの原信号の周波数帯域を拡張し、その結果得た帯域拡張信号の周波数スペクトルの測定値を例示するグラフである。図7Bによれば、ベースバンド信号と拡張帯域成分とが滑らかに接続していることが分かる。
上記の通り、第1実施例の帯域拡張装置1は、周波数帯域が制限された帯域信号xH(n)をダウンサンプリングして得られる帯域信号xD(n)のスペクトルを反転している。帯域拡張装置1は、さらに、その反転信号zD(n)をアップサンプリングし、当該アップサンプリングされた信号zU(n)にフィルタリングを施すことで、ベースバンド信号xL(n)の周波数帯域の高域端の周波数π/Nと略同一の周波数を低域端とする拡張帯域の成分zB(n)を生成しており、かかる拡張帯域成分zB(n)がベースバンド信号xL(n)に混合される。このような帯域拡張装置1は、帯域信号xD(n)のスペクトルを反転しているので、スペクトル反転を行わない従来技術と比べると、拡張帯域成分zB(n)とベースバンド信号xL(n)との接続性が良好になり、出力信号y(n)の品質向上が可能になる。
さらに、帯域拡張装置1は、入力信号x(n)の周波数スペクトルに基づいて、拡張帯域成分zB(n)に乗ずるべき混合係数C(n)を算出しているので、拡張帯域成分をベースバンド信号に滑らかに接続することができ、高品質で自然な周波数スペクトルを持つ帯域拡張信号y(n)を生成することが可能になる。
次に、混合係数C(n)の算出方法の他の例について説明する。この算出法では、低域端の周波数ω=π/2を含む狭帯域ΔωAにおける複数点のスペクトル値の第1平均<LA>と、高域端の周波数ω=πを含む狭帯域ΔωBにおける複数点のスペクトル値の第2平均<LB>とが算出され、次いで、これら第1平均<LA>と第2平均<LB>との比率が混合係数C(n)として算出される。図8は、算出方法を説明するための周波数スペクトルを例示するグラフである。かかる場合、狭帯域ΔωAにおけるスペクトル値の第1平均<VA>と、狭帯域ΔωBにおけるスペクトル値の第2平均<VB>とが算出される。周波数スペクトルはデシベル(dB)で示されているので、混合係数C(n)は、C(n)=<LB>/<LA>、<LB>=10(<VB>/20)、<LA>=10(<VA>/20)、で与えられる。
上記算出法を採用すれば、係数算出部23は、周波数スペクトルの回帰曲線を必要としないので、少ない演算量で混合係数C(n)を算出することができ、低消費電力化も実現できる。
また、混合係数C(n)のさらに他の算出法を図9を参照しつつ説明する。図9は、図3に示した係数決定部20に代わる係数決定部20Dの構成を概略的に示す機能ブロック図である。この係数決定部20Dは、帯域通過フィルタ(BPF)24A,24Bと、2乗和算出部25A,25Bと、係数演算部26とで構成されている。一方の帯域通過フィルタ24Aは、低域端の周波数ω=π/2を含む所定の狭帯域のみを通過帯域として有し、他方の帯域通過フィルタ(BPF)24Bは、高域端の周波数ω=πを含む所定の狭帯域のみを通過帯域して有している。2乗和算出部25A,25Bは、それぞれ、帯域通過フィルタ24A,24Bの出力の2乗和<A2>,<B2>を所定のサンプル期間T毎に繰り返し算出する。たとえば、帯域通過フィルタ24Aの出力値の系列がA1,A2,A3,…であれば、2乗和<A2>は、(A1)2+(A2)2+(A3)2+…となる。そして、係数演算部26は、それら2乗和の比率の平方根値(<B2>/<A2>)(1/2)を混合係数C(n)として算出することとなる。
上記係数決定部20Dは、フーリエ変換と周波数スペクトルとを必要とせず、帯域通過フィルタ24A,24Bは、必ずしもFIRフィルタ(有限長インパルス応答フィルタ)で構成する必要はないのでタップ数の少ないIIRフィルタ(無限長インパルス応答フィルタ)で構成することが可能である。したがって、係数決定部20Dは、図3の係数決定部20と比べて少ない演算量で混合係数C(n)を算出することができ、低消費電力化を実現できる。
2.第2実施例
次に、本発明に係る第2実施例の帯域拡張装置および帯域拡張方法を説明する。図10は、第2実施例の帯域拡張装置2の構成を概略的に示す機能ブロック図である。なお、図10と図3とで同一符号を付された構成要素は、同一機能または同一構成を有するものとして、その詳細な説明を省略する。
図10を参照すると、第2実施例の帯域拡張装置2は、ベースバンド処理部10、係数決定部20Aおよび拡張帯域処理部30Aを有している。ベースバンド処理部10は、上記の通り、入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成する。
拡張帯域処理部30Aは、入力信号x(n)の系列から拡張帯域成分zH(n)を生成する機能を有する。この拡張帯域処理部30Aは、スペクトル反転部33、アップサンプラ36および帯域通過フィルタ37を有している。スペクトル反転部33は、入力信号x(n)のスペクトルを反転して反転信号z(n)を生成する。アップサンプラ36は、N倍のレートすなわちNのファクタで反転信号z(n)の系列をアップサンプリングしてアップサンプリング信号zU(n)の系列を生成する。帯域通過フィルタ37は、π/N<|ω|<2π/Nの通過帯域を有し、アップサンプリング信号zU(n)の系列にフィルタリングを施して拡張帯域成分であるフィルタ信号zB(n)の系列を生成する。この拡張帯域成分zB(n)は混合部40に供給される。
図11A〜図11Dに、Nが「2」である場合の周波数スペクトルを例示する。かかる場合、図11Aに示される入力信号x(n)が供給された場合、スペクトル反転部33は、入力信号x(n)のスペクトルを反転して、図11Bに示される周波数スペクトルを持つ反転信号z(n)を生成する。アップサンプラ36は、2倍のレートすなわち2のファクタで反転信号z(n)の系列にアップサンプリングを施して、図11Cに示されるスペクトルを持つアップサンプリング信号zU(n)を生成する。また、帯域通過フィルタ37は、π/2<|ω|<πの通過帯域を有し、図11Dに示される周波数スペクトルを持つ拡張帯域成分zB(n)を生成することとなる。
一方、係数決定部20Aは、FFT部21、スペクトル算出部22および係数算出部23Aを有している。係数算出部23Aは、スペクトル算出部22で算出された周波数スペクトルに基づいて、0〜πの周波数範囲で線形または非線形の回帰曲線を算出し、この回帰曲線を利用して混合係数を算出することができる。具体的には、回帰曲線として、1次関数で表現された線形の回帰直線を使用すればよい。
第2実施例の場合、入力信号x(n)の全周波数帯域の成分にアップサンプリングおよびフィルタリングを施すことで、図11Dに示されるような拡張帯域成分zB(n)が生成される。よって、混合係数C(n)は、入力信号x(n)の周波数帯域の低域端の周波数ω=0またはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LAに対する、高域端の周波数ω=πまたはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LBの比率LB/LAで与えられる。
図12Aは、入力信号x(n)の周波数スペクトルと回帰曲線LRとを例示する図である。スペクトル曲線CSのうち、0〜πの周波数範囲の回帰曲線LRが算出されている。この周波数スペクトルはデシベル(dB)で示されているので、ω=0の点での振幅をVA、ω=πの点での振幅をVBで表すとき、混合係数C(n)は、C(n)=LB/LA、LB=10(VB/20)、LA=10(VA/20)、で与えられる。
なお、上記係数決定部20Aの算出方法の代わりに、図8および図9でそれぞれ示した算出法を適用して混合係数C(n)を算出してもよい。かかる場合、低域端の周波数をω=0に設定し、高域端の周波数をω=πに設定して、図8および図9で示した算出法を適用すればよい。
混合部40では、乗算器41は、係数決定部20Aから供給された混合係数C(n)を拡張帯域成分zB(n)に乗算し、加算器42は、その乗算結果を、ベースバンド処理部10から供給されたベースバンド信号に加算する。その加算結果として帯域拡張信号y(n)が生成される。図12Bに、N=2の場合の帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルを示す。この帯域拡張信号y(n)は、ベースバンド信号に図11Dの拡張帯域成分zB(n)が混合された信号である。
上記の通り、第2実施例の帯域拡張装置2は、入力信号x(n)のスペクトルを反転し、その反転信号z(n)をアップサンプリングし、当該アップサンプリングされた信号zU(n)にフィルタリングを施すことで、ベースバンド信号xL(n)の周波数帯域の高域端の周波数π/Nと略同一の周波数を低域端とする拡張帯域の成分zB(n)を生成しており、かかる拡張帯域成分zB(n)がベースバンド信号xL(n)に混合される。このような帯域拡張装置2は、入力信号x(n)のスペクトルを反転しているので、スペクトル反転を行わない従来技術と比べると、拡張帯域成分zB(n)とベースバンド信号xL(n)との接続性が良好になり、出力信号y(n)の品質向上が可能になる。
さらに、帯域拡張装置2は、入力信号x(n)の周波数スペクトルに基づいて拡張帯域成分zB(n)に乗ずるべき混合係数C(n)を算出しているので、拡張帯域成分をベースバンド信号に滑らかに接続することができ、高品質で自然な周波数スペクトルを持つ帯域拡張信号y(n)を生成することが可能である。
3.第3実施例
次に、本発明に係る第3実施例の帯域拡張装置および帯域拡張方法を説明する。図13は、第3実施例の帯域拡張装置3の構成を概略的に示す機能ブロック図である。なお、図13と図3とで同一符号を付された構成要素は、同一機能または同一構成を有するものとして、その詳細な説明を省略する。
図13を参照すると、第3実施例の帯域拡張装置3は、ベースバンド処理部10、係数決定部20B、第1拡張帯域処理部30および第2拡張帯域処理部50を有している。ベースバンド処理部10は、上記の通り、入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成するものである。第1拡張帯域処理部30は、入力信号x(n)の系列から第1の拡張帯域成分zB(n)を生成する機能を有する。
第2拡張帯域処理部50は、アップサンプラ51と帯域通過フィルタ(BPF)52とを有している。アップサンプラ51は、第1拡張帯域処理部30のダウンサンプラ32から供給されたダウンサンプリング信号xD(n)の系列に、2×N倍のレートすなわち2×Nのファクタでアップサンプリングを施してアップサンプリング信号xU2(n)の系列を生成する。帯域通過フィルタ(BPF)52は、3π/(2×N)<|ω|<4π/(2×N)の通過帯域を有し、アップサンプリング信号xU2(n)の系列にフィルタリングを施して第2の拡張帯域成分xB(n)を生成する。
図14A〜図14Eに、N=2の場合の周波数スペクトルを例示する。図4Aに示されるスペクトルを持つ入力信号x(n)が供給された場合、ベースバンド処理部10は、図14Aに示されるスペクトルを持つベースバンド信号xL(n)を出力し、第1拡張帯域処理部30は、図14Bに示されるスペクトルを持つ第1の拡張帯域成分zB(n)を出力する。第1拡張帯域処理部30のダウンサンプラ32は、図14Cに示されるスペクトルを持つダウンサンプリング信号xD(n)を、第2拡張帯域処理部50のアップサンプラ51に供給する。よって、アップサンプラ51は、図14Dに示されるスペクトルを持つアップサンプリング信号xU2(n)を生成する。帯域通過フィルタ52は、3π/4<|ω|<πの通過帯域を有し、図14Eに示されるスペクトルを持つ第2の拡張帯域成分xB(n)を出力することとなる。
係数決定部20Bは、図3の係数算出部23と略同一の構成および機能を有し、第1混合係数C(n)と、その2乗の値である第2混合係数C(n)2とを混合部40Bに供給する。混合部40Bにおいて、第1乗算器41Aは、第1の拡張帯域成分zB(n)に第1混合係数C(n)を乗算してその乗算結果を加算器43に供給する一方、第2乗算器41Bは、第2の拡張帯域成分xB(n)に第2混合係数C(n)2を乗算してその乗算結果を加算器43に供給する。加算器43は、ベースバンド処理部10から供給されたベースバンド信号にそれら乗算結果を加算することで帯域拡張信号y(n)を生成する。図14Fに、N=2の場合の帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルを示す。図14Fの帯域拡張信号y(n)は、図14Aのベースバンド信号xL(n)に、図14Bの第1の拡張帯域成分zB(n)と図14Eの第2の拡張帯域成分xB(n)とが混合された信号である。
上記の通り、第3実施例の帯域拡張装置3は、第1実施例の帯域拡張装置1(図3)の構成に加えて、第2の拡張帯域成分xB(n)を生成する第2拡張帯域処理部50を有するので、周波数帯域がさらに拡張された出力信号y(n)を得ることが可能になる。
4.第4実施例
次に、本発明に係る第4実施例の帯域拡張装置および帯域拡張方法を説明する。図15は、第4実施例の帯域拡張装置4の構成を概略的に示す機能ブロック図である。なお、図15と図3とで同一符号を付された構成要素は、同一機能または同一構成を有するものとして、その詳細な説明を省略する。
図15を参照すると、第4実施例の帯域拡張装置4は、ベースバンド処理部10、係数決定部20C、第1拡張帯域処理部30C、第2拡張帯域処理部50Cおよび混合部40Cを有している。図16には混合部40Cの構成が概略的に示されている。ベースバンド処理部10は、上記の通り、入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成するものである。
第1拡張帯域処理部30Cは、入力信号x(n)の系列から、複数の第1サブ帯域成分z1,…,zN−1を拡張帯域成分として生成する機能を有する。第1拡張帯域処理部30Cは、高域通過フィルタ(HPF)31、ダウンサンプラ32、スペクトル反転部33およびアップサンプラ34を有し、さらに、各々が互いに異なる通過帯域を有する複数の帯域通過フィルタ(BPF)351,…,35N−1からなるフィルタバンクを有している。k番目(kは1〜N−1の整数)の帯域通過フィルタ35kは、2kπ/(2N)<|ω|<(2k+1)π/(2N)の通過帯域を有している。これら帯域通過フィルタ351,…,35N−1は、アップサンプラ34からのアップサンプリング信号zU(n)にフィルタリングを施して、周波数帯域が制限された複数の第1サブ帯域成分z1,…,zN−1を生成し乗算部44に供給する。
一方、第2拡張帯域処理部50Cは、アップサンプラ51を有し、さらに、各々が互いに異なる通過帯域を有する複数の帯域通過フィルタ(BPF)521,…,52N−1からなるフィルタバンクを有している。k番目(kは1〜N−1の整数)の帯域通過フィルタ52kは、(2k+1)π/(2N)<|ω|<(2k+2)π/(2N)の通過帯域を有している。アップサンプラ51は、ダウンサンプラ32からのダウンサンプリング信号xD(n)の系列に、2×N倍のレートすなわち2×Nのファクタでアップサンプリングを施してアップサンプリング信号xU2(n)の系列を生成する。帯域通過フィルタ521,…,52N−1は、アップサンプリング信号xU2(n)の系列にフィルタリングを施して、周波数帯域が制限された複数の第2サブ帯域成分x1,…,xN−1を生成し乗算部44に供給する。
帯域通過フィルタ351,…,35N−1のフィルタ特性と帯域通過フィルタ521,…,52N−1のフィルタ特性とは、第1および第2サブ帯域成分z1,…,zN−1,x1,…,xN−1の周波数帯域が略連続するように構成される。帯域通過フィルタ351,521,352,522,…,35N−1および52N−1の通過帯域は連続している。これより、帯域拡張信号y(n)の周波数帯域が不連続にならず、滑らかに連続することとなる。
図17A〜図17Dおよび図18A〜図18Gに、N=4の場合の周波数スペクトルを例示する。これら周波数スペクトルは、0〜πの周波数範囲でのみ示されているが、−π〜0の周波数範囲においても、それら周波数スペクトルとω=0の点に関して鏡像関係にある周波数スペクトル(図示せず)が存在するものとする。図17Aに示されるようにスペクトルを持つ入力信号x(n)が供給された場合、ベースバンド処理部10は、図17Bに示されるように0〜π/4に帯域制限されたスペクトルを持つベースバンド信号xL(n)を出力する。第1拡張帯域処理部30Cにおいて、ダウンサンプラ32は、図17Cに示されるスペクトルを持つダウンサンプリング信号xD(n)を出力し、スペクトル反転部33は、図17Dに示されるスペクトルを持つ反転信号zD(n)を出力する。
かかる場合、帯域通過フィルタ351,352,353は、それぞれ、図18A,図18B,図18Cに示されるスペクトルを持つ第1サブ帯域成分z1,z2,z3を出力する。他方、帯域通過フィルタ521,522,523は、それぞれ、図18D,図18E,図18Fに示されるスペクトルを持つ第2サブ帯域成分x1,x2,x3を出力する。図18A〜図18Fに示される第1および第2サブ帯域成分z1,x1,z2,x2,z3,x3の周波数帯域は連続していることが分かる。
係数決定部20Cは、図3の係数決定部20が与える混合係数C(n)と同じ混合係数Cを生成するとともに、C2,C3,…,C2N−2の混合係数を算出する。これら混合係数のデータCDは混合部40Cに供給される。
混合部40Cは、図16に例示されるように、第1サブ帯域成分用の乗算器451,…,45N−1と、第2サブ帯域成分用の乗算器461,…,46N−1とを有する。第1サブ帯域成分用の乗算器451,452,…,45N−1には、それぞれ、第1サブ帯域成分z1,z2,…,zN−1が入力し、且つ、これら乗算器451,452,…,45N−1には、それぞれ、乗算係数C,C3,…,C2N−3が与えられている。他方、第2サブ帯域成分用の乗算器461,462,…,46N−1には、それぞれ、第2サブ帯域成分x1,x2,…,xN−1が入力し、且つ、これら乗算器461,462,…,46N−1には、それぞれ、乗算係数C2,C4,…,C2N−2が与えられている。加算器43は、乗算器451,…,45N−1,461,…,46N−1の全出力をベースバンド信号に加算して帯域拡張信号y(n)を生成する。
結果として、図18Gに例示されるように、帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルにおいて、第1サブ帯域成分と第2サブ帯域成分とが交互に配列した拡張帯域成分が形成されることとなる。
上記の通り、第4実施例の帯域拡張装置4は、第1拡張帯域処理部30Cおよび第2拡張帯域処理部50Cがそれぞれフィルタバンク351〜35N−1および521,…,52N−1を有するので、高品質で自然な周波数スペクトルを持つ帯域拡張信号y(n)を生成することが可能である。
5.適用例
上記第1〜第4実施例の帯域拡張装置1〜4を種々の機器に適用することができる。図19A〜図19Cは、帯域拡張装置1の適用例を概略的に示す図である。図19Aを参照すると、帯域拡張装置1(または帯域拡張装置2〜4)は、音声信号処理部60とD/A変換器(DAC)61との間に接続されている。音声信号処理部60は、たとえば、PCM符号化などの音声信号処理を行うブロックである。帯域拡張装置1は、音声信号処理部60から供給された信号の周波数帯域を拡張し、その帯域拡張信号をD/A変換器61に供給することができる。
図19Bの例では、帯域拡張装置1(または帯域拡張装置2〜4)は、携帯電話機や光ディスク再生装置などに組み込まれたデコーダ62と、D/A変換器(DAC)63との間に接続されている。帯域拡張装置1は、デコーダ62から供給された復号化信号の周波数帯域を拡張し、その帯域拡張信号をD/A変換器63に供給することができる。
図19Cの例では、帯域拡張装置1(または帯域拡張装置2〜4)は、AMチューナやFMチューナなどのチューナ64と、D/A変換器(DAC)67との間に接続されている。チューナ64の出力は、低域通過フィルタ(LPF)65でフィルタリングを施され、A/D変換器(ADC)66でA/D変換される。帯域拡張装置1は、A/D変換器66のデジタル出力の周波数帯域を拡張し、その帯域拡張信号をD/A変換器67に供給する。
また、上記の第1〜第4実施例の帯域拡張装置1〜4の全構成または一部構成をハードウェアで実現してもよいし、或いは、CPUなどのプロセッサで実行されるプログラムで実現してもよい。
図3は、本発明に係る第1実施例の帯域拡張装置1の構成を概略的に示す機能ブロック図である。帯域拡張装置1は、ベースバンド処理部10、係数決定部20、拡張帯域処理部30および混合部40で構成されている。ベースバンド処理部10は、入力信号x(n)(nは整数)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成する。入力信号x(n)は、オーディオ信号などのデジタル信号である。
ベースバンド処理部10は、アップサンプラ11、低域通過フィルタ(LPF)12および遅延器13を有している。アップサンプラ11は、N倍のレート(Nは2以上の整数)すなわちNのファクタで入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施してアップサンプリング信号xU(n)の系列を生成する。低域通過フィルタ12は、|ω|<π/N(ωは角周波数)の通過帯域を有し、アップサンプリング信号xU(n)の系列にフィルタリングを施して、−π/N〜+π/Nの周波数帯域に制限されたフィルタ信号xL(n)の系列を生成する。遅延器13は、所定の遅延時間だけフィルタ信号xL(n)を遅延させ、その遅延信号をベースバンド信号として出力する。図4A〜図4Cに、Nが「2」である場合の周波数スペクトルを例示する。図4Aに示される入力信号x(n)が供給された場合、アップサンプラ11は、2倍のレートすなわち2のファクタで入力信号x(n)にアップサンプリングを施して、図4Bに示される周波数スペクトルを有するアップサンプリング信号xU(n)を生成する。低域通過フィルタ12は、図4Bのアップサンプリング信号xU(n)にフィルタリングを施して、−π/2〜+π/2の周波数帯域に制限されたフィルタ信号xL(n)を生成することとなる。
他方、拡張帯域処理部30は、入力信号x(n)の系列から拡張帯域成分zB(n)を生成する機能を有する。この拡張帯域処理部30は、高域通過フィルタ(HPF)31、ダウンサンプラ32、スペクトル反転部33、アップサンプラ34および帯域通過フィルタ(BPF)35を有している。高域通過フィルタ31は、|ω|>π/2の通過帯域(第2周波数帯域)を有し、入力信号x(n)の系列にフィルタリングを施してフィルタ信号xH(n)の系列を生成する。次いで、ダウンサンプラ32は、1/2倍のレートすなわち2のファクタでフィルタ信号xH(n)の系列にダウンサンプリングを施して、ダウンサンプリング信号すなわち帯域信号xD(n)の系列を生成する。図5A〜図5Bに周波数スペクトルを例示する。図4Aに示される入力信号x(n)が供給された場合、|ω|>π/2の通過帯域を有する高域通過フィルタ31は、図5Aに示される周波数スペクトルを持つフィルタ信号xH(n)を生成する。また、ダウンサンプラ32は、1/2倍のレートすなわち2のファクタでフィルタ信号xH(n)にダウンサンプリングを施して、図5Bに示される周波数スペクトルを持つダウンサンプリング信号xD(n)を生成することとなる。
スペクトル反転部33は、ダウンサンプリング信号xD(n)のスペクトルを反転して反転信号zD(n)を生成する。以下に数式を用いて説明するように、「スペクトル反転」とは、信号の周波数スペクトルを角周波数πだけシフトさせることを意味する。ダウンサンプリング信号xD(n)の極性を1つ置きに反転させた信号が反転信号zD(n)となるので、ダウンサンプリング信号xD(n)と反転信号zD(n)との間の関係は、次式(1)で表現される。
zD(n)=xD(n)×(−1)n=xD(n)exp(−jnπ). (1)
ここで、jは、虚数単位(j2=−1)であり、Lは、フーリエ変換のサンプル数であり正整数である。よって、反転信号zD(n)の離散フーリエ変換ZD(k)は次のように展開される。
したがって、XD(k)をダウンサンプリング信号xD(n)の離散フーリエ変換としたとき、次式(2)が成立する。
式(2)によれば、周波数領域(frequency domain)において、ZD(k)は、XD(k)をL/2点すなわち角周波数πだけシフトさせたものである。したがって、「スペクトル反転」とは、信号の周波数スペクトルを角周波数πだけシフトさせることを意味する。
次に、図3を参照すると、アップサンプラ34は、2×N倍のレートすなわち2×Nのファクタで反転信号zD(n)の系列にアップサンプリングを施して、アップサンプリング信号zU(n)の系列を生成する。さらに、帯域通過フィルタ35は、2π/(2×N)<|ω|<3π/(2×N)の通過帯域を有し、アップサンプリング信号zU(n)の系列にフィルタリングを施すことで拡張帯域成分zB(n)の系列を生成する。この拡張帯域成分zB(n)の帯域の低域端(低域側端部)の周波数がベースバンド信号xL(n)の帯域の高域端(高域側端部)の周波数と略同一になるように、帯域通過フィルタ35のフィルタ特性(通過帯域、阻止域および遮断周波数など)が構成されている。本実施例の場合、拡張帯域成分zB(n)の低域端の周波数は略±2π/(2×N)であり、ベースバンド信号xL(n)の高域端の周波数も±π/Nであるので、両周波数は略一致することとなる。
図5C〜図5EにNが「2」である場合の周波数スペクトルを例示する。このとき、スペクトル反転部33は、図5Bのダウンサンプリング信号xD(n)のスペクトルを反転して、図5Cに示されるスペクトルを持つ反転信号zD(n)を生成する。また、アップサンプラ34は、4倍のレートすなわち4のファクタで反転信号zD(n)にアップサンプリングを施して、図5Dに示されるスペクトルを持つアップサンプリング信号zU(n)を生成する。そして、2π/4<|ω|<3π/4の通過帯域を有する帯域通過フィルタ35は、アップサンプリング信号zU(n)にフィルタリングを施して、図5Eに示されるスペクトルを持つ拡張帯域成分からなるフィルタ信号zB(n)を生成することとなる。かかる場合、図4Cに示したベースバンド信号xL(n)の帯域の高域端の周波数±π/2は、図5Eの拡張帯域成分zB(n)の低域端の周波数±π/2と一致する。
上記のベースバンド信号xL(n)と拡張帯域成分zB(n)とは、混合部40で混合される。係数決定部20は、入力信号x(n)の周波数スペクトルを算出しこれに基づいて拡張帯域成分zB(n)に乗ずるべき混合係数を決定する処理ブロックである。係数決定部20は、FFT部(高速フーリエ変換部)21、スペクトル算出部22および係数算出部23を有している。FFT部21は、入力信号x(n)の系列を高速フーリエ変換して周波数領域の信号系列を算出する。また、スペクトル算出部22は、FFT部21から供給された周波数領域の信号系列に基づいて入力信号x(n)の周波数スペクトルを算出する。係数算出部23は、スペクトル算出部22で算出された周波数スペクトルに基づいて、π/2〜πの周波数範囲で線形または非線形の回帰曲線を算出し、この回帰曲線を利用して混合係数を算出することができる。具体的には、回帰曲線として、1次関数で表現された線形の回帰直線を使用すればよい。
第1実施例の場合、入力信号x(n)から、図5Aに示されるような周波数帯域(第2周波数帯域π/2〜π)の成分が抽出され、かかる成分が、ダウンサンプリング、スペクトル反転、アップサンプリングおよびフィルタリングを施されることで、図5Eに示されるような拡張帯域成分zB(n)が生成される。よって、混合係数C(n)は、低域端の周波数ω=π/2またはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LAに対する、高域端の周波数ω=πまたはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LBの比率LB/LAで与えられる。
図6Aは、入力信号x(n)の周波数スペクトルと回帰曲線LRとを例示する図である。スペクトル曲線CSに基づいてπ/2〜πの周波数範囲の回帰曲線LRが算出されている。この周波数スペクトルはデシベル(dB)で示されているので、ω=π/2の点での振幅をVA、ω=πの点での振幅をVBで表すとき、混合係数C(n)は、C(n)=LB/LA、LB=10(VB/20)、LA=10(VA/20)、で与えられる。
混合部40は、乗算器41と加算器42とで構成されている。乗算器41は、係数決定部20から供給された混合係数C(n)を拡張帯域成分zB(n)に乗算し、加算器42は、その乗算結果を、ベースバンド処理部10から供給されたベースバンド信号に加算する。その加算結果として帯域拡張信号y(n)が生成される。図6Bに、Nが「2」である場合の帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルを示す。この帯域拡張信号y(n)は、図4Cのベースバンド信号xL(n)に図5Eの拡張帯域成分zB(n)を混合した信号である。
図7Aは、サンプリング周波数fsが11025Hzである場合の原信号の周波数スペクトル(横軸:Hz)の測定値を例示するグラフであり、図7Bは、第1実施例の帯域拡張装置1を用いてこの原信号の周波数帯域を拡張し、その結果得た帯域拡張信号の周波数スペクトルの測定値を例示するグラフである。図7Bによれば、ベースバンド信号と拡張帯域成分とが滑らかに接続していることが分かる。
上記の通り、第1実施例の帯域拡張装置1は、周波数帯域が制限された帯域信号xH(n)をダウンサンプリングして得られる帯域信号xD(n)のスペクトルを反転している。帯域拡張装置1は、さらに、その反転信号zD(n)をアップサンプリングし、当該アップサンプリングされた信号zU(n)にフィルタリングを施すことで、ベースバンド信号xL(n)の周波数帯域の高域端の周波数π/Nと略同一の周波数を低域端とする拡張帯域の成分zB(n)を生成しており、かかる拡張帯域成分zB(n)がベースバンド信号xL(n)に混合される。このような帯域拡張装置1は、帯域信号xD(n)のスペクトルを反転しているので、スペクトル反転を行わない従来技術と比べると、拡張帯域成分zB(n)とベースバンド信号xL(n)との接続性が良好になり、出力信号y(n)の品質向上が可能になる。
さらに、帯域拡張装置1は、入力信号x(n)の周波数スペクトルに基づいて、拡張帯域成分zB(n)に乗ずるべき混合係数C(n)を算出しているので、拡張帯域成分をベースバンド信号に滑らかに接続することができ、高品質で自然な周波数スペクトルを持つ帯域拡張信号y(n)を生成することが可能になる。
次に、混合係数C(n)の算出方法の他の例について説明する。この算出法では、低域端の周波数ω=π/2を含む狭帯域ΔωAにおける複数点のスペクトル値の第1平均<LA>と、高域端の周波数ω=πを含む狭帯域ΔωBにおける複数点のスペクトル値の第2平均<LB>とが算出され、次いで、これら第1平均<LA>と第2平均<LB>との比率が混合係数C(n)として算出される。図8は、算出方法を説明するための周波数スペクトルを例示するグラフである。かかる場合、狭帯域ΔωAにおけるスペクトル値の第1平均<VA>と、狭帯域ΔωBにおけるスペクトル値の第2平均<VB>とが算出される。周波数スペクトルはデシベル(dB)で示されているので、混合係数C(n)は、C(n)=<LB>/<LA>、<LB>=10(<VB>/20)、<LA>=10(<VA>/20)、で与えられる。
上記算出法を採用すれば、係数算出部23は、周波数スペクトルの回帰曲線を必要としないので、少ない演算量で混合係数C(n)を算出することができ、低消費電力化も実現できる。
また、混合係数C(n)のさらに他の算出法を図9を参照しつつ説明する。図9は、図3に示した係数決定部20に代わる係数決定部20Dの構成を概略的に示す機能ブロック図である。この係数決定部20Dは、帯域通過フィルタ(BPF)24A,24Bと、2乗和算出部25A,25Bと、係数演算部26とで構成されている。一方の帯域通過フィルタ24Aは、低域端の周波数ω=π/2を含む所定の狭帯域のみを通過帯域として有し、他方の帯域通過フィルタ(BPF)24Bは、高域端の周波数ω=πを含む所定の狭帯域のみを通過帯域して有している。2乗和算出部25A,25Bは、それぞれ、帯域通過フィルタ24A,24Bの出力の2乗和<A2>,<B2>を所定のサンプル期間T毎に繰り返し算出する。たとえば、帯域通過フィルタ24Aの出力値の系列がA1,A2,A3,…であれば、2乗和<A2>は、(A1)2+(A2)2+(A3)2+…となる。そして、係数演算部26は、それら2乗和の比率の平方根値(<B2>/<A2>)(1/2)を混合係数C(n)として算出することとなる。
上記係数決定部20Dは、フーリエ変換と周波数スペクトルとを必要とせず、帯域通過フィルタ24A,24Bは、必ずしもFIRフィルタ(有限長インパルス応答フィルタ)で構成する必要はないのでタップ数の少ないIIRフィルタ(無限長インパルス応答フィルタ)で構成することが可能である。したがって、係数決定部20Dは、図3の係数決定部20と比べて少ない演算量で混合係数C(n)を算出することができ、低消費電力化を実現できる。
2.第2実施例
次に、本発明に係る第2実施例の帯域拡張装置および帯域拡張方法を説明する。図10は、第2実施例の帯域拡張装置2の構成を概略的に示す機能ブロック図である。なお、図10と図3とで同一符号を付された構成要素は、同一機能または同一構成を有するものとして、その詳細な説明を省略する。
図10を参照すると、第2実施例の帯域拡張装置2は、ベースバンド処理部10、係数決定部20Aおよび拡張帯域処理部30Aを有している。ベースバンド処理部10は、上記の通り、入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成する。
拡張帯域処理部30Aは、入力信号x(n)の系列から拡張帯域成分zH(n)を生成する機能を有する。この拡張帯域処理部30Aは、スペクトル反転部33、アップサンプラ36および帯域通過フィルタ37を有している。スペクトル反転部33は、入力信号x(n)のスペクトルを反転して反転信号z(n)を生成する。アップサンプラ36は、N倍のレートすなわちNのファクタで反転信号z(n)の系列をアップサンプリングしてアップサンプリング信号zU(n)の系列を生成する。帯域通過フィルタ37は、π/N<|ω|<2π/Nの通過帯域を有し、アップサンプリング信号zU(n)の系列にフィルタリングを施して拡張帯域成分であるフィルタ信号zB(n)の系列を生成する。この拡張帯域成分zB(n)は混合部40に供給される。
図11A〜図11Dに、Nが「2」である場合の周波数スペクトルを例示する。かかる場合、図11Aに示される入力信号x(n)が供給された場合、スペクトル反転部33は、入力信号x(n)のスペクトルを反転して、図11Bに示される周波数スペクトルを持つ反転信号z(n)を生成する。アップサンプラ36は、2倍のレートすなわち2のファクタで反転信号z(n)の系列にアップサンプリングを施して、図11Cに示されるスペクトルを持つアップサンプリング信号zU(n)を生成する。また、帯域通過フィルタ37は、π/2<|ω|<πの通過帯域を有し、図11Dに示される周波数スペクトルを持つ拡張帯域成分zB(n)を生成することとなる。
一方、係数決定部20Aは、FFT部21、スペクトル算出部22および係数算出部23Aを有している。係数算出部23Aは、スペクトル算出部22で算出された周波数スペクトルに基づいて、0〜πの周波数範囲で線形または非線形の回帰曲線を算出し、この回帰曲線を利用して混合係数を算出することができる。具体的には、回帰曲線として、1次関数で表現された線形の回帰直線を使用すればよい。
第2実施例の場合、入力信号x(n)の全周波数帯域の成分にアップサンプリングおよびフィルタリングを施すことで、図11Dに示されるような拡張帯域成分zB(n)が生成される。よって、混合係数C(n)は、入力信号x(n)の周波数帯域の低域端の周波数ω=0またはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LAに対する、高域端の周波数ω=πまたはその近傍の点での回帰曲線のスペクトル値LBの比率LB/LAで与えられる。
図12Aは、入力信号x(n)の周波数スペクトルと回帰曲線LRとを例示する図である。スペクトル曲線CSのうち、0〜πの周波数範囲の回帰曲線LRが算出されている。この周波数スペクトルはデシベル(dB)で示されているので、ω=0の点での振幅をVA、ω=πの点での振幅をVBで表すとき、混合係数C(n)は、C(n)=LB/LA、LB=10(VB/20)、LA=10(VA/20)、で与えられる。
なお、上記係数決定部20Aの算出方法の代わりに、図8および図9でそれぞれ示した算出法を適用して混合係数C(n)を算出してもよい。かかる場合、低域端の周波数をω=0に設定し、高域端の周波数をω=πに設定して、図8および図9で示した算出法を適用すればよい。
混合部40では、乗算器41は、係数決定部20Aから供給された混合係数C(n)を拡張帯域成分zB(n)に乗算し、加算器42は、その乗算結果を、ベースバンド処理部10から供給されたベースバンド信号に加算する。その加算結果として帯域拡張信号y(n)が生成される。図12Bに、N=2の場合の帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルを示す。この帯域拡張信号y(n)は、ベースバンド信号に図11Dの拡張帯域成分zB(n)が混合された信号である。
上記の通り、第2実施例の帯域拡張装置2は、入力信号x(n)のスペクトルを反転し、その反転信号z(n)をアップサンプリングし、当該アップサンプリングされた信号zU(n)にフィルタリングを施すことで、ベースバンド信号xL(n)の周波数帯域の高域端の周波数π/Nと略同一の周波数を低域端とする拡張帯域の成分zB(n)を生成しており、かかる拡張帯域成分zB(n)がベースバンド信号xL(n)に混合される。このような帯域拡張装置2は、入力信号x(n)のスペクトルを反転しているので、スペクトル反転を行わない従来技術と比べると、拡張帯域成分zB(n)とベースバンド信号xL(n)との接続性が良好になり、出力信号y(n)の品質向上が可能になる。
さらに、帯域拡張装置2は、入力信号x(n)の周波数スペクトルに基づいて拡張帯域成分zB(n)に乗ずるべき混合係数C(n)を算出しているので、拡張帯域成分をベースバンド信号に滑らかに接続することができ、高品質で自然な周波数スペクトルを持つ帯域拡張信号y(n)を生成することが可能である。
3.第3実施例
次に、本発明に係る第3実施例の帯域拡張装置および帯域拡張方法を説明する。図13は、第3実施例の帯域拡張装置3の構成を概略的に示す機能ブロック図である。なお、図13と図3とで同一符号を付された構成要素は、同一機能または同一構成を有するものとして、その詳細な説明を省略する。
図13を参照すると、第3実施例の帯域拡張装置3は、ベースバンド処理部10、係数決定部20B、第1拡張帯域処理部30および第2拡張帯域処理部50を有している。ベースバンド処理部10は、上記の通り、入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成するものである。第1拡張帯域処理部30は、入力信号x(n)の系列から第1の拡張帯域成分zB(n)を生成する機能を有する。
第2拡張帯域処理部50は、アップサンプラ51と帯域通過フィルタ(BPF)52とを有している。アップサンプラ51は、第1拡張帯域処理部30のダウンサンプラ32から供給されたダウンサンプリング信号xD(n)の系列に、2×N倍のレートすなわち2×Nのファクタでアップサンプリングを施してアップサンプリング信号xU2(n)の系列を生成する。帯域通過フィルタ(BPF)52は、3π/(2×N)<|ω|<4π/(2×N)の通過帯域を有し、アップサンプリング信号xU2(n)の系列にフィルタリングを施して第2の拡張帯域成分xB(n)を生成する。
図14A〜図14Eに、N=2の場合の周波数スペクトルを例示する。図4Aに示されるスペクトルを持つ入力信号x(n)が供給された場合、ベースバンド処理部10は、図14Aに示されるスペクトルを持つベースバンド信号xL(n)を出力し、第1拡張帯域処理部30は、図14Bに示されるスペクトルを持つ第1の拡張帯域成分zB(n)を出力する。第1拡張帯域処理部30のダウンサンプラ32は、図14Cに示されるスペクトルを持つダウンサンプリング信号xD(n)を、第2拡張帯域処理部50のアップサンプラ51に供給する。よって、アップサンプラ51は、図14Dに示されるスペクトルを持つアップサンプリング信号xU2(n)を生成する。帯域通過フィルタ52は、3π/4<|ω|<πの通過帯域を有し、図14Eに示されるスペクトルを持つ第2の拡張帯域成分xB(n)を出力することとなる。
係数決定部20Bは、図3の係数算出部23と略同一の構成および機能を有し、第1混合係数C(n)と、その2乗の値である第2混合係数C(n)2とを混合部40Bに供給する。混合部40Bにおいて、第1乗算器41Aは、第1の拡張帯域成分zB(n)に第1混合係数C(n)を乗算してその乗算結果を加算器43に供給する一方、第2乗算器41Bは、第2の拡張帯域成分xB(n)に第2混合係数C(n)2を乗算してその乗算結果を加算器43に供給する。加算器43は、ベースバンド処理部10から供給されたベースバンド信号にそれら乗算結果を加算することで帯域拡張信号y(n)を生成する。図14Fに、N=2の場合の帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルを示す。図14Fの帯域拡張信号y(n)は、図14Aのベースバンド信号xL(n)に、図14Bの第1の拡張帯域成分zB(n)と図14Eの第2の拡張帯域成分xB(n)とが混合された信号である。
上記の通り、第3実施例の帯域拡張装置3は、第1実施例の帯域拡張装置1(図3)の構成に加えて、第2の拡張帯域成分xB(n)を生成する第2拡張帯域処理部50を有するので、周波数帯域がさらに拡張された出力信号y(n)を得ることが可能になる。
4.第4実施例
次に、本発明に係る第4実施例の帯域拡張装置および帯域拡張方法を説明する。図15は、第4実施例の帯域拡張装置4の構成を概略的に示す機能ブロック図である。なお、図15と図3とで同一符号を付された構成要素は、同一機能または同一構成を有するものとして、その詳細な説明を省略する。
図15を参照すると、第4実施例の帯域拡張装置4は、ベースバンド処理部10、係数決定部20C、第1拡張帯域処理部30C、第2拡張帯域処理部50Cおよび混合部40Cを有している。図16には混合部40Cの構成が概略的に示されている。ベースバンド処理部10は、上記の通り、入力信号x(n)の系列にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号系列にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号xL(n)を生成するものである。
第1拡張帯域処理部30Cは、入力信号x(n)の系列から、複数の第1サブ帯域成分z1,…,zN−1を拡張帯域成分として生成する機能を有する。第1拡張帯域処理部30Cは、高域通過フィルタ(HPF)31、ダウンサンプラ32、スペクトル反転部33およびアップサンプラ34を有し、さらに、各々が互いに異なる通過帯域を有する複数の帯域通過フィルタ(BPF)351,…,35N−1からなるフィルタバンクを有している。k番目(kは1〜N−1の整数)の帯域通過フィルタ35kは、2kπ/(2N)<|ω|<(2k+1)π/(2N)の通過帯域を有している。これら帯域通過フィルタ351,…,35N−1は、アップサンプラ34からのアップサンプリング信号zU(n)にフィルタリングを施して、周波数帯域が制限された複数の第1サブ帯域成分z1,…,zN−1を生成し乗算部44に供給する。
一方、第2拡張帯域処理部50Cは、アップサンプラ51を有し、さらに、各々が互いに異なる通過帯域を有する複数の帯域通過フィルタ(BPF)521,…,52N−1からなるフィルタバンクを有している。k番目(kは1〜N−1の整数)の帯域通過フィルタ52kは、(2k+1)π/(2N)<|ω|<(2k+2)π/(2N)の通過帯域を有している。アップサンプラ51は、ダウンサンプラ32からのダウンサンプリング信号xD(n)の系列に、2×N倍のレートすなわち2×Nのファクタでアップサンプリングを施してアップサンプリング信号xU2(n)の系列を生成する。帯域通過フィルタ521,…,52N−1は、アップサンプリング信号xU2(n)の系列にフィルタリングを施して、周波数帯域が制限された複数の第2サブ帯域成分x1,…,xN−1を生成し乗算部44に供給する。
帯域通過フィルタ351,…,35N−1のフィルタ特性と帯域通過フィルタ521,…,52N−1のフィルタ特性とは、第1および第2サブ帯域成分z1,…,zN−1,x1,…,xN−1の周波数帯域が略連続するように構成される。帯域通過フィルタ351,521,352,522,…,35N−1および52N−1の通過帯域は連続している。これより、帯域拡張信号y(n)の周波数帯域が不連続にならず、滑らかに連続することとなる。
図17A〜図17Dおよび図18A〜図18Gに、N=4の場合の周波数スペクトルを例示する。これら周波数スペクトルは、0〜πの周波数範囲でのみ示されているが、−π〜0の周波数範囲においても、それら周波数スペクトルとω=0の点に関して鏡像関係にある周波数スペクトル(図示せず)が存在するものとする。図17Aに示されるようにスペクトルを持つ入力信号x(n)が供給された場合、ベースバンド処理部10は、図17Bに示されるように0〜π/4に帯域制限されたスペクトルを持つベースバンド信号xL(n)を出力する。第1拡張帯域処理部30Cにおいて、ダウンサンプラ32は、図17Cに示されるスペクトルを持つダウンサンプリング信号xD(n)を出力し、スペクトル反転部33は、図17Dに示されるスペクトルを持つ反転信号zD(n)を出力する。
かかる場合、帯域通過フィルタ351,352,353は、それぞれ、図18A,図18B,図18Cに示されるスペクトルを持つ第1サブ帯域成分z1,z2,z3を出力する。他方、帯域通過フィルタ521,522,523は、それぞれ、図18D,図18E,図18Fに示されるスペクトルを持つ第2サブ帯域成分x1,x2,x3を出力する。図18A〜図18Fに示される第1および第2サブ帯域成分z1,x1,z2,x2,z3,x3の周波数帯域は連続していることが分かる。
係数決定部20Cは、図3の係数決定部20が与える混合係数C(n)と同じ混合係数Cを生成するとともに、C2,C3,…,C2N−2の混合係数を算出する。これら混合係数のデータCDは混合部40Cに供給される。
混合部40Cは、図16に例示されるように、第1サブ帯域成分用の乗算器451,…,45N−1と、第2サブ帯域成分用の乗算器461,…,46N−1とを有する。第1サブ帯域成分用の乗算器451,452,…,45N−1には、それぞれ、第1サブ帯域成分z1,z2,…,zN−1が入力し、且つ、これら乗算器451,452,…,45N−1には、それぞれ、乗算係数C,C3,…,C2N−3が与えられている。他方、第2サブ帯域成分用の乗算器461,462,…,46N−1には、それぞれ、第2サブ帯域成分x1,x2,…,xN−1が入力し、且つ、これら乗算器461,462,…,46N−1には、それぞれ、乗算係数C2,C4,…,C2N−2が与えられている。加算器43は、乗算器451,…,45N−1,461,…,46N−1の全出力をベースバンド信号に加算して帯域拡張信号y(n)を生成する。
結果として、図18Gに例示されるように、帯域拡張信号y(n)の周波数スペクトルにおいて、第1サブ帯域成分と第2サブ帯域成分とが交互に配列した拡張帯域成分が形成されることとなる。
上記の通り、第4実施例の帯域拡張装置4は、第1拡張帯域処理部30Cおよび第2拡張帯域処理部50Cがそれぞれフィルタバンク351〜35N−1および521,…,52N−1を有するので、高品質で自然な周波数スペクトルを持つ帯域拡張信号y(n)を生成することが可能である。
5.適用例
上記第1〜第4実施例の帯域拡張装置1〜4を種々の機器に適用することができる。図19A〜図19Cは、帯域拡張装置1の適用例を概略的に示す図である。図19Aを参照すると、帯域拡張装置1(または帯域拡張装置2〜4)は、音声信号処理部60とD/A変換器(DAC)61との間に接続されている。音声信号処理部60は、たとえば、PCM符号化などの音声信号処理を行うブロックである。帯域拡張装置1は、音声信号処理部60から供給された信号の周波数帯域を拡張し、その帯域拡張信号をD/A変換器61に供給することができる。
図19Bの例では、帯域拡張装置1(または帯域拡張装置2〜4)は、携帯電話機や光ディスク再生装置などに組み込まれたデコーダ62と、D/A変換器(DAC)63との間に接続されている。帯域拡張装置1は、デコーダ62から供給された復号化信号の周波数帯域を拡張し、その帯域拡張信号をD/A変換器63に供給することができる。
図19Cの例では、帯域拡張装置1(または帯域拡張装置2〜4)は、AMチューナやFMチューナなどのチューナ64と、D/A変換器(DAC)67との間に接続されている。チューナ64の出力は、低域通過フィルタ(LPF)65でフィルタリングを施され、A/D変換器(ADC)66でA/D変換される。帯域拡張装置1は、A/D変換器66のデジタル出力の周波数帯域を拡張し、その帯域拡張信号をD/A変換器67に供給する。
また、上記の第1〜第4実施例の帯域拡張装置1〜4の全構成または一部構成をハードウェアで実現してもよいし、或いは、CPUなどのプロセッサで実行されるプログラムで実現してもよい。
Claims (22)
- 入力信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張装置であって、
前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するベースバンド処理部と、
前記入力信号から拡張帯域成分を生成する拡張帯域処理部と、
前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合する混合部と、を備え、
前記拡張帯域処理部は、
前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するスペクトル反転部と、
前記反転信号にアップサンプリングを施すアップサンプラと、
前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成する帯域通過フィルタと、
を含むことを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項1記載の帯域拡張装置であって、
前記スペクトル反転部は、前記帯域信号のスペクトルを反転して前記反転信号を生成し、
前記拡張帯域処理部は、
前記入力信号にフィルタリングを施して第2周波数帯域に制限されたフィルタ信号を生成する第2の帯域通過フィルタと、
前記フィルタ信号にダウンサンプリングを施して前記帯域信号を得るダウンサンプラと、を含むことを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項2記載の帯域拡張装置であって、前記ダウンサンプラは、2のファクタで前記ダウンサンプリングを実行することを特徴とする帯域拡張装置。
- 請求項2または3記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルと前記周波数スペクトルの回帰曲線とを算出し、前記回帰曲線を用いて前記拡張帯域成分に乗じるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項4記載の帯域拡張装置であって、前記係数決定部は、前記回帰曲線を用いて、前記第2周波数帯域の高域端の周波数またはその近傍の周波数での第1のスペクトル値と、前記第2周波数帯域の低域端の周波数またはその近傍の周波数での第2のスペクトル値とを取得し、前記第1および第2のスペクトル値の比率を前記混合係数として算出することを特徴とする帯域拡張装置。
- 請求項2または3記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルを算出し、前記周波数スペクトルを用いて前記拡張帯域成分に乗じるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記係数決定部は、前記周波数スペクトルを用いて、前記第2周波数帯域の高域端の周波数またはその近傍の周波数での第1のスペクトル値と、前記第2周波数帯域の低域端の周波数またはその近傍の周波数での第2のスペクトル値とを取得し、前記第1および第2のスペクトル値の比率を前記混合係数として算出するものであり、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項2または3記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルを算出し、前記周波数スペクトルを用いて前記拡張帯域成分に乗じるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記係数決定部は、前記周波数スペクトルを用いて、前記第2周波数帯域の高域端の周波数を含む所定の狭帯域におけるスペクトル値の第1平均と、前記第2周波数帯域の低域端の周波数を含む所定の狭帯域におけるスペクトル値の第2平均とを算出し、前記第1および第2平均の比率を前記混合係数として算出するものであり、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項2または3記載の帯域拡張装置であって、前記拡張帯域成分に乗ずるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記係数決定部は、
前記第2周波数帯域の高域端の周波数を含む所定の狭帯域を通過帯域として有し前記入力信号にフィルタリングを施す第1帯域通過フィルタと、
前記第2周波数帯域の低域端の周波数を含む所定の狭帯域を通過帯域として有し前記入力信号にフィルタリングを施す第2帯域通過フィルタと、
前記第1帯域通過フィルタの出力の2乗和を所定のサンプル期間に亘って算出し且つ前記第2帯域通過フィルタの出力の2乗和を前記サンプル期間に亘って算出して前記2乗和の比率の平方根値を前記混合係数として算出する演算部と、を含み、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項1記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルと前記周波数スペクトルの回帰曲線とを算出し、前記回帰曲線を用いて前記拡張帯域成分に乗じるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記スペクトル反転部は、前記入力信号のスペクトルを反転して前記反転信号を生成し、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項9記載の帯域拡張装置であって、前記係数決定部は、前記回帰曲線を用いて、前記入力信号の周波数帯域の高域端の周波数またはその近傍の周波数での第1のスペクトル値と、前記入力信号の周波数帯域の低域端の周波数またはその近傍の周波数での第2のスペクトル値とを取得し、前記第1および第2のスペクトル値の比率を前記混合係数として算出することを特徴とする帯域拡張装置。
- 請求項1記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルを算出し、前記周波数スペクトルを用いて前記拡張帯域成分に乗じるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記スペクトル反転部は、前記入力信号のスペクトルを反転して前記反転信号を生成し、
前記係数決定部は、前記周波数スペクトルを用いて、前記入力信号の周波数帯域の高域端の周波数またはその近傍の周波数での第1のスペクトル値と、前記入力信号の周波数帯域の低域端の周波数またはその近傍の周波数での第2のスペクトル値とを取得し、前記第1および第2のスペクトル値の比率を前記混合係数として算出するものであり、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項1記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルを算出し、前記周波数スペクトルを用いて前記拡張帯域成分に乗じるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記スペクトル反転部は、前記入力信号のスペクトルを反転して前記反転信号を生成し、
前記係数決定部は、前記周波数スペクトルを用いて、前記入力信号の周波数帯域の高域端の周波数を含む所定の狭帯域におけるスペクトル値の第1平均と、前記入力信号の周波数帯域の低域端の周波数を含む所定の狭帯域におけるスペクトル値の第2平均とを算出し、前記第1および第2平均の比率を前記混合係数として算出するものであり、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項1記載の帯域拡張装置であって、前記拡張帯域成分に乗ずるべき混合係数を決定する係数決定部をさらに備え、
前記スペクトル反転部は、前記入力信号のスペクトルを反転して前記反転信号を生成し、
前記係数決定部は、
前記入力信号の周波数帯域の高域端の周波数を含む所定の狭帯域を通過帯域として有し前記入力信号にフィルタリングを施す第1帯域通過フィルタと、
前記入力信号の周波数帯域の低域端の周波数を含む所定の狭帯域を通過帯域として有し前記入力信号にフィルタリングを施す第2帯域通過フィルタと、
前記第1帯域通過フィルタの出力の2乗和を所定のサンプル期間に亘って算出し且つ前記第2帯域通過フィルタの出力の2乗和を前記サンプル期間に亘って算出して前記2乗和の比率の平方根値を前記混合係数として算出する演算部と、を含み、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項2または3記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号から第2の拡張帯域成分を生成する第2の拡張帯域処理部をさらに備え、
前記第2の拡張帯域処理部は、
前記拡張帯域処理部に含まれる前記ダウンサンプラから供給された前記帯域信号にアップサンプリングを施すアップサンプラと、
前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで、前記拡張帯域成分の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記第2の拡張帯域成分として生成する帯域通過フィルタと、を含み、
前記混合部は、前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分と前記第2の拡張帯域成分とを混合することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項14記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルと前記周波数スペクトルの回帰曲線とを算出し、前記回帰曲線を用いて、前記拡張帯域成分に乗ずるべき第1混合係数と前記第2の拡張帯域成分に乗ずるべき第2混合係数とを決定する係数決定部をさらに備え、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記第1混合係数を乗算し且つ前記第2の拡張帯域成分に前記第2混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項14記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルを算出し、前記周波数スペクトルを用いて、前記拡張帯域成分に乗ずるべき第1混合係数と前記第2の拡張帯域成分に乗ずるべき第2混合係数とを決定する係数決定部をさらに備え、
前記混合部は、前記拡張帯域成分に前記第1混合係数を乗算し且つ前記第2の拡張帯域成分に前記第2混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項2または3記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号から第2の拡張帯域成分を生成する第2の拡張帯域処理部をさらに備え、
前記拡張帯域処理部に含まれる前記帯域通過フィルタは、前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで、互いに異なる周波数帯域に制限された複数の第1サブ帯域成分を前記拡張帯域成分として生成するフィルタバンクで構成されており、
前記第2の拡張帯域処理部は、
前記拡張帯域処理部に含まれる前記ダウンサンプラから供給された前記帯域信号にアップサンプリングを施すアップサンプラと、
前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで、互いに異なる周波数帯域に制限された複数の第2サブ帯域成分を前記第2の拡張帯域成分として生成するフィルタバンクと、を含み、
前記混合部は、前記ベースバンド信号に前記第1サブ帯域成分と前記第2サブ帯域成分とを混合することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項17記載の帯域拡張装置であって、前記第1サブ帯域成分の周波数帯域と前記第2サブ帯域成分の周波数帯域とは連続することを特徴とする帯域拡張装置。
- 請求項17または18記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルと前記周波数スペクトルの回帰曲線とを算出し、前記回帰曲線を用いて、前記第1サブ帯域成分にそれぞれ乗ずるべき複数の第1混合係数と前記第2サブ帯域成分にそれぞれ乗ずるべき複数の第2混合係数とを決定する係数決定部をさらに備え、
前記混合部は、前記第1サブ帯域成分にそれぞれ前記第1混合係数を乗算し且つ前記第2サブ帯域成分にそれぞれ前記第2混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 請求項17または18記載の帯域拡張装置であって、前記入力信号の周波数スペクトルを算出し、前記周波数スペクトルを用いて、前記第1サブ帯域成分にそれぞれ乗ずるべき複数の第1混合係数と前記第2サブ帯域成分にそれぞれ乗ずるべき複数の第2混合係数とを決定する係数決定部をさらに備え、
前記混合部は、前記第1サブ帯域成分にそれぞれ前記第1混合係数を乗算し且つ前記第2サブ帯域成分にそれぞれ前記第2混合係数を乗算して当該乗算結果を前記ベースバンド信号に加算することを特徴とする帯域拡張装置。 - 入力信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張方法であって、
(a)前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するステップと、
(b)前記入力信号から拡張帯域成分を生成するステップと、
(c)前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合するステップと、を備え、
前記ステップ(b)は、
(b−1)前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するステップと、
(b−2)前記反転信号にアップサンプリングを施すステップと、
(b−3)前記ステップ(b−2)でアップサンプリングされた反転信号にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成するステップと、を含むことを特徴とする帯域拡張方法。 - 入力信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張処理をプロセッサに実行させる帯域拡張プログラムであって、
前記帯域拡張処理は、
前記入力信号にアップサンプリングを施し、当該アップサンプリングされた信号にフィルタリングを施すことで所定の周波数帯域に制限されたベースバンド信号を生成するベースバンド処理と、
前記入力信号から拡張帯域成分を生成する拡張帯域処理と、
前記ベースバンド信号に前記拡張帯域成分を混合する混合処理と、を備え、
前記拡張帯域処理は、
前記入力信号または前記入力信号から得られる帯域信号のスペクトルを反転して反転信号を生成するスペクトル反転処理と、
前記反転信号にアップサンプリングを施すアップサンプリング処理と、
前記アップサンプラの出力にフィルタリングを施すことで前記ベースバンド信号の周波数帯域の高域端の周波数と略同一の周波数を低域端とする周波数帯域の成分を前記拡張帯域成分として生成するフィルタ処理と、を含むことを特徴とする帯域拡張プログラム。
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