JP4623349B2 - 薄膜型ndフィルタおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学多層膜からなる薄膜型NDフィルタ(Neutral Density filter)およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
NDフィルタとは、光線の可視スペクトル域の各波長をほぼ均等に透過するような非選択性の透過率を有する光学フィルタであり、透過光量を減衰させる目的でデジタルカメラ等のレンズに装着して用いられる。例えば、晴天下などの光量が多い条件下において、レンズを絞り込んでも露出過多になってしまうときに、光量を制限してより低速でシャッタを切れるようにする場合や、絞りを開放したいがシャッタ速度を最高にしても露出過多になってしまうときに、光量を制限して絞りを開けられるようにする場合に使用されるのが一般的である。
【0003】
安価なNDフィルタには、ガラスに光吸収材料を添加したガラスフィルタ等があるが、これらは可視全域にわたって分光特性が均一となっていないなどの問題があった。そのような問題を解決するものとして、薄膜型のNDフィルタが知られている。例えば特開平5−93811号公報には、Ti,CrまたはNiのいずれかの金属膜と、MgF2 ,SiO2 のいずれかの誘電体膜とを積層したNDフィルタが開示されている。図9に、このNDフィルタの透過率および反射率の分光特性を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この薄膜型NDフィルタでは誘電体膜と金属膜を合計9層から13層も積層するために、反射率および透過率の可視域での分光特性が大きくばらつき易く、特性の制御が難しい。また、Ti,CrまたはNiからなる金属膜は、いずれも10nm以下の極薄いものであるうえ、透過率が膜厚に対して非常に敏感であるために膜厚制御が困難であり、この点でも再現性良く平坦な透過率の分光特性が得られないという問題があった。
【0005】
更に、特開平7−63915号公報においては、層数を7層程度とし、TiO,Ti2 O3 等のチタン酸化物を初めとする光吸収のある金属酸化物層を用いた多層膜構造のNDフィルタが開示されている。上記公報によれば、このNDフィルタは真空蒸着法により成膜される。しかしながら、このような中間膜としての金属酸化物層をスパッタ法で成膜するには、酸素の流量を微妙に制御する必要があり、膜材質の安定化が難しいといった問題があった。
【0006】
量産性の観点からは、ロールコーティング法を用いて、高分子等の可撓性基板の上にスパッタリングなどで多層膜を成膜することが最も好ましい。しかし、高分子基板とこのような材質の光学薄膜とは良好な密着性が得られないのが一般的である。そのうえ、スパッタリングで成膜された薄膜には大きな応力が発生し、より一層基板との界面に膜はがれやクラックが生じ易くなっていた。従って、ロールコーティング法でのNDフィルタの製造は困難であった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、再現性良く平坦な透過率分光特性が得られると共に量産性に優れた薄膜型NDフィルタ、およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による薄膜型NDフィルタは、基板上に、ニオブ(Nb)からなる層を含んで形成される光学多層体を備えている。
【0010】
本発明による薄膜型NDフィルタの製造方法は、ニオブ(Nb)からなる層を含む光学多層体を、ロールコーティング法を用いて基板上に形成するものである。
【0011】
本発明による薄膜型NDフィルタでは、光学多層体がニオブ(Nb)からなる層を含んで形成されているので、Nb層が比較的厚く形成されて所定の厚みとなる。
【0013】
本発明による薄膜型NDフィルタの製造方法では、ニオブ(Nb)からなる層を含む光学多層体をロールコーティング法により形成するようにしたので、効率よく製造される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表している。この薄膜型NDフィルタ10は、ハードコート層1aがコーティングされた基板1の上に光学多層体5を設けたものである。
【0016】
基板1は、材質を特に限定しないが、透明であるものが好ましい。また、量産性を考慮する場合には、後述するロールコーティングが可能となる可撓性を有する基板であることが好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むといった点においても優れている。ここでは、基板1として、厚みが188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いている。この他、基板1としては、PC(ポリカーボネート),PO(ポリオレフィン),PES(ポリエチレンサルファイド)などの高分子ポリマー系材料、薄膜ガラス等を用いてもよく、着色された基板あるいは可撓性を有しない基板であっても構わない。また、ハードコート層1aは、基板1をコーティングして基板強度を向上させるためのものであり、例えば、6μmの厚みのアクリル樹脂を用いる。但し、ハードコート層1aは必ずしも設けられる必要はない。
【0017】
光学多層体5は、基板1の上に設けられており、Nb層3および誘電体層4が交互に積層されたものである。その層数は任意であるが、ここではNb層3,誘電体層4が各2層、合計4層としている。
【0018】
Nb層3は、主にNbからなる薄膜である。Nb層3の入射波長に対する屈折率および吸収率は表1に示した値となり、これらに基づいて光学多層体5の光学設計が行われる。
【0019】
【表1】
【0020】
Nb層3の透過率は、層厚によって図2に示すように変化する。比較のため、同図にはCrおよびTiからなる薄膜の透過率も載せている。ある所定の透過率で比べると、Nb層3は常にCr,Ti膜よりも層厚が厚い。例えば、Nb層3について、透過率を40%とするには約16nm(Crでは約8nm、Tiでは約12nm),10%とするには約40nm(Crでは約20nm、Tiでは約30nm)の厚みで形成すればよい。一般に、このようなナノオーダーの薄膜を形成する際の厚み制御は困難であり、層厚はできるだけ大きいほうが精度よく、ばらつきの少ない形成が容易となる。従って、Nb層3は、形成時の膜厚制御が比較的容易であることから、透過率のばらつきが低減したものとなる。また換言すると、Nbは、制御性よく形成が可能な厚みの下限が他の材料と同じであるならば、得られる透過率の範囲がより広いので、光学多層体5を光学設計するうえで取り扱いやすいという利点がある。
【0021】
また、このようにNb層3において膜厚と同時に光学特性が良好に制御されるために、光学多層体5は、層数を多く重ねることなく所定の光学定数を得ることができる。
【0022】
誘電体層4は、誘電体からなる薄膜であり、Nb層3に対してできるだけ低い屈折率を有する材料で構成されていることが好ましい。そのような材料として、ここではSiO2 を用いているが、その他にも例えば、MgF2 ,Al2 O3 等を用いることができる。
【0023】
Nb層3と誘電体層4の各層の厚みは、これらの総体としての光学多層体5が、所定の透過率と反射率とを可視波長域(例えば400nm〜700nm程度)で一定に保つように、予め決められる。そのうちNb層3は、例えばAr雰囲気中におけるDCスパッタリング法により形成される。上述したように、Nb層3は比較的厚く成膜されるので、容易に所定の厚みに形成され、ばらつきも少ないものとなる。誘電体層4は、ArおよびO2 雰囲気中でACスパッタリング法により形成される。後者をAC(交流)で行うことで、反応性スパッタリングにおいて生じる異常放電が防止でき、安定な成膜が可能となる。なお、Nb層3および誘電体層4は、フィルム状の基板1の上にロールコーティング法を用いて形成することもできる。
【0024】
このような薄膜型NDフィルタ10は、光学多層体5がNb層3を含んで形成されているので、4層と少ない層数であっても、充分に平坦な透過率分光特性を有している。
【0025】
このように、本実施の形態においては、光学多層体5がNb層3を含んで形成されるようにしたので、Nb層3が所定の厚みで形成され、その光学設計上の自由度が大きくなると共に、少ない層数であっても良好な平坦性を備えた透過率分光特性を得ることが可能となる。また、製造工程においては、Nb層3は膜厚制御を容易に行うことができ、薄膜型NDフィルタ10の生産性が向上すると共に、所定の透過率分光特性を再現性良く得ることができる。また、光学多層体5が少ない層数で形成され、製造工程が簡素化される。
【0026】
[第2の実施の形態]
図3は本発明の第2の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表している。この薄膜型NDフィルタ20は、第1の実施の形態と同様の基板1の上に、密着層2を介して光学多層体7を設けたものである。なお、ここでは、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付すことにする。
【0027】
本実施の形態においても、基板1には厚みが188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いており、ハードコート層1aによりコーティングされている。
【0028】
この基板1の上には、光学多層体7が密着層2を介して設けられている。光学多層体7はNDフィルタとして機能する多層膜であればよく、その構成や材質を問わないが、ここではその一例として、金属層6および誘電体層4が交互に積層されたものについて説明する。金属層6は、例えばCr,Tiなどの金属により構成され、DCスパッタリング等により形成される。誘電体層4は、金属層6に対してできるだけ低い屈折率を有する誘電体材料で構成され、例えばArおよびO2 雰囲気中のACスパッタリング法により形成される。また、金属層6と誘電体層4の各層の厚みと層数は、総体としての光学多層体7における所望の光学特性との兼ね合いによって決定されるが、その層数はおおむね7層以上であり、層数が多いほど良好な光学特性が得られる場合が多い。
【0029】
また、ここでは、基板1と光学多層体7との間に、両者の密着性を向上させると共に光学多層体7に生じる応力を緩和するための密着層2が設けられている。密着層2は、例えば厚みが2nmのケイ素(Si)から構成される。密着層2の構成材料としてはSiが最も好ましいが、その他にもTiなどの化学的活性を発揮することができる材料を用いてもよい。また、その厚みは1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好ましい。厚みが1nm未満では、十分な密着性が得られずに、両者の界面に膜はがれやクラックを生じる虞がある。逆に、厚みが10nmより大きな値の場合には、透過率が減少し、可視光領域で平坦な光学的特性を得られない虞があるためである。こうした密着性、光学的特性を考慮すると、密着層2の厚みは2nm程度であることがより好ましい。なお、密着層2は、例えばDCスパッタにより形成される。
【0030】
このような薄膜型NDフィルタ20は、例えば以下のような方法で製造することができる。
【0031】
図4は本実施の形態においてNDフィルタ20の製造に用いる成膜装置の概略を示す構成図である。この成膜装置100は、一方のロールから他方のロールにフィルムを送る間にそのフィルムに加工を施す所謂ロールコーティング法により、フィルム状の基板1の上に成膜を行うものである。
【0032】
成膜装置100は、例えば、真空ポンプ(図示せず)に接続された排気バルブ42と、雰囲気ガスあるいは反応ガスを導入するためのガス導入バルブ43が設けられた真空チャンバ41によって、外気を遮断することが可能となっている。真空チャンバ41の内部には、フィルム状の基板1を連続して送り出すための送りロール44,ガイドロール45、および、送り出された基板1を巻き取るための巻取ロール46が設けられ、これらのロール間における基板1の走行経路を形成するためのキャンロール47a〜47eが、適宜に配置されている。更に、基板1の一面側に対して、その表面をクリーニングするためのプラズマ電極48と、その表面上に薄膜を形成するための蒸着源49Aおよび蒸着源49Bとが備えられている。なお、ここでは、蒸着源49Aは金属層6を、蒸着源49Bは誘電体層4を形成するようになっており、それぞれの材料に合わせてターゲットが選ばれている。また、形成された薄膜の透過率を確認するための光学モニタ50が、キャンロール47eの近くに付設されている。
【0033】
この成膜装置100では、送りロール44が回転して、これに巻回されている基板1が送り出されると、巻取ロール46が回転し、図のような経路をたどった基板1を巻き取るようになっている。その際、送りロール44と巻取ロール46の回転速度を調節することで、両者間における基板1の走行速度を制御することができる。また、一旦送りロール44から送り出された基板1は、キャンロール47a〜47c、ガイドロール45、キャンロール47d,47eを介して巻取ロール46に巻き取られる。この走行経路において、基板1はその一面側に順次以下の処理が施される。まず、プラズマ電極48が発生させるプラズマ放電によって、表面洗浄が行われる。次いで、ガイドロール45の蒸着源49Aと対向する位置に達すると、ここで、蒸着源49Aのスパッタリングによって金属層6が形成される。更に、ガイドロール45の蒸着源49Bと対向する位置に達すると、ここで、蒸着源49Bのスパッタリングによって誘電体層4が形成される。こうして基板1の上には金属層6と誘電体層4が順に形成されるが、それと共に、送りロール44と巻取ロール46を回転させながら成膜することによって、これらの層をフィルム基板1の上に連続的に形成することができる。なお、成膜された基板1は、光学モニタ50によって透過率が逐次監視されている。
【0034】
まず、厚さ188μmのPETフィルムからなる帯状の基板1を用意する。基板1の上には、予めハードコート層1aが均一に塗布されている。この基板1の上に、例えば、膜厚2nmのケイ素(Si)をDCスパッタにより成膜し、密着層2を形成する。
【0035】
次に、この基板1を成膜装置100の送りロール44に巻回し、基板1が上述の経路に沿って巻取ロール46まで走行するように調整する。更に、真空チャンバ41を密閉したうえで、その内部を排気バルブ42を通じて真空引きした後、ガス導入バルブ43を開いて例えばArやO2 などのガスを導入する。
【0036】
続いて、プラズマ電極48にプラズマ放電を発生させ、蒸着源49Aおよび蒸着源49Bにおいてそれぞれ蒸着を開始させておき、この状態で送りロール44と巻取ロール46を回転させ、送りロール44に巻回されている基板1を送り出すと同時に巻取ロール46で巻き取るようにする。その際、蒸着源49Aおよび蒸着源49Bへの投入電力は(蒸着速度を決めるため)、基板1の走行速度との間で適宜調整するようにする。
【0037】
これにより、基板1は、キャンロール47a,47bの間を走行するときに表面をプラズマ洗浄され、キャンロール47cを介してガイドロール45の蒸着源49Aと対向する位置に達すると、表面にスパッタリングにより金属層6が形成される。更に、ガイドロール45の蒸着源49Bと対向する位置に達すると、金属層6の上に、スパッタリングにより誘電体層4が形成される。この後、基板1は、光学モニタ50により透過率のチェックを受け、キャンロール47d,47eを介して巻取ロール46に巻き取られるが、収容される基板1には、一面側に密着層2,金属層6,誘電体層4が順に形成されている。
【0038】
その際、金属層6,誘電体層4は、スパッタリングによって成膜されるために通常ならば応力を生じるが、基板1との間に設けた密着層2が応力を緩衝し、その影響を防止するようになっている。また、予め密着層2を形成して金属層6,誘電体層4を形成することで、これらの基板1との間の密着性が高まる。よって、成膜された基板1では、ロールに巻き取られて曲げられたり張力を受けたりしても、金属層6,誘電体層4が剥がれたりクラックが生じることが少ない。
【0039】
所定長さの基板1について成膜し終えたら、一旦、プラズマ電極48,蒸着源49Aおよび蒸着源49Bを停止させ、送りロール44に基板1を巻き戻す。なお、送りロール44と巻取ロール46を互換できるようにし、巻取り後に取り外した巻取ロール46を送りロール44位置に取り付けるようにしてもよい。次に、プラズマ電極48,蒸着源49Aおよび蒸着源49Bを再び稼動させ、上記の工程と同様にして基板1上に金属層6,誘電体層4を形成する。こうして、金属層6および誘電体層4を一度に形成する工程を繰り返すことで、容易に金属層6と誘電体層4を所望の層数で周期的に積層することができる。
【0040】
これにより、基板1の一面側に、金属層6および誘電体層4が交互に積層された光学多層体7が形成され、薄膜型NDフィルタ20が製造される。
【0041】
本実施の形態においては、基板1と光学多層体7との間に密着層2を設けるようにしたので、光学多層体7を基板1に密着させ、脱落や剥離等を防止することができる。これに加えて、基板1を可撓性を有する高分子フィルムとしたので、従来は難しかったロールコーティング法を用いたスパッタ成膜による製造が実現可能となり、量産性を向上させることができる。
【0042】
[第3の実施の形態]
図5は本発明の第3の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表している。この薄膜型NDフィルタ30は、基板1と光学多層体5との間に密着層2を設けたことを除いて第1の実施の形態に係るNDフィルタ10と同様に構成されている。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施の形態においても、基板1には厚みが188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いており、ハードコート層1aによりコーティングされている。また、基板1の上に設けられる光学多層体5は、Nb層3および誘電体層4が交互に各2層、合計4層積層されたものである。第1の実施の形態で説明したように、Nb層3は比較的厚く成膜されるので、容易に所定の厚みに形成され、ばらつきも少ないものとなる。よって、この光学多層体5は、Nb層3において膜厚と同時に光学特性が良好に制御されるため、4層と少ない層数であっても、充分に平坦な透過率分光特性を有している。
【0044】
また、ここでは、基板1と光学多層体5との間に、両者の密着性を向上させると共に光学多層体5に生じる応力を緩和するための密着層2が設けられている。これにより、両者の界面に膜はがれやクラックが生じることが防止される。
【0045】
こうしたNDフィルタ30の製造には、ロールコーティング法を好適に用いることができる。その理由は、基板1が可撓性を有した高分子フィルムであり、密着層2が設けられているために、剥がれやクラックが少ない状態でロールに巻き取ることができるからである。また、Nb層3は、比較的厚く形成されるために成膜時の膜厚制御が容易であり、基板1が走行中であっても制御性が良く、層数が少ないために光学多層体5総体としての厚みのばらつきも少なくて済む。具体的には、光学多層体5を第2の実施の形態と同様にして成膜して、NDフィルタ30を製造することができる。その際、成膜装置100の蒸着源49AでNb3を、蒸着源49Bで誘電体層4を形成するようにすればよく、たった2回の操作で光学多層体5が形成される。
【0046】
このように、本実施の形態においては、NDフィルタ30において、光学多層体5がNb層3を含んで形成され、かつ、基板1と光学多層体5との間に密着層2を設けるようにしたので、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の効果が得られる。従って、両方の実施の形態における利点を兼ね備えたNDフィルタが得られる。
【0047】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0048】
(実施例1)
Nb層とSiO2 層からなる光学多層体が、Siからなる密着層を介して基板上に設けられた薄膜型NDフィルタについて、可視域での透過率が30%一定、かつ、反射率が2%以下となるように表1の光学定数を基に光学設計を行った。その結果得られた各層の層厚を表2に、光学特性の計算値を図6に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
続いて、表2の構成と厚みに従って薄膜型NDフィルタを作製し、その可視域における光学特性を測定した。その結果を図7に示す。図6と図7から、作製されたNDフィルタの光学特性はほぼ計算値に等しく、各層が設計通りの厚みで作製されたことがわかる。また、その透過率は30%を基準に±1.9%の範囲内にあって平坦性に優れ、反射率も1.9%以下と良好な特性を示した。更に表2と併せ見て、Nb層とSiO2 層からなるNDフィルタでは、このように良好な特性が高々4層積層するだけで得られることがわかった。
【0051】
(実施例2)
Cr層とSiO2 層からなる光学多層体が、Siからなる密着層を介して基板上に設けられた薄膜型NDフィルタについて、可視域での透過率が30%一定、かつ、反射率が2%以下となるように、表3に示したCrの光学定数を用いて設計を行った。その結果得られた各層の層厚を表4に、光学特性の計算値を図8に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
このようにして、本実施例においても通常の方法で光学設計すればよいことがわかる。但し、図8に示したように、このフィルタの透過率は波長550nmを中心にV字型に落ち込んでおり、可視域では30%を基準に±4%程度変動している。反射率も、500nm〜550nmの波長域で低く、波長がこの領域からずれるに従って高い値となっている。なお、本実施例ではCr層とSiO2 層を積層させたが、この場合、4層〜8層程度の層数では光学特性の計算値はほとんど変化がみられなかった。
【0055】
また、実施例1と実施例2との違いは、SiO2 層と組み合わせて光学多層体とする層(金属層)が、実施例1ではNbであり、実施例2ではCrを用いた点である。なお、これら実施例1,2のNDフィルタは密着層がない場合も、先に示したものとほぼ同様な光学特性を有する。よって、以上に示した実施例1と実施例2における光学特性の差異は、金属層の材料に起因したものと考えられ、両者を比較することにより、Nb層を含んだ光学多層体が優れた光学特性を少ない層数で実現可能であることが示唆される。
【0056】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、成膜装置100は蒸着源49A,蒸着源49Bが設けられ、一度のロールコーティングで2層形成するものとして説明したが、これに限らずロールコーティング法により成膜するものであればよく、蒸着源49の数や種類などは任意である。具体的には、光学多層体の層毎に成膜条件が異なる場合等に、1つの真空チャンバ31に蒸着源49を1つ設け、一回のロールコーティングで1層形成するようにしてもよい。逆に、1つの真空チャンバ31に蒸着源49を複数設けて、一回のロールコーティングで多層を形成するようにしてもよい。また、1つの真空チャンバ31を備える成膜装置100について説明したが、真空チャンバをいくつかの領域に仕切り、その間にフィルム状の基板を走行させるようにしてもよい。このような成膜装置100の変形により、より少ない工程で光学多層体を形成することが可能である。
【0057】
更に、上記実施の形態では、Nb層3または金属層6と誘電体層4とを成膜装置100を用いて形成するようにしたが、密着層2についても同様に蒸着源49を設け、成膜装置100内でロールコーティングによって形成するようにしてもよい。
【0058】
加えて、成膜装置100の蒸着源49はスパッタリング用のものとしたが、真空蒸着用のものとしても構わない。但し、スパッタリング法のほうが成膜速度が速く、均一な層を形成することができるので好ましい。このようにロールコーティング法やスパッタリング法を用いる場合には、上述したように本発明の密着層は応力を緩衝するので、予め基板上に設けることが好ましい。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄膜型NDフィルタによれば、基板上に、ニオブ(Nb)からなる層を含んで形成される光学多層体を備えるようにしたので、Nb層が所望の透過率を得るために比較的厚く形成されると共に光学多層体の層数が少なくて済む。従って、製造過程においてその膜厚制御が容易となり、成膜数が少ないために、生産性の向上を図ることができる。また同時に、光学特性の向上が可能となる。
【0060】
また、請求項5ないし請求項10のいずれか1項に記載のに記載の薄膜型NDフィルタによれば、光学多層体と基板との間に密着層が設けられているので、両者の界面における密着性が向上し、光学多層体の脱落や剥離等を防止することができる。また、それゆえにロールコーティング法を用いた成膜、特にスパッタリングによる光学多層体の形成が可能となり、量産性を向上させることができる。
【0061】
更に、請求項11ないし請求項17のいずれか1項に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法によれば、光学多層体をロールコーティング法を用いて形成するようにしたので、量産性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの構成図である。
【図2】図1の薄膜型NDフィルタに用いられるNb薄膜の透過率と膜厚の関係を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの構成図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る成膜装置を側面から見た概略図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの構成図である。
【図6】本発明の実施例1に係る薄膜型NDフィルタの分光特性の計算値を示した図である。
【図7】本発明の実施例1に係る薄膜型NDフィルタの分光特性の実測値を示した図である。
【図8】本発明の実施例2に係る薄膜型NDフィルタの分光特性の計算値を示した図である。
【図9】従来の薄膜型NDフィルタの分光特性を示した図である。
【符号の説明】
1…基板、2…密着層、3…Nb層、4…誘電体層、5,7…光学多層体、6…金属層、10,20,30…薄膜型NDフィルタ、41…真空チャンバ、42…排気バルブ、43…ガス導入バルブ、44…送りロール、45…ガイドロール、46…巻取ロール、47…キャンロール、48…プラズマ電極、49A,49B…蒸着源、50…光学モニタ、100…成膜装置
Claims (15)
- 基板と、
前記基板上にニオブ(Nb)からなる層を含んで形成された光学多層体と
を備えた薄膜型NDフィルタ。 - 前記光学多層体は、Nbからなる層と誘電体層とが周期的に積層されたものである
請求項1に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 前記誘電体層は二酸化ケイ素(SiO2 )からなる層である
請求項2に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 前記光学多層体は、前記Nbからなる層と誘電体層とが交互に2層づつ積層された合計4層で構成されている
請求項3に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 前記光学多層体は、前記基板上に密着層を介して形成されている
請求項1に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 前記密着層はケイ素(Si)からなる
請求項5に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 前記密着層は、1nm以上10nm以下の範囲の厚みである
請求項5に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 前記基板は、可撓性を有している
請求項5に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 前記基板は、高分子材料からなる
請求項8に記載の薄膜型NDフィルタ。 - ニオブ(Nb)からなる層を含む光学多層体を、ロールコーティング法を用いて基板上に形成する
薄膜型NDフィルタの製造方法。 - 前記光学多層体を、スパッタリング法により形成する
請求項10に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法。 - 前記光学多層体を形成する前に、前記基板上に密着層を形成する
請求項10に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法。 - 前記密着層をロールコーティング法を用いて形成する
請求項12に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法。 - 前記密着層をスパッタリング法により形成する
請求項12に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法。 - 前記密着層をケイ素(Si)により形成する
請求項12に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法。
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