JP4619475B2 - 酸化物超電導導体 - Google Patents
酸化物超電導導体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4619475B2 JP4619475B2 JP2000043316A JP2000043316A JP4619475B2 JP 4619475 B2 JP4619475 B2 JP 4619475B2 JP 2000043316 A JP2000043316 A JP 2000043316A JP 2000043316 A JP2000043316 A JP 2000043316A JP 4619475 B2 JP4619475 B2 JP 4619475B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- oxide superconducting
- intermediate layer
- oxide
- thickness
- base material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E40/00—Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
- Y02E40/60—Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment
Landscapes
- Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲げ剛性が向上され、薄型化が可能で、耐熱性に優れた酸化物超電導導体に関する。
【0002 】
【従来の技術】
近年になって発見された酸化物超電導体は、液体窒素温度を超える臨界温度を示す優れた超電導体であるが、現在、この種の酸化物超電導体を実用的な超電導体として使用するためには、種々の解決するべき問題点が存在している。その問題点の1つが、酸化物超電導体の臨界電流密度が低いという問題である。
【0003 】
前記酸化物超電導体の臨界電流密度が低いという問題は、酸化物超電導体の結晶自体に電気的な異方性が存在することが大きな原因となっており、特に酸化物超電導体はその結晶軸のa軸方向とb軸方向には電気を流し易いが、c軸方向には電気を流しにくいことが知られている。このような観点から酸化物超電導体を基材上に形成してこれを超電導導体として使用するためには、基材上に結晶配向性の良好な状態の酸化物超電導層を形成し、しかも、電気を流そうとする方向に酸化物超電導層の結晶のa軸あるいはb軸を配向させ、その他の方向に酸化物超電導体のc軸を配向させる必要がある。
【0004 】
また、酸化物超電導体を導電体として使用するためには、テープ状などの長尺の基材上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形成する必要がある。ところが、金属テープなどの基材上に酸化物超電導層を直接形成すると、金属テープ自体が多結晶体でその結晶構造も酸化物超電導体と大きく異なるために、結晶配向性の良好な酸化物超電導層は到底形成できないものである。
【0005 】
そこで本発明者らは、図4に示すような、基材1上にイットリウム安定化ジルコニア(以下、YSZと略称する)からなる多結晶薄膜2を形成し、この多結晶薄膜2上に酸化物超電導層3を形成することで、超電導特性の優れた酸化物超電導導体4を製造する試みを種々行っている。
そして、このような試みの中から本発明者らは先に、特開平4−329865号(特願平3−126836号)、特開平4−331795号(特願平3−126837号)、特開平4−90025号(特願平2−205551号)、特開平6−39368号(特願平4−13443号)、特開平6−145977号(特願平4−293464号)などにおいて、結晶配向性に優れた多結晶薄膜、およびそれを利用した酸化物超電導導体の特許出願を行っている。
【0006 】
これらの特許出願に記載された技術は、基材上にYSZの粒子を堆積させる際に、基材の斜め方向からイオンビームを照射すると、結晶配向性に優れた多結晶薄膜を形成することができるものである。
また、前記の特許出願に並行して本発明者らは、長尺または大面積の多結晶薄膜および酸化物超電導導体を製造するための研究を行なっているが、結晶配向性において更に優れた多結晶薄膜を製造する方法、および、多結晶薄膜上に超電導層を形成した場合に従来よりも更に優れた超電導特性を得ることを課題として研究を進めている。
【0007 】
【発明が解決しようとする課題】
通常、このような酸化物超電導層3の成膜法においては、結晶性の良好な薄膜を得るために、成膜雰囲気を高温度、たとえば、700〜800℃前後に保ちながら成膜されることがある。また、酸化物超電導層3の形成後に、高温における酸化処理を施して、成膜を完了する場合がある。
また、従来このような酸化物超伝導体4における基材1としては、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ等のニッケル合金などの各種金属材料などが用いられ、中でもハステロイ等の高硬度の耐熱合金がよく用いられている。このような耐熱合金は、耐熱性および耐食性が高く、また、高温酸素雰囲気下においてもその特性を維持することができるため、上述のような酸化物超電導導体の製造時の酸化物超電導層の成膜時や、ハンドリング時等においても、酸化物超電導層に与えるダメージが少なく、また、高硬度で機械的強度にも優れるという利点がある。
【0008 】
しかしながら、このような金属基材1の厚さを、100μm以下にして、酸化物超電導導体を作製する場合、上述の酸化物超電導層の成膜時や、ハンドリング時等の高温雰囲気下において、前記基材1に反りやねじれなどの歪みが生じてしまうという問題があった。このような歪みが基材1に生じると、その上に形成された中間層2にも歪みが生じてしまい、結果中間層2上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形成することができなくなってしまう。
また、上記酸化物超電導導体4にあっては、数μmの酸化物超電導層3に対して、基材1は通常数百μmとされ、オーバーオール(酸化物超電導導体全面積)あたりの臨界電流密度が低い。実用化に際しては、酸化物超電導導体4の薄型化をすすめ、前記オーバーオールあたりの臨界電流密度を高くすることが求められる。
【0009 】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、曲げ剛性に優れ、薄型化が可能で、高温雰囲気下においても歪みが生じることがなく、結晶配向性の良好な酸化物超電導層を有し、臨界電流密度の高く、オーバーオールあたりの臨界電流密度の高い酸化物超電導導体を得ることを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために、モリブデンまたはステンレス鋼からなる厚さ7〜30μm心材と、この心材の両面に熱間圧延圧着または加熱圧延圧接により形成されたニッケル合金からなる厚さ7〜30μmの表材とからなる厚さ21〜93μmの複合基材と、この複合基材上に形成され多数の結晶粒が結合されてなる多結晶薄膜からなる中間層と、この中間層上に形成された酸化物超電導体からなる酸化物超電導層とからなり、前記中間層が、該多結晶薄膜形成用のターゲットをスパッタして前記表材の成膜面に粒子堆積するとともに希ガスのイオンあるいは希ガスのイオンと酸素イオンの混合イオンのイオンビームを表材の成膜面に対して斜め方向から入射しつつ成膜するイオンビームアシスト法により形成された、粒界傾角30度以下の面内配向性の中間層であり、前記酸化物超電導層が前記中間層上にスパッタリング法あるいはレーザ蒸着法により積層された酸化物超電導層であることを特徴とする。
本発明において、前記心材と前記表材の厚さの比を2:1〜1:2とすることができる。
本発明において、前記心材と前記表材とを同一の厚さとすることができる。
本発明において、前記中間層をMgOまたはY 2 O 3 で安定化された安定化ジルコニアとすることができる。
【0011 】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明に係る酸化物超電導導体に用いられる複合基材の一例を示したものである。基材10は、心材11と、その一面に形成された表材12と、他面に形成された表材13の3層からなる積層複合材である。
上記心材11は、モリブデン(Mo)、ステンレス鋼(SUS)、白金(Pt)等の金属からなり、表材12、13とは異種金属であるものが好ましく用いられる。これらの金属としては、耐熱温度が600℃以上であることが好ましく、耐熱温度が600℃未満であると、酸化物超電導導体の製造時の高温条件下において、歪み等が生じ不都合となる。
【0012 】
また、心材11の厚さとしては7〜30μmであることが好ましい。厚さが、7μm未満であると、基材10とした場合に曲げ剛性が劣り歪みが生じやすく、この歪みが大きく作用して、基材10上に形成する酸化物超電導層の臨界電流密度が低下することとなり、30μm以上であると、基材10の厚さが大きく、酸化物超電導導体とした場合に薄型化できなくなる。
【0013 】
上記表材12および表材13は、同じ材料から構成されることが好ましく、ハステロイ等のニッケル合金が好ましく用いられる。ハステロイは、耐熱性および耐食性が高く、また高温酸素雰囲気下においてもその特性を維持することができる。
具体的には、ハステロイC276、インコネル、SUS等が用いられる。
また、これら表材12と表材13の厚さは等しく、心材11に対して対称に設けられることが好ましい。このように、同じ材料からなる表材12および13が心材11の両面に同形状で形成されたものであれば、酸化物超電導層の成膜時や、ハンドリング時等の高温条件下においても、上下の表材12および13が、心材11との熱膨張の差を吸収することができるため、基材10の湾曲等の歪みを防止することができる。
【0014 】
表材12及び13の厚さとしては、7〜30μmであることが好ましい。厚さが7μm未満であると、基材10とした時の曲げ剛性におとり歪みが生じやすく、この歪みが大きく作用して基材10上に形成する酸化物超電導層の臨界電流密度が低下することとなり、30μm以上であると、基材10の厚さが大きく、酸化物超電導導体とした場合に薄型化できなくなり不都合となる。
【0015 】
また、心材11と表材12および13の厚さの比は両者の材料によるが、2:1〜1:2とされるのが好ましい。この範囲を超えるものであると、歪みが生じやすくなり、この歪みが大きいと、この上に形成される酸化物超電導層の臨界電流密度が低下することとなって好ましくない。
【0016】
また、このような基材10の製造方法としては、通常用いられるクラッド法等の熱間圧延圧着方法が挙げられる。このクラッド法においては、心材11となる金属板の片面に表材12となる金属板を、他面に表材13となる金属板を重ねて、サンドイッチとし、これらを加熱加圧しながら、所望の厚さとなるように延伸して接合させることによって得ることができる。
【0017 】
このように、上述の心材11と、その両面に形成された表材12、13とからなる基材10であれば、その厚さを20〜90μmとすることができ、従来の基材よりも、薄型化することができる。
また、このように薄型化されたものであっても、この基材10は、耐熱性および耐食性に優れたニッケル合金と異種金属との積層構造となっているので、ニッケル合金など1種からなる基材に比べて、曲げ剛性が向上され、また、酸化物超電導層形成時等の高温条件下においても、曲げ剛性が高く、また、異種金属間の熱膨張の差も吸収されるので歪みが生じることがない。よって、基材10上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を得ることができる。
【0018 】
図2は、本発明の酸化物超電導導体の一例を示したものである。酸化物超電導導体40は、上述の基材10上に、多結晶薄膜からなる中間層20が形成され、この中間層20上に酸化物超電導体からなる酸化物超電導層30が形成されてなるものである。
【0019 】
中間層20に用いられる多結晶薄膜としては、安定化ジルコニア、好ましくは、MgOまたはY2O3で安定化された安定化ジルコニアからなるものが好ましい。
また、この多結晶薄膜としては、多数の結晶粒21、21…が結晶粒界を介して結合されてなり、基材10の成膜面と平行な面に沿う各結晶粒の同一結晶軸が構成する粒界傾斜が30度以下に形成されているものが好ましい。このような多結晶薄膜であれば、膜の結晶配向性が優れているので、上記中間層20として用いたときに、その上に、結晶配向性の優れた酸化物超電導層30を形成することができる。
【0020 】
このような多結晶薄膜は、基材10の表面に、基材表面の斜め方向、好ましくは、基材10の成膜面の法線に対して50〜60度の入斜角度で、希ガスのイオンあるいは希ガスのイオンと酸素イオンの混合イオンを照射しながら、上記多結晶薄膜の主構成粒子をスパッタリングにより堆積させるイオンビームアシスト法によって成膜されることが望ましい。このような多結晶薄膜であれば、結晶配向性に優れた中間層20を容易に形成することができる。
なお、前記イオンビームアシスト法については、本発明者らが先に出願している特開平4−329667号(特願平3−126838号)等に記載されているものと同様のものを用いることができ、ここではその詳細な説明を省く。
このときの中間層20の厚さは、0.5〜1.0μmが好ましい。
【0021 】
上記酸化物超電導層30は、酸化物超電導体からなり、具体的には、Y1 Ba2Cu 3O7-x、Y2Ba4 Cu8Oy、Y3Ba3 Cu6Oyなる組成、あるいは(Bi,Pb)2Ca 2Sr2C u3Oy、(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oyなる組成、あるいは、Tl2 Ba2Ca2Cu3Oy、Tl1Ba2Ca2Cu3Oy、Tl1Ba2Ca3Cu4Oyなる組成などに代表される臨界温度の高い酸化物超電導体からなる。
上記酸化物超電導層30は、前記中間層20上にスパッタリングやレーザ蒸着法などの成膜法により上記酸化物超電導体を積層することにより得ることができる。このときの酸化物超電導層30の厚さは0.5〜2.0μmである。
【0022 】
このような基材10上に、中間層20、酸化物超電導層30が形成された酸化物超電導導体40においては、基材10が100μm以下の薄膜状のものであるので、その厚さを、21〜93μmとすることができ、従来の数百μmの厚さの基材を用いた酸化物超電導導体よりも、オーバーオール(酸化物超電導導体全面積)あたりの臨界電流密度を高くすることができる。
【0023 】
このような成膜法で酸化物超電導層30を形成する際には、上述のように通常中間層20形成された基材10は高温条件下におかれる。この例においては、酸化物超電導導体40の基材として、上述の積層複合構造の基材10を用いたものであるので、基材10が100μm以下の薄膜状のものであっても、このような高温下において歪みが生じることなく、よって、この上に形成された中間層20に影響を与えることなく、この中間層22の結晶配向性が安定に保たれる。また、酸化物超電導層30は、安定した結晶配向性の中間層20上に形成されるので、積層される酸化物超電導体も中間層20の配向性に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化する。その結晶粒31のc軸は中間層20の上面に対して直角に配向され、その結晶粒31のa軸とb軸は先に説明した中間層20と同様に基材10上面と平行な面に沿って面内配向し、結晶粒31どうしが形成する粒界傾角が小さな値に形成されている。
【0024 】
よって基材10上に中間層20を介して形成された酸化物超電導層30は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層30を構成する結晶粒31の1つ1つにおいては、基材10の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、基材Aの長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られた酸化物超電導導体40は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、基材10の長さ方向に電気を流し易くなり、MgOやSrTO3の単結晶基板上に形成して得られる酸化物超電導導体と同じ程度の十分に高い臨界電流密度が得られる。
以上説明の如く、この酸化物超電導導体においては、基材として上述の積層構造の複合基材を用いているので、薄型化することができ、オーバーオールあたりの臨界電流密度を高くすることができる。
【0025 】
【実施例】
以下、本発明における実施例を示す。
(実施例)
1、基材10の製造
クラッド法により、Moからなる厚さ1mmのテープ材を、厚さ1mmのハステロイC276のテープ材でサンドイッチして、加熱圧延圧接して厚さ30μm、幅10mm、長さ1000mmのテープ状の基材10を得た。このとき、心材11、表材12、13の厚さがともに、10μmとなるよう延伸した。
【0026 】
2、中間層20の形成
上記基材10の表面を鏡面加工した後、図3に示す多結晶薄膜の製造装置を用いたイオンビームアシスト法により、上記基材10上にYSZからなる多結晶薄膜を成膜し中間層20を形成した。
図3に示す多結晶薄膜の製造装置は、テープ状の基材Aを支持するとともに所望温度に加熱または冷却することができるブロック状の基材ホルダ23と、基材ホルダ23上にテープ状の基材Aを送り出すための基材送出ボビン(送出装置)24と、多結晶薄膜が形成されたテープ状の基材Aを巻き取るための基材巻取ボビン(巻取装置)25と、前記基材ホルダ23の斜め上方に所定間隔をもって対向配置された板状のターゲット36と、このターゲット36の斜め上方においてターゲット36の下面に向けて配置されたスパッタビーム照射装置(スパッタ手段)38と、前記基材ホルダ23の側方に所定間隔をもって対向され、かつ、前記ターゲット36と離間して配置されたイオンソース39と、冷却装置Rが、真空排気可能な真空チャンバ(成膜処理容器)40に設けられた構成とされている。 また、前記成膜処理容器40には、この成膜処理容器40内を真空などの低圧状態にするためのロータリーポンプ51およびクライオポンプ52と、ガスボンベなどの雰囲気ガス供給源がそれぞれ接続されていて、成膜処理容器40の内部を真空などの低圧状態で、かつ、アルゴンガスあるいはその他の不活性ガス雰囲気または酸素を含む不活性ガス雰囲気にすることができるようになっている。
さらに、前記成膜処理容器40には、この成膜処理容器40内のイオンビームの電流密度を測定するための電流密度計測装置54と、前記容器40内の圧力を測定するための圧力計55が取り付けられている。
【0027 】
この製造装置を用い、この装置を収納した真空容器内を真空ポンプで真空引きして4.0×10-2Paに減圧するとともに、真空容器内にAr+O2 のガスをArにおいては16.0sccm、O2ガスにおいては、8.0sccmの割合で供給した。基材Aとして、表面を鏡面加工した上記テープ状の基材10を用い、ターゲットは、YSZ製のものを用いた。そして、Ar+イオンをスパッタビーム照射装置38からターゲット36に照射してスパッタするとともに、イオンソース39からのイオンビームの入射角度θを55度に設定し、Ar+ のイオンビームのエネルギーを200eV、イオン電流密度を100μA/cm2に設定して 基材10上にイオンビーム照射を行ない、基材10を基材ホルダ23に沿って一定速度で移動させながら基材10上に厚さ800nmのYSZからなる多結晶薄膜を形成した。このとき、成膜時の基材10および中間層20の温度を100℃にそれぞれ制御した。
【0028 】
3、酸化物超電導層30の形成
ついで、中間層20上にレーザ蒸着装置を用いてY0.7Ba1.7Cu3.0O7-xからなる酸化物超電導層を形成した。また、蒸着処理室の内部を25Paに減圧し、レーザ蒸着を行なった。その後、500℃で60分間、酸素雰囲気中において熱処理した。
この酸化物超電導テープ導体を液体窒素により冷却し、中央部の幅10mm、長さ10mmの部分について4端子法により臨界温度と臨界電流密度の測定を行なった結果を求めた。
【0029 】
この結果、得られた酸化物超電導導体の厚さは、1.0μmとなり、酸化物超電導導体における面内配向性は、15°であり、得られた酸化物超電導層23の臨界電流密度は、2.0×105A/cm2であった。
【0030 】
(実施例2)
基材10の厚さを60μm(心材11、表材12、13の厚さがともに20μm)とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の酸化物超電導導体を得た。
【0031 】
(比較例1)
基材Aとして、厚さ100μmのハステロイC276のテープ材を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の酸化物超電導導体を得た。
(比較例2)
基材Aとして、厚さ60μmのハステロイC276のテープ材を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2の酸化物超電導導体を得た。
【0032 】
これらの実施例1、2および比較例1、2の酸化物超電導導体について、曲げによる歪みを与え、この歪み破壊による臨界電流密度の変化について試験を実施した。
直径10mm、20mmのパイプにそれぞれの酸化物超電導導体を巻き付け後、酸化物超電導テープ導体を液体窒素により冷却し、中央部の幅10mm、長さ10mmの部分について4端子法により臨界温度と臨界電流密度の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0033 】
【表1】
【0034 】
このように、実施例1、2の基材を用いて作製した酸化物超電導導体においては、従来のものより薄型化されたものであったが、酸化物超電導層30の結晶配向性も良好で、臨界電流密度も高かった。また、曲げによる歪みによる臨界電流密度の低下も、比較例のものよりも小さく、曲げ剛性に優れるものであることがわかる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の酸化物超電導導体は、基材として、モリブデンまたはステンレス鋼からなる厚さ7〜30μm心材と、この心材の両面に熱間圧延圧着または加熱圧延圧接により形成されたニッケル合金からなる厚さ7〜30μmの表材とからなる厚さ21〜93μmの複合基材を用いているので、薄型化が可能で、しかも高い曲げ剛性を有するものである。
また、上記複合基材は、高温条件下においても歪みが生じることがないものであるので、本発明の酸化物超電導導体は、臨界電流密度が高く、またその密度オーバーオールあたりの臨界電流密度も高いものとなる。
更に、先の複合基材上に形成され多数の結晶粒が結合されてなる多結晶薄膜からなる中間層と、この中間層上に形成された酸化物超電導体からなる酸化物超電導層とからなり、前記中間層が、該多結晶薄膜形成用のターゲットをスパッタして前記表材の成膜面に粒子堆積するとともに希ガスのイオンあるいは希ガスのイオンと酸素イオンの混合イオンのイオンビームを表材の成膜面に対して斜め方向から入射しつつ成膜するイオンビームアシスト法により形成された、粒界傾角30度以下の面内配向性の中間層であり、前記酸化物超電導層が前記中間層上にスパッタリング法あるいはレーザ蒸着法により積層された酸化物超電導層であるので、イオンビームアシスト法により形成された面内配向性の優れた多結晶薄膜の上に形成された優れた臨界電流密度の酸化物超電導層であっても、心材と表材が上述の厚さの範囲であり、各厚さの比が上述の範囲であれば、歪が生じ難く、酸化物超電導層の臨界電流密度低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の複合基材の一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の酸化物超電導導体の一例を示す断面斜視図である。
【図3】 実施例において使用した酸化物超電導導体の中間層を形成するための装置の一例を示した構成図である。
【図4】 従来の酸化物超電導導体の一例を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
10…基材、11…心材、12、13…表材、
20…中間層、30…酸化物超電導層、40酸化物超電導導体
Claims (4)
- モリブデンまたはステンレス鋼からなる厚さ7〜30μm心材と、この心材の両面に熱間圧延圧着または加熱圧延圧接により形成されたニッケル合金からなる厚さ7〜30μmの表材とからなる厚さ21〜93μmの複合基材と、この複合基材上に形成され多数の結晶粒が結合されてなる多結晶薄膜からなる中間層と、この中間層上に形成された酸化物超電導体からなる酸化物超電導層とからなり、
前記中間層が、該多結晶薄膜形成用のターゲットをスパッタして前記表材の成膜面に粒子堆積するとともに希ガスのイオンあるいは希ガスのイオンと酸素イオンの混合イオンのイオンビームを表材の成膜面に対して斜め方向から入射しつつ成膜するイオンビームアシスト法により形成された、粒界傾角30度以下の面内配向性の中間層であり、前記酸化物超電導層が前記中間層上にスパッタリング法あるいはレーザ蒸着法により積層された酸化物超電導層であることを特徴とする酸化物超電導導体。 - 前記心材と前記表材の厚さの比が2:1〜1:2とされたことを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体。
- 前記心材と前記表材とが同一の厚さとされてなることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導導体。
- 前記中間層が、MgOまたはY 2 O 3 で安定化された安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物超電導導体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000043316A JP4619475B2 (ja) | 2000-02-21 | 2000-02-21 | 酸化物超電導導体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000043316A JP4619475B2 (ja) | 2000-02-21 | 2000-02-21 | 酸化物超電導導体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001236834A JP2001236834A (ja) | 2001-08-31 |
JP4619475B2 true JP4619475B2 (ja) | 2011-01-26 |
Family
ID=18566251
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000043316A Expired - Fee Related JP4619475B2 (ja) | 2000-02-21 | 2000-02-21 | 酸化物超電導導体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4619475B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4507564B2 (ja) * | 2002-12-09 | 2010-07-21 | セイコーエプソン株式会社 | 圧電体デバイスの製造方法と液体吐出ヘッドの製造方法と液体吐出装置の製造方法 |
JP4716324B2 (ja) * | 2005-12-26 | 2011-07-06 | 古河電気工業株式会社 | 超電導体用基材およびその製造方法 |
JP4732162B2 (ja) * | 2005-12-27 | 2011-07-27 | 株式会社フジクラ | 酸化物超電導導体とその製造方法 |
JP5474339B2 (ja) | 2008-11-28 | 2014-04-16 | 住友電気工業株式会社 | 超電導線材の前駆体の製造方法、超電導線材の製造方法 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3587956B2 (ja) * | 1997-06-10 | 2004-11-10 | 古河電気工業株式会社 | 酸化物超電導線材およびその製造方法 |
JP3771012B2 (ja) * | 1997-09-02 | 2006-04-26 | 株式会社フジクラ | 酸化物超電導導体 |
JP4316070B2 (ja) * | 1999-10-07 | 2009-08-19 | 古河電気工業株式会社 | 高強度配向多結晶金属基板および酸化物超電導線材 |
-
2000
- 2000-02-21 JP JP2000043316A patent/JP4619475B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001236834A (ja) | 2001-08-31 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1982830B1 (en) | Clad textured metal substrate for forming epitaxial thin film thereon and method for manufacturing the same | |
US7858558B2 (en) | Superconducting thin film material and method of manufacturing the same | |
JP4359649B2 (ja) | 多結晶薄膜とその製造方法及び酸化物超電導導体 | |
EP2028289A1 (en) | Textured substrate for epitaxial film formation and surface improving method of textured substrate for epitaxial film formation | |
JP2009507358A (ja) | 高温超電導ワイヤ及びコイル | |
JPH113620A (ja) | 酸化物超電導線材およびその製造方法 | |
JP4716324B2 (ja) | 超電導体用基材およびその製造方法 | |
JP5799081B2 (ja) | 単層コーティングによる酸化物厚膜 | |
JP2006286212A (ja) | 酸化物超電導用高強度多結晶金属基板とそれを用いた酸化物超電導線材 | |
JP3568561B2 (ja) | 安定化金属層を備えた酸化物超電導導体の構造 | |
JP4619475B2 (ja) | 酸化物超電導導体 | |
US6500568B1 (en) | Biaxially textured metal substrate with palladium layer | |
JP2003529201A (ja) | 長寸の超伝導構造とその製造方法 | |
EP2000566A2 (en) | Interlayer of orientational substrate and orientational substrate for forming epitaxial film | |
JP5624839B2 (ja) | 酸化物超電導導体用基材及びその製造方法と酸化物超電導導体及びその製造方法 | |
JP5411958B2 (ja) | エピタキシャル膜形成用配向基板及びその製造方法 | |
JP3565881B2 (ja) | 安定化材複合型超電導導体およびその製造方法 | |
JPH0421597A (ja) | 酸化物超電導導体用基材 | |
JPH1153967A (ja) | 配向性多結晶基材と酸化物超電導導体およびその製造方法 | |
JP2012022882A (ja) | 酸化物超電導導体用基材及びその製造方法と酸化物超電導導体及びその製造方法 | |
JP2000109320A (ja) | 酸化物超電導体用金属基板及びその製造方法 | |
JP2005113220A (ja) | 多結晶薄膜及びその製造方法、酸化物超電導導体 | |
JP5452216B2 (ja) | 3回対称MgO膜及び4回対称MgO膜の成膜方法 | |
JP2813287B2 (ja) | 超電導線材 | |
EP1662514A1 (en) | Process for producing oxide superconductive wire |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20061128 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20090306 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090526 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090724 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100727 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20100927 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20101019 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20101027 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131105 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131105 Year of fee payment: 3 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |