しかしながら、インクジェット方式では、図15に示したように、吐出ヘッド内の液状材料から分離される液滴110が尾を曳き(図15(b),(c)参照)、尾の部分が液滴(以降「主液滴111」と表記する)から分離して微小液滴(以降「副液滴112」と表記する)が発生する場合があった(図15(d),(e),(f)参照)。副液滴112は主液滴111より重量が軽いことから主液滴111より飛行速度が遅いため、主液滴111より遅れて基板面に着弾し、目標とする着弾位置から大幅にずれた位置に副液滴112が着弾する可能性が高く、非処理領域に隣接する処理対象領域に着弾する場合もあった。処理対象領域に着弾した副液滴112は、部分的に保護膜を形成し、当該部分の処理を妨げていた。例えば、所定の領域に絶縁層形成処理を行うために非処理領域にレジスト膜を形成する場合では、絶縁層を形成する領域に、副液滴112によるレジスト膜が部分的に形成され、レジスト膜が形成され部分には絶縁層が形成されないため、当該部分で短絡が発生する可能性があった。また、突発的に液滴110の飛行経路が変わって着弾した場合や、吐出ノズルの縁などに付着した液体が脱落して落下した場合などにも、目標とする着弾位置からずれた位置に液状材料が付着することで、同様の問題が発生する可能性があった。
そこで、本発明は、非処理領域を覆う膜パターンを形成するための液滴の一部分が、処理対象領域に付着することを抑制できる、膜パターン形成方法、及び弾性表面波デバイスの製造方法、並びに弾性表面波デバイス、弾性表面波発振装置、及び電子機器を実現することを目的とする。
本発明による膜パターン形成方法は、液状材料の液滴を吐出ノズルから吐出する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルを基板に対向させ、液滴吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させると共に、基板に向けて連続的又は間欠的に液滴を吐出することで、基板上に液状材料から成る、所定形状の膜パターンを形成する膜パターン形成方法であって、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルから基板に向けての液滴吐出を実行する吐出走査工程と、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルから基板に向けての液滴吐出を実行しない移動走査工程とを有し、基板面は、膜パターンを形成する塗布領域と、液状材料が付着することが禁止された塗布禁止領域とを含み、吐出走査工程においては、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させないことを特徴とする。
吐出ノズルから吐出された液滴の一部が分離して、複数の液滴となる可能性がある(分離した基の液滴を「主液滴」、分離した液滴の一部を「副液滴」と表記する)。副液滴は主液滴に比べて重量が軽いため飛行速度が遅くなることから、液滴の着弾目標位置から離れた位置に着弾する可能性が高い。吐出走査工程において、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させると、吐出ノズルが塗布領域に対向している間に塗布領域に向けて吐出した液滴の一部が副液滴となり、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向した時点で、基板に着弾する可能性がある。即ち、吐出ノズルを対向させた塗布禁止領域に副液滴が着弾する可能性がある。また、吐出ノズルの縁などに付着した液体が脱落して落下した場合などにも、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している間に落下し着弾することで、塗布禁止領域に液状材料が付着する可能性がある。
本発明の方法によれば、吐出走査工程においては、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させないことから、吐出走査工程において、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させることがある方法に比べて、塗布禁止領域に液滴が着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
本発明による膜パターン形成方法は、液状材料の液滴を吐出する吐出ノズルを複数備えた液滴吐出ヘッドの吐出ノズルを基板に対向させ、液滴吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させると共に、基板に向けて連続的又は間欠的に液滴を吐出することで、基板上に液状材料から成る、所定形状の膜パターンを形成する膜パターン形成方法であって、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルから基板に向けての液滴吐出を実行する吐出走査工程と、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルから基板に向けての液滴吐出を実行しない移動走査工程とを有し、基板面は、膜パターンを形成する塗布領域と、液状材料が付着することが禁止された塗布禁止領域とを含み、吐出走査工程においては、当該吐出走査工程の間に液滴を吐出する吐出ノズルを、塗布禁止領域に対向させないことを特徴とする。
本発明の方法によれば、1回の吐出走査工程において、当該吐出走査工程の間に液滴を吐出する吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させないことから、吐出走査工程において、当該吐出走査工程の間に液滴を吐出する吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させることがある方法に比べて、塗布禁止領域に液滴が着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
この場合、膜パターン形成方法は、塗布禁止領域に隣接する塗布領域に向けて液滴を吐出する場合の吐出走査工程における、相対的移動の移動方向は、液滴を吐出する対象の塗布領域に隣接する塗布禁止領域に向かう方向ではないことが好ましい。
この方法によれば、塗布禁止領域に向かって相対的移動しながら塗布禁止領域に隣接する塗布領域に向けて液滴を吐出する場合、塗布領域の塗布禁止領域に接する端の近傍に着弾する主液滴から分離した副液滴は、主液滴より重量が軽いため飛行速度が遅いことから、主液滴より遅れて着弾し、塗布領域と隣接する塗布禁止領域との境を越えて、塗布禁止領域に着弾する可能性がある。この方法によれば、このような可能性を排除して、塗布禁止領域に副液滴が着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
この場合、膜パターン形成方法は、相対的移動の方向が第1の相対的移動方向である吐出走査工程において、塗布禁止領域の第1の相対的移動方向の延長上に位置する塗布領域の部分が存在した場合には、第1の相対的移動方向とは異なる第2の相対的移動方向で吐出走査工程を、さらに実施することが好ましい。
この方法によれば、第1の相対的移動方向において、塗布禁止領域の延長上にあることから、第1の相対的移動方向においては、塗布禁止領域に吐出ノズルを対向させることなく液滴吐出対象とすることができない塗布領域であっても、第1の相対的移動方向とは異なる第2の相対的移動方向においては、当該塗布領域が塗布禁止領域の延長上にないような第2の相対的移動方向を選ぶことで、塗布禁止領域に吐出ノズルを対向させることなく液滴吐出対象とすることができる。
この場合、膜パターン形成方法は、吐出走査工程に続く移動走査工程において、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させる場合には、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している時点における相対的移動の移動方向が、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している時点直前の吐出走査工程における移動方向と異なることが好ましい。
この方法によれば、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している時点の相対的移動の方向が、直前の吐出走査工程の相対的移動の方向と異なることから、吐出走査工程の相対的移動の方向の延長線上に着弾する可能性が高い副液滴が、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向しても当該塗布禁止領域に着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
この場合、膜パターン形成方法は、膜パターンは、基板面を処理する前に当該処理を実行しない非処理面を覆うために形成するレジスト膜であることが好ましい。
この方法によれば、処理を実行する面に液滴が着弾してレジスト膜が形成されることで、当該部分の面の処理が阻害されることを抑制することができる。
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、液状材料の液滴を吐出ノズルから吐出する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルを、弾性表面波デバイスを形成するためのウェハに対向させ、液滴吐出ヘッドとウェハとを相対的に移動させると共に、ウェハに向けて連続的又は間欠的に液滴を吐出することで、ウェハ上に液状材料から成る、所定形状の膜パターンを形成する弾性表面波デバイスの製造方法であって、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルからウェハに向けての液滴吐出を実行する吐出走査工程と、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルからウェハに向けての液滴吐出を実行しない移動走査工程とを有し、ウェハ面は、膜パターンを形成する塗布領域と、液状材料が付着することが禁止された塗布禁止領域とを含み、吐出走査工程においては、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させないことを特徴とする。
吐出ノズルから吐出された液滴の一部が分離して、複数の液滴となる可能性がある(分離した基の液滴を「主液滴」、分離した液滴の一部を「副液滴」と表記する)。副液滴は主液滴に比べて重量が軽いため飛行速度が遅くなることから、液滴の着弾目標位置から離れた位置に着弾する可能性が高い。吐出走査工程において、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させると、吐出ノズルが塗布領域に対向している間に塗布領域に向けて吐出した液滴の一部が副液滴となり、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向した時点で、基板に着弾する可能性がある。即ち、吐出ノズルを対向させた塗布禁止領域に副液滴が着弾する可能性がある。また、吐出ノズルの縁などに付着した液体が脱落して落下した場合などにも、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している間に落下し着弾することで、塗布禁止領域に液状材料が付着する可能性がある。
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法によれば、吐出走査工程においては、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させないことから、吐出走査工程において、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させることがある方法に比べて、塗布禁止領域に液滴が着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
本発明による弾性表面波デバイスの製造方法は、液状材料の液滴を吐出する吐出ノズルを複数備えた液滴吐出ヘッドの吐出ノズルを、弾性表面波デバイスを形成するためのウェハに対向させ、液滴吐出ヘッドとウェハとを相対的に移動させると共に、ウェハに向けて連続的又は間欠的に液滴を吐出することで、ウェハ上に液状材料から成る、所定形状の膜パターンを形成する弾性表面波デバイスの製造方法であって、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルからウェハに向けての液滴吐出を実行する吐出走査工程と、相対的移動の移動方向の変更を伴わない連続する相対的移動の間に、吐出ノズルからウェハに向けての液滴吐出を実行しない移動走査工程とを有し、ウェハ面は、膜パターンを形成する塗布領域と、液状材料が付着することが禁止された塗布禁止領域とを含み、吐出走査工程においては、当該吐出走査工程の間に液滴を吐出する吐出ノズルを、塗布禁止領域に対向させないことを特徴とする。
吐出ノズルから吐出された液滴の一部が分離して、複数の液滴となる可能性がある。分離した液滴の一部である副液滴は、分離した基の液滴である主液滴に比べて重量が軽いため飛行速度が遅くなることから、液滴の着弾目標位置から離れた位置に着弾する可能性が高い。吐出走査工程において、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させると、吐出ノズルが塗布領域に対向している間に塗布領域に向けて吐出した液滴の一部が副液滴となり、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向した時点で、基板に着弾する可能性がある。即ち、吐出ノズルを対向させた塗布禁止領域に副液滴が着弾する可能性がある。また、吐出ノズルの縁などに付着した液体が脱落して落下した場合などにも、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している間に落下し着弾することで、塗布禁止領域に液状材料が付着する可能性がある。
本発明の方法によれば、1回の吐出走査工程において、当該吐出走査工程の間に液滴を吐出する吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させないことから、吐出走査工程において、当該吐出走査工程の間に液滴を吐出する吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させることがある方法に比べて、塗布禁止領域に液滴が着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、塗布禁止領域に隣接する塗布領域に向けて液滴を吐出する場合の吐出走査工程における、相対的移動の移動方向は、液滴を吐出する対象の塗布領域に隣接する塗布禁止領域に向かう方向ではないことが好ましい。
この製造方法によれば、塗布禁止領域に向かって相対的移動しながら塗布禁止領域に隣接する塗布領域に向けて液滴を吐出する場合、塗布領域の塗布禁止領域に接する端の近傍に着弾する主液滴から分離した副液滴は、主液滴より重量が軽いため飛行速度が遅いことから、主液滴より遅れて着弾し、塗布領域と隣接する塗布禁止領域との境を越えて、塗布禁止領域に着弾する可能性がある。この方法によれば、このような可能性を排除して、塗布禁止領域に副液滴が着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、相対的移動の方向が第1の相対的移動方向である吐出走査工程において、塗布禁止領域の第1の相対的移動方向の延長上に位置する塗布領域の部分が存在した場合には、第1の相対的移動方向とは異なる第2の相対的移動方向で吐出走査工程を、さらに実施することが好ましい。
この製造方法によれば、第1の相対的移動方向において、塗布禁止領域の延長上にあることから、第1の相対的移動方向においては、塗布禁止領域に吐出ノズルを対向させることなく液滴吐出対象とすることができない塗布領域であっても、第1の相対的移動方向とは異なる第2の相対的移動方向においては、当該塗布領域が塗布禁止領域の延長上にないような第2の相対的移動方向を選ぶことで、塗布禁止領域に吐出ノズルを対向させることなく液滴吐出対象とすることができる。
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、吐出走査工程に続いて、吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させる場合には、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している時点における相対的移動の移動方向が、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している時点直前の吐出走査工程における移動方向と異なることが好ましい。
この製造方法によれば、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向している時点の相対的移動の方向が、直前の吐出走査工程の相対的移動の方向と異なることから、吐出走査工程の相対的移動の方向に着弾する可能性が高い副液滴が、吐出ノズルが塗布禁止領域に対向しても当該塗布禁止領域に着弾する可能性を非常に小さくすることができる。
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、ウェハ上には、複数の弾性表面波デバイスを形成し、塗布領域の少なくとも一部を含む範囲であって、当該範囲に含まれる塗布領域に向けて液滴を吐出する吐出走査工程における相対的移動の移動方向に直角な方向の当該範囲の幅が、当該範囲に含まれる塗布領域の当該相対的移動の移動方向に直角な方向の幅であって、当該相対的移動の移動方向に延在する範囲には、塗布禁止領域が存在しないように、ウェハ上に、弾性表面波デバイスを形成することが好ましい。
この製造方法によれば、塗布領域に向けて液滴を吐出する吐出走査工程における相対的移動の移動方向の当該塗布領域の延長上には、塗布禁止領域が存在しない。従って、塗布領域に液滴を吐出した吐出ノズルを塗布禁止領域に対向させないように、塗布禁止領域に対して当該吐出ノズルを迂回させるなどの処置をとることは不要で、効率良く塗布走査工程を実施することができる。
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法において、膜パターンは、ウェハ面を処理する前に当該処理を実行しない非処理面を覆うために形成するレジスト膜であることが好ましい。
この製造方法によれば、処理を実行する面に液滴が着弾して、レジスト膜が形成され、当該部分の面の処理が阻害されることを抑制することができる。
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法において、処理は、弾性表面波デバイス基板面に形成された電極面に酸化膜を形成する陽極酸化処理であり、塗布禁止領域は、酸化膜を形成する電極面であることことが好ましい。
この製造方法によれば、陽極酸化処理を実行する電極面に液滴が着弾して、レジスト膜が形成され、電極面のレジスト膜が形成された部分の陽極酸化処理が阻害されることを抑制することができる。
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法において、非処理面は、弾性表面波デバイスを電気的に接続するための接続電極を含む領域であることことが好ましい。
この製造方法によれば、接続電極以外の領域にレジスト膜が形成されることを抑制しながら、接続電極を覆うレジスト膜を形成することができる。
本発明の弾性表面波デバイスは、前記請求項のいずれか1項に記載の弾性表面波デバイスの製造方法を用いて製造することを特徴とする。
本発明によれば、塗布禁止領域に膜パターンの材料が付着することで、膜パターンが形成されることが好ましくない領域に膜パターンが形成されることを抑制できる方法で製造することで、信頼性の高い弾性表面波デバイスを実現することができる。
本発明の弾性表面波発振装置は、前記した請求項に記載の弾性表面波デバイスを備えることを特徴とする。
本発明の構成によれば、信頼性の高い弾性表面波デバイスを有する、信頼性の高い弾性表面波発振装置を実現することができる。
本発明による電子機器は、前記した請求項に記載の弾性表面波発振装置を備えることを特徴とする。
本発明の構成によれば、信頼性の高い弾性表面波発振装置を搭載したことから、信頼性の高い電子機器を実現することができる。
以下、本発明に係る膜パターン形成方法、及び弾性表面波デバイスの製造方法、並びに弾性表面波デバイス、弾性表面波発振装置、及び電子機器の一実施形態について、図面を参照して、説明する。なお、以下の図面において、各部材及び各層を認識可能な大きさとするために、各部材及び各層の縮尺を適宜変更している。
(第1の実施形態)
最初に、本発明に係る弾性表面波デバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置について説明する。このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出(滴下)することにより弾性表面波デバイスの基板上に膜パターンを形成する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。図1は、液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
図1において、液滴吐出装置IJは、ベース12と、ベース12上に設けられ、弾性表面波デバイスを形成するウェハ1(図7参照)を支持する基板ステージ22と、ベース12と基板ステージ22との間に介在し、基板ステージ22を移動可能に支持する第1移動装置(移動装置)14と、基板ステージ22に支持されているウェハ1に対して液状材料の液滴を吐出可能な液滴吐出ヘッド2(図2参照)と、複数の液滴吐出ヘッド2を保持するヘッドユニット3(図2参照)を移動可能に支持する第2移動装置16と、液滴吐出ヘッド2の液滴の吐出動作を制御する制御装置23とを備えている。更に、液滴吐出装置IJは、ベース12上に設けられている重量測定装置としての電子天秤(不図示)と、キャッピングユニット25と、クリーニングユニット24とを有している。また、第1移動装置14及び第2移動装置16を含む液滴吐出装置IJの動作は、制御装置23によって制御される。
第1移動装置14はベース12の上に設置されており、Y方向に沿って位置決めされている。第2移動装置16は、2本の支柱16aを用いてベース12に対して立てて取り付けられており、ベース12の後部12aにおいて取り付けられている。第2移動装置16のX方向(第2の方向)は、第1移動装置14のY方向(第1の方向)と直交する方向である。ここで、Y方向はベース12の前部12bと後部12a方向に沿った方向である。これに対してX方向はベース12の左右方向に沿った方向であり、各々水平である。また、Z方向はX方向及びY方向に垂直な方向である。
第1移動装置14は、駆動部が例えばリニアモータによって構成され、2本のガイドレール14aと、このガイドレール14aに沿って移動可能に設けられているスライダー14bとを備えている。このスライダー14bは、ガイドレール14aに沿ってY方向に移動して位置決め可能である。
また、スライダー14bはZ軸回り(θZ)用のモータ14cを備えている。このモータ14cは、例えばダイレクトドライブモータであり、モータ14cのロータは基板ステージ22に固定されている。これにより、モータ14cに通電することでロータと基板ステージ22とは、θZ方向に沿って回転して基板ステージ22をインデックス(回転割り出し)することができる。すなわち、第1移動装置14は、基板ステージ22をY方向(第1の方向)及びθZ方向に移動可能である。
基板ステージ22はウェハ1を保持し、所定の位置に位置決めするものである。また、基板ステージ22は吸着保持装置(図示省略)を有しており、吸着保持装置が作動することにより、基板ステージ22の穴22aを通してウェハ1を基板ステージ22の上に吸着して保持する。
第2移動装置16は、駆動部がリニアモータによって構成され、支柱16aに固定されたコラム16bと、このコラム16bに支持されているガイドレール16cと、ガイドレール16cに沿ってX方向に移動可能に支持されているスライダー16dとを備えている。スライダー16dはガイドレール16cに沿ってX方向に移動して位置決め可能であり、ヘッドユニット3はスライダー16dに取り付けられている。
ヘッドユニット3は、揺動位置決め装置としてのモータ18a,18b,18c,18dを介してスライダー16dに取り付けられている。モータ18aを作動すれば、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、Z軸に平行に上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ18bを作動すると、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、Y軸回りのβ方向に沿って揺動して位置決め可能である。モータ18cを作動すると、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、X軸回りのγ方向に揺動して位置決め可能である。モータ18dを作動すると、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、Z軸回りのα方向に揺動して位置決め可能である。すなわち、第2移動装置16は、ヘッドユニット3をX方向(第1の方向)及びZ方向に移動可能に支持するとともに、このヘッドユニット3をX軸回り方向、Y軸回り方向、Z軸回り方向に揺動可能に支持する。
このように、図1のヘッドユニット3に保持された液滴吐出ヘッド2は、スライダー16dにおいて、X軸方向に直線移動して位置決め可能で、α、β、γに沿って揺動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pは、基板ステージ22側のウェハ1に対して正確に位置あるいは姿勢をコントロールすることができる。なお、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pには液滴を吐出する複数の吐出ノズル4が設けられている(図2(b)参照)。
電子天秤(図示省略)は、液滴吐出ヘッド2の吐出ノズルから吐出された液滴の一滴の重量を測定して管理するために、例えば、液滴吐出ヘッド2の吐出ノズルから、5000滴分の液滴を受ける。電子天秤は、この5000滴の液滴の重量を5000の数字で割ることにより、一滴の液滴の重量を正確に測定することができる。この液滴の測定量に基づいて、液滴吐出ヘッド2から吐出する液滴の量を最適にコントロールすることができる。
クリーニングユニット24は、液滴吐出ヘッド2の吐出ノズル等のクリーニングを製造工程中や待機時に定期的にあるいは随時に行うことができる。キャッピングユニット25は、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pが乾燥しないようにするために、デバイスを製造しない待機時にこの液滴吐出面2Pにキャップをかぶせるものである。
液滴吐出ヘッド2が第2移動装置16によりX方向に移動することで、液滴吐出ヘッド2を電子天秤、クリーニングユニット24あるいはキャッピングユニット25の上部に選択的に位置決めさせることができる。つまり、製造作業の途中であっても、液滴吐出ヘッド2をたとえば電子天秤の位置に移動することで、液滴の重量を測定できる。また液滴吐出ヘッド2をクリーニングユニット24上に移動することで、液滴吐出ヘッド2のクリーニングを行うことができる。液滴吐出ヘッド2をキャッピングユニット25の上に移動して、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pにキャップを取り付けることで乾燥を防止する。
つまり、これら電子天秤、クリーニングユニット24、およびキャッピングユニット25は、ベース12上の後端側で、液滴吐出ヘッド2の移動経路直下に、基板ステージ22と離間して配置されている。基板ステージ22に対するウェハ1の給材作業及び排材作業はベース12の前端側から行われるため、これら電子天秤、クリーニングユニット24あるいはキャッピングユニット25により作業に支障を来すことはない。
図1に示すように、基板ステージ22のうち、ウェハ1を支持する以外の部分には、液滴吐出ヘッド2が液滴を捨打ち或いは試し打ち(予備吐出)するための予備吐出エリア(予備吐出領域)27が、クリーニングユニット24と分離して設けられている。この予備吐出エリア27は、図1に示すように、基板ステージ22の後端部側においてX方向に沿って設けられている。この予備吐出エリア27は、基板ステージ22に固着され、上方に開口する断面凹字状の受け部材と、受け部材の凹部に交換自在に設置されて、吐出された液滴を吸収する吸収材とから構成されている。
次に、液滴吐出装置の液滴の吐出技術について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。このうち、ピエゾ方式は、液状材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状材料選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。
次に、液滴吐出ヘッド2、及び複数の液滴吐出ヘッド2を保持するヘッドユニット3の構造について説明する。図2(a)は、ヘッドユニットの平面図、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの平面図であり、図3(a)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視図であり、図3(b)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズル部の詳細構造を示す液滴吐出ヘッドの断面図である。
ヘッドユニット3は、図2(a)に示すように互いに同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド2を保持している。ここで、図2(a)は、ヘッドユニット3を基板ステージ22側から観察した図である。ヘッドユニット3には6個の液滴吐出ヘッド2からなる列が、それぞれの液滴吐出ヘッド2の長手方向がX軸方向に対して角度をなすように2列配置されている。また、液状材料を吐出するための液滴吐出ヘッド2は、図2(b)に示すように、それぞれが液滴吐出ヘッド2の長手方向に延びる2つの吐出ノズル列6、6を有している。1つの吐出ノズル列6は、それぞれ180個の吐出ノズル4が一列に並んだ列のことであり、この吐出ノズル列6、6の方向に沿った吐出ノズル4の間隔は、約140μmである。2つの吐出ノズル列6、6間で吐出ノズル4はそれぞれ半ピッチ(約70μm)ずれた位置に配置されている。各液滴吐出ヘッド2は吐出ノズル4がX軸方向に一定ピッチで連続するように配置されており、液滴吐出ヘッド2のX軸方向に対する角度を調整すれば、ピッチを変えることができる。
この液滴吐出ヘッド2及び吐出ノズル4の配列パターンは一例であり、各種の基板に対し液滴吐出ヘッド2を専用部品とすれば、当該基板に合致した吐出ノズルの配設をすれば良い。あるいは、6個の液滴吐出ヘッド2の列を一つの液滴吐出ヘッドで構成しても良い。すなわち、液滴吐出ヘッド2の個数や列数、さらに配列パターンは任意に設定できる。いずれにしても、12個の液滴吐出ヘッド2の全吐出ノズル4によるドットが、X軸方向において連続していればよい。
図3(a),(b)に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド2は、振動板33と、ノズルプレート34とを、備えている。振動板33と、ノズルプレート34との間には、液状材料タンク(図示省略)から孔37を介して供給される材料液が常に充填される液たまり35が位置している。また、振動板33と、ノズルプレート34との間には、複数のヘッド隔壁31が位置している。そして、振動板33と、ノズルプレート34と、1対のヘッド隔壁31とによって囲まれた部分がキャビティ30である。キャビティ30は吐出ノズル4に対応して設けられているため、キャビティ30の数と吐出ノズル4の数とは同じである。キャビティ30には、1対のヘッド隔壁31間に位置する供給口36を介して、液たまり35から材料液が供給される。
振動板33上には、それぞれのキャビティ30に対応して、振動子32が位置する。振動子32は、ピエゾ素子32cと、ピエゾ素子32cを挟む1対の電極32a、32bとから成る。この1対の電極32a、32bに駆動電圧を与えることで、対応する吐出ノズル4から液状材料が液滴となって吐出される。
上記した制御装置23(図1参照)は、ピエゾ素子32cへの印加電圧の制御、すなわち駆動信号を制御することにより、複数の吐出ノズル4のそれぞれに対して、液状材料の吐出制御を行う。具体的には、制御装置23は、吐出ノズル4から吐出される液滴の体積や、単位時間あたりに吐出する液滴の数、液滴同士の距離などを変化させることができる。例えば、列状に並ぶ複数の吐出ノズル4の中から、液滴を吐出させる吐出ノズル4を選択的に使用することにより、複数の液滴同士の距離を変化させることができる。なお、吐出ノズル4のそれぞれから吐出される液滴の体積は、1pl〜300pl(ピコリットル)の間で可変である。
図4は、ピエゾ素子32cに与える駆動信号の例と、駆動信号に対応する吐出ノズル内の液状材料の状態を示す模式図である。以下、この図4に基づいて、体積の異なる3種類の液滴である、微小ドット、中ドット、大ドットを吐出する原理について説明する。図4において、駆動波形[A]は駆動信号発生回路が生成する基本波形である。波形[B]は基本波形のPart1で形成されていて、メニスカス(液体の凹凸面)を揺動させ吐出ノズル4開口近傍の増粘した液体を拡散し、微小な液滴の吐出不良を未然に防止するために用いられる。B1はメニスカスが静定している状態であり、B2はピエゾ素子32cに緩やかに充電することでキャビティ30(圧力室)の体積を拡張しメニスカスを僅か吐出ノズル4内に引き込む動作を示している。
波形[C]は基本波形のPart2で形成されていて、微小ドットの液滴を吐出する波形である。まず静定している状態(C1)から急激にピエゾ素子32cを充電してメニスカスを素早く吐出ノズル4内に引き込む(C2)。次に一旦引き込まれたメニスカスが再び吐出ノズル4を満たす方向に振動を開始するタイミングに併せてキャビティ30を僅か縮小(C3)させることにより微小ドットの液滴が飛翔する。放電を途中休止した後の2度目の放電(C4)は吐出動作後のメニスカスやピエゾ素子の残留信号を制振させるとともに液滴の飛翔形態を制御する役目を果たしている。
波形[D]は基本波形のPart3で形成されていて、中ドットを吐出する波形である。静定状態(D1)から緩やかに大きくメニスカスを引き込み(D2)、メニスカスが再び吐出ノズル4を満たす方向に向かうタイミングに合わせて急激にキャビティ30を収縮(D3)させることで中ドットの液滴が吐出される。D4ではピエゾ素子に充電/放電することでメニスカスやピエゾ素子の残留振動を制振させている。波形[E]は基本波形のPart2とPart3とを組み合わせて形成されていて、大ドットの液滴を吐出するための波形である。まず、E1、E2、E3に示す過程で微小ドットの液滴を吐出し、微小ドット吐出後に僅かに残留するメニスカスの振動が吐出ノズル4内を液体で満たすタイミングに合わせて中ドットを吐出する波形をピエゾ素子32cに印加する。E4、E5の過程で吐出される液滴は中ドットよりも大きい体積であり、先の微小ドットの液滴と合わせてさらに大きい大ドットの液滴が形成される。このように駆動信号を制御することにより、微小ドット、中ドット、大ドットの体積の異なる3種類の液滴を吐出することができる。
次に、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子38(図6参照)について説明する。SAW共振子38は、ハウジング39にSAW共振片40(図5参照)を封入し、接着剤41で接着し、ボンディングワイヤ42で導通させて形成される(図6参照)。SAW共振子38が、弾性表面波発振装置に相当し、SAW共振片40が、弾性表面波デバイスに相当する。
図5は、SAW共振片の一例を示す平面図である。図5に示したSAW共振片40は、水晶、リチウムタンクレート、リチウムニオブベートなどの圧電体を矩形にカットしたものを基体(チップ)として構成されている。本実施形態の圧電体のチップ43は、平らな長方形にカットされており、その表面(主面)43aの中央に1組の電極44aおよび44bによって交叉指電極(IDT:Inter Digital Transducer)44が構成されている。また、このIDT44の長手方向の両側に格子状の反射器46aおよび46bが形成されている。チップ43の長手方向の縁に沿って、IDT44を形成する1組の電極44aおよび44bとそれぞれ繋がった導通用のボンディングランド45aおよび45bが、電極44aおよび44bと同じ素材を用いて形成されており、このボンディングランド45a,45bにワイヤーボンディングすることによって電気的な接続が得られるようになっている。ボンディングランド45a,45bが、接続電極に相当する。
電極44a,44b,反射器46a,46bおよびボンディングランド45a,45bは、導電性の素材、例えば、金、アルミニウム、アルミニウム銅合金などが通常用いられ、加工およびコストの点からアルミニウム系の素材が最も多く用いられている。図5に破線で示した領域47a,47bは、後述する陽極酸化レジスト膜を形成する領域であり、塗布領域に相当する。
図6は、SAW共振子の概要を示す断面図である。上述したように、SAW共振子38は、ハウジング39にSAW共振片40を封入して形成されている。ハウジング39は、SAW共振片40を支持するための金属部39bと、SAW共振片40を封止するケース39aと、封止ガラス39cとで構成されている。SAW共振片40は、これを支持するための金属部39bに接着剤41で固着されており、ケース39aと金属部39bとで形成される空間内に窒素雰囲気中で抵抗溶接などによって封止されている。SAW共振片40と電気的な接続を得るためのリード49が金属部39bの中の絶縁部すなわち封止ガラス39cを貫通しており、これらのリード49はSAW共振片40上のボンディングランド45a,45bとボンディングワイヤ42によって電気的に接続されている。
このように、SAW共振片40の周囲に空間を設け、SAW共振片40が周囲の環境から影響を受け難くしてある。ところが、SAW共振片40の周囲に形成された空間がSAW共振片40を封入する際に混入する可能性のあるSUS片あるいは半田くずなどの異物の移動可能なスペースとなってしまう。そして、このような異物がSAW共振片40の電極、例えば、IDT44に食い込む可能性がある。IDT44はミクロンオーダーの精度で配置されているため、電極間に上記のような導電性の異物が存在するとショートの原因となり、SAW共振子38の安定した動作が損なわれる。しかし、このような異物の多くはミクロンオーダーの小さなものであり、混入を完全に防ぐのは困難である。さらに、SAW共振子38は様々な用途に用いられ、実装中や運搬中の衝撃、あるいは実装された角度などによってこのような異物が移動してしまうので、SAW共振子38を組み立てたり、実装する段階で上記のようなトラブルを完全に防止することは難しい。
異物によるトラブルを防止するために、例えば、IDT44などを酸化けい素などによってコーディングすることも可能である。しかし、チップ上にコーティング層を形成することは共振周波数の変動やQ値の低下に繋がり、SAW共振子38の性能が損なわれてしまう。ところで、アルミニウム系の電極の表面に自然に形成される酸化膜は導電性が小さく、絶縁膜として機能させることができ、これらによってショートを防止することができる。しかし、自然に形成される酸化膜は厚みが10〜30オングストロームと薄いため強度が不足し、落下等の衝撃によって移動する異物から電極を完全に保護することは困難である。そこで、SAW共振片40のアルミニウム系電極を陽極酸化することによって、膜厚が280オングストローム前後、あるいはこれより厚い酸化膜を電極の表面に形成し、異物によるトラブルを防止するようにしている。
図7は、複数のSAWパターンが形成されたウェハの平面図である。図7に示すような圧電体のウェハ51に複数のSAWパターン52が形成された状態で陽極酸化を行う。IDT44を構成する一対の電極44aおよび44bに陽極酸化を施すため、ウェハ51には、SAWパターン52に加え、陽極酸化用の電源と接続するターミナル(図示省略)と、ターミナルとIDT44の一方の電極44a及び44bとを繋ぐ接続線(図示省略)と、を設けてある。陽極酸化を行うことで、印加電圧に略比例した膜厚の酸化膜を電極の表面に形成することができる。
また、電極のうち、ボンディングランド45a,45bに相当する部分では、ボンディングワイヤ42とボンディングランド45a,45bとを低抵抗の状態で接続することが重要であり、ボンディングランド45a,45bには酸化膜が形成されないことが望ましい。そこで、ボンディングランド45a,45bを覆う領域47a,47bにはレジスト膜を形成して、酸化膜の厚みの増加を防止する。レジスト膜は、前述した液滴吐出装置IJを用いて、領域47a,47bにレジスト膜材料を吐出することで形成する。レジスト膜を形成する領域47a,47bが、膜パターンを形成する塗布領域に相当し、酸化膜を形成する対象であって、レジスト膜材料が付着することが好ましくない電極44a及び44bが、液状材料が付着することが禁止された塗布禁止領域に相当する。
ウェハ51上のSAWパターン52は、ボンディングランド45a,45bが図7に示したW軸方向に直線状に並ぶと共に、ボンディングランド45a,45bのW軸方向の延長上に、IDT44が位置しないように配置されている。なお、図7に示したウェハ51は、ウェハ51上に形成されたIDT44とボンディングランド45a,45bとの位置関係を明示するために、1枚のウェハ51上に40個のSAWパターン52が形成できるものを示している。
次に、ボンディングランド45a,45bを覆うレジスト膜を形成する工程について説明する。最初に本工程で用いるヘッドユニット53の構造について説明する。図8(a)は、ヘッドユニットの平面図であり、図8(b)は、吐出ノズルの位置関係を示す模式図である。
ヘッドユニット53は、図8(a)に示すように互いに同じ構造を有する2個の液滴吐出ヘッド2を保持している。ここで、図8(a)は、ヘッドユニット53を基板ステージ22側から観察した図である。2個の液滴吐出ヘッド2を区別するために、それぞれ液滴吐出ヘッドA、液滴吐出ヘッドBと表記する。液滴吐出ヘッドA,Bは、長手方向がX軸方向に平行に配置されている。液滴吐出ヘッドA,Bの吐出ノズル列6は、それぞれ180個の吐出ノズル4がX軸方向に一列に並んでいる。液滴吐出ヘッドA,Bの吐出ノズル列6を、それぞれ吐出ノズル列Aa、吐出ノズル列Ab、吐出ノズル列Ba、吐出ノズル列Bbと表記し、吐出ノズル列Aa、吐出ノズル列Ab、吐出ノズル列Ba、吐出ノズル列Bbの端(図8(a)に向かって右側の端)の吐出ノズル4を、それぞれ吐出ノズルAa1、吐出ノズルAb1、吐出ノズルBa1、吐出ノズルBb1と表記し、上記端からn番目の吐出ノズル4を、それぞれ吐出ノズルAan、吐出ノズルAbn、吐出ノズルBan、吐出ノズルBbnと表記する。
液滴吐出ヘッドAと液滴吐出ヘッドBとは、吐出ノズルAanと吐出ノズルBanとがX軸方向に約35μmずれるように構成されている。また、前述したように、液滴吐出ヘッド2における吐出ノズル4の間隔は、約140μmであり、2つの吐出ノズル列6、6間で吐出ノズル4はそれぞれ半ピッチ(約70μm)ずれた位置に配置されている。したがって、図8(b)に示すように、ヘッドユニット53においては、吐出ノズル列Aa、吐出ノズル列Ab、吐出ノズル列Ba、吐出ノズル列Bbを構成する720個の吐出ノズル4が、X軸方向に約35μmの間隔で連続するように配置されている。
図9は、レジスト膜が形成されたSAWパターンを示す平面図であり、図10は、ウェハに対するヘッドユニットの相対的移動経路を示す平面図である。図10に示したウェハ60は、4インチのウェハであり、ウェハ60上には、4000個から5000個のSAWパターン52が、図7に基づいて説明したウェハ51と同様の配列で形成されている。なお、図7のV軸方向が、図9,図10のX軸方向に、W軸方向がY軸方向にそれぞれ一致する。Y軸方向のSAWパターン52の並びを行、X軸方向のSAWパターン52の並びを列と表記する。
図9に示したSAWパターン52は、ウェハ60上で図10の最も上側に形成されたSAWパターン52の中の一つである。ボンディングランド45aを覆うレジスト膜57と、ボンディングランド45bを覆うレジスト膜58とが形成された状態を示している。レジスト膜57は、レジスト円列57a,57b,57c,57dで形成されており、各レジスト円列57a,57b,57c,57dは、それぞれレジスト膜材料の液滴が着弾した着弾滴が乾燥したレジスト円56が、一列に連なったものである。同様に、レジスト膜58は、レジスト円56が一列に連なった、レジスト円列58a,58b,58c,58dで形成されている。なお、図9では、レジスト膜57,58がレジスト円56の集合であることを明示するために、レジスト円56を円状に示してあるが、実際の着弾滴は互いに連なって、レジスト膜57,58は、着弾滴間の境目が明らかでない一様な膜になる。なお、ボンディングランド45a,45bに、レジスト膜57,58で覆われていない部分があるが、レジスト膜57,58を形成する範囲は、ワイヤーボンディングに充分な面積を確保できる範囲であればよく、ボンディングランド45a,45bの全面を覆うレジスト膜57,58を形成することは必須ではない。
ヘッドユニット53は、SAWパターン52に対して図9の上側から下側方向に相対的移動しながら、液滴を吐出する。ところで、液滴吐出ヘッドに形成された吐出ノズルは、全吐出ノズルを同一性能に形成することは困難であり、特に吐出ノズル列の端の方の吐出ノズルは性能のばらつきが大きくなる傾向がある。本実施形態のヘッドユニット53においては、両端の各15個の吐出ノズル4は使用せず、16番目から165番目までの吐出ノズル4を使用する。
吐出ノズルAb16は、ボンディングランド45aの一端近傍に達すると連続的な液滴吐出を開始し、ボンディングランド45aの他端近傍に達するまで継続する。液滴がボンディングランド45a上に着弾した着弾滴は互いに連結して、筋状のレジスト円列57cが形成される。吐出ノズルAa16は、吐出ノズル列AaとAbとの距離だけ吐出ノズルAb16より遅れて、ボンディングランド45aの一端に到達し、レジスト円列57cと同様にして、レジスト円列57aを形成する。同様に、続いてボンディングランド45aの一端に達した吐出ノズルBa16、吐出ノズルBb16から吐出された液滴で、レジスト円列57b,57dが形成される。レジスト円56は直径約50μmの円形状となり、中心距離35μm間隔で隣合うレジスト円列57a,57b,57c,57dは隣接する列同士が重なり合い、結合して乾燥し、レジスト膜57が形成される。
吐出ノズルAa17からAa19、吐出ノズルAb17,Ab18、吐出ノズルBa17からBa19、吐出ノズルBb17,Bb18は、レジスト膜を形成する領域に対向しないため、液滴吐出は行わない。吐出ノズルAa16,Ab16,Ba16,Bb16から液滴を吐出して、レジスト膜57を形成するのに並行して、吐出ノズルAa20,Ab19,Ba20,Bb19から液滴を吐出して、それぞれレジスト円列58c,58b,58d,58aを形成して、レジスト膜58を形成する。
また、吐出ノズルAa21,Ab20,Ba21,Bb20以降の各吐出ノズル4を使用して、X軸方向の同一の列に配列されたSAWパターン52(図7参照。図7におけるV軸方向がX軸方向に相当する)の中の19個のSAWパターン52において、ボンディングランド45a,45bに対してレジスト膜57及びレジスト膜58の形成を同時に実施する。従って、同一の列に隣接して配置された合計20個のSAWパターン52に対して、レジスト膜57及びレジスト膜58の形成を並行して実施することができる。図7に示したW軸方向の行方向に連なるSAWパターン52のボンディングランド45a,45bに対して、順次同様にレジスト膜57及びレジスト膜58の形成を実行する。このように、一回の吐出工程で、合計20行のSAWパターン52に対してレジスト膜57及びレジスト膜58の形成を実施する。
図10に矢印を付した直線で走査方向を示したY走査61において、上記した20行のSAWパターン52に対するレジスト膜57,58の形成を実施する。Y走査61に続くX走査62では、ヘッドユニット53をX軸方向に、SAWパターン52の行20行分移動させる。X走査62に続くY走査63においては、Y走査61と反対方向の相対的移動を行いながら、Y走査61と同様のレジスト膜57,58の形成を実施する。以降、X走査64、X走査66、X走査68では、X走査62と同様のヘッドユニット53の移動を実施し、Y走査65、Y走査69ではY走査61と同様にレジスト膜形成を実施し、Y走査67ではY走査63と同様にレジスト膜形成を実施し、ウェハ60の全面に形成されたSAWパターン52のボンディングランド45a,45bに対して、レジスト膜57,58を形成する。Y走査61、Y走査63、Y走査65、Y走査67、Y走査69が、吐出走査工程に相当し、X走査62、X走査64、X走査66、X走査68が、移動走査工程に相当する。
陽極酸化レジスト材料としては、フェノール樹脂等が一般的であり、特にノボラック系が好ましい。モノマーの状態で塗布した後、露光により重合させて硬化してもよいし、あらかじめ重合したポリマー状態で溶媒に溶解させた溶液を塗布してもよい。また、耐陽極酸化性を有するポリマーであれば、構造は何ら限定されるものではなく、あらゆる樹脂を適用可能である。具体的には、ポリエポキシ、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリアミドおよびポリカーボネート等のポリマーが挙げられる。また、これらのモノマーが、開始剤あるいはモノマー自身が熱または光等の刺激により重合反応を引き起こしてポリマーを形成するものであれば、同様に液状材料として使用することができる。
溶媒についても同様に、ポリマーあるいはモノマーを可溶な溶媒であれば何ら限定されるものではない。具体的にはプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、4−メチル−2−ペンタノン(MIBK)、シクロヘキサノン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PEGMEA)、2−メトキシエトキシエタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどの極性化合物、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトールなどのエーテル系化合物、さらにメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、α−テルピネオールなどのアルコール類を例示できる。工業用のシンナー等は多くのポリマーに適用可能である。
次に、レジスト膜57,58が形成されたウェハ60に陽極酸化処理を実施して、IDT44の表面に電極保護膜としての酸化膜を形成する。次に、レジスト膜57,58を剥離する。次に、ウェハ60をチップの形に切断して、SAW共振片40を形成する。
以上説明した、第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)レジスト膜57,58を形成するために液状のレジスト膜材料の液滴を吐出する吐出ノズル4は、酸化膜を形成するIDT44に対向することがないことから、吐出ノズル4から吐出された液状材料の一部が、IDT44に付着する可能性を極めて小さくすることができる。
(2)ウェハ51又はウェハ60上のSAWパターン52は、ボンディングランド45a,45bがW軸方向に直線状に並ぶと共に、ボンディングランド45a,45bのW軸方向の延長上に、IDT44が位置しないように配置されている。これによって、ボンディングランド45a,45bに向けて吐出されたレジスト膜材料の液滴の一部が、IDT44の上に着弾する可能性を極めて小さくすることができる。
(3)レジスト膜形成過程で、IDT44に対向する場合がある吐出ノズルAa17からAa19、吐出ノズルAb17,Ab18、吐出ノズルBa17からBa19、吐出ノズルBb17,Bb18などの吐出ノズル4は、レジスト膜を形成する領域に対向しないことから、液滴吐出は行わない。これによって、これらの吐出ノズル4から吐出されたレジスト膜材料の液滴の一部が、IDT44の上に着弾する可能性ほとんどなくすることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る膜パターン形成方法の第2の実施形態について説明する。本実施形態のSAW共振子を構成するSAW共振片は、第1の実施形態におけるSAW共振片と電極形状及びレジスト膜を形成する領域の形状が異なる。本実施形態で使用する液滴吐出方法や液滴吐出装置は、第1の実施形態における液滴吐出方法や液滴吐出装置と、基本的に同一である。第1の実施形態とは異なるSAW共振片及びレジスト膜形成工程について説明する。
図11(a)は、SAW共振片の一例を示す斜視図であり、図11(b)は、SAW共振子の概要を示す断面図である。図11(b)に示すように、SAW共振子70は、ハウジングにSAW共振片71を封入して形成される。図11(a)に示したSAW共振片71は、水晶、リチウムタンクレート、リチウムニオブベートなどの圧電体を矩形にカットしたものを基体(チップ)として構成されている。本実施形態の圧電体のチップ72は、平らな長方形にカットされており、その表面(主面)73の中央に1組の電極74aおよび74bによってIDT75が構成されている。また、このIDT75の長手方向の両側に格子状の反射器76aおよび76bが形成されている。IDT75を形成する1組の電極74aおよび74bは、一方の反射器76aの外側、すなわち、チップ72の縁側を通って、チップ72の端部72aに導かれ、若干面積の広くなった接続ランド77aおよび77bが形成されている。
電極74a,74b,反射器76a,76bおよび接続ランド77a,77bは、導電性の素材、例えば、金、アルミニウム、アルミニウム銅合金などが通常用いられ、加工およびコストの点からアルミニウム系の素材が最も多く用いられている。図11(a)に破線で示した領域79a,79bは、後述する陽極酸化レジスト膜を形成する領域であり、塗布領域に相当する。SAW共振片71が、弾性表面波デバイスに相当する。
SAW共振子70は、SAW共振片71の主面73の弾性表面波によって共振周波数を得ているため、SAW共振片71をSAW共振子70のハウジングに固定することが、共振周波数に影響を及ぼすことが確認されている。共振周波数に及ぼす影響は、固定方法によって異なり、共振周波数の変化が少ないSAW共振片71の取付方法として、本実施形態のSAW共振子70では、SAW共振片71の一端を固定する、いわゆる片持ちマウントが、採用されている。
図11(b)に示すように、SAW共振子70では、筒形で一方が開口となった金属製のケース81の中にSAW共振片71が収納されており、金属製のケース81の開口には、いわゆるハーメチック端子82が嵌め込まれて、これによってケース81に密封されている。このハーメチック端子82は、ガラス部83の外周に金属環84が設けられたものであり、ガラス部83を2本のリード85が貫通している。そして、これらのリード85のケース81内のリード端85c,85cがSAW共振片71の接続ランド77a,77bにそれぞれ接続されており、これらのリード85を介してハーメチック端子82(以降リード85も含めてプラグ体と呼ぶ)によりSAW共振片71はケース81内に片持ちマウントされている。
リード端85c,85cは、接続ランド77a,77bに固着剤86によって固着されており、この固着剤86は電気的な導通を得るために半田や導電性接着剤が用いられる。リード端85c,85cと接続ランド77a,77bとを低抵抗の状態で接続することが重要である。また、ケース81およびプラグ体の金属環84には、ケース内の気密性を保持できるようにプラグメッキ87およびケースメッキ88が施されており、これらのメッキがシール材として機能している。
図12は、複数のSAWパターンが形成されたウェハの平面図である。図12に示すような圧電体のウェハ90に複数のSAWパターン91が形成された状態で陽極酸化を行う。IDT75を構成する一対の電極74aおよび74bに陽極酸化を施すため、ウェハ90には、SAWパターン91に加え、陽極酸化用の電源と接続するターミナル(図示省略)と、ターミナルと電極74a及び74bとを繋ぐ接続線(図示省略)と、を設けてある。陽極酸化を行うことで、印加電圧に略比例した膜厚の酸化膜を電極の表面に形成することができる。
ここで、電極のうち、接続ランド77a,77b部分では、リード端85c,85cと接続ランド77a,77bとを低抵抗の状態で接続することが重要であり、接続ランド77a,77bには酸化膜が形成されないことが望ましい。そこで、接続ランド77a,77bを覆う領域78a,78bにはレジスト膜を形成して、酸化膜の厚みの増加を防止する。レジスト膜は、前述した液滴吐出装置IJを用いて、領域78a,78bにレジスト膜材料を吐出することで形成する。レジスト膜を形成する領域78a,78bが、膜パターンを形成する塗布領域に相当し、酸化膜を形成する対象であって、レジスト膜材料が付着することが好ましくない電極74a及び74bが、液状材料が付着することが禁止された塗布禁止領域に相当する。
また、SAW共振片71は、第1の実施形態で説明したハウジング39に、第1の実施形態で説明したSAW共振子38におけるSAW共振片40のように装着することも可能である。そのような装着方法においてボンディングランドとして使用できるように、本実施形態では、IDT75の根元部を覆う領域78c,78dにもレジスト膜を形成する。
このレジスト膜も、前述した液滴吐出装置IJを用いて、領域78c,78dにレジスト膜材料を吐出することで形成する。レジスト膜を形成する領域78c,78dが、膜パターンを形成する塗布領域に相当し、酸化膜を形成する対象であって、レジスト膜材料が付着することが好ましくない電極74a及び74bが、液状材料が付着することが禁止された塗布禁止領域に相当する。なお、連続する領域78a,78cが、前述した領域79aであり、連続する領域78b,78dが、前述した領域79bである。
ウェハ90上のSAWパターン91は、領域78a,78bが、図12に示したW軸方向に直線状に並ぶと共に、領域78a,78bのW軸方向の延長上に、IDT75が位置しないように配置されている。また、領域78c,78dが、図12に示したV軸方向に直線状に並ぶと共に、領域78c,78dのV軸方向の延長上に、IDT75が位置しないように配置されている。なお、図12では、SAWパターン91の領域78aと、当該SAWパターン91に隣接するSAWパターン91の領域78bとの間は省略して連続した領域として描いてある。同様に、隣接する領域78cと領域78dとも、連続した領域として描いてある。また、図12に示したウェハ90は、ウェハ90上に形成されたIDT75と領域79a,79bとの位置関係を明示するために、1枚のウェハ上に74個のSAWパターン91が形成できるものを示している。
次に、領域79a,79bにレジスト膜を形成する工程について説明する。最初に、ヘッドユニット53(図8参照)とウェハ90とを、図12のW軸方向に相対的移動させながら、領域78aと領域78bとに向けてレジスト膜材料の液滴を吐出し、領域78aと領域78bとにレジスト膜を形成する。このとき、領域78c,78dに向けての液滴吐出は実施しない。液滴吐出の方法は、第1の実施形態で説明した、領域47a,47bにレジスト膜材料を吐出することで、レジスト膜57とレジスト膜58とを形成する方法と同様の方法を用いる。次に、ヘッドユニット53とウェハ90とを、図12のV軸方向に相対的移動させながら、領域78cと領域78dとに向けてレジスト膜材料の液滴を吐出し、領域78a,78bにレジスト膜を形成する。なお、領域78a,78bにレジスト膜を形成する工程と、領域78c,78dにレジスト膜を形成する工程とのどちらを先に実行してもよい。また、領域78c,78dにレジスト膜を形成する工程において、領域78a,78bの一部であって、領域78c,78dのV軸方向延長上にある領域78a,78bの一部にも、液滴を吐出してもよい。V軸方向又はW軸方向に相対的移動を行いながら液滴を吐出する工程が、吐出走査工程に相当する。また、V軸方向とW軸方のどちらか一方が、第1の相対的移動方向に相当し、他方が、第2の相対的移動方向に相当する。
レジスト膜が形成されたウェハ90に陽極酸化処理を実施して、IDT75の表面に電極保護膜としての酸化膜を形成する。次に、レジスト膜を剥離し、次に、ウェハ90をチップの形に切断して、SAW共振片71を形成する。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加えて、以下の効果が得られる。
(1)最初に、ヘッドユニット53とウェハ90とを、W軸方向に相対的移動させながら、領域78a,78bに向けて液滴を吐出し、領域78a,78bにレジスト膜を形成し、次に、V軸方向に相対的移動させながら、領域78c,78dに向けてレジスト膜材料の液滴を吐出し、領域78a,78bにレジスト膜を形成する。これによって、W軸方向においては、塗布禁止領域であるIDT75の間に位置する領域78c,78dに向けて液滴を吐出する吐出ノズル4を、IDT75対向させることなく、領域78c,78dに向けて液滴を吐出させることができ、領域78c,78dに向けて吐出された液滴の一部がIDT75に着弾する可能性を極めて小さくすることができる。即ち、IDT75上の一部に陽極酸化レジスト膜が形成され、当該部分に絶縁膜としての陽極酸化膜が形成されないことから、当該部分でショートが発生する可能性を極めて小さくすることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電子機器について説明する。本実施形態の電子機器は、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明したSAW共振子を備えた電子機器である。本実施形態の電子機器の具体例について説明する。
図13(a)は、電子機器の一例である携帯電話の一例を示した斜視図である。携帯電話600は、液晶表示部601を備えている。また、携帯電話600には、回路基板が内蔵されており、回路基板には、通信回路の構成部品として、第1の実施形態または第2の実施形態で説明したSAW共振子が実装されている。
図13(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図13(b)において、携帯型情報処理装置700は、情報処理装置筐体703を有し、キーボードなどの入力部701と液晶表示部702とを備えている。また、情報処理装置筐体703には、回路基板が内蔵されており、回路基板には、タイマ回路の構成部品として第1の実施形態または第2の実施形態で説明したSAW共振子が実装されている。
図13(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。腕時計型電子機器800は、液晶表示部801を備えている。また、腕時計型電子機器800には、回路基板が内蔵されており、回路基板には、タイマ回路の構成部品として、第1の実施形態または第2の実施形態で説明したSAW共振子が実装されている。
第3の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)ショート防止の絶縁膜としての陽極酸化膜が形成されないことで、当該部分でショートが発生する可能性を極めて小さくすることができたSAW共振片40又は71を備えたSAW共振子38又はSAW共振子70を備えるため、信頼性の高い携帯電話600や、携帯型情報処理装置700や、腕時計型電子機器800を実現することができる。
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態の例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。以下のように実施することもできる。
(変形例1)前記実施形態では、液滴吐出ヘッド2は、それぞれ180個の吐出ノズル4からなる吐出ノズル列を2列備え、360個の吐出ノズル4を有していたが、液滴吐出ヘッドの有する吐出ノズルは、360個に限らず何個でもよい。また、吐出ノズル列も2列に限らない。
(変形例2)前記実施形態では、液滴吐出ヘッド2における吐出ノズル4のピッチ間隔は140μmであったが、吐出ノズル4のピッチ間隔は140μmに限らず、液滴吐出対象などに対応して、適切な吐出ノズルピッチ間隔の液滴吐出ヘッドを選ぶことができる。また、ヘッドユニット53における相対的移動方向と直角な方向の吐出ノズル4のピッチ間隔は35μmであったが、ピッチ間隔は35μmに限らず、液滴吐出対象などに対応して、適切な吐出ノズルピッチ間隔のヘッドユニットを選ぶことができる。
(変形例3)前記実施形態では、液滴が着弾した着弾粒径が約50μmとなる液滴を吐出する例について説明したが、液滴の大きさは、塗布領域の大きさ、形状や、吐出ノズルピッチ間隔に対応して、液滴吐出ヘッドが吐出可能な液滴の大きさの中から適宜選ぶことができる。
(変形例4)前記実施形態では、移動走査工程は吐出ノズル4がウェハに対向しない位置で実行していたが、移動走査工程において吐出ノズル4がウェハに対向しないことは必須ではない。移動走査工程において吐出ノズル4が塗布禁止領域に対向することがあってもよい。吐出ノズル4が塗布禁止領域に対向している時点における相対的移動の移動方向が、吐出ノズル4が塗布禁止領域に対向している時点直前の吐出走査工程における、当該吐出走査工程終了直前の移動方向と異なるようにすることで、直前の吐出走査工程において吐出された液滴の一部が、吐出ノズル4が対向する塗布禁止領域に着弾することを抑制することができる。
このようにすることで、移動走査工程において吐出ノズル4が塗布禁止領域に対向することがない位置まで、予め吐出走査工程において相対的移動をさせることが不要で、吐出走査工程における相対的移動距離を短縮して、工程に要する時間を短縮することができる。
(変形例5)前記実施形態では、IDT44を形成する1組の電極44a,44b、及びIDT75を形成する1組の電極74a,74bの両方の電極に陽極酸化膜を形成していたが、IDTを形成する1組の電極の両方の電極に陽極酸化膜を形成することは必須ではない。一方の電極に陽極酸化膜を形成することでも、1組の電極間の短絡を抑制することができる。
(変形例6)前記実施形態では、吐出走査工程は、一回の吐出走査工程でウェハの端から端まで相対的移動するものであったが、図14に示すような相対的移動を行う吐出走査工程であってもよい。図14に示した領域101は、第2の実施形態において図12に基づいて説明した、領域78a,b,c,dである。図14に示すように、領域78c,d及び領域78c,dに挟まれる領域78a,bの一部を領域101bと表記し、領域101bで2ヵ所に分割された、領域78a,bの領域101bに含まれない領域を、それぞれ領域101a,領域101cと表記する。
図14(a),(b)に示した吐出走査工程では、最初に、W軸方向に相対的移動して領域101aに向けて液滴を吐出し、次に、V軸方向に相対的移動して領域101bに向けて液滴を吐出し、次に、W軸方向に相対的移動して領域101cに向けて液滴を吐出することで、領域101全域に液滴を吐出する。領域101a,b,cの全域に向けて液滴を吐出するためには、図14(a)に矢印a,矢印cで示したように、並列する複数の吐出ノズル4を使用して1回の吐出走査工程で全域に向けて液滴を吐出してもよいし、図14(b)に矢印a,b、及び矢印c,dで示したように、吐出走査工程を繰返すことで、全域に向けて液滴を吐出してもよい。また、上記した吐出走査工程は、前述した第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、V軸方向又はW軸方向に連なる複数の領域101について、並列して実施してもよい。1個又は並列する複数の領域101全域に向けての液滴吐出が終了したところで、次の1個又は並列する複数の領域101に移動して、同様の吐出走査工程を繰返し、ウェハ上に形成されたすべての吐出領域に対して液滴吐出を実施する。V軸方向とW軸方のどちらか一方が、第1の相対的移動方向に相当し、他方が、第2の相対的移動方向に相当する。
図14(c)に示した吐出走査工程では、矢印c,dで示したように、V軸方向の相対的移動を繰返ことで、領域101の全域に向けての液滴吐出を実施する。この吐出走査工程は、前述した第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、V軸方向又はW軸方向に連なる複数の領域101について、並列して実施してもよい。1個又は並列する複数の領域101全域に向けての液滴吐出が終了したところで、次の1個又は並列する複数の領域101に移動して、同様の吐出走査工程を繰返し、ウェハ上に形成されたすべての吐出領域に対して液滴吐出を実施する。
図14(d)に示した吐出走査工程では、矢印cで示したようにV軸方向に相対的移動しながら、W軸方行に並列した吐出ノズルから液滴を吐出することで、領域101の全域に向けての液滴吐出を実施する。なお、領域101a,cの終端では相対的移動を一時停止して、一旦吐出走査工程を終了し、次の吐出走査工程を実施する領域101a,cまでは、移動走査工程を実施して相対的移動させる。一旦停止する時間は、遅れて着弾する副液滴が着弾できる程度の時間でよい。
1,51,60,90…基板又はウェハとしてのウェハ、2…液滴吐出ヘッド、2P…液滴吐出面、3,53…ヘッドユニット、4…吐出ノズル、6…吐出ノズル列、32c…ピエゾ素子、33…振動板、34…ノズルプレート、38,70…弾性表面波発振装置としてのSAW共振子、39…ハウジング、40,71…弾性表面波デバイスとしてのSAW共振片、44,75…IDT、44a,44b…塗布禁止領域としての電極、45a,45b…ボンディングランド、46a,46b…反射器、47a,47b…塗布領域としての領域、52,91…SAWパターン、56…レジスト円、57,58…レジスト膜、57a,57b,57c,57d…レジスト円列、58a,58b,58c,58d…レジスト円列、72…チップ、74a,74b…塗布禁止領域としての電極、75…IDT、76a,76b…反射器、77a,77b…接続ランド、78a,78b,78c,78d…塗布領域としての領域、79a,79b…塗布領域としての領域、81…ケース、101,101a,101b,101c…塗布領域としての領域、600…電子機器としての携帯電話、700…電子機器としての携帯型情報処理装置、703…情報処理装置筐体、800…腕時計型電子機器、IJ…液滴吐出装置。