JP4615887B2 - 繊維構造物の製造方法。 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維、布帛、糸、及びこれらの繊維、布帛、糸などで編成、織成等することによって二次加工された各種の繊維構造物製造方法に関するものである。
一般に、繊維、布帛、糸、及びこれらを用いて二次加工された繊維製品等の繊維構造物には、種々の機能や特性を具備させる技術が開発されており、近年では、電磁波遮蔽、抗菌性、耐熱性、導電性、紫外線吸収性等の機能を具備させることが試みられている。
たとえば電磁波遮蔽性については、下記特許文献1の従来技術には、「繊維に金属をメッキ、スパッタリング等し、衣料を構成する素材間に挿入したり、布帛を衣料の素地に取り付けたりすることが知られている。」ことが記載されている(特許文献1の明細書の[0005])。
特開2003−336166号公報
また、該特許文献1の同じ箇所には、関連する機能に関する事項として、「赤外線遮蔽性や紫外線遮蔽性を、繊維や繊維製品に付与する場合には、それぞれの波長の光を吸収する特性を有する化合物を繊維自体に練り込んだり、繊維や繊維製品に該化合物を含む溶液や分散液を含浸、塗布する方法が知られている。」ことも記載されている(明細書の[0005])。
ところが、メッキ、スパッタリング等を行うと、「繊維表面に金属光沢が生じ、基布の色相が限定されてしまい、さらに高温処理であるため、処理できる繊維の性質や形状が制限される」という問題点があり、その旨が上記特許文献1に記載されている(明細書の[0006])。また、化合物を繊維に混練する方法の問題点として「実質的には、合成繊維のみにしか対応できない」旨が記載され、さらに含浸や、塗布等の方法の問題点として、「溶剤を使用するため、環境に対する負荷の問題や、対象となる繊維が限定されるという問題がある」旨が記載されている(明細書の[0006])。
一方、抗菌性に関する技術としては、たとえば下記特許文献2が例示され、その従来技術には、種々の技術が開示されている。たとえば、合成繊維の製造段階で紡糸原料に抗菌剤を練り込む方法は、内添法と称され、下記特許文献3等が例示される。また、抗菌剤とバインダー樹脂とを含むコーティング剤を繊維に付着させる方法として、特許文献4が例示される。さらにバインダー樹脂を含まない抗菌剤処理液で繊維を処理する方法として、特許文献5が例示される。
特許第3401076 号公報 特開平3−84066 号公報 特開平4−194074号公報 特公平3−45142 号公報
しかし、特許文献3のような繊維の製造段階で紡糸原料に抗菌剤を添加する方法では、「樹脂内部に入った抗菌剤は全く効果が出ないばかりでなく、樹脂表面近傍の抗菌剤の多くは樹脂被覆により十分な抗菌効果を発揮できないこと、予備混練のため抗菌剤を分散した樹脂の熱履歴が重なり着色の原因となり易いこと、繊維が細かく抗菌剤粒子が比較的大きい場合或いは抗菌剤粒子の分散が悪い場合は、溶融紡糸段階で糸切れを起こすおそれがあること、抗菌効果を高める目的で抗菌剤を多く添加したときは、繊維の物理的性質が損なわれたり、繊維が不透明になったりし易く、逆に抗菌剤の添加量が少ないときは、抗菌効果が十分に発揮されないことがある」等の問題点が上記特許文献2の[0017]に記載されている。
また、特許文献4のようなバインダー樹脂を用いた後加工法では、「抗菌剤が樹脂に覆われて十分な抗菌効果が期待できないこと、繊維本来の風合いが損なわれること」等の問題点が上記特許文献2の[0018]に記載されている。
さらに、特許文献5のようなバインダー樹脂を用いない後加工法では、「接着性成分を有しないため繊維に対する固着力が不足し、一般的には耐洗濯性に欠ける」という問題点が上記特許文献2の[0019]に記載されている。
いずれにしても、上記のような従来の技術では、電磁波遮蔽、抗菌性等の種々の機能性を十分に発揮できるような繊維構造物は開発されておらず、また機能を発揮できないばかりでなく、それ以外の問題点も生じさせていたのである。
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、上記のような従来の問題点を生じさせるようなことがなく、電磁波遮蔽、抗菌性等の種々の機能性を十分に発揮させることのできる繊維構造物を提供することを課題とするものである。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、有機高分子材料からなる繊維構造物基材と、無機微粒子としての銀に変換される微粒子の前躯体であって、(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)銀、又はアセチルアセトン銀錯体のいずれかからなる微粒子の前躯体を溶解した超臨界二酸化炭素とを、25〜80℃、6〜50MPaの条件で接触させることによって、前記前駆体を繊維構造物基材内に注入した後、25℃以下の温度に繊維構造物基材を冷却し、その後、加熱処理することによって、前駆体を無機微粒子に変換して、繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に無機微粒子が注入、分散された繊維構造物を製造することを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、有機高分子材料からなる繊維構造物基材と、無機微粒子としての銀に変換される微粒子の前駆体であって、(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)銀、又はアセチルアセトン銀錯体のいずれかからなる微粒子の前躯体とを別々の高圧セルに収容し、前駆体が収容された高圧セルに超臨界二酸化炭素を供給して該前駆体を超臨界二酸化炭素中に溶解し、次に前駆体を溶解した超臨界二酸化炭素を、前記繊維構造物基材が収容された高圧セルに供給し、該繊維構造物基材に前記前駆体を溶解した超臨界二酸化炭素を、25〜80℃、6〜50MPaの条件で接触させることによって、前記前駆体を繊維構造物基材内に注入した後、25℃以下の温度に繊維構造物基材を冷却し、その後、加熱処理することによって、前駆体を無機微粒子に変換して、繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に無機微粒子が注入、分散された繊維構造物を製造することを特徴とする。
さらに請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の繊維構造物の製造方法において、繊維構造物基材が、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの少なくとも1種によって構成されていることを特徴とする。
これ以外にも、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の汎用エンジニアリングプラスチック、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、フッ素樹脂(PTFE、PCTFE、PVDFなど)などの、特殊エンジニアリングプラスチックを利用できるが、これらの混合物であるブレンドポリマーも使用できる。
機微粒子としてを用いることによって、紫外線の吸収性が生じる。また、電磁波遮蔽性、静電気防止効果が生ずる。ここで、電磁波の遮蔽性とは、電磁波を反射したり、渦電流に変えたりして母材を通過する電磁波のエネルギーを減衰する作用、効果を意味する。無機微粒子全般に生ずる効果としては、表面近傍の耐摩耗性、摺動性、硬度を向上させる効果がある。
「表面から100nmの深さまでの部分」としたのは、100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子を集中して分散させることにより、繊維構造物基材の表面強度を向上させることができ、また反射による電磁波遮蔽効果が良好となるからである。
さらに請求項記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の繊維構造物の製造方法において、繊維構造物基材中の無機微粒子の体積含有率が、0.001%以上50%以下であることを特徴とする。0.001%未満であると、たとえば曲げ弾性や表面強度などの力学的強度の向上が見られず、また電磁波遮蔽効果の向上が見られない可能性がある。また50%を超えると、過剰の無機物質の微粒子によって有機高分子材料が脆くなり、力学的特性が損なわれる可能性があるからである。ここで、「微粒子の繊維構造物基材に対する体積含有率」とは、微粒子が分散している部分のみの繊維構造物基材(繊維構造物基材を構成する有機高分子材料における一定の厚みを有する部分を想定している)の体積をV1 とし、その部分における無機物質の微粒子が占める全体積をV2 とした場合に、V2 /V1 ×100 (%)で表されるものをいう。
さらに請求項記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の繊維構造物の製造方法において、無機微粒子の粒子径が、1nm以上100nm以下であることを特徴とする。この無機微粒子は、繊維構造物基材を構成する有機高分子材料の補強材であるという側面も有し、その観点からすると、無機微粒子の径は小さい程、繊維構造物基材を構成する有機高分子材料との相互作用が強くなり、そのために有機高分子材料の流動性が少なくなり、結果として複合材料として強固な材料となる。一般に100nm以下の粒径のものがナノ粒子と称されており、ナノ粒子は、上記のような補強材としての観点からも優れた特性を有している。
また、ナノ粒子には、表面プラズモン効果が発現することが知られている。表面プラズモンとは、金属微粒子が異種材料内部に分散した場合、金属と母材との間に発生する電子のエネルギーを伝搬する電子の疎密波のことをいう。その特性は境界面の幾何学的特性に強く依存し、ナノサイズの微粒子の表面にプラズモン効果が発現し、特定の波長の光を吸収することが知られている。従って、微粒子の径を100nm以下とすることによって、紫外線吸収効果が一層良好になるのである。
高圧流体としては、種々のものが利用できるが、有機高分子材料に対して浸透性の優れた、亜臨界流体や超臨界流体を用いるのが好ましい。流体の種類としては、例えば二酸化炭素(臨界温度:31.1℃、臨界圧力:7.38MPa)、亜酸化窒素(臨界温度:36.4℃、臨界圧力:7.24MPa)、トリフルオロメタン(臨界温度:25.9℃、臨界圧力:4.84MPa)、窒素(臨界温度:―147℃、臨界圧力:3.39MPa)、又はそれらの内の二種類以上の混合物を利用できる。
さらに請求項記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の繊維構造物の製造方法において、無機微粒子の前駆体を繊維構造物基材に注入する際に、高圧流体とともに、繊維構造物基材又は前駆体の少なくともいずれかを溶解又は可塑化させうる溶剤を補助溶媒として添加することを特徴とする。補助溶媒が前駆体の良溶媒であれば、高圧流体中の前駆体の濃度を高めることによって好適に有機高分子材料に前駆体を注入することができ、また補助溶媒が有機高分子材料の良溶媒であれば、有機高分子材料の可塑化がより好適に進行することとなり、その結果、前駆体が有機高分子材料に注入され易くなるのである。従って、補助溶媒は有機高分子材料又は前駆体の少なくともいずれかに対する良溶媒であればよいが、双方に対する良溶媒であってもよい。
上述のように、本発明においては、有機高分子材料からなる繊維構造物基材内に、無機微粒子が注入、分散されているため、上記のような従来の種々の問題点を生じさせるようなことがなく、電磁波遮蔽、抗菌性等の種々の機能性を十分に発揮させることのできる繊維構造物を提供することができるという効果がある。
また、繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に、無機微粒子を注入、分散させるので、繊維構造物基材の表面の硬度が向上するという効果がある。
さらに、本発明の繊維構造物の製造方法においては、繊維構造物基材と、無機微粒子に変換される微粒子の前駆体を溶解した高圧流体とを接触させることによって、前記前駆体を繊維構造物基材に注入させることができ、その後に前記前駆体を無機微粒子に変換することで、繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に集中して無機微粒子を分散させることができ、それによって表面近傍における無機微粒子の濃度が高い繊維状構造物を提供でき、その結果、上記のような表面硬度の向上のみならず、微粒子の離脱を防止でき且つ反射による電磁波遮蔽効果を有する等の機能性が付与された繊維構造物を得ることができる。
さらに、有機高分子材料からなる繊維構造物基材と、無機微粒子に変換される微粒子の前駆体とを別々の高圧セルに収容し、前駆体が収容された高圧セルに高圧流体を供給して該前駆体を高圧流体中に溶解し、次に前駆体を溶解した高圧流体を、繊維構造物基材が収容された高圧セルに供給して両者を接触させて前記前駆体を繊維構造物基材に注入する場合には、高圧流体に溶解した前駆体を効率的に繊維構造物基材に接触させることができ、また余剰の前駆体が繊維構造物基材に不用意に接触して付着するのを防止することができる。しかも高圧セル内部の繊維構造物基材のみを取り替えることによって、最初に仕込んだ前駆体を次工程で有効に使用することができるという効果がある。
さらに、前駆体を繊維構造物基材に注入する際に、高圧流体とともに、繊維構造物基材又は前駆体の少なくともいずれかを溶解あるいは可塑化させうる良溶媒を補助溶媒として添加する場合には、繊維構造物基材の可塑化をより確実に進行させることができ、或いは前駆体をより好適に溶解させることができるので、繊維構造物基材への前駆体の注入をより確実に行うことができるという効果がある。
さらに、前駆体を繊維構造物基材に注入した後、注入時の処理温度より低い温度まで繊維構造物基材を冷却するので、繊維構造物基材の可塑化がある程度抑制され、すでに注入された前駆体が繊維構造物基材から不用意に離脱するのが防止されるという効果がある。
さらに、二酸化炭素のような常温常圧で気体である流体をプロセス溶媒として用いて処理するので、複合材料と溶媒としての二酸化炭素との分離が容易であり、プロセスの簡略化を図ることができるという効果がある。
さらに、微粒子の粒子径が1nm以上100nm以下である場合には、紫外線吸収効果が得られる他、吸収による電磁波遮断効果が一層良好になるという効果がある。
以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
(実施形態1)
本実施形態は、繊維構造物基材が有機高分子原料であるポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)で構成され、微粒子が銀で構成されている。繊維構造物基材としては、本実施形態では、平織、綾織等の一般的な織成法によって織成された布帛が用いられている。
銀の微粒子は、後述の高圧流体を利用した製造方法によって、繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に注入、分散されている。この銀の微粒子は、銀の錯体である(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)銀(以下、AgFODともいう)を高圧流体で溶解し、前記繊維構造物基材に接触させることによって前躯体であるAgFODを繊維構造物に注入し、その後にAgFODを銀の微粒子に変換することで、繊維構造物基材の表面から100nmの範囲内に銀の微粒子が注入、分散された繊維構造物が得られることとなる。
(実施形態2)
本実施形態は、繊維構造物基材がポリアクリロニトリルで構成されている。繊維構造物基材としては、実施形態1と同様の布帛を用いた。また、微粒子の種類、前躯体の種類等も実施形態1と同じである。本実施形態においても、銀の微粒子が高圧流体によって繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に注入、分散されている。
(実施形態3)
本実施形態は、繊維構造物基材がポリアミド系合成繊維で構成されている。繊維構造物基材の種類、微粒子の種類、前躯体の種類等も実施形態1と同じものを用いた。本実施形態においても、銀の微粒子が高圧流体によって繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に注入、分散されている。
(実施形態6)
本実施形態では、繊維構造物基材として、上記実施形態1乃至5の布帛に代えて糸を用いた。無機微粒子の前躯体としては上記実施形態1乃至3と同様に銀の有機金属錯体(AgFODやAg(acac)〔アセチルアセトン錯体〕等)を用いた。また糸の素材としてはPETを用いた。銀を注入した本実施形態の糸は、参考写真1に示すように灰色がかった褐色に着色された。
(実施形態7)
本実施形態では、繊維構造物基材として、上記実施形態1乃至5の布帛や糸に代えて、繊維製品の一例としての衣服を用いた。無機微粒子の前躯体としては上記実施形態1乃至3と同様に銀の有機金属錯体(AgFODやAg(acac)〔アセチルアセトン錯体〕等)を用いた。また衣服の素材としてはポリアクリロニトリル製のものを用いた。
(実施形態8)
本実施形態は、繊維構造物の製造方法の実施形態である。図1は、一実施形態としての繊維構造物の製造に用いる装置の概略ブロック図である。本実施形態の装置は、高圧ポンプ2、圧力計3、恒温槽4、背圧弁5、及び高圧セル6を具備している。本実施形態では繊維構造物基材として布帛の布片を用いた。
高圧ポンプ2は、高圧流体を高圧セル6へ供給するためのポンプである。本実施形態では、日本分光社製のプランジャー式の高圧ポンプを用いたが、これ以外にも例えば日本精密機器社製、日機装社製、富士ポンプ社製等の、プランジャー式或いはダイヤフラム式の高圧ポンプを一般的に使用することができる。また高圧ポンプ2には、高圧流体供給用のボンベ1が接続されている。本実施形態では高圧流体として二酸化炭素が用いられる。
圧力計3は、操作時の系内の圧力を検出し、表示するためのもので、計器内部の汚染を防止するために、高圧セル6の前段に設置するのが好ましい。例えば、長野計器社製、山崎計器社製などの圧力計が使用できる。なお、形式としては、ダイヤフラム式、ブルドン管式のものを使用できるが、汚染防止のためにはダイヤフラム式が好ましい。
恒温槽4は、高圧セル6の温度を精密に調整するためのもので、熱伝導用の媒体は、空気、水、オイル、エチレングリコール、砂、その他これらの混合物が使用可能である。オイル、砂は100℃以上の高温条件で有効であり、水、エチレングリコール、それらの混合物は100℃以下の低温条件に有効である。空気は、両方の範囲に有効に適用可能である。本実施形態では、精密な温度制御が可能なGL−サイエンス社製の空気循環式恒温槽を用いた。
背圧弁5は、高圧セル6内の圧力を一定に保つための弁であり、手動、あるいは自動の背圧弁が使用できる。例えば、AKICO社製、東洋高圧社製、日本分光社製などの背圧弁が使用できるが、減圧速度の微細な調整、圧力変動の低減などの観点から、自動制御式の背圧弁が好ましい。高圧セル6は、繊維構造物基材である布片8に無機微粒子の前駆体9を注入するための容器である。高圧セル内部には、布片8を固定するための架台と、セル内の流体を攪拌するための攪拌設備が具備されている。攪拌設備は、攪拌翼式、流体循環式の何れも使用できる。また、図示はされていないが、高圧セル6内部の状況を観察し易くするために、内部観察用の可視窓を取り付けても良い。
その他、本実施形態の装置では、各装置が耐圧性の配管で接続され、さらに、配管の経路の途中部分には、流体の流量調整や、流路の開閉のために耐圧バルブが適宜具備されている(耐圧バルブは、図面上、省略している)。例えば、スェッジロック社製や、オートクレーブ社製の耐圧バルブが使用できる。また耐圧性の構成機器の材質は特に限定されないが、SUS304、SUS316、SUS316L、ハステロイ、インコネル、モネル鋼等の耐圧、及び耐腐食性の材質であることが望ましい。
次に、この様な装置を用いて、銀の微粒子を具備した布帛(布片)を製造する方法の実施形態について説明する。
先ず、無機微粒子を注入、分散させるための布片8を高圧セル6内の材料固定用架台に固定し、無機微粒子の前駆体9と、攪拌用の攪拌子7とともに高圧セル6に封入する。本実施形態では、布片8の素材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。無機微粒子としては、生体に対する影響が少なくかつ電磁波遮蔽性及び導電性の付与が期待できる銀を選んだ。その銀の前駆体8として、銀の錯体である(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)銀(AgFOD)を用いた。
次に、ボンベ1から二酸化炭素を高圧セル6に供給し、高圧セル6内の残存空気をパージした後、高圧ポンプ2を用いて二酸化炭素を高圧セル6に供給するとともに、温度と圧力を調整した。温度は恒温槽4で調整し、圧力は背圧弁5で調整した。温度と圧力は、使用する高圧流体が、亜臨界流体、もしくは超臨界流体になる条件であれば良い。本実施形態では高圧流体として二酸化炭素(臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPa)を利用するため、温度範囲は25℃から80℃、圧力は6MPaから50MPaが好ましい。所定の温度と圧力の条件に到達した後、高圧ポンプ1を停止し、攪拌子7によって高圧セル6内の攪拌を開始し、二酸化炭素と前駆体9を混合した。なお、攪拌子7の回転には、図示しないが、マグネット式の撹拌装置を使用した。攪拌の開始後、所定時間の間、注入処理を行った。
二酸化炭素の超臨界流体が布片8に接触すると、布片8の内部に二酸化炭素が浸透する。そのため、布片8を構成する有機高分子材料は膨潤・可塑化し、ガラス転移温度の低下、粘度の低下が起こり、有機高分子材料の内部での物質の移動特性が著しく向上する。さらに、前駆体9は超臨界流体の二酸化炭素に溶解するため、二酸化炭素を媒体にして、前駆体9を、有機高分子材料の内部に浸透させることができる。このときの処理時間は、0.5時間から4時間が好ましい。この処理時間は、超臨界状態の二酸化炭素が布片8に充分に浸透するために要する時間として定められたものであり、布片8に対して二酸化炭素が飽和に浸透する時間が望ましい。
注入処理後、一旦、温度を25℃以下の低温に冷却することによって布片8の内部の物質の移動度を小さくし、次工程の減圧の際に、内部の前駆体9が、二酸化炭素に同伴して外部に流出することを防止する。
冷却工程の後、背圧弁5を開いて高圧セル6内の圧力を大気圧まで減圧する。このとき、系内の二酸化炭素濃度が減少することによって、二酸化炭素に溶解しきれない前駆体9が、布片8の粗化部分に浸透している前駆体9を成長点にして成長しつつ析出する。この結果、布片8の表面近傍における前駆体の注入量が増加することとなる。また、このとき0.1MPa/minより速い速度で減圧すると、外部に放出される二酸化炭素に同伴して前駆体9が外部に流出するため、この速度以下で減圧することが好ましい。
さらに、高圧セル6の内部に布片8を保持したまま、恒温槽4によって加熱処理することによって、布片8の内部の前駆体9を銀微粒子に還元し、銀微粒子を具備した布帛を製造した。
恒温槽4の操作条件は、前駆体9であるAgFODの分解温度である160℃とし、処理時間は2時間で行った。前駆体9を熱分解することによって、有機物から無機物質へ変換することができるが、このとき、前駆体9の種類によって熱分解温度が異なるため、その種類に合わせて適宜、処理温度を選択することができる。例えば、銀のアセチルアセトン錯体は100℃、銅のアセチルアセトン錯体は286℃、ニッケルのアセチルアセトン錯体は240℃、白金のアセチルアセトン錯体は251℃、パラジウムのアセチルアセトン錯体は260℃等である。
(実施形態9)
本実施形態の設備では、図2に示すように、高圧ポンプ2、圧力計3、恒温槽4、背圧弁5、高圧セル6の他に溶剤ポンプ10が具備され、その溶剤ポンプ10に、溶剤貯留槽11が接続されている。すなわち、本実施形態では流体として二酸化炭素を使用し、補助溶媒として溶剤が使用される。
次に、操作手順について実施形態8との比較の上で、異なる部分のみ示す。
布片8と、前駆体9とを高圧セル6に封入し、残存空気をパージした後、二酸化炭素を流通させて所定の温度と圧力に設定し、続いて、溶剤としてのアセトンを溶剤ポンプ10を用いて、所定量を高圧セル6に投入する。アセトンの投入後、高圧ポンプ6及び溶剤ポンプ10を停止し、所定時間、注入処理する。アセトンの投入量は、所定の温度と圧力条件での二酸化炭素の投入量に対し、モル比で0.5%から10%までが好ましい。
前駆体9の注入処理以外の操作手順は、前記実施形態8と同じであるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態では、補助溶媒として、布片8を構成する有機高分子材料と前駆体9の両方の良溶媒であるアセトンを用いるため、布片8を構成する有機高分子材料をより可塑化、粗面化させ易くなり、また布片8の内部に前駆体9をより浸透させ易くなるという効果がある。また、二酸化炭素に対する前駆体9の溶解度を増加させることによって、布片8の内部に浸透する前駆体9の量を増加させることができるという効果がある。さらに、これら二つの効果によって、目的とする量の前駆体9を注入する処理時間が、補助溶媒を添加しない場合と比べて短縮できるという効果もある。
このような効果を奏させる観点から、溶剤を選択する基準としては、布片8の良溶媒、無機微粒子の前駆体9の良溶媒であることが望ましい。本実施形態では、溶剤としてアセトンを使用したが、補助溶媒と、前駆体9や布片8との相互作用を事前に調べ、前駆体9に対する良溶媒か、布片8に対する良溶媒か、或いは前駆体9と布片8の両方の良溶媒かを確認しておくことによって、アセトン以外の溶剤も適宜選択することができる。たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールを使用することができる。
(実施形態10)
本実施形態では、図3に示すように、無機微粒子の前駆体9の溶解,抽出専用の高圧セル6aと、布片8の処理専用の高圧セル6bとの2つの高圧セルを設け、それぞれの高圧セルに恒温槽4a,4b をそれぞれ設置し、さらに、系内の攪拌のために、循環ポンプ12とその循環ライン22が設置されている。
上記実施形態8及び9では、1つの高圧セル内で前駆体9の溶解と、布片8の可塑化処理を行ったが、本実施形態では高圧セル6a内での前駆体9の溶解,抽出の処理と、高圧セル6b内での布片8の可塑化処理を行うこととした。
より具体的に説明すると、先ず、バルブ13及びバルブ18並びに高圧セル6bとの入口部と出口部のバルブ16,17 を開の状態とし、高圧セル6aの入口部と出口部のバルブ14,15 及び他のバルブ19,20,21を閉の状態として、高圧セル6b内の残存空気をパージした後、所定の温度、圧力になるまで高圧ポンプ2を用いてボンベ1から二酸化炭素を高圧セル6bに供給する。高圧流体となった二酸化炭素が供給されると、高圧セル6b内の布片8の表面が可塑化、粗面化されることとなる。
次に、バルブ18を閉の状態にするとともに、高圧セル6aの入口部と出口部のバルブ14,15 を開の状態にする。これによって、高圧流体は高圧セル6aに供給され、その高圧流体が無機微粒子の前駆体9を溶解するとともに高圧セル6bに供給されて高圧セル6b内の材料8に接触する。
その後、高圧ポンプ2を停止し、その高圧ポンプ2側のバルブ13を閉の状態とし、循環ライン22中のバルブ20,21 を開の状態にして、循環ポンプ12を作動させる。これによって、高圧流体は循環ライン22を循環するとともに高圧セル6a,6b に供給され、その高圧流体が前駆体9を効率的に溶解するとともに、効率的に布片8に接触することとなる。
このようにして、前駆体9が布片8に注入された後、再度バルブ13及びバルブ18並びに高圧セル6bとの入口部と出口部のバルブ16,17 を開の状態とし、高圧セル6aの入口部と出口部のバルブ14,15 及び他のバルブ19,20,21を閉の状態として、高圧セル6b内を減圧する。このとき、背圧弁5は徐々に開いて0.1MPa/minより遅い速度で減圧することで、実施形態8と同様に前駆体9の注入量が材料の粗化部分でさらに増加する。
そして、背圧弁5を開いて大気圧まで減圧し、高圧セル6b内の二酸化炭素を除去し、高圧セル6bを開き、新たな布片8を高圧セル6b内に入れて設置し、同様に処理を行う。この場合において、前駆体9は、材料8が収容された高圧セル6bと別の高圧セル6aに収容されているので、高圧セル6b内部の布片8のみを取り替えることによって、高圧セル6aの内部の前駆体9は、最初に仕込んだものを次の新たな布片の処理にも有効に使用することができる。
以上のように、本実施形態では、溶解・抽出専用の高圧セル6aと、布片8の処理専用の高圧セル6bとの2つの高圧セルを設け、系内の攪拌を循環ポンプ7により行うことによって、高圧セル6a内部で、高圧流体に溶解した前駆体9が効率的に布片8に接触し、次の減圧工程では、高圧セル6a内に残存する前駆体9を予め高圧セル6a外へ除去せずに高圧セル6bのみに二酸化炭素を連続的に通すことによって、より短時間に高圧セル6b内の減圧を行うことができ、しかも高圧セル6b内部の布片8のみを取り替えることによって、最初に仕込んだ前駆体9を、次工程で有効に使用することができるのである。
(実施形態11)
本実施形態の装置では、図4に示すように実施形態10の構成要素の他に溶剤貯留槽11及び溶剤ポンプ10を具備させている。従って、本実施形態では、流体として二酸化炭素を、補助溶媒として溶剤を使用する。二酸化炭素の他に溶剤を用いたことによる作用効果は、上記実施形態9と同じである。
次に、操作手順について実施形態10との比較の上で、異なる部分のみ示す。すなわち、布片8と、無機微粒子の前駆体9とをそれぞれ高圧セル6aと6bに封入し、残存空気をパージした後、二酸化炭素を流通させて所定の温度と圧力に設定し、続いて、溶剤としてのアセトンを溶剤ポンプ10を用いて、所定量を高圧セル6a及び高圧セル6bに供給する。アセトンの供給後、高圧ポンプ2を停止し、所定時間、注入処理する。この際、循環ポンプ12を作動させ、系内の流体を均一に攪拌することができる。アセトンの供給量は、前記実施形態2と同じく、所定の温度と圧力条件での二酸化炭素の投入量に対し、モル比で0.5から10%までが好ましい。本実施形態では高圧ポンプ2側のみならず、溶剤ポンプ10側にもバルブ23を設けている。その他の工程は、前記実施形態8乃至10と同じであるためここでは説明を省略する。
(実施形態14)
本実施形態では、布片8を構成する有機高分子材料として、上記実施形態8乃至13のポリエチレンテレフタレート(PET)に代えてポリアクリロニトリルを用いた。無機微粒子の前駆体9は実施形態8乃至11と同様の銀の錯体を用い、製造装置と操作手順も同様にして行い、布片8内に銀の微粒子を分散させた布帛を得ることができた。
(実施形態15)
本実施形態では、上記実施形態8乃至14の布帛に代えて糸を用いた。無機微粒子の前躯体としては銀の有機金属錯体(AgFODやAg(acac)〔アセチルアセトン錯体〕等)を用いた。注入の操作は、35℃、20MPaで行った。その結果、上記実施形態6に示すように、灰色がかった褐色に着色されたPET製の銀注入糸が得られた。
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態1乃至12では、布片8を構成する有機高分子材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド系合成繊維等(PA)を用いたが、布片8の材質はこれに限定されるものではなく、たとえば繊維構造物基材が、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の汎用エンジニアリングプラスチック、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂(PTFE、PCTFE、PVDFなど)等や、これらのブレンドポリマーを使用することも可能である。要は、繊維構造物として織成、編成等しうる有機高分子材料であれば、その種類は問うものではない。
尚、実施形態6乃至12の装置の配管途中に位置する高圧バルブの形式は、ニードル式、ダイヤフラム式、ボール弁式などの形式のものを使用することができる。圧力調整用にはニードル式のものを用い、流路の効率的な開閉にはボール弁式のものを用いることが好ましい。また、バルブ内部への不純物の流入を防止するためにはダイヤフラム式が好ましい。
さらに、高圧セルについては、内部の布片8あるいは流体の変化を観察するため、可視窓を具備していることが好ましい。また、高圧セル内部の反応物が可視窓の内面に付着することを防止するために、可視窓の内面に雲母などの保護カバーを取り付けることが好ましい。
さらに、本発明の繊維構造物の用途は問うものではなく、布帛の他、糸、これらで編成、織成されて二次加工される衣服等の繊維製品に使用することも可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、上記実施形態6の装置を用いた。操作手順は、次の通りである。先ず、材料としてPETの布製の試験片(JIS染色堅ろう度試験用布15cm×20cm)を準備して試料架台に固定し、前駆体として試験片の重量に対してAgで15wt%分のAgFOD(アルドリッチ社製)を、攪拌子と共に高圧セル内に封入した。
続いて、二酸化炭素で高圧セル内の残存空気をパージした後、温度を50℃、圧力を20MPaに調整した。所定の条件に到達した後、高圧セル内の攪拌を開始し、2時間、注入処理を行った。
注入処理後、圧力一定で25℃に冷却した後、高圧セル内を大気圧まで減圧した。この場合、0.1MPa/minより遅い速度で減圧を行った。大気圧に到達後、160℃で2時間、熱分解することによって、AgFODを金属のAgに変換した。尚、160℃を分解温度として選定したのは、予め熱分析(TG−DTA)の結果から、前駆体のAgFODは140℃以上で分解による発熱ピークと重量減少が観察され160℃でほぼ完全に分解することを確認していたためである。
次に、試験片中のAgの化学形態をX線回折測定装置で分析した。装置はリガク製、RINT2500型のX線回折測定装置を用い、管電圧40kV、管電流200mA、走査速度5°/minの条件で分析した。また、無機微粒子の分散状況は、試料片の断面の透過電子顕微鏡観察を行うことによって観察した。装置は、日立製H−7100型透過電子顕微鏡を用い、加速電圧125kVで観察した。試料は、ウルトラミクロトーム(ダイヤモンドナイフ使用)で超薄切片を作成した後、切片を銅メッシュに積載し、補強処理としてカーボン蒸着処理を施してTEM検鏡用試料とした。得られたTEM像を図5に示す。
図5からも明らかなように、PETの布を構成している繊維の表面から100nmの深さまでの部分に金属Agの粒子が分散していることが分かった。また、得られたTEM像から500個以上の粒子の粒径を計測し、その平均粒子径を求めた。平均粒子径は60nmであり、粒径の幅は、4nmから100nmであった。さらにAg微粒子の母材に対する体積含有率は45%であった。
次に、Ag微粒子を分散させたPETの機能性の一つとして電磁波の遮蔽性を調べた。その結果、500MHzから18GHzの領域の電磁波において、ヒューレットパッカード社のネットワークアナライザーを用いて調べた結果、最大50dB(電磁波の減衰率で99.7%)の反射による電磁波遮蔽効果を有することが分かった。さらに、薬品による微粒子分散層の剥離の有無を確認するため、上記試験片の表面をアセトンでさらに拭き取り、同様に電磁波遮蔽効果を調べた。実験の結果、拭き取りの前後で差は見られなかった。この結果から、薬剤によっても分散層からの微粒子の脱離は見られないことが確認できた。従って、このようなAg微粒子で複合化されたPETからなる繊維で被服等を編成、織成した場合、安定して電磁波遮蔽効果を有する被服等を提供することができる。
(実施例2)
本実施例は、試験片として市販のポリアクリロニトリルの布片(10cm×20cm)を用いた。装置、その他の試薬、および操作方法は、実施例1と同じであるのでその説明を省略する。
分析の結果、ポリアクリロニトリルの場合も、表面から100nmの範囲内に金属Agの微粒子が分散していることが分かった。
(その他実施例)
PETとポリアクリロニトリルを用いて、温度を、25℃から80℃まで、圧力を6MPaから30MPaまで、アセトンの添加率を0.5%から10%まで変化させて前記実施例1と同様の実験を行い、試料の分析を行った。その結果、Ag粒子の体積含有率が0.001%以上50%以下であること、粒子径は、1nmから100nmの範囲であることが確認された。
本発明の繊維構造物は、繊維自体に無機微粒子を注入、分散したものの他、布帛、糸、或いは繊維、布帛、糸で編成、織成された各種の繊維製品に注入、分散したようなものにも広く適用することができる。
一実施形態としての繊維構造物の製造装置の概略ブロック図。 他の実施形態としての繊維構造物の製造装置の概略ブロック図。 他の実施形態としての繊維構造物の製造装置の概略ブロック図。 他の実施形態としての繊維構造物の製造装置の概略ブロック図。 試料に対して銀を分散させた状態を示す透過電子顕微鏡写真。

Claims (6)

  1. 有機高分子材料からなる繊維構造物基材と、無機微粒子としての銀に変換される微粒子の前躯体であって、(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)銀、又はアセチルアセトン銀錯体のいずれかからなる微粒子の前躯体を溶解した超臨界二酸化炭素とを、25〜80℃、6〜50MPaの条件で接触させることによって、前記前駆体を繊維構造物基材内に注入した後、25℃以下の温度に繊維構造物基材を冷却し、その後、加熱処理することによって、前駆体を無機微粒子に変換して、繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に無機微粒子が注入、分散された繊維構造物を製造することを特徴とする繊維構造物の製造方法
  2. 有機高分子材料からなる繊維構造物基材と、無機微粒子としての銀に変換される微粒子の前駆体であって、(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)銀、又はアセチルアセトン銀錯体のいずれかからなる微粒子の前躯体とを別々の高圧セルに収容し、前駆体が収容された高圧セルに超臨界二酸化炭素を供給して該前駆体を超臨界二酸化炭素中に溶解し、次に前駆体を溶解した超臨界二酸化炭素を、前記繊維構造物基材が収容された高圧セルに供給し、該繊維構造物基材に前記前駆体を溶解した超臨界二酸化炭素を、25〜80℃、6〜50MPaの条件で接触させることによって、前記前駆体を繊維構造物基材内に注入した後、25℃以下の温度に繊維構造物基材を冷却し、その後、加熱処理することによって、前駆体を無機微粒子に変換して、繊維構造物基材の表面から100nmの深さまでの部分に無機微粒子が注入、分散された繊維構造物を製造することを特徴とする繊維構造物の製造方法
  3. 繊維構造物基材が、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの少なくとも1種によって構成されている請求項1又は2記載の繊維構造物の製造方法
  4. 繊維構造物基材中の無機微粒子の体積含有率が、0.001%以上50%以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維構造物の製造方法
  5. 無機微粒子の粒子径が、1nm以上100nm以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維構造物の製造方法
  6. 無機微粒子の前駆体を繊維構造物基材に注入する際に、超臨界二酸化炭素とともに、繊維構造物基材又は前駆体の少なくともいずれかを溶解又は可塑化させうる溶剤を補助溶媒として添加する請求項1乃至5のいずれかに記載の繊維構造物の製造方法。
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