JP4614676B2 - 鋼製護岸構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、埋立て地等の護岸や岸壁あるいは防波堤(これら、護岸、岸壁及び防波堤を総称して本明細書においては単に「護岸」という。)について、潮間帯に着生する海藻や魚、カニ、エビ等の海洋生物の生育・生息に好適な場を提供し、海域環境の好適化あるいは修復ができる生態系構築型の鋼製護岸構造物に関する。
自然の磯場のように良好な環境の海では藻類、稚子魚、甲殻類、貝等の多様な生物が生息している。このような多様な生物がプランクトンを摂餌し、これが死滅すると、細菌に分解され、海底に堆積する。海底に堆積したものは底生生物によって摂餌され、底生生物も大型の動物に摂餌されて系外に運び出される。
このように多様性が維持された環境では、物質の循環が滞りなく行われており、水質も良好な状態にある。海域環境浄化とは、多様な生物による滞りのない物質循環という観点を基本にして行われる。
しかしながら、従来の護岸では魚介類の隠れ場所や貝や藻類の付着し易い凹凸が全く存在していない垂直壁状のものであった。そのため、光がとどき、光合成のおきる水深には着生基盤である海底がなく、植物連鎖にとって必要な海藻や水生生物が生息できる環境ではなく、上記の海域環境浄化ができず、海洋汚染が進んでいた。
このため、近年においては、鋼矢板護岸の緑化を目的として、垂直壁面緑化用ポーラスコンクリートブロックを、地中に打ち込まれた鋼矢板壁面に密着して取付けることによって該鋼矢板壁面上で植物の育成を可能とする鋼矢板護岸構造が提案されている(特許文献1参照)。
また、鋼矢板や鋼管杭などの鋼材を用いた鋼製護岸構造物は、建設後長時間にわたって海洋環境下におかれると鋼材の腐食が進行して、その機能が十分に発揮できない状況になっている。特に、飛沫帯から干満帯での腐食が著しく進行し、鋼材断面が減少して、極端な場合には穴があくこともある。
このような、腐食による断面性能の低下した鋼矢板護岸に対する修復方法として、広幅パネル状の鋼矢板を継ぎ手を嵌合させながら打設して補強部材としての直線状の鋼矢板壁を構築し、この鋼矢板壁と既設の鋼矢板とのあいだの空間にコンクリートを充填するものが提案されている(特許文献2参照)。
特開2001−295242号公報 特開2003−74038号公報
まず、鋼矢板護岸の腐食による強度低下を修復する特許文献2の場合には、既設の鋼矢板の水との接触面に新たな広幅パネル状の鋼矢板を打設するものであり、水生生物の生息に適した生物相域を形成して生態系を回復させるという考えはない。
他方、上記の特許文献1に示されたものは、鋼矢板の水との接触面に緑化用のポーラスコンクリートブロックを設置するものであり、鋼矢板の垂直面に植栽が可能となるという点では生物相域の形成に対して一定の効果が期待できる。
しかしながら、特許文献においてはポーラスコンクリートブロックを取り付けているが、コンクリートを水中に設置するとコンクリートから溶出するCaが周囲の水のpHを上昇させ、アルカリ性を高め、却って水中生物(動植物、微生物)の棲息・生育環境に悪影響を与えるという問題がある。
また、コンクリートの場合にはその表面が平滑面であるため、穴の部分以外では植物などの定着力が弱く、仮に生物(植物、動物)が付着したとしても、生物が一度に脱落してしまう可能性がある。このように生物が一度に海底に落ちると、貧酸素水塊に満たされた海底でヘドロ化してしまうという問題もある。
このように、特許文献のものでは却って水中生物の棲息・生育環境に悪影響を与える可能性もあり、衰退した沿岸海域での生態系を回復させる十分な成果を挙げることは期待できない。
さらに、特許文献のものは、そもそも、鋼矢板護岸の緑化目的であることから鋼矢板に貼設するものはポーラスなコンクリートであり、腐食によって強度低下した鋼矢板護岸の強度回復を達成することはできない。
以上のように、特許文献2の鋼製護岸構造物の修復方法では、コンクリートで強度補強が行われるだけであり、生態系の回復を図ることはできない。
他方、特許文献1に記載の緑化目的の鋼矢板護岸では、緑化を図ることは可能であるが、コンクリートを用いていることから、生物親和性が低く生態系の回復を図るということまでは期待できない。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、鋼材を用いた鋼製護岸構造物の強度的な補強、補修が可能であると共に、生物親和性が高く海洋生物の生育・生息に好適で、天然の沿岸岩礁部と同等又はそれ以上の水生生物を定着させることができ、衰退した沿岸海域での生態系の回復を図ることができる鋼製護岸構造物を提供することを目的としている。
(1)本発明に係る鋼製護岸構造物は、既設の鋼製護岸を修復した鋼製護岸構造物であって、護岸を構成する鋼製護岸構造物における飛沫帯から干満帯に、鉄鋼スラグを主原料とするパネル状の炭酸固化体で形成した型枠を取り外さない型枠として設置し、該枠に鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体を打設して、18N/mm以上の圧縮強度を有する水和硬化体を、定着材としてのスタットジベルを用いて設置したことを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載の型枠の海側の面に凹凸部を設けたことを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記水和硬化体の下端側に棚部を設けたことを特徴とするものである。
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記棚部に高炉水砕スラグからなる高炉水砕スラグ層を設けたことを特徴とするものである。
本発明の鋼製護岸構造物によれば、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体が、海藻着生基盤、漁礁、栄養塩供給(溶出)源等として有効に機能し、これらの機能によって、珪藻類や海藻類の増殖、動物プランクトンの増殖、魚介類の餌場・隠れ家・産卵場として好適な環境の出現、魚介類の増殖、といった一連の事象が直接的又は連鎖的に実現され、その結果、天然の沿岸岩礁部と同等又はそれ以上の生態系を構築することができる。
また、本発明の鋼製護岸構造物によれば、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体の上記の効果に加え、腐食した鋼矢板等の鋼製護岸構造物の強度補強ができるという効果を奏することができる。
さらに、鉄鋼スラグを主原料とする炭酸固化体は、ポーラスな性状を有しているため表面に海藻類が付着し易く、しかも海藻類の生育促進に有効な成分(珪酸や鉄分など)が海水中に溶出しやすいことから、海藻着生基盤として特に有効に機能する。したがって、鉄鋼スラグを主原料とする炭酸固化体を型枠として用いたことにより、海側の表面に凹凸を設けなくても生態系回復機能を発揮することができる。
また、水和硬化体の打設のための型枠を、鉄鋼スラグを主原料とするパネル状の炭酸固化体で形成することにより、水和硬化体の固化後に型枠を取り外す必要がなくなり、工事の工程を省略して工期を短縮できるという効果もある。
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施形態を示すものであり、鋼製護岸の一例として鋼矢板護岸の修復後の構造の説明図である。まず、図1に基づいて修復後の構造について説明し、その後で修復方法について説明する。
本実施の形態における修復の対象となる既設の鋼矢板護岸は、海底1に立設された既設の鋼矢板3、その上部に設けられた上部構造のコーピング5から構成されている。なお、コーピング5の海側の端面5aの位置が護岸法線となるが、通常、鋼矢板3は護岸法線よりも陸側に入り込んで設置される。
このような、既設の鋼矢板護岸に対して、本実施の形態においては、鋼矢板3の水との接触面に、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体7を打設したものである。また、水和硬化体7の下端部には海側に突出する棚部9を設けたものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
<構成の説明>
1.水和硬化体
(a)水和硬化体の打設範囲
水和硬化体7は、既設鋼矢板3の強度補強機能と生態系回復機能の2つの機能を併せ持った機能部材である。したがって、水和硬化体7を打設する範囲は、これら2の機能を発揮できる範囲とする必要がある。つまり、鋼矢板3の補強という観点からは既設鋼矢板3において腐食が進み修復の必要な箇所であり、主には、飛沫帯から干満帯となる。
また、生態系の回復という観点からは、そこに棲み付いた植物が光合成をするためには光が必要なことから少なくとも太陽光の届く水深までの範囲であることが好ましい。したがって、水和硬化体7の打設範囲としては、少なくとも太陽光の届く水深までの範囲とし、この範囲以外で強度修復が必要な場合には、その範囲を含むのが好ましい。
(b) 水和硬化体の組成
水和硬化体7は、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とするものであり、鉄鋼スラグを主原料(骨材及び/又は結合材)として含む原料を水和硬化させて得られるものである。鉄鋼スラグとしては、先に挙げたような各種スラグ、すなわち高炉で発生する高炉水砕スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ、鉱石還元スラグ、電気炉スラグ等を用いることができる。水和硬化体(ブロック)は、原料を水と混練後、型枠に入れ、通常1〜4週間養生することによって製造される。
なお、水和硬化体7に用いる結合材としては、上述した高炉水砕スラグの微粉末などの他にシリカ含有物質(例えば、粘土、フライアッシュ、ケイ砂、シリカゲル、シリカシューム)、セメント、消石灰、NaOHなどを適宜組み合わせて使用することもできる。
なお、水和硬化体の表面には、例えば図2に示すように、凸部11を設けたり、凸部11の中に凹部11aを設けたりすることが好ましい。
2.棚部
棚部9は、図1、図2に示すように、コーピング5の海側の端面5aよりも海側に出っ張らないように設置されている。このようにすることで、護岸法線の内側の工事となり護岸法線を変更しないので、煩雑な手続を経ることなく工事ができる。
棚部9は水和硬化体7に付着した生物、例えば貝などが死滅して落下したときにこれを受け止めて、死骸が海底に堆積するのを防止する機能を有する。
棚部9を形成する材料は問わず、例えばコンクリート、鋼材、あるいは水和硬化体であってもよい。
なお、棚部9は、図2に示すように、有底枠体状にして枠内に高炉水砕スラグを敷き詰めた高炉水砕スラグ層13を形成するのが好ましい。
高炉水砕スラグは鉄鋼スラグの一種である高炉水砕スラグを水砕化処理して固化させた粉粒状のスラグであり、その粒径は海砂よりも大きく(通常、D50が、1.0〜2.0mm程度の粒径)、また真比重も海砂に較べてやや大きい。さらに、高炉水砕スラグは、その製造上の理由から多孔質組織のガラス質であり、且つスラグ粒子が角張った形状(表面に多数の尖った部分を有する形状)を有している。
高炉水砕スラグとしては、生成ままのもの、地鉄(鉄分)除去したもの、軽破砕などの破砕処理したもの、地鉄除去の前又は後に軽破砕などの破砕処理したもの、炭酸化処理により表面に炭酸皮膜を形成したもの、などのいずれを用いてもよい。高炉水砕スラグは鉄鋼製造プロセスで大量に発生するものであるため、安価に且つ大量に入手することができる材料である。
高炉水砕スラグ層13の厚さは特に制限はないが、通常10cm以上、より望ましくは30cm以上が好ましい。
なお、高炉水砕スラグ層13は、高炉水砕スラグに代えて製鋼スラグ、または、これらスラグの細粒と天然砂などとの混合物を用いて砂粒状のスラグを含む砂粒体からなる砂粒層としてもよい。砂粒状のスラグとしては、砂粒状の高炉水砕スラグ、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、あるいはこれらスラグの水和硬化体を砂粒状に粉砕したもの、炭酸固化体を砂粒状に粉砕したもの、あるいはこれらの砂粒状スラグを天然の砂、浚渫土と混合したもの、があげられる。
粒度の範囲としては0.01mmから80mmの間にあることが好ましい。
<作用>
上記のような、修復された鋼矢板護岸おいては、水和硬化体7がコンクリートと同様に材齢28日で一般の異形ブロックの設計基準強度である18Nmm以上の圧縮強度を有するので、腐食によって強度不足となった鋼矢板の強度回復が図れる。
また、水和硬化体7からは珪酸や鉄分などの栄養塩が海中に溶出する。このため水深の浅い領域では珪藻類などの植物プランクトンが増殖し、その結果、植物プランクトンを捕食する動物プランクトンの増殖→動物プランクトンを捕食する小魚などの小型魚介類の増大→小型魚介類を捕食する大型魚類の増大、という食物連鎖による生態系が出来上がる。また、海藻類が生育に利用できる光の届く範囲(水深5〜7m以浅)の水和硬化体7は好適な海藻養生基盤となって海藻類が養生・繁茂し、この海藻類が魚介類の餌場や産卵場所となり、水産資源のさらなる増殖をもたらす。また、補強目的のみで設置した光が届かない場所の水和硬化体は、栄養塩供給源となる。また、凸部11や凹部11aを形成した場合には、魚礁(魚介類の隠れ場所)として機能する。
また、棚部9に高炉水砕スラグ層13を形成した場合には、これがゴカイ等のベントスに好適に生息場所を提供する。すなわち、上述したように高炉水砕スラグは多孔質組織のガラス質であり、且つスラグ粒子が角張った形状を有しているため、高炉水砕スラグ層13はスラグ間隙が大きく、通水性に優れている。このためスラグ間隙の水が入れ替わり易く、この間隙での溶存酸素濃度が十分に確保される。
また、ガラス質のスラグ粒子から微量のCa分が長時間にわたってゆっくりと溶出することで間隙水中のpHが8.5程度に維持され、これにより硫酸還元菌による硫化水素の発生が長時間にわたり効果的に抑制される。
以上の点から、高炉水砕スラグ層13はゴカイ等のベントスにとって好適な生息場所となる。
したがって、水和硬化体7で生育・生息する海洋生物の***物、死骸、老廃物などが棚部9に沈設しても、高炉水砕スラグ層13に生息するベントスがこれを捕食・分解し、水底に有機物が堆積することが適切に抑えられる。また、高炉水砕スラグは多孔質であるため、有機物を分解する微生物が付着しやすく、このため高炉水砕スラグ層13は微生物による有機物の分解能にも優れている。
なお、本実施の形態の水和硬化体7及び高炉水砕スラグは100%がリサイクル資材であり、また、セメントを使用しないので、原料製造時のCOの発生を抑制し、天然骨材採取による環境破壊も抑制できるという効果も奏する。
<修復方法>
図3は本実施の形態における鋼製護岸構造物の修復方法の説明図であり、図3(a)は図1に示した修復後の護岸構造の一部を破砕して示し、図3(b)は図3(a)の矢視A−A断面図である。以下、上記のように構成される修復護岸の修復方法について図3に基づいて説明する。
鋼矢板3における修復を要する箇所、あるいは強度的な修復が必要なくても、海面から光が届く範囲に、定着材としてのスタットジベル15を設置する。なお、このとき、図3に示すように、鉄筋16を配筋してもよい。
スタットジベル15の設置完了後、水和硬化体7を打設する範囲に型枠を設置する。このとき、型枠に図2に示すような凸部11や凹部11bを形成するための凹凸を設けておくことが好ましい。
型枠の設置が終わると、骨材としての製鋼スラグ、結合材としての高炉スラグ微粉末、混和材としてのフライアッシュ・高炉水砕スラグ、水を練混ぜたものを、前記型枠に水中打設する。
型枠に打設した水和硬化体7が固化したら型枠を取り外す。
なお、棚部9は、水和硬化体7の構築前、又は同時、又は構築後に設置する。棚部9の設置は、その使用する材料に合った公知の構築方法を採用すればよい。例えば、コンクリート、水和硬化体で形成する場合は、上記の水和硬化体7と同様の方法によればよいし、鋼材で形成する場合にはボルト接合等で設置すればよい。
棚部9の形成後には高炉水砕スラグを上述した必要な厚みまで敷き詰める。
[実施の形態2]
本実施の形態は、実施の形態1における水和硬化体7の打設のための型枠を、鉄鋼スラグを主原料とするパネル状の炭酸固化体で形成したものである。
鉄鋼スラグを主原料とする炭酸固化体としては、例えば特許第3175694号で提案されている、鉄鋼スラグを主原料とする粉粒状原料を炭酸化反応で生成させたCaCO(場合によっては、さらにMgCO)を主たるバインダーとして固結させ、パネル状にしたものを用いることができる。また、鉄鋼スラグとしては、高炉で発生する高炉水砕スラグや高炉徐冷スラグ、予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグ等の製鋼スラグ、鉱石還元スラグ、電気炉スラグ等を用いることができる。
このような鉄鋼スラグを主原料とする炭酸固化体は、特に、スラグ中に含まれるCaO(又はCaOから生成したCa(OH))の大部分がCaCOに変化するため、CaOによる海水のpH上昇を防止でき、また、全体(表面及び内部)がポーラスな性状を有しているため表面に海藻類が付着し易く、しかも海藻類の生育促進に有効な成分(珪酸や鉄分など)が海水中に溶出しやすいことから、海藻着生基盤として特に有効に機能する。
したがって、本実施の形態のように、鉄鋼スラグを主原料とする炭酸固化体を型枠として用いる場合には、海側の表面に凹凸を設けなくても生態系回復機能を発揮することができる。
もっとも、パネル状に形成する際に設置状態で海側になる面には、図2に示すような凹凸形状を設けておくことは好ましい。これによって、より生態系回復機能をより発揮できる。
なお、本実施の形態のように、水和硬化体7の打設のための型枠を、鉄鋼スラグを主原料とするパネル状の炭酸固化体で形成することにより、水和硬化体7の固化後に型枠を取り外す必要がなくなり、工事の工程を省略して工期を短縮できるという効果もある。
[実施の形態3]
本実施の形態は、図4に示すように、水和硬化体7の表面に鉄鋼スラグを主原料とする塊状の炭酸固化体17を張りつけたものである。
なお、炭酸固化体17は、実施の形態1において打設した水和硬化体7が固まって型枠を外したあとに、例えば水中ボンドのような接着剤によって水和硬化体7に貼り付ければよい。
塊状の炭酸固化体17を貼り付けることにより、前述した炭酸固化体の海藻類が付着し易く、しかも海藻類の生育促進に有効な成分(珪酸や鉄分など)が海水中に溶出しやすいという特徴により、水和硬化体7の表面が海藻着生基盤としてさらに有効に機能し、生態系回復機能をより効果的に発揮できる。
塊状の炭酸固化体に代わるものとして、少なくとも外表面に炭酸カルシウム被覆層を有する塊状のCa含有水和硬化体を用いてもよい。
Ca含有水和硬化体とは、基体となるCa含有水和硬化体の少なくとも外表面に炭酸カルシウム被覆層を形成したものである。
Ca含有水和硬化体の表面に炭酸カルシウム被覆層が形成されていることにより、基体からのCaの溶出とこれに伴う海水(特に基体表面の境界層の海水)のpH上昇が抑えられ、基体表面の海水層を遊走子や卵の着生や生育に好適な環境とすることができ、塊状の炭酸固化体を用いた場合と同等の効果を期待できる。
以下、少なくとも外表面に炭酸カルシウム被覆層を有する塊状のCa含有水和硬化体の構成を詳細に説明する。
本実施の形態のCa含有水和硬化体とは、前述のように、基体となるCa含有水和硬化体の少なくとも外表面に炭酸カルシウム被覆層を形成したものである。ここにいう基体となるCa水和硬化体とは、Caを含有する結合材(セメントなど)、骨材(細骨材及び/又は粗骨材)、水、必要に応じて配合される混和材等を混練し、水和硬化させたもの、或は結合材程度から骨材程度までの広い粒径分布を有するCa含有材、水、必要に応じて配合される混和材等を混練し、水和硬化させたものである。最も一般的な基体となるCa水和硬化体はセメントコンクリートであるが、これに限定されるものではなく、例えば、FSコンクリート、エコセメントコンクリート、石炭灰水和硬化体(例えば、フライアッシュセメントコンクリート)や、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグを主原料とする水和硬化体(例えば、溶銑予備処理スラグ、高炉スラグ微粉末、消石灰などを配合した水和硬化体)、など、任意のCa含有水和硬化体を対象とすることができる。
また、セメントコンクリートには、ポルトランドセメント、高炉セメントなど任意のセメントを用いたコンクリートが含まれる。
基体となるCa水和硬化体の外表面に炭酸カルシウムの被覆層を形成させる方法は任意であるが、通常は基体となるCa水和硬化体を炭酸ガスと接触させる炭酸化処理で形成させる。
基体となるCa水和硬化体の外表面の炭酸化処理を効率的に行うには、基体となるCa水和硬化体の表面に水(表面付着水)が存在することが事実上不可欠であり、このため基体となるCa水和硬化体の少なくとも外表面に水を付着させ又は少なくとも表層に水を含浸させることが必要である。すなわち、炭酸化処理における基体となるCa水和硬化体表層に含まれる未炭酸化CaとCOとの反応機構は、水和硬化体表面に存在する水(表面付着水)にCOが溶解するとともに、水和硬化体側からはCaイオンが溶出し、この水に溶解・溶出したCOとCaイオンとが反応(炭酸化反応)することにより、水和硬化体表面にCaCOが析出するものであると考えられる。
したがって、上記機構による炭酸化を生じさせるには、水和硬化体表面に水(表面付着水)が存在することが必要となる。
基体となるCa水和硬化体に水を付着させ又は水を含浸させる方法は任意であり、例えば、水和硬化体を水中に浸漬する方法、水和硬化体に散水する方法、などの方法を採ることができる。
また、炭酸化処理の具体的方法は任意であるが、例えば、上記のように水を付着させ又は水を含浸させた基体となるCa水和硬化体を密閉容器(気密性を保つことができる容器)内に置き、この密閉容器内に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガス(以下、便宜上これらを総称して「炭酸ガス」という。)を供給することで炭酸化処理を行う。
なお、上記の実施の形態においては、既設の鋼矢板護岸の修復する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、新規に鋼矢板護岸を構築する場合にも適用できることは言うまでもない。この場合は、重防食被覆や電気防食などの防食対策が不要あるいは低減することが可能であり、コスト面での効果も期待される。
本発明の一実施の形態に係る鋼矢板護岸の説明図である。 図1の一部を詳細に説明する詳細説明図である。 本発明の一実施の形態に係る鋼矢板護岸の修復方法の説明図である。 本発明の他の実施の形態の説明図である。
符号の説明
1 海底
3 鋼矢板
7 水和硬化体7
9 棚部
11 凸部

Claims (4)

  1. 既設の鋼製護岸を修復した鋼製護岸構造物であって、護岸を構成する鋼製護岸構造物における飛沫帯から干満帯に、鉄鋼スラグを主原料とするパネル状の炭酸固化体で形成した型枠を取り外さない型枠として設置し、該枠に鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とする水和硬化体を打設して、18N/mm以上の圧縮強度を有する水和硬化体を、定着材としてのスタットジベルを用いて設置したことを特徴とする鋼製護岸構造物。
  2. 前記型枠の海側の面に凹凸部を設けたことを特徴とする請求項1記載の鋼製護岸構造物。
  3. 前記水和硬化体の下端側に棚部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼製護岸構造物。
  4. 前記棚部に高炉水砕スラグからなる高炉水砕スラグ層を設けたことを特徴とする請求項に記載の鋼製護岸構造物。
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