JP4613650B2 - タイヤの設計方法 - Google Patents
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Description
特に車両の走行シミュレーションを行う際、タイヤは、路面から受ける力を車両に伝達する唯一の構成部品であるため、タイヤの発生力を正確に定める必要がある。ここで述べる発生力とは前後力とコーナリング中の横力である。このタイヤの発生力として、例えば、タイヤのコーナリング中に発生する横力とセルフアライニングトルクのスリップ角依存性を表す特性曲線を、下記式(9)の基本式で代表される「Magic Formula」で近似することが提案されている。
Y(x)=Dsin[Ctan−1{Bx−E(Bx−tan−1(Bx))}] (9)
「Magic Formula」は、式(9)内の各パラメータB〜Eの値を決定することによってタイヤ特性を表す非線形近似式を用いた非解析モデルである。
この「Magic Formula」のパラメータB〜Eの値を用いて、車両の走行シミュレーションを行うことが一般的に行われている。
図17は、特許文献1に開示されるタイヤ設計方法のフローを示す図である。
一方、車両諸元のデータの設定に基づいて、機構解析モデルである車両モデルを作成する。次に、走行シミュレーション条件が設定され、先に求めた「Magic Formula」のパラメータB〜Eとともに車両モデルに付与されて車両の走行シミュレーションが行われる。
走行シミュレーションの結果から性能評価データが算出される。
一般的には、例えば、耐久性能の場合には特定の部材に加わる応力の最大値や特定部材の変形量を性能評価データとして用いる。緊急回避性能の場合には車両の走行速度と最大横加速度との関係、又は車両の滑り角、その変化率の時間的なトレースに基づく安定性を評価する。
この性能評価データが目標値を達成しない場合、目標未達成と判別されて、タイヤの設計値の修正が行われる。この修正に応じて、有限要素で構成されるタイヤのモデルが再生成される。
こうして、車両走行シミュレーション結果における性能評価データが目標値を達成するまで、繰り返しタイヤの設計値が修正される。性能評価データが目標値を達成すると、修正されたタイヤの設計値がタイヤ設計仕様として決定される。
前記特性曲線が、タイヤ軸に発生する横力及びセルフアライニングトルクのスリップ角依存性を表す特性曲線である場合、前記タイヤ力学モデルは、横力を算出するとともに、セルフアライニングトルクをタイヤの接地面に作用する横力によって生じる横力トルク成分と、タイヤの接地面に作用する前後力によって生じる前後力トルク成分とに分けてセルフアライニングトルクを算出するモデルであることが好ましい。
また、前記タイヤ特性修正ステップにおいて、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出する際、前記横力の特性曲線と前記タイヤ力学モデルで算出される横力の対応する曲線との二乗残差和と、前記セルフアライニングトルクの特性曲線と前記タイヤ力学モデルで算出されるセルフアライニングトルクの対応する曲線との二乗残差和とを、重み付け係数を用いて重み付け加算した値であって、前記重み付け係数として、前記近似式パラメータの値により算出される前記横力および前記セルフアライニングトルクのそれぞれの特性曲線の、スリップ角に依存して変化する値のばらつきの情報から求められる係数を用いた複合二乗残差和の値が、所定値以下となるように、タイヤのコーナリング中の特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出することが好ましい。
前記タイヤ特性修正ステップにおいて導出されるタイヤ力学要素パラメータは、例えば、タイヤのトレッド部材と路面との間の凝着摩擦係数およびすべり摩擦係数と接地圧分布の形状を規定する形状規定係数を含む。その際、前記タイヤ特性修正ステップにおいて、例えば、予め求められた、タイヤの剪断変形に対する剛性パラメータ、タイヤの横曲げ変形に対する剛性パラメータおよびタイヤの捩じり変形に対する剛性パラメータの少なくとも1つを用いて、前記凝着摩擦係数、前記すべり摩擦係数および前記形状規定係数を導出することが好ましい。
タイヤ力学要素パラメータは、タイヤ製造業者にとって判り易いパラメータであり、従来からタイヤ力学要素パラメータを調整するには、どのようなタイヤ寸法や形状を用いればよいか比較的知られているので、タイヤ製造業者は、決定されたタイヤ設計仕様に基づいて、タイヤの設計を容易に行うことができる。
装置1は、車両諸元のデータ(ホイールベース、重心高さ、車両の総重量、車両の前後輪の重量配分等)と車両の構成部品であるタイヤの設計値から、車両が所望の性能を発揮するタイヤ設計仕様を決定する装置である。
ここで、コーナリングの特性曲線とは横力、トルクのスリップ角依存性を表す曲線である。
なお、「Magic Formula」のパラメータB〜Eは、横力及びセルフアライニングトルクの特性曲線を上記式(9)に示される非線形近似式で近似したときの、非線形近似式を規定する近似式パラメータである。
車両走行シミュレーションプログラム10は、車両諸元のデータに従って車両モデルを作成し、操作入力系5から与えられた走行シミュレーション条件、あるいは、メモリ4に記憶された走行条件を呼び出し、生成された車両モデルに設定されたパラメータB〜Eの値を付与して、車両の走行シミュレーションを行う部分である。
走行シミュレーション条件は、車両の走行速度、操舵角、路面のプロファイル形状等であり、評価しようとする性能に応じて異なる走行シミュレーション条件が設定される。
走行シミュレーションは、機構解析ソフトウェアADAMSにて行われる。また、運動解析ソフトウェアCarSimや制御系設計ソフトウェアMatLabにて走行シミュレーションの演算が行われてもよい。
一方、横力及びセルフアライニングトルクのスリップ角依存性の特性曲線が「Magic Formula」データ・パラメータ算出プログラム11に与えられた場合、この特性曲線から、パラメータB〜Eの値を求める。パラメータB〜Eの値の求め方は特に限定されないが、例えば式(9)はパラメータB〜Eに対して非線形であるため、Newton-Raphson法に従って行なわれることが好ましい。
タイヤ力学モデルプログラム群12については、以降で詳述する。
(a)タイヤの横方向の剪断剛性によって定められる横剛性Ky0、
(b)路面とタイヤ間のすべり摩擦係数μd、
(c)横剛性Ky0を路面とタイヤ間の凝着摩擦係数μsで除算した横剛性係数(Ky0/μs)、
(d)ベルト部材の横方向曲げ係数ε、
(e)タイヤのタイヤ中心軸周りのねじり剛性の逆数であるねじりコンプライアンス(1/Gmz)、
(f)横力発生中の接地面の接地圧力分布を規定する係数n、
(g)接地圧力分布の偏向の程度を表す係数Cq、
(h)接地面におけるタイヤ中心位置の前後方向への移動の程度を示す移動係数Cxc、
(i)横力発生時の実効接地長le、
(j)接地面内の前後剛性Ax(前後力トルク成分を定めるパラメータ)、等である。
なお、CP/SATPパラメータ算出プログラム20、Fy/Mzパラメータ算出プログラム22、CP/SATPデータ算出プログラム24およびFy/Mzデータ算出プログラム26、の機能については、後述する。
図2、図3、図4(a)〜(c)、図5(a)〜(d)および図6(a)〜(c)はタイヤ力学モデルを説明する図である。
なお、線形パラメータとは、式(5),(6)において線形の形式で表されている力学要素パラメータをいい、非線形パラメータとは、式(5),(6)において非線形の形式で表されている力学要素パラメータをいう。
ここで、関数Dgsp(t;n,q)中の係数nは横力発生中の接地面の接地圧分布を規定するもので、図5(c)に示すように接地圧分布の踏込み端および蹴りだし端付近で角張る(曲率が大きくなる)ように接地圧分布を規定する係数である。また、図5(d)に示すように係数qが0から1になるにしたがって接地圧分布のピーク位置は踏込み端側に移動するように設定されている。このように係数qおよび係数nは、接地圧分布の形状を規定する形状規定係数である。
図6(a)〜(c)に示される最大摩擦曲線は、凝着摩擦係数μsに接地圧分布p(t)を乗算したものである。踏込み端で路面と接地したタイヤトレッド部材は、蹴りだし端に移動するにつれてスリップ角αによって徐々に路面から剪断を受け、タイヤとレッド部材に剪断力(凝着摩擦力)が発生する。この剪断力は、徐々に大きくなって最大摩擦曲線に達すると、路面に凝着していたタイヤトレッド部材はすべり出し、すべり摩擦係数μdに接地圧分布p(t)を乗算したすべり摩擦曲線に従ってすべり摩擦力が発生する。図6(a)では、境界位置(lh/l)より踏込み端側の領域がタイヤトレッド部材が路面に凝着した凝着域となり、蹴りだし側の領域がタイヤトレッド部材が路面に対して滑るタイヤすべり域となる。図6(b)は、スリップ角αが図6(a)に示すスリップ角αよりも大きくなった状態を示している。境界位置(lh/l)は図6(a)に比べて踏込み端側に移動している。さらに、スリップ角αが大きくなると、図6(c)に示すように接地面の踏込み端の位置からすべり摩擦が発生する状態となる。
式(5)および(6)では、上述の凝着域およびすべり域に分けて、実効スリップ角αeを用いて横力Fy’およびトルクMz’を算出する。
第2項のすべり横力成分はすべり域における横力であり、式(5)では、実効スリップ角αeによって生じる接地圧分布p(t)の形状を関数Dgsp(t;n,q)で表してすべり横力成分を算出する。
図4(a)は、スリップ角αが付与された際、スリップ角αによって生じるトルクによってスリップ角αを減ずるようにタイヤ自身に作用し、実効スリップ角αeとなっている状態を示している。図4(b)は、この実効スリップ角αeによって生じる横方向変位とベルトの横曲げ変形によって生じる横方向変位の関係を示している。図4(c)はタイヤの接地面が横力によって横方向に移動することによって生じる前後力分布がトルクMz'に寄与するメカニズムを示している。図4(c)中、Mz1およびMz2は凝着横力成分によるトルク成分およびすべり横力成分によるトルク成分を、Mz3は接地面に作用する前後力によるトルク成分を示している。
CP/SATPパラメータ算出プログラム20は、「Magic Formula」において設定された、或いは修正されたパラメータB〜Eの値を用いて求められ、CP/SATPパラメータ算出プログラム20に供給された、スリップ角α=1度における横力FyおよびトルクMzと、横力Fy’およびトルクMz’(タイヤ力学モデル演算部14において算出される横力およびトルク)との誤差が所定値以下となるように、すなわち、タイヤ力学モデルにおいて横力およびトルクが力の釣り合い状態になるように、上述の線形パラメータおよび非線形パラメータを導出するプログラムである。
具体的には、スリップ角α=1度における横力FyおよびトルクMzのデータと、負荷荷重Fz、負荷荷重Fzにおける非転動状態におけるタイヤの接地長lおよび接地幅wのデータを予め取得する(ステップS100)。これらのデータは、メモリ4に記憶されているデータでありメモリ4から呼び出される。あるいは、入力操作系5から指示入力されたものであってもよい。
さらに、横方向曲げ係数ε、ねじりコンプライアンス(1/Gmz)を所定の値に初期設定する(ステップS102)。
Ky0 ∝ w・l2/2
Ax ∝ Fz・l/2
gf=1/σf 2
gm=1/σm 2
すなわち、複合二乗残差和Qcは計測データのばらつきの情報である分散の逆数を重み付け係数とし、横力およびトルクのそれぞれの二乗残差和を重み付け加算したたものである。
ここで、複合二乗残差和を用いるのは、非線形パラメータの算出において複数の荷重条件の横力Fy’とトルクMz’とを、対応する横力FyとトルクMzとに最適に一致させるためである。
収束していないと判別されると、先に設定された横方向曲げ係数ε、ねじりコンプライアンス(1/Gmz)の非線形パラメータの調整を行う(ステップS110)。この非線形パラメータの調整は、例えばNewton-Raphson法に従って行なわれる。具体的には、複合二乗残差和を非線形パラメータに関して2次の偏微分を行なうことにより、行列と非線形パラメータの調整量とを関係付けた方程式を求め、この方程式を上記調整量に関して解くことにより、非線形パラメータの調整量を算出する。この算出方法については、本願出願人により出願された特願2001−242059号の公開公報(特開2003−57134号公報)に詳細に記載されている。
複合二乗残差和が所定値以下になると、線形最小二乗回帰で算出された横剛性Ky0、前後剛性Axおよび非線形パラメータである横方向曲げ係数ε、ねじりコンプライアンス(1/Gmz)をパラメータとして決定する(ステップS112)。決定されたパラメータはメモリ20に記憶される。
以上が、CP/SATPパラメータ算出プログラム20が行なう、タイヤ力学モデルを用いたスリップ角α=1度における線形パラメータおよび非線形パラメータの算出の流れである。
具体的には、図9に示すように、一定の負荷荷重においてスリップ角を種々変化させて
「Magic Formula」のパラメータB〜Eの値から算出した横力FyおよびトルクMzの特性曲線を取得する(ステップS200)。
さらに、上記CP/SATPパラメータ算出プログラム20において求められ、メモリ4に記憶された横方向曲げ係数ε、ねじりコンプライアンス(1/Gmz)を読み取って力学要素パラメータを設定する(ステップS202)。
さらに、残りの非線形パラメータである係数n、横剛性係数(Ky0/μs)、係数Cq、移動係数Cxcを所定の値に初期設定する(ステップS204)。
こうして初期設定された非線形パラメータおよび正規方程式を用いて算出された線形パラメータおよび横力FyおよびトルクMzの特性曲線のデータをタイヤ力学モデル演算プログラム14に付与する。この付与によって図7のブロック図の流れに従って各スリップ角αにおける横力Fy’およびトルクMz’が算出される。
複合二乗残差和は、所定値以下となって収束しているか否かを判別する(ステップS210)。
収束していないと判別すると、ステップS204で初期設定された非線形パラメータの調整を行う(ステップS212)。この非線形パラメータの調整は、例えばNewton-Raphson法に従って行なわれる。
以上が、Fy/Mzパラメータ算出プログラム22の行なう、タイヤ力学モデルを用いた各スリップ角αにおける線形パラメータおよび非線形パラメータの算出の流れである。
図10は、CP/SATPデータ算出プログラム24において行なわれる処理の流れを示している。
さらに、負荷荷重Fzにおける横力FyおよびトルクMzを初期設定する(ステップS302)。
この後、スリップ角α=1度および初期設定された横力FyおよびトルクMzとともに線形パラメータおよび非線形パラメータをタイヤ力学モデル演算プログラム14に付与する。タイヤ力学モデル演算プログラム14では、付与された線形パラメータおよび非線形パラメータと、初期設定された横力FyおよびトルクMzが用いられて図3中の式(5)、(6)に従って横力Fy'、トルクMz’が算出される(ステップS304)。
収束していないと判別すると、先に設定された横力FyおよびトルクMzの設定値が調整される(ステップS310)。調整された横力FyおよびトルクMzは、線形パラメータおよび非線形パラメータとともに再度タイヤ力学モデル演算プログラム14に付与される。
こうして、複合二乗残差和が所定値以下となって収束するまで横力FyおよびトルクMzの設定値を調整する。この設定値の調整は、例えば上述したNewton-Raphson法に従って行なわれる。こうして、収束した横力Fy'およびトルクMz'を決定する(ステップS312)。
こうして、負荷荷重Fzが所定荷重となるまで繰り返し変更される(ステップS316)。負荷荷重Fzの変更の度に横力Fy’およびトルクMz’を算出し、収束する横力Fy’およびトルクMz’を決定する。決定された横力Fy’およびトルクMz’はメモリ20に記憶される。
このようにして、スリップ角α=1度における横力およびトルクであるCPおよびSATPの負荷荷重Fzに依存する曲線を求める。
図11は、Fy/Mzデータ算出プログラム26において行なわれる処理の流れを示している。
Fy/Mzデータ算出プログラム26は、まず、Fy/Mzパラメータ算出プログラム22で算出された線形パラメータおよび非線形パラメータをメモリ4から読み出して設定する(ステップS400)。
さらに、負荷荷重Fzにおける横力FyおよびトルクMzを初期設定する(ステップS402)。
この後、設定されたスリップ角α=Δαとともに線形パラメータおよび非線形パラメータおよび初期設定された横力FyおよびトルクMzをタイヤ力学モデル演算プログラム14に付与する。タイヤ力学モデル14では、付与された線形パラメータおよび非線形パラメータと、初期設定された横力FyおよびトルクMzが用いられて式(5)、(6)に従って横力Fy'、トルクMz’が算出される(ステップS404)。
次に、算出された複合二乗残差和が所定値以下となって収束しているか否かを判別する(ステップS408)。
収束していないと判別すると、先に設定された横力FyおよびトルクMzの設定値を調整する(ステップS410)。この調整された横力FyおよびトルクMzと線形パラメータおよび非線形パラメータとが再度タイヤ力学モデル演算プログラム14に付与される。
こうして、複合二乗残差和が所定値以下となって収束するまで、横力FyおよびトルクMzの設定値を調整する。この設定値の調整は、例えば上述したNewton-Raphson法に従って行なわれる。こうして、横力Fy'、トルクMz'を決定する(ステップS412)。
スリップ角αが所定のスリップ角以下であると判別した場合、スリップ角αの条件が変更される(α→α+Δα)(ステップS414)。そして、変更されたスリップ角αにおける横力Fy、トルクMzの初期値が設定され(ステップS402)、横力Fy'およびトルクMz’が算出され(ステップS404)、複合二乗残差和が算出され(ステップS406)、この複合二乗残差和の収束が判別される(ステップS408)。
こうして、スリップ角αが所定スリップ角となるまで繰り返し変更される(ステップS416)。このスリップ角の変更の度に横力Fy’およびトルクMz’を算出し、収束する横力Fy’およびトルクMz’を決定する。決定された横力Fy’およびトルクMz’はメモリ4に記憶される。
このようにして、スリップ角αに依存する横力およびトルクの特性曲線を求める。
以上が、装置1の構成についての説明である。
まず、設定プログラム9において、車両諸元のデータ及びタイヤ設計値(力学要素パラメータの値)が設定される(ステップS600,602)。これらの設定は、メモリ4から所定のデータを呼び出して設定してもよいし、入力操作系5によって指示入力されたものであってもよい。
次に、車両走行シミュレーションプログラム10にて、設定された車両諸元のデータに基づいて車両モデルが生成される。例えば機構解析モデルによる車両モデルが生成される(ステップS604)。さらに、走行シミュレーション条件が設定される(ステップS606)。走行シミュレーション条件は、評価しようとする性能に応じて異なるものが設定される。例えば性能評価が耐久性評価の場合には車両の走行速度、路面の粗さ等のプロファイルデータが走行条件として設定される。緊急回避性能評価の場合には車両の走行速度や操舵角等のデータ、実際の路面のプロファイルデータ等が走行条件として設定される。
一方、ステップS600にて設定された力学要素パラメータに基づいて、Fy/Mzデータ算出プログラム26にて、タイヤのコーナリング中の横力及びトルクの特性曲線が算出される(ステップS608)。
次に、走行シミュレーション条件の下、設定された「Magic Formula」のパラメータB〜Eの値から横力及びトルクを算出しながら、ステップS604にて作成された車両モデルを用いて車両の走行シミュレーションが行われる(ステップS612)。
走行シミュレーション結果は、メモリ4に記憶される。
なお、性能評価データは、例えば、耐久性能の場合には特定の部材に加わる応力の最大値や特定部材の変形量である。緊急回避性能の場合には車両の走行速度と最大横加速度との関係のデータである。
「Magic Formula」のパラメータB〜Eの値の修正方法は、特に限定されず、例えば予め定められた幅でパラメータB〜Eの値を順次変えていく。
こうして、性能評価データが目標値を達成するまで、繰り返し力学要素パラメータは修正される。
ステップS616で肯定されると、メモリ4に記憶された力学要素パラメータがタイヤ設計仕様として決定される(ステップS620)。
また、力学要素パラメータは、タイヤ力学モデルによって実現可能なものであるので、タイヤの構造設計及び材料設計で実現可能なタイヤ設計仕様といえる。したがって、車両諸元のデータに応じて、実現可能なタイヤ設計仕様を決定することができる。
図13(a),(b)から明らかなように、複合二乗残差和を用いて算出した特性曲線l1,l3は、複合二乗残差和を用いずに算出した特性曲線l2,l4に比べて極めて良好に計測値に対応していることがわかる。
図14(a),(b)から明らかなように、本発明のタイヤ力学モデルを用いて算出した特性曲線l1,l2は、公知のFialaモデルを用いて算出した特性曲線l5,l6に比べて極めて良好に計測値に対応していることがわかる。
図16(a)では、特性曲線l8を、上記式(5)における第1項の凝着横力成分(点線)と第2項のすべり横力成分(一点鎖線)に分けて表示している。図16(b)では、上記式(6)における第1項および第2項の横力(凝着横力成分+すべり横力成分)によって生じる横力トルク成分と、前後力によって生じる前後力トルク成分とに分けて表示している。このように、本発明では、横力およびトルクの特性曲線を分解して表すことができ、タイヤのコーナリング特性を詳細に分析することが可能となる。
図16(c)は、上記Fy/Mzパラメータ算出プログラム22でパラメータを算出した時の関数Dgsp(t;n,q)によって表される接地圧分布の様子を示す図である。発生するセルフアライニングトルクMzが大きくなるほど、接地圧のピークは踏込み端側に偏り、接地面は蹴り出し側に移動することがわかる。
2 CPU
3 バス
4 メモリ
5 入力操作系
6 インターフェース
7 出力装置
8 プログラム群
9 設定プログラム
10 車両走行シミュレーションプログラム
11 「Magic Formula」データ・パラメータ算出プログラム
12 タイヤ力学モデルプログラム群
13 統合・管理プログラム
14 タイヤ力学モデル演算プログラム
20 CP/SATPパラメータ算出プログラム
22 Fy/Mzパラメータ算出プログラム
24 CP/SATPデータ算出プログラム
26 Fy/Mzデータ算出プログラム
Claims (7)
- 路面との間で作用する剪断力に基づいてタイヤ回転軸に作用する力又はトルクのスリップ率依存性を表す特性曲線の情報と車両諸元の情報とを用いて車両の走行シミュレーションを行うことによって、車両諸元の情報に応じて所望の車両性能を達成するタイヤを設計する方法であって、
車両諸元の情報を用いて車両モデルを作成するモデル作成ステップと、
複数のタイヤ力学要素パラメータを用いて構成されるタイヤ力学モデルに基づいて、前記特性曲線を定めるタイヤ力学要素パラメータの値を設定するとともに、このタイヤ力学要素パラメータによって算出される前記特性曲線を非線形近似式で近似したときの、非線形近似式を規定する近似式パラメータの値を前記車両モデルに付与して、所定の走行条件で走行シミュレーションを行い、この走行シミュレーションの結果を用いて車両の性能評価を行う性能評価ステップと、
前記性能評価において、車両モデルが目標性能を満足しない場合、前記近似式パラメータの値を修正し、この修正された値を前記車両モデルに付与して走行シミュレーションを行い、この走行シミュレーションの結果を用いて車両の性能評価を行うとともに、修正された近似式パラメータの値によって規定される非線形近似式から算出される特性曲線を用いて、前記タイヤ力学モデルに基づいて、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出するタイヤ特性修正ステップと、
前記車両モデルが所定の性能を満足する場合、導出した前記タイヤ力学要素パラメータの値をタイヤ目標特性として決定するタイヤ特性決定ステップと、を有することを特徴とするタイヤの設計方法。 - 前記特性曲線は、スリップ角を与えたときの、タイヤ軸に発生する横力及びセルフアライニングトルクのスリップ角依存性を表す曲線である請求項1に記載のタイヤの設計方法。
- 前記タイヤ力学モデルは、横力を算出するとともに、セルフアライニングトルクをタイヤの接地面に作用する横力によって生じる横力トルク成分と、タイヤの接地面に作用する前後力によって生じる前後力トルク成分とに分けてセルフアライニングトルクを算出するモデルである請求項2に記載のタイヤの設計方法。
- 前記タイヤ特性修正ステップにおいて、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出する際、前記横力の特性曲線と前記タイヤ力学モデルで算出される横力の対応する曲線との二乗残差和と、前記セルフアライニングトルクの特性曲線と前記タイヤ力学モデルで算出されるセルフアライニングトルクの対応する曲線との二乗残差和とを、重み付け係数を用いて重み付け加算した値であって、前記重み付け係数として、前記近似式パラメータの値により算出される前記横力および前記セルフアライニングトルクのそれぞれの特性曲線の、スリップ角に依存して変化する値のばらつきの情報から求められる係数を用いた複合二乗残差和の値が、所定値以下となるように、タイヤのコーナリング中の特性を表すタイヤ力学要素パラメータの値を導出する請求項2又は3に記載のタイヤの設計方法。
- 前記タイヤ特性修正ステップにおいて、前記特性曲線から、前記タイヤ力学モデルに基づいて、前記タイヤ力学要素パラメータの値を導出する際、セルフアライニングトルクにより発生するタイヤの捩じり変形によって、付与されるスリップ角が修正された実効スリップ角を用いてタイヤ力学要素パラメータの値を導出する請求項2〜4のいずれか1項に記載のタイヤの設計方法。
- 前記タイヤ特性修正ステップにおいて導出されるタイヤ力学要素パラメータは、タイヤのトレッド部材と路面との間の凝着摩擦係数およびすべり摩擦係数と接地圧分布の形状を規定する形状規定係数を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤの設計方法。
- 前記タイヤ特性修正ステップにおいて、予め求められた、タイヤの剪断変形に対する剛性パラメータ、タイヤの横曲げ変形に対する剛性パラメータおよびタイヤの捩じり変形に対する剛性パラメータの少なくとも1つを用いて、前記凝着摩擦係数、前記すべり摩擦係数および前記形状規定係数を導出する請求項6に記載のタイヤの設計方法。
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