JP4610052B2 - 歯車用素材、外歯歯車、及び増減速機のシリーズ - Google Patents

歯車用素材、外歯歯車、及び増減速機のシリーズ Download PDF

Info

Publication number
JP4610052B2
JP4610052B2 JP2000222432A JP2000222432A JP4610052B2 JP 4610052 B2 JP4610052 B2 JP 4610052B2 JP 2000222432 A JP2000222432 A JP 2000222432A JP 2000222432 A JP2000222432 A JP 2000222432A JP 4610052 B2 JP4610052 B2 JP 4610052B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gear
external gear
internal
external
gears
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000222432A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002039286A (ja
Inventor
和良 梅田
重雄 渡辺
克己 瀧
敦 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Heavy Industries Ltd filed Critical Sumitomo Heavy Industries Ltd
Priority to JP2000222432A priority Critical patent/JP4610052B2/ja
Publication of JP2002039286A publication Critical patent/JP2002039286A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4610052B2 publication Critical patent/JP4610052B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Retarders (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機或いは該増減速機のシリーズに関するものであり、特に、外歯歯車に用いられる歯車用素材や該外歯歯車等を共有化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機は、少ない増減速段数で大きな増減速比を得ることが出来るものとして広く知られ、又利用されている。この揺動内接噛合遊星歯車構造は、外歯歯車及び内歯歯車が相対的に偏心揺動運動することによって、その内接噛合状態の拘束から両歯車間に相対回転を生じさせ、前記偏心揺動運動と前記相対回転との回転数差に存在する増・減速比で動力を伝達するものである。
【0003】
図8、9に、この揺動内接噛合遊星歯車構造が減速機能を有するように組み込まれた従来の減速機20を示す。この減速機20は、第1軸(この場合は入力軸)1と、第1軸1の回転によって回転する偏心体3a、3bと、この偏心体3a、3bにベアリング4a、4bを介して取り付けられて偏心回転が可能とされた2枚の外歯歯車5a、5bと、外歯歯車5a、5bに内接噛合する内歯歯車10と、外歯歯車5a、5bの自転成分のみを取り出す部材を介して、該外歯歯車5a、5bに連結された第2軸(この場合は出力軸)2と、を備える。なお、この従来例では、2枚の外歯歯車5a、5bが組み付けられる複列式(3枚以上の場合も含む)となっているが、勿論、1枚の外歯歯車からなる単列式であっても構わない。
【0004】
偏心体3a、3bは、入力軸1に対して所定位相差(この例では180°)をもって嵌合されている。図9に示されるように、この偏心体3a、3bは、それぞれ入力軸1(中心O1)に対して偏心量eだけ偏心している(中心O2)。
【0005】
外歯歯車5a、5bには、内ピン孔6a、6bが複数設けられており、この内孔6a、6bに内ピン7(詳細にはピン8A及び該ピン8Aに設置される内ローラ8Bから構成されている)が遊嵌されている。この内ピン7が、「外歯歯車の自転成分のみを取り出す部材」に相当する。なお、内ローラは8Bは回転自在とされ、ピン8Aが、出力軸2に形成されるキャリア30に固着又は嵌入される構造となっている。
【0006】
外歯歯車5a、5bの外周にはトロコイド歯形(この従来例では、具体的にエピトロコイド平行曲線歯形が採用されている)の外歯9が設けられている。この外歯9によってケーシング12に固定された内歯歯車10と内接噛合している。
【0007】
内歯歯車10は、筒状の内歯枠32と、この内歯枠32の内周側に設置される複数の外ピン34と、を備える。具体的には、内歯枠32の内周に軸方向のピン溝33が形成され、そのピン溝33に上記外ピン34が設置されている。この外ピン34の外周面(内側に露出している部分)によって内歯11の歯面が形成される。
【0008】
入力軸1が1回転すると偏心体3a、3bが1回転する。この偏心体3a,3bの1回転により、外歯歯車5a、5bは入力軸1の周りで回転しようとするが、内歯歯車10との噛合状態によって自身の自由な自転が拘束されるため、外歯歯車5a、5bは、中心01を基準とした偏心揺動運動と、(内歯11と外歯9との歯数差に起因する)多少の自転運動を行うことになる。
【0009】
今、例えば外歯歯車5a、5bの歯数をn(図示例では、n=35となっている)、内歯歯車10の歯数をn+1(図示例では36)とした場合、その歯数差Nは1である。そのため、入力軸1の1回転毎に(つまり1偏心揺動運動毎に)外歯歯車5a、5bが内歯歯車10に対して1歯分だけずれる(自転する)ことになる。これは入力軸1の1回転が外歯歯車5a、5bの1/n(図示例では1/35、減速比としては35)の回転に減速されたことを意味する。なお、この外歯歯車5a、5bの回転方向は、入力側の回転と逆になる。
【0010】
外歯歯車5a、5bの回転は内ピン孔6a、6b及び内ピン7(内ローラ8B)の隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが該内ピン7を介して出力軸2に伝達される。
【0011】
減速比Iを一般的に表現すると、外歯の歯数をz1、内歯の歯数をz2とした場合、この入力・出力関係においては、I=(z1)/(z2−z1)となる。
【0012】
なお、上記構造においては、第2軸である出力軸2から出力を取り出すと共に、内歯歯車10を固定するようにしていたが、内歯歯車10から出力を取り出すと共に、前記例では出力軸2であった第2軸を固定することによっても、減速機を構成することが可能である。更に、これらの構造において、入・出力関係を逆転させることにより、「増速機」を構成することもできる。要は、外歯歯車5a、5bと内歯歯車10との相対回転を利用して、所定の増減速機能を得ようとするものである。又、この従来例では、歯数差Nが1の場合を示したが、1以上の歯数差に設定することもできる。1以上の歯数差については、本出願人によってなされた出願である特開平06−050394号公報等に詳しく記載されているので、ここでの説明は省略する。
【0013】
近年、複数段階の減速比Iが設定された複数の減速機20を、減速機シリーズとして客先に提示することが一般になされている。客先は所望の容量・減速比等に基づき、そのシリーズがら最適な減速機20を選択すれば、より安価且つ短納期で製品を得ることが出来るようになっている。
【0014】
例えば従来では、大きさ・歯数・歯形等が互いに異なる複数の外歯歯車5a、5b及び内歯歯車10を用意することによって、1段減速であるにも拘わらず減速比が6〜119の範囲内で複数段階に設定された減速機シリーズが実現されている。又、揺動内接噛合遊星歯車構造を2段以上組み合わせることにより、より広範囲の減速比に対応可能な減速機シリーズも実現されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
この種の揺動内接噛合遊星歯車構造の減速機20においては、製造コストの大きな部分が外歯歯車5a、5bに集中している。これは、外歯歯車5a、5bを高精度に製造しなければ、バックラッシ等によって円滑且つ静粛な動力伝達が困難となるからである。
【0016】
しかし、例えば上記のように減速機20をシリーズとして用意する場合、各減速比Iに対応した外歯歯車5a、5bを製造しなければならないので、各種歯車用素材、各種歯切り用カッタ等が必要となって製造コストが大幅に増大した。それに加えて、シリーズとして減速機20を提供するからには短期間で製造・納入することが必要となるが、受注生産的に外歯歯車5a、5bを製造していたのでは、短納期の要求を満足することが出来なかった。
【0017】
短納期を満足するためには、各種外歯歯車5a、5bを予め製造しておく必要がある。しかし、外歯歯車5a、5bは比較的大きい部材であるので在庫コストが増大し、製品コストの上昇につながっていた。つまり、短納期と製品コストの低減とが矛盾してしまい、結局、シリーズの場合どちらかの一方の要求を選択し、他方の要求は断念せざるを得ない状況であった。
【0018】
また、外歯歯車5a、5bの種類が異なると、内ピン7やキャリア30の設計変更が必要となっていた。具体的には、外歯歯車5a、5bが異なる毎に、内ピン7の配置が異なったり、キャリア30の大きさが異なったりする場合があり、これも短納期・低コストを阻害する要因になっていた。
【0019】
ところで、これらに多少関連するものとして、例えば特開平5−231482号公報に記載されている技術が存在する。この技術は、複数種類(具体的には、複数の偏心量)となる外歯歯車5a、5bにおいて、ベアリング4a、4bの外周径Uを常に一定に維持することで、(それだけを目的をしたものではないが)外歯歯車5a、5bにおけるベアリング用開口36の共有化を促進させて製造コストを低減しようとするものである。
【0020】
この技術によれば各外歯歯車5a、5bに対して共通の大きさのベアリング用の開口36を形成することが可能であるが、しかしながら、該開口は外歯歯車5a、5b全体における極一部に過ぎず、他の内ピン孔6a、6bや外歯9等についてはその都度形成しなければならないので、結局上記の問題は殆ど解決することが出来なかった。
【0021】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、外歯歯車用の素材、ひいては外歯歯車自体を共有化し、例えばシリーズとして増減速機を用意する際に大幅に製造コストを低減することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機の前記外歯歯車に用いられる歯車用素材において、少なくとも第1内周径及び第2内周径を有する前記内ピン孔用の複数の開口が予め形成されており、少なくとも、第1内周径の開口を前記内ピン孔に利用して第1偏心量で第1内歯歯車と噛合可能な第1外歯歯車と、第2内周径の開口を前記内ピン孔に利用して第2偏心量で第2内歯歯車と噛合可能な第2外歯歯車と、を構成できるようにしたことで上記目的を達成するものである。
【0023】
本発明では、素材自体に第1内周径及び第2内周径の開口が形成されており、偏心量に合わせて開口を使い分けるようにしている。従って、従来例で示したベアリング用開口を共有化する思想と組み合わせれば、完全に素材の共有化が達成されるので、特に複数種類の外歯歯車を大量生産する際に製造コストを大幅に低減することが出来る。一方で、本発明においては、ベアリング用開口を共有化する場合に限定されない。本発明は、あくまで「労力が要求される」複数の内ピン孔側について、素材側で共有化するものだからである。
【0024】
本第1発明では、前記第1内周径の開口が内ピン孔ピッチ円上に所定の間隔で複数形成されると共に、前記第2内周径の開口が、前記内ピン孔ピッチ円上に、前記第1内周径の開口の前記所定間隔と同一間隔で、且つ該第1内周径の開口と干渉しない程度に全体の位相をずらした状態で複数形成されていることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、内ピンを有する共通のキャリアを、第1外歯歯車及び第2外歯歯車に適用することが出来るようになる。従って、増減速機をシリーズとして用意する際にキャリア側の共有化を図ることも可能になり、部品点数を激減させることが出来る。
【0026】
なお、この第1、第2外歯歯車は、外歯が切られていない状態では、同一(単一種類)の歯車素材の中に内在されている。ここで、異なる外歯が切られた場合には、2種の第1、第2外歯歯車となって分離し、一方、例えば後述の歯形の共有化技術を用いて歯形を共通化した場合には、外観が全く同一の一種の外歯歯車が第1、第2外歯歯車を兼用し、内歯歯車との組合せ状態により、別機能を有する第1、第2外歯歯車となる。
【0027】
以上から、単一の歯車用素材から第1外歯歯車、又は第2外歯歯車を構成すれば上記のメリットを発揮することが出来る。
【0028】
上記の思想は複数の増減速比を設定してシリーズとして複数増減速機を用意する場合に特に有効である。
【0029】
具体的には、上記同様な揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機が、増・減速比を異にして複数用意された増減速機のシリーズにおいて、少なくとも、上記発明に係る歯車用素材を用いて構成された前記第1及び第2外歯歯車と、該第1外歯歯車に前記第1偏心量で噛合可能な第1内歯歯車と、該第2外歯歯車に前記第2偏心量で噛合可能な第2内歯歯車と、が用意されており、前記第1外歯歯車及び第1内歯歯車によって構成される第1増減速機と、前記第2外歯歯車及び第2内歯歯車によって構成され且つ該第1増減速機と異なる増減速比とされる第2増減速機とが、少なくともシリーズ構成要素に含まれているようにすればよい。
【0030】
シリーズとして客先に増減速機を提供する場合、各部品を膨大な在庫として確保しておかなければならない。そして更に、比較的多くの労力が投入される内ピン孔の加工を発注毎に行っていたのでは、短納期の要求を満足することが出来ない。
【0031】
しかし上記発明によれば、素材側で「予め」内ピン孔用の開口が形成されているので、受注生産的に外歯歯車を製造しても、短納期を達成することが可能になる。又、各種外歯歯車としてではなく素材としてストックすることが出来るので、在庫コストの低減を含めてより安価にシリーズを提供することが出来るようになる。
【0032】
その一方で本発明者は、外歯歯車の外歯が共有化されれば、更に製造コストが低減され、短納期で製品を納入できることに着目した。
【0033】
そこで、揺動内接噛合遊星歯車構造における外歯歯車の歯形等ついて更に解析した結果、「完全に理想的な歯形としなくても」同一の外歯の歯形で、複数の内歯歯車と組み合わせて共有化を図ることができることを発案した。これは解析の過程で、異なる減速比に採用されている外歯の複数の歯形において、歯元側に位置している「動力伝達の重要な役目を果たしている領域」の形状が互いに極めて近似していること知得したことに起因している。つまり「完全に理想的な歯形としなくても」歯元側の近似可能な範囲を利用して、外歯の歯形の共有化を図らんとするものである。
【0034】
具体的には、上記と同様な揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機が、増減速比を異にして複数用意された増減速機のシリーズにおいて、少なくとも第1内周径及び第2内周径の内ピン孔が形成される外歯歯車と、該外歯歯車に対して前記第1内周径の内ピン孔を利用して第1偏心量e1で組み合わされる第1内歯歯車、及び該外歯歯車に対して前記第2内周径の内ピン孔を利用して第2偏心量e2で組み合わされる第2内歯歯車と、が少なくとも用意され、更に、前記外歯歯車に組み合わされる前記第1内歯歯車のピッチ円半径をA1、該外歯歯車に組み合わされる前記第2内歯歯車のピッチ円半径をA2とした場合に、A1−e1=A2−e2=P(P:定数)となるように設定されると共に、前記外歯歯車の外歯が、サイクロイド又はトロコイド曲線を含み且つ歯先が該第1及び第2内歯歯車の双方と噛合する際に干渉しない形状とされ、前記外歯歯車及び第1内歯歯車によって構成される第1増減速機と、前記外歯歯車及び第2内歯歯車によって構成され且つ該第1増減速機と異なる増減速比とされる第2増減速機とが、少なくともシリーズ構成要素に含まれているようにすればよい。
【0035】
このようにすると、増減速機のシリーズを構成する際に、特定の外歯歯車の共有化を図ることが出来るので、歯車用の素材、歯切り用のカッタ等あらゆる面で製造コストを低減することが出来る。従って、広範囲の増減速比をカバーする増減速機のシリーズを構成する場合、外歯歯車の歯形の種類、ひいては外歯歯車の種類を激減させることが出来る。
【0036】
この特定の外歯歯車の外歯は、歯面を全体的にとらえれば、特定の複数の内歯歯車に総てに対して「理想的な」歯形となってない。それは幾何学的に事実上不可能と考えられている。しかし、サイクロイド又はトロコイド曲性(平行曲線も含む)を有する外歯歯車においては、動力伝達に重要な役割を果たしている歯元側の領域を限定的にとらえて共有化を図ることにより、複数の内歯歯車に対して理想的に近い外歯形状にすることが出来る。更に、外歯歯車における歯先側の形状が、特定の複数の内歯歯車と干渉が防止された形状となっている。これは、歯先側は本来動力伝達に重要な役割を有していないとの着想から、理想的な歯形から外れてしまっても構わないからである。つまり、動力伝達に重量な歯元側の共有化を図りながら、歯先側では噛み合いを無視して干渉の防止を優先させた極めて合理的な歯形となっている。
【0037】
これを、外歯歯車単体でとらえるとすれば、この外歯歯車には少なくとも第1内周径及び第2内周径を有する内ピン孔が形成されると共に、自身の外歯が、サイクロイド又はトロコイド曲線を含んだ状態で、第1内周径の内ピン孔を利用して組み合わされる第1内歯歯車及び第2内周径の内ピン孔を利用して組み合わされる第2内歯歯車の双方と噛合する際に干渉ない状態となっている。
【0038】
具体的に干渉を防止するためには、例えば、上記発明において、前記外歯歯車の外歯形状に含まれる前記サイクロイド又はトロコイド曲線上に、前記第1及び第2内歯歯車の各々と噛合する際にトルク変換率が最大となる各噛合点の双方が残された状態で、該外歯の前記歯先形状が、該サイクロイド又はトロコイド曲線から外れるように丸められることで、前記第1及び第2内歯歯車と前記外歯歯車が干渉せずに噛合可能とすればよい。
【0039】
なお、このトルクの変換率が最大となる噛合点とは、噛合点の歯面の法線がピッチ円の接線となる場合のその噛合点である。
【0040】
ところで、以上に示した発明では、内歯歯車に複数内径の内ピン孔を形成することで、外歯歯車(或いは素材)を共有化していたが、以下のような方法でも同様な効果を得ることが出来る。
【0041】
第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機が、増減速比を異にして複数用意された増減速機のシリーズにおいて、前記内ピン孔の内周径がYとなる外歯歯車と、該外歯歯車に対して互いに異なる各偏心量ei(i=1,2,…m)で組み合わされるm個の内歯歯車と、が少なくとも用意されると共に、該m個の内歯歯車と前記外歯歯車とが組み合わされる際の前記内ピンの各外径Di(i=1,2,…m)が、Di=Y−2*eiとなるように設定され、前記特定の外歯歯車、前記m個の内歯歯車、及び前記内ピンが組み合わされて構成される増減速比の異なる複数の増減速機が、少なくとも前記シリーズの構成要素に含まれているようにして、上記目的を達成しようとするものである。
【0042】
この発明によれば、内歯歯車に形成される内ピン孔に、異なる外径の内ピンが挿入されることで、異なる偏心量に対応できるようになっている。素材自体の重量・体積等が大きい外歯歯車を、偏心量が異なる毎に作り替えることは非合理的であるとの着眼から、外歯歯車間には共通の大きさの内ピン孔を形成し、偏心量が異なる場合には内ピンの外径を変化させて所定の遊嵌状態を形成するようになっている。
【0043】
その結果、外径の異なる内ピンを用意しなければならないが、コンパクトな内ピン自体の製造は容易であり、製造コスト、在庫コスト等の上昇は殆ど発生しない。一方で、外歯歯車の歯車用素材を共有することが出来るので、全体としてコストが大幅に低減される。
【0044】
なお、ここでいう内ピンの概念には、ピンに円筒上の内ローラが回転自在に設けられたローラタイプのものも含まれる。その場合には、「ローラの外径」が「内ピンの外径」に対応する。なお、ローラタイプの内ピンを用いる場合、内ローラの内径(即ち中心のピンの外径)は統一して外径のみを変化させ、結果として内ピンの外径を変更するようにすると良い。このようにすると、中心のピンの共有化を図ることもできる。
【0045】
この場合においても上記と全く同様に、外歯自体の共有化が図れれば完全な外歯歯車の共有化を達成することが出来る。
【0046】
具体的には、上記思想において、前記各偏心量eiとなる各内歯歯車の各ピッチ円半径をAi(i=1,2,…m)とした場合に、前記m個の内歯歯車と前記外歯歯車を組み合わせて構成される複数の前記増減速機が、それぞれ、Ai−ei=P(P:定数)となるように設定され、更に、前記外歯歯車に形成される外歯が、サイクロイド又はトロコイド曲線を含み且つ歯先が前記m個の内歯歯車の総てと噛合する際に干渉しない形状とされることで、該外歯歯車の総てが同一形状にすればよい。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
【0048】
図1及び図2に、本発明の第1実施形態に係る減速機シリーズの構成要素の一部である第1、第2減速機120、220を示す。なお、以下に具体的に説明する部分を除いては、図8、図9で示した従来の減速機20とほぼ同様の構成であるので全体の図示は省略し、更に、同一又は類似機能を有する部分・部材については下二桁を該減速機20と同じ符号を付することにより作用等の説明は省略する。
【0049】
これらの第1及び第2減速機120、220においては、完全に同一の外歯歯車105(歯数:100)が用いられている。この外歯歯車105に対して第1内歯歯車110(歯数:110)及び第2内歯歯車210(歯数:104)が偏心状態且つ内接噛合状態で配置されており、キャリア(図示省略)が、自身の内ピン107が外歯歯車105の内ピン孔106に遊嵌されることで外歯歯車105と共に自転するようになっている。このキャリア及び内ピン107も、第1及び第2減速機120、220において完全に同一のものが採用されている。
【0050】
この構造を一般的に表現すれば、外歯歯車の周囲の内側に内歯歯車の中心が位置することになる揺動内接噛合遊星歯車構造であり、国際特許分類F16H 1/32に属する特徴を有している。
【0051】
なお、この揺動内接噛合遊星歯車構造において、偏心体103、203が入力要素、キャリアが出力要素となって減速機能を有する場合、外歯歯車の歯数をz1、内歯歯車の歯数をz2すれば、減速比Iは、I=z1/(z2−z1)となる。従って、第1減速機120では減速比I1=10、第2減速機220では減速比I2=25となっている。
【0052】
内ピン107は、キャリアに嵌入・固定されるピン108Aと、該ピン108Aによって回転自在に支持され、外径がDとなる円筒状の内ローラ108Bと、を備えており、外歯歯車105の自転成分のみをキャリアに伝達するようになっている。なお、キャリア側から動力が入力されて揺動内接噛合遊星歯車構造が増速機として作用する場合は、内ピン107を介してキャリアの自転成分が外歯歯車105に伝達されることになる。内ピン107は、要はキャリアと外歯歯車105との間に介在して、両者の自転速度(固定要素となる場合は速度「零」である)を一致させる機能を有するものであればよい。
【0053】
図1に示される第1減速機120において、第1内歯歯車110と外歯歯車105とは、第1偏心量e1の偏心状態で互いに配置されている。外歯歯車105には、第1内周径Y1の内ピン孔106A及び第2内周径Y2(Y1>Y2)の内ピン孔106Bが形成されている。
【0054】
第1内周径Y1の内ピン孔106Aは内ピン孔ピッチ円C上に60度の間隔で6つ形成されており、第2内周径Y2の内ピン孔106Bは、同じ内ピンピッチ円C上に、第1内周径Y1の内ピン孔106Aと同一となる60度間隔で、且つ該内ピン孔106Aと干渉しないように全体的に30度位相をずらした状態で6つ形成されている。従って、周方向に第1内周径Y1、第2内周径Y2、第1内周径Y1・・・と交互に径の異なる状態で配置される。
【0055】
外歯歯車105の中心に挿入される外径F1となる第1偏心体103は、外歯歯車105と第1内歯歯車110との中心間距離を上記第1偏心量e1に維持して回転可能となっている。偏心体103の外周に設置されるベアリング104は、内径がF1であり外径がF2となっている。
【0056】
外歯歯車105に組み合わされる第1内歯歯車110は、ピッチ円半径がA1となっている。
【0057】
なお、このピッチ円とは、第1内歯歯車110の中心を基準としたピッチ点を通る円を意味するが、このピッチ点は外歯歯車105と第1内歯歯車110の各中心を結んだ直線と、各噛合点における歯面に対する法線とが交わる点を意味している。一般的に、このピッチ円の半径A1は、A1=(I1+1)*e1となり、この第1減速機120では実際にそのようになっている。
【0058】
第1減速機120のキャリアに設けられる内ピン107は、外歯歯車105における第1内周径Y1の6つの内ピン孔106Aに挿入される。従って、第2内周径の内ピン孔106Bの内周面は動力の伝達に利用されていない。ここで、上記第1偏心量e1と、内ピン孔106Aの第1内周径Y1と、内ピン107の外径Dとの関係は2*e1+D=Y1が成立するようになっている。
【0059】
次に、図2に示される第2減速機220について説明する。
【0060】
既に述べたように、第2減速機220の外歯歯車105は、第1減速機120の外歯歯車105と同じものである。
【0061】
第2内歯歯車210は、歯数が第1外歯歯車110より6枚少なく、その分だけ全体的に小さくなっている。外歯歯車105との第2偏心量をe2(<e1)とした場合、第2内歯歯車210のピッチ円半径A2はA2=(I2+1)*e2となる。
【0062】
第1減速機120と共有されている内ピン107は、外歯歯車105に形成される第2内周径Y2の内ピン孔106Bに遊嵌されている。従って、第2減速機220においては、第1内周径Y1の内ピン孔106Aの内周面が動力の伝達に利用されていない。上記第2偏心量e2と、内ピン孔106Bの第2内周径Y2と、内ピン107の外径Dとの関係は、2*e2+D=Y2が成立するようになっている。
【0063】
外歯歯車105の中心に挿入される外径F1となる第2偏心体203は、外歯歯車105と第2内歯歯車210との中心間距離を上記第2偏心量e2に維持して回転可能となっている。このように、第2偏心体203の外径を、第1偏心体103の外径(F1)と一致させたのは、第1及び第2減速機120、220において共通のベアリング104を用いるためである。
【0064】
なお、第1及び第2偏心体103、203の外径が異なる場合は、第1及び第2減速機120、220において、異なる内径のベアリングを採用すればよいが、その場合でも、ベアリングの外径は互いに一致させておくようにすることが好ましい。というのも、第1及び第2減速機120、220で、外歯歯車105側のベアリング用の開口を一致させることが出来るからである。
【0065】
以上の内容によれば、外歯歯車105における内径の異なる内ピン孔106A、106Bを使い分けることで、偏心量の異なる第1及び第2内歯歯車110、210を組み合わせることが出来ることを示した。このようにすれば、外歯歯車105に用いる「素材」を共有することが出来る。しかも第1実施形態では、更に進んで、歯形を統一して外歯歯車105自体の共有化が図られている。
【0066】
以下、外歯歯形の共有化について説明する。
【0067】
第1及び第2減速機120、220は、第1内歯歯車110のピッチ円半径A1と第1偏心量e1、第2内歯歯車210のピッチ円半径A2と第2偏心量e2から、A1−e1=A2−e2=P(P:定数)の関係が成立するように設定されている。
【0068】
外歯歯車105の外歯歯形には、サイクロイド又はトロコイド曲線(ここでは、カーテート・エピトロコイド平行曲線)が含まれており、且つ歯先側が第1及び第2内歯歯車110、210の双方と噛合する際に干渉しない形状となっている。
【0069】
このようにした結果、外歯の歯形が統一されるので、外歯歯車105自体が完全に共有化されている。
【0070】
この外歯歯車105の外歯は、歯面を全体的にとらえれば、第1及び第2内歯歯車110、210に双方に対しては「理想的な」歯形となってない。図3に拡大して模式的に示されるように、第1内歯歯車110に理想的な外歯歯形N1は、第2内歯歯車210との理想歯形N2と異なっており、両方に完全噛合状態を実現するのは幾何学的に不可能だからである。しかしここでは、サイクロイド又はトロコイド曲線(平行曲線も含む)を有する外歯歯車105においては、動力伝達に重要な役割を果たしている歯元側領域を限定的にとらえて統一し、双方の内歯歯車110、210に対して極めて理想的に近い外歯形状となっている。
【0071】
具現化する方法として、外歯歯車105における歯先側の形状を、第1及び第2内歯歯車110、210と干渉が防止される形状N3としている。これは、外歯の歯先側は本来動力伝達に重要な役割を有していないとの着想から、「完全噛み合い理論」から導かれる理想的な歯形から外れてしまっても構わないからである。つまり、動力伝達に重要な歯元側の共有化を図りながら、歯先側では噛み合いを無視して干渉の防止を優先させた極めて合理的な歯形となっている。
【0072】
詳細には、外歯歯車105の外歯形状に含まれる前記サイクロイド又はトロコイド曲線上に、第1及び第2内歯歯車110、210の各々と噛合する際にトルク変換率が最大となる各噛合点M1、M2の総てが残された状態で、外歯の歯先形状が、サイクロイド又はトロコイド曲線から外れるように丸められる(N3参照)ことで、第1及び第2外歯歯車210の双方と干渉せずに噛合可能となっている。
【0073】
なお、このトルク変換率が最大となる噛合点M1、M2は、噛合点の歯面の法線が、ピッチ円の接線となる場合の該噛合点であり、動力伝達に重要な役割をなす。又、ここでは歯形N3が採用されているが、第1内歯歯車110に理想的な外歯歯形N1にとって、歯先側が丸められた形状となるN2に歯形を設定しても、双方に対して干渉せずに噛合うことができる。
【0074】
次に、上記第1及び第2減速機を構成要素として含んでいる減速機のシリーズについて説明する。
【0075】
図4に示されるように、このシリーズは、4種類の外歯歯車(G1、G2、G3、G4)から構成される外歯歯車群Gと、4種類の内歯歯車(R1、R2、R3、R4)から構成される内歯歯車群Rと、を備えている。
【0076】
ここでは、上記外歯歯車105はG3に、上記第1内歯歯車110はR3に、第2内歯歯車210はR4に、第1減速機110はZ3に、第2減速機210はZ5に対応している。
【0077】
従来は、揺動内接噛合遊星歯車構造の減速機を設計する際に、外歯歯車と内歯歯車が1つの組として設計され、共有化の概念が存在していなかった。従って、各外歯歯車群Gと内歯歯車群Rとによって構成されるマトリックス上の対角線上の組み合わせであるZ1、Z2、Z3、Z4、4つの減速機「のみ」がシリーズとして構成されていたと考えることが出来る。
【0078】
しかし、既に詳細に説明したように、外歯歯車群Gにおける特定の外歯歯車G3は、特定の内歯歯車R3、R4の双方に共通に利用すことが出来るので、第1減速機Z3に加えて、新たな減速比となる第2減速機Z5が「(キャリアを含めて)部品の種類を増やさずに」構成されている。反対に考えれば、多数の減速比の減速機のシリーズを構成しようとする場合、外歯歯車やキャリア等が共有される分だけ部品点数を減少させることが出来る。
【0079】
以上に示した減速機シリーズによれば、外歯歯車105の共有化により予め製造しておいても在庫量が抑制されるので、短納期を達成することが可能になる。
又、外歯歯車105の用意する種類を少なくすることが出来るので、在庫コストの低減を含めてより安価にシリーズを提供することが出来るようになる。
【0080】
なお、第1実施形態においては、外歯の歯形の共有化が図られた結果、(完成部品である)外歯歯車自体が完全に共有されている。しかし、本発明ではそれに限定されず、外歯の形状は、組み合わされる内歯歯車の各々に対応させて独自に設定しても構わない。その場合には、第1内周径Y1及び第2内周径Y2の内ピン孔用の開口が形成される歯車用素材によって、素材側の共有化が達成される。
【0081】
歯車用素材の共有化により、少品種の素材をまとめて大量に用意することが出来ることになり、製造コストが低減される。また、複数の内ピン孔をその都度形成する必要が無くなるので、外歯歯車の製造時間が短縮されて短納期を達成できるようになる。
【0082】
勿論、歯車用素材に関しても、第1内周径Y1の開口が内ピン孔ピッチ円C上に所定の間隔で複数形成されていると共に、第2内周径Y2の開口が、上記内ピン孔ピッチ円C上に、第1内周径Y1の開口における所定間隔と同一間隔で、且つ該第1内周径Y1の開口と干渉しない程度に位相をずらした状態で複数形成することが好ましい。
【0083】
以上の第1実施形態では、1の外歯歯車に複数内径の内ピン孔を形成することで、外歯歯車(或いは素材)の共有化を達成していたが、以下に示す他の手法でも共有化を図ることが出来る。
【0084】
次に、本発明の第2実施形態に係る減速機のシリーズについて説明する。
【0085】
図5及び6には、減速機シリーズの構成要素の一部分である第1及び第2減速機320、420が示されている。なお、以下に具体的に説明する部分を除いては、図7で示した従来の減速機20とほぼ同様の構成であるので、同一又は類似する機能を有する部分・部材については下二桁を該減速機20と同じ符号を付することにより作用等の説明は省略する。
【0086】
なお、結論から先に述べると、この第1、第2減速機320、420では、完成部品である外歯歯車205、305自体は共有化されていない。それは、互いに外歯の歯形が異なっているからである。しかし、外歯の歯形を除いた他の部分については完全に同一となっている。その結果、同一の歯車用素材を用いて、第1外歯歯車205及び第2外歯歯車305が形成されている。以下詳細に説明する。
【0087】
図5の第1減速機320(減速比I1=10)における第1外歯歯車205(歯数:100)は、第1偏心量e1となる偏心状態で第1内歯歯車310(歯数:110)と組み合わされる。第1外歯歯車205には内周径がYとなる6つの内ピン孔206が形成される。
【0088】
この内ピン孔206には、内ローラ208Bの外径がD1となる内ピン207が挿入される。この内ピン207を介して第1外歯歯車205の自転成分がキャリア(図示省略)に伝達されるようになっている。この内ピン207の外径D1は、D1=Y2*e1となるように設定されている。
【0089】
図6の第2減速機420(減速比I2=25)における第2外歯歯車305(歯数:100)は、第2偏心量e2となる偏心状態で第2内歯歯車410(歯数:104)と組み合わされる。第2外歯歯車305には内周径がYとなる6つの内ピン孔306が形成されており、更に、第1外歯歯車205の内ピン孔206と完全に同じ配置となっている。
【0090】
この内ピン孔306には、内ローラ308Bの外径がD2となる内ピン307が挿入される。この内ピン307を介して第2外歯歯車305の自転成分がキャリアに伝達されるようになっている。この内ピン307の外径D2は、D2=Y2*e2となるように設定されている。
【0091】
第1及び第2減速機320、420の内ピン207、307におけるピン208A、308Aに関しては、同じ外径dのものが採用されており、内ローラ208B、308Bの外径のみを変更することにより内ピン207、307全体の外径が変更されている。このようにすれば、第1及び第2減速機320、420において、同一のピン208A(308A)及びキャリアを用いることが可能となる。なお、偏心体103、203及びベアリング104に関しては、第1実施形態と全く同様になっているので、重複説明を避けるためにここでの説明は省略する。
【0092】
以上のことからも明らかなように、第1及び第2外歯歯車205、305においては、内ピン孔用の内周径Yの6つの開口が予め形成されている同一の歯車用素材を用いて構成することが出来るようになっている。
【0093】
この第1及び第2減速機205、305を構成要素として含んでいる減速機シリーズは、図7に示されるように、4種類の外歯歯車(G1、G2、G3、G4)から構成される外歯歯車群Gと、4種類の内歯歯車(R1、R2、R3、R4)から構成される内歯歯車群Rと、を備えている。ここでは、上記第1外歯歯車205はG2に、第2外歯歯車305はG3に、上記第1内歯歯車310はR2に、第2内歯歯車410はR3に、第1減速機320はZ2に、第2減速機420はZ3に対応している。
【0094】
従来は、揺動内接噛合遊星歯車構造の減速機を設計する際に、外歯歯車と内歯歯車が1つの組として設計されており、共有化の概念が存在していなかった。従って、各外歯歯車群Gと内歯歯車群Rとによって構成されるマトリックス上の対角線上の組み合わせであるZ1、Z2、Z3、Z4の減速機に対応して、各外歯歯車(G1、G2、G3、G4)の内ピン孔の内周径は、互いに異なっていたと考えることが出来る。従って、各外歯歯車を製造する場合には、その都度内ピン孔を形成するか、或いは、各種内周径の内ピン孔が既に形成されている4種類の歯車用素材(M1、M2、M3、M4)を用意しておかなければならなかった。
【0095】
しかし、本第2実施形態では、外歯歯車群Gにおける特定の第1及び第2外歯歯車G2、G3の内ピン孔の内周径がYで統一されている。その結果、第1及び第2外歯歯車G2、G3に対しては、既に内ピン用の開口が形成されている共通の歯車用素材M5を適用することが出来る。これは、所定の外径D1,D2となる内ピンを適宜組み合わせることによって、シリーズ中における特定の内歯歯車R2,R3と互いに異なる偏心量e1、e2で組み合わせることができるようになっているからである。
【0096】
この場合、内ピンにおける内ローラは、第1及び第2減速機Z2、Z3で異なるものを用意しなければならないが、内ローラに関してはもともと安価、且つ短時間で製造出来るものであり、在庫スペースもあまり必要でない。一方で、外歯歯車G2、G3の歯車用素材M5が共有されているので、素材側の製造コスト及び在庫を減少させることが出来、素材からの外歯歯車G2、G3の製造時間も大幅に短縮される。
【0097】
このシリーズにおいては、外歯歯車G2、G3に形成される内ピン孔に、2種類の外径D1、D2の内ピンが挿入されることで、2種類の偏心量e1、e2に対応できるようになっている。しかし、本発明はそれに限定されず、例えば3種類の外径の内ピンを用いれば、3種類の偏心量に対応することもでき、勿論それ以上も十分可能である。又、第1実施形態と同様に、外歯の歯形の共有化を図れば、完成部品である外歯歯車自体を共有することも可能である。
【0098】
なお上記の第1及び第2実施形態では、内ピンとして、ピンに円筒上の内ローラが回転自在に設けられたローラタイプに限って示したが、例えば、中実構造の単一の内ピン(非ローラタイプ)であっても当然に構わない。又、各シリーズにおいて、部分的に素材或いは外歯歯車が共有されている場合を示したが、要はシリーズ全体あるいはその一部において本発明に係る何らかの共有化が図られていれば良い。また、外歯歯車が共有される場合には、シリーズにおけるマトリックスを構成する外歯歯車群Gと内歯歯車Rの数が異なる場合も十分に考えられる。例えば、1の外歯歯車G1に対して、4つの内歯歯車R1、R2、R3、R4を組み合わせて、4つの減速機のシリーズを構成することも可能である。
【0099】
なお、本第1実施形態と第2実施形態の各思想を組み合わせて利用することも可能である。その場合には、例えば第1実施形態の各内周径の内ピン孔に対して、複数外径の内ピンを組み合わせるようにすれば良く、更なる多様な共有状態を得ることができる。
【0100】
なお、以上の実施例では減速機に限って説明したが、入出力関係を適宜変更すれば増速機を構成することもできる。
【0101】
又、ここでは第1、第2実施形態を示したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば今回示した形態以外の各種実施形態も存在する。また、明細書全文に表れてくる部材の形容(機能・形状)はあくまで例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
【0102】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば増減速比の異なる増減速機をシリーズとして用意する場合に、外歯歯車の素材、或いは外歯歯車自体を複数の増減速機間で共有することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る減速機シリーズ中の第1の減速機を示す断面図
【図2】同減速機シリーズ中の第2の減速機を示す断面図
【図3】同減速機に適用される外歯歯車の歯形を拡大して示した概念図
【図4】同減速機シリーズの構成を示すマトリックス
【図5】本発明の第2実施形態に係る減速機シリーズ中の第1の減速機を示す断面図
【図6】同減速機シリーズ中の第2の減速機を示す断面図
【図7】同減速機シリーズの構成を示すマトリックス
【図8】従来の減速機シリーズ中の減速機を示す断面図
【図9】図8のIX−IX断面図
【符号の説明】
105、205、305…外歯歯車
110、210、310、410…内歯歯車
103、303…第1偏心体
203、403…第2偏心体
120、320…第1減速機
220、420…第2減速機
106A、106B、206、306…内ピン孔
107、207、307…内ピン
108A、208A、308A…ピン
108B、208B、308B…内ローラ

Claims (8)

  1. 第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機の前記外歯歯車に用いられる歯車用素材において、
    少なくとも第1内周径及び第2内周径を有する前記内ピン孔用の複数の開口が予め形成されており、少なくとも、第1内周径の開口を前記内ピン孔に利用して第1偏心量で第1内歯歯車と噛合可能な第1外歯歯車と、第2内周径の開口を前記内ピン孔に利用して第2偏心量で第2内歯歯車と噛合可能な第2外歯歯車と、を構成できるようにした
    ことを特徴とする外歯歯車に用いられる歯車用素材。
  2. 請求項1において、
    前記第1内周径の開口が内ピン孔ピッチ円上に所定の間隔で複数形成されると共に、前記第2内周径の開口が、前記内ピン孔ピッチ円上に、前記第1内周径の開口の前記所定間隔と同一間隔で、且つ該第1内周径の開口と干渉しない程度に全体の位相をずらした状態で複数形成されている
    ことを特徴とする外歯歯車に用いられる歯車用素材。
  3. 第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機の前記外歯歯車であって、
    請求項1又は2に記載された歯車用素材によって構成された前記第1外歯歯車、又は前記第2外歯歯車のいずれかとして、前記増減速機中に組み込み可能とされていることを特徴とする外歯歯車。
  4. 第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機が、増減速比を異にして複数用意された増減速機のシリーズにおいて、
    少なくとも、請求項1又は2に記載の歯車用素材を用いて構成された前記第1及び第2外歯歯車と、該第1外歯歯車に前記第1偏心量で噛合可能な第1内歯歯車と、該第2外歯歯車に前記第2偏心量で噛合可能な第2内歯歯車と、が用意されており、
    前記第1外歯歯車及び第1内歯歯車によって構成される第1増減速機と、前記第2外歯歯車及び第2内歯歯車によって構成され且つ該第1増減速機と異なる増減速比とされる第2増減速機とが、少なくともシリーズ構成要素に含まれている
    ことを特徴とする増減速機のシリーズ。
  5. 第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機が、増減速比を異にして複数用意された増減速機のシリーズにおいて、
    少なくとも第1内周径及び第2内周径の内ピン孔が形成された外歯歯車と、
    該外歯歯車に対して前記第1内周径の内ピン孔を利用して第1偏心量e1で組み合わされる第1内歯歯車、及び該外歯歯車に対して前記第2内周径の内ピン孔を利用して第2偏心量e2で組み合わされる第2内歯歯車と、が少なくとも用意され、更に、
    前記外歯歯車に組み合わされる前記第1内歯歯車のピッチ円半径をA1、該外歯歯車に組み合わされる前記第2内歯歯車のピッチ円半径をA2とした場合に、A1−e1=A2−e2=P(P:定数)
    となるように設定されると共に、
    前記外歯歯車の外歯が、サイクロイド又はトロコイド曲線を含み且つ歯先が該第1及び第2内歯歯車の双方と噛合する際に干渉しない形状とされ、
    前記外歯歯車及び第1内歯歯車によって構成される第1増減速機と、前記外歯歯車及び第2内歯歯車によって構成され且つ該第1増減速機と異なる増減速比とされる第2増減速機とが、少なくともシリーズ構成要素に含まれている
    ことを特徴とする増減速機のシリーズ。
  6. 第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機の前記外歯歯車において、
    少なくとも第1内周径及び第2内周径を有する前記内ピン孔が形成されると共に、
    自身の外歯が、サイクロイド又はトロコイド曲線を含んだ状態で、前記第1内周径の内ピン孔を利用して組み合わされる第1内歯歯車及び前記第2内周径の内ピン孔を利用して組み合わされる第2内歯歯車の双方と噛合する際に干渉しない形状とされている
    ことを特徴とする外歯歯車。
  7. 第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転が可能とされた外歯歯車と、該外歯歯車に内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の内ピン孔に遊嵌される内ピンによって該外歯歯車の自転成分のみが伝達される第2軸と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の増減速機が、増減速比を異にして複数用意された増減速機のシリーズにおいて、
    前記内ピン孔の内周径がYとなる外歯歯車と、該外歯歯車に対して互いに異なる各偏心量ei(i=1,2,…m)で組み合わされるm個の内歯歯車と、が少なくとも用意されると共に、
    該m個の内歯歯車と前記外歯歯車とが組み合わされる際の前記内ピンの各外径Di(i=1,2,…m)が、Di=Y−2*eiとなるように設定され、
    前記特定の外歯歯車、前記m個の内歯歯車、及び前記内ピンが組み合わされて構成される増減速比の異なる複数の増減速機が、少なくとも前記シリーズの構成要素に含まれている
    ことを特徴とする増減速機のシリーズ。
  8. 請求項7において、
    前記各偏心量eiとなる各内歯歯車の各ピッチ円半径をAi(i=1,2,…m)とした場合に、前記m個の内歯歯車と前記外歯歯車を組み合わせて構成される複数の前記増減速機が、それぞれ、
    Ai−ei=P(P:定数)
    となるように設定され、更に、
    前記外歯歯車に形成される外歯が、サイクロイド又はトロコイド曲線を含み且つ歯先が前記m個の内歯歯車の総てと噛合する際に干渉しない形状とされることで、該外歯歯車の総てが同一形状となっている
    ことを特徴とする増減速機のシリーズ。
JP2000222432A 2000-07-24 2000-07-24 歯車用素材、外歯歯車、及び増減速機のシリーズ Expired - Fee Related JP4610052B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000222432A JP4610052B2 (ja) 2000-07-24 2000-07-24 歯車用素材、外歯歯車、及び増減速機のシリーズ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000222432A JP4610052B2 (ja) 2000-07-24 2000-07-24 歯車用素材、外歯歯車、及び増減速機のシリーズ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002039286A JP2002039286A (ja) 2002-02-06
JP4610052B2 true JP4610052B2 (ja) 2011-01-12

Family

ID=18716674

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000222432A Expired - Fee Related JP4610052B2 (ja) 2000-07-24 2000-07-24 歯車用素材、外歯歯車、及び増減速機のシリーズ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4610052B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6242065B2 (ja) * 2013-03-29 2017-12-06 住友重機械工業株式会社 減速機群の製造方法
JP6242066B2 (ja) * 2013-03-29 2017-12-06 住友重機械工業株式会社 減速機群の製造方法
CN111442064B (zh) * 2019-01-17 2021-08-17 台达电子工业股份有限公司 具动平衡的摆线型减速机

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2639847B2 (ja) * 1989-12-08 1997-08-13 住友重機械工業株式会社 遊星歯車増減速機
JP2866246B2 (ja) * 1992-02-18 1999-03-08 住友重機械工業株式会社 内接噛合式遊星歯車構造を採用した増減速機シリーズ
JP2866245B2 (ja) * 1992-03-25 1999-03-08 住友重機械工業株式会社 内接噛合遊星歯車構造のシリーズ
JP3854345B2 (ja) * 1996-10-02 2006-12-06 住友重機械工業株式会社 変速機のシリーズ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002039286A (ja) 2002-02-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3934344B2 (ja) 単純遊星歯車機構の遊星歯車の支持構造
JPH03244852A (ja) 内接噛合型遊星歯車増減速機
JP5970650B2 (ja) サイクロイド歯車および歯車機構
WO2009008767A1 (ru) Зубчатое зацепление колес (варианты) и планетарный зубчатый механизм на его основе (варианты)
CN106402285B (zh) 一种可增大输出扭矩的偏心摆动型行星齿轮减速装置
JP2542510B2 (ja) 遊星歯車機構を有する増減速機
JP5256181B2 (ja) 歯車装置
JP3854346B2 (ja) ギヤドモータのシリーズ
JP4319344B2 (ja) 増減速機のシリーズ
JP4610052B2 (ja) 歯車用素材、外歯歯車、及び増減速機のシリーズ
JP2004286044A (ja) 内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置
JPH06241282A (ja) 内接噛合遊星歯車構造を採用したギヤドモータ及びそのシリーズ
JP3847948B2 (ja) 内接噛合遊星歯車構造の増減速機
TWI431209B (zh) 偏心凸輪式變速機構
JP4245882B2 (ja) 遊星歯車装置
JP5540442B1 (ja) 増減速機のシリーズと増減速機
JP4610108B2 (ja) 揺動内接噛合遊星歯車機構、及び角度伝達誤差低減方法
JP2896069B2 (ja) 内接噛合遊星歯車構造
CN109268453B (zh) 双环减速器
JP4746769B2 (ja) 増減速機のシリーズ
JP2012122582A (ja) 遊星歯車機構およびバルブ用アクチュエータ
KR102311330B1 (ko) 사이클로이드 감속기
JP2015175380A (ja) 減速機およびアクチュエータ
JP3854345B2 (ja) 変速機のシリーズ
JP4388677B2 (ja) 揺動内接噛合遊星歯車装置のシリーズ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070216

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100302

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100330

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100528

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101005

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101012

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131022

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees