JP4604976B2 - 光硬化性樹脂組成物、およびこれを用いた液晶表示素子または固体撮像素子用の部材 - Google Patents
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Description
カラーフィルターに形成される保護膜は、画素部の保護とカラーフィルターの平坦化の役割を果たしている。カラー液晶表示装置では、カラーフィルターの透明基板表面のうねりに起因するギャップムラ、R,GおよびBの各画素間でのギャップムラ、或いは各画素内でのギャップムラなどの存在により透明電極膜の平坦性が損なわれ、色ムラ或いはコントラストムラを生じ、その結果、画像品質の低下をきたすという問題がある。従って、保護膜には高い平坦性が求められる。
上記したスペーサーにおいては、カラーフィルター製造時または液晶表示素子の運搬時などの衝撃によって破壊してしまわないこと、液晶セルギャップを一定に保つことが求められる。このため、スペーサーを形成する樹脂硬化物には、十分な硬度と弾性復元率を有していることが必要である。
また、液晶層への有機物の溶出、イオン性不純物の染み出しは、液晶層の汚染を招き、その結果、著しい画像品質の低下を招く恐れがある。このため、液晶画像素子に用いられる着色層、ブラックマトリックス、保護膜およびスペーサー等の部材には、イオン性不純物による汚染を防ぐ能力(イオンバリア性)が求められる。
カラーフィルターは液晶パネルを組み立てる途中で高温に晒され、例えば、配向膜を形成する工程や、蒸着(スパッタ)によってITO(Indium Tin Oxide)透明電極層が形成される場合においては250℃程度で約1時間ほど加熱される。このような場合、高温の加熱プロセス中に変色し、黄変の招来や透明性の低下などの問題を生じるおそれがある。このため、カラーフィルターに用いられる光硬化性樹脂組成物は、十分な耐熱変色性を備えている必要がある。
〔1〕下記の成分(A)、(B)、(C)を、それぞれ(A)2〜80重量%、(B)5〜90重量%、(C)1〜10重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、99重量%以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(A)下記式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)を1.5〜35重量%、下記式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)を10〜50重量%、下記式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を3〜45重量%、および下記式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を20〜65重量%有するフマレート系共重合体
(B)光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物
(C)光重合開始剤
〔2〕フマレート系共重合体(A)中のエチレン性不飽和結合の含有濃度が2.1〜4.1mmol/gである前記の〔1〕に記載の光硬化性樹脂組成物
〔4〕カラーフィルターの製造に用いられる前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
〔5〕前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を有するRGB用画素またはブラックマトリックス。
〔7〕透明基板上に形成された着色層と、対向させるべき電極基板との間に設けられたスペーサーが前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであるスペーサー。
〔8〕前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を部材として用いたカラーフィルター。
本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化させて使用することにより、液晶表示素子や固体撮像素子用の部材として好適に使用できる保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックス、スペーサー、およびカラーフィルターを得ることができる。
また、本発明においては、本発明の光硬化性樹脂組成物の各成分の配合割合は固形分に対する割合をもって表すものとする。固形分とは、溶剤を除く全ての配合成分の総和をいうものであり、エポキシ樹脂(D)等のうち、液状の成分も固形分に含まれる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、下記の成分(A)、(B)、(C)を、それぞれ(A)2〜80重量%、(B)5〜90重量%、(C)1〜10重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、99重量%以下であることを特徴とする。
(A)フマレート系共重合体
(B)光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物
(C)光重合開始剤
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いるフマレート系共重合体(A)は、下記式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)を1.5〜35重量%、下記式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)を10〜50重量%、下記式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を3〜45重量%、および下記式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を20〜65重量%有する。
<フマレート性の構成単位(a1)>
式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)は、主として樹脂硬化物の耐熱変色性、透明性に寄与する成分である。フマレート性の構成単位(a1)をフマレート系共重合体(A)に導入するために使用される単量体としては、下記式(5)で表されるフマレートを使用することができる。
前記の式(1)および式(5)中のR1、R2が炭素数3〜8の分岐アルキル基または置換分岐アルキルである官能基の具体例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−アミル基、3−ペンチル基、2,3−ジメチル−3−ペンチル基、tert−アミル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基等が挙げられる。
前記フマレートの中でも、ジイソプロピルフマレート、ジ−sec−ブチルフマレート、ジ−tert−ブチルフマレート、ジシクロヘキシルフマレート、ジ−tert−アミルフマレートが入手性の点から好ましい。
前記の式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)は、アルカリ現像性に寄与する成分であり、その含有割合は、樹脂に要求されるアルカリ可溶性の程度により調整される。酸性官能基を有する構成単位(a2)をフマレート系共重合体(A)に導入するために使用される単量体としては、エチレン性不飽和結合と酸性官能基を有する化合物を使用することができる。
酸性官能基を有する構成単位(a2)を導入するために使用される単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸を用いることができ、この中でもフマレートとの共重合性が良いとの理由から、式(2)中のR3はメチル基またはカルボキシメチル基であることが好ましい。
フマレート系共重合体(A)中の酸性官能基を有する構成単位(a2)の含有量は、10〜50重量%であり、好ましくは20〜40重量%である。フマレート系共重合体(A)中に含まれる酸性官能基を有する構成単位(a2)が10重量%よりも少ない場合は、現像性が悪化し、残渣などの問題を生じる。50重量%よりも多い場合は、現像性が良すぎてパターン露光時のパターン形状を制御しにくい等の問題が生じる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、前記の式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を、本発明に用いられるフマレート系共重合体(A)中に含有することにより、パターン光硬化後のアルカリ現像性と、その後のカラーフィルター製造プロセス条件における耐熱安定性とを同時に付与することが出来る。これは、芳香族炭素環を有する化合物の使用量からすると、フマレート系共重合体(A)のガラス転移点を上昇させる効果からだけでは説明が付かない。作用機構が証明されたわけではないがおそらくは、もともと共重合性が十分ではないフマレートとアクリレートとの双方に対して良好な共重合性を有する芳香族炭素環を有する化合物を特定量用いることによって、フマレート性の構成単位(a1)と酸性官能基を有する構成単位(a2)のセグメント偏在が解消され、均一な架橋構造構造が形成されるとともに、フマレート系共重合体(A)の分子鎖全体がアルカリ溶液に対する溶解性が著しく向上する相乗効果が得られているためであると推測される。
芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を導入するために使用される単量体としては、具体的には例えば、具体的には、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、およびα−エチルスチレン等が挙げられる。
前記の式(3)において、R4としては好ましいのは水素基であり、R5としては好ましいのはフェニル基である。相当する単量体としては、具体的には、スチレンがフマレート系共重合体(A)に用いる他の単量体との共重合性、および入手性の面から好ましい。
前記の式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)は、光硬化性樹脂組成物の反応硬化性に寄与する成分であり、要求される硬化性の高さに応じて、含有割合を高めればよい。硬化性に寄与するエチレン性不飽和結合は、単量体成分と共存させると重合条件下で一緒に共重合してしまうので、共重合体を形成した後で公知の反応を用いた変性処理により共重合体に導入する。
エチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を共重合体に導入するためには、まず、フマレートと(メタ)アクリル酸またはイタコン酸を共重合した後、上記(メタ)アクリル酸またはイタコン酸由来のカルボキシル基にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させてエステル化変性すればよい。アルカリ現像性が不足する場合には、未変性のカルボキシル基の濃度を増加させてやればよい。
式(5)に含まれるR9は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を例示できる。R10は好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。
式(8)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示される。
このヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを共重合させることによって、下記式(9)で表される水酸基を有する構成単位がフマレート系共重合体(A)中に導入される。
式(10)の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートとしては、メタクリロイルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等が例示される。これらの中では、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基(−NCO)と結合したもの、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等を使用するのが好ましい。これらのうち、メタクリロイルイソシアネートは、下記式(14)で表され、例えば、日本ペイント(株)製「MAI」等の商品名で市販されている。また、2−メタクリロイルエチルイソシアネートは、例えば、昭和電工(株)製「カレンズMOI」等の商品名で市販されている。
例えば、上記式(11)で表されるメタクリロイルイソシアネート、上記式(6)で表されるグリシジル(メタ)アクリレート、上記式(7)で表される脂環族エポキシ化合物等を用いることが出来る。これらは、先に例示した単量体と同様、反応制御や製造が容易である。これらの単量体を用いて共重合体を形成した後、導入されたイソシアネート基やエポキシ基と反応する官能基(水酸基やカルボキシル基)とエチレン性不飽和結合とを有する化合物を反応させることによって、エチレン性不飽和結合を有する構成単位を導入することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いるフマレート系共重合体(A)中のエチレン性不飽和結合の量は含有濃度として、好ましくは2.1〜4.1mmol/g、さらに好ましくは2.1〜3.5mmol/gとなるように共重合に用いる単量体の仕込み比率と変性率を調節する。エチレン性不飽和結合の量を上記の範囲とすることにより、樹脂硬化物の耐熱変色性、高硬度を得られ、さらに樹脂硬化物を液晶表示素子または固体撮像素子用の部材として使用する上での基本的な性能、すなわちイオンバリア性、耐薬品性等の性能をも申し分なく満たすことができる。
本発明に用いるフマレート系共重合体(A)は、上記の(a1)〜(a4)の構成単位以外に、その他の構成単位を有していてもよい。その他の構成単位は、フマレート系共重合体(A)の(a1)〜(a4)の構成単位を導入するための各々の単量体との共重合性が良く、フマレート系共重合体(A)の物性を大きく変えない単量体を用いて導入する。具体的には、下記式(12)で表されるエステル基を有する構成単位が好ましく挙げられる。
上記式中に含まれるR18はアルキル基またはアラルキル基であり、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が例示される。この構成単位を導入するために使用される単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル等の(メタ)アクリル酸のエステル類が例示される。
本発明に用いるフマレート系共重合体(A)中のその他の構成単位の含有量は、32重量%以下、好ましくは20重量%以下である。その他の構成単位の含有量が32重量%を上回るとフマレート系共重合体(A)の物性が変わり、本願の目的とする効果を得ることができない。
上記の各構成単位をフマレート系共重合体(A)に導入するために使用される単量体は、単独でも、また2種以上を混合して使用してもよい。
原料重合体は、ランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれであってよい。ランダム共重合体を製造する場合には、各構成単位を誘導するそれぞれの単量体、触媒等を含有する配合組成物を、溶剤を入れた重合槽中に80〜110℃の温度条件で2〜5時間かけて滴下し、熟成させることにより重合させることかできる。
フマレート性の構成単位(a1)、酸性官能基を有する構成単位(a2)、および芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を含有する原料重合体に、エチレン性不飽和結合を導入するためにグリシジル(メタ)アクリレートを反応させる場合には、該グリシジル(メタ)アクリレートを少量の触媒の存在下、原料重合体の溶液中に全量を一度に投入してから一定時間反応を続けるか、或いは、少しずつ滴下することによって、前記の式(14)で表される共重合体が得られる。
エチレン性不飽和結合を有するイソシアネート化合物は、原料重合体のアルコール性水酸基に対してはイソシアネート基を介して付加反応を起こしてウレタン結合を形成する。その結果、原料重合体における前記の式(9)で表される水酸基含有単位の部分にエチレン性不飽和結合が導入され、前記の式(5)の構成単位が形成される。
このようにして得られるフマレート系共重合体(A)を、カラーフィルターの着色層、該着色層を被覆する保護膜または液晶パネルのセルギャップを維持するための柱状スペーサーを形成するために用いる場合には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜100,000、好ましくは8,000〜70,000の範囲に調節するのが好ましい。重量平均分子量が5,000より小さいと現像性が良すぎてパターン露光時のパターン形状を制御しにくく、また、パターンが作製できる場合でも最終的な膜厚が減る(膜減り)等の問題がある。一方、重量平均分子量がl00,000より大きいと、レジスト化した時の粘度が高くなりすぎて塗工適性が低下したり、現像性が悪くなりパターンが抜けにくくなるなどの問題がある。
したがって、フマレート系共重合体(A)を用いて、カラーフィルターの保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックスまたはスペーサーを形成するためのアルカリ現像可能な光硬化性樹脂組成物を調製することができ、カラーフィルターの細部を形成するのに好適に用いることができる。フマレート系共重合体(A)を用いた光硬化性樹脂組成物は、特に、カラーフィルターの着色層、保護膜または液晶パネルのセルギャップを維持するための柱状スペーサーを形成するのに適しているが、耐熱変色性に優れており黄変し難いので、そのなかでも画素部や保護膜などの高い透明性を要求される部分を形成するのに非常に適している。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、フマレート系共重合体(A)を通常2〜80重量%、好ましくは10〜50重量%含有する。フマレート系共重合体(A)の含有量が80重量%よりも多いと粘度が高くなりすぎ、その結果、流動性が低下し塗布性に悪くなる場合がある。また、フマレート系共重合体(A)の含有量が2重量%よりも少ないと、粘度が低くなりすぎ、その結果、塗布乾燥後の塗膜安定性が不十分であり、露光、現像適性を損なう等の問題を生じる場合がある。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を含有する。光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、光硬化性樹脂組成物を硬化させる作用を有する、2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能重合性化合物である。具体的には例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を2個有する多価アルコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の分子量10000以下のエチレン性不飽和結合を2個有するポリオールジ(メタ)アクリレート;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を3個有する多価アルコールジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を4個以上有する多価アルコールジ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
1分子中のエチレン性不飽和結合の数は、3個以上が好ましく、反応性や架橋密度を向上させる上では5個以上がより好ましい。
前記の光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、光重合開始剤(C)とは、紫外線、電離放射線、可視光、或いは、その他の各波長、特に365nm以下のエネルギー線で活性化し得るラジカル重合開始剤をいう。具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントン並びにチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;アクリジン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などが挙げられる。
これらの中でも好ましくは、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)商品名「イルガキュア184」)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(同「イルガキュア651」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(同「ダロキュア1173」)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4−モルフォリノブチルフェノン(同「イルガキュア369」)、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノ−プロピオフェノン(同「イルガキュア907」)、1,7−(9−アクリジニル)ヘプタン(旭電化工業(株)商品名「アデカオプトマーN−1717」)、および2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成(株)商品名「ビミダゾール」)を挙げることができる。
本発明に用いる光重合開始剤(C)は、1種のみまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのがよい。
なお、光硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、光重合開始剤(C)は、前記フマレート系共重合体(A)を含有する光硬化性樹脂組成物に最初から添加しておいてもよいが、比較的長期間保存する場合には、使用直前に光硬化性樹脂組成物中に分散或いは溶解することが好ましい。
さらに本発明の光硬化性樹脂組成物の中には、耐熱性、密着性、耐薬品性(特に耐アルカリ性)の向上を図る目的で、エポキシ樹脂(D)を配合することができる。本発明において、エポキシ樹脂とは、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物を言う。具体的には例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてエピコート1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)など、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としてエピコート807(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)など、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としてEPPN201、202(商品名、日本化薬(株)製)、エピコート154(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)など、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としてEOCN102、103S、104S、1020、1025、1027(商品名、日本化薬(株)製)、エピコート180S(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)などを例示できる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂や脂肪族ポリグリシジルエーテルを例示することもできる。
本発明の光硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂(D)を配合する場合には、前記の(A)(B)両成分の合計が94重量%以下であることが好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、反応希釈剤としてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドンなどの単官能性単量体を添加することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、界面活性剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を配合することができる。
有機顔料の例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyersand Colourists社発行)においてピグメントに分類されている化合物を挙げることができる。また、前記無機顔料あるいは体質顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において色材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
光硬化性樹脂組成物に色材を配合する場合には、色材を均一かつ安定して分散させるために、該光硬化性樹脂組成物中に分散剤を配合してもよい。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
硬化後の皮膜は、耐熱変色性に優れており、黄変などの変色や透明性を低下し難い。また、フマレート系共重合体(A)と光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の間にも架橋結合が形成されるので、架橋の反応点密度が高くなり露光感度、および、皮膜の強度や硬度が向上する。
材料の調製に用いた測定方法、試験方法を次に示す。
<酸価>
酸価は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準じて、テトラヒドロフラン(THF)溶液に、一定量の樹脂を溶解させ、フェノールフタレインを指示薬としてKOH/エタノール溶液にて滴定し、測定を行った。
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
<380nm光線透過率>
得られたガラス基板上の硬化膜の光(380nm)の透過率を、ガラス基板
をリファレンスとし、吸光計(島津(株)製、UV−3100PC)を用いて測定した。
<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」のうち、手掻き法で3H以上の鉛筆硬度を示す時に良好と判定した。
<耐熱性試験(250℃×1h.)>
硬化膜付きのガラス基板をクリーンオーブンにより、250℃で1時間加熱し、加熱試験硬化膜を得た。このようにして得られたガラス基板上の加熱試験硬化膜の可視光(380〜780nm)の透過率を、ガラス基板をリファレンスとし、吸光計(UV−3100PC、島津(株)製)を用いて測定した。
保護膜を設けたガラス基板を80℃の純水に1時間浸漬後にJIS K5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」を行った結果の膜残存率が95%〜100%のときに良好と判定した。
<水蒸気透過度>
イオンバリア性の評価は、水蒸気透過度の測定を用いて行った。硬化膜をJIS K7129:1992「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)」のB法に準じて、水蒸気透過度測定装置MOCON社製PERMATRANを用いて40℃、90%R.H.条件で行った結果が、5.0g/m2/day以下のとき良好と判定した。
<ITOスパッタ耐性>
保護膜を設けたガラス基板上に、10〜15Ω/cm2の抵抗値が得られるように、230℃のスパッタ処理によりITO膜を形成させた。この基板のヘイズ値(Hz)値をDIRECT READING HAZE METER((株)東洋精機製作所製)を用いて評価した結果が、1.0以下である時に良好と判定した。
R画素パターンを形成した基板を、クリーンオーブンにより、250℃で1時間加熱し、得られた硬化膜の加熱試験前後の色差ΔEabを、顕微分光測定装置 DSP−SP100(オリンパス光学工業(株)製)を用いて、CIE1976規格に基づき算出した。評価基準は、250℃で1時間加熱前後のΔEabが1未満の場合に○、ΔEabが1以上3未満の時に△、3以上のときに×とした。
<アルカリ現像性>
10cm画のガラス基板上に、スピンコーターにより、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.2μmになるように形成した塗布膜形成した。塗布膜から100μmの距離に直径10μmのドットパターンを有するネガ型のフォトマスク配置し、プロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、100mJ/cm2の強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、光硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施した後に形成された樹脂パターンの直径の、フォトマスクのドットパターンに対する寸法誤差が0〜2%であった場合に◎、2〜5%であった場合に○、5〜10%であった場合に△、10〜20%であった場合に×、20%以上であった場合に××とした。○以上の性能があれば、実用に供することができる。
<フマレート系共重合体A−1の前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):174.4g
・イタコン酸:279.5g(2.1mol)
・スチレン(St):546.1g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)100.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気下の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A−1の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−1の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液へ、グリシジルメタクリレート(GMA)491.5g(3.5mol)、ピリジン35.0g、ハイドロキノン1.1gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応してフマレート系共重合体A−1の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−1の重量平均分子量は、15,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価30mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.53mmol/gであり、GMAによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が2.2mmol/gであるフマレート系共重合体A−1が生成していることが確認できた。
<フマレート系共重合体A−2の前駆体の合成>
下記単量体の分量を
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):230.0g
・アクリル酸(AA):701.1g(9.7mol)
・スチレン(St):68.9g
に変更した以外は前記合成例1と同様の操作を行うことにより、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A-2の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−2の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液に対するグリシジルメタクリレート(GMA)の仕込み量を1198.4g(8.4mol)、ピリジン85.3gに変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行うことにより、フマレート系共重合体A−2の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−2の重量平均分子量は、34,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価32mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.57mmol/gであり、GMAによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が3.7mmol/gであるフマレート系共重合体A−2が生成していることが確認できた。
<フマレート系共重合体A−3の前駆体の合成>
下記単量体の分量を
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):453.8g
・メタクリル酸(MAA):515.1g(5.98mol)
・スチレン(St):31.2g
に変更した以外は前記合成例1と同様の操作を行うことにより、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A−3の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−3の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液に対するサイクロマーM100の仕込み量を3486.7g、ピリジン248.2gに変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行うことにより、フマレート系共重合体A−3の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−3の重量平均分子量は、4,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価30mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.53mmol/gであり、GMAによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が2.8mmol/gであるフマレート系共重合体A−3が生成していることが確認できた。
<フマレート系共重合体A−4の前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):14.6g
・2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):773.5g(6.8mol)
・スチレン(St):211.8g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)100.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気下の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A−4の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−4の合成>
前記の合成で得られた原料重合体溶液へ、2−アクリロイルエチルイソシアネート(AOI)1053.6g、ラウリン酸ジブチル錫1.1g、ハイドロキノン1.1gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応してフマレート系共重合体A−4の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−4の重量平均分子量は、78,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価30mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.53mmol/gであり、AOIによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が3.0mmol/gであるフマレート系共重合体A−4が生成していることが確認できた。
下記分量の単量体
メタクリル酸メチル(MMA):639.4g
メタクリル酸(MAA):360.6g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−1)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−1)の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)327.1g、ピリジン23.3g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−1)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−2)の前駆体の合成>
比較合成例1における単量体の分量を
・メタクリル酸メチル(MMA):33.9g
・メタクリル酸(MAA):966.1g
に変更した以外は比較合成例1と同様の操作を行うことにより、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−2)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−2)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、比較合成例1におけるグリシジルメタクリレート(GMA)の仕込み量を1552.4gに、また、ピリジンの仕込み量を110.5gに変更した以外は、比較合成例1と同様の操作を行うことにより、共重合樹脂溶液(a−2)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−3)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):639.4g
・メタクリル酸(MAA):360.6g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−3)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−3)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)327.1g、ピリジン23.3g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−3)
を得た。
<共重合樹脂溶液(a−4)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):436.4g
・メタクリル酸(MAA):553.6g
・スチレン(St):10.0g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−3)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−4)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)612.6g、ピリジン43.6g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−4)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−5)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):457.9g
・メタクリル酸(MAA):397.8g
・スチレン(St):144.4g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液((a−3))の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−5)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)382.1g、ピリジン27.2g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−5)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−6)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):12.2g
・イタコン酸:244.4g
・スチレン(St):743.5g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−6)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−6)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)505.6g、ピリジン36.0g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−6)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−7)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):15.3g
・イタコン酸:885.5g
・スチレン(St):99.3g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−7)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−7)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)1972.7g、ピリジン140.4g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−7)を得た。
表1に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解混合したカラーフィルター用の光硬化性樹脂組成物の溶液を、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、10cm画のガラス基板上に、スピンコーター(形式1H−DX2、ミカサ(株)製)により、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.2μmの塗布膜を形成した。この塗布膜をホットプレート上で90℃、3分間加熱した。加熱後、塗布膜に2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナー(形式MA1200、大日本スクリーン製造(株)製)によって、100mJ/cm2の強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。
紫外線の照射後、塗布膜をクリーンオーブンにより、200℃で30分間乾燥し、膜厚2.0μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜について、380nm光線透過率、鉛筆硬度、耐熱性試験(230℃×1h.)、耐熱性試験(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表1に併せて示す。
次いで、表2に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に混合し、サンドミルにて十分に分散させることで調整した赤色(R用)光硬化性インク用組成物を、10cm画のガラス基板上に、スピンコーター(形式1H−DX2、ミカサ(株)製)により、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.2μmの塗布膜を形成した。この塗布膜をホットプレート上で90℃、3分間加熱した。加熱後、塗布膜に2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナー(形式MA1200、大日本スクリーン製造(株)製)によって、100mJ/cm2の強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。
紫外線の照射後、塗布膜をクリーンオーブンにより、200℃で30分間乾燥し、膜厚2.0μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜について、鉛筆硬度、耐熱試験後色差(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表1に併せて示す。
A−1:合成例1で得られた共重合樹脂。固形分33.7%、酸価30mgKOH/g
A−2:合成例2で得られた共重合樹脂。固形分40.4%、酸価32mgKOH/g
A−3:合成例3で得られた共重合樹脂。固形分54.4%、酸価30mgKOH/g
A−4:合成例4で得られた共重合樹脂。固形分39.4%、酸価30mgKOH/g
DPE−6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):共栄社化学(株)製、商品名「ライトアクリレートDPE−6A」。
PE−4A(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):共栄社化学(株)製、商品名「ライトアクリレートPE−4A」。
イルガキュア369:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1。
EP−828:ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
EP−1001:ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
パークミルD:日本油脂(株)製、有機過酸化物系熱重合開始剤、ジクミルペルオキシド。
パーブチルP:日本油脂(株)製、有機過酸化物系熱重合開始剤、α、α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン。
比較例1〜8
表3に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解混合したカラーフィルター用の光硬化性樹脂組成物の溶液を用い、実施例1〜10と同様の方法にて硬化膜を作製し、380nm光線透過率、鉛筆硬度、耐熱性試験(230℃×1h.)、耐熱性試験(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表3に併せて示す。
次いで、表4に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に混合し、サンドミルにて十分に分散させることで調整した赤色(R用)光硬化性インク用組成物を用い、実施例11〜20と同様の方法にて作製した硬化膜について、鉛筆硬度、耐熱試験後色差(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表4に併せて示す。
これに対して、表3および4の各比較例においては、本発明に用いる共重合体を用いていない場合には耐熱透過率に劣ったり、バインダー成分である共重合体に含まれるエチレン性不飽和結合の含有量が不足している場合には、耐熱試験後の透過率、鉛筆硬度、水蒸気透過度、高温ITO処理耐性の性能に問題があり、本発明の目的の効果が得られないことがわかる。
(1)ブラックマトリックスの形成
下記分量の各成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調整した。
<黒色顔料分散液の組成>
・黒色顔料:20重量部
・高分子分散剤(商品名 Disperbyk 111、ビックケミー・ジャパン(株)製):5重量部
・溶剤(3−MBA):75重量部
次に、下記分量の各成分を十分混合して、光硬化性ブラックマトリックス用樹脂組成物を得た。
<光硬化性ブラックマトリックス用樹脂組成物の組成>
・上記の黒色顔料分散液:55重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物:20重量部
・溶剤(3−MBA):35重量部
そして、厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株)製AL材)上に上記光硬化性ブラックマトリックス用樹脂組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、膜厚約1μmの光硬化性ブラックマトリックス層を形成した。該光硬化性ブラックマトリックス層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して遮光部を形成すべき領域にブラックマトリックスを形成した。
上記のようにしてブラックマトリックスを形成した基板上に、下記組成の赤色(R用)光硬化性樹脂インクをスピンコーティング法により塗布(塗布厚み1.5μm)し、その後70℃のオーブン中で30分間乾燥した。
次いで、赤色(R用)光硬化性インクの塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23.0℃)中に1分間浸してアルカリ現像し、赤色(R用)光硬化性樹脂インクの塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して赤色画素を形成すべき領域にレリーフパターンを形成した。
さらに、下記組成の青色(B用)光硬化性樹脂インクを用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、緑色画素を形成すべき領域に緑色のレリーフパターンを形成し、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる着色層を形成した。
・C.I.ピグメントレッド177:9重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物1:12重量部
・酢酸3−メトキシブチル:76重量部
<緑色(G用)光硬化性樹脂インクの組成>
・C.I.ピグメントグリーン36:9重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物1:12重量部
・酢酸3−メトキシブチル:76重量部
<青色(B用)光硬化性樹脂インクの組成>
・C.I.ピグメントブルー15:9重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物1:12重量部
・酢酸3−メトキシブチル:76重量部
着色層を形成したガラス基板上に、実施例1の光硬化性樹脂組成物1をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚2μmの塗布膜を形成した。
光硬化性樹脂組成物1の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、光硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して保護膜を形成し、本発明のカラーフィルターを得た。
得られたカラーフィルターの表面に、基板温度230℃でアルゴンと酸素を放電ガスとし、DCマグネトロンスパッタリング法によってITOをターゲットとして透明電極膜を形成した。その後、更に透明電極膜上にポリイミドよりなる配向膜を形成した。
ガラス基板上に形成した透明電極膜の抵抗値が13.4Ω/cm2であったのに対し、得られたカラーフィルター上に形成した透明電極膜の抵抗値は13.9Ω/cm2であり、本発明の光硬化型樹脂組成物により作成したカラーフィルターの保護膜は十分なITO適性を有している。
着色層を形成したガラス基板上に、実施例1で得られた光硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚5μmの塗布膜を形成した。
光硬化性樹脂組成物1の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、ブラックマトリックス上のスペーサーの形成領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、光硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して固定スペーサーを形成し、本発明のカラーフィルターを得た。
以上説明したように、本発明の光硬化性樹脂組成物をカラーフィルターのRGB用画素やブラックマトリックス、保護膜またはスペーサーとして用いた場合、不具合無くカラーフィルターを作成することができる。
Claims (8)
- 下記の成分(A)、(B)、(C)を、それぞれ(A)2〜80重量%、(B)5〜90重量%、(C)1〜10重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、99重量%以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(A)下記式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)を1.5〜35重量%、下記式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)を10〜50重量%、下記式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を3〜45重量%、および下記式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を20〜65重量%有するフマレート系共重合体
(B)光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物
(C)光重合開始剤 - フマレート系共重合体(A)中のエチレン性不飽和結合の含有濃度が2.1〜4.1mmol/gである請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物
- さらに、(D)エポキシ樹脂を5〜45重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、94重量%以下である請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
- カラーフィルターの製造に用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を有するRGB用画素またはブラックマトリックス。
- 透明基板上に形成された着色層を被覆する保護膜が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものである保護膜。
- 透明基板上に形成された着色層と、対向させるべき電極基板との間に設けられたスペーサーが請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであるスペーサー。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を部材として用いたカラーフィルター。
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