JP4603193B2 - 車体パネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は厚さの異なる板材を用いた車体パネルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
厚さの異なる差厚部を形成する方法として、まず、圧延で板材に差厚部を成形し、その次に、差厚部を成形した板材を焼鈍する方法が知られている。具体的には、圧延では、例えば、特開昭59−189004号公報「差厚板の製造方法およびその圧延機」に示されたものがある。この差厚板の製造用圧延機は、同公報の第3図によれば、上側作業ロール14a(符号は公報記載のものを流用した。以下同様。)と下側作業ロール14bとを独立に駆動制御できるものであり、下側作業ロール14bを逆方向に駆動し、圧延成形することで、差厚板を得ることができるというものである。
次に、圧延後の板材の加熱状態を説明する。
【0003】
図15(a),(b)は従来の板材の加熱を示す図である。
(a)において、板材141は、差厚部142,143を成形したものであり、差厚部142は厚さt2、差厚部143は厚さt3である。t1は板材141の厚さであり、はじめの板の厚さである。
板材141を加熱炉144に入れ、ヒータ145・・・(・・・は複数を示す。以下同様。)で加熱し、板材141の焼鈍を行う。A,B,Cは、温度を測定する測定部を示す。その測定結果の一例を次図に示す。
【0004】
(b)は、板材の加熱状態を示す線図であり、横軸を時間とし、縦軸を板材の温度とし、測定部Cの差厚部143の温度を基準にヒータ145・・・を制御した結果を示す。差厚部143を昇温時間m1で温度T1まで上げ、温度T1でヒータ145・・・の出力を下げ、温度T1で時間m2まで保ち、時間m2でヒータ145・・・を止めて加熱を終える。その際、測定部Aは温度T3、測定部Bは温度T2になった。このように加熱炉144で板材141を加熱することで、板材141を焼鈍することができ、差厚部を成形した板材を得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の加熱炉144を用いて加熱した板材141の温度は図15(b)に示す通りで、加熱炉144は、測定部Cの差厚部143を所望の温度T1に加熱するが、それに伴ない、測定部Bの差厚部142を温度T2まで加熱するため、焼鈍する際の板材141の温度のばらつきが大きい。そのため、板材141には、所望の温度で加熱処理した差厚部143の材料の強さと、そうでない温度で加熱処理した差厚部142との間で、材料の強さに違いが発生し、加熱炉144では、材料特性を均一にし難い。
【0006】
また、測定部Bの差厚部142の温度は急激に上昇するため、加熱による歪が発生し易く、板材141にゆがみやしわが生じる心配がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、差厚部を成形した板材を焼鈍で均一な材料特性を有する板材に調整することができ、加熱の歪を防止することができる車体パネルの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1では、圧延手段の上下のロール間に板材をセットする板材セット工程と、セットした板材の両端を把持する把持工程と、把持した板材に一定の張力を付与する張力付与工程と、張力を付与しつつ、上下のロールで圧延して差厚部を成形する差厚部成形工程と、成形した板材を連続して搬送ラインに設けた加熱装置に送り、所定位置で停止させた後、差厚部毎に対応した各々の線状加熱手段を差厚部毎の範囲内を複数回移動させて各々の差厚部を所定の加熱条件で焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍した板材をプレス機で所定の車体パネルに成形するパネルプレス成形工程と、からなる。
【0009】
焼鈍工程では、成形した板材を加熱装置内の所定位置で停止させた後、差厚部毎に対応した各々の線状加熱手段を差厚部毎の範囲内を複数回移動させて各々の差厚部を所定の加熱条件で焼鈍するので、1台の線状加熱手段の移動で一つの差厚部の範囲内みを加熱することができ、各々の差厚部の温度を管理するは容易である。
【0010】
また、焼鈍工程では、成形した板材を加熱装置内の所定位置で停止させた後、差厚部毎に対応した各々の線状加熱手段を差厚部毎の範囲内を複数回移動させて各々の差厚部を所定の加熱条件で焼鈍するので、差厚部毎の加熱の温度勾配を緩和した加熱操作が可能となり、歪の起きない加熱を実施するのは容易である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる板材製造装置の平面図である。図左上に示すYは圧延方向を示す軸で、図の左右方向の移動を示し、XはYに直交する軸である。
板材製造装置10は、切断機11と、圧延装置12と、加熱装置13とをこの順に配置したものである。15,16,18はローラコンベヤ、17は搬送ラインとしてのローラコンベヤ、21は制御盤、22は油圧ユニット、23は圧延装置12の操作盤、24は加熱装置13の操作盤である。127は圧延後の板材を示す。
操作盤24は、条件設定手段26と、制御手段27と、を備えるものである。
【0012】
図2は本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる板材製造装置の側面図である。
切断機11は、図左側から搬入した帯板を切り、所定長さの板材を形成するものである。
圧延装置12は、テンション装置30と、圧延手段60とからなる。
【0013】
テンション装置30は、X軸方向(図1参照)に移動できるものであり、X軸移動ガイド30a、30aと、これらのX軸移動ガイド30a、30aに載せたX軸移動ベース30bと、このX軸移動ベース30bをX軸方向に移動させる、図1に示すX軸駆動手段30c,30cと、X軸移動位置検出器30dと、次図で説明する要素とを有する。
【0014】
図3は本発明に係る車体パネルの製造方法に用いるテンション装置の斜視図であり、テンション装置30は、移動台31上に左クランプ手段32、右クランプ手段33並びに張力付与手段34,35を有する。
移動台31は、ベース36に第1ガイド37を介してY軸移動ベース38を取付けたものである。
【0015】
左クランプ手段32は、Y軸移動ベース38の左側にハウジング41を取付け、このハウジング41の中央にガイドを介して上押圧部42を上下移動可能に取付けるとともに、この上押圧部42に対向する下押圧部43を固定し、ハウジング41の上部に油圧シリンダ44,44を取付けたものであり、油圧シリンダ44のロッド45を上押圧部42に取付けて、油圧によって上押圧部42を下押圧部43側へ押し付けるものである。
【0016】
一方、右クランプ手段33は、Y軸移動ベース38の右側に第2ガイド46を介して取付けたハウジング47に左クランプ手段32と同様の上・下押圧部42,43、油圧シリンダ44,44を設けたものである。48は左クランプ位置検出器、49は右クランプ位置検出器であり、これら左・右クランプ位置検出器48,49は、例えば、リニアエンコーダやリニア位置センサである。
【0017】
また、張力付与手段34は、油圧シリンダ51であり、油圧シリンダ51の取付け部52をベース36に取付け、ロッド53をY軸移動ベース38に取付けた。張力付与手段35は、油圧シリンダ55であり、油圧シリンダ55の取付け部56をY軸移動ベース38に取付け、ロッド57を右クランプ手段33に取付けた。
【0018】
図4は本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる圧延手段の斜視図であり、圧延手段60は、スタンド61に第3ガイド62,62(手前は図示していない)を介して昇降自在に軸受箱63,63を嵌合し、これらの軸受箱63,63に図示せぬ軸受を介して上ロールとしてのワークロール64、バックアップロール65,65を嵌合し、これらのロール64,65,65に対称に、スタンド61に図示せぬ軸受を介して下ロールとしてのワークロール66、バックアップロール67,67を嵌合し、スタンド61の上部に圧下油圧シリンダ68,68を取付け、この圧下油圧シリンダ68,68のロッドを軸受箱63,63に取付け、ワークロール64,66をロール駆動部69,69に嵌合したものであり、ロールが6重で、単一の圧延機である。71はワークロール位置検出器、72は左クランプ移動限検出器、73は右クランプ移動限検出器、74,74は加熱手段、90はターンテーブルである。
【0019】
ワークロール位置検出器71は、例えばリニアエンコーダやリニア位置センサであり、左・右クランプ移動限検出器72,73は、例えばリミットスイッチである。また、加熱手段74は、電磁誘導加熱(誘導加熱)の熱源(ヒーター)であり、ワークロール64,66の左右に設けたものである。
【0020】
ターンテーブル90は、据え付け台91の中央に回転支持部92を設け、端部に駆動部93を設けたものである。駆動部93は、据え付け台91に取付けたガイド94と、このガイド94を駆動するウオーム減速機95とからなる。
【0021】
すなわち、ターンテーブル90の回転支持部92に圧延手段60を嵌合するとともに、圧延手段60にガイド94の一端を取付けることで、ターンテーブル90に圧延手段60を載せたことになる。96は原点位置検出器、97は右回転限検出器、98は左回転限検出器である。
【0022】
図5は本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる加熱装置の斜視図である。
加熱装置13は、圧延後の板材127を連続的に水平搬送する搬送手段99と、この搬送手段99上の板材127を線状に加熱するために板幅方向(X軸方向)に伸ばした第1線状加熱手段101、第2線状加熱手段102ならびに第3線状加熱手段103と、これらの第1〜第3線状加熱手段101〜103を板材127の長さ方向(Y軸方向)に移動させる熱源移動手段104・・・と、加熱条件を設定する条件設定手段26(図1参照)と、加熱条件に基づいて第1〜第3線状加熱手段101〜103及び熱源移動手段104・・・を制御する制御手段27(図1参照)と、床に設置する架台105と、この架台105に着脱自在に取り付けたカバー106と、からなる。
【0023】
搬送手段99は、架台105に脚部材107を取り付け、この脚部材107にローラ108・・・を回転可能に取り付けた。
なお、ローラ108は一例であり、ローラ108を用いずに、チェーンやバンドなど帯状の部材を掛け渡してもよい。
【0024】
第1線状加熱手段101は、本体部111の中央に空隙部112を板材127が貫通自在な大きさに形成し、この空隙部112の天井側に熱源113ならびに反射板114を取り付け、空隙部112の床側に熱源115ならびに反射板116を取り付けた構成とし、移動範囲を図9の非圧延部81bの長さL1の範囲に設定した。
【0025】
第2線状加熱手段102は、第1線状加熱手段101と同じ構成のもので、移動範囲を図9の第1差厚部83の長さL2の範囲に設定した。
第3線状加熱手段103は、第1線状加熱手段101と同じ構成のもので、移動範囲を図9の第2差厚部126の長さL3の範囲に設定した。
【0026】
熱源113,115はともに、赤外線放射源であり、例えば、石英管形赤外線電球である。
なお、加熱装置13は、赤外線加熱に限定するものではなく、熱源にバーナー(オイルバーナー、ガスバーナー)を用いた燃焼加熱でもよい。
【0027】
熱源移動手段104は、本体部111の端に配置した電動モータ117と、この電動モータ117によって駆動する駆動輪118と、この駆動輪118の回転数を計測するセンサ119と、駆動輪118の隣に設けた従動輪121と、これら駆動輪118並びに従動輪121を案内するレール122,122と、からなる。
【0028】
カバー106は、圧延装置側に入口123を設け、入口123の対向側に出口124を設け、熱源移動手段104側に開口部125を形成し、内面に図に示していない断熱材を張り付けた。
【0029】
次に本発明に係る車体パネルの製造方法を説明する。
図6は本発明に係る車体パネルの製造方法のフローチャートであり、STはステップを示す。
ST01:圧延手段の上下のロール間に板材をセットする。
ST02:セットした板材の両端を把持する。
ST03:把持した板材に一定の張力を付与する。
ST04:張力を付与しつつ、ロールで圧延して差厚部を成形する。
ST05:成形した板材を連続して加熱装置に送り、各々の線状加熱手段で各差厚部を所定の温度に加熱する。
次に、ST01〜ST05を具体的に説明する。
【0030】
図7(a),(b)は本発明に係る車体パネルの製造方法の第1説明図である。
(a):まず、圧延装置12に板材81を通す。具体的には、油圧シリンダ51(ロッド53)の前進(矢印▲1▼の方向)によって左クランプ手段32は所定位置に至る。この際、左クランプ手段32の行過ぎを左クランプ移動限検出器72によって防止する。
【0031】
左・右クランプ手段32,33上の油圧シリンダ44,44(ロッド)が後退(矢印▲2▼,▲2▼の方向)すると、上押圧部42が上昇する。一方、圧延手段60の圧下油圧シリンダ68によって、軸受箱63とともに、ワークロール64、バックアップロール65,65が上昇する。
【0032】
左クランプ手段32まで圧延前の板材81を矢印▲3▼の如く通した後、左クランプ手段32の上押圧部42を下降させて板材81の厚肉部82を把持する。一方、圧下油圧シリンダ68で板材81にワークロール64、バックアップロール65,65を圧下する。
【0033】
(b):その次に、ワークロール64を所定のロール速度で駆動回転させることで、第1差厚部83を成形する。同時に、左クランプ手段32を張力方向(矢印▲4▼の方向)に移動させることにより、板材81に一定の張力tを掛けつつ、第1差厚部83を成形する。左クランプ手段32が所定位置に至ると、停止する。
【0034】
続けて、圧延手段60を逆回転せさるために、圧延手段60の近傍まで右クランプ手段33を寄せ、右クランプ手段33上の油圧シリンダ44で上押圧部42を下降させて板材81の厚肉部82を把持する。その際の右クランプ手段33の位置は右クランプ移動限検出器73によって検出する。
【0035】
図8(a),(b)は本発明に係る車体パネルの製造方法の第2説明図である。
(a):圧延手段60のワークロール64を逆回転させ、第1差厚部83をより薄く延ばす。その際、圧下油圧シリンダ68でワークロール64をさらに圧下し、ロール間隔を制御する。同時に、油圧シリンダ51でY軸移動ベース38を逆移動させる。
【0036】
(b):Y軸移動ベース38を逆移動しつつ、Y軸移動ベース38上の油圧シリンダ55によって右クランプ手段33を移動することで、板材81に一定の張力tを掛ける。その際、右クランプ手段33の位置は右クランプ位置検出器49によって行う。
この後、同様に第1差厚部83の成形をさらに繰り返し、所定の厚さの第1差厚部83を成形する。
【0037】
すなわち、板材81を左・右のクランプ手段32,33で把持し、板材81に張力tを掛けながら圧延する。第1差厚部83に張力tが作用すると、極めて容易に板材81の厚肉部82の一部に第1差厚部83を成形することができる。
また、張力tによって、第1差厚部83に発生しやすい「しわ」や曲りを防止することができる。
【0038】
図9(a),(b)は本発明に係る車体パネルの製造方法の第3説明図である。
(a):圧延手段60で第2差厚部126を成形する。具体的には、右クランプ手段33の上押圧部42を上昇させて開放し、左クランプ手段32で張力を掛けつつ、板材81の一方81aをワークロール64,66で延ばし、第2差厚部126を成形する。81bは板材81の他方であり、非圧延部である。t1は、非圧延部81bの厚さ、t2は、第1差厚部83の厚さである。
第2差厚部126の厚さはt3であり、第2差厚部126の加工度は、第1差厚部83の加工度より小さい。
【0039】
ここでは、加工度は圧下率に相当する。圧下率をr、第1差厚部83の圧下率をr1、第2差厚部126の圧下率をr2、入口側板厚をh1、出口側板厚をh2としたときに、圧下率r,r1,r2は次式で定めることができる。
r(%)=〔(h1−h2)/h1〕×100、
r1(%)=〔(t1−t2)/t1〕×100、
r2(%)=〔(t1−t3)/t1〕×100
【0040】
(b)は、厚さの異なる第1・第2差厚部83,126を各々長さL2,L3で成形するとともに、非圧延部81bを長さL1で形成し、圧延が完了した板材127を示す。
板材127は、加工度の違いにより、引張り強さなど材料特性が非圧延部81b、第1・第2差厚部83,126で各々異なる。そのために、次に板材127の焼鈍を実施する。
【0041】
図10は本発明に係る車体パネルの製造方法の第4説明図である。
板材127を加熱装置13で焼鈍する。具体的には、予め焼鈍に必要な加熱条件を板材127の第1・第2差厚部83,126の板厚としての厚さt2,t3並びにその他の条件に応じて条件設定手段26(例えば、キーボード)で設定する。
【0042】
加熱条件は、一例として、熱源移動手段104・・・を各々制御する移動速度Vh1,Vh2,Vh3ならびに非圧延部81bの長さL1、第1差厚部83の長さL2、第2差厚部126の長さL3と、第1線状加熱手段101を制御する設定温度Th1と、第2線状加熱手段102を制御する設定温度Th2と、第3線状加熱手段103を制御する設定温度Th3と、を主とする。
制御手段27は、温度制御部128と、熱源駆動制御部129と、を有する。
【0043】
温度制御部128は、設定温度Th1,Th2,Th3に基づいて、板材の実際の温度が設定温度Th1,Th2,Th3になるように熱源113,115間の雰囲気下の温度を調整する。すなわち、望ましい雰囲気下の温度が得られるように熱源113,115の出力を設定する。その際には、板材127に取り付けた熱電対131,132,133の信号を用いてもよい。
【0044】
次に、設定温度を少し詳しく説明する。
設定温度Th1は、非圧延部81bの温度であり、図12(b)に示すように、昇温速度をTv1、保持温度をT5、保持時間をKm1に設定する。すなわち、設定の際に入力する値は、Tv1、T5、Km1である。
【0045】
設定温度Th2は、第1差厚部83の温度であり、図12(b)に示すように、昇温速度をTv2、保持温度をT1、保持時間をKm1に設定する。すなわち、設定の際に入力する値は、Tv2、T1、Km1である。
設定温度Th3は、第2差厚部126の温度であり、設定温度Th2と同じに設定する。
【0046】
熱源駆動制御部129は、移動速度Vh1,Vh2,Vh3に基づいて、各熱源移動手段104・・・の速度を設定し、一方、長さL1,L2,L3に基づいて、距離を設定する。
なお、第1線状加熱手段101に設けたセンサ119の回転数信号Ni1、第2線状加熱手段102に設けたセンサ119の回転数信号Ni2、第3線状加熱手段103に設けたセンサ119の回転数信号Ni3に基づいて、熱源駆動制御部129は、各々の実際の移動量を計測する。
【0047】
条件設定後、条件設定手段26の所定のボタンを「ON」にすることによって、予め設定した条件に基づいて第1〜第3線状加熱手段101〜103は図10に示すように待機位置で待機するとともに、所定の温度でワークを待つ。
【0048】
続いて、圧延装置から出た板材127をローラコンベヤ17で加熱装置13の入口123へ搬送するとともに、搬送手段99に載せる。なお、望ましくは、非圧延部81bに熱電対131を取り付け、第1差厚部83に熱電対132を取り付け、第2差厚部126に熱電対133を取り付ける。
【0049】
このように、焼鈍工程では、成形した板材127を連続して加熱装置13に送るので、圧延装置から加熱装置13内に搬入するのに手間がかからず、且つ焼鈍の段取りに手間がかからない。従って、第1・第2差厚部83,126を成形した板材127の生産効率の向上を図ることができる。
【0050】
図11は本発明に係る車体パネルの製造方法の第5説明図である。
(a):搬送手段99に板材127を載せ、板材127の温度を上げる。具体的には、まず、板材127を搬送手段99の所定位置に止め、操作盤の開始ボタンを「ON」すると、待機位置から図(a)に示す各々の開始位置へ第1〜第3線状加熱手段101〜103は移動し、第1線状加熱手段101は、所定温度の熱源113,115間で非圧延部81bを加熱しつつ、移動速度Vh1で矢印▲5▼の如く移動し、非圧延部81bの昇温(×印は温度が高いことを示す。)を行う。
【0051】
同時に、第2・第3線状加熱手段102,103で第1・第2差厚部83,126を加熱する。具体的には、第2線状加熱手段102は、所定温度の熱源113,115間で第1差厚部83を加熱しつつ、移動速度Vh2で矢印▲6▼の如く移動し、第1差厚部83の昇温を行う。第3線状加熱手段103は、所定温度の熱源113,115間で第2差厚部126を加熱しつつ、移動速度Vh3で矢印▲7▼の如く移動し、第2差厚部126の昇温を行う。
【0052】
(b):引き続き、板材127の温度を上げる。具体的には、第1線状加熱手段101は、所定距離La1だけ走行して非圧延部81bの1回目の加熱を終了し、第2線状加熱手段102は、所定距離La2だけ走行して第1差厚部83の1回目の加熱を終了し、第3線状加熱手段103は、所定距離La3だけ走行して第2差厚部126の1回目の加熱を終了する。
なお、所定距離La1,La2,La3は、予め設定したプログラムによって長さL1,L2,L3((c)参照)および回転数信号Ni1,Ni2,Ni3((a)参照)から各々算出される設定移動量であるとともに、移動限の範囲である。
【0053】
(c):続いて、第1〜第3線状加熱手段101〜103は、戻りながら、再び非圧延部81b、第1・第2差厚部83,126の昇温(太線×印はより温度が高いことを示す。)を続け、各々所定距離La1,La2,La3だけ走行し、2回目の加熱を終了する。同時に、(a)に示す開始位置に戻る。
続けて、(a)に示す位置から第1〜第3線状加熱手段101〜103は矢印▲5▼,▲6▼,▲7▼の如く走行し、3回目の加熱を実施する。そして、焼鈍した板材134を得る。
【0054】
このように、焼鈍工程では、成形した板材127を加熱装置13内の所定位置で停止させた後、非圧延部81bに対応した第1線状加熱手段101で非圧延部81bの範囲であるところ長さL1内を3回移動させ、第1差厚部83に対応した第2線状加熱手段102で第1差厚部83の範囲であるところ長さL2内を3回移動させ、第2差厚部126に対応した第3線状加熱手段103で第2差厚部126の範囲であるところ長さL3内を3回移動させ、非圧延部81bならびに第1・第2差厚部83,126を所定の加熱条件で焼鈍するので、第1・第2差厚部83,126の温度を個別に操作するのは容易であり、板材127を均一な材料特性を有する板材134に調整することができる。
【0055】
図12(a),(b)は焼鈍温度を比較したグラフであり、一例を示し、横軸を時間とし、縦軸を板材の温度とした。
(a)は、比較例で、図15(b)を写したもので、従来のバッチ式の加熱炉を用いて焼鈍した板材の温度チャートを示す。測定部Cに示す厚さt3の差厚部143の温度T1に対して、測定部Bに示す厚さt2の差厚部142の温度T2は高い。
【0056】
(b)は、実施例で、本発明の焼鈍工程で焼鈍した板材の温度チャートを示す。なお、Tv1,Tv2は昇温速度、T1は保持温度、Km1は保持時間を示す。
グラフから明らかなように、測定部Bに示す厚さt2の第1差厚部83の温度はT4で、測定部Cに示す厚さt3の第2差厚部126の温度T1にほぼ一致する。また、測定部Aに示す厚さt1の非圧延部81bの温度はT5でる。
従って、本発明の車体パネルの製造方法の焼鈍工程では、第1・第2差厚部83,126を成形した板材127の温度のばらつきを小さくすることができ、第1・第2差厚部83,126を成形した板材127を均一な材料特性を有する板材に調整することができる。
【0057】
図13(a),(b)は本発明に係る車体パネルの製造方法の第6説明図である。
(a):焼鈍した板材134(図11(c)参照)をプレス機135で所定の車体パネル136に成形する。具体的には、焼鈍した板材134を予め図示せぬ金型で所定形状に成形した後、プレス機135の金型137(上金型137a、下金型137b)で仕上げて、車体パネル136は完成する。ここで、車体パネル136はドアパネルであり、以降、ドアパネル138と呼称する。
このように、パネルプレス成形工程では、前工程の焼鈍工程で処理した均一な材料特性を有する板材134を用いるので、亀裂の心配をすることなく、車体パネルに成形することができる。
【0058】
(b):金型からドアパネル138を取り出し、プレス成形の1サイクルは完了する。その後、ドアパネル138を下流の工程へ搬送する。
【0059】
次に、本発明に係る車体パネルの製造方法の別実施の形態を示す。
図14は図12(b)の別実施の形態を示すグラフであり、上記図11、図12(b)に示す実施の形態と同じものについては、同一符号を付し説明を省略する。
ここでは、第1・第2差厚部83,126の加熱の温度勾配を緩和した場合を示し、言い換えると、昇温速度を遅くし、板材127をゆっくり加熱することを特徴とする。
【0060】
その要領を簡単に説明すると、まず、図10の加熱条件を変更し、第1・第2差厚部83,126を昇温速度Tv3で昇温しつつ、温度T6まで昇温し、その温度T6で保持時間Km2だけ保持する。温度T6であれば、加熱の際の歪を防止することができる。すなわち、温度T6に達した場所と昇温の遅い場所との間で温度差が急に大きくなることはなく、このときの熱膨張量は弾性域内の歪量であり、残留歪が発生せず、板材127のゆがみやしわを防止することができる。また、保持時間Km2だけ保持することで、昇温の遅い場所の温度をT6まで上げて温度を均一にする。
【0061】
引き続き、保持時間Km2だけ保持した後、温度T1まで昇温する。温度T6と温度T1との間では、温度差が急に大きくなることはなく、残留歪が発生せず、板材127のゆがみやしわを防止することができる。
【0062】
このように、本発明の車体パネルの製造方法の焼鈍工程では、成形した板材127を加熱装置13内の所定位置で停止させた後、非圧延部81bに対応した第1線状加熱手段101で非圧延部81bの長さL1内を3回移動させ、第1差厚部83に対応した第2線状加熱手段102で第1差厚部83の長さL2内を3回移動させ、第2差厚部126に対応した第3線状加熱手段103で第2差厚部126の長さL3内を3回移動させ、非圧延部81bならびに第1・第2差厚部83,126を所定の加熱条件で焼鈍するので、加熱条件の一つである、第1・第2差厚部83,126の加熱の温度勾配を緩和した場合、この緩和した温度勾配で第1・第2差厚部83,126を昇温することができる。その結果、板厚の異なる第1・第2差厚部83,126の加熱の温度勾配を緩和して、残留歪の発生を防止し、板材127のゆがみやしわを防止することができる。
【0063】
尚、本発明の実施の形態に示した図12(b)ならびに図14の温度は一例である。
図11では、第1〜第3線状加熱手段101〜103がともに、同時に移動を開始し、同時に第1回目、第2回目の加熱を終了しているが、この加熱条件は一例であり、開始や終了のタイミングは、任意である。
【0064】
第1〜第3線状加熱手段101〜103の移動回数は3回に限定するものではなく、移動回数は任意である。
板材製造装置10は一例であり、装置の構成は任意である。
帯板を切断した後に、板材を圧延装置12で圧延したが、逆に、圧延後に板材を切断機11で帯板から切り離してもよい。その場合は、切断機11の配置位置を変更する。
【0065】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、圧延手段の上下のロール間に板材をセットする板材セット工程と、セットした板材の両端を把持する把持工程と、把持した板材に一定の張力を付与する張力付与工程と、張力を付与しつつ、上下のロールで圧延して差厚部を成形する差厚部成形工程と、成形した板材を連続して搬送ラインに設けた加熱装置に送り、所定位置で停止させた後、差厚部毎に対応した各々の線状加熱手段を差厚部毎の範囲内を複数回移動させて各々の差厚部を所定の加熱条件で焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍した板材をプレス機で所定の車体パネルに成形するパネルプレス成形工程と、からなる。
焼鈍工程では、成形した板材を加熱装置内の所定位置で停止させた後、差厚部毎に対応した各々の線状加熱手段を差厚部毎の範囲内を複数回移動させて各々の差厚部を所定の加熱条件で焼鈍するので、1台の線状加熱手段の移動で一つの差厚部の範囲内みを加熱することができ、各々の差厚部の温度管理は容易である。従って、差厚部を成形した板材を焼鈍で均一な材料特性を有する板材に調整することができる。
【0066】
また、焼鈍工程では、成形した板材を加熱装置内の所定位置で停止させた後、差厚部毎に対応した各々の線状加熱手段を差厚部毎の範囲内を複数回移動させて各々の差厚部を所定の加熱条件で焼鈍するので、差厚部の加熱の温度勾配を緩和して加熱することができ、加熱の際の歪を防止することができる。従って、焼鈍の際に、板厚の異なる差厚部を成形した板材のゆがみやしわを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる板材製造装置の平面図
【図2】本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる板材製造装置の側面図
【図3】本発明に係る車体パネルの製造方法に用いるテンション装置の斜視図
【図4】本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる圧延手段の斜視図
【図5】本発明に係る車体パネルの製造方法に用いる加熱装置の斜視図
【図6】本発明に係る車体パネルの製造方法のフローチャート
【図7】本発明に係る車体パネルの製造方法の第1説明図
【図8】本発明に係る車体パネルの製造方法の第2説明図
【図9】本発明に係る車体パネルの製造方法の第3説明図
【図10】本発明に係る車体パネルの製造方法の第4説明図
【図11】本発明に係る車体パネルの製造方法の第5説明図
【図12】焼鈍温度を比較したグラフ
【図13】本発明に係る車体パネルの製造方法の第6説明図
【図14】別実施の形態を示すグラフ
【図15】従来の板材の加熱を示す図
【符号の説明】
13…加熱装置、17…搬送ライン(ローラコンベヤ)、60…圧延手段、64…上のロール(ワークロール)、66…下のロール(ワークロール)、81…圧延前の板材、81b…非圧延部、82…板材の両端(厚肉部)、83…第1差厚部、101…第1線状加熱手段、102…第2線状加熱手段、103…第3線状加熱手段、126…第2差厚部、127…成形した板材(成形後の板材)、134…第1差厚部、135…プレス機、136…車体パネル、L1〜L3…差厚部毎の範囲(長さ)、t…張力。
Claims (1)
- 圧延手段の上下のロール間に板材をセットする板材セット工程と、セットした板材の両端を把持する把持工程と、把持した板材に一定の張力を付与する張力付与工程と、張力を付与しつつ、上下のロールで圧延して差厚部を成形する差厚部成形工程と、成形した板材を連続して搬送ラインに設けた加熱装置に送り、所定位置で停止させた後、差厚部毎に対応した各々の線状加熱手段を差厚部毎の範囲内を複数回移動させて各々の差厚部を所定の加熱条件で焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍した板材をプレス機で所定の車体パネルに成形するパネルプレス成形工程と、からなる車体パネルの製造方法。
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