JP4597892B2 - 誘電体磁器の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層セラミックコンデンサ等を構成する、コアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器の、コア粒子の微構造を評価するための評価方法に関するものである。
積層セラミックコンデンサ等を構成するために用いる、BaTiO3等を主成分とする誘電体磁器は、高い誘電率と、良好な温度特性とを確保するために、強誘電体相からなるコア粒子の表面が、常誘電体相からなるシェルで被覆された、コアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造を有しているのが望ましいと考えられている。コアシェル構造の様子は、透過型電子顕微鏡(「TEM」とする)や、前記TEMに接続したエネルギー分散型X線分光器(「EDX」とする)によって観察することができる。
例えば、特許文献1では、積層セラミックコンデンサを形成するのと同じ、BaTiO3系のセラミックからなる、測定用のサンプルの焼結体を作製し、前記焼結体について、TEMによって観察すると共に、EDXを用いて、シェルを形成するための添加成分の濃度分布を測定して、コアシェル構造が形成されているか否かを評価している。また、特許文献2では、積層セラミックコンデンサを形成するのと同じ、BaTiO3系のセラミックからなる、測定用のサンプルの焼結体を作製し、前記焼結体について、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を利用した分析電子顕微鏡(TEMにEDXを接続したものと同じ機能を有する)を用いて、シェルを形成するための添加成分としてのMgの濃度分布を測定して、コアシェル構造が形成されているか否かを評価している。
しかし、TEMやEDXによる観察および測定の結果からは、誘電体磁器の、ごく一部の限られた範囲についてのみ、結晶構造を評価できるだけであって、前記結果は、誘電体磁器の全体の情報を、平均的に表しているとは言い難い。TEMやEDXによる観察と測定の結果から、誘電体磁器の全体の、平均的な情報を得るためには、前記誘電体磁器の、できるだけ多くの部位で、観察と測定を繰り返す必要があり、評価に手間がかかるという問題がある。
しかも、EDXのラインスキャンによれば、シェルを形成する添加成分の、前記シェルの表面から、コア粒子の径方向の内方への濃度分布については評価できるものの、例えば、前記濃度分布と、正方晶系と立方晶系との分布との対応関係等、誘電体磁器の微構造を、全般的に評価できないという問題もある。
そこで、発明者は、X線回折測定を利用して、誘電体磁器の微構造を評価することを検討した。その結果、コアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器の表面にX線を照射して得られるX線回折スペクトルのうち、正方晶系の(hkl)面の回折ピーク、および立方晶系の(h′k′l′)面の回折ピークの強度、多重度、および線幅(半値幅)から、コアとシェルとの体積分率や、シェルの厚みが求められること、X線を照射した領域における、平均的な情報が得られることを見出した。
しかし、前記評価方法では、依然として、コア粒子に由来する回折ピークの線幅から抽出される値が、何に起因するか判らないという問題があった。コアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器において、コア粒子は、先に説明したTEMやEDXによる測定結果から、シェルを形成するための添加剤成分が殆ど確認できない、ほぼ純粋な正方晶系であることが確認されている。また、X線回折スペクトルからも、例えば(004)面や(400)面の反射のスプリットから、正方晶系であることが判る。また、正方晶系のペロブスカイト型酸化物は、キュリー温度Tc(℃)未満の温度で、ドメイン構造を有することが、多くの研究者によって報告されている。
ところが、前記コア粒子においては、結晶子サイズと、ドメイン構造のサイズ、具体的には、ドメイン領域のサイズや、ドメインが秩序を持って存在するコヒーレント領域のサイズ(「ドメインサイズ」と総称することがある)とが、必ずしも一致しているとは限らないため、コア粒子に由来する回折ピークの線幅から、シェルの厚みと同様に、シェラー(Scherrer)の式によって、コア粒子における結晶子サイズを求めたとしても、それが、真の結晶子サイズであるのか、ドメインサイズであるのかが判断できないのである。
特開平10−310469号公報(段落[0036]、段落[0042]、図1、図2、図5、図6) 特開平10−308321号公報(段落[0008]、段落[0014]、段落[0015]、図2〜図4)
本発明の目的は、コアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器の、コア粒子の微構造を評価することができる、新たな評価方法を提供することにある。
前記課題を解決するため、発明者は、さらに検討を重ねた結果、X線回折測定を、従来どおり、コア粒子を構成する結晶材料のキュリー温度Tc(℃)未満の所定の温度(具体的には室温)で行った結果と、同じX線回折測定を、前記キュリー温度Tc(℃)以上の所定の温度で行った結果を照らし合わせれば、コア粒子を構成する結晶子と、コア粒子内に生成されるドメイン構造との関係を解析できることを見出した。
すなわち、誘電体磁器を、コア粒子を構成する結晶材料のキュリー温度Tc(℃)以上の温度に加熱すると、コア粒子内のドメイン構造を消失させることができるため、この状態で、X線回折測定を行えば、室温での測定では得ることができない、コア粒子を構成する真の結晶子サイズを求めることができ、キュリー温度Tc(℃)未満の温度でX線回折測定を行って求めた、ドメイン構造の影響を受けた結晶子サイズ、つまりドメインサイズの測定値と比較することで、コア粒子を構成する結晶子と、コア粒子内に生成されるドメイン構造との関係を解析することができるのである。
したがって、請求項1記載の発明は、コア粒子の表面がシェルで被覆されたコアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器について、前記コア粒子を構成する結晶材料のキュリー温度Tc(℃)未満の所定の温度と、前記キュリー温度Tc(℃)以上の所定の温度とを含む、少なくとも2点の温度で、それぞれ、X線回折測定を行った結果をもとに、前記コア粒子の微構造を評価することを特徴とする誘電体磁器の評価方法である。
また、請求項2に記載したように、前記キュリー温度Tc(℃)未満での測定は、測定温度TL(℃)が、式(1):
5℃≦TL≦35℃ (1)
を満足する範囲で行い、キュリー温度Tc(℃)以上での測定は、測定温度TH(℃)が、式(2):
Tc(℃)≦TH≦Tc(℃)+30℃ (2)
を満足する範囲で行うのが好ましい。
前記評価方法の具体的な手順としては、請求項3に記載したように、X線回折測定により、キュリー温度Tc(℃)未満の所定の温度で、誘電体磁器の、正方晶系の(hkl)面の回折ピーク、および立方晶系の(h′k′l′)面の回折ピークを測定すると共に、前記キュリー温度Tc(℃)以上の所定の温度で、前記誘電体磁器の、正方晶系が立方晶系に転移した後の、立方晶系の(h″k″l″)面の回折ピークを測定した結果をもとに、コア粒子の微構造としての、結晶子とドメイン構造との関係を評価するのが好ましい。
誘電体磁器がBaTiO3系のセラミックである場合は、請求項4に記載したように、前記セラミックの正方晶系の(004)面と、立方晶系の(400)面の回折ピークを測定した結果をもとに、コア粒子の微構造を評価するのが好ましい。本発明の評価方法は、請求項5に記載したように、積層セラミックコンデンサを構成する誘電体磁器における、コア粒子の微構造を評価するために適用することができる。
本発明によれば、コアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器の、コア粒子における、結晶子とドメイン構造との関係を評価することができる。そのため、本発明の評価方法によれば、ドメインサイズを制御する技術や、転位等の欠陥を制御する技術と組み合わせた際に、迅速な材料評価をすることができ、誘電特性をさらに改良した誘電体磁器を開発することができる。そして、現状に比べて、より一層、良好な温度特性を有する積層セラミックコンデンサ等を開発することが可能となる。
本発明の評価方法は、コア粒子の表面がシェルで被覆されたコアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器について、前記コア粒子を構成する結晶材料のキュリー温度Tc(℃)未満の所定の温度と、前記キュリー温度Tc(℃)以上の所定の温度とを含む、少なくとも2点の温度で、それぞれ、X線回折測定を行った結果をもとに、前記コア粒子の微構造を評価することを特徴とするものである。
X線回折測定には、市販のX線回折装置や、あるいは、Spring−8等の大型放射光施設等を利用することができる。測定を精度よく行うためには、単色化された放射光を利用するのが好ましく、例えば、Si(111)等の分光器によって単色化された放射光を、試料としての誘電体磁器に照射して、回折されたX線を、比例計数管等の検出器を用いてカウントして、X線回折特性曲線を得る。X線の波長は、任意に設定できるが、ピークのスプリット(分解能)を向上するために、できるだけ波長が長いことが好ましく1.0Å以上、特に1.5〜2.5Åであるのが好ましい。
X線の走査は、2θ−θ軸で行い、特にステップスキャンするのが好ましい。ステップ幅は任意であるが、0.02°程度が好ましい。走査は、正方晶系の(hkl)面、および立方晶系の(h′k′l′)面をカバーできる範囲で行う。特に、1回の走査で、正方晶系と立方晶系のピークが得られるように、走査範囲を設定するのが、測定上、都合がよい。
1点あたりの計数時間や積算回数も任意であるが、計数時間を長くしたり、積算回数を多くしたりすることで、シグナル/ノイズ比(S/N比)を大きくした、より正確なデータを得ることができる。そのため、積算回数は5回以上、特に10〜20回とするのが好ましい。積算回数を増やすためには、2θのレンジの走査を1回として、それを繰り返し行って得られたデータを加算すればよい。これにより、ピーク部分が強調されると共に、ノイズ部分がフラットとされたX線回折特性曲線が得られる。
測定は、先に説明したように、コア粒子を構成する結晶材料のキュリー温度Tc(℃)未満の所定の温度と、前記キュリー温度Tc(℃)以上の所定の温度とを含む、少なくとも2点の温度で行う。そのためには、試料としての誘電体磁器を保持するサンプルホルダとして、加熱機能を有するものを用いるのが好ましい。
2点の測定温度のうち、低い方の測定温度TL(℃)は、コア粒子を構成する結晶材料のキュリー温度Tc(℃)未満であればよいが、誘電体磁器の実際の使用温度の範囲内であるのが好ましく、特に、式(1):
5℃≦TL≦35℃ (1)
を満足する範囲であるのが好ましい。
また、高い方の測定温度TH(℃)は、前記キュリー温度Tc(℃)以上であればよいが、特に、式(2):
Tc(℃)≦TH≦Tc(℃)+30℃ (2)
を満足する範囲であるのが好ましい。例えば、誘電体磁器がBaTiO3系のセラミックである場合は、前記BaTiO3のキュリー温度Tc(℃)が130℃前後であるため、測定温度TH(℃)を、130〜160℃に設定するのが好ましい。
コアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器において、コア粒子と共に、前記コアシェル構造を構成するシェルは、添加剤成分の拡散による構造変化によって生じることから、測定温度TH(℃)が前記温度範囲内であれば、その厚みは簡単には変化せず、コア粒子の微構造に影響を及ぼさないため、加熱下での、コア粒子の微構造、具体的には結晶子サイズを、より正確に把握することができる。
測定する回折データは、キュリー温度Tc(℃)未満の測定温度TL(℃)では、正方晶系の(hkl)面の回折ピーク、および立方晶系の(h′k′l′)面の回折ピークであり、キュリー温度Tc(℃)以上の測定温度TH(℃)では、正方晶系が立方晶系に転移した後の(h″k″l″)面の回折ピーク、および、もともと存在していた立方晶系の(h′k′l′)面の回折ピークである。それぞれの回折ピークから、ピーク強度(=積分強度)、ピークトップの2θ位置、半値幅、ピークの形状関数等のパラメータを求める。その際、必要に応じて、ピーク分離を行ってもよい。
ピーク分離には、市販ソフトや自作プログラム等を用いることができ、ピーク分離のためのツールは特に限定されない。誘電体磁器がBaTiO3系のセラミックである場合、正方晶系の(hkl)面としては(004)面が、また、立方晶系の(h′k′l′)面、(h″k″l″)面としては(400)面の回折ピークについて、ピーク分離後に、前記パラメータが測定される。
次に、誘電体磁器の温度を、キュリー温度Tc(℃)未満の測定温度TL(℃)に維持した状態での、正方晶系の(hkl)面の回折ピークの積分強度Itetおよび多重度mtetと、立方晶系の(h′k′l′)面の回折ピークの積分強度Icubおよび多重度mcubとから、式(3):
Figure 0004597892
により、正方晶系の体積分率Vobsを求める。
次に、測定温度TL(℃)での、立方晶系の(h′k′l′)面の回折ピークの半値幅Bから、シェラーの式(4):
Figure 0004597892
により、シェルの厚みdobsを求める。ここで、λは使用したX線の波長(Å)、βは真の半値幅(rad)、θはブラッグ角である。真の半値幅βは、半値幅Bと、装置定数bとから、式(5):
Figure 0004597892
によって求める。
また、式(3)で求めた、正方晶系の体積分率Vobsから、球状二重構造モデルを仮定して、式(6):
Figure 0004597892
によって、シェルの厚みdcalを求め、先のdobsと比較検討して、シェルの厚みdを決定する。ここで、Dはペロブスカイト型結晶粒子の平均結晶粒径である。
平均結晶粒径Dは、誘電体磁器の、走査型電子顕微鏡(「SEM」とする)によって撮影した写真を画像処理して得た、写真に写されたペロブスカイト型結晶粒子の映像の面積の平均値Sから、式(7):
Figure 0004597892
によって求める。
次に、測定温度TL(℃)での、正方晶系(hkl)面の回折ピークの半値幅から、先に説明したシェラーの式(4)および式(5)に基づいて、ドメイン構造の影響を受けた結晶子サイズ、つまりドメインサイズを求める。
次に、誘電体磁器を、キュリー温度Tc(℃)以上の測定温度TH(℃)に加熱して、コア粒子内のドメイン構造を消失させた状態での、正方晶系が立方晶系に転移した後の、立方晶系の(h″k″l″)面の回折ピークの半値幅から、やはり、先に説明したシェラーの式(4)および式(5)に基づいて、真の結晶粒子サイズを求め、先ドメインサイズと比較して、コア粒子の微構造を評価する。
《誘電体磁器の作製》
評価用試料である誘電体磁器の作製には、市販原料で、平均粒度が0.35μmのBaTiO3粉末を用いた。そして、BaTiO3粉末100モルに対して、添加剤として、MgO粉末を2.5モル、MnCO3粉末を0.3モル、希土類元素としてのYb23またはY23を1.5モル添加すると共に、前記BaTiO3粉末100重量部に対して、アルカリ土類元素およびSiの酸化物を含むガラス粉末を0.8重量部添加した混合物に、直径5mmのZrO2ボールおよび水を加え、ボールミルを用いて湿式混合した。混合条件は、回転速度150〜200回転/分、混合時間は約40時間とした。そして、バインダ成分を加えた後、プレス成形用の顆粒状の成形材料を造粒した。
次に、前記成形材料を、直径16mmの金型に入れてプレス成形して、厚み700〜800μm、直径16mmの円板状の成形体を得、前記成形体を、大気中で300℃に加熱して脱バインダ処理をし、次いで、昇温速度300℃/時間で1305℃(酸素分圧10-11atm)まで昇温して2時間、焼成した後、降温速度300℃/時間で室温まで冷却して、評価用試料としての誘電体磁器を作製した。
《特性測定》
得られた誘電体磁器の平均結晶粒径、静電容量の温度特性、および誘電損失を測定した。すなわち、静電容量の温度特性と、誘電損失は、周波数1.0kHz、測定電圧0.5Vrmsの条件で測定し、静電容量の温度特性は、−55℃〜+125℃の温度範囲での静電容量の、+25℃での静電容量に対する変化率が、±15%以内に入ること、つまりEIA規格〔(アメリカ)電子機械工業会規格〕で規定されたXR7特性を満足することを確認した。
さらに、誘電体磁器の平均結晶粒径Dは、先に説明したように、誘電体磁器の、SEMによって撮影した写真を画像処理して得た、写真に写されたペロブスカイト型結晶粒子の映像の面積の平均値Sから、式(7):
Figure 0004597892
によって求めた。
《X線回折による誘電体磁器の評価》
キュリー温度Tc(℃)未満の測定温度TL(℃)での回折実験には、大型放射光施設であるSpring−8のBL14B1を利用した。測定対象となる結晶面は、BaTiO3の、正方晶系の(004)面、(400)面と、立方晶系の(400)面とした。また、分光器としてはSi(111)を用いた。照射するX線のビームの大きさは、縦方向に0.5mm、水平方向に5mmとした。エネルギーはCuフォイルで校正し、波長を1.54982Åとした。
走査範囲は、2θ角度で99°から104°までとし、ステップ幅は0.02°とした。1点あたりの計数時間は5.0秒とした。また、走査を10回、繰り返して行った結果を積算して回折強度とした。装置定数bは、Si(333)を測定した結果から0.03°とした。さらに、キュリー温度Tc(℃)未満の測定温度TL(℃)は25℃とした。
また、キュリー温度Tc(℃)以上の測定温度TH(℃)での回折実験には、相転移の影響で、ピーク本数が減少することを考慮して、実験室系X線回折装置を使用した。X線の波長は1.540562Åであり、単色化していないCuKα1特性X線と、CuKα2特性X線の混じったCuKα二重線を利用した(なお、測定温度TH(℃)での回折実験においても、単色X線や放射光を用いるのが理想的であるが、解析的にピークが分離できれば、このように、単色化されていないX線を使用しても差し支えない)。装置定数bは、Si(333)の半値幅0.1°を利用した。また、キュリー温度Tc(℃)以上の測定温度TH(℃)は150℃とした。
ピーク分離は、市販のピーク分離ソフトを用いて、下記の条件で実施した。
バックグラウンド関数:0次多項式
放射光:Kα1単色光(測定温度TH(℃)でのデータについては、先に説明したようにCuKα二重線)
プロファイル関数:The Pseudo-Voigt関数
半値幅:全ての反射に対して異なる半値幅
プロファイルの対称性:対称
データ分解能:シャープ(最小半値幅:約0.1°)
解析範囲:99°≦2θ≦104°
図1は、測定温度TL(℃)での測定結果をピーク分離して得られた、正方晶系の(004)面〔図中にT(004)と記載〕、および(400)面〔図中にT(400)と記載〕と、立方晶系の(400)面〔図中にC(400)と記載〕の、各回折ピークを示すグラフである。また、図2は、測定温度TH(℃)での測定結果をピーク分離して得られた、同じ回折ピークを示すグラフである。両図から、誘電体磁器を、BaTiO3のキュリー温度Tc(℃)以上に加熱すると、コア粒子内の正方晶系が立方晶系に転移して、回折ピークが大きく変化することが確認された。
《測定温度TL(℃)での体積分率の計算》
正方晶系の(400)面の回折ピークと、立方晶系の(400)面の回折ピークとから、それぞれの回折ピークの積分強度Itet、Icubを求めた。そして、前記積分強度Itet、Icubと、ペロブスカイト構造における、正方晶系の(400)面の多重度mtet(=4)、立方晶系の(400)面の多重度mcub(=6)とから、式(3):
Figure 0004597892
により、正方晶系の体積分率Vobsを求めたところ0.48であった。
《測定温度TL(℃)でのシェルの厚みの計算》
立方晶系の(400)面の回折ピークから、半値幅Bを求めた。そして、前記半値幅Bから、式(5):
Figure 0004597892
により、真の半値幅βを求め、前記真の半値幅βから、シェラーの式(4):
Figure 0004597892
により、シェルの厚みdobsを求めたところ35nmであった。
また、先に求めた正方晶系の体積分率Vobsから、球状二重構造モデルを仮定して、式(6):
Figure 0004597892
によって、シェルの厚みdcalを求めところ、やはり35nmであり、両結果から、シェルの厚みdは35nmと決定した。
《測定温度TL(℃)でのドメインサイズの計算》
正方晶系の(004)面の回折ピークから、半値幅Bを求めた。そして、前記半値幅Bから、シェラーの式(4)および式(5)に基づいて、ドメインサイズを求めたところ26nmであった。
《測定温度TH(℃)での結晶子サイズの計算》
シェルの厚みdは、測定温度TH(℃)では、シェルとコアの間で原子の相互拡散がないと考えられるため、測定温度TL(℃)のときと変化しないと仮定した。そして、立方晶系の(400)面の回折ピークから、半値幅Bを求めて、前記半値幅Bから、シェラーの式(4)および式(5)に基づいて、真の結晶子サイズを求めたところ86nmであった。
以上の結果から、温度を変化させて測定することにより、室温で測定しただけでは評価することができなかった、コア粒子における、結晶子とドメイン構造との関係を評価できることが確認された。今後、積層セラミックコンデンサ等を構成する誘電体磁器においては、ドメインサイズを大きくすること、つまり、転位等の欠陥をなくして、更なる誘電特性の向上を図ることが重要とされており、本発明の評価方法は、前記技術動向を促進する上で、重要な役割を果たすことができるものと期待される。
キュリー温度Tc(℃)未満の測定温度TL(℃)での、X線回折測定の結果をピーク分離して得られた、各回折ピークを示すグラフである。 キュリー温度Tc(℃)以上の測定温度TH(℃)での、X線回折測定の結果をピーク分離して得られた、同じ回折ピークを示すグラフである。

Claims (5)

  1. コア粒子の表面がシェルで被覆されたコアシェル構造を有するペロブスカイト型結晶粒子からなる、多結晶系構造の誘電体磁器について、前記コア粒子を構成する結晶材料のキュリー温度Tc(℃)未満の所定の温度と、前記キュリー温度Tc(℃)以上の所定の温度とを含む、少なくとも2点の温度で、それぞれ、X線回折測定を行った結果をもとに、前記コア粒子の微構造を評価することを特徴とする誘電体磁器の評価方法。
  2. キュリー温度Tc(℃)未満での測定を、測定温度TL(℃)が、式(1):
    5℃≦TL≦35℃ (1)
    を満足する範囲で行うと共に、キュリー温度Tc(℃)以上での測定を、測定温度TH(℃)が、式(2):
    Tc(℃)≦TH≦Tc(℃)+30℃ (2)
    を満足する範囲で行う請求項1記載の誘電体磁器の評価方法。
  3. X線回折測定により、キュリー温度Tc(℃)未満の所定の温度で、誘電体磁器の、正方晶系の(hkl)面の回折ピーク、および立方晶系の(h′k′l′)面の回折ピークを測定すると共に、前記キュリー温度Tc(℃)以上の所定の温度で、前記誘電体磁器の、正方晶系が立方晶系に転移した後の、立方晶系の(h″k″l″)面の回折ピークを測定した結果をもとに、コア粒子の微構造としての、結晶子とドメイン構造との関係を評価する請求項1または2記載の誘電体磁器の評価方法。
  4. 誘電体磁器がBaTiO3系のセラミックであり、前記セラミックの正方晶系の(004)面と、立方晶系の(400)面の回折ピークを測定した結果をもとに、コア粒子の微構造を評価する請求項3記載の誘電体磁器の評価方法。
  5. 積層セラミックコンデンサを構成する誘電体磁器における、コア粒子の微構造を評価する方法である、請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器の評価方法。

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