本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、少なくともふたつの無線装置によって構成されるMIMOシステムに関する。無線装置のうちの一方は、基地局装置に相当し、他方は、端末装置に相当する。基地局装置は、複数の系列によって構成されるパケット信号を生成する。また、基地局装置は、基本的に複数の端末装置に対して、CSMAを実行する。さらに、伝送効率を向上させるために、基地局装置は所定の期間にわたり無線帯域を占有し、複数のパケット信号を連続的に送信する。なお、連続的に送信することには、完全に連続ではなくても、通常の送信間隔よりも短い間隔にてパケット信号が送信されることを含む。ここでは、特に後者を説明の対象にし、CSMAに関しては公知の技術を使用すればよいので、説明を省略する。
基地局装置は、複数の端末装置のそれぞれにパケット信号を送信する際に、データ速度を可変に設定する。ここで、データ速度は、変調方式、符号化率、系列数等を設定することによって決定される。基地局装置は、パケット信号の中に、データ速度を示すためのレート情報を含める。前述のごとく、レート情報には、標準的レート情報あるいは付加的レート情報が含まれている。また、パケット信号には、長さ情報も含まれており、端末装置は、レート情報と長さ情報から送信期間を導出し、送信期間にわたって送信処理を実行しない。また、端末装置は、低消費電力化を目的として、送信期間にわたって受信処理を停止してもよい。
ここで、端末装置が、標準的レート情報を理解できるが、付加的レート情報を理解できない場合、以上の処理では送信期間が設定できない。その際、連続的に送信されるパケット信号のうち、先頭のパケット信号に、連続的にパケット信号が送信される期間に応じた長さの情報(以下、「従来用長さ情報」という)が含まれており、端末装置は、従来用長さ情報に応じて送信期間を設定する。前述のごとく、従来用長さ情報は実際の送信期間よりも長くなるような値に設定されているので、従来用長さ情報をもとに設定された送信期間は、正確なものではない。特に、送信期間をもとに受信動作を停止する場合、自らが宛先のパケット信号が送信期間に含まれていれば、端末装置は、当該パケット信号を受信できない。これに対応するために、基地局装置は、以下の処理を実行する。なお、ここでは基地局装置が、レート情報を端末装置に通知する際の処理を説明する。そのため、前述のレート情報を決定するための処理については公知の技術を使用すればよく、ここでは説明を省略する。
基地局装置は、連続的にパケット信号を送信する際に、標準的レート情報と対応づけられたパケット信号を送信してから、付加的レート情報と対応づけられたパケット信号を送信する。そのため、付加的レート情報を理解できない端末装置に対するパケット信号は、連続的に送信されるパケット信号の前方の部分に配置されるので、当該端末装置は、パケット信号に含まれたレート情報を理解できる。その結果、当該端末装置は、送信期間を正確に設定できる。一方、連続的に送信されるパケット信号の後方の部分では、付加的レート情報に対応したパケット信号が送信されるので、当該端末装置は、連続的にレート情報を理解できない。その結果、正確な送信期間が設定されないが、後方の部分において、当該端末装置に対するパケット信号は到来しないので、送信期間が正確でないことによる影響も小さくなる。
図1は、本発明の実施例に係るマルチキャリア信号のスペクトルを示す。特に、図1は、OFDM変調方式での信号のスペクトルを示す。OFDM変調方式における複数のキャリアのひとつをサブキャリアと一般的に呼ぶが、ここではひとつのサブキャリアを「サブキャリア番号」によって指定するものとする。MIMOシステムには、サブキャリア番号「−28」から「28」までの56サブキャリアが規定されている。なお、サブキャリア番号「0」は、ベースバンド信号における直流成分の影響を低減するため、ヌルに設定されている。一方、MIMOシステムに対応していないシステム(以下、「従来システム」という)には、サブキャリア番号「−26」から「26」までの52サブキャリアが規定されている。なお、従来システムの一例は、IEEE802.11a規格に準拠した無線LANである。また、複数のサブキャリアにて構成されたひとつの信号の単位であって、かつ時間領域のひとつの信号の単位は、「OFDMシンボル」と呼ばれるものとする。
また、それぞれのサブキャリアは、可変に設定された変調方式によって変調されている。変調方式には、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAMのいずれかが使用される。
また、これらの信号には、誤り訂正方式として、畳み込み符号化が適用されている。畳み込み符号化の符号化率は、1/2、3/4等に設定される。さらに、並列に送信すべきデータの数は、可変に設定される。その結果、変調方式、符号化率、系列の数の値が可変に設定されることによって、データレートも可変に設定される。なお、「データレート」は、これらの任意の組合せによって決定されてもよいし、これらのうちのひとつによって決定されてもよい。従来システムにおいて、変調方式がBPSKであり、符号化率が1/2である場合、データレートは6Mbpsになる。一方、変調方式がBPSKであり、符号化率が3/4である場合、データレートは9Mbpsになる。
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、無線装置10と総称される第1無線装置10a、第2無線装置10bを含む。また、第1無線装置10aは、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第3アンテナ12c、第4アンテナ12dを含み、第2無線装置10bは、アンテナ14と総称される第1アンテナ14a、第2アンテナ14b、第3アンテナ14c、第4アンテナ14dを含む。ここで、第1無線装置10aが、送信装置および基地局装置に対応し、第2無線装置10bが、受信装置および端末装置に対応する。
通信システム100の構成として、MIMOシステムの概略を説明する。データは、第1無線装置10aから第2無線装置10bに送信されているものとする。第1無線装置10aは、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dのそれぞれから、複数の系列のデータをそれぞれ送信する。その結果、データレートが高速になる。第2無線装置10bは、第1アンテナ14aから第4アンテナ14dによって、複数の系列のデータを受信する。さらに、第2無線装置10bは、アダプティブアレイ信号処理によって、受信したデータを分離して、複数の系列のデータを独立に復調する。
ここで、アンテナ12の本数は「4」であり、アンテナ14の本数も「4」であるので、アンテナ12とアンテナ14の間の伝送路の組合せは「16」になる。第iアンテナ12iから第jアンテナ14jとの間の伝送路特性をhijと示す。図中において、第1アンテナ12aと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh11、第1アンテナ12aから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh12、第2アンテナ12bと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh21、第2アンテナ12bから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh22、第4アンテナ12dから第4アンテナ14dとの間の伝送路特性がh44と示されている。なお、これら以外の伝送路は、図の明瞭化のために省略する。なお、第1無線装置10aと第2無線装置10bとが逆になってもよい。
図3は、通信システム100において送信されるパケット信号の配置を示す。図3は、図2の第1無線装置10a、すなわち基地局装置から送信される複数のパケット信号を示す。ここでは、説明を明瞭にするために、「パケット信号1」から「パケット信号5」の5つのパケット信号が送信の対象になっているものとする。また、「パケット信号3」での系列の数が「1」になっており、「パケット信号1」と「パケット信号4」での系列の数が「2」になっており、「パケット信号2」と「パケット信号5」での系列の数が「3」になっている。
また、隣接したパケット信号の間隔は、「T」であるものとする。ここで、間隔「T」は、キャリアセンスのために必要とされる期間よりも短い期間であるとする。すなわち、図示しない端末装置は、間隔「T」よりも長い期間においてキャリアセンスを実行するので、間隔「T」の間にパケット信号の送信を開始できない。その結果、基地局装置は、複数のパケット信号を連続して送信でき、これは、複数のパケット信号を送信すべき期間にわたって当該帯域を占有することに相当する。また、詳細は後述するが、先頭のパケット信号に含まれているL−SIGの中に、図3のような送信がなされる期間に対応したダミーのパケット長(前述のごとく、「従来用長さ情報」という)が、挿入されている。その結果、パケット信号が送信されない無線装置10は、図3のような送信が終わるまでの期間を理解できるので、送信を停止し、信号の衝突が低減される。
基地局装置が図3のような連続したパケット信号を送信する際、基地局装置は、標準的レート情報が含まれたパケット信号を前方に配置し、付加的レート情報が含まれたパケット信号を後方に配置する。例えば、「パケット信号1」から「パケット信号3」には、標準的レート情報が含まれており、「パケット信号4」および「パケット信号5」には、付加的レート情報が含まれている。また、前述のごとく、「パケット信号1」には、従来用長さ情報が含まれている。
図4(a)−(c)は、通信システム100におけるパケットフォーマットを示す。図4(a)−(c)は、図3のパケット信号1、すなわち連続して送信されるパケット信号のうち、先頭のパケット信号に対するフォーマットを示す。図4(a)は、系列の数が「4」である場合に対応し、図4(b)は、系列の数が「3」である場合に対応し、図4(c)は、系列の数が「2」である場合に対応する。図4(a)では、4つの系列に含まれたデータが、送信の対象とされるものとし、第1から第4の系列に対応したパケットフォーマットが上段から下段に順に示される。
第1の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF」、「HT−LTF」等が配置される。「L−STF」、「L−LTF」、「L−SIG」、「HT−SIG」は、従来システムに対応したAGC設定用の既知信号、伝送路推定用の既知信号、制御信号、MIMOシステムに対応した制御信号にそれぞれ相当する。従来システムに対応した制御信号には、従来用長さ情報が含まれており、MIMOシステムに対応した制御信号には、レート情報、長さ情報が含まれている。「HT−STF」、「HT−LTF」は、MIMOシステムに対応したAGC設定用の既知信号、伝送路推定用の既知信号に相当する。一方、「データ1」は、データ信号である。なお、L−LTF、HT−LTFは、AGCの設定だけでなく、タイミングの推定にも使用される。
また、第2の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−50ns)」と「HT−LTF(−400ns)」等が配置される。また、第3の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−100ns)」と「HT−LTF(−200ns)」等が配置される。また、第4の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−150ns)」と「HT−LTF(−600ns)」等が配置される。
ここで、「−400ns」等は、CDD(Cyclic Delay Diversity)におけるタイミングシフト量を示す。CDDとは、所定の区間において、時間領域の波形をシフト量だけ後方にシフトさせ、所定の区間の最後部から押し出された波形を所定の区間の先頭部分に循環的に配置させる処理である。すなわち、「L−STF(−50ns)」には、「L−STF」に対して、−50nsの遅延量にて循環的なタイミングシフトがなされている。なお、L−STFとHT−STFは、800nsの期間の繰り返しによって構成され、その他のHT−LTF等は、3.2μsの期間の繰り返しによって構成されているものとする。ここで「データ1」から「データ4」にもCDDがなされており、タイミングシフト量は、前段に配置されたHT−LTFでのタイミングシフト量と同一の値である。
また、第1の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「−HT−LTF」、「HT−LFT」、「−HT−LTF」の順に配置されている。ここで、これらを順に、すべての系列において「第1成分」、「第2成分」、「第3成分」、「第4成分」と呼ぶ。すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分+第3成分−第4成分の演算を行えば、受信装置において、第1の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分+第3成分+第4成分の演算を行えば、受信装置において、第2の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分−第3成分+第4成分の演算を行えば、受信装置において、第3の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分−第3成分−第4成分の演算を行えば、受信装置において、第4の系列に対する所望信号が抽出される。これらは、所定の成分の符号の組合せが系列間において直交関係を有していることに相当する。なお、加減処理は、ベクトル演算にて実行される。
「L−LTF」から「HT−SIG」等までの部分には、従来システムと同様に、「52」サブキャリアが使用される。なお、「52」サブキャリアのうちの「4」サブキャリアがパイロット信号に相当する。一方、「HT−LTF」等以降の部分は、「56」サブキャリアを使用する。
図4(a)において、「HT−LTF」の符号は、以下のように規定されている。第1の系列の先頭から順に、符号は「+」、「−」、「+」、「−」の順に並べられ、第2の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「+」、「+」の順に並べられ、第3の系列の先頭から順に、符号は「+」、「−」、「−」、「+」の順に並べられ、第4の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「−」、「−」の順に並べられている。しかしながら、符号は、以下のように規定されていてもよい。第1の系列の先頭から順に、符号は「+」、「−」、「+」、「+」の順に並べられ、第2の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「−」、「+」の順に並べられ、第3の系列の先頭から順に、符号は「+」、「+」、「+」、「−」の順に並べられ、第4の系列の先頭から順に、符号は「−」、「+」、「+」、「+」の順に並べられる。このような符号であっても、所定の成分の符号の組合せが系列間において直交関係を有していることに相当する。
図4(b)は、図4(a)の第1の系列から第3の系列に相当する。図4(c)は、図4(a)に示したパケットフォーマットのうちの第1系列と第2系列に類似している。ここで、図4(b)の「HT−LTF」の配置が、図4(a)の「HT−LTF」の配置と異なっている。すなわち、HT−LTFには、第1成分と第2成分だけが含まれている。第1の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「HT−LTF」の順に配置され、第2の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「−HT−LTF」の順に配置されている。すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分の演算を行えば、受信装置において、第1の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分の演算を行えば、受信装置において、第2の系列に対する所望信号が抽出される。これらも、前述のごとく、直交関係といえる。
図5(a)−(c)は、通信システム100における別のパケットフォーマットを示す。図5(a)−(c)は、図3のパケット信号2から5、すなわち連続して送信されるパケット信号のうち、ふたつ目以降のパケット信号に対するフォーマットを示す。図5(a)では、図4(a)での「L−STF」、「L−LTF」、「L−SIG」が配置されていない。すなわち、従来システムとの互換性を維持するための信号が配置されてない。その代わりに、図5(a)では、「L−STF」等が配置されていないので、パケット信号の伝送効率が図4(a)よりも改善されている。
第1の系列において、「HT−STF」に続いて、図4(a)と同様の4つの「HT−LTF」等が配置されているが、1番目の「HT−LTF」と2番目の「−HT−LTF」との間に、「HT−SIG」が配置されている。また、4つの「HT−LTF」等の後段に、「データ1」が配置されている。第2の系列から第4の系列に対しては、第1の系列に−400ns、−200ns、−600nsでのCDDがなされた信号がそれぞれ配置されている。また、図5(b)は、図4(b)に対応したフォーマットである。図5(c)は、図5(a)に示したパケットフォーマットのうちの第1系列と第2系列に類似している。すなわち、図5(c)は、図4(c)に対応したフォーマットである。
図6は、通信システムにおいて最終的に送信されるパケット信号のパケットフォーマットを示す図である。図6は、図4(a)−(c)のパケット信号を変形させた場合に相当する。ここでは、図4(c)を変形した場合において、「HT−STF」以降を示す。図4(c)の第1の系列と第2の系列に配置された「HT−STF」と「HT−LTF」に、後述の直交行列による演算がなされる。その結果、「HT−STF1」から「HT−STF4」が生成される。「HT−LTF」についても同様である。さらに、第1の系列から第4の系列のそれぞれに対して、タイミングシフト量「0ns」、「−50ns」、「−100ns」、「−150ns」によるCDDが実行される。なお、2度目のCDDでのタイミングシフト量の絶対値は、HT−STFおよびHT−LTFに対して1度目になされたCDDでのタイミングシフト量の絶対値よりも小さくなるように設定される。第3の系列と第4の系列に配置された「HT−LTF」と、第1の系列の「データ1」等に対しても同様の処理が実行される。なお、図5(a)−(c)に対しても同様の変形がなされる。
図7は、第1無線装置10aの構成を示す。第1無線装置10aは、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第4無線部20d、ベースバンド処理部22、変復調部24、IF部26、制御部30を含む。また信号として、時間領域信号200と総称される第1時間領域信号200a、第2時間領域信号200b、第4時間領域信号200d、周波数領域信号202と総称される第1周波数領域信号202a、第2周波数領域信号202b、第4周波数領域信号202dを含む。なお、第2無線装置10bは、第1無線装置10aと同様に構成される。そのため、以下の説明において、受信動作に関する説明は、第2無線装置10bでの処理に対応し、送信動作に関する説明は、第1無線装置10aでの処理に対応する。
無線部20は、受信動作として、アンテナ12によって受信した無線周波数の信号を周波数変換し、ベースバンドの信号を導出する。無線部20は、ベースバンドの信号を時間領域信号200としてベースバンド処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、AGCやA/D変換部も含まれる。AGCは、「L−STF」、「HT−STF」において増幅率を設定する。
無線部20は、送信動作として、ベースバンド処理部22からのベースバンドの信号を周波数変換し、無線周波数の信号を導出する。ここで、ベースバンド処理部22からのベースバンドの信号も時間領域信号200として示す。無線部20は、無線周波数の信号をアンテナ12に出力する。すなわち、無線部20は、無線周波数のパケット信号をアンテナ12から送信する。また、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。時間領域信号200は、時間領域に変換されたマルチキャリア信号であり、デジタル信号であるものとする。
ベースバンド処理部22は、受信動作として、複数の時間領域信号200をそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。ベースバンド処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を周波数領域信号202として出力する。ひとつの周波数領域信号202が、送信された複数の系列のそれぞれに相当する。また、ベースバンド処理部22は、送信動作として、変復調部24から、周波数領域の信号としての周波数領域信号202を入力し、周波数領域の信号を時間領域に変換し、複数のアンテナ12のそれぞれに対応づけながら時間領域信号200として出力する。
送信処理において使用すべきアンテナ12の数は、制御部30によって指定されるものとする。ここで、周波数領域の信号である周波数領域信号202は、図1のごとく、複数のサブキャリアの成分を含むものとする。図を明瞭にするために、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順番に並べられて、シリアル信号を形成しているものとする。
図8は、周波数領域の信号の構成を示す。ここで、図1に示したサブキャリア番号「−28」から「28」のひとつの組合せを「OFDMシンボル」というものとする。「i」番目のOFDMシンボルは、サブキャリア番号「1」から「28」、サブキャリア番号「−28」から「−1」の順番にサブキャリア成分を並べているものとする。また、「i」番目のOFDMシンボルの前に、「i−1」番目のOFDMシンボルが配置され、「i」番目のOFDMシンボルの後ろに、「i+1」番目のOFDMシンボルが配置されているものとする。なお、図4(a)等の「L−SIG」等の部分では、ひとつの「OFDMシンボル」に対して、サブキャリア番号「−26」から「26」の組合せが使用される。
図7に戻る。また、ベースバンド処理部22は、図4(a)−(c)、図5(a)−(c)のパケットフォーマットに対応したパケット信号を生成するために、CDDを実行する。さらに、ベースバンド処理部22は、図6のパケットフォーマットに示したパケット信号への変形を実行するために、ステアリング行列の乗算を実行する。これらの処理の詳細は、後述する。
変復調部24は、受信処理として、ベースバンド処理部22からの周波数領域信号202に対して、復調とデインタリーブを実行する。なお、復調は、サブキャリア単位でなされる。変復調部24は、復調した信号をIF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、インタリーブと変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を周波数領域信号202としてベースバンド処理部22に出力する。送信処理の際に、変調方式は、制御部30によって指定されるものとする。
IF部26は、受信処理として、複数の変復調部24からの信号を合成し、ひとつのデータストリームを形成する。さらに、ひとつのデータストリームを復号する。IF部26は、復号したデータストリームを出力する。また、IF部26は、送信処理として、ひとつのデータストリームを入力し、符号化した後に、これを分離する。さらに、IF部26は、分離したデータを複数の変復調部24に出力する。送信処理の際に、符号化率は、制御部30によって指定されるものとする。ここで、符号化の一例は、たたみ込み符号化であり、復号の一例は、ビタビ復号であるとする。
制御部30は、第1無線装置10aのタイミング等を制御する。制御部30は、IF部26、変復調部24、ベースバンド処理部22と協同しながら、図3、図4(a)−(c)、図5(a)−(c)、図6のようにパケット信号を生成し、生成したパケット信号を送信するための制御を実行する。IF部26は、複数のデータを入力する。ここで、複数のデータとは、複数の端末装置のそれぞれに対して送信すべきデータである。また、ここでは、前述のごとく、所定の期間にわたって、複数のデータを連続的に送信する場合を想定する。複数のデータのそれぞれは、可変のデータレートにて送信されるべきであり、制御部30は、複数のデータのそれぞれを送信する際のレート情報を予め受けつける。
なお、前述のごとく、レート情報には、変調方式に関する情報、符号化率に関する情報、系列数に関する情報が含まれており、これらの組合せによってデータレートが示されている。また、これらの最適値は、無線伝送路特性に応じて決定されるべきである。ここでは、基地局装置の制御部30は、端末装置から、送信する際のデータレートの要求値をレート情報として予め受けつける。また、制御部30は、受けつけたレート情報を図示しない記憶媒体に記憶する。なお、前述のごとく、端末装置が要求値を決定する方法として、公知の技術が使用されればよい。そのため、要求値を決定する方法についての説明は、省略する。また、レート情報として、標準的レート情報と付加的レート情報とが規定されている。
ここで、標準的レート情報とは、端末装置が対応すべき必須のレート情報であり、5ビットのデータとして構成される。図9は、制御部30に記憶された標準的レート情報のデータ構造を示す。図9は、標準的レート情報欄110、変調方式欄112、符号化率欄114、系列数欄116を含む。標準的レート情報欄110には、標準的レート情報の値が示されており、「00000」から「11111」までの32種類の値が示されている。変調方式欄112には、変調方式の種類が示されている。例えば、BPSK、QPSK、16QAM、64QAMが含まれている。符号化率欄114には、たたみ込み符号化の符号化率が示されている。系列数欄116には、系列の数が示されている。ここでは、「1」から「4」のいずれかの値が示されているものとする。図示のごとく、標準的レート情報欄110のいずれかの値が、特定の変調方式、特定の符号化率、特定の系列数に対応づけられている。例えば、「00000」は、変調方式として「BPSK」、符号化率として「1/2」、系列数として「1」に対応づけられている。
また、付加的レート情報とは、対応した端末装置も存在すれば、対応しない端末装置も存在するようなレート情報である。図10は、制御部30に記憶された付加的レート情報のデータ構造を示す。図10は、付加的レート情報欄118、情報内容欄120を含む。付加的レート情報欄118には、付加的レート情報の値が示されている。レート情報として、7ビットの値が規定されているので、128通りの値が規定されている。7ビットの値のうちの上位2ビットの値が「0」である場合に、下位5ビットの値は、前述の標準的レート情報として規定される。一方、レート情報から標準的レート情報を除外した残りの情報が、付加的レート情報として規定される。付加的レート情報には、標準的レート情報に含まれていない変調方式等、例えば、256QAMが含まれていてもよい。あるいは系列ごとに変調方式等が異なるような規定が付加的レート情報に含まれていてもよい。ここでは、これらの値を「A」から「Z」によって示している。実際には、「A」から「Z」の代わりに具体的な値が情報内容欄120に示されている。
図7に戻る。制御部30は、レート情報とデータとを対応づける。なお、制御部30は、図3のように「パケット信号1」から「パケット信号5」のいずれかに、IF部26に入力された複数のデータを対応づける。ここでは、説明を簡易にするために、ひとつのパケット信号がひとつの端末装置に対して送信され、かつひとつのパケット信号にひとつのデータが割り当てられるものとする。なお、ひとつのデータとは、ひとつのパケット信号に含められるべきデータのまとまりを示す。また、制御部30、変復調部24、ベースバンド処理部22によって形成される「パケット信号1」のフォーマットは、図4(a)−(c)に示されており、データの前段において「HT−SIG」が配置されている。制御部30は、「HT−SIG」の中に、レート情報と長さ情報とを含める。
また、制御部30は、「L−SIG」の中に、図3のごとく連続的にパケット信号を送信する期間が示された情報を含ませる。ここでは、連続的にパケット信号を送信する期間が示された情報として、従来システムにおいて規定されたレート情報(以下、「従来用レート情報」という)、従来用長さ情報とが、「L−SIG」に含まれる。図11は、制御部30に記憶された従来用レート情報のデータ構造を示す。図11は、従来用レート情報欄122、変調方式欄112、符号化率欄114を含む。従来用レート情報欄122には、従来用レート情報の値が示されている。従来用レート情報として、4ビットの値が規定され、8通りの値が規定されている。制御部30は、従来用レート情報と従来用長さ情報によって、端末装置に対して、連続的にパケット信号を送信する期間を通知する。前述のごとく、パケット信号の衝突確率を低減するために、制御部30は、実際の期間よりも長くなるように、連続的にパケット信号を送信する期間を設定する。
一方、制御部30、変復調部24、ベースバンド処理部22によって形成される「パケット信号2」から「パケット信号5」のフォーマットは、図5(a)−(c)に示されており、データの前段において「HT−SIG」が配置されている。「HT−SIG」の構成は、図4(a)−(c)の場合と同様である。図7に戻る。
制御部30は、図3のような複数のパケット信号に複数のデータを割り当てる際に以下の処理を実行する。データに対応したレート情報が標準的レート情報であれば、制御部30は、複数のパケット信号のうちの前方のパケット信号に当該データを割り当てる。一方、データに対応したレート情報が付加的レート情報であれば、制御部30は、複数のパケット信号のうちの後方のパケット信号に当該データを割り当てる。このような割当によって、変復調部24、ベースバンド処理部22、無線部20は、標準的レート情報が含まれたパケット信号を送信した後に、付加的レート情報が含まれたパケット信号を送信する。
送信処理を停止する際の動作について、図3等を使用しながら説明する。ここで、図3の「パケット信号1」のパケットフォーマットは、図4(b)であり、「パケット信号2」から「パケット信号5」のパケットフォーマットは、図5(a)−(c)等である。「パケット信号1」のL−SIGには、従来用レート情報と従来用長さ情報とが含まれ、HT−SIGには、標準的レート情報と長さ情報とが含まれており、「パケット信号2」と「パケット信号3」のHT−SIGにも、標準的レート情報と長さ情報とが含まれているものとする。一方、「パケット信号4」と「パケット信号5」のHT−SIGには、付加的レート情報と長さ情報とが含まれているものとする。
付加的レート情報を理解できる端末装置は、各パケット信号のHT−SIGに含まれた標準的レート情報あるいは付加的レート情報と、長さ情報とから、送信処理を停止するための期間、すなわち前述の送信期間を決定する。また、送信期間は、これらのレート情報にて示されたデータレートの値によって、長さ情報にて示されたデータの長さを除算することによって導出される。制御部30は、HT−SIGに含まれた情報を使用しながら送信期間を決定するので、送信期間を正確に設定できる。さらに、当該端末装置は、送信期間において送信処理を停止する。
一方、付加的レート情報を理解できない端末装置は、「パケット信号1」から「パケット信号3」に含まれた標準的レート情報と長さ情報とから、送信期間を決定する。また、当該端末装置は、これらの送信期間にわたって送信処理を停止する。当該端末装置は、「パケット信号4」と「パケット信号5」に含まれた付加的レート情報を理解できないので、これらのパケット信号に対して、「パケット信号1」に含まれた従来用レート情報と従来用長さ情報とから、送信期間を決定する。また、当該端末装置は、送信期間にわたって送信処理を停止する。
受信処理を停止する際の動作について、図3等を使用しながら説明する。まず、端末装置が付加的レート情報を理解可能である場合を説明する。端末装置は、無線部20、ベースバンド処理部22、変復調部24によって、所定の期間にわたって、複数のパケット信号を受信する。制御部30では、受信したパケット信号の宛先を確認し、自らが宛先となっているパケット信号に対して、受信処理の続行をベースバンド処理部22等に指示する。なお、パケット信号の宛先は、MACヘッダとして、データの中に含まれているものとする。
一方、制御部30は、自らが宛先となっていないパケット信号に対して、受信処理の停止をベースバンド処理部22等に指示する。その際、制御部30は、HT−SIGの中から、長さ情報とレート情報とを抽出する。さらに、制御部30は、長さ情報とレート情報から、送信期間を決定する。また、当該端末装置は、送信期間にわたって受信処理を停止する。
次に、端末装置が付加的レート情報を理解可能でない場合を説明する。なお、受信したパケット信号の宛先が自らである場合の処理は、前述の処理と同様であるので、説明を省略する。また、端末装置は複数のパケット信号を受信するが、前方のパケット信号には標準的レート情報が含まれているので、当該端末装置はレート情報を理解できる。そのため、端末装置は、前述と同様の処理によって送信期間を設定する。また、端末装置が宛先となるパケット信号は、複数のパケット信号のうちの前方の部分において到来するが、正確な送信期間が設定されているので、一旦処理を停止しても、端末装置が宛先となるパケット信号が到来すれば、端末装置は、当該パケット信号を通常通りに受信できる。
一方、複数のパケット信号のうちの後方の部分において、付加的レート情報を含んだパケット信号が到来する。端末装置は、レート情報を理解できないので、「L−SIG」に含まれた従来用レート情報と従来用長さ情報とをもとに、送信期間を決定する。また、送信期間は、従来用レート情報にて示されたデータレートの値によって、従来用長さ情報にて示されたデータの長さを除算することによって導出される。このように決定された送信期間は正確でないが、複数のパケット信号のうちの後方の部分において、自らが宛先となるパケット信号は到来しないので、端末装置が受ける影響は小さい。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図12は、ベースバンド処理部22の構成を示す。ベースバンド処理部22は、受信用処理部50、送信用処理部52を含む。受信用処理部50は、ベースバンド処理部22における動作のうち、受信動作に対応する部分を実行する。すなわち、受信用処理部50は、時間領域信号200に対してアダプティブアレイ信号処理を実行しており、そのために時間領域信号200のウエイトベクトルの導出を実行する。また、受信用処理部50は、アレイ合成した結果を周波数領域信号202として出力する。なお、受信用処理部50は、周波数領域信号202をもとに要求値を生成してもよい。要求値の生成については、前述のごとく公知の技術でよいので、説明を省略する。
送信用処理部52は、ベースバンド処理部22における動作のうち、送信動作に対応する部分を実行する。すなわち、受信用処理部50は、周波数領域信号202を変換することによって、時間領域信号200を生成する。また、送信用処理部52は、複数の系列を複数のアンテナ12にそれぞれ対応づける。さらに、送信用処理部52は、図4(a)−(c)、図5(a)−(c)に示されたようなCDDを実行し、図6に示されたようなステアリング行列の演算を実行する。なお、送信用処理部52は、最終的に時間領域信号200を出力する。一方、送信用処理部52は、図4(a)−(c)、図5(a)−(c)に示されたパケット信号を送信する際に、ビームフォーミングを実行してもよい。ビームフォーミングについては、前述のごとく公知の技術でよいので、説明を省略する。
図13は、受信用処理部50の構成を示す。受信用処理部50は、FFT部74、ウエイトベクトル導出部76、合成部80と総称される第1合成部80a、第2合成部80b、第3合成部80c、第4合成部80dを含む。
FFT部74は、時間領域信号200に対してFFTを実行することによって、時間領域信号200を周波数領域の値に変換する。ここで、周波数領域の値は、図8のように構成されているものとする。すなわち、ひとつの時間領域信号200に対する周波数領域の値は、ひとつの信号線にて出力される。
ウエイトベクトル導出部76は、周波数領域の値から、サブキャリア単位にウエイトベクトルを導出する。なお、ウエイトベクトルは、複数の系列のそれぞれに対応するように導出され、ひとつの系列に対するウエイトベクトルは、アンテナ12の数に対応した要素をサブキャリア単位に有する。また、複数の系列のそれぞれに対応したウエイトベクトルの導出には、適応アルゴリズムが使用されてもよく、あるいは伝送路特性が使用されてもよいが、これらの処理には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。なお、ウエイトベクトル導出部76は、ウエイトを導出する際に、前述のごとく、第1成分−第2成分+第3成分−第4成分や第1成分+第2成分等の演算を実行する。最終的に、前述のごとく、サブキャリア、アンテナ12、系列のそれぞれを単位にして、ウエイトが導出される。
合成部80は、FFT部74にて変換された周波数領域の値と、ウエイトベクトル導出部76からのウエイトベクトルとによって、合成を実行する。例えば、ひとつの乗算対象として、ウエイトベクトル導出部76からのウエイトベクトルのうち、ひとつのサブキャリアに対応したウエイトであって、かつ第1の系列に対応したウエイトが選択される。選択されたウエイトは、アンテナ12のそれぞれに対応した値を有する。
また、別の乗算対象として、FFT部74にて変換された周波数領域の値のうち、ひとつのサブキャリアに対応した値が選択される。選択された値は、アンテナ12のそれぞれに対応した値を有する。なお、選択されたウエイトと選択された値は、同一のサブキャリアに対応する。アンテナ12のそれぞれに対応づけられながら、選択されたウエイトと選択された値が、それぞれ乗算され、乗算結果が加算されることによって、第1の系列のうちのひとつのサブキャリアに対応した値が導出される。第1合成部80aでは、以上の処理が他のサブキャリアに対しても実行され、第1の系列に対応したデータが導出される。また、第2合成部80bから第4合成部80dでは、同様の処理によって、第2の系列から第4の系列に対応したデータがそれぞれ導出される。導出された第1の系列から第4の系列は、第1周波数領域信号202aから第4周波数領域信号202dとしてそれぞれ出力される。
図14は、送信用処理部52の構成を示す。送信用処理部52は、分散部66、IFFT部68を含む。分散部66は、周波数領域信号202とアンテナ12とを対応づける。分散部66は、図4(a)−(c)、図5(a)−(c)のパケットフォーマットに対応したパケット信号を生成するために、CDDを実行する。CDDは、行列Cとして、以下のように実行される。
ここで、δは、シフト量を示し、lは、サブキャリア番号を示している。さらに、行列Cと系列との乗算は、サブキャリアを単位にして実行される。すなわち、分散部66は、L−STF等内での循環的なタイミングシフトを系列単位に実行する。また、タイミングシフト量は、図4(a)−(c)、図5(a)−(c)のごとく設定される。
分散部66は、図4(b)−(c)、図5(b)−(c)のごとく生成されたパケット信号に対して、ステアリング行列をそれぞれ乗算することによって、パケット信号の系列の数を複数の系列の数まで増加させる。ここで、分散部66は、乗算を実行する前に、入力した信号の次数を複数の系列の数まで拡張する。図4(c)の場合、第1の系列と第2の系列に配置された「HT−STF」等が入力されるので、入力した信号の数は、「2」であり、ここでは、「Nin」によって代表させる。
そのため、入力したデータは、「Nin×1」のベクトルによって示される。また、複数の系列の数は、「4」であり、ここでは、「Nout」によって代表させる。分散部66は、入力したデータの次数をNinからNoutに拡張させる。すなわち、「Nin×1」のベクトルを「Nout×1」のベクトルに拡張させる。その際、Nin+1行目からNout行目までの成分に「0」を挿入する。
また、ステアリング行列Sは、次のように示される。
ステアリング行列は、「Nout×Nout」の行列である。また、Wは、直交行列であり、「Nout×Nout」の行列である。直交行列の一例は、ウォルシュ行列である。ここで、lは、サブキャリア番号を示しており、ステアリング行列による乗算は、サブキャリアを単位にして実行される。さらに、Cは、前述のごとく、CDDを示す。ここで、CDDにおけるタイミングシフト量は、複数の系列のそれぞれに対して異なるように規定されている。すなわち、第1の系列に対して「0ns」、第2の系列に対して「−50ns」、第3の系列に対して「−100ns」、第4の系列に対して「−150ns」のようにタイミングシフト量が規定される。IFFT部68は、分散部66からの信号に対してIFFTを実行し、時間領域信号200として出力する。
以上の構成による無線装置10の動作を説明する。第1無線装置10aのIF部26が複数のデータを受けつけると、制御部30は、複数のデータのそれぞれに対応したレート情報を記憶媒体から取得する。制御部30は、取得したレート情報が標準的レート情報であるデータに対して、複数のパケット信号のうちの前方のパケット信号を割り当てる。また、制御部30は、取得したレート情報が付加的レート情報であるデータに対して、複数のパケット信号のうちの後方のパケット信号を割り当てる。変復調部24、ベースバンド処理部22、無線部20は、複数のパケット信号を連続的に送信する。
第2無線装置10bが付加的レート情報を理解できないものとして、第2無線装置10bの動作を説明する。第2無線装置10bの無線部20等は、複数のパケット信号を連続的に受信する。パケット信号の宛先が自らである場合に、制御部30は、ベースバンド処理部22等に処理の続行を指示する。一方、パケット信号の宛先が自らでない場合に、HT−SIGに標準的レート情報が含まれていれば、制御部30は、当該標準的レート情報をもとに送信期間を導出する。制御部30は、導出した送信期間にわたる処理の停止をベースバンド処理部22等に指示する。さらに、パケット信号の宛先が自らでない場合に、HT−SIGに付加的レート情報が含まれていれば、制御部30は、L−SIGに含まれた従来用レート情報をもとに送信期間を導出する。制御部30は、導出した送信期間にわたる処理の停止をベースバンド処理部22等に指示する。
本発明の実施例によれば、標準的レート情報に対応したデータが含まれたパケット信号を連続的に先に送信するので、付加的レート情報に対応しない端末装置に対しても、当該端末装置へデータ信号が到来するタイミング近傍において、レート情報を通知できる。また、長さ情報とレート情報とを制御信号に含ませるので、端末装置に対して、データ信号が送信される期間を通知できる。また、付加的レート情報に対応しない端末装置であっても、当該端末装置へのデータ信号が到来するタイミング近傍において、連続して標準的レート情報を取得できるので、送信期間を正確に導出させることができる。また、送信期間を正確に導出させるので、端末装置における処理の停止を正確に実行させることができる。
また、端末装置における処理の停止を正確に実行させられるので、パケット信号の衝突確率を低減しつつ、高い伝送効率にてパケット信号を送信できる。また、先頭のパケット信号に、従来用長さ情報を含ませるので、端末装置が付加的レート情報を理解できない場合であっても、端末装置に所定の期間を通知できる。また、付加的レート情報に対応したデータが含まれたパケット信号を後方のタイミングにて連続的に送信するので、付加的レート情報に対応していない端末装置が、所定の期間を示すための情報をもとに処理を停止しても、処理に与える影響を小さくできる。また、付加的レート情報の内容が現タイミングにおいて規定されず、将来的に規定される場合であっても、付加的レート情報に対応しない端末装置に対しても、正確に送信期間を導出させることができる。
また、従来用レート情報と従来用長さ情報とが送信されるので、端末装置が付加的レート情報を理解できない場合であっても、所定の期間を通知できる。また、自らが宛先となるパケット信号が到来するタイミングの近傍において正確な送信期間を導出できるので、送信期間にわたって受信動作を停止する場合であっても、自らが宛先となるパケット信号の受信に失敗する確率を低減できる。また、自らが宛先でないパケット信号が到来している期間にわたって受信処理を停止するので、消費電力を低減できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、複数の系列の数が「4」である場合を説明した。しかしながらこれに限らず例えば、複数の系列の数は、「4」より小さくても構わないし、「4」より大きくても構わない。これにあわせて、前者の場合、アンテナ12の数が「4」より少なくても構わないし、アンテナ12の数が「4」より大きくても構わない。本変形例によれば、さまざまな系列の数に本発明を適用できる。
本発明の実施例において、制御部30は、先頭のパケット信号に対して、図4(a)−(c)に示されたパケットフォーマットを使用している。すなわち、先頭のパケット信号にL−SIGを配置させ、L−SIGに配置された従来用レート情報と従来用長さ情報をもとに、端末装置に送信期間を推定させている。しかしながらこれに限らず例えば、制御部30は、送信すべき複数のパケット信号のうち、付加的レート情報がHT−SIGに含まれたパケット信号に、L−SIGを付加してもよい。すなわち、付加的レート情報がHT−SIGに含まれたパケット信号に対して、図4(a)−(c)に示されたパケットフォーマットを使用してもよい。そのとき、L−SIGに含まれる従来用長さ情報は、連続的にパケット信号を送信する期間のうち、残りの期間に対応してもよい。本変形例によれば、従来用レート情報と従来用長さ情報とをもとにした送信期間の推定であっても、推定の精度を向上できる。つまり、付加的レート情報を理解できない端末装置にとって、理解できるような期間の情報が含まれていればよい。
本発明の実施例において、通信システム100は、複数のパケット信号を連続的に送信している。しかしながらこれに限らず例えば、通信システム100は、複数のデータ信号をひとつのパケット信号にまとめてから、当該パケット信号を送信してもよい。図15は、通信システム100におけるさらに別のパケットフォーマットを示す。図15は、系列の数が「2」である場合に対応する。「データ1」と「データ2」は、ひとつ目のデータであり、その前段に配置された「HT−SIG」は、当該データに関する制御信号である。「データ3」と「データ4」は、ふたつ目のデータであり、その直前に配置された「HT−SIG」は、当該データに関する制御信号である。また、「データN」、「データN+1」は、(N+1)/2番目のデータであり、最後のデータである。本変形例によれば、複数のデータを送信する際の伝送効率を向上できる。つまり、複数のデータが連続的に送信されればよい。
本発明の実施例において、トレーニング信号における「HT−LTF」の符号関係として、各成分が直交の関係を有している行列を示している。しかしながらこれに限らず例えば、各成分が直交の関係でなくても、加算や減算のような簡単な演算によって、各所望の成分を取り出すことができるような符号関係を有している行列であればよい。本変形によれば、トレーニング信号における「HT−LTF」の符号として、さまざまな符号関係を使用できる。
10 無線装置、 12 アンテナ、 14 アンテナ、 20 無線部、 22 ベースバンド処理部、 24 変復調部、 26 IF部、 30 制御部、 100 通信システム。