JP4591989B2 - コーティング厚さ検査法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に製造時にコーティング厚さを検査する方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、ガスタービン動翼の耐食コーティングの厚さを検査するのに好適な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電用ガスタービンの高効率化を実現するには燃焼ガスの高温化が有効であることから、動翼、静翼、燃焼器などの高温部品には厳しい運転条件が課せられる。特に、高速回転する動翼、中でも高圧高温のガスが最初に吹き付けられる初段動翼においては、厳しい条件と高い安全性とが課せられる。そこで、動翼の表面には十分な厚みの耐食コーティングを施すことが要求される。
【0003】
このガスタービン動翼への耐食コーティングの施工は、従来、ガスタービン動翼が複雑な曲面形状を有していることから、真空プラズマ溶射によって行われ、その厚さは溶射時間の調整などにより経験的に制御されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来、耐食コーティングの厚さを非破壊的に検査する手法は確立されていないことから、溶射後の耐食コーティングの厚さを定量的に評価するには、動翼を破壊して組織観察しなければならなかった。しかし、高価な動翼を割って耐食コーティングの厚みを測定するわけには行かないので、実際には耐食コーティング厚さは測定されていない。一方で、耐食コーティングの厚さは動翼の耐食性に大きく関わるため、定量的に評価されることが望まれている。また、耐食コーティングに限らず、強磁性となり得る組成を含むコーティング、例えば耐摩耗コーティングなどにおいても所望の厚みが得られているか定量的に評価することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、コーティングの厚さ、特に耐食コーティングの厚さを非破壊検査する検査法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明者らが種々研究・実験した結果、強磁性となり得る組成を有するコーティングはその結晶構造が磁化し易い結晶構造に変化する温度環境下で使用されるとき、例えば耐食コーティングにおいては800℃程度の高熱を受けるとき、磁性が生じ、更にその磁化に関する物理的現象例えば透磁率はそのときの温度によって一律に決まってしまい、透磁率の数値が温度履歴に反映していることを知見するに至った。より具体的には、例えばニッケルベースの超合金基材にメタルコーティングを施したタービン動翼等の高温部品では、製造時には磁性を帯びていなくても、高温雰囲気下で使用されると、高熱の影響を受けてメタルコーティングが強磁性体となり、しかもその強磁性は到達最高温度に応じて強さが変化し、ある程度の間例えば100時間程度は残留していることがわかった。更に、コバルト、ニッケルあるいはフェライトの少なくともいずれか1つを主成分とする耐食コーティング材料、なかでもCoCrAlYのコーティングを表層に施したガスタービン動翼材料あるいはそのコーティングに更にAlパックが施されたガスタービン動翼材料については、実験により、磁性が応力には依存しないことが明らかになった。即ち、このような材料では、磁性は熱履歴に依存し、応力に依存しないことを知見するに至った。つまり、熱処理温度を一定にすれば、透磁率が一律に定まり、磁性の強さはコーティングの厚みに依存することを知見するに至った。
【0007】
請求項1記載の発明はかかる知見に基づくものであって、構造部材の表面に施された強磁性となり得る組成のコーティングの厚さを検査する方法において、コーティング材と同じ材料を使って一定温度で熱処理したときの透磁率とコーティング厚さとの相関を示す検定曲線を求めておき、検定曲線を求める際の熱処理と同じ温度でコーティングに熱処理を施すと共にコーティングの透磁率を測定し、この透磁率から検定曲線を利用してコーティングの厚さを推定するようにしている。
【0008】
したがって、コーティングと同じ材料を使い、厚みを変えて一定温度で熱処理温度をしたときの磁化に関する物理的現象の変化量としての透磁率とコーティング厚さとの相関を示す検定曲線を求めておけば、製造過程においてコーティングに対し検定曲線を求める際の熱処理と同じ温度の熱処理を加えたときの透磁率を求めるだけで、検定曲線を利用してコーティングの厚みを求めることができる。例えばニッケルベースの超合金基材に耐食メタルコーティングを施したタービン動翼の場合、基材とコーティングは製造過程では強磁性になり難いが、ある温度でアニーリングすると耐食コーティングが強磁性体になり、基材とコーティングとが磁気的に異なる物質になる。そこで、動翼を検定曲線を得る際に加えた熱処理温度と同じ温度で熱処理することによって、この耐食コーティングの磁性を制御し、既知の透磁率とコーティング厚さとの相関からコーティング厚さを推定することが可能となる。
【0009】
なお、磁化に関する物理的現象としては、透磁率の採用が好ましいが、例えば渦電流や磁気誘導波形の歪みによっても、コーティング厚みとの相関をとることができる。
【0010】
また、請求項記載の発明は、請求項1記載のコーティング厚さ検査法において、構造部材がガスタービン動翼であり、コーティングがCoCrAlYから成る耐食コーティングであることを特徴としている。この場合、製造時にはタービン動翼の基材と共に磁性を示していないCoCrAlYコーティングが、高温雰囲気下で使用されることによって、磁性が生じて強磁性体となる。しかも、この磁性は熱履歴にのみ依存し、応力には依存しない。このことから、コーティングの磁性は到達温度に依存した温度履歴情報として記憶され、100時間程度は維持される。したがって、同じ熱処理温度条件下でその透磁率を測定することでコーティング厚さを推定することができる。
【0011】
更に、請求項記載の発明は、請求項1記載のコーティング厚さ検査法において、構造部材がガスタービン動翼であり、耐食コーティングの上に更にアルミパック層が形成されている場合において、耐食コーティングに対する熱処理は、アルミパックのセメンテーション処理の際の加熱処理であることを特徴とする。
【0012】
例えば1300℃級のガスタービン動翼であってアルミコーティング(アルミパック)で耐食性を高めるような高温部材の場合、アルミコーティングのセメンテーションにおける熱処理によりメタルコーティングが強磁性を帯びる。このため、この場合は製造工程とは別に新たな熱処理工程を追加する必要なく、この磁性を計測して耐食コーティング厚さを検査することができる。勿論、アルミパックを施していないガスタービン初段動翼の場合には、セメンテーションの熱を利用することができないので、製造工程で必要とされる熱処理とは別に熱処理工程を用意することが必要となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の耐食コーティング厚みの検査方法を一実施態様に基づいて詳細に説明する。
【0014】
このコーティング厚さの検査方法は、強磁性となり得る組成を有するコーティングの厚みを主に製造時に検査する方法であって、コーティング材と同じ材料を使って一定温度で熱処理したときの磁化に関する物理的現象の変化量とコーティング厚さとの相関を示す検定曲線を求めておき、検定曲線を求める際の熱処理と同じ温度でコーティングに熱処理を施すと共にコーティングの磁化に関する物理的現象の変化量を測定し、この変化量から検定曲線を利用してコーティングの厚さを推定するようにしたものである。ここで、磁化に関する物理的現象としては、本実施形態では透磁率を採用しているが、これに特に限定されるものではなく、その他の磁化に関する物理的現象例えば渦電流や磁気誘導波形の歪みによっても、コーティング厚さとの相関をとることができる。
【0015】
コーティング厚さと透磁率の検定曲線は、コーティングと同じ材料またはこれと同等の部材(以下、対比試験体と呼ぶ)を使って、一定熱処理温度で異なる厚さ毎に所定時間例えば10時間程度熱処理した結果得られた透磁率とコーティング厚さとの相関をプロットすることによって得られる。ここで、強磁性となり得る組成を有するコーティングは、その結晶構造が磁化し易い結晶構造に変化する温度環境下で使用されるとき、例えば耐食コーティングにおいては800℃程度の高熱を受けるとき、またコーティング用途に応じたコーティング材料によっては500〜600℃程度の熱を受けるときに、磁性が生じる。例えば、ガスタービン動翼の耐食コーティングの厚みを検査する場合には、動翼(またはこれと同等の部材)を対比試験体とし、この対比試験体を800℃〜1000℃で加熱処理してその磁性を測定してコーティング厚みと透磁率に関する検定曲線を作成しておく。
【0016】
ここで、強磁性となり得る組成のコーティング材としては、例えばコバルト、ニッケルあるいはフェライトの少なくともいずれか1つを主成分とするものが代表的なものとして挙げられるが、これに特に限定されるものではない。例えば、ガスタービン動翼の耐食コーティング材のような場合には、ニッケル超合金IN738LCやニッケル超合金一方向凝固(Directionally Solidified、DS)材から成る基材の表層に、CoCrAlYのコーティングあるいはそのコーティングに更にAlパックが施されおり、CoCrAlYのコーティング層部分が定格運転時に強磁性となるものである。
【0017】
斯様にして求めたコーティング厚みと透磁率との相関を示す検定曲線を利用して、製造工程で耐食コーティングの溶射後に、検定曲線を求める時の熱処理温度と同じ温度(例えば800℃程度)の熱処理を行い、透磁率を測定し、測定透磁率から耐食コーティング厚さを求めることができる。一定温度下での透磁率の数値・変動はコーティング厚みに反映しており一律に決まってしまう。そこで、この測定透磁率から検定曲線を用いてコーティング厚みを一義的に精度よく推定することができる。尚、コーティングの磁気計測は例えば低透磁率測定計を用いて行うことが好ましい。
【0018】
【実施例】
以下にガスタービンの初段動翼に施される耐食コーティングの厚みを検査する手法を説明する。
【0019】
1.試験片の作製
初段動翼材料の磁気的物性を測定するために初段動翼と同じ材質の試験片を作製した。1100℃級ガスタービン初段動翼の基材に用いられているニッケル超合金IN738LC,1300℃ガスタービン初段動翼の基材に用いられているニッケル超合金一方向凝固(Directionally Solidified、DS)材、および耐食コーティングに用いられるCoCrAlY それぞれ単体の試験片を加工した。そして、IN738LC およびCoCrAlY の試験片を人工的に劣化させるために、大気中において2個ずつ950℃および1000℃の熱時効試験に供じ、熱時効材を作製した。尚、試験片の形状および個数を表1に、ニッケル基合金の化学組成を表2に、耐食コーティングCoCrAlYの化学組成を表3にそれぞれ示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004591989
【0021】
【表2】
Figure 0004591989
【0022】
【表3】
Figure 0004591989
【0023】
また、コーティング厚さを推定するために、コーティングの厚さの異なる試験片を作製した。この試験片は、13個の円柱状DS材の曲面に51〜352μmの範囲でそれぞれ異なる厚みのコーティングとなるようにCoCrAlY を溶射し、その後にアルミパックを施工した。アルミパックの厚さは約20ミクロンであった。
【0024】
2.初段動翼材料の磁気的物性
2.1 磁気的物性の測定
まず、ガスタービン動翼の製造時の状態に匹敵する未時効材の比透磁率をμメータにより測定した結果を表4に示す。この結果は、試験片の両平面部中心にμメータプローブを押し付けて測定した結果である。表4から、ニッケル基超合金およびCoCrAlY の磁性は無視できるほど小さく、即ち、加熱処理しない状態では磁性を示していないことが分かる。しかし、基材となるIN738LCの熱時効材では高温(950℃,1000℃)での加熱処理直後には顕著な磁性が見られず、500時間加熱処理した以降で試験片表層が酸化して磁性が生じていた。因みに、測定対象を不規則な曲面形状を有する動翼とした場合、測定影響領域が狭く、リフトオフ変化による信号の減衰が少ないμメータの使用が適している。μメータによる透磁率測定は、試験片に磁気誘導原理で透磁率に比例した電圧を発生させるものである。透磁率に比例した信号と同時に渦電流が発生してその影響に応じた信号も出力されるが、位相検波回路で渦電流に起因する信号分を除去することによて透磁率のみに比例する信号を取り出すことにより、感度良く測定できる。研磨後のIN738LC の熱時効材では顕著な磁性が見られなかったが、500時間以降では試験片表層に磁性が生じていた。
【0025】
【表4】
Figure 0004591989
【0026】
次いで、試験片の熱時効材の比透磁率を測定した。その結果を図1に示す。尚、測定においては室温でデータを取得した。比透磁率の測定は、簡易的に磁性を評価できる低透磁率計(μメータ)と振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer、VSM)を用いた。なお、熱時効材表面に付着した酸化膜のため、抵抗測定が不可能であったため、試験片を研磨した後、比透磁率を測定した。
【0027】
図1にはCoCrAlY に対するμメータの出力値(比透磁率相当)の平均値を示す。この図からCoCrAlY の磁性は、試験温度1000℃の熱時効材は950℃の熱時効材より比透磁率が高いことが判った。また、両者の比透磁率は試験時間とともに上昇傾向を示す。IN738LCおよびCoCrAlY に磁性が生じたのは、それぞれの主成分であるNiおよびCoが強磁性元素であり、それらの化合物の結晶構造が磁化し易い結晶構造に変化したことが原因と考えられる。
【0028】
2.2 熱処理温度と比透磁率の相関性
図1に示す測定結果から、CoCrAlY は熱処理により磁性が変化し、熱処理温度に応じて磁性が強くなることが観測された。さらに、温度と比透磁率との関係を考察するため、CoCrAlYの単体の試験片(CoCrAlY 材)およびニッケル超合金基材にコーティング溶射した円盤試験片(コート材)に対し、温度を850℃から1050℃まで変化させ、10時間の熱処理を実施した。各試験片に対するμメータの出力値を図2の(a),(b)に示す。単体のCoCrAlY 材に関しては、図2の(a)に示すように、参考のためVSM による測定で得られた初期比透磁率も載せている。今回用いたμメータは、平面部が3mmφ以上で、かつ厚さが1.5mm以上ある試験片に対して、出力値が比透磁率に相当するように調整されている。しかしながら、図2の(b)に示すように、コート材のCoCrAlYコーティングは0.2mmと薄いため、出力値は実際の比透磁率と大きく異なっていた。しかし、図2より、熱処理温度の上昇に伴い、CoCrAlY 材の磁性は強くなることが判った。即ち、コーティング試験片においては、非コーティング面(基材となるIN738LCが露出している面)では磁性に変化が見られなかったのに対し、コーティング面では磁性が強くなることを確認することができた。このことから、10時間程度の加熱処理下では、仮にコーティングに欠損等が生じて基材が露出していたとしても、基材は磁性をもつことがないのでその影響はなく、測定された透磁率は全てCoCrAlYコーティングからのものであると言える。コーティングの欠損等により露出した基材が磁性を生じるのは500時間程度経過してからである。
【0029】
以上の結果は、CoCrAlYのコーティングの磁性が応力に影響されなければ、温度との間に相関を有し、コーティングの磁性を測定することにより、加えられた温度を推定することが可能となることを示唆している。
【0030】
そこで、CoCrAlYの透磁率の応力による影響を調べるため,クリープ試験を実施し,比透磁率をμメータにより測定した。試験条件は以下に示す通りである。
温度:975℃
応力:50MPa,100MPa
時間:50hrs
比較のため,クリープ試験と同じ温度制御の熱時効試験も実施した。磁気測定を中心部で軸方向に2点、周方向に等間隔で4点の計8箇所で実施した。それぞれの試験片の比透磁率を図3に示す。図3から判るように応力による影響は無視できるほど小さいものであった。
【0031】
3.コーティング厚さの推定
上述のように、溶射工程直後のCoCrAlY は、IN738LC とほぼ等しい磁気的物性を有するが、熱処理により磁性を制御できる。すなわち、熱処理によりコーティングと基材を磁気的に異なるものとすることができることが示された。また、透磁率が応力に影響されないことも示された。そこで、コーティングの磁性を制御することにより、電磁気的にコーティング厚さを推定することが可能となる。この検討のため、上述した13種類の厚さの異なるCoCrAlY コーティングを有する試験片を用いてコーティング厚さの推定を実施した。用いた試験片のCoCrAlY の磁性は基材より強くなっていた。これは1300℃級のガスタービン動翼の場合は、CoCrAlY の上にアルミパックが施工されるため、そのアルミパックの熱処理過程(セメンテーション)によるものと考えられる。各試験片の透磁率は低透磁率計(μメータ)を用いた。測定方法としては、磁性に対して感度を有するECT、磁気法(NLH)および交流電位差法も考えられる。高温環境下における試験体に付着する酸化膜が電気絶縁層と成り得ることを考えると、非接触に測定できるECTおよびNLHが有効であり、両手法によるコーティング厚さの推定は十分期待できる。なお、アルミパックの磁性はECTおよびMTの検出感度から無視できるほど小さいが、アルミパックのため基材の感度が低くなることから、アルミパックがあるケースではμメータの利用の方が精度が良い。勿論、アルミパックのないガスタービン動翼の耐食コーティングを対象とする場合には、ECTでもばらつきは生じない。
【0032】
厚さの異なるCoCrAlYコーティングを有する試験片をμメータによりリフトオフ0.1mmで測定した。Aスキャン(1点測定)して得られた信号(それぞれの縦軸はμメータ出力)を図4に示す。試験周波数には、コーティング厚さの変化に最も感度が高くなるように、測定系で許容される最高の周波数である5MHzを選んだ。コーティング厚さとμメータ出力(絶対値)には相関性があることを確認できる。尚、図示していないが、ECTによる測定結果からもコーティング厚さを推定できたが、アルミパックを有する場合にはその導電性により、コーティング厚さの差異に対する感度が低くなるため、測定結果にばらつきが見られた。試験周波数を500kHz、1MHzと変化させても、信号のばらつきは改善されず、逆に試験周波数を5kHzとした場合、出力が得られなかった。
【0033】
ここで、μメータの出力値とコーティング厚さは線形関係にあり、アルミパックを有する場合にはECTよりも精度良く厚さを推定できることが期待できる。図4において、コーティング厚さと各測定結果の関係を線形近似することによって得られた直線を用い、コーティング厚さを推定した。推定結果を図5に示す。この図からμメータの測定結果は、推定が精度良いことを示唆しており、コーティング厚さの推定に適していると言える。μメータの出力とコーティング厚さの相関性は測定原理から考察できる。図6にμメータのセンサおよび測定回路を示す。センサが空気中にある場合、センサの芯であるパーマロイの磁気抵抗は上下で対象となり、検出コイルの差動出力電圧は零となる。一方、センサが磁性体の近傍にある場合では、パーマロイの磁性体に近い部分の磁気抵抗が変化し、差動出力電圧は零にはならない。μメータはこの電圧から比透磁率に相当する数値を出力するように電気回路が設計されている。この磁気抵抗の変化は、測定領域内の磁気モーメントの積分値に関連する。使用した試験片のコーティングが薄いため、結果としてコーティング厚さに応じた出力値が得られている。
【0034】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施例ではタービン動翼の耐食コーティングに適用した例を示したが、これは一例にすぎず、高温雰囲気下で使用されるタービン動翼以外の高温部材あるいは構造物の耐食コーティングあるいは高温環境下での使用で強磁性を示す組成を有するそれ以外の用途のコーティング材にも適用可能であることはいうまでもない。
【0035】
また、本実施形態では、磁化に関する物理的現象として透磁率を測定するようにしているがこれに特に限定されず、場合によっては渦電流法や磁気法などによって得られる磁化に関する物理的現象を用いるようにしても良い。渦電流法は、磁性体に交流磁界を与えて電磁誘導により渦電流を発生されてそれがつくる鎖交磁束を測定するものである。渦電流がつくる磁束は磁性材料の透磁率を反映しているものなので、透磁率の変化が渦電流や磁束の変化としてECT出力に影響を与えるため、これら出力とコーティング厚さとの相関を示す検定曲線を作成し、かつ同じ熱処理温度下での検査対象コーティングからのECT出力を求めれば、これらからコーティング厚さを推定することができる。また、磁気法の1つとしては、例えばNLH(Non linear harmonic)法が挙げられる。このNLH法は、磁性体に交流磁界をかけると、磁気誘導波形に歪みが生じることを利用して、磁性体の磁性に関連する信号を出力するものである。この歪んだ波形は加えた磁界を基本波として奇数倍の高調波を含む。交流磁界を加え、測定された磁気誘導波形の第三次高調波の振幅は磁性体の磁性に相関性があるため、振幅から磁性の程度を決定することができる。この場合にも、透磁率の変化が磁気誘導によって生じる磁束ひいてはNLHの出力に影響を与えるため、この出力を利用して検定曲線を作成し、更に検査対象からの出力でコーティング厚さを推定することができる。
【0036】
更に、本実施形態では、ニッケル超合金IN738LCの基材にCoCrAlYのコーティング層を形成した1100℃級ガスタービン初段動翼を例に挙げて主に説明しているが、これに特に限られず、NiCoCrAlYやCoNiCrAlYなどの耐食コーティングについても適用可能であるし、また、強磁性となり得る組成を有するコーティングであれば耐摩耗コーティングやその他の用途のコーティングの厚さ検査にも適用できることは言うまでもない。更に、アルミパックのような非磁性材料(比透磁率が1に近く、強い磁性を示さない材料)で覆われた1300℃ガスタービン初段動翼のようなものでも適用可能である。アルミパックの透磁率は真空とほぼ等しいため、アルミパックの有無によらず、CoCrAlY の磁性が顕著であれば本手法は有効である。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明のコーティング厚さ検査法によると、コーティングの厚さを非破壊的に正確に推定することができる。このことは、ガスタービン動翼のような極めて高価な部品を適切な寿命まで使用することを可能とするコーティングの定量的な評価、即ち耐食性を保持するに十分な厚さであるか否かを定量的に評価できるので、ガスタービン動翼の余寿命評価を成す上で極めて効果的である。
【0038】
特に、磁化に関する物理的現象の変化量として透磁率を採用しているので、得られる検出信号も極めて明瞭なものとなり、測定が容易となる。
【0039】
また、請求項記載の発明によると、耐食コーティングの磁化が応力の影響を受けずに温度にのみ影響されるので、耐食コーティングの厚さの推定精度が高くなる。
【0040】
更に、請求項記載の発明によると、ガスタービン動翼の製造工程で必然的に加えられる熱処理の熱を利用して耐食コーティングを磁化するようにしているので、新たな熱処理工程の追加を必要とせず、省エネによるコストダウンが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】CoCrAlY熱時効材の比透磁率を熱処理温度毎に示すグラフである。
【図2】CoCrAlYの比透磁率の熱処理温度依存性を示すグラフで、(a)はCoCrAlY材、(b)はコート材の測定結果を示す。
【図3】CoCrAlYの透磁率の応力による影響を調べる試験結果を示すグラフで、比透磁率と応力との関係を示している。
【図4】コーティング厚さとμメータの出力値の関係を示すグラフである。
【図5】コーティング厚さ推定結果の比較を示すグラフである。
【図6】μメータの測定原理を示す(a)空気中にあるセンサ、(b)磁性体の近傍にあるセンサの概略図である。

Claims (3)

  1. 構造部材の表面に施された強磁性となり得る組成のコーティングの厚さを検査する方法において、前記コーティング材と同じ材料を使って一定温度で熱処理したときの透磁率とコーティング厚さとの相関を示す検定曲線を求めておき、前記検定曲線を求める際の熱処理と同じ温度で前記コーティングに熱処理を施すと共に前記コーティングの前記透磁率を測定し、この透磁率から前記検定曲線を利用して前記コーティングの厚さを推定することを特徴とするコーティング厚さ検査法。
  2. 前記構造部材はガスタービン動翼であり、前記コーティングはCoCrAlYから成る耐食コーティングであることを特徴とする請求項1記載のコーティング厚さ検査法。
  3. 前記構造部材がガスタービン動翼であり、耐食コーティングの上に更にアルミパック層が形成されている場合において、前記耐食コーティングに対する熱処理は、前記アルミパックのセメンテーション処理の際の加熱処理であることを特徴とする請求項1記載のコーティング厚さ検査法。
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