JP4589073B2 - ゼオライト成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体といった様々な用途において好適に用いられるゼオライト成形体を製造する方法に関する。
ゼオライト(zeolite)は、微細で均一な径の細孔が形成された網目状の結晶構造を有する珪酸塩の一種であり、一般式:Wmn2n・sH2O(W:ナトリウム、カリウム、カルシウム等、Z:珪素、アルミニウム等、sは種々の値をとる)で示される種々の化学組成が存在するとともに、結晶構造についても細孔形状の異なる多くの種類(型)が存在することが知られている。これらのゼオライトは、各々の化学組成や結晶構造に基づいた固有の吸着能、触媒性能、固体酸特性、イオン交換能等を有しており、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体といった様々な用途において利用されている。
例えば、MFI型ゼオライト(「ZSM−5」とも称される)は、結晶中の酸素10員環によって0.5nm程度の細孔が形成されたゼオライトであり、自動車排ガス中の窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)等を吸着させるための吸着材、或いはキシレン異性体からp−キシレンのみを選択的に分離するためのガス分離膜等の用途において利用されている。また、DDR(Deca-Dodecasil 3R)型ゼオライトは、結晶中の酸素8員環によって0.44×0.36nm程度の細孔が形成されたゼオライトであり、天然ガスやバイオガスから二酸化炭素のみを選択的に分離・除去し、燃料として有用なメタンの純度を向上させるためのガス分離膜等の用途において利用されている。
通常、ゼオライトは粉末状ないし粒状を呈するが、用途に応じて適切な形状に成形されたゼオライト成形体として利用されることが多い。従来、ゼオライト成形体の製造方法としては、例えば、オルト珪酸テトラエチル(TEOS)とテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)から調製されたゼオライト前駆体粉末を一軸成形により圧縮成形し、この成形体を加熱処理することによりゼオライト成形体とする方法(例えば、非特許文献1参照)や、本出願人が既に開示した、シリカゾルとTPAOH溶液等から得られる乾燥ゲルを金型一軸プレス成形で所定の形状に整えた後、更に冷間静水圧成形を行って乾燥ゲル成形体を得、この乾燥ゲル成形体を結晶化処理してゼオライト成形体とする方法(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。これらの方法はいずれもプレス成形を利用する方法である。
しかしながら、プレス成形を利用する方法は、i)高圧設備が必要となる等、製造設備上の制約がある場合が多い、ii)成形プロセスに時間を要し、量産には向いていない、iii)複雑形状の成形体の製造には適していない、等の問題があった。特に、触媒担体や分離膜用基材等の用途では、表面積や透過面積を確保することを目的として、ハニカム形状やモノリス形状といった複雑形状の成形体が好適に用いられるという事情がある。従って、そのような複雑形状の成形体を簡便に得られる方法が切望されている。
セラミックの分野においては、ハニカム形状やモノリス形状といった複雑形状の成形体を製造する方法として、セラミック粉末から坏土を調製し、その坏土を所望形状の口金から押し出して成形体を得る方法が知られている。このような押出成形を利用する方法は、プレス成形を利用する方法とは異なり、製造設備上の制約が少なく、短時間で成形を行うことが可能で量産に適しており、また、ハニカム形状やモノリス形状等の複雑形状の成形体も簡便に製造可能であるといった利点がある。
ところが、ゼオライトは、アルミナやコージェライト等の汎用セラミックとは異なり、自己焼結性がないために、結晶同士を強固に固着させることが困難であり、加熱処理の後においても成形体の密度や強度を向上させ難いという固有の問題を有している。従って、従来は、坏土中に無機結合剤(セラミックゾル、粘土系鉱物、無機繊維等)を混合せしめ、この無機結合剤によって自己焼結性のない結晶同士を強固に固着させ、得られる成形体の強度を向上させることが行われていた。このような方法は、成形体の密度や強度を向上させることは可能であるものの、得られる成形体は、ゼオライト成分の含有量が低いものであり、ゼオライト固有の特性を十分に発揮できるものではなかった。
このような事情から、無機結合剤を使用することなく、押出成形を利用してゼオライト成形体を製造する方法が切望されているが、そのような方法の報告例は極めて少ない状況にある。数少ない報告例の一つとしては、アンモニウムイオン等の結晶化調整剤と、二酸化ケイ素を含んでなる混合液を形成し、この混合液中に析出した微粒子を混合液から分離することで得られる中間体と水、並びに有機結合剤を混合させて杯土を得、この杯土を押出成形して、加熱処理する工程を含有するゼオライト成形体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
S.Shimizu et.al., Chemistry Letters, 1966, p.403-404 特開2002−249311号公報 特開2000−327327号公報
特許文献2には、上記の方法によれば、ハニカム形状のような複雑形状であっても、所定の強度を有し、崩れにくい100%ゼオライトからなるゼオライト成形体を得ることができると記載されている。しかしながら、この方法では、ゼオライト前駆体100質量部に対しておおよそ80〜100質量部という多量の水を加えなければ、押出特性が良好な坏土を調製することができないという問題があった。
このように多量の水を加えて坏土を調製する方法は、坏土が必要以上に軟化するため、加熱処理前の成形体(前駆体成形体)の保形性が低下することに加え、加熱処理後の成形体(ゼオライト成形体)において空隙(欠陥)が多数形成されてしまうことを避けられない。その結果、この方法では、i)変形(所望形状のものが得られない)、ii)密度や強度の低下、iii)欠陥の多発、といったゼオライト成形体の品質低下が招来され、十分に満足できる品質の成形体は得られていないというのが実情であった。
このように、現在のところ、ハニカム形状やモノリス形状といった複雑形状の成形にも対応することができ、かつ、良好な品質の成形体を得ることが可能なゼオライト成形体の製造方法は未だ開示されておらず、そのような方法を創出することが産業界から切望されている。
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、ハニカム形状やモノリス形状といった複雑形状の成形にも対応することができ、かつ、良好な品質の成形体を得ることが可能であるという、従来の方法と比較して有利な効果を奏するゼオライト成形体の製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上述のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、ゼオライト前駆体の粒度分布を適切に制御することにより、坏土におけるダイラタンシーの発現を抑制することができ、坏土の調製に際し、従前の50%以下に分散媒の水を減量した場合でも良好な押出特性が得られることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明によれば、以下のゼオライト成形体の製造方法が提供される。
[1] シリカゾルを含むシリカゾル溶液と構造規定剤を含む構造規定剤溶液とを混合した後、これらの溶液の溶媒を除去することによりゼオライト前駆体を得、そのゼオライト前駆体に対して、少なくとも有機結合剤及び分散媒を添加し、これらの混合物を混練することによって前記ゼオライト前駆体が含有された坏土を調製し、押出成形により前記坏土を前記ゼオライト前駆体が含有された成形体(前駆体成形体)に成形し、その前駆体成形体を水蒸気雰囲気中において加熱処理し、前記ゼオライト前駆体をゼオライト結晶に変換することによってゼオライト結晶が含有された成形体(ゼオライト成形体)を得るゼオライト成形体の製造方法であって、前記坏土を調製するに際し、前記ゼオライト前駆体として、粒径200μm以下の粒分が前記ゼオライト前駆体全体の85質量%以上を占め、粒径5μm以下の粒分が前記ゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占め、かつ、粒径20〜200μmの粒分が前記ゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占める粒状物を用いるゼオライト成形体の製造方法。
[2] 前記坏土を調製するに際し、前記ゼオライト前駆体として、粒径20〜40μmの粒分が前記ゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占める粒状物を用いる前記[1]に記載のゼオライト成形体の製造方法。
[3] 前記坏土を調製するに際し、前記ゼオライト前駆体として、粒径200μm以下の粒分が前記ゼオライト前駆体全体の100質量%を占める粒状物を用いる前記[1]又は[2]に記載のゼオライト成形体の製造方法。
[4] 前記ゼオライト前駆体100質量部に対して、前記有機結合剤4〜15質量部を添加し、前記坏土を調製する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のゼオライト成形体の製造方法。
[5] 前記ゼオライト前駆体100質量部に対して、前記分散媒15〜50質量部を添加し、加圧ニーダーを用いて混練することによって前記坏土を調製する前記[1]〜[4]のいずれかに記載のゼオライト成形体の製造方法。
[6] 前記ゼオライト前駆体に対して、他の無機成分を添加することなく、前記坏土を調製する前記[1]〜[5]のいずれかに記載のゼオライト成形体の製造方法。
本発明のゼオライト成形体の製造方法は、押出成形を利用する方法であるため、ハニカム形状やモノリス形状といった複雑形状の成形にも対応することができる。また、坏土を調製する際に加える水を減量することができるため、変形や欠陥が少なく、密度、強度等に優れた良好な品質の成形体を得ることが可能である。
以下、本発明のゼオライト成形体の製造方法を実施するための最良の形態について、主として、MFI型ゼオライトの例により具体的に説明する。但し、本発明の製造方法はゼオライト前駆体の粒度分布を適切に制御することを主要な構成とするものであるため、MFI型ゼオライト以外の型のゼオライト、例えば、LTA、MOR、AFI、BEA、FER、FAU、DDR等の従来公知のゼオライトにも当然に適用することができるものである。即ち、本発明の製造方法は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、粒径について「x〜y(μm)」と表記した場合には、粒径が「x(μm)超、y(μm)以下」であることを意味するものとする。
[1]ゼオライト前駆体調製工程
本発明の製造方法の第1の工程は、シリカゾルを含むシリカゾル溶液と構造規定剤を含む構造規定剤溶液とを混合した後、これらの溶液の溶媒を除去することによりゼオライト前駆体を得る工程である。
本明細書にいう「ゼオライト前駆体」とは、構造規定剤の分子を中心として、その周囲をシリカゾル由来のシリカ微粒子が取り囲んだような構造を有するものである。このゼオライト前駆体は、後述する加熱処理を行うことによって、その構造から構造規定剤が除去され、構造規定剤に特異的な細孔形状を有するゼオライト結晶を形成し得るものである。
シリカゾル溶液としては、市販のシリカゾル溶液(例えば、商品名:スノーテックスS、日産化学社製、固形分濃度30質量%等)を好適に用いることができる。但し、シリカ微粉末を水に溶解させることにより調製したもの、或いはアルコキシシランを加水分解することにより調製したものを用いてもよい。
MFI型ゼオライトの構造規定剤としては、テトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)を生じ得るテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)やテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)が用いられる。従って、構造規定剤溶液としては、TPAOH及び/又はTPABrを含む溶液を好適に用いることができる。
シリカゾル溶液として、シリカゾルの他、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含有するものを用いることも好ましい。MFI型ゼオライトの構造規定剤として用いられるTPAOHは比較的高価な試薬であるが、この方法によれば、比較的安価なTPABrとアルカリ金属等の水酸化物とから系内でTPAOHを生成させることができる。即ち、この方法では高価なTPAOHを使用する必要がないため、原料コストを低減させることができ、ゼオライトを安価に生産することが可能となる。
シリカゾル溶液と構造規定剤溶液とを混合するに際しては、シリカに対するTPAのモル比(TPA/シリカ比)が0.015〜0.08の範囲内となるように両者を混合することが好ましい。TPA/シリカ比が0.015未満であっても、0.08を超えても、ゼオライト成形体の機械的強度が低下してしまうためである(例えば、曲げ強度(JIS R1601)が3MPa以下等)。TPA/シリカ比が0.015未満である場合には、過剰なシリカに由来する非晶質シリカ(ゼオライト結晶と比較して脆弱である)がゼオライト結晶間に残存するために、ゼオライト成形体の機械的強度が低下してしまうものと考えられる。一方、0.08を超える場合には、過剰なTPAが結晶化の過程においてゼオライト結晶同士の固着を脆弱化させる作用を有するために、或いは過剰なTPAがゼオライト結晶間に残存し、結晶同士が直接固着することを阻害するために、ゼオライト成形体の機械的強度が低下してしまうものと考えられる。
TPA源としてTPAOHとTPABrを併用することは、ゼオライト結晶の粒子径を制御することが可能となる点において好ましい形態の一つである(例えば、特開2002−249311号公報参照)。この場合には、TPABrに対するTPAOHのモル比(TPAOH/TPABr比)を大きくするに従って、得られるゼオライト結晶の粒径が小さくなり、ゼオライト成形体の機械的強度を向上させることができる。
なお、構造規定剤として用いられる物質はゼオライトの型により異なるため、所望の型のゼオライトに応じた構造規定剤を適宜選択して使用する。例えば、BEA型ゼオライト(「β−ゼオライト」とも称される)の場合にはテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)やテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)等を、DDR型ゼオライトの場合には1−アダマンタンアミン等を使用する。シリカに対する構造規定剤のモル比(構造規定剤/シリカ比)は、各々の型のゼオライトの従来公知の合成法に準じて決定すればよい。
シリカゾル溶液と構造規定剤溶液とを定法により混合した後、これらの溶液の溶媒を除去することによりゼオライト前駆体を得る。溶媒除去の方法は特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標)等)製ビーカーに注入した上記溶液の混合液を、所定の温度に設定した恒温槽中で加熱しながら、マグネティックスターラーないしはフッ素樹脂製棒を用いた手撹拌で撹拌することにより、溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。但し、この撹拌は加熱ニーダー等を用いて行ってもよい。
[2]坏土調製工程
本発明の製造方法の第2の工程は、ゼオライト前駆体に対して、少なくとも有機結合剤及び分散媒を添加し、これらの混合物を混練することによってゼオライト前駆体が含有された坏土を調製する工程である。
既に述べたように、特許文献2に記載された従来の方法において、成形体の品質が低下してしまう原因は、坏土中に含まれる多量の水(分散媒)にある。この問題を解決するためには、坏土を調製する際に加える分散媒を減量すればよいようにも思われる。しかしながら、本発明者らは、単に坏土を調製する際に加える分散媒を減量するのみでは、坏土の押し出しの際に成形機に過大な負荷がかかり、押し出しが困難となったり、酷い場合には、押し出しが全く不能となってしまうという知見を得た(押出特性の低下)。
本発明者らがこの現象について検討したところ、押出特性の低下はダイラタンシーの発現によるものであることが判明した。ダイラタンシーは異常粘性(非ニュートン流動)の一種であり、坏土のような粘性体が、力を作用させると固体のように硬くなり、力を除くと流動性を有する元の状態に戻る現象である。即ち、ゼオライト前駆体を含む坏土を押し出す際に、坏土の押し出しが困難ないし不能となってしまうのは、成形機から加わる押出力によって坏土にダイラタンシーが発現し、坏土が固体のように硬くなってしまうためであると考えられた。これはアルミナやコージェライト等の汎用セラミックにはないゼオライト前駆体固有の性質である。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、ゼオライト前駆体の粒度分布を適切に制御することにより、坏土におけるダイラタンシーの発現を抑制することができ、坏土の調製に際し、従前の50%以下に分散媒の水を減量した場合でも良好な押出特性が得られることに想到して、本発明を完成させた。
具体的には、本発明の製造方法は、この第2の工程において坏土を調製するに際し、ゼオライト前駆体として、粒径200μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の85質量%以上を占め、粒径5μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占め、かつ、粒径20〜200μmの粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占める粒状のものを用いるという特徴的な構成を有するものである。要すれば、主粒分が粒径200μm以下の粒分であり、粒径5μm以下の粒分(微粒分)と粒径20〜200μmの粒分(粗粒分)とを所定量以上含む粒状物を用いる点に特徴がある。
主粒分を粒径200μm以下の粒分としたのは、粒径200μmを超える粒分(粗大粒子)が多くなると、加熱処理の際に構造規定剤や有機結合剤が脱離し難くなり、ゼオライト成形体中に不純物となるカーボンが残存してしまうおそれがあるためである。カーボンの残存により、成形体が黒変するといった外観上の不具合を生ずる他、ゼオライト成形体をガス分離膜用の基材として用いた場合等に、圧力損失(ひいてはガスの透過抵抗)を増大させてしまうおそれがある。粒径200μm以下の粒分をゼオライト前駆体全体の85質量%以上、即ち、粒径200μmを超える粒分をゼオライト前駆体全体の15質量%未満とすることによって、上記のような不具合を効果的に抑制することができる。中でも、粒径200μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の100質量%、即ち、粒径200μmを超える粒分を全て除去したゼオライト前駆体全体を用いると、上記の不具合をより効果的に抑制することができる。
粒径5μm以下の粒分(微粒分)を所定量以上含ませることとしたのは、ゼオライト成形体の密度を向上させるという効果を得るためである。具体的には、粒径5μm以下の粒分をゼオライト前駆体全体の10質量%以上含有せしめることが必要であり、10〜20質量%含有せしめることが好ましく、10〜15質量%含有せしめることが特に好ましい。上記範囲未満であると、ゼオライト成形体の密度を向上させる効果が不十分となるおそれがある。一方、上記範囲を超えると、ダイラタンシーの発現が助長される場合がある。
粒径20〜200μmの粒分(粗粒分)を所定量以上含ませることとしたのは、微粒分と粗粒分とが混在する状態とさせることによってダイラタンシーの発現を抑制し、押出特性が良好な坏土を調製することが可能となるからである。具体的には、上記の粗粒分をゼオライト前駆体全体の10質量%以上含有せしめることが必要であり、10〜80質量%含有せしめることが好ましく、20〜70質量%含有せしめることが特に好ましい。上記範囲未満であると、ゼオライト成形体の密度を十分に向上させることができなくなるおそれがある。なお、粗粒分を粒径20μm以上の粒分としたのは、粒径20μm未満の粒分ではダイラタンシーの発現を抑制する効果が低いためであり、粒径200μm以下の粒分としたのは、既に述べたようにゼオライト成形体中に不純物となるカーボンが残存してしまうおそれがあるためである。粒径20〜200μmの粒分をゼオライト前駆体全体の10質量%以上含有せしめることによって、ゼオライト成形体中に不純物となるカーボンが残存する事態を回避しつつ、押出特性が良好な坏土を調製することが可能となる。中でも、粗粒分として、粒径20〜40μmの粒分をゼオライト前駆体全体の10質量%以上含有せしめることが効果的である。
上記のような粒度分布を有するゼオライト前駆体を得るための方法は特に限定されないが、空気分級機(例えば、商品名:TURBO CLASSIFIER TC-15NSC、日清エンジニアリング社製)を利用して、第1の工程で得られたゼオライト前駆体を粉砕しながら分級し、その分級された粒分を適宜混合して、上記のような粒度分布に調整する方法等が挙げられる。また、主粒分、粗粒分、微粒分の各々が所定量含まれている限り、ゼオライト前駆体の粒度分布曲線の形状について特に制限はない。例えば、微粒分と粗粒分の各々にピークが存在し、二山型の分布曲線を描くような形状であってもよいし、比較的ブロードなピークが存在し、幅広な分布曲線を描くような形状であってもよい。
本発明の製造方法では、上記のようにゼオライト前駆体の粒度分布を適切に制御することによって、坏土におけるダイラタンシーの発現を抑制することができる。従って、坏土を調製する際に加える水等の分散媒を従前の50%以下に減量しても良好な押出特性の坏土を得ることができる。
分散媒としては、水を用いることが一般的である。但し、分散媒の種類は水に限定されるものではなく、例えば、水と従来公知の溶剤(例えば、アルコール等)との混合物等を分散媒として用いてもよい。
分散媒の添加量は、ゼオライト前駆体100質量部に対して、15〜50質量部の範囲内であることが好ましい。水の添加量が15質量部未満であると、坏土の流動性が低下し、良好な押出特性が得られなくなるおそれがある。一方、50質量部を超えると、従来の方法と同様に、i)変形(所望形状のものが得られない)、ii)密度や強度の低下、iii)欠陥の多発、といったゼオライト成形体の品質低下を招く場合がある。
有機結合剤(いわゆるバインダー)は、前駆体成形体の保形性を向上させる役割を果たす添加剤であり、坏土においてゲル化し得る有機高分子が好適に用いられる。具体的には、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、メチルセルロースは、本発明の製造方法における有機結合剤として好適に用いることができる。
有機結合剤の添加量としては、ゼオライト前駆体100質量部に対して、4〜15質量部の範囲内であることが好ましい。有機結合剤の添加量が4質量部未満であると、坏土の流動性が低下し、良好な押出特性が得られなくなるおそれがある。一方、15質量部を超えると、ゼオライトの結晶化を阻害するおそれがあることに加え、ゼオライト成形体の密度が低下し易く、十分な強度が得られない場合がある。
本発明の製造方法においては、ゼオライト前駆体に対して、「少なくとも」有機結合剤及び分散媒を添加すればよい。即ち、必要に応じて他の添加剤を添加することも本発明の範囲に含まれる。他の添加剤としては、例えば、ゼオライト前駆体の水(分散媒)への分散を促進するための分散剤(エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等)等が挙げられる。
但し、本発明の製造方法においては、ゼオライト前駆体に対して、他の無機成分を添加することなく、坏土を調製する有機結合剤及び分散媒のみを添加し、他の有機成分(例えば、上記分散剤等)を添加することなく坏土を調製することも好ましい形態の一つである。他の有機成分の添加は、ゼオライトの結晶化を阻害するおそれがあることに加え、ゼオライト成形体の密度や強度を低下させる場合があるからである。
なお、無機成分の添加は、得られるゼオライト成形体のゼオライト含有量を低下せしめるという問題があり好ましくないといわれているが、本発明の製造方法は、ゼオライト前駆体に対して、他の無機成分(セラミックゾル、粘土系鉱物、無機繊維等の無機結合剤等)を添加することなく、坏土を調製することができる。本発明の製造方法は、分散媒の添加量を削減することができるため、坏土中におけるゼオライト前駆体同士の接点を増加させることが可能であり、自己焼結性がないゼオライト結晶同士であっても比較的強固に固着させ得ることによる。このような方法によれば、他の無機成分を添加しなくとも、十分に高品質のゼオライト成形体を得ることができる。
ゼオライト前駆体、有機結合剤及び分散媒を混合した後、これらの混合物を混練することにより坏土を得る。混練の方法は特に限定されないが、例えば、加圧ニーダーを用いる方法等が挙げられる。このような混練力に優れた混練機を用いることによって、分散媒の添加量を削減した場合であっても、十分な混練を行うことができる。
本発明の製造方法によれば、ダイラタンシーの発現が抑制された坏土を得られることに加え、土壌硬度計(商品名:NGK粘土硬度計/CRAY HARDNESS METER、日本碍子社製)により測定される硬度が15〜25mmの範囲内の坏土を調製することができる。この範囲を満たす坏土は押出成形に適した硬度を有しており、良好な押出特性を有するものである。なお、土壌硬度計は、円錐状の尖端子と、これに連結されるバネとを備え、測定対象から尖端子に作用する反力(抵抗力)をバネの縮み量に変換し、そのバネの縮み量から測定対象の硬度を算出する計測器である。具体的には、測定対象となる坏土の表面に尖端子を垂直に圧入することにより、尖端子の圧入深さと、坏土から尖端子に作用する反力(抵抗力)に応じて変化するバネの縮み量とを計測し、これらの値からその坏土の硬度を算出することができる。
[3]成形工程
本発明の製造方法の第3の工程は、押出成形により坏土をゼオライト前駆体が含有された成形体(前駆体成形体)に成形する工程である。この工程は、従来公知の汎用セラミックの押出成形と同様に行うことができる。
押出成形の方法については特に限定されないが、例えば、坏土を成形体の断面形状と相補的な形状のスリットを有する口金を用いて押出成形する方法等が挙げられる。このような方法は、ハニカム形状やモノリス形状といった複雑形状の成形体を成形する場合でも、スリットの形状を適宜変更することによって、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有するハニカム形状ないしモノリス形状の成形体を簡便に得ることができる。押出成形機についても特に制限はなく、従来公知の押出成形機(例えば、真空土練機、ラム式押出成形機、二軸連続成形機等)を好適に用いることができる。
このようにして得られた成形体は、そのまま或いは適宜乾燥した後、後述する第4の工程に供する。乾燥の方法にも特に限定はなく、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることができる。但し、前駆体成形体全体を均一かつ欠陥なく乾燥するためには、徐々に乾燥を進行させることが好ましい。このような操作が可能な乾燥法としては、例えば、低温乾燥や調湿乾燥等が挙げられる。また、前駆体成形体が円筒状を呈するもの等の場合、ローラーや加圧エアー等を用いて前駆体成形体を転動させながら乾燥させることが好ましい。こうすることにより、成形体の自重が一方向に作用するのを防止することができ、前駆体成形体の自重による変形を効果的に抑制することができる。
[4]結晶化工程
本発明の製造方法の第4の工程は、前駆体成形体を水蒸気雰囲気中において加熱処理し、ゼオライト前駆体をゼオライト結晶に変換することによってゼオライト結晶が含有された成形体(ゼオライト成形体)を得る工程である。この工程は、従来公知のゼオライトの合成法に準じて行うことができる。以下、MFI型ゼオライトの例により具体的に説明する。
まず、フッ素樹脂製内筒付のステンレス製耐圧容器を用意し、その内部に前駆体成形体の台座となるフッ素樹脂製板を配置する。次いで、耐圧容器(フッ素樹脂製内筒)の内部に蒸留水を注入するとともに、前駆体成形体を台座上に載置する。この際、前駆体成形体が蒸留水と接触しないように留意する。その後、180℃のオーブン中で18時間、自生水蒸気圧下で反応させて、ゼオライト前駆体をゼオライト結晶に変換することによって、ゼオライト成形体を得る(「結晶化処理」ないし「ゼオライトの水熱合成」と称される場合がある)。
耐圧容器内部に注入する蒸留水の量は使用する耐圧容器の容積により異なるが、概ねその耐圧容器内部が飽和水蒸気圧に達する程度の量以上とすればよい。また、反応温度、及び反応時間については、100℃以上、2時間以上の条件であれば特に制限はない。
なお、結晶化の条件及び方法はゼオライトの型により異なるため、所望の型のゼオライトに応じた条件及び方法を適宜選択して採用する。具体的には、各々の型のゼオライトの従来公知の合成法に準じて決定すればよい。
このようにして得られたゼオライト成形体は、そのままで或いは適宜乾燥・焼成した後に製品とする。この際には、予めゼオライト成形体を90℃程度の熱水で洗浄した後に乾燥することが好ましい。アルカリ成分、吸着ガス、原料分解物等のゼオライト以外の成分を、予め熱水洗浄で除去することにより、これらの成分に起因する不具合を防止することができ、高品質のゼオライトを製造することが可能となるからである。例えば、シリカゾル溶液としてアルカリ金属の水酸化物を含有するものを用いると、そのアルカリ成分が残存することがある。このアルカリ成分が残存した状態のまま乾燥を行うと、乾燥によって濃縮されたアルカリ成分によって、シリカを主成分とするゼオライトが浸食されてしまうおそれがあり好ましくない。上記のような方法によれば、このような不具合を効果的に抑制することができる。乾燥の方法は特に限定はなく、先に述べた従来公知の乾燥法、中でも低温乾燥や調湿乾燥を好適に用いることができる。乾燥温度、及び乾燥時間は、30〜90℃、1〜24時間程度である。焼成の方法にも特に制約はなく、例えば、電気炉を用いて300〜600℃、4時間以上焼成する方法等が挙げられる。
上記のようにして得られたゼオライト成形体は、ガス分離体用の基材として好適に用いることができる。例えば、ゼオライト成形体を基材として用い、その表面にゼオライト膜を形成することによってガス分離体を構成することができる。このようなガス分離体は、基材と膜とが同じ材質で構成され、熱膨張率が同等であるため、膜の剥離や破損が少なく、強度や耐久性に優れる。また、ゼオライト結晶は細孔構造を有しているため、成形体の気孔率を増大させることが可能であり、ガスが透過する際の圧力損失(透過抵抗)を減少させることができるという特徴がある。この点もガス分離体用の基材として好適に用いることができる理由の一つである。
以下、本発明のゼオライト成形体の製造方法を、MFI型ゼオライトを含有する成形体を製造する実施例により具体的に説明する。但し、本発明の製造方法はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ゼオライト前駆体の調製]:約30質量%シリカゾル溶液(商品名:スノーテックスS、日産化学社製)と、約40質量%TPAOH溶液(SACHEM社製)とを、シリカに対するテトラプロピルアンモニウムイオン(TPA)のモル比が0.04となるように混合し、白濁した混合液を得た。この混合液を室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌した後、更に、80℃の恒温槽中で加熱しながらフッ素樹脂製棒を用いた手撹拌で撹拌することにより、水分を蒸発させて、水分量が10質量%以下である、白色粉末状のゼオライト前駆体を得た。X線回折法により、このゼオライト前駆体の結晶構造を分析したところ、非晶質シリカであった。
次いで、空気分級機(商品名:TURBO CLASSIFIER TC-15NSC、日清エンジニアリング社製)を利用して、上記の粉末状のゼオライト前駆体を粉砕しながら分級し、その分級された粒分を適宜混合して、表1に示すような粒度分布を有する粉末A、B、C、Dを得た。
Figure 0004589073
粉末Aは、粒径200μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の85質量%以上(100質量%)を占め、粒径5μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占め、かつ、粒径20〜200μmの粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上(粒径20〜40μmの粒分についてもゼオライト前駆体全体の10質量%以上)を占めるものである。そして、その粒度分布曲線は、微粒分と粗粒分の各々にピークが存在し、二山型の分布曲線を描くような形状のものである。
粉末Bも、粉末Aと同様に、粒径200μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の85質量%以上(100質量%)を占め、粒径5μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占め、かつ、粒径20〜200μmの粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上(粒径20〜40μmの粒分についてもゼオライト前駆体全体の10質量%以上)を占めるものである。但し、その粒度分布曲線は、比較的ブロードなピークが存在し、幅広な分布曲線を描くような形状のものである。
一方、粉末Cは、粒径200μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の85質量%以上(100質量%)を占め、粒径5μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占めるが、粒径20〜200μmの粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%未満のものである。また、粉末Dは、粒径20〜200μmの粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占めるが、粒径200μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の85質量%未満で、かつ、粒径5μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の10質量%未満のものである。
[押出特性の評価]:粉末AとCについては、坏土の押出特性の評価を行った。まず、粉末A、Cに、有機結合剤としてメチルセルロース(商品名:メトローズSM-8000、信越化学工業社製)を表2に記載の割合で添加し、袋内で混合した。その後、これらの混合粉末を加圧ニーダー(トーシン社製)に投入し、更に、分散媒としてイオン交換水を表2に記載の割合で添加し、40分間混練することにより坏土を得た。
Figure 0004589073
また、ダイラタンシーが発現しない汎用セラミックの例としてジルコニアの粉末を用い、粉末A、Cと同様にして坏土を得た。このジルコニアの粉末の粒度分布は、表1に示すようなものであった。
これらの坏土の押出特性については、図1(a)、図1(b)、図2(a)、及び図2(b)に示すような押出治具10,20を用いて行った。
図1(a)は押出治具10をその中心軸に沿って(鉛直方向に)切断した断面を示す概略断面図であり、図1(b)は押出治具10の構成部品であるダイス12の部分についての底面図である。押出治具10は、中空部14aを備えた鞘体14と、鞘体14の中空部14aに緩挿され得るピストン16と、鞘体14の底面側に配置されるダイス12とから構成された治具であり、鞘体14の中空部14aに坏土18を装填し、これをピストン16によって押圧することにより、ダイス12の開口部12aから坏土18を押し出すことが可能なように構成されている。そして、鞘体14の中空部14aは、内径9mmφ、断面積63.62mm2の円柱状であるのに対し、ダイス12の開口部12aは、内径3mmφ、開口面積7.07mm2の円柱状であり、坏土18を押し出す際に、その押出面積が1/9に縮小されるように構成されている(押出面積比9:1)。
一方、図2(a)は押出治具20をその中心軸に沿って(鉛直方向に)切断した断面を示す概略断面図であり、図2(b)は押出治具20の構成部品であるダイス22の部分についての底面図である。押出治具20は、押出治具10と同様の構造であって、ダイス22の開口部22aの内径、及び開口面積のみが異なるものである。即ち、鞘体14の中空部14aは、内径9mmφ、断面積63.62mm2の円柱状であるのに対し、ダイス22の開口部22aは、内径1mmφ、開口面積0.79mm2の円柱状であり、坏土18を押し出す際に、その押出面積が1/81に縮小されるように構成されている(押出面積比81:1)。
押出治具10,20を用い、上記の坏土を実際に押し出し、その際の押出荷重を測定することにより押出特性の評価を行った。試験温度は20℃、押出速度は10mm/分とした。
その結果、押出面積比9:1の押出治具10を用いた場合は、全ての坏土を300MPa以下の低荷重で押し出すことができた。一方、押出面積比81:1の押出治具20を用いた場合は、坏土C1、及びC2については、高荷重(3000MPa以上)をかけなければ押し出しが不能であった。即ち、粉末Cを用いて調製された坏土C1、及びC2はダイラタンシーが発現しているが、坏土A1、及びA2は汎用セラミックのジルコニアから得られたジルコニア坏土と類似の傾向を示しており、ダイラタンシーの発現が抑制された。
(実施例1)
[坏土の調製]:ゼオライト前駆体として上記の粉末A:1186.9gに、有機結合剤としてメチルセルロース(商品名:メトローズSM-8000、信越化学工業社製):83g(ゼオライト前駆体100質量部に対して7質量部)を添加し、袋内で混合した。その後、これらの混合粉末を加圧ニーダー(トーシン社製)に投入し、更に、分散媒としてイオン交換水:474.3g(ゼオライト前駆体100質量部に対して40質量部)を添加し、40分間混練することによりゼオライト前駆体を含有する坏土を得た。この坏土の硬度を、土壌硬度計(商品名:NGK粘土硬度計/CRAY HARDNESS METER、日本碍子社製)で測定したところ18mmであり、押出成形に適した硬度を有するものであった。
[成形]:真空土練機(宮崎鉄工(株)製)にチューブ成形用の口金を装着した成形機を用いて押出成形を行い、上記の坏土から外径14.4mmφ、内径7.4mmφのチューブ状(中空円筒状)に成形された前駆体成形体を得た。押出成形の際にダイラタンシーの発現は認められず、押出特性は良好であった。この前駆体成形体を定置型乾燥機中、60℃で約20時間乾燥させた。
[結晶化]:フッ素樹脂製内筒付のステンレス製耐圧容器の内部に前駆体成形体の台座となるフッ素樹脂製板が配置された反応装置を用い結晶化処理を行った。耐圧容器(フッ素樹脂製内筒)の内部にイオン交換水(前駆体成形体質量の1.1倍量)を注入するとともに、上記の前駆体成形体を台座上に載置した。この際、前駆体成形体はイオン交換水と接触しないように載置した。その後、180℃の乾燥機中で18時間、自生水蒸気圧下で結晶化を行い、ゼオライト前駆体をゼオライト結晶に変換することによって、ゼオライト結晶が含有されたゼオライト成形体を得た。X線回折法により、このゼオライト成形体の結晶構造を分析したところ、MFI型ゼオライトであった。このゼオライト成形体を90℃の熱水で十分洗浄した後、80℃で10時間乾燥し、更に、電気炉中、500℃で4時間焼成することにより最終製品とした。その結果、割れ等の不良がない、良好な品質のゼオライト成形体を得ることができた。
(実施例2)
ゼオライト前駆体として粉末Bを用い、坏土から外径14mmφ、内径8.4mmφのチューブ状(中空円筒状)に成形された前駆体成形体を得たことを除き、実施例1と同様にして最終製品を得た。その結果、土壌硬度計により測定された坏土の硬度は17mmであり、押出成形に適した硬度を有するものであった。また、押出成形の際にダイラタンシーの発現は認められず、押出特性は良好であった。更に、X線回折法により、ゼオライト成形体の結晶構造を分析したところ、MFI型ゼオライトであった。また、得られたゼオライト成形体は、割れ等の不良がない、良好な品質のものであった。
(比較例1)
ゼオライト前駆体として上記の粉末C:1232.5gに、有機結合剤としてメチルセルロース:86.32g(ゼオライト前駆体100質量部に対して7質量部)を添加したこと、分散媒としてイオン交換水:406.7g(ゼオライト前駆体100質量部に対して33質量部)を添加したことを除き、実施例1と同様の方法により、坏土から外径14.4mmφ、内径8.8mmφのチューブ状(中空円筒状)に成形された前駆体成形体を得ることを試みた。しかし、真空土練機中でダイラタンシー現象が発現して混練物の硬度が上昇し、押し出しを行うことが不能となった。なお、比較例1の坏土の硬度を、土壌硬度計により測定したところ26mmであり、押出成形に適した硬度を有するものではなかった。
(比較例2)
ゼオライト前駆体として上記の粉末D:1355.5gに、有機結合剤としてメチルセルロース:54.2g(ゼオライト前駆体100質量部に対して4質量部)を添加したこと、分散媒としてイオン交換水:374.1g(ゼオライト前駆体100質量部に対して28質量部)を添加したこと、坏土から外径14.4mmφ、内径7.4mmφのチューブ状(中空円筒状)に成形された前駆体成形体を得たことを除き、実施例1と同様にして最終製品を得た。その結果、土壌硬度計により測定された坏土の硬度は20mmであり、押出成形に適した硬度を有するものであった。また、押出成形の際にダイラタンシーの発現は認められず、押出特性は良好であった。また、X線回折法により、このゼオライト成形体の結晶構造を分析したところ、MFI型ゼオライトであった。更に、得られたゼオライト成形体は、割れ等の不良がない、良好な品質のものであった。しかしながら、ゼオライト成形体にTPAOHの残存に起因する黒斑が発生した。
(評価)
本発明の範囲を満たす粉末A、及びBから調製された坏土を使用すると、ダイラタンシーの発現が抑制され、良好な押出特性を得ることができた(実施例1,2)。この坏土は、土壌硬度計により測定される硬度が15〜25mmの範囲内のものであり、押出成形に適した硬度を有するものであった。
一方、粒径20〜200μmの粒分(粗粒分)がゼオライト前駆体全体の10質量%未満である粉末Cは、ダイラタンシーが発現するため良好な押出特性の坏土を得ることができなかった(比較例1)。また、粒径200μm以下の粒分がゼオライト前駆体全体の85質量%未満である粉末Dは、粗大粒子が多く存在することに起因して、ゼオライト成形体にTPAOHの残存に起因する黒斑が発生し、良好な品質の成形体を得ることができなかった(比較例2)。
本発明のゼオライト成形体の製造方法は、吸着材、触媒、触媒担体、ガス分離膜、或いはイオン交換体といった様々な用途において用いられるゼオライト成形体の製造、特に、ハニカム形状やモノリス形状といった複雑形状のゼオライト成形体の製造に特に好適に用いられる。
坏土の押出特性を評価するための押出治具を示す模式図であり、押出治具をその中心軸に沿って(鉛直方向に)切断した断面を示す概略断面図である。 図1(a)に示す押出治具の構成部品であるダイスの部分についての底面図である。 坏土の押出特性を評価するための押出治具を示す模式図であり、押出治具をその中心軸に沿って(鉛直方向に)切断した断面を示す概略断面図である。 図2(a)に示す押出治具の構成部品であるダイスの部分についての底面図である。 坏土の押出特性の評価結果を示すグラフである。
符号の説明
10,20…押出治具、12,22…ダイス、12a,22a…開口部、14…鞘体、14a…中空部、16…ピストン、18…坏土。

Claims (6)

  1. シリカゾルを含むシリカゾル溶液と構造規定剤を含む構造規定剤溶液とを混合した後、これらの溶液の溶媒を除去することによりゼオライト前駆体を得、
    そのゼオライト前駆体に対して、少なくとも有機結合剤及び分散媒を添加し、これらの混合物を混練することによって前記ゼオライト前駆体が含有された坏土を調製し、
    押出成形により前記坏土を前記ゼオライト前駆体が含有された成形体(前駆体成形体)に成形し、
    その前駆体成形体を水蒸気雰囲気中において加熱処理し、前記ゼオライト前駆体をゼオライト結晶に変換することによってゼオライト結晶が含有された成形体(ゼオライト成形体)を得るゼオライト成形体の製造方法であって、
    前記坏土を調製するに際し、前記ゼオライト前駆体として、粒径200μm以下の粒分が前記ゼオライト前駆体全体の85質量%以上を占め、粒径5μm以下の粒分が前記ゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占め、かつ、粒径20〜200μmの粒分が前記ゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占める粒状物を用いるゼオライト成形体の製造方法。
  2. 前記坏土を調製するに際し、前記ゼオライト前駆体として、粒径20〜40μmの粒分が前記ゼオライト前駆体全体の10質量%以上を占める粒状物を用いる請求項1に記載のゼオライト成形体の製造方法。
  3. 前記坏土を調製するに際し、前記ゼオライト前駆体として、粒径200μm以下の粒分が前記ゼオライト前駆体全体の100質量%を占める粒状物を用いる請求項1又は2に記載のゼオライト成形体の製造方法。
  4. 前記ゼオライト前駆体100質量部に対して、前記有機結合剤4〜15質量部を添加し、前記坏土を調製する請求項1〜3のいずれか一項に記載のゼオライト成形体の製造方法。
  5. 前記ゼオライト前駆体100質量部に対して、前記分散媒15〜50質量部を添加し、加圧ニーダーを用いて混練することによって前記坏土を調製する請求項1〜4のいずれか一項に記載のゼオライト成形体の製造方法。
  6. 前記ゼオライト前駆体に対して、他の無機成分を添加することなく、前記坏土を調製する請求項1〜5のいずれか一項に記載のゼオライト成形体の製造方法。
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