以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る移動体の制御装置ついて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、本発明において移動体は、電動機が搭載された移動体であれば特に限定されるものではなく、たとえば、ハイブリッド車両、電気自動車あるいは燃料電池自動車であってもよい。本実施の形態において移動体はハイブリッド車両として説明する。
<第1の実施の形態>
図1に示すように、本実施の形態に係る移動体の制御装置が搭載される車両には、HV−ECU(Hybrid Vehicle-Electronic Control Unit)100と、DC/DCコンバータ400と、電池500と、インバータ600と、モータ700とが搭載される。
電池500は、充電可能な二次電池であれば、特に限定されるものではないが、たとえば、ニッケル水素電池であってもよいし、リチウムイオン電池であってもよい。
DC/DCコンバータ400は、電池500の直流電圧を昇圧する。DC/DCコンバータ400は、HV−ECU100から受信した制御信号に応じて、昇圧電圧を制御する。
インバータ600は、DC/DCコンバータ400において昇圧された直流電圧を交流電圧に変換する。インバータ600は、HV−ECU100から受信した制御信号に応じて、モータ700に供給する交流電圧を制御する。。
モータ700は、電動機であって、インバータ600から供給される交流電圧に基づいて駆動する。モータ700は、たとえば、三相交流同期電動機である。モータ700は、車両の駆動輪(図示せず)に連結され、供給される交流電圧に応じた駆動力を駆動輪に発生させる。
ここで、車両が走行する際には、DC/DCコンバータ400、インバータ600およびモータ700の作動に応じて、内部の絶縁体に部分放電が発生する。この部分放電量は、大気圧の変化に対応して増減する。すなわち、図2に示すように、大気圧と部分放電量との関係は、大気圧が低下すると、部分放電量は増加する傾向にある。また、インバータ600に供給される直流電圧が上昇すると、部分放電量は増加する傾向にある。特に、部分放電量がC(1)以上となる領域は、内部の絶縁体の絶縁性能の劣化が促進する領域である。これは、高地等の大気圧が低いあるいは高湿度の環境下においては、空気の誘電率が上昇するためである。したがって、このような環境下で車両が走行する場合においては、部分放電量が増加して、DC/DCコンバータ400、インバータ600およびモータ700の内部の絶縁体の絶縁性能が劣化する可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、HV−ECU100が、モータ700において発生する部分放電に対応する物理量に応じて、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値を設定して、設定された電圧値に基づいて、モータ700を制御する点に特徴を有する。
具体的には、モータ700の相間の電圧に基づいて部分放電に対応する物理量が検知される。図3に示すように、モータ700において部分放電が発生したときの相間の電圧の波形は、スイッチングサージによる電圧変動に、部分放電による電圧変動が重畳した波形となる。このとき、スイッチングサージによる電圧変動の周波数帯が1MHzから10MHzまでであることに対して、部分放電による電圧変動の周波数帯は10Mzから4GHzまでである。
本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両には、図4に示すように、電圧計102と、FFT(Fast Fourier Transform)回路104と、演算回路106とがさらに搭載される。本実施の形態においては、これらの構成により、相間の電圧からパワースペクトルを算出して、10MHz以上の周波数帯のパワースペクトルの積算値を算出する。
電圧計102は、モータ700の相間を接続する。なお、電圧計102は、モータ700の3つの相間のうちのいずれか1つの相間に設けられるようにすればよい。電圧計102は、相間の電圧を検知して、FFT回路104に対して、検知された電圧に対応する信号を出力する。
FFT回路104は、電圧計102から入力された検知信号の時系列データのうち予め定められた期間のデータをフーリエ変換して、パワースペクトルを算出する。なお、予め定められた期間は、特に限定されるものではない。また、フーリエ変換については、周知の技術を用いればよいため、その詳細な説明は行なわない。FFT回路104は、算出されたパワースペクトルを演算回路106に出力する。FFT回路104により予め定められた期間の時系列データがフーリエ変換されると、周波数とパワースペクトルとの関係は、図5に示すような関係となる。なお、図5において、5KHzは、キャリア周波数を示す。
演算回路106は、FFT回路104から入力されたパワースペクトルのうち、部分放電に対応する周波数帯である10MHz以上のパワースペクトルを積算する。積算する周波数帯は、10MHz以上であれば特に限定されるものではないが、部分放電に対応する周波数帯が10MHzから4GHzまでであることから、好ましくは、積算する周波数帯は、10MHzから4GHzまでであることが望ましい。すなわち、本実施の形態においては、図5に示すように、10MHzから4GHzまでの周波数帯における、部分放電が発生している場合のパワースペクトル(実線)の積算値から部分放電が発生していない場合のパワースペクトル(破線)の積算値の差(斜線部分の面積)を、モータ700において発生した部分放電に対応する積算値として算出する。演算回路106は、算出された積算値をHV−ECU100に出力する。
なお、本実施の形態において、FFT回路104および演算回路106は、HV−ECU100と別体的に設けられるハードウェアにより実現されるものとして説明するが、特にこのような構成に限定されるものではない。たとえば、FFT回路104および演算回路106は、HV−ECU100に一体的に設けられるハードウェアにより実現されてもよいし、HV−ECU100で実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現されてもよい。また、本実施の形態において「部分放電に対応する物理量」は、予め定められた期間の相間の電圧の、部分放電に対応する周波数帯におけるパワースペクトルの積算値である。
HV−ECU100は、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値よりも大きいと、部分放電量が増加しているといえるため、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値の上限を低くなるように設定する。以下の説明では、電圧値の上限をVmaxとして記載する。
図6を参照して、本実施の形態において、HV−ECU100で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)1000にて、HV−ECU100は、部分放電に対応する周波数帯のパワースペクトルの積算値を検知する。具体的には、部分放電に対応するパワースペクトルの積算値が演算回路106からHV−ECU100に対して入力される。FFT回路104は、電圧計102から入力された予め定められた期間の検知信号をフーリエ変換して、パワースペクトルを算出する。演算回路106は、FFT回路104から入力されたパワースペクトルのうち、10MHzから4GHzまでのパワースペクトルの積算値から部分放電が発生していない場合の積算値との差を算出する。部分放電が発生していない場合の積算値は、予め算出された値である。演算回路106は、部分放電に対応する積算値として算出された差分をHV−ECU100に入力する。
S1100にて、HV−ECU100は、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αより小さいか否かを判断する。予め定められた値αは、特に限定される値でなく、実験的に適合される値である。積算値が予め定められた値αよりも小さいと判断されると(S1100にてYES)、処理はS1200に移される。もしそうでないと(S1100にてNO)、処理はS1300に移される。
S1200にて、HV−ECU100は、Vmaxを上限値として設定する。Vmaxは、特に限定される値ではなく、初期値として予め設定される電圧の上限値である。S1300にて、HV−ECU100は、Vmax×βを上限値として設定する。
なお、βは、1よりも小さい値であって、Vmax×βを上限値として設定したときに、インバータ600およびモータ700において発生する部分放電量が、絶縁体の絶縁性能の劣化の促進が抑制できる範囲内になる値であれば、特に限定される値ではない。S1500にて、HV−ECU100は、設定された上限値を、昇圧電圧の最大値として、DC/DCコンバータ400を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置の動作について説明する。
電圧計102により検知されたモータ700の相間の電圧の時系列データのうち予め定められた期間のデータが、FFT回路104において、フーリエ変換されて、パワースペクトルが算出される。演算回路106において、算出されたパワースペクトルのうち、10MHzから4GHzまでのパワースペクトル値が積算され、部分放電が発生していない場合の積算値との差により部分放電に対応する積算値が算出され、HV−ECU100に入力される(S1000)。
大気圧が低地における大気圧であって、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも小さいと(S1100にてYES)、初期値であるVmaxが上限値として設定される(S1200)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmaxを超えないように制御される。
一方、車両が、高湿度の環境下で走行している場合、あるいは、車両が山間部等の高地を走行しているときのように、大気圧が低下した環境下で走行している場合には、空気の誘電率が上昇し、モータ700において発生する部分放電量が増加する。このとき、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも大きくなると(S1100にてNO)、Vmax×βが上限値として設定される(S1300)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmax×βを超えないように制御される。βは1よりも小さい値であるため、上限値は、積算値が予め定められた値αよりも小さい場合と比べて、小さくなるように設定される。そのため、モータ700において発生する部分放電量の増加が抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、電圧計により検知された相間の電圧をFFT回路によりフーリエ変換して、演算回路において部分放電に対応するパワースペクトルの積算値が算出される。HV−ECUは、算出された積算値が予め定められた値よりも大きくなると、部分放電量が、絶縁体の絶縁性能の劣化の促進が抑制できる範囲内になるように、モータおよびインバータに供給される電圧の上限値を、部分放電量の増加前の電圧の上限値よりも低くなるように上限値を設定する。これにより、大気圧が低いあるいは高湿度の環境下において車両が走行する場合、空気の誘電率が上昇しても、部分放電量の増加を抑制することができる。そのため、車両が移動することにより環境が変化しても、モータおよびインバータの内部の絶縁体の絶縁性能の悪化を抑制することができる。したがって、部分放電量に応じて、絶縁性能を確保する車両の制御装置を提供することができる。
なお、本実施の形態においては、部分放電に対応する積算値を、部分放電が発生している場合の積算値と部分放電が発生していない場合の積算値との差に応じて電圧の上限値を設定したが、部分放電が発生している場合の10MHzから4GHzまでの周波数帯のパワースペクトルの積算値に基づいて電圧の上限値を設定するようにしてもよい。
また、積算値の計算は、予め定められた時間間隔ごと行なうようにしてもよいし、HV−ECU100がモータ700を制御するプログラムを実行する時間ごとに行なうようにしてもよく特に限定されるものではない。
さらに、本実施の形態においては、10MHzから4GHzまでの周波数帯のパワースペクトルの積算値に応じて電圧の上限値を設定したが、特に、積算値に限定されるものではない。たとえば、演算回路106において、FFT回路104から入力されるパワースペクトルのうち、10MHZから4GHzまでの周波数帯のパワースペクトルのピーク値を算出して、HV−ECU100は、ピーク値が予め定められた値よりも大きくなると、電圧の上限値が低くなるように設定するようにしてもよい。
そして、本実施の形態においては、HV−ECU100は、積算値が予め定められた値αよりも大きくなると、Vmax×βを電圧の上限値として設定するようにしたが、たとえば、積算値とβとの関係を示すマップを予め記憶しておき、HV−ECU100が積算値に対応したβをマップから算出して、Vmax×βを電圧の上限値として設定するようにしてもよい。
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態に係る車両の制御装置について説明する。本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両は、上述した第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と比較して、インバータ600の構成が異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
本実施の形態においては、HV−ECU100が、モータ700において発生する部分放電量に対応する物理量に応じて、モータ700の制御に関連した制御値を設定して、設定された制御値に基づいて、モータ700を制御する点に特徴を有する。
具体的には、本実施の形態において、インバータ600は、モータ700の各相にそれぞれ対応するスイッチング素子1100とゲート駆動回路900とを含む。インバータ600においては、HV−ECU100からの制御信号に応じて、各相対応するゲート駆動回路900によりスイッチング素子1100の開閉が制御されて、直流電圧が交流電圧に変換される。スイッチング素子1100は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
図7に示すように、スイッチング素子1100は、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すように逆並列ダイオード1000が接続される。スイッチング素子1100のゲート側とゲート駆動回路900との間には、ゲート抵抗800が設けられる。HV−ECU100からの制御信号に応じて、ゲート駆動回路900からスイッチング素子1000に対して駆動信号が出力され、スイッチング素子1100は、駆動信号に応じて開閉する。各相に対応するスイッチング素子1100の開閉が制御されることにより、DC/DCコンバータ600の直流電圧が交流電圧に変換されて、変換された交流電圧がモータ700に供給される。
本実施の形態において、ゲート抵抗800は、可変抵抗器であって、HV−ECU100の制御信号に応じて、抵抗値を可変とする。本実施の形態において、制御値は、ゲート抵抗800の抵抗値であって、HV−ECU100は、演算回路106から入力された部分放電に対応するパワースペクトルの積算値に基づいて、ゲート抵抗800の抵抗値を設定して、設定された抵抗値になるように、ゲート抵抗800を制御する。
以下、図8を参照して、本実施の形態において、HV−ECU100で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、図8に示したフローチャートの中で、前述の図6に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
S2000にて、HV−ECU100は、Rgを抵抗値として設定する。Rgは、特に限定される値ではなく、初期値として予め設定されるゲート抵抗800の抵抗値である。
S2100にて、HV−ECU100は、Rg×γを抵抗値として設定する。なお、γは、1よりも大きい値であって、Rg×γを抵抗値として設定したときに、インバータ600およびモータ700において発生する部分放電量が絶縁体の絶縁性能の劣化の促進が抑制できる範囲内になる値であれば、特に限定される値ではない。S2200にて、HV−ECU100は、設定された抵抗値になるようにゲート抵抗800を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両の制御装置の動作について説明する。
電圧計102により検知されたモータ700の相間の電圧の時系列データのうち予め定められた期間のデータが、FFT回路104において、フーリエ変換されて、パワースペクトルが算出される。演算回路106において、算出されたパワースペクトルのうち、10MHzから4GHzまでのパワースペクトル値が積算され、部分放電が発生していない場合の積算値との差により部分放電に対応する積算値が算出され、HV−ECU100に入力される(S1000)。
大気圧が低地における大気圧であって、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも小さいと(S1100にてYES)、初期値であるRgが抵抗値として設定される(S2000)。そして、ゲート抵抗800の抵抗値がRgになるように制御される(S2200)。
一方、車両が、高湿度の環境下で走行している場合あるいは、車両が山間部等の高地を走行しているときのように、大気圧が低下した環境下で走行している場合には、空気の誘電率が上昇し、モータ700において発生する部分放電量が増加する。このとき、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも大きくなると(S1100にてNO)、Rg×γが抵抗値として設定される(S2100)。そして、ゲート抵抗800の抵抗値がRg×γになるように制御される(S2200)。このとき、γは1よりも大きい値であるため、抵抗値は、積算値が予め定められた値αよりも小さい場合と比べて、大きくなるように設定される。
ここで、ゲート抵抗800の抵抗値が制御されるときに、図9(A)に示すように、ゲート抵抗800が小さくなるように設定されると、サージ電圧が大きくなり、エミッタ−コレクタ間のスイッチング電圧の最大値が高くなる。一方、図9(B)に示すように、ゲート抵抗800が大きくなるように設定されると、エミッタ−コレクタ間のスイッチング電圧の立ち上がりが緩やかになるため、サージ電圧が小さくなる。サージ電圧が小さくなると、スイッチング電圧の最大値が低減されるため、インバータ600およびモータ700における発生する部分放電量が抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、電圧計により検知された相間の電圧をFFT回路によりフーリエ変換して、演算回路において部分放電に対応するパワースペクトルの積算値が算出される。HV−ECUは、算出された積算値が予め定められた値よりも大きくなると、部分放電量が、絶縁体の絶縁性能の劣化の促進が抑制できる範囲内になるように、ゲート抵抗の抵抗値を、部分放電量の増加前の抵抗値よりも大きくなるように設定する。これにより、大気圧が低いあるいは高湿度の環境下において車両が走行する場合、空気の誘電率が上昇しても、サージ電圧が低減されるため、部分放電量の増加を抑制することができる。そのため、車両が移動することにより環境が変化しても、モータおよびインバータの内部の絶縁体の絶縁性能の悪化を抑制することができる。したがって、部分放電量に応じて、絶縁性能を確保する車両の制御装置を提供することができる。
なお、本実施の形態においては、HV−ECU100は、積算値が予め定められた値αよりも大きくなると、Rg×γを抵抗値として設定するようにしたが、たとえば、積算値とβとの関係を示すマップを予め記憶しておき、HV−ECU100が積算値に対応したγをマップから算出して、Rg×γを抵抗値として設定するようにしてもよい。
なお、好ましくは、HV−ECUは、モータの状態に応じて、上述した第1の実施の形態において説明した部分放電に対応する物理量に応じた昇圧電圧の最大値の制御と、本実施の形態において説明した部分放電に対応する物理量に応じたゲート抵抗の抵抗値の制御とのうちいずれか一方を行なうことが望ましい。
図10に示すように、上述した第1の実施の形態において説明した昇圧電圧の最大値の制御は、昇圧電圧の最大値を下げるため、モータ性能および効率は悪化する場合があるが、インバータの効率の悪化は抑制できる。また、昇圧電圧を制御するため、DC/DCコンバータが必要となる。
一方、本実施の形態において説明したゲート抵抗の抵抗値の制御は、ゲート抵抗の抵抗値を高くするため、インバータの効率が悪化する場合があるが、モータ性能および効率の悪化を抑制できる。また、ゲート抵抗の抵抗値を制御するため、DC/DCコンバータなどの昇圧システムは不要である。
したがって、大気圧の低い環境下において、モータに要求される負荷が低負荷である場合には、昇圧電圧の最大値を低く設定することにより、インバータの効率の悪化を抑制しつつ、絶縁性能を確保することができる。一方、モータにおいて要求される負荷が高負荷である場合には、インバータのゲート抵抗の抵抗値を大きく設定することにより、モータ性能および効率の悪化を抑制しつつ、絶縁性能を確保することができる。したがって、モータに要求される負荷に応じて、電圧値と抵抗値とのうちのいずれか一方を設定することにより、絶縁性能の悪化を抑制しつつ、要求される負荷に応じたモータの制御をすることができる。
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態に係る車両の制御装置について説明する。本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両は、上述した第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と比較して、電圧計102に代えて、電流計108およびコンデンサ110を含む点が異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と同じである。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
本実施の形態においては、HV−ECU100が、モータ700において発生する部分放電に対応する物理量に応じて、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値を設定して、設定された電圧値に基づいて、モータ700を制御する点に特徴を有する。
本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両には、図11に示すように、電流計108と、コンデンサ110と、FFT回路104と、演算回路106とが搭載される。
電流計108は、モータ700の相間を接続するように設けられる。また、電流計108は、コンデンサ110と直列に接続される。なお、電流計108は、モータ700の3つの相間のうちのいずれか1つの相間に設けられるようにすればよい。電流計108は、モータ700の相間の電流を検知して、FFT回路104に対して、検知された電流に対応する検知信号を出力する。
このとき、モータ700において部分放電が発生したときには、図12に示すように、電流計108により検知される電流の波形に、10MHzから4GHzの周波数帯の部分放電による電流が重畳する。そこで、本実施の形態においては、FFT回路104および演算回路106により、電流計108により検知された相間の電流からパワースペクトルを算出して、10MHz以上の周波数帯のパワースペクトルの積算値を算出する。
FFT回路104は、電流計108から入力された検知信号の時系列データのうち予め定められた期間のデータをフーリエ変換して、パワースペクトルを算出する。なお、予め定められた期間は、特に限定されるものではない。また、フーリエ変換については、周知の技術を用いればよいため、その詳細な説明は行なわない。FFT回路104は、算出されたパワースペクトルを演算回路106に出力する。
演算回路106は、FFT回路104から入力されたパワースペクトルのうち、部分放電に対応する周数帯である10MHz以上のパワースペクトルを積算する。積算する周波数帯は、10MHz以上であれば特に限定されるものではないが、部分放電に対応する周波数帯が10MHzから4GHzまでであることから、好ましくは、積算する周波数帯は、10MHzから4GHzまでであることが望ましい。演算回路106は、算出された積算値をHV−ECU100に出力する。なお、本実施の形態において、「部分放電に対応する物理量」は、予め定められた期間の相間の電流の、部分放電に対応する周波数帯におけるパワースペクトルの積算値である。
HV−ECU100は、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値より大きいと、部分放電量が増加しているといえるため、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値の上限が低くなるように設定する。
本実施の形態において、HV−ECU100で実行されるプログラムの制御構造は、上述の第1の実施の形態において説明した図6のフローチャートと同じである。したがって、その詳細な説明は繰り返さない。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置の動作について説明する。
電流計108により検知されたモータ700の相間の電流の時系列データのうち予め定められた期間のデータが、FFT回路104において、フーリエ変換されて、パワースペクトルが算出される。演算回路106において、算出されたパワースペクトルのうち、10MHzから4GHzまでのパワースペクトルが積算され、部分放電が発生していない場合の積算値との差により部分放電に対応する積算値が算出され、HV−ECU100に入力される(S1000)。
大気圧が低地における大気圧であって、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも小さいと(S1100にてYES)、初期値であるVmaxが上限値として設定される(S1200)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmaxを超えないように制御される。
一方、車両が、高湿度の環境下で走行している場合、あるいは、車両が山間部等の高地を走行しているときのように、大気圧が低下した環境下で走行している場合には、空気の誘電率が上昇して、モータ700において発生する部分放電量が増加する。このとき、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも大きくなると(S1100にてNO)、Vmax×βが上限値として設定される(S1300)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmax×βを超えないように制御される。βは1よりも小さい値であるため、積算値が予め定められた値αよりも小さい場合と比べて、上限値は小さくなるように設定される。そのため、モータ700において発生する部分放電量の増加が抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、上述の第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、本実施の形態においては、昇圧電圧の上限値を制限することにより、部分放電量の増加を抑制したが、第2の実施の形態において説明したように、積算値が予め定められた値αより大きくなると、インバータ600に含まれるゲート抵抗の抵抗値が大きくなるように設定して、部分放電量の増加を抑制するようにしてもよい。
また、コンデンサに流れる電流の周波数帯に応じて抵抗値が異なる周波数特性を利用して、部分放電量を測定するようにしてもよい。すなわち、部分放電に対応する周波数帯の電流に対して抵抗値が低くなる周波数特性を有するコンデンサを用いることにより、部分放電量を電流計により検知するようにしてもよい。この場合、FFT回路104を省略することができる。
あるいは、FFT回路に代えて、周知のハイパスフィルタあるいは、バンドパスフィルタを用いて、部分放電に対応する周波数帯(10MHz以上あるいは10MHz〜4GHz)の電流値を抽出して、部分放電量を電流計により検知するようにしてもよい。
<第4の実施の形態>
以下、第4の実施の形態に係る車両の制御装置について説明する。本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両は、上述した第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と比較して、電圧計102に代えて、ループアンテナ112および増幅器114を含む点が異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と同じである。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
本実施の形態においては、HV−ECU100が、モータ700において発生する部分放電に対応する物理量に応じて、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値を設定して、設定された電圧値に基づいて、モータ700を制御する点に特徴を有する。
本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両には、図13に示すように、ループアンテナ112と、増幅器113と、FFT回路104と、演算回路106とが搭載される。
ループアンテナ112は、モータ700において発生する電磁波を検知する。本実施の形態において、ループアンテナ112は、図14に示すように、複数のコイルが並列に接続されて構成される。なお、ループアンテナ112は、1つのコイルで構成されるようにしてもよい。ループアンテナ112は、図15(A)および(B)に示すように、モータ700のコイルエンド702に巻きつけられる。このようにして、ループアンテナ112は、モータ700において発生する電磁波に基づく起電力を検知する。ループアンテナ112において検知された起電力は、増幅器114において増幅された後、FFT回路104に対して出力される。
このとき、モータ700において部分放電が発生したときに、モータ700から発せられる電磁波には、10MHzから4GHzの周波数帯の部分放電に基づく電磁波が含まれる。そこで、本実施の形態においては、FFT回路104および演算回路106により、ループアンテナ112より検知され、増幅器114により増幅された起電力のパワースペクトルを算出して、10MHz以上の周波数帯のパワースペクトルの積算値を算出する。
FFT回路104は、増幅器114から入力された起電力の時系列データのうち予め定められた期間のデータをフーリエ変換して、パワースペクトルを算出する。なお、予め定められた期間は、特に限定されるものではない。また、フーリエ変換については、周知の技術を用いればよいため、その詳細な説明は行なわない。FFT回路104は、算出されたパワースペクトルを演算回路106に出力する。
演算回路106は、FFT回路104から入力されたパワースペクトルのうち、部分放電に対応する周数帯である10MHz以上のパワースペクトルを積算する。積算する周波数帯は、10MHz以上であれば特に限定されるものではないが、部分放電に対応する周波数帯が10MHzから4GHzまでであることから、好ましくは、積算する周波数帯は、10MHzから4GHzまでであることが望ましい。演算回路106は、算出された積算値をHV−ECU100に出力する。なお、本実施の形態において、「部分放電に対応する物理量」は、予め定められた期間のループアンテナ112において検知された起電力の、部分放電に対応する周波数帯におけるパワースペクトルの積算値である。
HV−ECU100は、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値よりも大きいと、部分放電量が増加しているといえるため、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値の上限が低くなるように設定する。
本実施の形態において、HV−ECU100で実行されるプログラムの制御構造は、上述の第1の実施の形態において説明した図6のフローチャートと同じである。したがって、その詳細な説明は繰り返さない。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置の動作について説明する。
ループアンテナ112において検知され、増幅器114により増幅された起電力の時系列データのうち予め定められた期間のデータは、FFT回路104において、フーリエ変換されて、パワースペクトルが算出される。演算回路106において、算出されたパワースペクトルのうち、10MHzから4GHzまでのパワースペクトルが積算され、部分放電が発生していない場合の積算値との差により部分放電に対応する積算値が算出され、HV−ECU100に入力される(S1000)。
大気圧が低地における大気圧であって、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも小さいと(S1100にてYES)、初期値であるVmaxが上限値として設定される(S1200)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmaxを超えないように制御される。
一方、車両が、高湿度の環境下で走行している場合、あるいは、車両が山間部等の高地を走行しているときのように、大気圧が低下した環境下で走行している場合には、空気の誘電率が上昇して、モータ700において発生する部分放電量が増加する。このとき、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも大きくなると(S1100にてNO)、Vmax×βが上限値として設定される(S1300)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmax×βを超えないように制御される。βは1よりも小さい値であるため、積算値が予め定められた値αよりも小さい場合と比べて、上限値は小さくなるように設定される。そのため、モータ700において発生する部分放電量の増加が抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、上述の第1の実施の形態と効果に加えて、ループアンテナをモータのコイルエンドの全周に巻きつけることにより、モータにおいて発生する電磁波を精度よく検出することができる。したがって、部分放電による微細な電圧、電流変動を精度よく検出することができる。これにより、精度よく部分放電量の増加を抑制することができる。
また、本実施の形態においては、昇圧電圧の上限値を制限することにより、部分放電量の増加を抑制したが、第2の実施の形態において説明したように、積算値が予め定められた値αより大きくなると、インバータ600に含まれるゲート抵抗の抵抗値が大きくなるように設定して、部分放電量の増加を抑制するようにしてもよい。
<第5の実施の形態>
以下、第5の実施の形態に係る車両の制御装置について説明する。本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両は、上述した第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と比較して、電圧計102に代えて、レゾルバステータのコイル118を含む点が異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と同じである。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
本実施の形態においては、HV−ECU100が、モータ700において発生する部分放電に対応する物理量に応じて、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値を設定して、設定された電圧値に基づいて、モータ700を制御する点に特徴を有する。
本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両には、図16に示すように、レゾルバステータ(図示せず)のコイル118と、FFT回路104と、演算回路106とが搭載される。
モータ700の回転角を検知するレゾルバ(図示せず)は、モータ700のステータに固定された輪状のレゾルバステータと、モータ700のロータに固定され、レゾルバステータの輪の内側からレゾルバステータに対向するように設けられるレゾルバロータ(図示せず)とを含む。本実施の形態においては、レゾルバステータは、3つのコイルから構成され、3つのコイルのうちのいずれか2つのコイルは、レゾルバステータの内側に向けて互いに90度の角度を有する位置に設けられる。他の1つのコイルに交流電流が供給されると、2つのコイルは、レゾルバロータとのギャップ長さに応じた出力が発生する。そして、この出力の位相差に基づいて、モータ700の回転角が検知される。レゾルバから出力される回転角に対応する検知信号は、R−Dコンバータ(図示せず)を介してHV−ECU100に送信される。
このとき、モータ700において部分放電が発生したときに、コイル118からの検知信号に部分放電に対応する電磁波が含まれる。すなわち、レゾルバのコイル118において、10MHzから4GHzの周波数帯の部分放電に基づく電磁波に基づいて起電力が発生する。そこで、本実施の形態においては、FFT回路104および演算回路106により、レゾルバのコイル118に生じた起電力のパワースペクトルを算出して、10MHz以上の周波数帯のパワースペクトルの積算値を算出する。
FFT回路104は、コイル118に並列に接続され、コイル118から入力された起電力の時系列データのうち予め定められた期間のデータをフーリエ変換して、パワースペクトルを算出する。なお、予め定められた期間は、特に限定されるものではない。フーリエ変換については、周知の技術を用いればよいため、その詳細な説明は行なわない。FFT回路104は、算出されたパワースペクトルを演算回路106に出力する。
演算回路106は、FFT回路104から入力されたパワースペクトルのうち、部分放電に対応する周数帯である10MHz以上のパワースペクトルを積算する。積算する周波数帯は、10MHz以上であれば特に限定されるものではないが、部分放電に対応する周波数帯が10MHzから4GHzまでであることから、好ましくは、積算する周波数帯は、10MHzから4GHzまでであることが望ましい。演算回路106は、算出された積算値をHV−ECU100に出力する。なお、本実施の形態において、「部分放電に対応する物理量」は、予め定められた期間のコイル118の検知信号(起電力)の、部分放電に対応する周波数帯におけるパワースペクトルの積算値である。
本実施の形態において、HV−ECU100で実行されるプログラムの制御構造は、上述の第1の実施の形態において説明した図6のフローチャートと同じである。したがって、その詳細な説明は繰り返さない。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置の動作について説明する。
レゾルバステータのコイル118において発生した起電力の時系列データのうち予め定められた期間のデータは、FFT回路104において、フーリエ変換されて、パワースペクトルが算出される。演算回路106において、算出されたパワースペクトルのうち、10MHzから4GHzまでのパワースペクトルが積算され、部分放電が発生していない場合の積算値との差により部分放電に対応する積算値が算出され、HV−ECU100に入力される(S1000)。
大気圧が低地における大気圧であって、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも小さいと(S1100にてYES)、初期値であるVmaxが上限値として設定される(S1200)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmaxを超えないように制御される。
一方、車両が、高湿度の環境下で走行している場合、あるいは、車両が山間部等の高地を走行しているときのように、大気圧が低下した環境下で走行している場合には、空気の誘電率が上昇して、モータ700において発生する部分放電量が増加する。このとき、演算回路106から入力された積算値が予め定められた値αよりも大きくなると(S1100にてNO)、Vmax×βが上限値として設定される(S1300)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmax×βを超えないように制御される。βは1よりも小さい値であるため、積算値が予め定められた値αよりも小さい場合と比べて、上限値は小さくなるように設定される。そのため、部分放電量の増加が抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、上述の第1の実施の形態の効果に加えて、モータにおいて発生する電磁波を検出するコイルを別途設ける必要がないため、コストの上昇を抑制することができる。また、本実施の形態においては、昇圧電圧の上限値を制限することにより、部分放電量の増加を抑制したが、第2の実施の形態において説明したように、積算値が予め定められた値αより大きくなると、インバータ600に含まれるゲート抵抗の抵抗値を大きくするように設定して、部分放電量の増加を抑制するようにしてもよい。
<第6の実施の形態>
以下、第6の実施の形態に係る車両の制御装置について説明する。本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両は、上述した第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と比較して、電圧計102、FFT回路104および演算回路106に代えて、オゾンプローブ120およびオゾン計122を含む点が異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両の構成と同じである。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
本実施の形態においては、HV−ECU100が、モータ700において発生する部分放電に対応する物理量に応じて、インバータ600およびモータ700に供給される電圧値を設定して、設定された電圧値に基づいて、モータ700を制御する点に特徴を有する。
本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両には、図17に示すように、オゾンプローブ120と、オゾン計122とが搭載される。
オゾンプローブ120は、モータ700の周囲に設けられ、モータ700の周囲の気体を採取する。オゾン計122は、採取された気体に基づいて、気体に含まれるオゾンの濃度を検知する。検知されたオゾンの濃度に対応する検知信号は、HV−ECU100に送信される。
このとき、モータ700において部分放電が発生したときには、モータ700の周囲のオゾン濃度は増加する傾向にある。そこで、本実施の形態においては、HV−ECU100が、オゾン計122により検知されたオゾン濃度が予め定められた値よりも大きいと、インバータ600およびモータ700に供給される電圧の上限値が低くなるように設定する。
図18を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるHV−ECU100において実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、図18に示したフローチャートの中で、前述の図6に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
S3000にて、HV−ECU100は、オゾン計122によりオゾンプローブ120により採取した気体のオゾン濃度を検知する。S3100にて、HV−ECU100は、検知されたオゾン濃度が予め定められた値δよりも小さいか否かを判断する。なお、δは、特に限定される値ではなく、実験的に適合される値である。検知されたオゾン濃度が予め定められた値δよりも小さいと判断されると(S3100にてYES)、処理はS1200に移される。もしそうでないと(S3100にてNO)、処理はS1300に移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置の動作について説明する。
オゾン計122によりモータ700の周囲のオゾン濃度が検知され(S3000)、大気圧が低地における大気圧であって、検知されたオゾン濃度が予め定められた値δより小さいと(S3100にてYES)、初期値であるVmaxが上限値として設定される(S1200)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmaxを超えないように制御される。
一方、車両が、高湿度の環境下で走行している場合、あるいは、車両が山間部等の高地を走行しているときのように、大気圧が低下した環境下で走行している場合には、空気が上昇して、モータ700において発生する部分放電量が増加する。そのため、モータ700の周囲のオゾン濃度が増加する。このとき、検知されたオゾン濃度が予め定められた値δよりも大きくなると(S3100にてNO)、Vmax×βが上限値として設定される(S1300)。そして、DC/DCコンバータ400からインバータ600へと供給される電圧が制御される(S1400)。このとき、DC/DCコンバータ400は、設定された上限値Vmax×βを超えないように制御される。βは1よりも小さい値であるため、オゾン濃度が予め定められた値δよりも小さい場合と比べて、上限値は小さくなるように設定される。そのため、部分放電量の増加が抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、上述の第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、本実施の形態においては、昇圧電圧の上限値を制限することにより、部分放電量の増加を抑制したが、第2の実施の形態において説明したように、オゾン濃度が予め定められた値δより大きくなると、インバータ600に含まれるゲート抵抗の抵抗値を大きくするように設定して、部分放電量の増加を抑制するようにしてもよい。
また、本実施の形態においては、HV−ECU100は、オゾン濃度が予め定められた値δよりも大きくなると、Vmax×βを電圧の上限値として設定するようにしたが、たとえば、オゾン濃度とβとの関係を示すマップを予め記憶しておき、HV−ECU110がオゾン濃度に対応したβをマップから算出して、Vmax×βを電圧の上限値として設定するようにしてもよい。さらに、HV−ECU100は、車両の周囲の大気圧に基づいて、予め定められた値δを補正するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 HV−ECU、102 電圧計、104 FFT回路、106 演算回路、108 電流計、110 コンデンサ、112 ループアンテナ、114 増幅器、116,118 コイル、120 オゾンプローブ、122 オゾン計、400 DC/DCコンバータ、500 電池、600 インバータ、700 モータ、702 コイルエンド、800 ゲート抵抗、900 ゲート駆動回路、1000 ダイオード、1100 スイッチング素子。