本発明は、プラズマCVD法による導体膜の作製方法、及び、この半導体膜を用いた薄膜トランジスタ(以下、TFTという)で構成された回路を有する半導体装置およびその作製方法に関する。例えば、太陽電池やセンサに代表される光電変換装置、液晶表示パネルに代表される電気光学装置、または発光装置を部品として搭載した電子機器に関する。
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、発光装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜(厚さ数〜数百nm程度)を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を構成する技術が注目されている。TFTはICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に画像表示装置(表示パネル)のスイッチング素子として開発が急がれている。
TFTの活性層に用いる材料は、主としてシリコンが用いられている。従来では非晶質シリコン膜(アモルファスシリコン膜)を用いてTFTが形成されてきた。
また、これまで、一枚のマザーガラス基板から複数のパネルを切り出して、大量生産を効率良く行う生産技術が採用されてきた。マザーガラス基板のサイズは、1990年初頭における第1世代の300×400mmから、2000年には第4世代となり680×880mm若しくは730×920mmへと大型化して、一枚の基板から多数の表示パネルが取れるように生産技術が進歩してきた。
また、基板サイズの大面積化と同時に、生産性の向上や低コスト化の要求も高まっている。
近年、より高性能を求めるために、アモルファスシリコン膜に代えて、ポリシリコン膜を活性層にしたTFT(以下、ポリシリコンTFTとも記す)を作製することが試みられている。このポリシリコンTFTは、電界効果移動度が高いことから、いろいろな機能を備えた回路を形成することも可能である。
従来の技術において、ポリシリコン膜は、プラズマCVD法や減圧CVD法で堆積した非晶質半導体膜を、加熱処理やレーザーアニール法(レーザー光の照射により半導体膜を結晶化させる技術)により作製されている。プラズマCVD法では、比較的低温(400℃程度)で非晶質半導体膜を成膜することが可能である。
加熱処理により作製する場合には、非晶質シリコン膜を結晶化させるために600℃以上の温度で10時間以上の加熱処理が必要とされ、この処理温度は、耐熱性の低いガラス基板の使用を困難なものとしている。この処理温度と処理時間は、TFTの生産性を考慮すると必ずしも適切な方法とは考えられていない。
また、レーザーアニール法により作製する場合には、非晶質シリコン膜中の水素を熱処理によって低減する脱水素化を行った後、レーザー光の照射を行っている。処理温度の問題はないものの、大面積基板に対応するためのレーザー照射装置は、精密な光学設計や大がかりな光学系(レンズ等)が必要とされ、設備コストがかかってしまう。また、大面積基板に均一なレーザー光を照射することは困難であるため、広い面積に渡って一様な結晶を得ることが困難となる。従って、大面積基板を用いた際の生産性を考慮すると必ずしも適切な方法とは考えられていない。
また、本出願人は、ポリシリコン膜をガラス基板上に得る一つの技術として特許文献1に記載の技術を開示している。同公報記載の技術は、非晶質シリコン膜に対して結晶化を助長する金属元素(代表的にはニッケル)を選択的に添加し、加熱処理を行うことで添加領域を起点として広がるポリシリコン膜を形成するものであり、得られる結晶粒のサイズは非常に大きい。また、上記公報技術は、金属元素を用いないで結晶化を行う場合と比べて金属元素の作用により非晶質シリコン膜の結晶化温度を50〜100℃程度下げることが可能であり、結晶化に要する時間も金属元素を用いないで結晶化を行う場合と比べ1/5〜1/10に低減することができ、生産性においても優れたものである。
特開平8-78329号公報
特許文献1に記載の記述を用いれば、ガラス基板の使用が可能となるが、結晶化を助長する金属元素を添加する故に、ポリシリコン膜の膜中或いは膜表面には、当該金属元素が残存し、得られる素子の特性をばらつかせるなどの問題がある。従って、結晶化を助長する金属元素を除去するための手法としてゲッタリング処理を行わなくてはならず、工程数が増加してしまっていた。
安価な大面積の透明絶縁性基板上に、上記従来の方法で作製されるポリシリコン膜を低温で形成するには、量産の上で不向きであった。
また、膜中の水素濃度を低減するために480℃以上の加熱を行いながら成膜するプラズマCVD法を用いようとすると、下地膜として耐熱性の低い材料で形成される膜、代表的にはアクリルなどの有機樹脂、アルミニウム配線等を用いた場合、従来では、これらの上に直接、プラズマCVD法を用いて結晶構造を含む半導体膜を形成することはできなかった。
また、スパッタリング法を用いると低温での成膜が可能であるため、耐熱温度の低い有機樹脂基板または有機樹脂部材上に、直接成膜することができる。
しかし、スパッタリング法には、大面積基板対応のターゲットの作製が困難であり且つ高価である点、チャンバー内のセルフクリーニングができず、チャンバー内を開放してメンテナンスを行わなければならないため、生産効率が低下する点、成膜時、雰囲気中の不純物が膜内に混入しやすい点、ターゲット中の不純物が生成物中に混入する点等の問題がある。
そこで、本発明では、安価な大面積の透明絶縁性基板上に、結晶構造を含む半導体膜を低温で直接堆積させる成膜方法を提供する技術を課題とする。また、工程数を増加させることなく、短い処理時間で結晶構造を含む半導体膜を成膜する技術も課題とする。
加えて、本発明は、得られた結晶構造を含む半導体膜を用いた半導体装置と、その作製方法も提供する。
本発明は、プラズマCVD法により、成膜室に珪化物気体(モノシラン、ジシラン、トリシランなど)とフッ素(或いはフッ化ハロゲンガス)を原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて結晶構造を含む半導体膜を被処理基板に直接成膜する。高温加熱により膜中の水素濃度を低減して、結晶構造を含む半導体膜を成膜するのではなく、本発明では、SiH3ラジカルの堆積による膜成長反応と、Fラジカルによる引き抜き(エッチング)反応とを競争的に起こさせて結晶構造を含む半導体膜を成膜している。本発明の成膜方法は、非晶質半導体膜よりも特性の優れた膜を被処理基板に直接得ることができ、且つ、タクトタイムが短く、量産に適した成膜方法である。
本発明により、安価な大面積の透明絶縁性基板上に、結晶構造を含む半導体膜を低温で成膜することができる。ここでの低温とは、安価なガラス基板が耐えうる範囲の温度を指している。さらに、下地膜として耐熱性の低い材料で形成される膜、代表的にはアクリルなどの有機樹脂、アルミニウム配線等を用いた場合でも直接、結晶構造を含む半導体膜を成膜できる。得られた膜は、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち、格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるセミアモルファス半導体膜(微結晶半導体膜、マイクロクリスタル半導体膜とも呼ばれる)である。
また、本発明は、TFTの活性層として、セミアモルファス半導体膜(微結晶半導体膜、マイクロクリスタル半導体膜とも呼ばれる)を用い、さまざまな半導体装置を実現する。
本明細書で開示する発明の構成は、
成膜室に珪化物気体と、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとを原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて結晶構造を含む半導体膜を被処理基板表面上に成膜することを特徴とする半導体膜の成膜方法である。
また、成膜前に成膜室内壁をコーティングしてもよく、他の発明の構成は、
成膜室にモノシランガスを導入してプラズマを発生させて成膜室内壁に薄膜を形成した後、
モノシランガスとフッ素或いはフッ化ハロゲンガスとを原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて結晶構造を含む半導体膜を被処理基板上に成膜することを特徴とする半導体膜の成膜方法である。
成膜前に成膜室内壁をアモルファスシリコン膜でコーティングすることによって、汚染物や異物を封じ込めるコートを行い、その後で成膜を行えば、膜中の不純物濃度を低減できる。さらに、コーティング前にクリーニングを行ってもよい。
また、希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種)をキャリアガスや原料ガスの希釈に用いてもよく、他の発明の構成は、
成膜室に珪化物気体と、希ガスと、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとを原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて結晶構造を含む半導体膜を被処理基板表面上に成膜することを特徴とする半導体膜の成膜方法である。
また、水素を原料ガスの希釈に用いてもよく、他の発明の構成は、
成膜室に珪化物気体と、水素と、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとを原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて結晶構造を含む半導体膜を被処理基板表面上に成膜することを特徴とする半導体膜の成膜方法である。
また、水素と希ガスとをキャリアガスや原料ガスの希釈に用いてもよく、他の発明の構成は、
成膜室に珪化物気体と、希ガスと、水素と、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとを原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて結晶構造を含む半導体膜を被処理基板表面上に成膜することを特徴とする半導体膜の成膜方法である。
ただし、水素を用いる場合、前記フッ素或いはフッ化ハロゲンガスの流量に対する水素の流量の比率(H2/F2)を0.1以下に制御して結晶構造を含む半導体膜を成膜することを特徴としている。
また、上記各構成において、前記珪化物気体は、モノシラン、ジシラン、またはトリシランのいずれかのガスであることを特徴としている。また、上記各構成において、前記フッ化ハロゲンガスは、ClF、ClF3、BrF、BrF3、IF、またはIF3のいずれかのガスであることを特徴としている。
また、上記各構成において、前記成膜は、平行平板型プラズマCVD装置を用いることを特徴としている。
また、本発明により得られる半導体膜も本発明の一つであり、その発明の構成は、
平行平板型プラズマCVD装置を用いて、珪化物気体と、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとのプラズマ反応により被処理基板表面上に堆積されたことを特徴とする結晶構造を含む半導体膜である。
また、本発明により得られる半導体装置も本発明の一つであり、その発明の構成は、
絶縁表面を有する基板上に、ゲート電極と、該上にゲート絶縁膜とを有し、
ゲート絶縁膜上には、珪化物気体と、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとのプラズマ反応により堆積された結晶構造を含む半導体膜を活性層として有するTFTを備えたことを特徴とする半導体装置である。
また、TFTのしきい値電圧の制御を行うため、活性層にボロンなどの半導体にp型を付与する元素を添加してもよく、他の発明の構成は、
絶縁表面を有する基板上に、ゲート電極と、該上にゲート絶縁膜とを有し、
ゲート絶縁膜上には、珪化物気体と、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとのプラズマ反応により堆積された結晶構造を含む半導体膜を活性層として有し、且つ、前記半導体膜にはp型を付与する元素がしきい値電圧を制御するために添加されているTFTを備えたことを特徴とする半導体装置である。
上記構成において、前記ゲート電極は、Ag、Al、Cu、Au、または樹脂を含むことを特徴としている。これらの耐熱性の低い材料でゲート電極を形成した後でも、SiH4とF2を原料ガスに用いたプラズマCVD法により低温での結晶構造を含む半導体膜の成膜を可能としている。
また、前記半導体装置は、図17(D)にその一例を示す映像音声双方向通信装置、または汎用遠隔制御装置である。
セミアモルファス半導体膜は、少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。セミアモルファス半導体膜については、ラマンスペクトルが単結晶に特有の520cm-1よりも低波数側にシフトしている。また、セミアモルファス半導体膜は、X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。また、セミアモルファス半導体膜は、未結合手(ダングリングボンド)の中和剤として水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。セミアモルファス半導体膜の作製方法としては、珪化物気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzとする。基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃とする。
膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物濃度は3×1021/cm3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以下とする。膜中の不純物元素を低減するには、原料ガスの純度、特にフッ素或いはフッ化ハロゲンガスの純度を上げることが望ましく、例えば、F2ガス(10%希釈)を純度3N以上のものを用いる、或いはキャリアガスを用いずにガス2系統とし、純度4N以上のバランスガスを用いたF2ガス(1%希釈)を用いることが好ましい。
なお、セミアモルファス半導体膜を活性層としたTFTの電界効果移動度μは、2〜20cm2/Vsecである。
また、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えば、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや、順スタガ型TFTを用いることが可能である。また、シングルゲート構造のTFTに限定されず、複数のチャネル形成領域を有するマルチゲート型TFT、例えばダブルゲート型TFTとしてもよい。
また、成膜装置のガス供給系の数を少なくするために、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスをクリーニング用ガスとして用いた後に成膜を行ってもよく、本発明の他の構成は、
成膜室にフッ素或いはフッ化ハロゲンガスをクリーニング用ガスとして導入して成膜室内部のクリーニングを行った後、
成膜室にモノシランガスと、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスとを原料ガスとして導入し、
プラズマを発生させて被処理基板表面上に成膜を行って結晶構造を含む半導体膜を形成する工程と、
結晶構造を含む半導体膜にレーザー光を照射して結晶構造を有する半導体膜を形成する工程と、を有することを特徴とする結晶構造を有する半導体膜の成膜方法である。
また、フッ素或いはフッ化ハロゲンガスに加え、CF4、SF6、NF3などを代表とするフッ素系ガスのクリーニング用ガスを用いてもよい。また、クリーニング用ガスとして、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4などを代表とする塩素系ガスを用いてもよい。
本発明により、安価な大面積の透明絶縁性基板上に、高速の成膜速度で特性の優れた結晶構造を含む半導体膜を低温で直接成膜することができる。特に、耐熱性の低い材料、例えば樹脂を含む金属配線をゲート電極とするTFTを作製する際、ゲート電極の耐熱温度を超えることなく、ゲート電極の上方に特性の優れた結晶構造を含む半導体膜を成膜し、TFTの活性層とすることができる。また、プラスチック基板にも結晶構造を含む半導体膜を直接成膜することができる。
本発明の実施形態について、以下に説明する。
(実施の形態1)
図1を用いて本発明で用いる平行平板型のプラズマCVD装置の処理室(チャンバーとも呼ぶ)の断面図を説明する。図1において、接地されたチャンバー108内には、高周波電源105に接続された第1の電極(上部電極、シャワー電極、高周波電極)121及び接地されている第2の電極(下部電極、接地電極)125が設けられている。第2の電極上に被処理基板127が設置される。
第1の電極121は、中空構造であって、供給系106aから供給される原料ガスが電極内を通過し、電離されチャンバー内に供給される。ここでは供給系が1系統しか図示していないが、必要に応じて複数のガス供給系を設けることが可能である。
また、チャンバーには、排気系107aが設けられ、反応後の排気ガスを排出する。なお、本実施の形態では、電極構造が中空構造(複数のシャワー板が重なりガスを分散する構造、いわゆるシャワーヘッド構造)となっているが、この構造に限られない。供給系が第1の電極と別に設けられていてもよい。また、供給系106a及び排気系107aには、バルブ(106c、107c)が設けられており、供給するガス圧及びチャンバー内の圧力を制御する。
ヒータ126は、第2の電極125と接して設けられているが、この構造に限られない。また、第1の電極121にヒータ(図示しない)を設けてもよい。また、チャンバーの外壁にヒータを設け、チャンバー内をホットウォール構造としてもよい。
また、チャンバーの側面には窓(図示しない)が設けられ、この窓を開閉して基板が収納されているカセット室からロボットアーム等の搬送機構を経由して基板をチャンバー内に移送することができる。
次に、図1を用いて、成膜方法を述べる。本実施の形態においては、ガラス基板に直接、結晶構造を有する珪素膜の成膜方法を説明する。
原料ガスに珪化物気体(モノシラン、ジシラン、トリシランなど)とフッ素(或いはフッ化ハロゲンガス)を用いる。フッ化ハロゲンガスとしては、ClF、ClF3、BrF、BrF3、IF、IF3などが挙げられる。中でも、モノシランガスとフッ素ガスとの組み合わせが安価なガスの組み合わせであり、量産に適している。ここでは、原料ガスにモノシランガスとフッ素ガスを用いた例で説明を行う。
また、他のフッ素系ガスとして、フッ素化モノシラン(SiHmFn:ただし、m+n=4)、四フッ化シラン(SiF4)を用いることもできるが、高価なガスとなる。また、Si−Hの結合(解離)エネルギーは76kcal/molであるのに比べ、Si−Fの結合(解離)エネルギーは142kcal/molと高いため、成膜に必要なエネルギーが高くなり、生産工程における消費エネルギーが増大してしまう。
また、成膜条件は、チャンバー内の圧力を1.33×101〜1.33×103Pa(1×10-1〜1×101torr)、成膜温度を80〜600℃とし、高周波電源の電源周波数を10〜500MHzとする。なお、被処理基板または下地膜として耐熱性の低い材料で形成されている場合には80〜300℃とする。
図1に示すように、チャンバー内に珪化物気体とフッ素を供給系より導入し、電源のスイッチ122を接続し、電極に高周波電圧を印加し、プラズマ123を発生させる。このプラズマ中で生成される珪化物又はフッ素のイオン、ラジカルなどの化学的に活性な励起種が反応して生成物である結晶構造を有する珪素膜124を形成する。
SiH3ラジカルの堆積による膜成長反応と、Fラジカルによる引き抜き(エッチング)反応とが競争的に起こることにより、Si膜ネットワークの再構成が起こり、結晶構造を含むシリコン膜が形成されると考えられる。
実際には多種多様な反応が存在するが、ここで、チャンバー内で生じる反応の一例を示す。
高周波による気体の分解反応は、数1と数2で表せる。
また、気相中の反応は、数3で表せる。
なお、数3で発生するSiH3ラジカルは一般にSi膜成長の主たる化学種と言われている。また、数3では、HFのような腐食性が高いフッ素系ガスが形成されるため、プラズマCVD装置においては、優れた耐腐食性を有する材料で装置内表面を覆うことが望ましい。
また、シリコン膜表面での水素原子引き抜き反応は、数4、数5、数6で表せる。
また、シリコン膜表面のダングリングボンドへの結合(エッチング反応)は、数7で表せる。
実際に成膜条件(ガス流量、RFパワー、電極間ギャップ)を振ってそれぞれ成膜を行い、それらの実験結果(膜厚速度、ラマン光学特性(ラマンピーク(Pc、Pa)、ラマン半値幅(Wc、Wa)、積分強度(Ic、Ia)など))を表1に示す。表面にはLPCVD法による酸化珪素膜100nmが予め形成されている被処理基板を用いた。なお、電極面積は380cm2、RF電源周波数は27MHz、上部ヒータ設定温度を65℃、下部ヒータ設定温度を300℃として成膜を行っている。
表1において、ラマン散乱分光法により得られたスペクトルを2つの指数関数型曲線に分離した際に低波数側曲線のピーク(曲線の中心位置)をPa、低波数側曲線のラマン半値幅をWa、低波数側曲線の積分強度をIaとしている。また、高波数側曲線のピークをPc、高波数側曲線のラマン半値幅をWc、高波数側曲線の積分強度をIcとしている。
表1より、300℃の低温でセミアモルファスシリコン膜、或いは微結晶シリコン膜、或いはマイクロクリスタルシリコン膜と呼べる結晶構造を含むシリコン膜が形成されていることが確認できる。得られた結晶構造を含むシリコン膜のPaは、487〜490cm-1、Pcは514〜517cm-1、且つ、Waは42〜47.3cm-1、Wcは9.6〜14.7cm-1にある薄膜である。また、成膜速度(堆積速度)も5nm/min〜20nm/minが得られている。なお、膜厚は10分間の成膜後のものである。
また、モノシランガスは100%、フッ素ガスはHeで希釈された混合ガスを用いており、フッ素含有率は10.1%、不純物(CF4、HF、空気など)のトータル含有率は0.1%未満であり、純度は99.9%である。
また、最も結晶化率が高いサンプル(試料9)のラマンスペクトルデータを図2に示す。
また、比較例として、成膜条件のうち、圧力を0.3Torrとしてアモルファスシリコン膜が形成された実験結果(比較試料1〜3)を表2に示す。これらの結果から、F2分圧、全圧、RFパワーはいずれも高くなるほど結晶化しやすい傾向が見られる。
また、上記実験では下地膜としてLPCVD法による酸化珪素膜上にセミアモルファスシリコン膜を形成しているが、下地膜としてPCVD法による窒化珪素膜上にセミアモルファスシリコン膜を形成しても同様のラマンスペクトルデータが得られた。
さらに、成膜条件を振って実験を行った結果を図18、図19、図20に示す。
図18は、SiH4ガス流量の条件(1sccm〜8sccm)を振り、左側の縦軸を成膜速度DR(Depo Rate)、右側の縦軸をIc/Iaとしたグラフである。加えてF2ガスも4sccmと、8sccmの2通りの条件を振っている。なお、グラフの横に他の成膜条件を示している。なお、F2ガスはHeで10%に希釈された混合ガスである。
図19は、電極間ギャップの条件(15mm〜35mm)を振り、左側の縦軸を成膜速度DR(Depo Rate)、右側の縦軸をIc/Iaとしたグラフである。なお、グラフの横に他の成膜条件を示している。
図20は、圧力の条件(0.3Torr〜1.0Torr)を振り、左側の縦軸を成膜速度DR(Depo Rate)、右側の縦軸をIc/Iaとしたグラフである。なお、グラフの横に他の成膜条件を示している。
また、ここではキャリアガスとしてArを用いて3系統のガス供給を行っているが、特にキャリアガスを用いなくともよく、2系統のガス供給のみで成膜を行うこともできる。数の少ないガス系統とすることで成膜条件を調節しやすくすることができる。
また、水素ガスを供給して3系統のガス供給を行ってもよいし、さらにキャリアガスを供給して4系統のガス供給を行ってもよい。ただし、水素ガスを供給する場合には、水素とフッ素の流量比(H2:F2)を1:10に制御、或いは、この比率よりも下げて水素の流量を少なくすることが好ましい。
また、図21(A)に断面TEM写真を示し、その模式図を図21(B)に示す。図21(A)に示したセミアモルファスシリコン膜の成膜条件は、SiH4ガス流量4sccm、F2ガス流量8sccm、Arガス流量500sccm、RFパワー100W、圧力1Torr、電極間ギャップ30mmとし、Ic/Iaは4.8であった。図21(A)に示されたように下地界面(下地絶縁膜との界面)にはアモルファス状態が確認できず、成膜開始から柱状の結晶構造を有するセミアモルファスシリコン膜が形成されていることがわかる。ボトムゲート型のTFTにおいて、下地界面付近の結晶性が高いほうがTFTの電界効果移動度を向上させることができるため、本発明のセミアモルファスシリコン膜は有効である。
本発明により、安価な大面積の透明絶縁性基板上に、高速の成膜速度で特性の優れた結晶構造を含む半導体膜を低温で直接成膜することができる。
また、得られたセミアモルファスシリコン膜に対してレーザー光を照射して結晶化率を高めてもよい。レーザー光に用いるレーザ発振器としては、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能なレーザ発振器を用いることができる。レーザー発振器としては、KrF、ArF、KrF、XeCl、Xe等のエキシマレーザ発振器、He、He−Cd、Ar、He−Ne、HF等の気体レーザ発振器、YAG、GdVO4、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶にCr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmをドープした結晶を使った固体レーザー発振器、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザ発振器を用いることができる。なお、固体レーザ発振器においては、基本波の第1高調波〜第5高調波を適用するのが好ましい。
代表的には、レーザー光として波長400nm以下のエキシマレーザ光や、YAGレーザの第2高調波、第3高調波を用いる。例えば、繰り返し周波数10Hz〜100MHz程度のパルスレーザー光を用い、当該レーザー光を光学系にて100〜500mJ/cm2に集光し、90〜95%のオーバーラップ率をもって照射し、セミアモルファスシリコン膜表面を走査させればよい。
(実施の形態2)
タクトタイムの向上や、膜厚の均一性向上を図るため、チャンバーの外壁にヒータを設け、チャンバー内をホットウォール構造としたチャンバーを縦方向に重ねて配置したプラズマCVD装置を用いても同様にして成膜を行うことができる。
図3にホットウォール構造としたチャンバーの一例を示す。図3に示すチャンバー208aは、実施の形態1とヒータの設置位置が異なっており、チャンバーの外壁にヒータ226を設け、チャンバー内をホットウォール構造としている。
図3において、208aは接地されたチャンバー、205aは高周波電源、221は原料ガスが電極内を通過する中空構造の第1の電極(上部電極、シャワー電極、高周波電極)、225は接地されている第2の電極(下部電極、接地電極)、206aは供給系、207aは排気系、206c、207cはバルブである。
なお、チャンバー構成に関する説明は、実施の形態1でも一部述べているので、同じ箇所は同一であるのでここでは詳細な説明を省略する。
図3に示したチャンバーを縦方向に重ねて配置したプラズマCVD装置の一例の斜視図を図4に示し、上面図を図5に示す。
図4および図5に示す成膜装置は、成膜室及び搬送室を有し、成膜室204a、204bの間に搬送室202bが配置され、搬送室202a、202bが隣接して配置された構造を有する。各成膜室には、縦方向に重ねて配置された10個のチャンバー208a、208bを具備し、各チャンバー208a、208bには、成膜ガスを供給する供給系206a、206b、排気ガスを排気する排気系207a、207b 及び電源205a、205bを具備する。
本装置は、各成膜室204a、204bにおいて、複数のチャンバー208a、208bの全ての供給系は、一つの供給源に接続されていることを特徴とする。同様に、複数のチャンバー208a、208bの全ての排気系は、一つの排気口に接続されていることを特徴とする。本特徴により、本装置では複数のチャンバー208a、208b を縦方向に重ねて配置しているにもかかわらず、供給系206a、206bと排気系207a、207bとを簡単に配置することができる。また、成膜室204a、204bには、各成膜室の圧力を減圧するための排気系(図示しない)が設けられている。チャンバー内の圧力と成膜室内の圧力とを制御することにより、成膜、及びチャンバー内のクリーニングを交互に行うことができ、効率良く成膜を行うことができる。
実施の形態1と同様に、珪化物気体(モノシラン、ジシラン、トリシランなど)とフッ素(或いはフッ化ハロゲンガス)を原料ガスとして導入し、プラズマを発生させて結晶構造を含む半導体膜を被処理基板に直接成膜することができる。
図5において、カセット室201a、201bには所望のサイズのガラス基板、プラスチック基板に代表される樹脂基板等の絶縁表面を有する基板がセットされる。基板の搬送方式として、図示する装置では水平搬送を採用するが、第五世代以降のメータ角の基板を用いる場合、搬送機の占有面積の低減を目的として、基板を縦置きにした縦形搬送を行ってもよい。
搬送室202a、202bの各々には、搬送機構(ロボットアーム)203a、203bが具備されている。搬送機構により、カセット室201a、201bにセットされた基板が各成膜室204a、204bに搬送される。そして、成膜室204a、204bのチャンバー208a、208bにおいて、搬送された基板の被処理面に対して所定の処理が行われる。また、図5において、搬送室が複数設けられているが、これは一つでもよい。
ここでは、数十枚の基板を一度に処理するバッチ式装置を例示したが、基板を一枚ずつ処理する枚葉式装置に本発明を適用することもできる。
図4に示すように、複数のチャンバーを有する成膜装置で成膜することにより、同時に多数の基板に同条件で形成される膜を形成することができる。このため、基板間のバラツキを低減することが可能となり、歩留まりを向上させることができる。また、スループットを向上することもできる。
また、本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
本実施例では、逆スタガ型TFTをスイッチング素子とするアクティブマトリクス型液晶表示装置の作製方法を示す。なお、図6は作製工程の断面を示している。
まず、基板610上に下地絶縁膜611を形成する。下地絶縁膜611として酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜(SiOxNy)等の絶縁膜を用いることが好ましい。なお、基板610は、無アルカリガラス基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。また、反射型の液晶表示装置とする場合、単結晶シリコンなどの半導体基板、ステンレスなどの金属基板、またはセラミック基板の表面に絶縁層を設けた基板を適用しても良い。
次いで、下地絶縁膜611上に膜厚100〜600nmの導電膜を形成する。導電膜としては、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、スカンジウム(Sc)、Nd、Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を組み合わせた合金膜(代表的には、Mo―W合金、Mo―Ta合金)を用いることができる。
次いで、フォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いてエッチングを行う。このエッチング工程によって、導電膜をエッチングして、導電層612、640を得る。なお、導電層612はTFTのゲート電極となり、導電層640は端子電極となる。後の工程で薄い半導体膜を形成するため、カバレッジ不良が生じないように導電層の端面形状はテーパー形状となるようにエッチングすることが好ましい。なお、ここでは図示しないが、保持容量を形成するための容量電極または容量配線をも形成する。
次いで、レジストマスクを除去した後、導電層を覆う絶縁膜613を形成する。絶縁膜613はプラズマCVD法またはスパッタ法を用いて得られる酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜(SiOxNy)等の絶縁膜単層または積層膜を用い、厚さを50〜200nmとする。例えば、下層を窒化シリコン膜とし、上層を酸化シリコン膜とする積層構造としても良い。なお、絶縁膜613はTFTのゲート絶縁膜となる。勿論、ゲート絶縁膜は上記材料に限定されず、酸化タンタル膜などの他の絶縁膜を用いても良い。ただし、絶縁膜613の成膜温度で導電層612、640がダメージを受けないようにする。
次いで、絶縁膜613上に50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の厚さで結晶構造を含む半導体膜614aを、プラズマCVD法を用い、実施の形態に示す方法で全面に形成する。本実施例では、SiH4ガスとF2ガスを原料ガスに用いてセミアモルファスシリコン膜を成膜する。実施の形態に従えば、高速の成膜速度でセミアモルファス半導体膜を低温で直接成膜することができる。なお、得られたセミアモルファスシリコン膜中に含まれるC、N、Oのそれぞれの濃度は、3×1021/cm3以下、好ましくは3×1020/cm3以下とする。また、得られたセミアモルファスシリコン膜中に含まれる水素濃度は、1×1021/cm3であり、アモルファスシリコン膜と同程度である。
次いで、結晶構造を含む半導体膜614a上に絶縁膜を全面に形成した後、パターニングを行ってチャネル保護膜616を形成する。通常のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングを行ってもよいし、導電層をマスクとする裏面露光法を用いて自己整合的にレジストマスクを形成してパターニングを行ってもよい。また、チャネル保護膜616としては、界面の清浄性を確保して、有機物や金属物、水蒸気などの不純物で半導体層が汚染されることを防ぐ効果を得るために、緻密な膜で形成することが好ましい。
次いで、半導体層をパターニングするため、フォトマスクを用いてレジストマスク615を形成する。(図6(A))次いで、エッチングを行い、TFTの活性層となる半導体層614bを形成する。
次いで、レジストマスクを除去した後、一導電型(n型またはp型)の不純物元素を含有する非晶質半導体膜617を20〜80nmの厚さで形成する。一導電型(n型またはp型)を付与する不純物元素を含む非晶質半導体膜617は、プラズマCVD法やスパッタ法などの公知の方法で全面に形成する。なお、一導電型(n型またはp型)を付与する不純物元素を含む非晶質半導体膜に代えて、一導電型(n型またはp型)を付与する不純物元素を含むセミアモルファス半導体膜としてもよい。本実施例では、非晶質半導体膜617としてn型を付与する不純物元素(リン)を含む非晶質半導体膜を用い、n+層(オーミックコンタクト層)とも呼ぶ。本実施例では、CVD法により、SiH4ガスと水素ガスとPH3(0.2%希釈)ガスとを原料ガスとして非晶質半導体膜617を得る。
次いで、金属材料からなる第1の導電膜をスパッタ法や真空蒸着法で形成する。第1の導電膜の材料としては、非晶質半導体膜617とオーミックコンタクトのとれる金属材料であれば特に限定されず、Al、Cr、Ta、Tiから選ばれた元素、または前記元素を成分とする合金か、前記元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。本実施例ではスパッタ法を用い、第1の導電膜として、50〜150nmの厚さで形成したTi膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム(Al)を300〜400nmの厚さで形成し、さらにその上にTi膜を100〜150nmの厚さで形成する。
次に、フォトリソグラフィー工程を行い、レジストマスク621を形成し、エッチングにより不要な部分を除去して配線(後の工程によりソース配線及びドレイン電極となる)618a、618bを形成する。(図6(B))
次いで、レジストマスクをそのまま用いて、一導電型を付与する不純物元素を含む非晶質半導体膜をエッチングしてソース領域またはドレイン領域619a、619bを形成する。本実施例ではn+層をソース領域またはドレイン領域と呼ぶ。次いで、レジストマスクを除去する。(図6(C))
次いで、層間絶縁膜622を形成する。層間絶縁膜622としては、透光性を有する無機材料(酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなど)、感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはこれらの積層などを用いる。また、層間絶縁膜622として用いることのできる他の材料膜は、塗布法によって得られるアルキル基を含むSiOx膜からなる絶縁膜、例えばシリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマーなどである。シロキサン系ポリマーの一例としては、東レ製塗布絶縁膜材料であるPSB−K1、PSB−K31や触媒化成製塗布絶縁膜材料であるZRS-5PHが挙げられる。
なお、必要がなければ、層間絶縁膜622は特に設けなくともよい。また、必要があれば保護膜を形成してもよい。
次いで、フォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、層間絶縁膜の一部をエッチングにより除去して開孔(コンタクトホール)を形成する。なお、開孔の底部は配線618a、618bに達している。なお、端子部においては、絶縁膜613の一部をも除去する。絶縁膜613の一部を除去する工程は、層間絶縁膜の形成前に行ってもよい。
次いで、レジストマスクを除去した後、全面に第2の導電膜を成膜する。次いでフォトマスクを用いて、第2の導電膜のパターニングを行い、画素電極623、端子電極644を形成する。(図6(D))本実施例では、透過型の液晶表示パネルを作製する場合であるので、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)などの透明導電膜を用い、画素電極623および端子電極644を形成する。
また、反射型の液晶表示パネルを作製する場合には、画素電極623および端子電極644をスパッタ法によりAg(銀)、Au(金)、Cu(銅)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)等の光反射性を有する金属材料を用いて形成すればよい。
なお、図7に画素部の一部を拡大した上面図を示す。また、図7は画素電極の形成途中を示しており、左側の画素においては画素電極が形成されているが、右側の画素においては画素電極を形成していない状態を示している。図7において、実線A−A’で切断した図が、図6(D)の画素部の断面と対応しており、図6(D)と対応する箇所には同じ符号を用いている。また、容量配線631が設けてあり、保持容量は、ゲート絶縁膜を誘電体とし、画素電極623と、該画素電極と重なる容量配線631とで形成されている。
以上の工程により、基板610上にボトムゲート型(逆スタガ型ともいう。)のTFTおよび画素電極が形成された液晶表示パネル用のTFT基板が完成する。
本実施例では、一つのTFTにおいて、ソース領域およびドレイン領域の間に二つのチャネル形成領域を有した構造(ダブルゲート構造)となっている。本実施例の活性層はセミアモルファスシリコン膜であり、アモルファスシリコン膜に比べてTFTのオフ電流が増加する問題がある。そこで、本実施例では、この問題を解決するためにダブルゲート構造としている。なお、本実施例はダブルゲート構造に限定されることなく、オフ電流のバラツキをさらに低減するために、トリプルゲート構造等のマルチゲート構造としても構わない。また、開口率を向上させるためにシングルゲート構造としてもよい。
次いで、画素電極623を覆うように、配向膜624aを形成する。なお、配向膜624aは、液滴吐出法やスクリーン印刷法やオフセット印刷法を用いればよい。その後、配向膜624aの表面にラビング処理を行う。
そして、対向基板625には、着色層626a、遮光層(ブラックマトリクス)626b、及びオーバーコート層627からなるカラーフィルタを設け、さらに透明電極からなる対向電極と、その上に配向膜624bを形成する。そして、閉パターンであるシール材(図示しない)を液滴吐出法により画素部と重なる領域を囲むように形成する。ここでは液晶を滴下するため、閉パターンのシール材を描画する例を示すが、開口部を有するシールパターンを設け、TFT基板を貼りあわせた後に毛細管現象を用いて液晶を注入するディップ式(汲み上げ式)を用いてもよい。
次いで、気泡が入らないように減圧下で液晶の滴下を行い、両方の基板を貼り合わせる。閉ループのシールパターン内に液晶を1回若しくは複数回滴下する。液晶の配向モードとしては、液晶分子の配列が光の入射から出射に向かって90°ツイスト配向したTNモードを用いる場合が多い。TNモードの液晶表示装置を作製する場合には、基板のラビング方向が直交するように貼り合わせる。
なお、一対の基板間隔は、球状のスペーサを散布したり、樹脂からなる柱状のスペーサを形成したり、シール材にフィラーを含ませることによって維持すればよい。上記柱状のスペーサは、アクリル、ポリイミド、ポリイミドアミド、エポキシの少なくとも1つを主成分とする有機樹脂材料、もしくは酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のいずれか一種の材料、或いはこれらの積層膜からなる無機材料であることを特徴としている。
次いで、基板の分断を行う。多面取りの場合、それぞれのパネルを分断する。また、1面取りの場合、予めカットされている対向基板を貼り合わせることによって、分断工程を省略することもできる。
そして、異方性導電体層645を介し、公知の技術を用いてFPC646を貼りつける。以上の工程で液晶モジュールが完成する。(図6(E))また、必要があれば光学フィルムを貼り付ける。透過型の液晶表示装置とする場合、偏光板は、アクティブマトリクス基板と対向基板の両方に貼り付ける。
以上示したように、本実施例では、活性層となるセミアモルファスシリコン膜をプラズマCVD法で成膜温度300℃、成膜速度5nm/min〜20nm/minを実現し、低温、且つ、短時間で成膜することによりコストの低減、および工程時間の短縮を図ることができる。また、1辺が1000mmを超える第5世代以降のガラス基板を用いても、容易に液晶表示パネルを製造することができる。
本実施例では、チャネルエッチ型のTFTを用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置の作製例を示す。なお、図8は本実施例の作製工程の断面を示している。
まず、実施例1と同様に、基板510上に下地絶縁膜511、導電層512、端子部に伸びる配線540を形成し、さらにゲート絶縁膜となる絶縁膜513を形成する。
次いで、半導体膜514a、n+層515aを積層形成する。半導体膜514aは、実施の形態1または実施の形態2に示した成膜方法で得られるセミアモルファス半導体膜を用いる。また、n+層515aは、シランガスとフォスフィンガスを用いたPCVD法で形成すれば良く、アモルファス半導体膜、或いはセミアモルファス半導体膜で形成することができる。なお、PCVD法を用いてゲート絶縁膜513、半導体膜514a、n+層515aを大気にさらすことなく連続的に成膜することも可能である。大気に曝さないようにすることで不純物の混入を防止できる。
次いで、半導体層をパターニングするためのマスク517をフォトマスクを用いて形成する。(図8(A))
次いで、マスク517で覆われた領域以外の半導体膜514aおよびn+層515aをドライエッチングまたはウェットエッチングにより除去して活性層となる半導体層を形成する。
次いで、マスク517を除去した後、絶縁膜513を選択的に除去するためのマスク521をフォトマスクを用いて形成する。次いで、マスク521で覆われた領域以外の絶縁膜513をドライエッチングまたはウェットエッチングにより除去して開孔(コンタクトホール)を形成する。(図8(B))
次いで、マスクを除去した後、金属材料からなる第1の導電膜をスパッタ法や真空蒸着法で形成する。第1の導電膜の材料としては、非晶質半導体膜515aとオーミックコンタクトのとれる金属材料であれば特に限定されず、Al、Cr、Ta、Tiから選ばれた元素、または前記元素を成分とする合金か、前記元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。本実施例ではスパッタ法を用い、第1の導電膜として、50〜150nmの厚さで形成したTi膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム(Al)を300〜400nmの厚さで形成し、さらにその上にTi膜を100〜150nmの厚さで形成する。
次に、フォトリソグラフィー工程を行ってマスクを形成し、エッチングにより不要な部分を除去して配線516、541を形成する。(図8(C))
次いで、ゲート電極である導電層512と絶縁膜513を介して重なる半導体層の一部を除去するためのマスクを形成し、エッチングを行う。エッチングにより、導電層512と絶縁膜513を介して重なる一部が除去された半導体層514cを形成すると同時にn+層519a、519bと、配線(後の工程によりソース配線及びドレイン電極となる)518a、518bを形成する。この段階でチャネルエッチ型のTFTが完成する。
次いで、層間絶縁膜522を形成する。層間絶縁膜522としては、透光性を有する無機材料、感光性または非感光性の有機材料、塗布法によって得られるアルキル基を含むSiOx膜からなる絶縁膜、またはこれらの積層などを用いる。
なお、必要がなければ、層間絶縁膜522は特に設けなくともよい。また、必要があれば層間絶縁膜522を形成する前に保護膜を形成してもよい。
次いで、フォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、層間絶縁膜の一部をエッチングにより除去して開孔(コンタクトホール)を形成する。なお、開孔の底部は配線518a、518b、541に達している。
次いで、レジストマスクを除去した後、全面に第2の導電膜を成膜する。次いでフォトマスクを用いて、第2の導電膜のパターニングを行い、画素電極523、端子電極544を形成する。(図8(D))
以上の工程により、基板510上にボトムゲート型(逆スタガ型ともいう。)のTFTおよび画素電極が形成された液晶表示パネル用のTFT基板が完成する。
以降の工程は、実施例1と同様に行えばよい。本実施例は実施例1とTFT構造が異なるだけで他の構成は同一である。
次いで、画素電極523を覆うように、配向膜524aを形成する。なお、配向膜524aは、液滴吐出法やスクリーン印刷法やオフセット印刷法を用いればよい。その後、配向膜524aの表面にラビング処理を行う。
そして、対向基板525には、着色層526a、遮光層(ブラックマトリクス)526b、及びオーバーコート層527からなるカラーフィルタを設け、さらに透明電極からなる対向電極と、その上に配向膜524bを形成する。そして、閉パターンであるシール材(図示しない)を液滴吐出法により画素部と重なる領域を囲むように形成する。
次いで、気泡が入らないように減圧下で液晶の滴下を行い、両方の基板を貼り合わせる。なお、一対の基板間隔は、球状のスペーサを散布したり、樹脂からなる柱状のスペーサを形成したり、シール材にフィラーを含ませることによって維持すればよい。次いで、基板の分断を行う。
そして、異方性導電体層545を介し、公知の技術を用いてFPC546を貼りつける。以上の工程で液晶モジュールが完成する。(図8(E))
本実施例では、実施の形態1、実施の形態2、または実施例1と自由に組み合わせることができる。
本実施例では、反射型の液晶表示装置の作製例を図9に示す。
TFTの作製工程の途中までは実施例2と同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、層間絶縁膜を形成する前までの工程は、実施例2と同一である。
まず、実施例2と同様に、基板上に下地絶縁膜、導電層、端子部に伸びる配線を形成し、さらにゲート絶縁膜となる絶縁膜を形成する。次いで、半導体膜、n+層を積層形成する。なお、半導体膜は、実施の形態1または実施の形態2に示した成膜方法で得られるセミアモルファス半導体膜を用いる。次いで、半導体層をパターニングするためのマスクをフォトマスクを用いて形成する。次いで、マスクで覆われた領域以外の半導体膜およびn+層をドライエッチングまたはウェットエッチングにより除去して活性層となる半導体層を形成する。次いで、マスクを除去した後、絶縁膜を選択的に除去するためのマスクをフォトマスクを用いて形成する。次いで、マスクで覆われた領域以外の絶縁膜をドライエッチングまたはウェットエッチングにより除去して開孔(コンタクトホール)を形成する。次いで、マスクを除去した後、金属材料からなる第1の導電膜をスパッタ法や真空蒸着法で形成する。次に、フォトリソグラフィー工程を行ってマスクを形成し、エッチングにより不要な部分を除去して配線を形成する。次いで、ゲート電極である導電層と絶縁膜を介して重なる半導体層の一部を除去するためのマスクを形成し、エッチングを行う。このエッチングにより、導電層と絶縁膜を介して重なる一部が除去された半導体層714を形成すると同時にn+層719a、719bと、配線(後の工程によりソース配線及びドレイン電極となる)718a、718bを形成する。
次いで、層間絶縁膜722aを形成する。層間絶縁膜722aは感光性化合物を含む有機樹脂を用いる。第1のマスクによって露光現像を行い、コンタクトホールを形成した後、遮光パターン721が配置された第2のマスクを用いて露光を行う。(図9(B))なお、2回目の露光量を少なくすることで深さの浅い領域のみを感光させる。また、少なくとも遮光パターンの一部はコンタクトホールの部分と重なるようにする。
次いで、現像を行って表面に凹凸を有する層間絶縁膜722bを形成する。。(図9(C))露光時の光散乱のため、層間絶縁膜722b表面に凹凸が形成される
次いで、画素電極723および端子電極744をスパッタ法または蒸着法によりAl(アルミニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、W(タングステン)等の光反射性を有する金属材料を用いて形成した後、パターニングする。画素部においては、層間絶縁膜の凹凸に沿って形成されるため、画素電極723の表面は凹凸が形成される。この画素電極723表面の凹凸により、鏡面反射を防ぎ、反射光を散乱させることによって白色度を増加させる。なお、凹凸の大きさは均一である例を示したが、特に限定されず、凹凸の大きさはランダムであるほうが、より反射光を散乱させるため望ましい。また、径方向の断面が多角形であってもよいし、左右対称でない形状であってもよい。
以上の工程により、基板上にボトムゲート型(逆スタガ型ともいう。)のTFTおよび反射電極が形成された液晶表示パネル用のTFT基板が完成する。
次いで、画素電極723を覆うように、配向膜724aを形成する。なお、配向膜724aは、液滴吐出法やスクリーン印刷法やオフセット印刷法を用いればよい。その後、配向膜724aの表面にラビング処理を行う。
そして、対向基板725には、着色層726a、遮光層(ブラックマトリクス)726b、及びオーバーコート層727からなるカラーフィルタを設け、さらに透明電極からなる対向電極と、その上に配向膜724bを形成する。そして、閉パターンであるシール材(図示しない)を液滴吐出法により画素部と重なる領域を囲むように形成する。
次いで、気泡が入らないように減圧下で液晶の滴下を行い、両方の基板を貼り合わせる。なお、一対の基板間隔は、球状のスペーサを散布したり、樹脂からなる柱状のスペーサを形成したり、シール材にフィラーを含ませることによって維持すればよい。次いで、基板の分断を行う。
そして、異方性導電体層745を介し、公知の技術を用いてFPC746を貼りつける。以上の工程で液晶モジュールが完成する。(図9(D))反射型の液晶表示装置とする場合であるので、偏光板などの光学フィルムは、対向基板の側のみに貼り付ける。
本実施例では、実施の形態1、実施の形態2、実施例1、または実施例2と自由に組み合わせることができる。
本実施例では、液晶滴下に液滴吐出法を用いる例を示す。本実施例では、大面積基板を用い、パネル4枚取りの作製例を図10に示す。
図10(A)は、ディスペンサ(またはインクジェット)による液晶層形成の途中の断面図を示しており、シール材1112で囲まれた画素部1111を覆うように液晶材料1114を液滴吐出装置1116のノズル1118から吐出、噴射、または滴下させている。液滴吐出装置1116は、図10(A)中の矢印方向に移動させる。なお、ここではノズル1118を移動させた例を示したが、ノズルを固定し、基板を移動させることによって液晶層を形成してもよい。
また、図10(B)には斜視図を示している。シール1112で囲まれた領域のみに選択的に液晶材料1114を吐出、噴射、または滴下させ、ノズル走査方向1113に合わせて滴下面1115が移動している様子を示している。
また、図10(A)の点線で囲まれた部分1119を拡大した断面図が図10(C)、図10(D)である。液晶材料の粘性が高い場合は、連続的に吐出され、図10(C)のように繋がったまま付着される。一方、液晶材料の粘性が低い場合には、間欠的に吐出され、図10(D)に示すように液滴が滴下される。
なお、図10(C)中、1120は逆スタガ型TFT、1121は画素電極をそれぞれ指している。画素部1111は、マトリクス状に配置された画素電極と、該画素電極と接続されているスイッチング素子、ここでは逆スタガ型TFTと、保持容量(図示しない)とで構成されている。
ここで、図11(A)〜図11(D)を用いて、パネル作製の流れを以下に説明する。
まず、絶縁表面に画素部1034が形成された第1基板1035を用意する。第1基板1035は、予め、配向膜の形成、ラビング処理、球状スペーサ散布、或いは柱状スペーサ形成、またはカラーフィルタの形成などを行っておく。次いで、図11(A)に示すように、不活性気体雰囲気または減圧下で第1基板1035上にディスペンサ装置またはインクジェット装置でシール材1032を所定の位置(画素部1034を囲むパターン)に形成する。半透明なシール材1032としてはフィラー(直径6μm〜24μm)を含み、且つ、粘度40〜400Pa・sのものを用いる。なお、後に接する液晶に溶解しないシール材料を選択することが好ましい。シール材としては、アクリル系光硬化樹脂やアクリル系熱硬化樹脂を用いればよい。また、簡単なシールパターンであるのでシール材32は、印刷法で形成することもできる。
次いで、シール材1032に囲まれた領域に液晶1033をインクジェット法により滴下する。(図11(B))液晶1033としては、インクジェット法によって吐出可能な粘度を有する公知の液晶材料を用いればよい。また、液晶材料は温度を調節することによって粘度を設定することができるため、インクジェット法に適している。インクジェット法により無駄なく必要な量だけの液晶1033をシール材1032に囲まれた領域に保持することができる。
次いで、画素部1034が設けられた第1基板1035と、対向電極や配向膜が設けられた第2基板1031とを気泡が入らないように減圧下で貼りあわせる。(図11(C))ここでは、貼りあわせると同時に紫外線照射や熱処理を行って、シール材1032を硬化させる。なお、紫外線照射に加えて、熱処理を行ってもよい。
また、図12に貼り合わせ時または貼り合わせ後に紫外線照射や熱処理が可能な貼り合わせ装置の例を示す。
図12中、1041は第1基板支持台、1042は第2基板支持台、1044は窓、1048は下側定盤、1049は光源である。なお、図12において、図11と対応する部分は同一の符号を用いている。
下側定盤1048は加熱ヒータが内蔵されており、シール材を硬化させる。また、第2基板支持台には窓1044が設けられており、光源1049からの紫外光などを通過させるようになっている。ここでは図示していないが窓1044を通して基板の位置アライメントを行う。また、対向基板となる第2の基板1031は予め、所望のサイズに切断しておき、台1042に真空チャックなどで固定しておく。図12(A)は貼り合わせ前の状態を示している。
貼り合わせ時には、第1基板支持台と第2基板支持台とを下降させた後、圧力をかけて第1基板1035と第2基板1031を貼り合わせ、そのまま紫外光を照射することによって硬化させる。貼り合わせ後の状態を図12(B)に示す。
次いで、スクライバー装置、ブレイカー装置、ロールカッターなどの切断装置を用いて第1基板1035を切断する。(図11(D))こうして、1枚の基板から4つのパネルを作製することができる。そして、公知の技術を用いてFPCを貼りつける。
なお、第1基板1035、第2基板1031としてはガラス基板、またはプラスチック基板を用いることができる。
以上の工程によって得られた液晶モジュールの上面図を図13(A)に示すとともに、他の液晶モジュールの上面図の例を図13(B)に示す。
図13(A)中、1201は、アクティブマトリクス基板、1206は対向基板、1204は画素部、1207はシール材、1205はFPCである。なお、液晶を液滴吐出法により吐出させ、減圧下で一対の基板1201、1206をシール材1207で貼り合わせている。
セミアモルファスシリコン膜からなる活性層を有するTFTを用いた場合、駆動回路の一部を作製することもでき、図13(B)のような液晶モジュールを作製することができる。なお、セミアモルファスシリコン膜からなる活性層を有するTFTで形成できない駆動回路は、ICチップ(図示しない)を実装する。
図13(B)中、1211は、アクティブマトリクス基板、1216は対向基板、1212はソース信号線駆動回路、1213はゲート信号線駆動回路、1214は画素部、1217は第1シール材、1215はFPCである。なお、液晶を液滴吐出法により吐出させ、一対の基板1211、1216を第1シール材1217および第2シール材で貼り合わせている。駆動回路部1212、1213には液晶は不要であるため、画素部1214のみに液晶を保持させており、第2シール材1218はパネル全体の補強のために設けられている。
また、得られた液晶モジュールにバックライト1304、導光板1305を設け、カバー1306で覆えば、図14にその断面図の一部を示したようなアクティブマトリクス型液晶表示装置(透過型)が完成する。なお、カバーと液晶モジュールは接着剤や有機樹脂を用いて固定する。また、透過型であるので偏光板1303は、アクティブマトリクス基板と対向基板の両方に貼り付ける。
なお、図14中、1300は基板、1301は画素電極、1302は柱状スペーサ、1307はシール材、1320は着色層、遮光層が各画素に対応して配置されたカラーフィルタ、1321は対向電極、1322、1323は配向膜、1324は液晶層、1319は保護膜である。
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1乃至3のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
本実施例では、薄膜トランジスタを有する発光装置について図15に説明する。
図15(A)に示すように、駆動回路部310及び画素部311に、セミアモルファスシリコン膜を活性層とするトップゲート型のNチャネル型TFTを形成する。特に、画素部311に形成された発光素子と接続されるNチャネル型TFTは、駆動用TFT301と表記する。駆動用TFT301が有する電極(第1の電極と表記する)の端部を覆うように、土手や隔壁と呼ばれる絶縁膜302を形成する。絶縁膜302には、無機材料(酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなど)、感光性又は非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン)、珪素(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む、又は置換基にフッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料、いわゆるシロキサン、及びそれらの積層構造を用いることができる。有機材料として、ポジ型感光性有機樹脂又はネガ型感光性有機樹脂を用いることができる。
第1の電極上において、絶縁膜302に開口部を形成する。開口部には、電界発光層303が設けられ、電界発光層及び絶縁膜302を覆うように発光素子の第2の電極304が設けられる。
なお電界発光層が形成する分子励起子の種類としては一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、基底状態は通常一重項状態であるため、一重項励起状態からの発光は蛍光、三重項励起状態からの発光は燐光と呼ばれる。電界発光層からの発光とは、どちらの励起状態が寄与する場合も含まれる。更には、蛍光と燐光を組み合わせて用いてもよく、各RGBの発光特性(発光輝度や寿命等)により選択することができる。
電界発光層303は、第1の電極215側から順に、HIL(ホール注入層)、HTL(ホール輸送層)、EML(発光層)、ETL(電子輸送層)、EIL(電子注入層)の順に積層されている。なお電界発光層は、積層構造以外に単層構造、又は混合構造をとることができる。
また、電界発光層303として、フルカラー表示とする場合、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料を、それぞれ蒸着マスクを用いた蒸着法、又はインクジェット法などによって選択的に形成すればよい。
具体的には、HILとしてCuPcやPEDOT、HTLとしてα−NPD、ETLとしてBCPやAlq3、EILとしてBCP:LiやCaF2をそれぞれ用いる。また例えばEMLは、R、G、Bのそれぞれの発光色に対応したドーパント(Rの場合DCM等、Gの場合DMQD等)をドープしたAlq3を用いればよい。なお、電界発光層は上記積層構造の材料に限定されない。例えば、CuPcやPEDOTの代わりに酸化モリブデン(MoOx:x=2〜3)等の酸化物とα−NPDやルブレンを共蒸着して形成し、ホール注入性を向上させることもできる。このような材料は、有機材料(低分子又は高分子を含む)、又は有機材料と無機材料の複合材料を用いることができる。
また白色の発光を示す電界発光層を形成する場合、カラーフィルター、又はカラーフィルター及び色変換層などを別途設けることによってフルカラー表示を行うことができる。カラーフィルターや色変換層は、例えば第2の基板(封止基板)に設けた後、張り合わせればよい。カラーフィルターや色変換層はインクジェット法により形成することができる。勿論、白色以外の発光を示す電界発光層を形成して単色の発光装置を形成してもよい。また単色表示が可能なエリアカラータイプの表示装置を形成してもよい。
また第1の電極及び第2の電極304は仕事関数を考慮して材料を選択する必要がある。但し第1の電極及び第2の電極は、画素構成によりいずれも陽極、又は陰極となりうる。本実施例では、駆動用TFTの極性がNチャネル型であるため、第1の電極を陰極、第2の電極を陽極とすると好ましい。また駆動用TFTの極性がpチャネル型である場合、第1の電極を陽極、第2の電極を陰極とするとよい。
特に本実施例では、駆動用TFTの極性がNチャネル型であるため、電子の移動方向を考慮すると、第1の電極を陰極、EIL(電子注入層)、ETL(電子輸送層)、EML(発光層)、HTL(ホール輸送層)、HIL(ホール注入層)、第2の電極を陽極とすると好ましい。
その後、窒素を含むパッシベーション膜又はDLC等をスパッタリング法やCVD法により形成するとよい。その結果、水分や酸素の侵入を防止することができる。また第1の電極、第2の電極、その他の電極により、表示手段の側面を覆って酸素や水分の侵入を防ぐこともできる。次いで、封止基板を張り合わせる。封止基板により形成される空間には、窒素を封入したり、乾燥剤を配置してもよい。また透光性を有し、吸水性の高い樹脂を充填してもよい。
またコントラストを高めるため、偏光板又は円偏光板を設けてもよい。例えば、表示面の一面又は両面に偏光板、若しくは円偏光板を設けることができる。
このように形成された構造を有する発光装置において、本実施例では第1の電極及び第2の電極に透光性を有する材料(ITO若しくはITSO)を用いる。そのため、信号線から入力されるビデオ信号に応じた輝度で電界発光層から光が両矢印方向305、306に出射する。
また、図15(A)とは一部構成が異なる他の構造例を図15(B)に示す。
図15(B)に示す発光装置の構造は、駆動回路部310及び画素部311に、チャネルエッチ型のNチャネル型TFTを形成する。チャネルエッチ型のNチャネル型TFTの作製方法は、実施例2に示している。
図15(A)と同様に、画素部311に形成された発光素子と接続されるNチャネル型TFTは、駆動用TFT301と表記する。第1の電極は非透光性、好ましくは反射性の高い導電膜とし、第2の電極304は透光性を有する導電膜とする点が図15(A)と異なる。そのため、光の射出方向305は封止基板側のみである。
また、図15(A)とは一部構成が異なる他の構造例を図15(C)に示す。
図15(C)に示す発光装置の構造は、駆動回路部310及び画素部311に、チャネル保護型のNチャネル型TFTを形成する。チャネル保護型のNチャネル型TFTの作製方法は実施例1に示している。
図15(A)と同様に、画素部311に形成された発光素子と接続されるNチャネル型TFTは、駆動用TFT301と表記する。第1の電極は透光性を有する導電膜とし、第2の電極304は非透光性、好ましくは反射性の高い導電膜とする点が図15(A)と異なる。そのため、光の出射方向306が基板側のみである。
以上、各薄膜トランジスタを用いて発光装置の構造について説明したが、薄膜トランジスタの構成と、発光装置の構造はどのように組み合わせてもよい。
また、発光装置の等価回路図及び上面図を図16に説明する。TFTはゲート、ソース、ドレインの3端子を有するが、ソース端子(ソース電極)、ドレイン端子(ドレイン電極)に関しては、トランジスタの構造上、明確に区別が出来ない。よって、素子間の接続について説明する際は、ソース電極、ドレイン電極のうち一方を第1の電極、他方を第2の電極と表記する。
図16(A)には、発光装置の画素部の等価回路図を示す。一画素は、スイッチング用のTFT(スイッチ用TFT)1600、駆動用のTFT(駆動用TFT)1601、電流制御用のTFT(電流制御用TFT)1602を有し、これらTFTはNチャネル型を有する。スイッチング用TFT1600の一方の電極及びゲート電極は、それぞれ信号線1603及び走査線1605に接続されている。電流制御用TFT1602の一方の電極は第1の電源線1604に接続され、ゲート電極はスイッチング用TFTの他方の電極に接続されている。
容量素子1608は、電流制御用TFTのゲート・ソース間の電圧を保持するように設ければよい。本実施例において、例えば第1の電源線の電位を低電位とし、発光素子を高電位とすると、電流制御用TFTはNチャネル型を有するため、ソース電極と第1の電源線とが接続する。そのため、容量素子は電流制御用TFTのゲート電極と、ソース電極、つまり第1の電源線との間に設けることができる。なお、スイッチング用TFT、駆動用TFT、又は電流制御用TFTのゲート容量が大きく、各TFTからのリーク電流が許容範囲である場合、容量素子1608は設ける必要はない。
駆動用TFT1601の一方の電極は、電流制御用TFTの他方の電極に接続され、ゲート電極は第2の電源線1606に接続されている。第2の電源線1606は、固定電位を有する。そのため、駆動用TFTのゲート電位を固定電位とすることができ、寄生容量や配線容量によるゲート・ソース間の電圧Vgsが変化しないように動作させることができる。
そして駆動用TFTの他方の電極に発光素子1607が接続されている。本実施の形態において、例えば第1の電源線の電位を低電位とし、発光素子を高電位とすると、駆動用TFTのドレイン電極に発光素子の陰極が接続される。そのため、上述したように、陰極、電界発光層、陽極の順に積層すると好ましい。このように、セミアモルファス半導体膜を有するTFTであって、Nチャネル型を有する場合、TFTのドレイン電極と陰極とを接続し、EIL、ETL、EML、HTL、HIL、陽極の順に積層すると好適である。
以下に、このような画素回路の動作について説明する。
走査線1605が選択されるとき、スイッチング用TFTがオンとなると、容量素子1608に電荷が蓄積されはじめる。容量素子1608の電荷は、電流制御用TFTのゲート・ソース間電圧と等しくなるまで蓄積される。等しくなると、電流制御用TFTがオンとなり、直列に接続された駆動用TFTがオンとなる。このとき、駆動用TFTのゲート電位が固定電位となっているため、発光素子へ寄生容量や配線容量によらない一定のゲート・ソース間電圧Vgsを印加する、つまり一定のゲート・ソース間電圧Vgs分の電流を供給することができる。
このように、発光素子は電流駆動型の素子であるため、画素内のTFTの特性バラツキ、特にVthバラツキが少ない場合アナログ駆動を用いることが好適である。本実施の形態のように、非晶質半導体膜を有するTFTは、特性バラツキが低いため、アナログ駆動を用いることができる。一方デジタル駆動でも、駆動用TFTを飽和領域(|Vgs−Vth|<|Vds|を満たす領域)で動作させることで、一定の電流値を発光素子に供給することができる。
図16(B)には、上記等価回路を有する発光装置の画素部における上面図の一例を示す。
まず、公知の方法により、各TFTのゲート電極、走査線、及び第2の電源線を同一層で形成する。
図示しないが、その後ゲート絶縁膜を形成する。
そしてゲート絶縁膜上に各TFTの半導体膜を形成する。本実施例ではSiH4とF2を原料ガスに用いたプラズマCVD法により全面にセミアモルファス半導体膜を形成し、マスクを用いてエッチングを行い、各TFTの活性層とする。そして一導電型を有する半導体膜をプラズマCVD法により形成し、マスクを用いてエッチングを行い、各TFTのソース領域またはドレイン領域とする。
そしてソース電極、ドレイン電極、信号線及び第1の電源線を同一層で形成する。ソース電極、ドレイン電極、信号線及び第1の電源線は、スパッタ法等により形成することができる。
スイッチング用TFTの一方の配線と、電流制御用TFTのゲート電極を接続するために、ゲート絶縁膜にコンタクトホールを形成する。
本実施例において、容量素子1608は、ゲート絶縁膜を介して設けられたゲート配線、及びソース・ドレイン配線により形成されている。
駆動用TFTの一方の電極と接続するように発光素子1607の電極1610を形成する。
駆動用TFTは非晶質半導体膜を有するため、駆動用TFTのチャネル幅(W)が広くなるように設計する。
このようにして、発光装置の画素部を形成することができる。
本発明により、低い成膜温度でSiH4とF2を原料ガスに用いたPCVD法により得られるセミアモルファス半導体膜をTFTの活性層とすることによって、比較的安価な発光装置を実現できる。
本実施例は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
本発明の液晶表示装置、発光装置、及び電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機又は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。特に、大型画面を有する大型テレビ等に本発明を用いることが望ましい。それら電子機器の具体例を図17に示す。
図17(A)は22インチ〜50インチの大画面を有する大型の表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、ビデオ入力端子2005等を含む。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、双方向TV用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。本発明により、1辺が1000mmを超える第5世代以降のガラス基板を用いても、低い成膜温度でSiH4とF2を原料ガスに用いたPCVD法により得られるセミアモルファス半導体膜をTFTの活性層とすることによって、比較的安価な大型表示装置を実現できる。
図17(B)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明により、低い成膜温度でSiH4とF2を原料ガスに用いたPCVD法により得られるセミアモルファス半導体膜をTFTの活性層とすることによって、比較的安価なノート型パーソナルコンピュータを実現できる。
図17(C)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示する。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。本発明により、低い成膜温度でSiH4とF2を原料ガスに用いたPCVD法により得られるセミアモルファス半導体膜をTFTの活性層とすることによって、比較的安価な画像再生装置を実現できる。
図17(D)は、ワイヤレスでディスプレイのみを持ち運び可能なTVである。筐体2602にはバッテリー及び信号受信器が内蔵されており、そのバッテリーで表示部2604やスピーカ部2607を駆動させる。バッテリーは充電器2600で繰り返し充電が可能となっている。また、充電器2600は映像信号を送受信することが可能で、その映像信号をディスプレイの信号受信器に送信することでができる。筐体2602は操作キー2606によって制御する。また、図17(D)に示す装置は、操作キー2606を操作することによって、筐体2602から充電器2600に信号を送ることも可能であるため映像音声双方向通信装置とも言える。また、操作キー2606を操作することによって、筐体2602から充電器2600に信号を送り、さらに充電器2600が送信できる信号を他の電子機器に受信させることによって、他の電子機器の通信制御も可能であり、汎用遠隔制御装置とも言える。本発明により、低い成膜温度でSiH4とF2を原料ガスに用いたPCVD法により得られるセミアモルファス半導体膜をTFTの活性層とすることによって、比較的大型(22インチ〜50インチ)の持ち運び可能なTVを安価な製造プロセスで提供できる。
以上の様に、本発明を実施して得た液晶表示装置や発光装置は、あらゆる電子機器の表示部として用いても良い。
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1乃至5のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
本発明により、結晶構造を含む半導体膜の形成に必要なトータルエネルギーを低減し、生産工程における消費エネルギーを大幅に抑制することができる。
また、下地膜として耐熱性の低い材料で形成される膜、代表的にはアクリルなどの有機樹脂、アルミニウム配線等を用いた場合にも直接、プラズマCVD法を用いて結晶構造を含む半導体膜を形成することを実現可能とする。
プラズマCVD装置を示す断面図である。
ラマンスペクトルデータを示すグラフである。
プラズマCVD装置を示す断面図である。(実施の形態2)
プラズマCVD装置を示す斜視図である。
プラズマCVD装置を示す上面図である。
液晶表示装置の作製工程の断面図である。(実施例1)
液晶表示装置の画素上面図を示す図である。(実施例1)
液晶表示装置の作製工程の断面図である。(実施例2)
液晶表示装置の作製工程の断面図である。(実施例3)
液晶滴下を液滴吐出法で行う斜視図および断面図である。
プロセス上面図を示す図。
貼りあわせ装置および貼りあわせ工程を示す断面図。
液晶モジュールの上面図。
アクティブマトリクス型液晶表示装置を示す断面図。
発光装置の断面構造を示す図。(実施例5)
発光装置の画素における回路図および画素上面図を示す図。(実施例5)
電子機器の一例を示す図。
SiH4ガス流量と成膜速度とIc/Iaとの関係を示すグラフである。
ギャップ間隔と成膜速度とIc/Iaとの関係を示すグラフである。
成膜圧力と成膜速度とIc/Iaとの関係を示すグラフである。
基板上に成膜されたセミアモルファスシリコン膜の断面TEM写真である。
符号の説明
108:チャンバー
105:高周波電源
123:プラズマ