JP4577922B2 - 車両用鞍乗り型シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動二輪車や三輪車等の車両に配置された鞍乗り型シート、特に、
運転者腰当部が配置された車両用鞍乗り型シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からこの種のものとしては、運転者の運転姿勢を安定させるために、例えば、運転者の体形の大小に合わせて運転者腰当部を移動可能なシート調整装置、添乗者の着座姿勢が運転者に密着する姿勢に設定された自動二輪車に適応可能なシート調整装置が提案されている(特公昭62ー010220号参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のものにあっては、運転者腰当部を兼ねた添乗者着座部を移動させているため、外観イメージの変化が大きく、その移動のための構造が大型化してしまう。
【0004】
また、添乗者着座部の前面を運転者腰当部としたため、運転者着座面と添乗者着座面の段差が大きく、高速走行時、添乗者に直接走行風があたり空気抵抗が増大するだけでなく、添乗者の疲労も増加する。又、運転者の肘と添乗者の膝との干渉を考慮すると、密着性が低下する虞がある。
【0005】
さらに、運転者着座面と添乗者着座面の段差を小さくしようとすると、添乗者のクッション部分の厚みが減少し、添乗者の乗り心地が悪化する。
【0006】
さらにまた、運転者着座部と添乗者着座部の下方に収納ボックスを設けることが望まれている。
【0007】
そこで、この発明は、簡単な構造でありながら、添乗者の乗り心地を確保しつつ、運転者と添乗者との密着度を向上させることができる車両用鞍乗り型シートを提供することを課題としている。
【0008】
他の課題は、外観イメージの変化が少なく、空気抵抗の減少を図ると共に、運転者着座部と添乗者着座部の下方に収納ボックスを設けることができるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、運転者着座面が上面に形成された運転者着座部と、前記運転者着座面より後方に配置された添乗者着座面が上面に形成された添乗者着座部と、前記運転者着座面上に配置され、前記運転者着座面から上方に立ち上がる運転者腰当面が前面に形成された運転者腰当部とを有し、該運転者腰当部の最大左右幅を前記添乗者着座面の左右幅より幅狭に形成すると共に、該運転者腰当部の左右幅を後方に向かうほど幅狭に形成し、前記添乗者着座面の左右前端を前記運転者腰当部の最大左右幅部分の両側まで延設して左右延設着座面を形成し、前記運転者着座面より前記添乗者着座部側のシート底板を低い位置に設け、前記添乗者着座部より前方のシート底板を上方に突出させて支持部を形成し、前記運転者腰当部に前記支持部に当接する当接部を形成した車両用鞍乗り型シートとしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、前記運転者腰当部は、前記運転者着座面上を前後移動可能に設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記運転者着座部と前記添乗者着座部との両下方にわたって収納ボックスを設け、前記運転者着座部及び前記添乗者着座部のシール底板と、前記収納ボックスの上縁部との間に、該両者の間をシールするシール部材を環状に設け、該運転者腰当部の左右幅を、前記シール部材配設範囲の左右幅より幅狭に形成し、該運転者腰当部の前後幅を、前記シール部材配設範囲の前後幅より幅狭に形成したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1乃至図7には、この発明の実施の形態を示す。
【0015】
まず構成を説明すると、この実施の形態はハンドルと鞍乗り型シート14の間に水平に延びるフートボード16を備えたスクータ型車両11にこの発明を適用したものであり、図4中符号12は車体フレームで、この車体フレーム12に、図示省略のブラケット等を介して収納ボックス13及び鞍乗り型シート14が支持されている。
【0016】
この鞍乗り型シート14は、前端部15に図示省略のヒンジが設けられて開閉自在となっており、運転者着座面17aが上面に形成された運転者着座部17と、その運転者着座面17aより後方に配置されて添乗者着座面19aが上面に形成された添乗者着座部19と、運転者着座面17a上を前後移動可能で、かつ、前記運転者着座面17aから上方に立ち上がる運転者腰当面21aが前面に形成された運転者腰当部21とを有している。
【0017】
また、この鞍乗り型シート14は、底面にシート底板22が設けられ、このシート底板22の車両前後方向の略中央部に上方に突出する支持部22aが形成され、この支持部22a上に前記運転者腰当部21が支持されている。
【0018】
その支持部22aより、前側と後側においては、それぞれシート底板22上にクッション材24を介して表皮25が設けられて、運転者着座部17及び添乗者着座部19が形成されている。そして、その運転者着座面17aより添乗者着座部19側のシート底板22が低い位置に設けられている。
【0019】
また、前記運転者腰当部21は、図1,及び図3の(a)に示すような平面視において略三日月形を呈し、この運転者腰当部21の最大左右幅H1が、前記添乗者着座面19aの左右幅H2より幅狭に形成され、運転者腰当部21の左右幅が後方に向かうほど幅狭に形成されている。
【0020】
そして、添乗者着座部19は、添乗者着座面19aの左右前端が前記運転者腰当部21の両側まで延設されて左右延設着座面19bが形成され、この左右延設着座面19bは、略水平面又は前下方へ延びる傾斜面とされると共に、この左右延設着座面19bの外側部位は下方に傾斜している。
【0021】
さらに、その運転者腰当部21には、運転者腰当面21aの上端から後下方に傾斜する傾斜面21bが形成されている。
【0022】
この運転者腰当部21は、図6等に示すように、樹脂製の腰当部底板21c上に板金21dが固定されると共に、ウレタン等のクッション材21eを介して表皮21fで覆われている。その腰当部底板21cは、前端部21hが前方で斜め下方に向けてシート底板支持部22aより下側位置まで延長されている。そして、この腰当部底板21c及び板金21dには、図3及び図6等に示すように、左右に一対、計3ヶ所づつボルト孔21g,21jが前後方向に並んで形成され、前後方向に位置調整できるように構成されている。
【0023】
また、前記支持部22aには、裏面側に板金26が、又、表面側にプレート27が配設され、このプレート27の前端下部27a及び後端部27bにより、表皮25が下方に押し付けられている。そして、それら支持部22a,板金26及びプレート27には、ボルト孔28が形成され、前記腰当部底板21cの当接部21iがそのプレート27に当接された状態で、ボルト29が下方から挿入されて前記板金21dに溶接されたウエルドナット21kに螺合されるように構成されている。なお、符号21mはカラーであり、板金21dと板金26との間に介在している。
【0024】
一方、前記収納ボックス13は、前記運転者着座部17と前記添乗者着座部19との両下方に渡って配設され、鞍乗り型シート14により開閉されるようになっている。
【0025】
そして、前記シート底板22には、図2の(b)に示すように、取付片22bにシール部材30が取り付けられ、このシール部材30にて前記収納ボックス13の上縁部13aとの間が環状にシールされるようになっている。
【0026】
図1に示すように、運転者腰当部21の最大左右幅H1が、前記シール部材30の配設範囲の左右幅H3より幅狭に形成され、且つ、運転者腰当部21の前後幅H4が、前記シール部材30の配設範囲の前後幅H5より幅狭に形成されている。
【0027】
次に、作用について説明する。
【0028】
運転者及び添乗者が鞍乗り型シート14に着座する場合には、運転者は運転者着座面17aに着座すると共に、運転者の腰の部分を運転者腰当部21の運転者腰当面21aに当接させる。また、添乗者はその運転者腰当部21の後ろ側で、この運転者腰当部21を股の間に挟むようにして添乗者着座面19aに着座し、左右延設着座面19b上に両足の太股の部分が乗るように着座する。
【0029】
このような着座状態において、運転者腰当部21の最大左右幅H1を添乗者着座部19の左右幅H2より幅狭に形成すると共に、添乗者着座面19aの左右前端を運転者腰当部21の両側まで延設した左右延設着座面19bを設けたため、この運転者腰当部21が添乗者の股の間に入るようになり、簡単な構造でありながら、添乗者が足開き角や上体姿勢を保持したまま前後に移動可能となるので、密着度を向上させることができる。
【0030】
しかも、運転者腰当部21の左右幅を後方に向かうほど幅狭に形成し、左右延設着座面19bを略水平面又は前下方へ延びる傾斜面とし、左右延設着座面19bから外側下方に傾斜する傾斜面としたため、運転者腰当部21と添乗者の左右大腿部内面が接触し難いため、添乗者が足開き角度を保持したままで良いことから、密着度が向上される。また、左右大腿部の内面が運転者腰当部21の傾斜面21bに適度にサポートされ、上体姿勢を保持できるため、添乗者の着座姿勢が安定する。
【0031】
また、運転者腰当部21を位置調整するには、鞍乗り型シート14を前端部15のヒンジを中心に開いてボルト29を露出させ、このボルト29を着脱してボルト孔21g,21jの位置を変えることにより、図6に示すように、運転者腰当部21を最前位置に設定したり、又、図7に示すように、運転者腰当部21を最後位置に設定したりできる。勿論、この両者の間の中間位置に配置することもできる。
【0032】
かかる場合には、このように幅狭な運転者腰当部21のみを移動させるだけで良いため、外観イメージの変化を少なくできる。
【0033】
さらに、ヘルメット、アタッシュケース等を収容する収納ボックス13が両着座部17,19の下方に形成され、シート底板22がそのボックス13の蓋を兼ねているため、運転者着座部17と添乗者着座部19のシート底板22を段差が少なくなるように連続的に形成することにより、収納ボックス13のシール性及び容積を確保することができると共に、運転者着座面17aと添乗者着座面19aとの段差を小さくできて、空気抵抗及び添乗者の疲労の減少を図ることができ、添乗者の乗り心地を向上させることができる。
【0034】
しかも、シート底板22を上方に膨出させて支持部22aを形成すると共に、この支持部22aにプレート27を取り付けて、このプレート27の前端下部27a及び後端部27bで、表皮25を下方に押さえ込むことにより、鞍乗り型シート14の表面形状を整えることができ、且つ、表皮25の位置を支持部22a上面より下げることでボルト孔28等から収納ボックス13内への水等の浸入を防止することができる。つまり、プレート27の後端部27b側に流れてきた水は、ここから両側縁部に沿って図1中矢印に示すように前方で、斜め下方に向かって流れ、鞍乗り型シート14の側面部から排水される。また、図6に示すように、運転者腰当部21を前方に移動させた場合でも、プレート27が目隠しとなるため、上方から見た場合の外観品質が確保されることとなる。
【0035】
また、運転者腰当部21の腰当部底板21cの縦壁部を上方まで延設し、水平部から下方に当接部を下端に備えたボスを突出させることにより、運転者腰当面21aの高さを確保しつつ取付け面を低い位置に設定できる。
【0036】
さらに、運転者腰当面21aの上端から後下方に傾斜する傾斜面21bを形成することにより、子供など添乗者が小柄な場合で、左右延設着座面19bと運転者腰当部21との間に多少の凹部が発生したとしても、その傾斜面21bで保持されるため、その凹部が悪影響を及ぼすようなことがない。
【0037】
さらにまた、左右延設着座面19bの間に、運転者着座面17aより高く、かつ、添乗者着座面19aより低い支持面を形成し、その支持面を運転者着座面と略平行にすることにより、特に、側面からの外観を損なわずに移動可能にする。
【0038】
運転者腰当部21下面の前後方向に幅広な部位に、前後方向に延びる当接部21iを形成し、左右延設着座面19bの間に、その当接部21iを支持する支持部22aを形成することで、添乗者の接触しない位置に運転者腰当部21の移動を支持する構造を配置することができると共に、運転者の着座位置の調整幅を確保することができる。
【0039】
さらに、図4に示すように、鞍乗り型シート14の下に収納ボックス13を配置し、この側方に添乗者用フートステップ32をブラケット31を介して車体フレーム12に設置しているが、この添乗者用フートステップ32は、棒状を呈し、使用状態では図4中(a)に示すように車体左右方向に延設され、非使用状態では図4中(b)に示すように格納されるため、非使用状態における左右方向への車体の大型化を抑えることができる。また、添乗者用フートステップ32は、棒状を呈しているため、添乗者の着座位置が前後方向に多少ズレたとしても、添乗者の足首の角度変化Aを抑えられるので、添乗者の密着性を向上させつつ、添乗者の疲労を減少することができる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、スクータ型車両にこの発明を適用したが、これに限らず、スポーツ型車両や三輪車等にも適用できることは勿論である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1に記載された発明によれば、簡単な構造でありながら、添乗者が足開き角や上体姿勢を保持したまま密着度を向上させつつ、運転者の運転姿勢を安定させることができる。
また、上記効果に加え、運転者着座面より添乗者着座部側のシート底板を低い位置に設け、添乗者着座部より前方のシート底板を上方に突出させて支持部を形成し、運転者腰当部に支持部に当接する当接部を形成したため、添乗者着座部のクッション性を維持しつつ、添乗者着座面を低い位置に設定可能であり、密着性を向上しつつ、空気抵抗及び添乗者の疲労の減少を図ることができる。
【0042】
請求項2に記載された発明によれば、上記効果に加え、運転者腰当部は添乗者着座面より幅狭に形成され、運転者着座面上を前後移動可能に設けられたため、外観イメージの変化を少なくしつつ、運転者の体形に合わせて調整可能である。
【0044】
請求項3に記載された発明によれば、上記効果に加え、運転者腰当部を調整可能にする構成部材とシール部材を干渉しない位置に設けたため、運転者腰当部を調整可能で、シール性を確保した収納ボックスを両着座部の下方に配置できる、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態に係る車両用鞍乗り型シートの平面図である。
【図2】 同実施の形態に係る車両用鞍乗り型シートを示す図で、(a)は同シートの側面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図3】 同実施の形態に係る運転者腰当部を示す図で、(a)は運転者腰当部の平面図、(b)は運転者腰当部の底面図である。
【図4】 同実施の形態に係る車両用鞍乗り型シート等の配置を示す側面図である。
【図5】 同実施の形態に係る車両用鞍乗り型シートの側面図である。
【図6】 同実施の形態に係る運転者腰当部を最前位置に移動させた状態の要部断面図である。
【図7】 同実施の形態に係る運転者腰当部を最後位置に移動させた状態の要部断面図である。
Claims (3)
- 運転者着座面が上面に形成された運転者着座部と、
前記運転者着座面より後方に配置された添乗者着座面が上面に形成された添乗者着座部と、
前記運転者着座面上に配置され、前記運転者着座面から上方に立ち上がる運転者腰当面が前面に形成された運転者腰当部とを有し、
該運転者腰当部の最大左右幅を前記添乗者着座面の左右幅より幅狭に形成すると共に、
該運転者腰当部の左右幅を後方に向かうほど幅狭に形成し、
前記添乗者着座面の左右前端を前記運転者腰当部の最大左右幅部分の両側まで延設して左右延設着座面を形成し、
前記運転者着座面より前記添乗者着座部側のシート底板を低い位置に設け、前記添乗者着座部より前方のシート底板を上方に突出させて支持部を形成し、前記運転者腰当部に前記支持部に当接する当接部を形成したことを特徴とする車両用鞍乗り型シート。 - 前記運転者腰当部は、前記運転者着座面上を前後移動可能に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用鞍乗り型シート。
- 前記運転者着座部と前記添乗者着座部との両下方にわたって収納ボックスを設け、
前記運転者着座部及び前記添乗者着座部のシール底板と、前記収納ボックスの上縁部との間に、該両者の間をシールするシール部材を環状に設け、
該運転者腰当部の左右幅を、前記シール部材配設範囲の左右幅より幅狭に形成し、
該運転者腰当部の前後幅を、前記シール部材配設範囲の前後幅より幅狭に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用鞍乗り型シート。
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