JP4575636B2 - 多管式熱交換器、これを具備した蒸留装置、および熱交換方法 - Google Patents

多管式熱交換器、これを具備した蒸留装置、および熱交換方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、易重合性物質を含むプロセス流体を管内流体として取り扱う竪型多管式熱交換器、これを用いた蒸留装置、および熱交換方法に関し、詳しくは、熱交換器内での易重合性物質の重合を抑制する多管式熱交換器、これを用いた蒸留装置、および熱交換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高温、低温の2流体間で熱の伝授を行わせる熱交換器は、化学工業で広く使用されており、これらの中でも、多管式熱交換器は、過酷な使用条件下においても信頼性が高く、長期連続運転に適しており、最も多く使用されているものである。図11は、竪型の多管式熱交換器の一例を示す図であり、この多管式熱交換器10は、管外流体の出入口11,12が設けられた筒状の胴体13と、胴体13内に配置された複数の伝熱管14と、胴体13の両端に設けられ、伝熱管14の両端付近を支持する実質的に水平な上部管板15および下部管板16と、胴体13の両端に設けられ、管内流体であるプロセス流体の出入口17,18がそれぞれ設けられた蓋体19,20とを具備して概略構成されるものである。
【0003】
このような従来の多管式熱交換器10においては、例えば、蓋体19の出入口17から供給されたプロセス流体は、上部管板15側から伝熱管14内に導入され、伝熱管14の外側の管外流体との間で熱交換を行った後、この伝熱管14末端から蓋体20の出入口18を経て多管式熱交換器10の外に排出される。
ここで、伝熱管14と上部管板15とは、接合部における強固な接合を確保し、かつ多数の伝熱管14を上部管板15に簡易に取り付けるため、図12に示すように、上部管板15の表面から伝熱管14の上端21を突出して接合されている。また、伝熱管14と下部管板16とは、同じ理由から、下部管板16の表面から伝熱管14の下端を突出して接合されている。
【0004】
すなわち、多管式熱交換器10は、管内流体(プロセス流体)および管外流体の双方が常時、流入・流出しているため振動しており、さらに、ポンプ・圧縮機からの振動や回転機械からの直接の脈動流により伝熱管14がこれらからの振動を受けている。したがって、これら振動によって伝熱管14と上部管板15並びに下部管板16との接合部に緩みや破断が生じ、各流体が漏れ出すことを防止するため、上部管板15並びに下部管板16の表面から伝熱管14の両端を突出させ、接合部の強度を確保している。
また、伝熱効率を向上させるために、伝熱管14と管外流体との接触面を広く取る必要がある。そのため、伝熱管14の管径はなるべく細くし、本数が多くされている。この多数の細い伝熱管14と、上部管板15並びに下部管板16とを安定に、かつ簡便に接合するためには、上部管板15並びに下部管板16の表面から伝熱管14を突出させておく方が都合がよい。
【0005】
一方、多管式熱交換器において流体と接触する伝熱管の内部および外部の伝熱面は、使用時間の経過とともに異物が付着して汚れ、伝熱効率が悪化する。そして、この汚れにより熱交換率が低下し、汚れによる熱交換器の補修が必要となり、熱交換器の長期運転が困難となる。
この汚れは管内および管外流体に固形物、半固形物が含まれるときに生じるのである。また、流体自体に固形物等が含まれていない場合であっても、プロセス流体の流体成分が易重合性物質等である場合には、熱交換中に重合が生じ、この重合物により汚染が発生する。
【0006】
例えば、蒸留塔の塔頂には、蒸留塔の塔頂に昇る低沸点成分に富む蒸気を伝熱管内にて冷却・凝縮させる多管式熱交換器(コンデンサー)が接続されている。ここで、蒸留対象物が、メタクロレイン、メタクリル酸等の易重合性化合物である場合には、コンデンサー内での重合が生じやすい。
すなわち、メタクロレインの製造は、イソブチレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化し、得られたメタクロレイン含有液を蒸留塔で蒸留することによって行われる。また、メタクリル酸の製造は、メタクロレインを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化し、得られたメタクリル酸含有液を蒸留塔で蒸留して行われる。このようなメタクロレイン、メタクリル酸含有液を蒸留する際には、メタクロレイン、メタクリル酸の重合が極めて起こり易い。
このため、ヒドロキノン、フェノチアジンなどの種々の重合防止剤がプロセス流体中に添加され、メタクロレイン、メタクリル酸等の重合を抑制しているが、重合を完全に抑制するに十分でない。
【0007】
したがって、コンデンサーとして使用される竪型多管式熱交換器においては、主に上部管板の表面にプロセス流体が滞留しやすく、重合物が付着することが多い。なぜなら、上部管板から伝熱管の上端を突出させて接合した場合、上部管板の表面よりも伝熱管入口の位置の方が高くなってしまい、プロセス流体が上部管板の表面で滞留してしまうからである。
上部管板の表面に重合物が付着すると、分離効率が低下すると共に、上部管板の表面の重合物を核として、伝熱管内にも重合物による目詰まりが発生し、プロセスの長期連続運転を妨げる要因ともなる。
【0008】
一方、竪型多管式熱交換器をリボイラーとして使用する場合、プロセス流体は下部管板側から伝熱管内に入り、加熱昇温されるが、大部分のプロセス流体は液体のままプロセス中に戻される。したがって、定常運転時、リボイラー内および上部管板付近はほぼプロセス流体で充たされ、流動しているので、竪型多管式熱交換器をコンデンサーとして使用する場合に比べて、上部管板の表面においてプロセス流体の滞留が生じる割合は少ない。しかしながら、運転を停止し、リボイラー内部のプロセス流体を系外に抜き出す際、上述した理由により、どうしても上部管板の表面にプロセス流体が滞留し、この一部が重合してしまう。次回の運転時において、この重合物はプロセス流体のさらなる重合の核となるため、プロセスの長期運転を妨げる要因となる。
【0009】
この問題を解決する竪型多管式熱交換器としては、図13および図14に示すような、プロセス流体と接触する上部管板15並びに下部管板16表面からの伝熱管14の突出部を全てなくし、さらに上部管板15並びに下部管板16表面を平滑化して、プロセス流体の各管板表面での滞留を減少させた多管式熱交換器22が、特開2000−254484号公報に提案されている。
しかしながら、上部管板15の表面から伝熱管14の上端21を突出させて接合する場合に比べて、突出部をなくして伝熱管14を上部管板15に接合する作業は煩雑であるため、このような多管式熱交換器22は、どうしても割高になってしまい、工業的には採用しにくい。
【0010】
また、多管式熱交換器22の場合、図15および図16に示すように、上部管板15の表面から伝熱管14の上端21を突出させないで溶接する際の喉厚hが、上部管板15の表面から伝熱管14の上端21を突出させて溶接する際の喉厚Hよりも小さくなる(H>h)ため、伝熱管14と上部管板15(または下部管板16)との接合部の溶接強度がどうしても低くなってしまう。
【0011】
さらに、多管式熱交換器22の場合、多数の伝熱管14を溶接にて上部管板15に接合しているので、一部の伝熱管14は溶接不良となってしまうことが多い。そのため、接合部の溶接強度が低いことに加えて、溶接不良が発生した接合部の溶接強度は、伝熱管を突出させて固定する場合に比べて、著しく低下してしまう。したがって、多管式熱交換器22を用いて長期連続運転を行った場合、上述した振動に対する強度不足が原因となり、一部の伝熱管14と上部管板15(または下部管板16)との接合部に亀裂が生じ、プロセス流体の漏れを引き起こすことがある。
このように、従来の多管式熱交換器においては、易重合性物質を多量に含むプロセス流体に対して、滞留の抑制、並びに伝熱管と管板との接合部の強度を両立させることは困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、伝熱管と上部管板との接合部の強度を十分に確保した上で、上部管板の表面および伝熱管内での重合物の生成を抑制し、熱交換器の破損もなく、長期の連続運転が可能な多管式熱交換器、これを具備した蒸留装置、およびこれらを用いた熱交換方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、竪型多管式熱交換器の上部管板の一部分にのみ、突出のない伝熱管を存在させることで、伝熱管と上部管板との接合部の強度を十分に確保するとともに、上面管板の表面でのプロセス流体の滞留を減少させることが可能となり、結果的に、装置の破損もなく、上部管板の表面での重合および伝熱管内の閉塞を効果的に抑制できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明の多管式熱交換器は、易重合性物質を含むプロセス流体を管内流体として取り扱う竪型多管式熱交換器であり、管外流体の入口および出口が設けられた筒状の胴体と、胴体内に配置され、内側のプロセス流体と外側の管外流体との間で熱交換を行う複数の伝熱管と、胴体の上端付近に設けられ、伝熱管と上部管板との間からのプロセス流体および管外流体の漏れを防ぐように伝熱管の上端付近を支持する上部管板とを具備し、前記複数の伝熱管のうち、一部の伝熱管はその上端が上部管板から突出していない伝熱管であり、他の伝熱管はその上端が上部管板から突出した伝熱管であることを特徴とする。
【0015】
また、上端が上部管板から突出していない伝熱管は、上部管板の中心またはその近傍に設けられていることが望ましい。
また、上端が上部管板から突出していない伝熱管の本数は、全伝熱管の本数の3割以下であることが望ましく、1本であることがさらに望ましい。
また、伝熱管と上部管板とが、強力溶接、またはシール溶接および拡管によって接合されていることが望ましい。
また、易重合性物質は、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種であることが望ましい。ここで、(メタ)アクロレインは、アクロレインまたはメタクロレインを表し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を表す。
【0016】
また、本発明の熱交換方法は、本発明の多管式熱交換器を用いて、易重合性物質を含むプロセス流体と管外流体との間で熱交換を行うことを特徴とする。
また、本発明の蒸留装置は、本発明の多管式熱交換器が、蒸留塔塔頂部にコンデンサーとして接続されていることを特徴とする。
また、本発明の蒸留装置は、本発明の多管式熱交換器が、蒸留塔塔底部にリボイラーとして接続されていることを特徴とする。
また、本発明の熱交換方法は、本発明の蒸留装置のコンデンサーまたはリボイラーにおいて、易重合性物質を含むプロセス流体と管外流体との間で熱交換を行うことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、管外流体の入口および出口が設けられた筒状の胴体と、胴体内に配置された鉛直方向に延びる複数の伝熱管と、胴体の上端付近に設けられ、伝熱管の上端付近を支持する水平な上部管板とを少なくとも具備する竪型多管式熱交換器を対象とする。上部管板を有する竪型多管式熱交換器を対象としたのは、この熱交換器の伝熱管内にプロセス流体を流すと、上部管板の表面にプロセス流体が滞留する場合があり、これを有効に防止することを本発明が目的とするからである。
【0018】
図1は、本発明の多管式熱交換器の一例を示す断面図であり、図2は、その上部管板付近の拡大断面図である。
この多管式熱交換器30は、易重合性物質を含むプロセス流体を管内流体として取り扱う竪型多管式熱交換器であり、管外流体の出入口11,12が設けられた筒状の胴体13と、胴体13内に平行に配置された鉛直方向に延びる複数の伝熱管14と、胴体13の上端に設けられ、伝熱管14の上端付近を支持する水平な上部管板15と、胴体13の下端に設けられ、伝熱管14の下端付近を支持する水平な下部管板16と、管内流体であるプロセス流体の出入口17が設けられ、フランジ部が上部管板15に接合された蓋体19と、プロセス流体の出入口18が設けられ、フランジ部が下部管板16に接合された蓋体20とを具備して概略構成されるものである。
【0019】
そして、前記複数の伝熱管14のうち、上部管板15の中心に位置する伝熱管14は、その上端21が上部管板15から突出していない伝熱管14aであり、他の伝熱管14は、その上端21が上部管板15から突出した伝熱管14bである。
また、すべての伝熱管14は、その下端が下部管板16から突出した状態で下部管板16に接合されている。
【0020】
伝熱管14としては、通常、鋼管が使用される。鋼管としては、特に限定はされないが、溶接鋼管の作成のしやすさから、オーステナイト系鋼管、オーステナイト・フェライト系鋼管、フェライト系鋼管が好適に用いられる。また、これら鋼管は、易重合体物質と反応せず、易重合性物質に変性等を与えず、伝熱管自体の腐食を生じることがない。
伝熱管14の外径、長さ等は、多管式熱交換器30のサイズや形状、使用目的等により適宜選択される。
【0021】
上端21が上部管板15から突出していない伝熱管14aの本数は、上部管板15表面でのプロセス流体の滞留を防ぐことができる本数であればよく、好ましくは全伝熱管14の本数の3割以下、より好ましくは2割以下、さらに好ましくは1割以下、最も好ましくは1本である。伝熱管14aの本数が3割を超えると、比較的接合強度(溶接強度)の低い、伝熱管14aと上部管板15との接合部が増えるため、接合不良(溶接不良)が発生する確率が増加し、運転時の振動によって、接合部に割れ等が生じやすくなるおそれがある。
【0022】
伝熱管14と上部管板15並びに下部管板16との接合形態は、上部管板15並びに下部管板16に伝熱管14を強固に固定でき、かつ伝熱管14と上部管板15並びに下部管板16との間からのプロセス流体および管外流体の漏れを防ぐことができる形態であれば、どのような接合形態でも構わない。
接合形態の一例としては、例えば、図3に示すような、上端21が上部管板15から突出していない伝熱管14aの上端面と上部管板15とを強力溶接31で溶接し、上端21が上部管板15から突出した伝熱管14bの上端付近の外周壁と上部管板15とを強力溶接31で溶接した形態が挙げられる。ここで、強力溶接とは、後述する拡管を行わずに溶接のみで伝熱管を管板に固定する方法である。
【0023】
また、他の接合形態としては、図4に示すような、伝熱管14に形成された拡管32によって伝熱管14を上部管板15に固定し、さらに伝熱管14aの上端面と上部管板15とをシール溶接33で溶接し、伝熱管14bの上端付近の外周壁と上部管板15とをシール溶接33で溶接した形態が挙げられる。ここで、拡管とは、数個の小径ローラーをマンドレルによって伝熱管内面に押し付けながら回転させる等の手段により、強力に管を押し広げ伝熱管を管板に固定する方法である。また、シール溶接とは、拡管部からの流体の漏れを防止することを目的とした漏れ止め溶接のことである。
【0024】
胴体13、上部管板15、下部管板16、蓋体19および蓋体20としては、従来の多管式熱交換器と同様のものを用いることができる。また、これらの外径、長さ、厚さ等は、多管式熱交換器30のサイズや形状、使用目的等により適宜選択される。
【0025】
次に、この多管式熱交換器30を用いた熱交換方法を以下に説明する。
この多管式熱交換器30においては、例えば、蓋体19の出入口17から供給されたプロセス流体は、上部管板15側から伝熱管14内に導入され、伝熱管14の外側の管外流体との間で熱交換を行った後、この伝熱管14末端から蓋体20の出入口18を経て多管式熱交換器30の外に排出される。ここで、図5に示すように、上部管板15表面に滞留しようとするプロセス流体35は、上部管板15の表面と入口の高さが同じとされた伝熱管14aの上端21から伝熱管14aへと流れ出る。
【0026】
このような熱交換方法にて扱われるプロセス流体は、易重合性物質を含むものである。このプロセス流体は、易重合性物質を含むものであれば、気体、液体の別を問わない。
多管式熱交換器30で取り扱う易重合性物質としては、気体、液体の別を問わず、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはこれらのエステル体、スチレン、アクリロニトリル等が例示できる。中でも、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種が、多管式熱交換器30で好適に取り扱われる。
【0027】
これら易重合性物質には、さらに高沸点物質、溶媒、易重合性物質の生成時の副生物などが含まれていてもよい。例えば、アクリル酸およびアクリル酸エステルの場合には、アクリル酸を接触気相酸化反応で得る際に副生する酢酸、プロピオン酸、アクロレイン、マレイン酸、水、ホルマリン等を挙げることができる。また、例えば、メタクロレインの場合には、メタクロレインを接触気相酸化反応で得る際に生じる酢酸、水等を挙げることができる。また、例えば、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルの場合には、メタクリル酸を接触気相酸化反応で得る際に生じるアクリル酸、酢酸等を挙げることができる。
【0028】
また、多管式熱交換器30を用いた熱交換方法においては、易重合性物質の取り扱いに際し、プロセス流体に重合防止剤を添加することが好ましい。これにより多管式熱交換器30における易重合性物質の重合をさらに抑制することができるからである。
重合防止剤としては、分子状酸素含有ガス、ヒドロキノン、メトキノン、クレゾール、フェノール、t−ブチルカテコール、ジフェニルアミン、フェノチアジン、メチレンブルーから選ばれる1種以上;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅およびサリチル酸銅などの銅塩化合物、酢酸マンガンなどのマンガン塩化合物から選ばれる1種以上;p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン類;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシルなどのN−オキシル化合物;尿素などの尿素類;チオ尿素などのチオ尿素類などを好適に用いることができる。上記の化合物は単独でも、あるいは2種類以上組み合わせて使用することもできる。
【0029】
重合防止剤をプロセス流体に添加する方法についても特に制限はなく、後述の蒸留塔に直接導入してもよいし、供給液や還流液、または他の溶媒に溶解して後述の供給ライン、還流ライン等より導入してもよい。
また、分子状酸素含有ガスの供給方法についても特に制限はなく、バブリング等により易重合性物質に直接混入させても、あるいは溶剤に溶解させて間接的に混入させてもよい。なお、分子状酸素含有ガスを後述の蒸留塔の塔底部および/またはリボイラーからガス状で供給すれば、簡単にバブリングさせることができる。
【0030】
以上説明したような多管式熱交換器30にあっては、複数の伝熱管14のうち、上部管板15の中心に位置する伝熱管14が、その上端21が上部管板15から突出していない伝熱管14aであるので、上部管板15の表面と伝熱管14a入口の高さが同じとなり、図5に示すように、上部管板15上にあるプロセス流体35が伝熱管14a入口から流れ出て、上部管板15表面におけるプロセス流体35の滞留を抑制できる。
【0031】
また、多管式熱交換器30にあっては、複数の伝熱管14のうち、一部の伝熱管14がその上端21が上部管板15から突出していない伝熱管14aであり、他の伝熱管14がその上端21が上部管板15から突出した伝熱管14bであるので、全ての伝熱管がその上端が上部管板から突出していない伝熱管である従来の多管式熱交換器に比べ、上端21が上部管板15から突出していない伝熱管14aの本数が少なくなる。そのため、伝熱管14を上部管板15に接合する際、接合強度(溶接強度)が弱いために、接合(溶接等)の状態を厳しく管理する必要のある伝熱管14aと上部管板15との接合部が減り、この接合部での接合不良(溶接不良)の発生が低減される。
このような多管式熱交換器30は、冷却器、凝縮器、加熱器、蒸発器の何れとして使用することができる。
【0032】
なお、本発明の多管式熱交換器は、図示例の多管式熱交換器30に限定はされず、上記の構成のうち、少なくとも、管外流体の出入口11,12が設けられた筒状の胴体13と、胴体13内に配置された鉛直方向に延びる複数の伝熱管14と、胴体13の上端に設けられ、伝熱管14の上端付近を支持する水平な上部管板15とを具備するものであれば、どのような形態のものであっても構わない。
【0033】
また、本発明の多管式熱交換器において、上端が上部管板から突出していない伝熱管を設ける位置も、上部管板の表面におけるプロセス流体の滞留を防ぐことができる位置であれば特に制限はされないが、図示例のように上部管板15の中心またはその近傍とすることが好ましい。このようにすれば、上部管板の表面のプロセス流体の流量が少なくても、プロセス流体が確実に伝熱管内に流れて行くだけでなく、プロセス流体の上部管板の表面での滞在時間も短く抑えることが可能となる。
また、下部管板では、プロセス流体は自重により比較的自然落下しやすいことから、下端が下部管板から突出していない伝熱管を設ける必要はない。
【0034】
また、本発明の多管式熱交換器は、一般的な熱交換器が有する邪魔板、長手邪魔板、緩衝板、仕切室胴フランジ、胴蓋側フランジ、胴側ノズル、遊動頭蓋、固定棒およびスペーサー、ガス抜き座、ドレン抜き座、計器座、支持脚、つり金具、液面計座、伸縮継手熱膨張対策等を有していてもよい。
また、本発明の多管式熱交換器においては、供給されたプロセス流体が管板に接合された伝熱管に導入されるものであれば、その胴体の形状は特に制限されない。プロセス流体(管内流体)の貯溜形式等としては、図1に示すような1パス形に限られず、2パス形、3パス形であってもよい。また、胴体の仕切等として、長手邪魔板2パス形、分流形、二重分流形、分割流形等のいずれも採用することができる。
【0035】
また、本発明の多管式熱交換器においては、蓋体の形状は図1に例示されるものに限定されず、易重合体性物質の精製蒸留塔等に連結するために都合のよい形状を採用できる。具体的には、易重合性物質を蒸留する蒸留塔塔頂部及び塔底部に連結するための蓋体を採用した多管式熱交換器の例としては、図6に示すような蛇腹状の蓋体41を有するもの、図7に示すようなプロセス流体の出入口を拡げた蓋体42を有するもの、図8に示すようなプロセス流体の出入口を側面に設けた蓋体43を有するものなどが挙げられる。また、図9に示すように、蓋体を設けず、これの代わりに、配管(図示略)を接続するための接続管44を設けたものであっても構わない。
【0036】
次に、本発明の多管式熱交換器を用いた蒸留装置について説明する。
図10は、本発明の蒸留装置の一例を示す概略図である。この蒸留装置50は、蒸留塔51と、蒸留塔51の塔頂部にコンデンサーとして接続された多管式熱交換器30と、蒸留塔51の塔底部にリボイラーとして接続された多管式熱交換器30とを具備して概略構成されるものである。
【0037】
蒸留塔51としては、易重合性物質を含むプロセス流体を蒸留できるものであれば特に限定されないが、充填塔、棚段塔(トレイ塔)、濡壁塔、スプレー塔などを挙げることができる。中でも、重合防止、塔効率の観点から、棚段塔(トレイ塔)が好ましい。
【0038】
次に、この蒸留装置を用いたプロセス流体の精製および熱交換方法について、プロセス流体としてメタクロレイン含有液もしくはメタクリル酸含有液を用いた場合を例に説明する。
メタクロレイン含有液もしくはメタクリル酸含有液(以下、供給液)は、供給ライン52を通って、蒸留塔51に供給される。供給液は、蒸留塔51にて精留され、留出物は気体となって蒸留塔51塔頂部から留出物移送ライン53を通って多管式熱交換器30(コンデンサー)に供給される。
【0039】
この多管式熱交換器30において、蓋体19の出入口17から供給された留出物は、上部管板15側から伝熱管14内に導入され、伝熱管14の外側の管外流体との間の熱交換によって冷却、凝縮されて液体となり、この伝熱管14末端から蓋体20の出入口18を経て多管式熱交換器30の外に排出される。
凝縮された留出物は、留出物排出ライン54を経由して系外に取り出される。
【0040】
一方、蒸留塔51における缶出物は、液体となって缶出物排出ライン56を経由して系外に取り出されるが、一部は多管式熱交換器30(リボイラー)に供給される。
この多管式熱交換器30において、蓋体20の出入口18から供給された缶出物は、下部管板16側から伝熱管14内に導入され、伝熱管14の外側の管外流体との間の熱交換によって加熱されて一部は気体となり、この伝熱管14の上端21から蓋体19の出入口17を経て多管式熱交換器30の外に排出される。排出された気体の缶出物は、再供給ライン57を通って、再び蒸留塔51に戻される。
【0041】
メタクロレイン、メタクリル酸含有液に重合防止剤を添加する場合、重合防止剤としては、上述されているような一般にメタクロレイン、メタクリル酸等の易重合性物質の重合防止剤として知られている化合物であればいずれも使用することができる。また、添加方法についても特に制限はなく、上述されているような方法であれば全く問題はない。
【0042】
メタクロレイン含有液としては、イソブチレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得られるメタクロレイン含有ガスを水と接触させて、メタクロレインをメタクロレイン水溶液として捕集したものが一例として挙げられる。また、メタクリル酸含有液としては、メタクロレインを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得られるメタクリル酸含有ガスを水と接触させて、メタクリル酸をメタクリル酸水溶液として捕集したもの、およびこのメタクリル酸水溶液から有機溶剤を抽剤としてメタクリル酸を抽出して得られる抽出液や、この抽出液を適宜蒸留して得られる流体等が挙げられる。
【0043】
以上の説明したような蒸留装置50にあっては、多管式熱交換器30をコンデンサーとして使用しているので、気体であるプロセス流体の凝縮が上部管板15側で生じたとしても、上部管板15上にある液体のプロセス流体が伝熱管14a入口から流れ出て、上部管板15表面におけるプロセス流体の滞留を抑制できる。また、蒸留装置50にあっては、多管式熱交換器30をリボイラーとして使用しているので、運転を停止し、蒸留装置50内部のプロセス流体を系外に抜き出す際にも、リボイラーの上部管板15表面におけるプロセス流体の滞留を抑制できる。
【0044】
なお、本発明の蒸留装置における、多管式熱交換器の頭部蓋体の形状としては、蓋板分離形、蓋板一体形、管板一体形等のいずれでもよく、さらに図6に示すような蛇腹状の蓋体41を有するもの、図7に示すようなプロセス流体の出入口を拡げた蓋体42を有するもの、図8に示すようなプロセス流体の出入口を側面に設けた蓋体43を有するものでもよい。また、図9に示すように、蓋体を設けず、これの代わりに、配管(図示略)を接続するための接続管44を設けたものであっても構わない。さらに、多管式熱交換器の下部蓋体の形状も、固定管板形、遊動頭グランド形、遊動頭割フランジ形、遊動頭引き抜き形等のいずれでもよい。また、胴体のサイズは、使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図10に示される構成の蒸留装置を用い、メタクロレイン含有液の精製を行った。
蒸留塔としては、内径0.06m、段数30段のステンレス鋼製(SUS304)のシーブトレーが内装されたものを用いた。
蒸留塔の塔頂に接続されるコンデンサーとしては、図1に示す構成の多管式熱交換器を用いた。多管式熱交換器における伝熱管としては、ステンレス鋼製(SUS304)、内径15.8mm、外径19.0mm、長さ70cmのものを23本用い、これらを強力溶接により上部管板および下部管板に接合した。
【0047】
また、蒸留塔の塔底に接続されるリボイラーとしては、図1に示す構成の多管式熱交換器を用いた。多管式熱交換器における伝熱管としては、ステンレス鋼製(SUS304)、内径15.8mm、外径19.0mm、長さ70cmのものを23本用い、これらをシール溶接および拡管により上部管板および下部管板に接合した。
ここで、コンデンサーおよびリボイラーの上部管板の中心部に位置する1本の伝熱管のみ、上端が上部管板から突出しないように接合し、他の伝熱管はその上端が上部管板から4.0mm突出するようにして接合した。
【0048】
メタクロレイン含有液(供給液)の組成は、メタクロレイン20質量%、酢酸3質量%、水77質量%であった。供給量は30kg/hrとした。また、供給液には重合防止剤ヒドロキノンを200ppm添加した。さらに、分子状酸素含有ガスとして空気をリボイラー発生蒸気量に対し0.3vol%投入しながら精留を行った。運転は、塔頂圧力101kPa、塔頂温度66℃、塔底圧力104kPa、塔底温度101℃、還流比3で管理した。
2週間の連続運転の後、一旦運転を停止し、蒸留装置からプロセス流体(メタクロレイン含有液)を抜き出した。その2日後、再び運転を開始し、さらに6カ月間連続運転した。その後、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面および伝熱管の点検を実施したところ、重合物の付着は認められなかった。さらに、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、上部管板と伝熱管との接合部の割れ等は全く存在しなかった。
【0049】
(実施例2)
図10に示される構成の蒸留装置を用い、メタクリル酸含有液の精製を行った。
蒸留塔としては、内径0.19m、段数30段のステンレス鋼製(SUS304)のシーブトレーが内装されたものを用いた。
蒸留塔に接続されるコンデンサーおよびリボイラーとしては、実施例1と同じものを用いた。
【0050】
メタクリル酸含有液としては、以下の製法によって得られたものを用いた。
まず、イソブチレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してメタクロレインを得た。このメタクロレインを分子状酸素含有ガスによりさらに接触気相酸化してメタクリル酸含有ガスを得た。このメタクリル酸含有ガスを水と接触させて、メタクリル酸をメタクリル酸水溶液として捕集した。このメタクリル酸水溶液から、有機溶剤を抽剤としてメタクリル酸を抽出して得られる抽出液を適宜蒸留して、メタクリル酸含有液を得た。このメタクリル酸含有液は、メタクリル酸や酢酸の他に、タール状になった不明高沸物も含んでいた。
【0051】
メタクリル酸含有液の組成は、メタクリル酸20質量%、酢酸50質量%、不明高沸物30質量%であった。供給量は15kg/hrとした。また、供給液には重合防止剤ヒドロキノンを200ppm添加した。さらに、分子状酸素含有ガスとして空気をリボイラー発生蒸気量に対し0.3vol%投入しながら精留を行った。運転は、塔頂圧力4kPa、塔頂温度40℃、塔底圧力6kPa、塔底温度110℃、還流比3で管理した。
2週間の連続運転の後、一旦運転を停止し、蒸留装置からプロセス流体(メタクリル酸含有液)を抜き出した。その2日後、再び運転を開始し、さらに6カ月間連続運転した。その後、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面および伝熱管の点検を実施したところ、重合物の付着は認められなかった。さらに、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、上部管板と伝熱管との接合部の割れ等は全く存在しなかった。
【0052】
(実施例3)
コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上端が上部管板から突出していない伝熱管の本数を、全伝熱管の約3割(7本)とし、かつこれらを上部管板の中心部に集中させて設けた以外は、実施例1と同一条件で運転した。
2週間の連続運転の後、一旦運転を停止し、蒸留装置からプロセス流体(メタクロレイン含有液)を抜き出した。その2日後、再び運転を開始し、さらに6カ月間連続運転した。その後、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面および伝熱管の点検を実施したところ、重合物の付着は認められなかった。さらに、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、上部管板と伝熱管との接合部の割れ等は全く存在しなかった。
【0053】
(実施例4)
コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上端が上部管板から突出していない伝熱管の本数を、全伝熱管の約3割(7本)とし、かつこれらを上部管板の中心部に集中させて設けた以外は、実施例2と同一条件で運転した。
2週間の連続運転の後、一旦運転を停止し、蒸留装置からプロセス流体(メタクリル酸含有液)を抜き出した。その2日後、再び運転を開始し、さらに6カ月間連続運転した。その後、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面および伝熱管の点検を実施したところ、重合物の付着は認められなかった。さらに、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、上部管板と伝熱管との接合部の割れ等は全く存在しなかった。
【0054】
(比較例1)
コンデンサーおよびリボイラーにおいて、全ての伝熱管を、その上端が上部管板から突出していない伝熱管とした以外は、実施例1と同一条件で運転した。
2週間の連続運転の後、一旦運転を停止し、蒸留装置からプロセス流体(メタクロレイン含有液)を抜き出した。その2日後、再び運転を開始した。運転再開後、4カ月でリボイラー加熱流体(管外流体)中へのプロセス流体の漏れが確認されたため、運転を中止した。リボイラーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、シール溶接した伝熱管と上部管板との接合部の1箇所が大きく割れていた。さらに、コンデンサーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、強力溶接した伝熱管と上部管板との接合部の2箇所に小さな亀裂が確認された。伝熱管と上部管板との溶接不良部分が、装置の振動により破断されたものと考えられる。
【0055】
(比較例2)
コンデンサーおよびリボイラーにおいて、全ての伝熱管を、その上端が上部管板から突出していない伝熱管とした以外は、実施例2と同一条件で運転した。
2週間の連続運転の後、一旦運転を停止し、蒸留装置からプロセス流体(メタクリル酸含有液)を抜き出した。その2日後、再び運転を開始した。運転再開後、更に4カ月間連続運転した。その後、コンデンサーおよびリボイラーにおいて、上部管板の表面および伝熱管の点検を実施したところ、重合物の付着は認められなかった。しかし、リボイラーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、シール溶接した伝熱管と上部管板との接合部の1箇所に小さな亀裂が確認された。さらに、コンデンサーにおいて、上部管板の表面を点検したところ、強力溶接した伝熱管と上部管板との接合部の1箇所に小さな亀裂が確認された。伝熱管と上部管板との溶接不良部分が、装置の振動により破断されたものと考えられる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の多管式熱交換器は、管外流体の入口および出口が設けられた筒状の胴体と、胴体内に配置された複数の伝熱管と、胴体の上端付近に設けられ、伝熱管の上端付近を支持する上部管板とを具備し、前記複数の伝熱管のうち、一部の伝熱管はその上端が上部管板から突出していない伝熱管であり、他の伝熱管はその上端が上部管板から突出した伝熱管であるので、伝熱管と上部管板との接合部の強度を十分に確保した上で、上部管板の表面および伝熱管内での重合物の生成を抑制することができる。これにより熱交換器の破損もなく、長期間効果的に易重合性物質の重合を抑制することができる。また、これにより、従来から熱交換器の破損や重合の発生により難しかった、易重合性物質を用いた多管式熱交換器の長期連続運転が可能となる。
【0057】
また、上端が上部管板から突出していない伝熱管が、上部管板の中心またはその近傍に設けられていれば、上部管板の表面のプロセス流体の流量が少なくても、プロセス流体が確実に伝熱管内に流れて行くだけでなく、プロセス流体の上部管板の表面での滞在時間も短く抑えることが可能となる。
また、上端が上部管板から突出していない伝熱管の本数が、全伝熱管の本数の3割以下であれば、接合不良が発生する確率が低下し、運転時の振動によって、接合部に割れ等が生じにくくなる。
また、上端が上部管板から突出していない伝熱管の本数が、1本であれば、接合不良が発生する確率がさらに低下し、運転時の振動によって、接合部に割れ等がさらに生じにくくなる。
【0058】
また、伝熱管と上部管板とが、強力溶接、またはシール溶接および拡管によって接合されていれば、伝熱管と上部管板との間からのプロセス流体および管外流体の漏れを確実に防ぐことができる
また、易重合性物質が、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種であっても、上部管板の表面および伝熱管内でのこれらの易重合性物質の重合を抑制することができる。
また、本発明の熱交換方法は、本発明の多管式熱交換器を用いて、易重合性物質を含むプロセス流体と管外流体との間で熱交換を行う方法であるので、熱交換器の破損や易重合性物質の重合が抑えられ、長期間安定して熱交換を行うことができる。
【0059】
また、本発明の蒸留装置は、本発明の多管式熱交換器が、蒸留塔塔頂部にコンデンサーとして接続されているものであるので、熱交換器の破損や易重合性物質の重合が抑えられ、長期間安定して連続運転を行うことができる。
また、本発明の蒸留装置は、本発明の多管式熱交換器が、蒸留塔塔底部にリボイラーとして接続されているものであるので、熱交換器の破損や易重合性物質の重合が抑えられ、長期間安定して連続運転を行うことができる。
また、本発明の熱交換方法は、本発明の蒸留装置のコンデンサーまたはリボイラーにおいて、易重合性物質を含むプロセス流体と管外流体との間で熱交換を行う方法であるので、熱交換器の破損や易重合性物質の重合が抑えられ、長期間安定して熱交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多管式熱交換器の一例を示す断面図である。
【図2】図1の多管式熱交換器における上部管板と伝熱管との接合部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の多管式熱交換器における上部管板と伝熱管との接合形態の一例を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の多管式熱交換器における上部管板と伝熱管との接合形態の他の例を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の多管式熱交換器における上部管板の表面でのプロセス流体の流れを示す拡大断面図である。
【図6】本発明の多管式熱交換器の他の例を示す断面図である。
【図7】本発明の多管式熱交換器の他の例を示す断面図である。
【図8】本発明の多管式熱交換器の他の例を示す断面図である。
【図9】本発明の多管式熱交換器の他の例を示す断面図である。
【図10】本発明の蒸留装置の一例を示す概略構成図である。
【図11】従来の多管式熱交換器の一例を示す断面図である。
【図12】図11の多管式熱交換器における上部管板と伝熱管との接合部を示す拡大断面図である。
【図13】従来の多管式熱交換器の他の例を示す断面図である。
【図14】図13の多管式熱交換器における上部管板と伝熱管との接合部を示す拡大断面図である。
【図15】図11の多管式熱交換器における上部管板と伝熱管との接合形態を示す拡大断面図である。
【図16】図13の多管式熱交換器における上部管板と伝熱管との接合形態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
11 管外流体の出入口
12 管外流体の出入口
13 胴体
14 伝熱管
14a 上端が上部管板から突出していない伝熱管
14b 上端が上部管板から突出した伝熱管
15 上部管板
30 多管式熱交換器
31 強力溶接
32 拡管
33 シール溶接
35 プロセス流体
50 蒸留装置
51 蒸留塔

Claims (12)

  1. 易重合性物質を含むプロセス流体を管内流体として取り扱う竪型多管式熱交換器であり、
    管外流体の入口および出口が設けられた筒状の胴体と、胴体内に配置され、内側のプロセス流体と外側の管外流体との間で熱交換を行う複数の伝熱管と、胴体の上端付近に設けられ、伝熱管と上部管板との間からのプロセス流体および管外流体の漏れを防ぐように伝熱管の上端付近を支持する上部管板とを具備し、
    前記複数の伝熱管のうち、一部の伝熱管はその上端が上部管板から突出していない伝熱管であり、他の伝熱管はその上端が上部管板から突出した伝熱管であることを特徴とする多管式熱交換器。
  2. 上端が上部管板から突出していない伝熱管が、上部管板の中心またはその近傍に設けられていることを特徴とする請求項1記載の多管式熱交換器。
  3. 上端が上部管板から突出していない伝熱管の本数が、全伝熱管の本数の3割以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多管式熱交換器。
  4. 上端が上部管板から突出していない伝熱管が、1本であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多管式熱交換器。
  5. 伝熱管と上部管板とが、強力溶接によって接合されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の多管式熱交換器。
  6. 伝熱管と上部管板とが、シール溶接および拡管によって接合されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の多管式熱交換器。
  7. 易重合性物質が、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか一項に記載の多管式熱交換器。
  8. 請求項1ないし7いずれか一項に記載の多管式熱交換器を用いて、易重合性物質を含むプロセス流体と管外流体との間で熱交換を行うことを特徴とする熱交換方法。
  9. 請求項1ないし7いずれか一項に記載の多管式熱交換器が、蒸留塔塔頂部にコンデンサーとして接続されていることを特徴とする蒸留装置。
  10. 請求項1ないし7いずれか一項に記載の多管式熱交換器が、蒸留塔塔底部にリボイラーとして接続されていることを特徴とする蒸留装置。
  11. 請求項9記載の蒸留装置のコンデンサーにおいて、易重合性物質を含むプロセス流体と管外流体との間で熱交換を行うことを特徴とする熱交換方法。
  12. 請求項10記載の蒸留装置のリボイラーにおいて、易重合性物質を含むプロセス流体と管外流体との間で熱交換を行うことを特徴とする熱交換方法。
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