例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などの各種画像表示機器用のガラスパネルの製作に用いられるガラス板、並びに各種電子表示機能素子や薄膜を形成するための基材として用いられるガラス板は、複数枚を一組として収納保持した状態で、梱包体としてガラスメーカー等からディスプレイメーカー等に搬送されるのが通例である。
この種のガラス板は、薄肉で割れ易いにも拘わらず、高品位を維持しつつ適正に且つ安価に搬送する必要があるため、その収納保持に用いられる梱包材は、製作容易性、高清浄性、耐震保持性、耐破損性、高保管性、高輸送性、出し入れ容易性等の種々の高特性が要請される。
このような要請に応じるべく、例えば下記の特許文献1によれば、図6に示すように、縦面パッド部50aと横面パッド部50bとからなり且つ断面が略L字型を呈すると共に、内壁に複数本の基板保持溝51を有し、且つ外壁に結束バンド52を装着するためのバンド装着用溝53を有するガラス基板用の梱包材50が開示されている。そして、この梱包材50を用いて製作された梱包体60は、複数枚のガラス基板Gを所定間隔おきに平行配置して立方体を形成し、各ガラス基板Gの角部を前記梱包材50の基板保持溝51に挿入して前記立方体の四角部を各梱包材50により嵌合固定してなるものである。
このような構成の梱包材は、従来のいわゆる箱型梱包材に比して、材料費や製作費が安価であること、各種寸法のガラス基板を同一のもので梱包できること、空函状態での体積を小さくできること、通函による反復使用により汚染された場合でも洗浄や乾燥を容易に行えること、および、巨大な洗浄設備を必要としないこと等の利点がある。また、これら以外にも、輸送中におけるガラス基板の振動を抑止でき、ガラス基板を収納した状態での保管や輸送効率が高く、しかもガラス基板の収納時および取り出し時に、隣接するガラス基板との接触や干渉のおそれがなく、出し入れ操作を容易に行える等の利点もある。
ところで、上述の各種画像表示機器等の製造に際しては、複数枚のガラスパネルが一枚の素板ガラスから作り出される手法が採用されるに至っており、これに伴ってガラスメーカーで成形および加工される素板ガラスは大板化が推進されているのが現状である。詳述すると、例えば液晶ディスプレイのガラスパネルの大きさは、対角で10〜20インチ程度のものが主流であるが、製造コストの低減並びに生産効率(スループット)の向上を目的として、大板の素板ガラスに多数のガラスパネルを作り込むマルチ方式が採用されるに至ったことから、ガラスメーカーで製作する素板ガラスをできるだけ大きくすることが試みられている。具体的には、実用化量産の初期には、素板ガラスの大きさが300×400mmサイズ程度であったが、その後、ガラスパネルの採り枚数の増加に伴って、370×470mmサイズ、550×650mmサイズ、680×680mmサイズ等への大板化が進んでおり、現在は1000×1200mmサイズ程度の素板ガラスが製作されるに至っている。
しかしながら、上述のように素板ガラスが大板化することに起因して、その取り扱いが困難となり、梱包や輸送にますます配慮する必要が生じ、従来の梱包材を用いた梱包手法に委ねていたのでは、以下に示すような不具合が生じる。
すなわち、図6に例示した従来の梱包材50では、その外壁に形成されるバンド装着用溝53の深さが、コーナー部50cと該コーナー部50cからの離反側の端部50dとの間に亘る何れの位置においても同一とされている。換言すれば、各ガラス基板Gの四角部に嵌合された状態にある四個の梱包材50のバンド装着用溝53の底面は、ガラス基板Gの四つの側縁におけるそれぞれの一端に対応する部位から他端に対応する部位まで、一直線上に沿う面として形成されている。
これが原因となって、四個の梱包材50のバンド装着用溝53に結束バンド52を巻回装着した状態の下では、各梱包材50のコーナー部50c周辺からガラス基板Gのコーナー部(側縁の端部)周辺に対しては充分な大きさの結束力が作用するものの、各梱包材50のコーナー部50cとの離反側の端部50d周辺からガラス基板Gの側縁の中央部周辺に作用する結束力は不足した状態となる。これは、結束バンド52が、各梱包材50のコーナー部50cを支点として張り渡された状態となるため、各コーナー部50c相互間の中央部周辺においては、結束バンド52が梱包材50をガラス基板Gに対して押し付ける押し付け力が不足することによるものである。
このため、ガラス基板Gの各側縁の中央部周辺を梱包材50によって確実に保持することが困難となり、輸送中におけるガラス基板Gの振動等を適正に抑止できなくなると共に、ガラス基板Gの割れ等の危険性が生じるという難点がある。このような問題は、上述のようにガラス基板Gの大板化が進むに連れて、一層顕著なものとなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガラス基板等の板状体のコーナー部のみならずその側縁の中間部或いは中央部周辺に対しても確実な保持を行うことが可能な梱包体および梱包材を提供し、輸送中における板状体の振動等を可及的に抑止することを技術的課題とする。
上記技術的課題を達成するためになされた本発明は、縦面パッド部と横面パッド部とを断面略L字型に形成してなる四個の梱包材の内壁にそれぞれ並設された複数本の保持溝に、略直立に並列配置された複数枚の板状体の各角部を挿入すると共に、四個の梱包材の外壁にそれぞれ保持溝と平行に形成されたバンド装着用溝に、結束バンドを巻回装着した梱包体において、板状体の上側角部を保持する梱包材の外壁および/または下側角部を保持する梱包材の外壁にバンド装着用溝を形成し、前記バンド装着用溝は、板状体の側縁の角部に存するコーナー部位置に対応する底面部分よりも、板状体の側縁の中央部寄り位置に対応する底面部分の方が外方に突出して結束バンドが傾斜して当接する傾斜状底面を有し、前記板状体の下側角部を保持する梱包材の縦方向寸法が、前記板状体の上側角部を保持する梱包材の縦方向寸法よりも長尺であることに特徴づけられる。
ここで、「傾斜状底面」とは、底面が平坦な傾斜面とされている場合のみならず、例えば外方への突出寸法が異なる複数の凸部の集合によって傾斜状底面が構成されている場合や、複数の段差の集合によって傾斜状底面が構成されている場合等であってもよく、要するに、結束バンドが傾斜して当接する底面でありさえすればよい(以下の「傾斜状底面」についても同様)。更に、「傾斜状」とは、湾曲を伴う傾斜状をも含む意味である。なお、傾斜状底面は、板状体の該当する側縁の中央に対応する部位が、最も外方に突出していることが好ましい。また、傾斜状底面は、バンド装着用溝の全長に亘って形成されていてもよく、或いはバンド装着用溝の一部に形成されていてもよい。
このような構成によれば、板状体の上側角部を保持する梱包材の外壁、もしくは板状体の下側角部を保持する梱包材の外壁、またはその双方の梱包材の外壁に形成された傾斜状底面を有するバンド装着用溝に、結束バンドを巻回装着することにより、板状体の該当する側縁(辺)の中央部寄り位置に結束バンドから梱包材を介して充分な結束力が作用する。換言すれば、板状体の該当する側縁の中央部寄り位置を梱包材により保持するための充分な押し付け力が結束バンドから作用する。これは、板状体の該当する側縁の角部に存するコーナー部位置に対応するバンド装着用溝の底面部分よりも、板状体のその側縁の中央部寄り位置に対応するバンド装着用溝の底面部分の方が外方に突出しているため、この外方に突出している底面部分を通じて結束バンドから従来よりも大きな結束力が板状体の該当する側縁の中央部寄り位置に作用することによるものである。これにより、板状体の該当する側縁の端部(コーナー部)が従来と同様に梱包材のコーナー部によって確実に保持されることに加えて、その側縁の中央部寄り位置もバンド装着用溝の外方に突出している底面部分を通じて確実に保持され、輸送中における板状体の振動等が効果的に抑制される。なお、このような効果は、板状体が大板である場合に顕著に現れる。そして、以上のような構成の傾斜状底面を有するバンド装着用溝は、板状体の上側角部を保持する一対の梱包材の外壁、または板状体の下側角部を保持する一対の梱包材の外壁に形成することが好ましく、更には四個全ての梱包材の外壁に形成することがより一層好ましい。また、板状体の下側角部を保持する梱包材の縦方向寸法が、前記板状体の上側角部を保持する梱包材の縦方向寸法よりも長尺であるから、結束バンドを取り外した時や、板状体の上側角部を保持する梱包材を取り外した時でも、下側角部を保持する梱包材によって板状体が安定して保持されるため、板状体を自動的に取り出す自動取り出し装置を使用する場合でも、安全に取り出すことができる。
この場合、前記傾斜状底面を有するバンド装着用溝が形成されている梱包材の外壁は、縦面パッド部の外壁および/または横面パッド部の外壁とすることができる。すなわち、梱包材の縦面パッド部の外壁に傾斜状底面を有するバンド装着用溝を形成すれば、この溝に結束バンドを巻回装着することにより、板状体の縦側縁の中央部寄り位置(縦方向中央部寄り位置)に結束バンドから縦面パッド部を介して充分な結束力が作用する。また、梱包材の横面パッド部の外壁に同様のバンド装着用溝を形成すれば、板状体の横側縁の中央部寄り位置(横方向中央部寄り位置)に結束バンドから横面パッド部を介して充分な結束力が作用する。更に、梱包材の両パッド部の外壁にそれぞれ同様のバンド装着用溝を形成すれば、板状体の縦側縁及び横側縁の中央部寄り位置に結束バンドから両パッド部を介して充分な結束力が作用する。したがって、板状体が縦方向に長尺な場合には、縦面パッド部にこのバンド装着用溝を形成することが好ましく、板状体が横方向に長尺な場合には、横面パッド部にこのバンド装着用溝を形成することが好ましく、更に板状体が極めて大板である場合には、両パッド部にこのバンド装着用溝を形成することが好ましい。
そして、以上の構成において、板状体の下側角部を保持する梱包材の縦方向寸法は、板状体の縦方向寸法の1/2以上、好ましくは2/3以上、より好ましくは3/4以上に設定される。このようにすれば、結束バンドを取り外した時や、板状体の上側角部を保持する梱包材を取り外した時でも、下側角部を保持する梱包材によって板状体が安定して保持されるため、板状体を自動的に取り出す自動取り出し装置を使用する場合でも、安全に取り出すことができる。
更に、梱包材の長期使用に亘る反復使用に適切に対処すべく、板状体の上側角部を保持する梱包材の保持溝配列方向の両端および/または下側角部を保持する梱包材の保持溝配列方向の両端に、縦面パッド部と横面パッド部とを連結して両パッド部のなす角度に不当な変形が生じることを抑制するための側壁部を付設することが好ましい。ここで、「保持溝配列方向」とは、保持溝と直交する方向であって、保持溝が並列に並ぶ方向を意味する。このように構成すれば、断面略L字型に形成された縦面パッド部と横面パッド部とが側壁部によって連結されていることから、梱包材が長期間に亘って反復使用されても、両パッド部のなす角度に不当な変化が生じず、しかも板状体の出し入れ時においても両パッド部の相対位置関係は正規の状態に維持される。これにより、大板の板状体を梱包する場合であっても、板状体が梱包材の保持溝からズレを生じることが可及的に抑止され、板状体が相互に接触することによる割れ等を防止することができる。また、縦面パッド部と横面パッド部との保持溝配列方向の両端が側壁部によって適度に塞がれた状態となることから、両端に存する保持溝に挿入されている板状体の露出部が少なくなり、外部からの機械的衝撃等によって板状体が割れる等の危険性を回避する上で有利となる。
なお、本発明に係る梱包体を構成している梱包材は、例えば以下のような構造を有していることが好ましい。すなわち、縦面パッド部と横面パッド部とを断面略L字型に形成すると共に、並列配置された複数枚の板状体の角部を挿入するための複数本の保持溝を内壁に並設し、且つ結束バンドを保持溝と平行に巻回装着するためのバンド装着用溝を外壁に形成してなる梱包材において、前記縦面パッド部の外壁および/または横面パッド部の外壁に、両パッド部の境界をなすコーナー部に対する接近側よりも離反側の方が外方に突出する傾斜状底面を有するバンド装着用溝を前記コーナー部から形成すると共に、該コーナー部から離反した端部側部位に、前記傾斜状底面を有するバンド装着用溝に連なる非傾斜状底面を有するバンド装着用溝を形成することが好ましい。
このようにすれば、上述の発明に係る梱包体のように、複数枚の板状体の各角部を四個の梱包材で保持する場合に顕著な効果が得られる。すなわち、この梱包材の縦面パッド部の外壁に傾斜状底面を有するバンド装着用溝が形成される場合には、板状体の縦側縁の中央部周辺位置と、縦面パッド部のコーナー部に対する離反側の端部周辺位置とが対応することになる。したがって、縦面パッド部のコーナー部に対する接近側よりも離反側の底面部分の方が外方に突出しているバンド装着用溝に結束バンドを巻回装着することにより、板状体のコーナー部のみならず縦側縁の中央部周辺位置にも結束バンドから充分な結束力が作用する。そして、梱包材の横面パッド部の外壁に同様のバンド装着用溝が形成される場合、更には梱包材の両パッド部の外壁にそれぞれ同様のバンド装着用溝が形成される場合にも、板状体の該当する側縁の中央部周辺位置に充分な結束力が作用し、板状体の保持が確実化されるため、輸送中における板状体の振動等が効果的に抑制される。
この場合、板状体の梱包材への挿入を容易にすべく、前記縦面パッド部の保持溝は、コーナー部から離反した端部が、離反側に向かって漸次拡開していることが好ましい。
以上の構成において、梱包材は、各種樹脂発泡体から作製できるが、特に発泡倍率が5〜20倍の発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレンから作製すれば、安価である点、射出成型等により容易に成型できる点、変形し難い点、緩衝効果が大きい点、および、粉塵が少なく発塵性が小さい点で好ましい。
以上のように、本発明に係る梱包体によれば、板状体の上側角部および/または下側角部を保持する梱包材の外壁に形成されるバンド装着用溝の底面を、板状体の側縁の角部に存するコーナー部位置に対応する部位よりもその側縁の中央部寄り位置に対応する部位の方が外方に突出する傾斜状底面としたから、このバンド装着用溝に、結束バンドを巻回装着することにより、板状体の該当する側縁の端部(コーナー部)が従来と同様に梱包材のコーナー部によって確実に保持されるのみならず、その側縁の中央部寄り位置もバンド装着用溝の外方に突出している底面部分を通じて確実に保持され、輸送中における板状体の振動等が効果的に抑制されると共に、板状体が割れる等の危険性が激減することになる。また、板状体の下側角部を保持する梱包材の縦方向寸法が、前記板状体の上側角部を保持する梱包材の縦方向寸法よりも長尺であるから、結束バンドを取り外した時や、板状体の上側角部を保持する梱包材を取り外した時でも、下側角部を保持する梱包材によって板状体が安定して保持されるため、板状体を自動的に取り出す自動取り出し装置を使用する場合でも、安全に取り出すことができる。
この場合、前記傾斜状底面を有するバンド装着用溝が形成されている梱包材の外壁を、縦面パッド部の外壁、もしくは横面パッド部の外壁、またはその両パッド部の外壁とすることにより、板状体の形状や大きさに適切に対処できる。詳述すると、板状体が縦方向に長尺な場合には、縦面パッド部に前記バンド装着用溝を形成し、また板状体が横方向に長尺な場合には、横面パッド部に前記バンド装着用溝を形成し、更に板状体が縦横に長尺である場合には、両パッド部にそれぞれ前記バンド装着用溝を形成することにより、板状体の要請に応じて該当する側縁の中央部周辺を効率良く確実に保持できることになる。
また、板状体の下側角部を保持する梱包材の縦方向寸法を、板状体の縦方向寸法の1/2以上(好ましくは2/3以上、より好ましくは3/4以上)に設定すれば、結束バンドを取り外した時や、板状体の上側角部を保持する梱包材を取り外した時でも、下側角部を保持する梱包材によって板状体が安定して保持されるため、板状体を自動的に取り出す自動取り出し装置を使用する場合でも、安全に取り出すことができる。
また、板状体の上側角部を保持する梱包材の保持溝配列方向の両端および/または下側角部を保持する梱包材の保持溝配列方向の両端に、縦面パッド部と横面パッド部とを連結して両パッド部のなす角度に不当な変形が生じることを抑制するための側壁部を付設すれば、該梱包材が長期に亘って反復使用されても、両パッド部のなす角度に不当な変化が生じず、板状体の出し入れおよび収納が良好に行われると共に、両端に存する保持溝に挿入されている板状体の露出部が少なくなり、外部からの機械的衝撃等によって板状体が割れる等の不具合が適度に回避される。
一方、本発明に係る梱包体の構成要素である梱包材は、縦面パッド部の外壁および/または横面パッド部の外壁に形成されるバンド装着用溝の底面を、両パッド部の境界をなすコーナー部に対する接近側よりも離反側の方が外方に突出する傾斜状底面としたから、上述の発明に係る梱包体のように、複数枚の板状体の四角部をこの梱包材で保持する場合には、上記と同様にして、板状体の該当する側縁の中央部寄り位置が確実に保持され、輸送中における板状体の振動を効果的に抑制できる等の利点が得られる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る梱包体を示す斜視図、図2(a)および(b)は、その梱包体の構成要素である一の梱包材を示す正面図および縦断側面図、図3(a)および(b)は、その梱包体の構成要素である他の梱包材を示す正面図および縦断側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る梱包体1は、10〜100枚程度の複数枚のガラス基板Gを並列配置させた状態で、これらのガラス基板Gの各下側角部を一対の下側梱包材2aに保持させると共に、各上側角部を一対の上側梱包材2bに保持させ、この計四つの梱包材2a、2bの外壁に、二本のポリプロピレン製の結束バンド3をガラス基板Gの外周縁に沿うように巻回したものである。これらの梱包材2a、2bは、いずれも発泡倍率が8〜10倍のポリエチレン発泡体から作製されている。また、本実施形態では、前記ガラス基板Gとして、縦、横、厚さが1200×1000×0.7mmの寸法を有し、♯500番手のダイヤモンドホイールを用いて外周縁の面取り加工を施した液晶ディスプレイ用無アルカリガラス基板(日本電気硝子株式会社製OA−10)が使用される。なお、この梱包体1は、防塵のため、全体がポリビニル製等の袋体(図示略)で被覆される。
前記下側梱包材2aは、図2(a)、(b)に示すように、縦面パッド部2aaと横面パッド部2abとを断面略L字型に一体成形してなり、その内壁には、複数枚のガラス基板Gの下角部が挿入される複数本の保持溝4が形成され、その外壁には、複数本(図例では二本)の結束バンド3が巻回装着される複数本(図例では二本)のバンド装着用溝5が形成されている。そして、本実施形態では、縦面パッド部2aaと横面パッド部2abとの保持溝配列方向の両端に側壁部6が一体に付設されている。この側壁部6は、縦面パッド部2aaのコーナー部2acからの離反側の端部2axと、横面パッド部2abのコーナー部2acからの離反側の端部2ayとを結ぶ斜辺部を有する直角三角形状を呈している。なお、この下側梱包材2aは、コーナー部2acを基準として縦面パッド部2aaのその離反側の端部2axまでの寸法が850mm、コーナー部2acを基準として横面パッド部2abのその離反側の端部2ayまでの寸法が390mm、幅方向寸法(保持溝配列方向寸法)が520mm、肉厚が35mmに設定されている。
前記縦面パッド部2aaにおける保持溝4の最上部は、ガラス基板Gの挿入を容易にすることを目的として、上方に向かって漸次拡開している。また、前記バンド装着用溝5は、縦面パッド部2aaの外壁から横面パッド部2abの外壁に亘って連なっており、縦面パッド部2aaにおけるバンド装着用溝5の底面5aは、コーナー部2acからその離反側の端部2axに移行するに連れて漸次浅くなる傾斜状底面とされている。図例では、縦面パッド部2aaにおける前記離反側の端部2ax周辺領域を除外してバンド装着用溝5が形成されており、このバンド装着用溝5の形成部と非形成部との境界は、保持溝4に挿入された状態のガラス基板Gの縦方向略中央部に対応する位置とされている。なお、この縦面パッド部2aaのバンド装着用溝5(5a)は、コーナー部2acからその離反側の端部2axに至るまでの全長に亘って形成してもよい。そして、このように縦面パッド部2aaに縦方向全長に亘るバンド装着用溝5(5a)を形成する場合には、コーナー部2acからの離反側の端部2ax周辺領域を非傾斜状の底面とし、その端部2ax周辺領域を除外した部位を上記と同様の傾斜状の底面5aとしてもよい。
これに対して、横面パッド部2abにおけるバンド装着用溝5の底面5bは、コーナー部2acからその離反側の端部2ayに移行するに連れて漸次浅くなる傾斜状底面とされ、この横面パッド部2abにおけるバンド装着用溝5(5b)は、コーナー部2acからその離反側の端部2ayに至るまで全長に亘って形成されている。なお、この横面パッド部2abのバンド装着用溝5(5b)は、コーナー部2acからその離反側の端部2ayまでの全長に亘って形成しなくてもよく、またその底面5bは、全てが傾斜状でなくてもよい。
一方、前記上側梱包材2bは、図3(a)、(b)に示すように、縦面パッド部2baと横面パッド部2bbとを断面略L字型に一体成形してなり、その内壁には、複数枚のガラス基板Gの上角部が挿入される複数本の保持溝8が形成され、その外壁には、複数本(図例では二本)の結束バンド3が巻回装着される複数本(図例では二本)のバンド装着用溝9が形成されている。そして、この上側梱包材2bについても、縦面パッド部2baと横面パッド部2bbとの保持溝配列方向の両端に、縦面パッド部2baおよび横面パッド部2bbのコーナー部2bcからのそれぞれの離反側の端部2bx、2byを結ぶ斜辺部を有する直角三角形状の側壁部10が一体に付設されている。なお、この上側梱包材2bは、コーナー部2bcを基準として縦面パッド部2baのその離反側の端部2bxまでの寸法が170mm、コーナー部2bcを基準として横面パッド部2bbのその離反側の端部2byまでの寸法が450mm、幅方向寸法(保持溝配列方向寸法)が520mm、肉厚が35mmに設定されている。
前記縦面パッド部2baにおける保持溝8の最上部も、ガラス基板Gの挿入を容易にすることを目的として、上方に向かって漸次拡開している。また、前記上側梱包材2bのバンド装着用溝9も、縦面パッド部2baの外壁から横面パッド部2bbの外壁に亘って連なっており、縦面パッド部2baにおけるバンド装着用溝9の底面9aは、コーナー部2bcからその離反側の端部2bxに移行するに連れて漸次浅くなる傾斜状底面とされ、また横面パッド部2bbにおけるバンド装着用溝9の底面9bも、コーナー部2bcからその離反側の端部2byに移行するに連れて漸次浅くなる傾斜状底面とされている。なお、これらの底面9a、9bの形態については、前記下側梱包材2aについて述べた事項と同様の変形態様が可能である。
これらの計四つの下側、上側梱包材2a、2bの保持溝4、8に複数枚のガラス基板Gの四角部をそれぞれ挿入し、且つそれぞれのバンド装着用溝5、9に結束バンド3を巻回装着して得られる梱包体1は、図1に示すように、ガラス基板Gの縦方向中間部(縦方向略中央部を含む部位)と、ガラス基板Gの横方向中間部(横方向略中央部)とに対応する部位において、結束バンド3が外方に張り出した状態となっている。したがって、結束バンド3からは、各梱包材2a、2bのコーナー部2ac、2bcを介してガラス基板Gのコーナー部に充分な結束力(保持力)が作用すると同時に、各梱包材2a、2bのコーナー部2ac、2bcからの離反側の端部2ay、2by周辺を介してガラス基板Gの縦側縁の中間部および横側縁の中間部にも充分な結束力(保持力)が作用することになる。すなわち、ガラス基板Gの縦側縁および横側縁の中間部に対応するバンド装着用溝5、9のそれぞれの底面部分が、ガラス基板Gの縦側縁および横側縁の端部(コーナー部)に対応するバンド装着用溝5、9のそれぞれの底面部分よりも外方に突出しているため、この外方に突出している底面部分を通じて結束バンド3から大きな結束力が作用する。これにより、ガラス基板Gが大板であってもその縦方向中間部および横方向中間部が、従来に比して確実に保持され、輸送中におけるガラス基板Gの振動等が効果的に抑制されると共に、ガラス基板Gの割れ等の危険性が可及的に回避される。
図4は、本発明と関連性を有する第1の参考例に係る梱包体1'およびこれに使用する梱包材2a'、2b'を示す斜視図である。この第1の参考例が、上述の第1の実施形態と相違しているところは、複数枚のガラス基板Gの四角部に配設される計四つの梱包材2a'、2b'がそれぞれ互いに同一または略同一の大きさおよび形状とされている点と、これらの梱包材2a'、2b'に側壁部(6,10)が形成されていない点とである。そして、各梱包材2a'、2b'の外壁に形成されているバンド装着用溝5'、9'の傾斜状底面については、上述の第1の実施形態について述べた事項と同一である。このような構成によれば、ガラス基板Gの横方向に限らず縦方向についても、中央部周辺で結束バンド3'が外方に張り出した状態となり、この張り出し部を通じてガラス基板Gの横方向および縦方向の中央部周辺に充分な結束力が作用することになる。したがって、この場合にも、ガラス基板Gのコーナー部のみならず、横方向および縦方向の中央部周辺についても確実な保持がなされ、輸送中におけるガラス基板Gの振動およびこれに起因する割れの発生等が効果的に回避される。
図5は、本発明と関連性を有する第2の参考例に係る梱包体1"およびこれに使用する梱包材2a"、2b"を示す斜視図である。この第2の参考例が、上述の第1の参考例と相違しているところは、計四つの梱包材2a"、2b"のうちの一対の下側梱包材2a"に形成されるバンド装着用溝5"の底面のみを傾斜状底面とし、上側梱包材2b"に形成されるバンド装着用溝9"の底面は傾斜していない底面とした点である。この場合、下側梱包材2a"の横面パッド部2ab"に形成されるバンド装着用溝5"の底面(図示略)については、傾斜状底面であることが好ましいが、傾斜していない底面であってもよい。また、これとは別に、上側梱包材2b"の縦面パッド部2ba"および横面パッド部2bb"の少なくとも何れか一方に形成されるバンド装着用溝9"の底面のみを傾斜状底面とし、下側梱包材2a"に形成されるバンド装着用溝5"の底面は傾斜していない底面としてもよい。このような構成によれば、ガラス基板Gに対する結束バンド3"による保持力は、上述の第1の実施形態及び第1の参考例よりも若干劣るものの、従来と比較すれば、ガラス基板Gの縦方向または横方向の中央部周辺に対する保持が適度に確実化され、搬送中におけるガラス基板Gの振動等の抑制に充分寄与できることになる。
なお、以上の実施形態では、複数枚のガラス基板を収納保持するための梱包体およびこれに用いる梱包材に本発明を適用したが、ガラス基板以外の脆性材料からなる他の板状体についても、同様にして本発明を適用することが可能である。
また、以上の実施形態では、下側梱包材2aおよび上側梱包材2bの横面パッド部2ab、2bbの外壁面が水平面であり、この両梱包材2a、2bの縦面パッド部2aa、2baの外壁面が鉛直面であるため、これらの各パッド部のバンド装着用溝5、9は、その長手方向における溝深さを相違させることにより傾斜状底面5a、5b、9a、9bを形成したが、前記横面パッド部2ab、2bbの外壁面および縦面パッド部2aa、2baの外壁面が傾斜面である場合等においては、溝深さを相違させることなく同様の傾斜状底面5a、5b、9a、9bを形成することができる。