JP4567123B2 - 水系接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、輸送機内装や履き物等の接着剤に使用でき、初期接着力、常態接着力、耐水接着力、耐熱接着力のバランスに優れた、ドライコンタクト型水系接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドライコンタクト型水系接着剤とは、接合する被着材の双方に接着剤液を塗布し、接着剤層を50〜100℃の温度で乾燥または熱活性させてから張り合わせるタイプの接着剤である。
従来、クロロプレン重合体をベースとしたドライコンタクト型接着剤は、有機溶剤にクロロプレンゴムを溶解させて製造した溶剤系接着剤が主流であった。しかし、近年溶剤系接着剤は製造や使用の際の有機溶剤による火災の危険性、環境汚染の問題が懸念されており、脱溶剤化の要求が年々高まってきている。脱溶剤化の手段としては、溶剤系接着剤をラテックスをベースとした水系接着剤に代替する方法が有効である。
特にポリクロロプレンラテックスを用いた水系接着剤は、建材用、住宅用、輸送機内装用、家具用、履き物用などの幅広い用途で使用可能である。しかし、従来の水系接着剤では、初期接着力、常態接着力、耐熱接着力のバランスにおいて必ずしも十分な性能をもつとは言えず、この改良が課題となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、初期接着力にすぐれ、常態接着力、耐熱接着力のバランスにすぐれた水系接着剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、クロロプレン重合体が特定範囲のゾル(トルエン可溶部)の重量平均分子量及びゲル(トルエン不溶部)含有量をもつポリクロロプレンラテックスと、粘着付与樹脂と、水分散型イソシアネート化合物を組み合わせることで、高い接着性能を発現する水系接着剤を発明した。
【0005】
すなわち本願の第1の発明は、(A)乳化剤としてロジン酸アルカリ金属塩を含有し、クロロプレン重合体中のゾル(トルエン可溶部)の重量平均分子量が40万以上であり、かつゲル分(トルエン不溶部)の含有量が3〜40重量%であるポリクロロプレンラテックスと(B)粘着付与樹脂と(C)水分散型イソシアネート化合物を含有する水系接着剤である。
また、本願の第2の発明は、(C)水分散型イソシアネート化合物のイソシアネート基含有率が17〜25重量%である上記の水系接着剤である。
また、本願の第3の発明は、(C)水分散型イソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートの重合物を含有する上記の水系接着剤である。
また、本願の第4の発明は、(C)水分散型イソシアネート化合物が重量平均分子量2500以上であり、かつ分子量分布値(重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値)が5.0以上である上記の水系接着剤である。
更に、本願の第5の発明は、(A)ポリクロロプレンラテックスが固形分で100重量部に対し、(B)粘着付与樹脂が固形分で20〜100重量部、(C)水分散型イソシアネート化合物が0.1〜10重量部である上記の水系接着剤である。
【0006】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。本発明におけるクロロプレン重合体水系接着剤は、ポリクロロプレンラテックスを含有する水系接着剤である。このポリクロロプレンラテックスとは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロロプレンと記す)の単独重合体またはクロロプレンとクロロプレンと共重合可能な単量体の1種以上とを乳化共重合して得られた共重合体を主成分とするラテックスである。
【0007】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類等が挙げられ、必要に応じて2種類以上用いて構わない。しかし、好ましくは、カルボキシル基含有ビニル単量体、例えばメタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などとの共重合体であることが望ましい。特にその中でも、メタクリル酸(2−メチルプロペン酸またはα−メチルアクリル酸ともいう)との共重合体であれば、接着剤に高い常態接着性能を持たせることができる。
【0008】
本発明におけるクロロプレン重合体のゲル分とは、トルエン溶媒に不溶な成分の含有率をいい、ゾルとはトルエン溶媒に可溶な成分をいう。本発明におけるクロロプレン重合体は、そのゲル含有量が3〜40重量%の範囲にあることが必要である。
接着剤の品質の安定性、接着剤の性能を考慮すると、ゲル含有量の最も好ましい範囲は、10〜30重量%である。
なお、ゲル含有量は以下の方法で測定した。ラテックスを凍結乾燥し、重量をAとする。23℃で20時間トルエンに溶解(0.6重量%に調製)し、遠心分離器を用いて、更に200メッシュ金網を用いて不溶分すなわちゲルを分離した。ゲル分を風乾後、110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、重量をBとする。下式に従ってゲル含有量を算出した。
ゲル含有量=B/A×100 (重量%)
【0009】
また本発明においては、クロロプレン重合体のゾル、即ちトルエン可溶成分の重量平均分子量が重要であり、本発明におけるクロロプレン重合体の重量平均分子量は40万以上であることが重要である。重量平均分子量の好ましい範囲は45万以上120万以下である。
なお、ゾルの重量平均分子量は、以下の方法で測定した。ゲル含有量測定時に分離したゾルを、0.1%THF溶液に調整した。下記の条件でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。
【0010】
本発明においてクロロプレン重合体のゲル分の含有率及びゾルの重量平均分子量を以上のように規定しているのは以下の理由による。
【0011】
本発明における優れた初期接着力の発現は、クロロプレン重合体が分子運動性に優れたゾルを多量に含むことによる。このため、接着界面におけるクロロプレン分子鎖の融合が速やかに起こり、接着強度が瞬時に発現し、優れた初期接着力を発現することが可能となる。クロロプレン重合体のゲル分が40重量%を越えると、この初期接着力が低下するため好ましくない。
【0012】
一方、これまで知られている一般的なポリクロロプレンラテックス接着剤においては、ゲル含有量が低いクロロプレン重合体は耐熱接着力が劣る傾向があり、初期接着力と耐熱接着力のバランスに劣っていた。本発明においては、クロロプレン重合体のゲル含有量が3〜40重量%、ゾルの重量平均分子量を40万以上とすることにより、優れた初期接着力と耐熱接着力を併せ持つことを可能とした。ゲル分が3重量%未満、ゾルの重量平均分子量が40万未満の場合には耐熱接着力が著しく低下する。また、重量平均分子量が120万を越える場合には、長期の貯蔵によってはゲル含有量が増加したりする可能性があり、品質管理の観点から好ましくは重量平均分子量は120万以下であることが望ましい。
【0013】
本発明におけるポリクロロプレンラテックスの乳化重合に使用される乳化剤及び/または分散剤は、ロジン酸アルカリ金属塩である。アルカリ金属塩としてはナトリウム塩またはカリウム塩またはナトリウム塩とカリウム塩の混合物が好ましい。
ロジン酸のアルカリ金属塩を用いたアニオン型ラテックスでなければ、本発明の水系接着剤に高い耐熱接着力を付与させることができない。この理由を以下に述べる。
【0014】
本発明における水分散型イソシアネート化合物は、クロロプレン重合体鎖だけでなく、カルボキシル基を分子内にもつロジン酸アルカリ金属塩とも反応することが可能である。このことは、ロジン酸アルカリ金属塩の水溶液と水分散型イソシアネートを混合し、50〜100℃で加熱乾燥させた試料の赤外分光スペクトルを測定し、カルボキシル基の吸収帯の強度減少を観察することで簡単に確認できる。この反応はラテックス粒子の融着を強固なものとするため、上述のようにゲル成分とゾル成分のバランスによって発現される耐熱接着力を、よりいっそう強いものとすることが可能である。
ロジン酸アルカリ金属塩の添加量は、重合時においてクロロプレン単量体または、クロロプレン単量体とそれと共重合可能な単量体の合計100重量部に対して、1重量部以上10重量部未満が好適である。1重量部未満では乳化力が不足し、10重量部以上では接合面に介在する乳化剤量が多過ぎるために、接着不良の原因となる可能性がある。
【0015】
本発明におけるクロロプレン重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、重合温度、重合触媒、連鎖移動剤、重合停止剤、最終重合率、脱モノマー、濃縮条件等を適切に選定、制御することで、固形分濃度、ゾルの重量平均分子量、ゲル含有量等を調整することが可能である。
【0016】
本発明におけるクロロプレン重合体の重合温度は特に限定されるものではないが重合反応を円滑に行うために、重合温度を0〜50℃とすることが好ましい。
重合触媒は、過硫酸カリウム等の加硫酸塩、第3−ブチルヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等であり、特に限定されるものではない。
【0017】
クロロプレン重合体の連鎖移動剤の種類は特に限定されるものではなく、通常クロロプレンの乳化重合に使用されるものが使用できるが、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。なお、連鎖移動剤の添加は、仕込み時だけではなく、重合途中に添加することもできる。
【0018】
クロロプレン重合体の重合停止剤(重合禁止剤)は特に限定するものでなく、例えば、2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン、ヒドロキシアミン等が使用できる。
【0019】
クロロプレン重合体の最終重合率は、特に限定するものではなく、任意に調節することができ、未反応のモノマーは脱モノマー操作によって除去されるが、その方法は特に限定するものではない。
濃縮あるいは、水等の添加で希釈することで、固形分濃度を必要な濃度に制御することができる。濃縮の方法としては、減圧濃縮などがあるが、特に限定するものではない。しかし、接着剤の乾燥速度を速めるために、本発明におけるポリクロロプレンラテックスの固形分濃度は50重量%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明における粘着付与樹脂は、ゲル成分とゾル成分のバランスによって得られる優れた初期接着力をさらに増強するために添加する。
本発明における粘着付与樹脂の種類は、特に限定されるものではない。具体的には、ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などが挙げられる。
耐熱接着力をより高くするために、軟化点が100℃以上の樹脂が適している。
【0021】
粘着付与樹脂を添加する場合の、その添加方法は特に限定されるものではないが、接着剤中に樹脂を均一に分散させるために、エマルジョンとしてから添加することが好ましい。さらに粘着付与樹脂エマルジョンの製法には、トルエン等の有機溶剤に溶解させたものを乳化剤を用いて水中に乳化/分散させた後、有機溶剤を減圧しながら加熱して取り除く方法と、微粒子に粉砕して乳化/分散させる方法などがあるが、より微粒子のエマルジョンが作成できる前者が好ましい。
【0022】
粘着付与樹脂の添加量としては、ポリクロロプレンラテックスを固形分で100重量部に対し、固形分で20〜100重量部が好ましい。20重量部未満では初期接着力が不十分であり、100重量部を越えると接着剤被膜の形成が阻害され初期接着力及び常態接着力ともに低下する。
【0023】
本発明における水分散型イソシアネート化合物とは、脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートから得られる、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有する重合物に親水基を導入したものである。
つまり、水に添加・攪拌すると、水中で微粒子として分散することが可能な自己乳化型イソシアネート化合物である。
脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、重合MDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHPI)、トリジンジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。中でもHDI、MDI、IPDI、水添XDIは、工業的に入手し易く良好である。
親水基とは、エチレンオキサイド繰り返し単位からなる親水基が好ましく、水分散性を考慮すれば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
【0024】
一般的に入手可能である、水分散型イソシアネート化合物の具体的な例としては、アクアネートシリーズ(日本ポリウレタン工業株式会社の製品シリーズ)、タケネートWDシリーズ(武田薬品工業株式会社の製品シリーズ)、スタフィロイドWDシリーズ(武田薬品工業株式会社)、SBUシリーズ(住友バイエルウレタン株式会社の製品シリーズ)、CRシリーズ(大日本インキ化学工業株式会社の製品シリーズ)などが挙げられる。
【0025】
本発明の水分散型イソシアネート化合物は、JIS K−7301に定められた方法によって得られるイソシアネート基含有率が17〜25重量%であることが好ましい。
イソシアネート基含有率が17重量%以上であれば、耐熱接着力をさらに強固にすることができるが、工業的にイソシアネート基含有率が25重量%を越える水分散型イソシアネート化合物を得ることは現状では困難である。
【0026】
さらに、本発明における水分散型イソシアネート化合物は、0.1重量%THF溶液をGPC測定(スチレン換算)することによって得られる重量平均分子量(Mw)が2500以上、さらに分子量分布値が5.0以上であることが好ましい。
さらに好ましくは、重量平均分子量が2500〜3500であり、分子量分布値が5.0以上8.0未満であることが望ましい。
工業的に平均分子量が3500を越える水分散型イソシアネート化合物を得ることは現状では困難であり、また分子量分布値が8.0以上の水分散型イソシアネート化合物はイソシアネート含有率や分子量が経時で変化するなど品質の安定性に問題が生じる可能性がある。
分子量分布値とは下式によって求められた値である。
分子量分布値=Mw/Mn
重量平均分子量が2500以上であったり、分子量分布値が5.0以上であれば、耐熱接着力をさらに強固にすることが可能である。
水分散型イソシアネート化合物の添加量は、ポリクロロプレンラテックスを固形分で100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜7重量部が好ましい。
添加量が0.1重量部よりも少ない場合には接着剤の耐熱性が不足し、10重量部よりも多い場合には、経済的に不利になる上、接着剤が乾燥して形成される皮膜の柔軟性がなくなったりする場合がある。
【0027】
水系接着剤は、下記に例示するような方法によって乳化重合して得た上記のクロロプレン重合体を含む乳化重合液(すなわちポリクロロプレンラテックス)に、粘着付与樹脂と水分散型イソシアネートを含ませることによって得ることができる。
【0028】
本発明における水系接着剤には、要求性能に合わせて、増粘剤(粘度調節剤)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、架橋剤、充填剤、加硫促進剤、消泡剤、防錆剤等を任意に添加することができる。
これらのうち、紫外線吸収剤、酸化防止剤を添加する場合には、接着剤中に均一に分散させるために、エマルジョンとしてから添加することが好ましい。さらにエマルジョンの製法には、トルエン等の有機溶剤に溶解させたものを乳化剤を用いて水中に乳化/分散させた後、有機溶剤を減圧しながら加熱して取り除く方法と、微粒子に粉砕して乳化/分散させる方法などがあるが、より微粒子のエマルジョンが作成できる前者が好ましい。
【0029】
増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、アルカリ膨潤アクリル系、会合型アクリル系、会合型ウレタン系、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、粘土鉱物等が挙げられる。
【0030】
紫外線吸収剤(または光安定剤)としては、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、無機系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系の具体的な例としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ヒンダードアミン系の具体的な例としては、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。
無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化セリウムの微粒子、及びそれらの微粒子を合成シリカなどの無機質フィラーに担持させたものなどが挙げられる
【0031】
酸化防止剤(または老化防止剤)としては、芳香族アミン系、アミンケトン系、ビスフェノール系、モノフェノール系などが挙げられる。
芳香族アミン系酸化防止剤の具体的な例としては、フェニル−1−ナフチルアミン、アルキレート化ジフェニルアミン、オクチレート化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンサルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
アミンケトン系酸化防止剤の具体的な例としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、6−エポキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応生成物などが挙げられる。
ビスフェノール系酸化防止剤の具体的な例としては、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
モノフェノール系の具体的な例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(またはジまたはトリ)(α−メチル−ベンジル)フェノール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
【0032】
可塑剤としては、リン酸エステル系、フタル酸系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ酸エステル系などが挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤の具体的な例としては、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリ(クロロエチル)(TCEP)、リン酸トリスジクロロプロピル(CRP)、リン酸トリブトキシエチル(TBXP)、リン酸トリス(β−クロロプロピル)(TMCPP)、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリス(イソプロピルフェニル)などが挙げられる。
フタル酸系可塑剤の具体的な例としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、テトラヒドロフタル酸エステルなどが挙げられる。
脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤の具体的な例としては、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジ−n−アルキル(D610A,610A)、アジピン酸ジブチルジグリコール(BXA)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)などが挙げられる。
オキシ酸エステル系可塑剤の具体的な例としては、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。
その他の可塑剤としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化ビフェニル2−ニトロビフェニル、ジノニルナフタリン、o−及びp−トルエンスルホンエチルアミド、樟脳、アビエチン酸メチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油などがある。
【0033】
架橋剤としては、金属酸化物、金属水酸化物などがあり、具体的には、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0035】
[実施例1]
ALX−600(ロジン酸カリウム塩を乳化剤として用いたポリクロロプレンラテックス、電気化学工業株式会社製)を用いて、表1に示した配合処方で水系接着剤を作成し、以下の方法により接着力を評価した。
[初期接着力評価試験]
帆布(糊代部のサイズは幅25mm×長さ70mm)2枚各々に、接着剤を150g(wet)/m2刷毛で塗布し、23℃雰囲気下で3時間乾燥した。その上に接着剤を200g/m2刷毛で塗布し、60℃雰囲気下で5分間乾燥させた後、再び接着剤を200g(wet)/m2刷毛で塗布し、60℃雰囲気下で5分間乾燥させた。その後すぐに張り合わせ、ハンドローラーで圧着した。
圧着してから10分後に引張試験機で引張速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
【0036】
[常態接着力評価試験]
帆布(糊代部のサイズは幅25mm×長さ70mm)2枚各々に、接着剤を150g(wet)/m2刷毛で塗布し、23℃雰囲気下で3時間乾燥した。その上に接着剤を200g/m2刷毛で塗布し、60℃雰囲気下で5分間乾燥させた後、再び接着剤を200g(wet)/m2刷毛で塗布し、60℃雰囲気下で5分間乾燥させた。その後すぐに張り合わせ、ハンドローラーで圧着した。
圧着してから5日後に引張試験機で引張速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
【0037】
[耐熱接着力評価試験]
帆布(糊代部のサイズは幅25mm×長さ50mm)2枚各々に、接着剤を150g(wet)/m2刷毛で塗布し、23℃雰囲気下で3時間乾燥した。その上に接着剤を200g/m2刷毛で塗布し、60℃雰囲気下で5分間乾燥させた後、再び接着剤を200g(wet)/m2刷毛で塗布し、60℃雰囲気下で5分間乾燥させた。その後すぐに張り合わせ、ハンドローラーで圧着した。
圧着してから1日後に、80℃雰囲気下で試料の一端を固定し、他端に1kgの荷重を掛ける。30分経過した時の、剥離した長さを測定した。30分以内に落下したものは、「落下」と判定した。
【0038】
またポリクロロプレンラテックスの固形分濃度、及びラテックスに含まれるクロロプレン重合体のゲル分、及び可溶部(ゾル)の重量平均分子量を下記の方法で測定した。
[固形分濃度]
アルミ皿だけを秤量してAとした。ラテックス試料を2mlいれたアルミ皿を秤量しBとした。ラテックス試料を入れたアルミ皿を110℃雰囲気下で2時間乾燥させた後、秤量しCとした。固形分濃度(%)は下式により求めた。
固形分濃度={(C−A)/(B−A)}×100
【0039】
[トルエン不溶分(ゲル含有量)測定]
ラテックス試料を凍結乾燥し秤量してAとした。23℃で20時間、トルエンで溶解(0.6%に調整)し、遠心分離機を使用し、更に200メッシュの金網を用いてゲルを分離した。ゲル分を風乾燥後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、秤量してBとした。ゲル含有量(%)は下式に従って算出した。
ゲル含有量=(B/A)×100 (%)
【0040】
[トルエン可溶部(ゾル)の重量平均分子量]
下記の条件でGPC測定を行った。分子量の算出は、ポリスチレン換算で求めた。試料は分離したゾルを、0.1重量%THF溶液に調整した。
【0041】
[実施例2]
実施例1の配合処方において、硬化剤を水分散型イソシアネート化合物Bに変更し、実施例1と同様にして接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0042】
[実施例3]
実施例1の配合処方において、硬化剤を水分散型イソシアネート化合物Cに変更し、実施例1と同様にして接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0043】
[比較例1]
実施例1の配合処方において、水分散型イソシアネート化合物を配合しないで、実施例1と同様に、接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0044】
[比較例2]
実施例1の配合処方において、ポリクロロプレンラテックスをLA−50(ロジン酸ナトリウム塩を乳化剤として用いたポリクロロプレンラテックス、電気化学工業株式会社製)に変更し、接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0045】
[比較例3]
実施例2の配合処方において、ポリクロロプレンラテックスをLA−50(ロジン酸ナトリウム塩を乳化剤として用いたポリクロロプレンラテックス、電気化学工業株式会社製)に変更し、接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0046】
[比較例4]
実施例3の配合処方において、ポリクロロプレンラテックスをLA−50(ロジン酸ナトリウム塩を乳化剤として用いたポリクロロプレンラテックス、電気化学工業株式会社製)に変更し、接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0047】
[比較例5]
実施例1の配合処方において、ポリクロロプレンラテックスをLV−60N(ロジン酸ナトリム塩を乳化剤として用いたポリクロロプレンラテックス、電気化学工業株式会社製)に変更し、接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0048】
[比較例6]
実施例2の配合処方において、ポリクロロプレンラテックスをLV−60N(ロジン酸ナトリウム塩を乳化剤として用いたポリクロロプレンラテックス、電気化学工業株式会社製)に変更し、接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0049】
[比較例7]
実施例3の配合処方において、ポリクロロプレンラテックスをLV−60N(ロジン酸ナトリウム塩を乳化剤として用いたポリクロロプレンラテックス、電気化学工業株式会社製)に変更し、接着剤の初期接着力、常態接着力、耐熱接着力を評価した。
【0050】
実施例1〜3、比較例1〜7の得られた水系接着剤の評価結果を表1、表2に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1、表2において、添加剤は下記の通り。
注1)タマノルE−100(荒川化学工業(株)の製品)、テルペンフェノール樹脂エマルジョン、固形分濃度:53重量%
注2)アロンA−20L(東亞合成(株)の製品)、ポリアクリル酸ナトリウム系、固形分濃度:17重量%
注3)タケネートWD−730(武田薬品工業(株)の製品)、重量平均分子量:2600、分子量分布値:6.0、イソシアネート基含有量:18.6重量%、固形分濃度:100重量%
注4)タケネートWD−720(武田薬品工業(株)の製品)、重量平均分子量:1500、分子量分布値:4.0、イソシアネート基含有率:10.8重量%、固形分濃度:100重量%
注5)SBU−0772(住友バイエルウレタン(株)の製品)、重量平均分子量:2100、分子量分布値:4.8、イソシアネート基含有量:19.3重量%、固形分濃度:100重量%
【0054】
【発明の効果】
表1より明らかな如く、本発明の水系接着剤(実施例1〜3)は、初期接着力、常態接着力、耐熱接着力に優れていることが明らかであり、ドライコンタクト型接着剤として、内装用接着剤、建材用接着剤、履き物用接着剤などとして広く使用することができる。
Claims (2)
- (A)乳化剤としてロジン酸アルカリ金属塩を含有し、クロロプレン重合体中のゾル(トルエン可溶部)の重量平均分子量が40万以上であり、かつゲル分(トルエン不溶部)の含有量が3〜40重量%であるポリクロロプレンラテックスと(B)粘着付与樹脂と(C)ヘキサメチレンジイソシアネートの重合物に親水基を導入して得られる、イソシアネート基含有率17〜25重量%、重量平均分子量2500以上、分子量分布値5.0以上である水分散型イソシアネート化合物を含有することを特徴とする水系接着剤。
- (A)ポリクロロプレンラテックスが固形分で100重量部に対し、(B)粘着付与樹脂が固形分で20〜100重量部、(C)水分散型イソシアネート化合物が0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1記載の水系接着剤。
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