JP4566708B2 - ポリエステル系複合繊維の製造方法 - Google Patents
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(2)前記紡糸口金として、その吐出孔が口金表面の垂直軸に対して10〜45度の角度で傾斜したものを使用すること、
(3)高固有粘度のブロック共重合ポリマー(A)を前記吐出孔が傾斜した側に流すこと、
(4)前記吐出孔より吐出した複合流を1200〜3000m/分で引き取り、最大延伸倍率の0.6〜0.8倍の延伸倍率で、かつ70〜90℃の温度で延伸すること、
を特徴とするポリエステル系複合繊維の製造方法、にある。
1.本発明のポリエステル系複合繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維と混繊後染色したときでも、ポリエチレンテレフタレート繊維との染色性差が小さく、染色後の織編物で繊維間の濃淡差が小さく、織編物の見栄えが良好となる。
2.本発明のポリエステル系複合繊維は、高固有粘度のブロック共重合ポリマーと低固有粘度のポリエチレンテレフタレートで構成され、両複合成分の粘度差が拡大しているため、捲縮率が高くなり、極めて高いストレッチ性の織編物を得ることができる。
3.本発明の方法は、高固有粘度のブロック共重合ポリマーと低固有粘度のポリエチレンテレフタレートという粘度差の大きい複合成分を用いながら、安定に複合紡糸することを可能にする。
4.本発明の織編物は、ポリエチレンテレフタレート繊維と混繊し染色後の繊維間での濃淡差が小さく、見栄えが良好であり、捲縮率が向上し、極めて高いストレッチ性を有するものである。
複合成分の一方のブロック共重合ポリマー(A)は、例えばジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオール及びポリオキシテトラメチレングリコールを、チタン化合物を触媒として、150〜220℃の温度でエステル交換し、次いで230〜260℃に昇温し、0.5kPa以下の減圧下で加熱することにより、ブロック共重合ポリマー(A)であるポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体が得られる。この際、用いるポリオキシテトラメチレングリコールは、ブロック共重合体分子鎖中に導入されるものと考えることができ、従ってポリオキシテトラメチレングリコールの使用量からブロック共重合体中のソフトセブグメントの重量比を計算で求めることができる。
セイコー電子工業社製DSC220を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
(ポリマーの固有粘度[η])
ポリマーをフェノールとテトラクロロエタンの1:1の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計により25℃において測定した。
JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に準拠して測定した。 試長200mm、引張速度20mm/分、チャート速度300mm/分で、荷重−伸長曲線を描き、この曲線から原点の近くで伸長変化の最大点A(切線角の最大点)を求め、次の式により算出した。
ヤング率(cN/dtex)=P/(d× l’/l)
(P:切線角の最大点Aにおける荷重(cN)、d:繊維の繊度(dtex)、l:試験長(mm)、l’:THの長さ(Hは垂線の足、Tは切線と横軸との交点))
サンプル原糸を撚係数K=100(T=K×√D、Tは1m当りの撚数、Dはサンプル原糸の繊度)の条件で撚糸を施し、温度70℃、湿度90%RHの条件下で40分間セットした糸を緯糸として、このサンプル糸の繊度(D)から打ち込み本数(本/cm)=311.1/√Dで算出される打ち込み本数で、経糸密度39.6本/cmに設定された56dtex/18フィラメントの原糸を経糸として製織した後、織物の緯糸方向に長さ1mの間隔で印を付け(L0)、緯糸に平行に10cm幅のサンプル布を切り出し、130℃で30分間、熱水処理した。熱水処理したサンプル布を風乾後、片端を固定して垂直に垂らし、下方の他端に0.45g/dtexの荷重をかけ、先に付けた印の間隔(L1)を測定し、次式にて布帛収縮率を算出した。
布帛収縮率(%)=[(L0−L1)/L0]×100で算出した。
測定原糸サンプルと比較対照サンプル(56dtex/12フィラメントのカチオン可染ポリエステル複合糸)の編地を、同浴で下記条件で染色し、比較対照サンプルとの染色性を比較した。
染色温度及び時間:130℃×30分
染料 :テラシル ネービィ GRL−C5%(チバ・スペシャルティケミカルズ社製分散染料)
染料濃度 :1% (対繊維重量)
助剤 :ディスパーTL 0.7cc/リットル
浴比 :1:80
布帛収縮率を測定したサンプルをハンドリングして評価した。
ジメチルテレフタレート3.94kg、1,4−ブタンジオール2.37kg及び分子量約1000のポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)500gを、チタンテトラブトキサイド3gの存在下で、150〜210℃で4時間加熱してエステル交換反応を行わせ、次いで徐々に減圧にしながら250℃まで昇温し、最終的に0.2KPaの圧力で3時間反応させた。得られたブロック共重合ポリマーは、ポリテトラメチレンテレフタレート成分を90重量%、PTMG成分を10重量%含み、融点219℃、[η]は1.12であった。
ジメチルテレフタレート3.48kg、1,4−ブタンジオール2.06kg及び分子量約1000のPTMG1000gを、チタンテトラブトキサイド3gの存在下で、150〜210℃で4時間加熱してエステル交換反応を行わせ、次いで徐々に減圧にしながら250℃まで昇温し、最終的に0.2KPaの圧力で3時間30分反応させた。得られたブロック共重合ポリマーは、ポリテトラメチレンテレフタレート成分を80重量%、PTMG成分を20重量%含み、融点212℃、[η]は1.22であった。
実施例1において、紡速を2100m/分にした以外は、実施例1と同様にして未延伸糸を得た。この未延伸糸を延伸速度600m/分、温度82℃、延伸倍率2.34倍(最大延伸倍率の0.7倍)で延伸した後に、120℃の熱セットを行い、56dtex/12fの延伸糸を得た。
実施例1において、紡速を2500m/分にした以外は、実施例1と同様にして未延伸糸を得た。この未延伸糸を延伸速度600m/分、温度82℃、延伸倍率2.11倍(最大延伸倍率の0.7倍)で延伸した後に、120℃の熱セットを行い、56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、パーンより解除すると、きわめて細かいらせん状の捲縮を発現した。得られた延伸糸のヤング率は51cN/dtexであった。また、得られた延伸糸は、筒編地の染色テストを実施した結果、比較対照としたカチオン可染ポリエステル複合糸と同等であり、実用上使用可能なレベルであった。さらに、延伸糸を撚糸した後に製織して布帛収縮率を測定した結果、得られた織物は、布帛収縮率が48%であり、非常に高いストレッチ性を有するものであった。また、織物の風合は、非常にソフトであった。
ジメチルテレフタレート3.02kg、1,4−ブタンジオール1.70kg及び分子量約1000のPTMG1500gを、チタンテトラブトキサイド3gの存在下で、150〜210℃で3時間加熱してエステル交換反応を行わせ、次いで徐々に減圧にしながら250℃まで昇温し、最終的に0.2KPaの圧力で3時間反応させた。得られたブロック共重合ポリマーは、ポリテトラメチレンテレフタレート成分を70重量%、PTMG成分を30重量%含み、融点203℃、[η]は1.29であった。
ジメチルテレフタレート2.55kg、1,4−ブタンジオール1.40kg及び分子量約1000のPTMG1500gを、チタンテトラブトキサイド3gの存在下で、150〜210℃で3時間加熱してエステル交換反応を行わせ、次いで徐々に減圧にしながら250℃まで昇温し、最終的に0.2KPaの圧力で3時間反応させた。得られたブロック共重合ポリマーはポリテトラメチレンテレフタレート成分を60重量%、PTMG成分を40重量%含み、融点189℃、[η]は1.33であった。
実施例2と同様にして得たブロック共重合ポリマーを240℃で、[η]0.70のPETを290℃で、別々に溶融した後に、270℃の紡糸頭に導入し、紡糸口金上流部で複合比1:1のサイドバイサイドの複合流とした後、複合流をブロック共重合ポリマー側へ口金表面に垂直な軸に対して30度の角度で傾斜した吐出孔を12個有する紡糸口金から吐出し、紡速1800m/分で巻き取り未延伸糸を得た。紡糸工程の製糸性は良好であった。また、紡糸後の各複合成分のポリマーの[η]については、各成分の単独ポリマーの紡出糸を別々にサンプリングしたもので測定した結果、ブロック共重合ポリマー紡出糸の[η]は1.12、PET紡出糸の[η]は0.65であった。
実施例2と同様にして得たブロック共重合ポリマーを240℃で、[η]1.00のポリテトラメチレンテレフタレート(PBT)を280℃で、別々に溶融した後に、270℃の紡糸頭に導入し、紡糸口金上流部で複合比1:1のサイドバイサイドの複合流とした後、複合流をブロック共重合ポリマー側へ口金表面に垂直な軸に対して30度の角度で傾斜した吐出孔を12個有する紡糸口金から吐出し、紡速1800m/分で巻き取り未延伸糸を得た。紡糸工程の製糸性は良好であった。また、紡糸後の各複合成分のポリマーの[η]については、各成分の単独ポリマーの紡出糸を別々にサンプリングしたもので測定した結果、ブロック共重合ポリマー紡出糸の[η]は1.11、PBT紡出糸の[η]は0.94であった。
イソフタル酸を8モル%共重合した[η]0.70の変性PETを280℃で、[η]0.51の未変性のPETを280℃で、別々に溶融した後に、280℃の紡糸頭に導入し、紡糸口金上流部で複合比1:1のサイドバイサイドの複合流とした後、変性PET側へ口金表面に垂直な軸に対して30度の角度で傾斜した吐出孔を12個有する紡糸口金から吐出し、紡速2100m/分で巻き取り未延伸糸を得た。紡糸工程の製糸性は良好であった。また、紡糸後の各成分のポリマーの[η]については、各成分の単独ポリマーの紡出糸を別々にサンプリングしたもので測定した結果、変性PET紡出糸の[η]は0.68、未変性PET紡出糸の[η]は0.49であった。
実施例2において、口金表面に垂直な軸に対して傾斜のない吐出孔を12個有する紡糸口金を用いた以外は、実施例2と同様にして紡糸を試みたが、ニーリングが著しく未延伸糸を巻き取ることができなかった。
1.本発明のポリエステル系複合繊維を用いるならば、ポリエチレンテレフタレート繊維と混繊後染色したときでも、ポリエチレンテレフタレート繊維との染色性差が小さく、染色後の織編物で繊維間の濃淡差が小さく、見栄えが良好な織編物を得ることができる。
2.本発明のポリエステル系複合繊維を用いるならば、高固有粘度のブロック共重合ポリマーと低固有粘度のポリエチレンテレフタレートで構成され、かつその粘度差が拡大しているため、捲縮率が高く、極めて高いストレッチ性の織編物を得ることができる。
3.本発明の方法は、高固有粘度のブロック共重合ポリマーと低固有粘度のポリエチレンテレフタレートという粘度差の大きい複合成分を用いながら、安定に複合紡糸することを可能にする。
4.本発明の織編物は、本発明のポリエステル系複合繊維含むため、本発明のポリエステル系複合繊維の特徴であるポリエチレンテレフタレート繊維と混繊し染色後の繊維間での濃淡差が小さいので見栄えが良好であり、捲縮率が向上しているので極めて高いストレッチ性を有するものである、衣料用として有用なるものである。
Claims (1)
- (1)ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなる高固有粘度のブロック共重合ポリマー(A)と、該ブロック共重合ポリマー(A)より低固有粘度のポリエチレンテレフタレート(B)を別々に溶融し、固有粘度差で0.5以上の2種の溶融流からなるサイドバイサイドの複合流とした後、紡糸口金の吐出孔より吐出すること、
(2)前記紡糸口金として、その吐出孔が口金表面の垂直軸に対して10〜45度の角度で傾斜したものを使用すること、
(3)高固有粘度のブロック共重合ポリマー(A)を前記吐出孔が傾斜した側に流すこと、
(4)前記吐出孔より吐出した複合流を1200〜3000m/分で引き取り、最大延伸倍率の0.6〜0.8倍の延伸倍率で、かつ70〜90℃の温度で延伸すること、
を特徴とするポリエステル系複合繊維の製造方法。
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