JP4562911B2 - 遅発性ジスキネジア及び他の運動障害の治療方法 - Google Patents

遅発性ジスキネジア及び他の運動障害の治療方法 Download PDF

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Description

【0001】
発明の背景
この発明は、3つの主要な運動障害1)遅発性ジスキネジア(TD)、遅発性ジストニー及び関連する運動障害(神経弛緩(抗精神病)薬にさらされることにより誘発される);2)投薬に関係しない焦点ジストニー(眼瞼痙攣、メージュ症候群、斜頚、痙攣性発声困難及び書痙を含む);及び3)チック(多発性チック及びジルドラトゥーレット症候群(TS)を含む)の治療に関するものである。
【0002】
運動障害は、住民のかなりの部分に影響を及ぼし、疾病並びに困難を引き起こしている。遅発性ジスキネジア(TD)は、神経系の慢性疾患であり、口、舌及び顔面筋の不随意の、不規則なリズム運動を特徴とする。上肢も又、含まれ得る。これらの運動は、様々な程度で、他の不随意運動及び運動障害に伴い得る。これらは、胴体の揺れ、身もだえ又はねじり運動(遅発性ジストニー)、力を込めて眼を閉じること(遅発性眼瞼痙攣)、継続的運動への抵抗不能衝動(遅発性静座不能症)、頸の攣縮運動(遅発性痙性斜頸)、及び中断された呼吸運動(呼吸ジスキネジア)を含む。大多数のTDの症例は、抗精神病薬(神経弛緩薬)の長期使用により引き起こされる。比較的少数は、他の薬物(例えば、神経弛緩薬と同様にドーパミンレセプターをブロックするメトクロプラミド)の使用により引き起こされる。TDは、しばしば、神経弛緩薬治療を中止した後に明らかとなり又は悪化する。神経弛緩薬療法の再開は、一時的に、不随運動を抑制するが、長期的にはそれらを一層重くし得る。
【0003】
TDは又、様々な程度の認識障害とも関係している。TDと関係する認識機能不全には、注意、集中、記憶又は管理機能(例えば、判断又は抽象的推論)が含まれ得る(例えば、Sachdev等、Acta Psychiatr Scand 93:451,1996;Waddington及びYoussef,Psychol.Med.26:681,1996;Swartz,Neuropsychobiology 32:115,1995を参照)。TDと関係する認識障害は、通常、患者をTDにかかりやすくする脳機能において背後にある差異のマーカーとして見られる。しかしながら、それは、TDそれ自体のためでもあり得て、不可逆であり得、或は、TDが上首尾に治療されれば部分的に可逆であり得る。
【0004】
遅発性ジスキネジア(TD)は、神経弛緩薬の治療を受けた患者の約15〜20%に影響を及ぼしている(Khot等,Neuroleptics and Classic Tardive Dyskinesia,in Lang AE,Weiner WJ(編): Drug Induced Movement Disorders,Futura Publishing Co.,1992,p.121-166)。神経弛緩薬は、精神***病及び関連する精神病(推定罹患率1%)、精神病的特徴を伴う感情障害(推定最少罹患率0.5%)及び精神病又は心的動揺を伴うアルツハイマー病(推定最低罹患率0.5%)を含む幾つかの一般的な精神病を治療するために用いられている。神経弛緩剤治療の必要な者の半数がそれを受けていると仮定すると、TDは、米国だけで数10万人の人々に影響を及ぼしているということになる。TDの累積的発病率は、実質的に、女性、高齢者及び精神***病以外の病気例えば双極性障害(躁鬱病)について神経弛緩剤での治療を受けている者において一層高い(例えば、Hayashi等,Clin.Neuropharmacol.19:390,1996;Jeste等,Arch.Gen.Psychiatry,52:756,1995参照)。神経弛緩剤の急性の運動副作用と異なり、TDは、一般に、抗パーキンソン病薬に応答しない(Decker等,New Eng.J.Med.,10月,p.861,1971)。
【0005】
焦点ジストニーは、特定の筋群の断続的に続く収縮を含む一群の運動障害であり、身体のある部分の再発性の異常な状況を生じる。最も一般的なものは、痙性斜頸であり、これは、頸のねじれを含む。他の例は、眼瞼痙攣(これは、不随意に眼を閉じること又は過度に力のこもったまたたきを含む)及び書痙(これは、手の筋肉の収縮を含む)である。他のもっと一般的でない焦点ジストニーには、喉頭部の筋肉が含まれる(痙攣性発声困難)。他の比較的希なジストニーには、特定の職業(例えば、バイオリンの演奏)に特異的な筋群が含まれる。米国の一つの郡における焦点ジストニーの罹患率は、100万人当たり287人と見積もられており(モンロー郡スタディー);これは、米国だけで少なくとも70,000人の人々が影響を受けることを示唆している。眼瞼痙攣だけで、25,000人を超える人々に影響を及ぼす(出典:米国FDA Web Site; Orphan Drug Actのページ)。
【0006】
チックは、男子の1〜13%及び女子の1〜11%に影響を及ぼすと推定されており、男女比は、2〜1未満である。7〜11歳の子供の約5%が、チック行動の影響を受けている(Leckman等,Neuropsychiatry of the Bas.Gang,12月,20(4):839-861,1997)。発声を伴う多発性チック(即ち、トゥーレット症候群)は、種々の報告の間で異なり、10,000人当たり5人から1,000人当たり5人にまで及んでいる。トゥーレット症候群は、少年において少女の3〜4倍ありがちであり、子供及び青年において、成人の10倍以上ありがちである(Leckman等、前書;Esper等,Tenn.Med.,1月,90:18-20,1997)。
【0007】
チックは、突然の反復運動、身振り又は発声であり、しばしば、正常の行動の型を真似る。運動性チックは、眼のまたたき、頭の攣縮又は肩をすくめる等の運動を含むが、一層複雑で目的のあるらしい行動例えば感情の顔への表現又は腕及び頭の意味のある身振りに変わり得る。極端な場合には、この運動は、卑猥(卑猥動作)又は自己損傷的であり得る。有声又は発声チックは、うがい音から複雑な発声及び演説に及び、時に汚言症(卑猥な演説)を伴う(Leckman等、前書)。チックは、時間的に不規則であるが、関与する筋肉に関しては一貫している。特徴としては、それらは、随意的努力によって、短時間は抑制され得る。
【0008】
ジルドラトゥーレット症候群(TS)は、最も重症のチック疾患である。TSの患者は、少なくとも一つの発声(有声)チックを含む多くのチックを有する。TSは、単純な運動性チック例えば眼のまたたき又は頭の攣縮の出現により幼児期に明らかになる。初期には、チックは、見え隠れしているが、時に、持続性で重症となり、子供とその家族に有害な影響を有し始める。有声チックは、運動性チックの開始から平均で1〜2年後に現れる。10歳までに、殆どの子供は、チックの前に頻繁に起きる前兆の衝動に気付いている。かかる前兆は、その個人に、随意的にチックを抑制することを可能にするが、それでも、前兆は、残念ながら、不調を有することに関連する不快を加える。後期青年期/初期成人期のチック疾患は、ある個人においては、有意に改善することができる。しかしながら、チックを患い続けている成人は、しばしば、特に重症で衰弱した徴候を有する(Leckman等、前書)。
【0009】
運動性疾患(特に、TD)の病態生理学は、決定的には確立されていない。ドーパミンレセプターの遮断は、増大した数のドーパミンレセプターへと導き、従って、線条体ニューロンのドーパミンに対する増大された感受性へと導くということは周知である。(例えば、Andrews,Can J Psych 39:576,1994;Casey,[Psychopharmacology中]:The Fourth Generation of Progress,Raven Press,1995参照)。TDの病態生理学に関する最初の主要な仮説は、TDは、この線条体ニューロンのドーパミンに対する過敏の結果であるというものであった。この「ドーパミン過敏」仮説の支持において、ドーパミンアゴニストがこの疾患を一層重くし得るということが注意されている(Bezchibnyk-Butler及びRemington,Can J.Psych.,39:74,1994)。しかしながら、ドーパミン過敏仮説は、TDとパーキンソン症候群(ドーパミン不足状態)がしばしば同じ患者に一緒に存在するという観察と相容れない。
【0010】
他の研究は、TDの不可逆的症例は、脳底神経節に対する興奮毒性のダメージに関係し得るということを示唆している(Andreassen及びJorgensen,Pharmacol.Biochem.Behav.,49(2):309-312,1994;Tsai等,:Am J Psych,9月155:9,1207-13,1998)。阻害性神経伝達物質GABAの後天的な不足も又、TDの発生に関連付けられてきた(Delfs等、Experimental Neurol.,133:175-188,1995)。
【0011】
広く研究されている空の咀嚼運動(VCM)のTDのモデル動物も又、この疾患の発生におけるグルタメートベースの興奮毒性機構についての証拠を与えた(Meshul等;Psychopharmacology(Berl),125:238-47,1996 6月;Andreassen等;Br J Pharmacol,199:751-7,1996 10月)。VCMを有するラットに投与した場合、エタノールは、その動物の口顔運動を急性に減じる。この効果は、ラットをベンゾジアゼピンインバースアゴニストで予備処理した場合には阻害され、これは、それがエタノールによるGABA−Aレセプターの刺激に媒介されるということを示唆している(Stoessl,Pharmacol.Biochem.Behav.7月,54:541-6,1996 7月)。Stoesslは、「GABA作動性刺激」は、TDの治療において更なる研究の価値があることを示唆している。しかしながら、彼は、NMDAアンタゴニストを用いるTDの治療のアイデアを発展させておらず、TDの治療剤としてメマンチンを用いることを示唆してもいない。
【0012】
TDの身体的症状発現は、ハンチントン病及びパーキンソン病等の変性疾患と関係した運動障害と類似し得る。TDの患者は、ハンチントン病の場合に見られるものと区別できない舞踏病(四肢のすばやい、不規則な動作)を示す。TDの頸、胴体及び手足の運動は、レボドーパを用いるパーキンソン病の長期の治療と関係するピーク用量ジスキネジアのものと区別不能であり得る。遅発性ジスキネジアの身体的症状発現は、特発性ジストニーの症状発現とほぼ同じである(即ち、それらは、ドーパミンアンタゴニストにさらされることに関係しない)。(下記の更なる議論を参照されたい)
【0013】
同様の機構が、遅発性運動障害及び特発性焦点ジストニーの病態生理学に関係しているということは明白である。陽電子放射断層撮影法は、一つの特定のジストニー、斜頸が、脳底神経節におけるニューロンの代謝亢進と関係することを示している。大脳皮質、脳底神経節及び視床を含む運動制御ループの活動亢進が、ジストニーに特徴的な異常な姿勢及び動作(即ち、異常な姿勢への動作及び該姿勢からの動作)の原因であるというのが仮説となっている(Galardi等、Acta.Neurol Scand,9月,94:172-6,1996)。他の研究は、ジストニーの患者における異常なドーパミン作動性伝達又はレセプター機能を示している(例えば、Perlmutter等、J Neurosci,1月,15,17:843-50,1997参照)。パーキンソン病及びジストニーの患者はレボドーパのピーク及び他のレベルの両方の問題を有し得るので、多すぎるか又は少なすぎるドーパミンは、ジストニーと関係し得る(Hallett,Arch.Neurol.5月,55:601-3,1998)。メマンチンはドーパミンアゴニスト活性を有するが、焦点ジストニーの治療剤として示唆されたことはない。
【0014】
チック疾患の病態生理学は、幾つかのもっともらしい仮説が示されているが、TDと同様、未だ決定的には確立されていない。チック疾患の病態生理学は、TD及び焦点ジストニーの病態生理学に含まれ得る機構に似ている。皮質−線条体−淡蒼球−視床−皮質の感覚運動ループの過剰の活性が、チック疾患に伴う運動インパルス制御の欠如と関連付けられてきた(Zambian等、Am.J.Psychiatry,Vol.154,9月,1997; Leckman等、前書)。この活動亢進は、線条体における過剰なドーパミン作動性活性又は抑制性伝達の相対的不足を反映し得る。脳底神経節又はそれらの接続の機能不全が存在することはありそうなことであるが、脳底神経節、視床及び運動領は、殆どの症例において、解剖学的には正常である。
【0015】
TDの治療
最近の研究は、ビタミンEがTDの症状を適度に減少し得ることを示唆している(Lohr及びCaliguiri,J Clin Psychiatry 57;167,1996;Dabiri等,Am.J.Psychiatry,6月,151(6):925-926,1994)。GABAアゴニスト例えばバクロフェン及び種々のベンゾジアゼピンも又、幾つかの肯定的報告の主題であったし、おそらく、それらの低い毒性が限られた効果にもかかわらずそれらの使用を正当化するために、TDの症状を改善するために実際に広く用いられている。(Gardos及びCole,Psychopharmacology: The Fourth Generation of Progress,Bloom及びKupfer編、p.1503-1510,1995)。この総説は、プロプラノロール、クロニジン、コリン作動性アゴニスト、ブスピロン及びカルシウムチャンネルアンタゴニストを含む他の薬剤に伴う様々な利益の報告を引用した。しかしながら、これらの何れも、TDに関連する運動又は認識障害の一般に受け入れられる治療剤とはならなかった。(この著者は、ニモジピン、特に優れたCNSの透過性を有するカルシウム−チャンネルアンタゴニストを用いるTDの治療に幾らか成功していた。)
【0016】
Lidsky等の米国特許第5,602,150号には、神経弛緩剤を受けている患者におけるTDの発生が、タウリン又はタウリン誘導体の同時投与により阻止され得ることが提示された。Lidskyは、彼の発明を、TDは興奮毒性のダメージのためでありタウリン及びタウリン誘導体は患者をこのダメージから防護するという理論を基礎とした。このタウリンの推奨は、単一のモデル動物に基づくものである。これらの報告された実験は、継続的な神経弛緩剤の存在下で又は別の条件下での確立された運動に対するタウリンの如何なる治療効果も扱っていない。この特許もそこで引用された実験も、タウリン又は誘導体が確立された運動障害に対して利益となるであろうことを予想も暗示もしていない。その上、Lidsky等(前出)により提示された機構は、長期間の神経防護に基づくものである。彼は、タウリン又はタウリン誘導体が運動障害に対する如何なる即効性の短期の効果を有し得るかということを推測も、主張も又は示唆もしていない。
【0017】
メマンチンは、欧州でパーキンソン病の治療のために認可された薬物である。メマンチン、アマンタジンの同族体は、N−メチル−D−アスパルテート型グルタメートレセプター遮断剤(「NMDAレセプターアンタゴニスト」又は「NMDAレセプター遮断剤」)並びにドーパミンアゴニストである。メマンチンは、治療されたパーキンソン病において見られるジスキネジア運動の幾つかを軽減すると報告されているが、遅発性ジスキネジアを治療するためのヒトにおけるその使用の報告はなく、少なくとも一人のTDの分野で広く信頼されている専門家が、任意の抗パーキンソン病薬はTDに対する有効な薬剤であると驚きを表明した(Dilip Jeste,M.D.,私信,1997)。
【0018】
米国特許第4,122,193号においては、1,3,5−三置換アダマンタン(1−アミノ−3,5−ジメチル−アダマンタンを含む)がラットの運動亢進症の治療に有用であるということが報告されている。この薬剤は又、一般に、パーキンソン病、先天性眼振、視床緊張状態及び痙攣状態のコンテキストにおいて、運動亢進症の治療剤として、及び「運動不能症の大脳状態の患者の活性化」にも推奨されている。TDと異なり、治療すべき運動亢進症のコンテキストとして、この特許に記載された下にある状態の何れも、ドーパミンアゴニストにより一層重くされたとは考えられないということは著名である。その上、この参考文献中には、1−アミノ−3,5−ジメチル−アダマンタンがNMDAレセプター遮断剤として作用するという認識はない。それどころか、その開示は、1,3,5−三置換アダマンタン化合物がカテコールアミン代謝に、例えばドーパミンを遊離させることにより又はレセプターを刺激することによって影響することを示している。この後者の見方は、著者が、ドーパミンアゴニストの投与が一般に専門家の見解に反するので、メマンチンがTDの有効な治療剤たり得ることを認識しなかったことを示唆している。
【0019】
同時係属中の本願出願人による出願第08/861,801号及び09/006,641号(参考として本明細書中に援用する)においては、メマンチン(アマンタジンの同族体で、N−メチル−D−アスパルテート型(NMDA)レセプター遮断剤並びにドーパミンアゴニスト)及びアカンプロセート(アミノ酸タウリンの誘導体のカルシウム塩であり、間接的なNMDAアンタゴニストであり且つGABA−Aアゴニスト)での治療は、TDと関連した運動障害及び認識障害の両者に対する有効な治療として進められ、幾人かの重く冒された個人において劇的に有効であると報告された。これらの特許出願に記載された症例は、メマンチンのTDの治療への利用の最初の報告を含んでいる。
【0020】
焦点ジストニーの治療
上記のように、焦点ジストニーは、身体のある部分の頻発する異常な姿勢を含む運動障害である。焦点ジストニーの痙攣は、一回に何秒間も続き得て、冒された領域の機能の主要な混乱を引き起こす。焦点ジストニーの幾つかは、反復動作により促進され;書痙が最も知られた例である。焦点ジストニーは、顔面(例えば、眼瞼痙攣、下顎ジストニー)、頸(斜頸)、四肢(書痙)又は胴体を含み得る。ジストニーは、自然に起き得るし、又は神経弛緩剤その他のドーパミンレセプター遮断剤にさらすことにより促進され得る(遅発性ジストニー)。全身薬物療法は、一般に、有効でないが、幾つかの薬物は、幾人かの患者を部分的に軽快させる。最も頻繁に処方されるものは、抗コリン作動薬、バクロフェン、ベンゾジアゼピン並びにドーパミンアゴニスト及びアンタゴニストである。最も一貫して有効な治療は、冒された筋肉へのボツリヌス毒素の注射である。
【0021】
様々な焦点ジストニーが、同じ薬物に応答する傾向がある(即ち、一の焦点ジストニーに有用な治療剤は、一般に、他のジストニーにも有用であった。)(Chen,Clin.Orthop,6月,102-6,1998;Esper等;Tenn.Med,1月,90:18-20,1997;De Mattos等,Arq.Neuropsychiatry,3月,54:30-6,1996)。今日までに公開された臨床経験は、一の焦点ジストニーの不随意運動を減じる新規な治療剤は、他の不随意運動についても同様であることがありそうであることを示唆している。更に、自然の(特発性)ジストニー及び神経弛緩剤誘発性ジストニーの一般的症状、徴候及び投薬に対する応答は、薬物誘導された焦点ジストニーの有効な治療剤は、同じ自然に起きるジストニーにも有効であろうことを示唆している。
【0022】
眼瞼痙攣(焦点ジストニーの一つ)は、連続的に繰り返して不随意に眼を閉じること又は過度に力のこもったまたたきを含む状態である。眼瞼痙攣は、眼球運動機能の最も一般的な疾患の一つである。それは、可変的に、顔面ジスキネジア又は顔面ジストニーと考えられている。もしそれが、口及び下顎領域のジストニーと共に生じたならば、頸部が含まれていてもいなくても、メージュ症候群と呼ばれる。眼瞼痙攣は、有意に、視覚機能を損ない得る。患者は、読むこと、自動車を運転すること又は視覚的制御を必要とする熟練仕事をすることができなくなり得る。眼瞼痙攣は、自然に起こり得るし(特発性眼瞼痙攣)、年齢が増すと共に増加する罹患率で起こり得る;殆どの症例は、生涯の50歳代及び60歳代に起きている(Holds等、Am.Fam.Physician.6月,43:2113-20,1991)。それは又、神経弛緩剤治療の結果としても起こり得る(Ananth等、Am.J.Psychiatry,4月、145:513-5,1988;Kurata等、Jpn.J.Psychiatry.Neurol.,12月,43:627-31,1989;Sachdev等、Med.J.Aust.,3月、20,150:341-3,1989)し、おそらくは、他のクラスの向精神薬での治療の結果としても起こり得る(Mauriello等、J Neuropathol,6月,18:153-7,1998)(これは、単独でも起きるし、又は遅発性ジスキネジア若しくは他の型の遅発性ジストニーと共に起きることもある)。別の重い遅発性ジスキネジアの19人の患者の報告は、頻繁な眼のまたたきは、この疾患の最も高頻度の前兆であると述べた(Gardos等、前出、1988)。特発性眼瞼痙攣及びメージュ症候群の眼球運動現象は、神経弛緩剤治療により誘発された症例において見られるものと同じである。特発性眼瞼痙攣と遅発性眼瞼痙攣との差異は、眼球運動自体を含まない。(観察された差異は、家族病歴及び眼以外の不随意運動が存在する見込みを含んだ。)
【0023】
多くの物質が眼瞼痙攣を緩和する能力について試験されたが、ボツリヌス毒素の眼輪筋への注射が、治療の頼みの綱である(Mauriello等、Br.J.Ophthalmol,12月,80:1073-6,1996)。これらの注射は、眼を閉じるための筋肉を弱め、それにより、それらの筋肉の不随意運動を軽減する。それらは又、求心性運動神経からの入力を変えることによって、間接的にも、中枢神経系による眼球運動の制御に影響し得る。ボツリヌス毒素の注射は、患者の約80%の症状を改善する(これは、今日まで試された多くの全身薬物治療からの利益よりずっと高い割合である)ので選択される治療となった。
【0024】
眼瞼痙攣に関係する運動は、今日まで用いられてきた全身薬物治療によく応答しない。一連の多くの症例の内で、全身投薬で治療された眼瞼痙攣の患者の22%しか、目立った永続的軽快を示さなかった(Jankovic等、Mov.Disord.,5月,9:347-349,1983)。他の報告においては、ボツリヌス毒素の注射によく応答しなかった眼瞼痙攣の患者13人の内、全身薬物療法を行った際に、2人しか何らかの改善を示さなかった(Mauriello等、Clin.Neurol.Neurosurg.,8月,98:213-6,1996)。ボツリヌス毒素注射でさえ、常に効き目がある訳ではない。ボツリヌス毒素注射により軽快されない患者には、ときには、手術が奨められる(Elston等、J.Neurol,1月,239:5-8,1992)。
【0025】
眼瞼痙攣の治療のために試みられた多くの全身治療(例えば、Arthurs等、Can.J.Ophthalmol;2月,22:24-8,1987;Casey等、Neurology,7月,30:690-5,1980;Jacoby等、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,3月,31:569-76,1990;Michaeli等、Clin.Neuropharmacol.,6月,11:241-9,1988;Ransmayr等、Clin.Neuropharmacol.,2月,11:68-76,1988を参照されたい)の内で、クロナゼパム、GABAアゴニストは、一貫して有用であることが見出された唯一の薬物であった(Jankovic等、Ann.Neurol.,4月,13:402-11,1983)。2つのGABAアゴニスト剤、バルプロエート及びバクロフェンの組合せは、一症例において効き目があった(Sandyk等、S Afr Med J,12月,64:955-6,1983)。テトラベナジン、ドーパミン涸渇剤は、メージュ症候群の6人の患者の内の4人において不随意運動を軽減したが、これらの患者は、多くの望ましくない副作用(嗜眠、流涎及びパーキンソン症候群を含む)を有した(Jankovic等、Ann Neurol,1月,11:41-7,1982)。かかる不快な副作用の故に、テトラベナジンは、眼瞼痙攣、チック用、又は遅発性ジスキネジア用にさえ、これらの症状に対する他の一般的に有効な治療剤がないにもかかわらず、広く用いられる治療剤とはならなかった。神経弛緩剤は、時には、眼瞼痙攣の症状を軽減するが、それらはテトラベナジンよりよくはなく、それらで治療された患者は、TD又は他の遅発性運動障害を発症する危険がある。要するに、ドーパミン作動性伝達を減じる薬物及びGABAアゴニストが、特発性眼瞼痙攣の治療において幾らかの利益を伴って用いられてきたが、これらの型の薬物は、一般に満足すべき治療剤であることが判明した。
【0026】
チック及びトゥーレット症候群の治療
中位から重症の運動及び発声性チックの患者が薬物療法を必要とすることは、ありそうなことである。多くのクラスの神経病学的及び精神医学的薬物療法が試みられてきたが、神経弛緩剤、アルファ−2アドレナリン作動性アゴニスト及びクロナゼパムだけが、標準的治療剤の地位を得た(最近の総説としては、Chappell等、Neur.Clin.of North Am.,15(2),5月1997;Kurlan,Neurol.Clin.,5月,15:403-409,1997;Lichter等、J.Child Neur.,11(2),3月,1996;Leckman等、前出;Esper等、Tenn.Med.,1月,90:18-20,1997;Scahill等、J.Child Adolesc Phychopharmacol,7(2),1997を参照されたい;これらを参考として本明細書中に援用する)。不幸にも、これらのTS用に一般に用いられている治療剤の3つすべては、有意の欠点を有している。
【0027】
最も一般的なチック疾患の治療のために用いられる療法は、神経弛緩剤(即ち、ドーパミンアンタゴニスト抗精神病薬)である。この範疇内においては、ハロペリドール及びピモジドが、米国ではもっとも頻繁に用いられている。神経弛緩剤治療は、通常、チック疾患の不随意運動を、患者の85%までの体験的軽減を伴って、抑制する(Esper等、前出)。神経弛緩剤の副作用には、鎮静、抑鬱、パーキンソン症候群、認識障害及び遅発性ジスキネジアが含まれる。他の遅発性運動障害も、長期使用により起こり得る。副作用に耐えられないことが、しばしば、患者をTSの神経弛緩剤治療の中断へと導くが、TDの危険が殆どの医者に軽い症例でのそれらの使用を気のすすまないものとしている。一層重いTSを有する者は、しばしば、苦しい症状と苦しい副作用の間の不愉快な選択をしなければならない。単純なチックを有する人々は、感情的苦痛、困惑、減少した自尊心又は身体的傷害(チックが十分に激しい場合)を経験し得る。それでも、彼らは、普通、比較的軽い症例の治療では、副作用及び長期間の毒性に耐えられないので、神経弛緩剤での治療を受けないであろう。
【0028】
TSに対する他の薬物治療は、TDの危険を有しない。しかしそれらは、神経弛緩剤より効き目が低い。最も一般的な非神経弛緩剤代用物は、アルファ−2アドレナリン作動性アゴニスト例えばクロニジンである。残念ながら、クロニジンで治療された患者の50%未満(おそらく、僅か25%)が臨床的に有意のチック関連症状の改善を示すだけである(Esper等、前出;Chappell等、前出)。更に、クロニジンに応答する多くのチックの患者は、その使用を制限する副作用(最も多いのは、低血圧又は鎮静作用)を有するであろう。
【0029】
他の非神経弛緩性治療剤、クロナゼパム、GABA−A及びセロトニン作動性作用を有するベンゾジアゼピンは、トゥーレット症候群の治療に幾らかの効力を有している(Steingard等、J.Am Acad Child Adolesc Psychiatry,3-4月,33:394-9,1994)。鎮静作用及び運動失調症は、クロナゼパムの投薬量を制限し;許容投与量は、しばしば、患者のチックを抑制するのに必要な量を下回る。
【0030】
脳のセロトニン作動性5−HT2レセプターのアンタゴニストとして作用する化合物の新規なクラスは、最初に、有望な結果を示したが、子供及び青年は、副作用に対する感受性の増大を経験する(Chappell等、前出)。最近の注意を受け入れた更なる代用物は、抗酸化剤治療(Rotrosen等、Prost.Leuk.and Ess.Fatty Acids,55(1&2),1996)、経頭蓋磁気刺激(Ziemann等、前出)、ニコチン治療(Sanberg等、Pharmacol.Ther.,74(1).,1997;Silver等、J.Am.Acad.Adolesc.Psychiatry,Vol35,12月,1996)及びボツリヌス毒素療法(Esper等、前出)を含む。これらの治療の各々は、臨床的に有意の軽減を個々の患者に提供したが、何れも、治療の選択として、神経弛緩剤に取って代わるものではなかった。明らかに、神経弛緩剤の副作用及び長期の危険を有しないチック及びTSのための更なる治療剤の要求がある。
【0031】
理論的根拠に基づいて、トゥーレット症候群の更なる治療法は、グルタメートアンタゴニストを含むということが示唆されているが、それらの使用を提案している最近の論文は、この役割を果たし得る何れの特定の薬物にも言及していない(Chappell等、Neurol.Clin.5月,15(2):429-450,1997)。
【0032】
マグネシウム及び運動障害
重い精神病の患者におけるマグネシウム状態の異常の考慮すべき証拠がある(例えば、Athanassenas等、J.Clin.Psychopharmacol.8月,3:212-6,1983;Alexander等、Br.J.Psychiatry,8月,133:143-9,1978;Kirov等、Neuropsychobiology,30(2-3):73-78,1994;Wang等、1997; Yassa等、Int.Pharmacopsychiatry,14(1):57-64,1979参照)。Alexander等(前出、1978)は、神経弛緩剤の錐体外路の副作用を発症した精神***病患者が、平均して、かかる副作用を有しない者より低いマグネシウムレベルを有することを見出した。神経筋の興奮及び不安は、マグネシウム涸渇の一般的な急性症状発現である。そして、マグネシウム欠乏が広範囲の神経変性疾患の一因となり得ると推測する理論的理由がある(Durlach等、1997,前出)。
【0033】
マグネシウム欠乏は、神経筋の興奮を引き起こし得るので(Durlach等、Magnes Res,6月,10:169-95,1997)、それは、潜在的に運動障害を引き起こし得るか又は一層重くし得る。Ploceniak(Communications Libres,91,補遺II,1990)は、詳しくないが、テタニー(低カルシウム血症に典型的な筋肉痙攣に対する感受性)に関係する歯ぎしり及び顔面チックの患者に有用なマグネシウム補足物を見出したと報告した。しかしながら、彼は、マグネシウム補足物がトゥーレット症候群の患者及びマグネシウム欠乏によらないチックを有する者に有用であろうということは示唆しなかった。マグネシウム欠乏が遅発性ジスキネジア、他の遅発性運動障害、眼瞼痙攣、又は他の焦点ジストニーの原因であるという示唆、又はマグネシウム補足物が、テタニーによる明白なマグネシウム欠乏のない場合における運動障害を上首尾に治療し又は予防するのに使えるという示唆は、されたことがない。
【0034】
今日の薬局方は、上記の運動障害を治療するための様々な薬剤を提供しているが、これらの薬剤の何れも、これらの病気を予防又は治癒することができない。その上、殆どの有効な全身薬物療法は、しばしば、耐え難い副作用を伴う。ボツリヌス毒素の注射は、不快であり得、頻繁に繰り返さなければならず、しばしば、時間経過と共に効力が失われる。更には、上肢のジストニーの治療に用いる場合は、それらは、手の最適な機能に必要な筋肉を弱め得る。TDその他の遅発性運動障害、眼瞼痙攣その他の焦点ジストニーのための、現行品より一層効力があって且つ副作用が一層少ない新規な全身治療剤のはっきりした要求がある。
【0035】
発明の要約
本発明は、ヒトにおけるTDその他の遅発性運動障害、チック疾患、眼瞼痙攣その他の焦点ジストニーを含む運動障害の治療方法を提供する。本発明は又、運動障害の患者に特徴的な不随意運動を、NMDA型グルタメート神経伝達を減少させる薬剤を投与することにより減少させる方法をも提供する。一面において、医薬は、線条体細胞においてグルタメート誘導される興奮性スナブス後電位を減少させる能力を有する薬剤の群から選択される。特定の例は、メマンチン、デキストロメトルファン及びNMDA型グルタメート神経伝達に対する同様の薬力学的効果を有するこれらの同族体又は誘導体、並びに肝臓、血液又は脳内で代謝されて活性な代謝産物及び同様の薬力学的効果を有する誘導体を生じるプロドラッグを包含する。他の面において、この発明は、運動亢進症又はジスキネジア運動障害の患者に特徴的な不随意運動を、(i)GABA−Aレセプターにアゴニストとして直接又は間接に作用する及び(ii)NMDA型グルタメート神経伝達を間接的又は調節機構により減少させる薬剤を投与することにより減らす方法を提供する。特定の例は、カルシウムN−アセチルホモタウリネート(アカンプロセート)、マグネシウムN−アセチルホモタウリネート、N−アセチルホモタウリネートの他の塩、N−アセチルホモタウリネートの誘導体(GABA及びNMDA型グルタメート神経伝達に対する同様の薬力学的効果を有するもの)、並びに肝臓、血液又は脳内で代謝されてN−アセチルホモタウリネート又は同様の薬力学的効果を有する誘導体を生じるプロドラッグを包含する。他の面において、本発明は、運動亢進症又はジスキネジア運動障害の患者に特徴的な不随意運動を、GABA−Aレセプター活性を増大させ及びNMDA型グルタメート神経伝達を減じるように作用する2種以上の薬剤を組み合わせて投与することにより減らす方法を提供する。
【0036】
本発明は又、マグネシウム又は非競争的NMDAレセプターアンタゴニストをNMDA型レセプターにおけるグルタメートに対するシナプス後応答を減じるメマンチン若しくは他の化合物又はこれらの混合物(特に、前の段落に列挙したものを含む)と組み合わせることによる運動障害の治療方法をも提供する。例えば、デキストロメトルファンは、運動障害の治療のためにメマンチン及びマグネシウムと組み合わせることができる。他の面において、本発明は、NMDA型レセプターにおけるグルタメートに対するシナプス後応答を同時に減じ、直接又は間接にGABA−A伝達を増大させもするマグネシウム又は非競争的NMDAレセプターアンタゴニストのメマンチン若しくは他の化合物又はこれらの混合物との組合せを提供する。好適具体例において、マグネシウムを非競争的NMDAレセプターアンタゴニストとして用いる(メマンチンは、NMDAレセプターアンタゴニストとしてカルシウムイオンチャンネルを遮断することにより機能する)。
【0037】
本発明は、マグネシウムが、チック及びTDを含む運動障害並びに拡張によりTS及び眼瞼痙攣その他の焦点ジストニーの治療に用いられる薬剤の効果を増大させることができる(神経弛緩剤にさらされたことにより引き起こされたか否かによらない)ことを示す。相乗作用が、マグネシウムとNMDAレセプターアンタゴニストとして作用する他の薬剤との間に、及びNMDAレセプターアンタゴニストとして作用し同時にGABA−A伝達の促進剤としても作用する薬剤との間でも示される。一具体例において、NMDAレセプターアンタゴニストとして作用する薬剤の如何なる組合せも、マグネシウムを伴って又は伴わないで、運動障害の治療に用いられる。或は、マグネシウムを単独で用いて運動障害に伴う症状を減少させる。
【0038】
他の好適具体例において、マグネシウムの補足を用いて、既に運動障害の危険にある人々において、その危険を減らすことにより又は彼らが危険にある運動障害の開始を遅らせるにより運動障害を予防する。特に、マグネシウム欠乏が神経弛緩剤を受けている患者におけるTDの発症の危険因子であるということ、及びマグネシウム補足物が、マグネシウム欠乏になりやすい患者(年輩の女性、アルコール中毒者、糖尿病患者、利尿剤使用者及び栄養失調の個人を含む)において、TDの発症を予防し得ることは、断言される。
【0039】
他の具体例において、NMDAレセプターアンタゴニストとして作用する薬剤のGABA−A神経伝達を促進する(GABA−Aレセプターアゴニストとして作用することにより、GABA−A放出を増大させることにより、又はGABA−Aレセプター刺激に対するシナプス後応答を増大させることによる)少なくとも一の薬剤との任意の組合せを、マグネシウムを伴って又は伴わないで、運動障害の治療に用いる。
【0040】
NMDA型グルタメートレセプターアンタゴニストとして作用する少なくとも一の薬剤及びマグネシウムを、GABAアゴニストとして作用する薬剤を伴って又は伴わないで含む丸薬が、この組合せ療法の送達のための特別のビヒクルとして提出される。更に、他の経口製剤も示唆される(この混合物は、シロップ、エリキシル又は時間経過に伴って放出するカプセルにて送達され得る)。最後のものは、この混合物の投与量の作用の持続を長引かせる方法として示唆される。
【0041】
定義
「遅発性ジスキネジア」:ここで用いる場合、「遅発性ジスキネジア」は、遅発性ジストニーその他の長期間の神経弛緩剤の使用に関係する運動障害を包含することを意味している。略号TDは、用語「遅発性ジスキネジア」の代わりに用いられる。TDに含まれる症状のセットも又、この出願では、「遅発性ジスキネジア及び関連する遅発性運動障害」として言及され得る。
【0042】
「眼瞼痙攣」:ここで用いる場合、「眼瞼痙攣」は、眼瞼痙攣と顔面及び/又は頸のジストニーの組合せであるメージュ症候群を含む。
【0043】
「焦点ジストニー」:ここで用いる場合、「焦点ジストニー」は、眼瞼痙攣及びメージュ症候群、痙性斜頸、痙攣性発声困難、書痙、音楽家痙攣及び他の職業ジストニーを包含する。
【0044】
「トゥーレット症候群」:「トゥーレット症候群」は、ここで用いる場合、「ジルドラトゥーレット症候群」、「トゥーレット症候群」、「トゥーレット病」及び類似の表現と同意語である。略号TSは、これらの用語の何れかの代わりに用いられ得る。
【0045】
「NMDAレセプターアンタゴニスト」:ここで用いる場合、「NMDAレセプターアンタゴニスト」は、NMDA型グルタメートレセプターのグルタメートに対するシナプス後応答を阻害し又は減じる任意の分子である。
【0046】
「NMDA型グルタメート神経伝達」:「NMDA型グルタメート神経伝達」は、ここで用いる場合、広く、NMDAグルタメート伝達を減じるであろう任意のものをいう(それが、シナプス前で作用するか、グルタメートレセプター結合部位で、調節部位例えばグリシン調節部位で、イオンチャンネル内で、細胞膜内で、又はニューロン内で作用するかによらない)。これは又、NMDAレセプターを有するシナプスでのグルタメートの放出を減じ、グルタメートのNMDAレセプターへの結合を変え又はNMDAレセプターの数若しくは種類を変える任意の物質をも包含する。
【0047】
「アカンプロセート」:ここで用いる場合、「アカンプロセート」は、カルシウムN−アセチルホモタウリネートをいう。これらの2つの用語は、交換可能に用いられ得る。「N−アセチルホモタウリネート」及び「アセチルホモタウリネート」も又、交換可能に用いられる。
【0048】
「アカンプロセート及び関連化合物」:「アカンプロセート及び関連化合物」は、カルシウムアセチルホモタウリネート、マグネシウムアセチルホモタウリネート、N−アセチルホモタウリネートの他の塩、アセチルホモタウリネート塩基、ホモタウリン塩基及びホモタウリン塩、ホモタウリン又はアセチルホモタウリンの誘導体(GABA−A及びNMDA型グルタメート伝達に関して同様の薬力学的効果を有するもの)、並びに血液、肝臓又は脳内で代謝されてGABA−A及びNMDA型グルタメート伝達に関して同様の薬力学的活性を有するアセチルホモタウリネート又は誘導体を生じるプロドラッグをいう。アカンプロセートは、NMDAレセプターにおいてグルタメートにより刺激されたニューロンの細胞内応答を減じ、GABA−A伝達を少なくとも部分的にシナプス前GABA−B阻害性自己レセプターに対するアンタゴニスト効果により増大させる。表現の容易さの故に、私は、アカンプロセート及び類似の化合物を、「GABAアゴニスト及びNMDAアンタゴニスト」、「GABA−Aアゴニスト及びNMDAアンタゴニスト」、「GABA伝達を増大させ及びNMDA型グルタメート伝達を減少させる薬剤」、「GABAアゴニスト及びグルタメートアンタゴニスト」及び「GABA伝達のアップレギュレーター及びNMDA型グルタメート伝達のダウンレギュレーター」と呼ぶ。
【0049】
「GABA−A伝達」:「GABA−A伝達は、GABA−AレセプターのGABAによる活性化と関連した薬力学的現象をいう。GABA−A伝達の促進は、GABAの放出の増大、その代謝の減少、レセプター結合の増大、又はレセプター結合の細胞効果の増大を含み得る。
【0050】
「GABA−Aレセプターアゴニスト」:「GABA−Aレセプターアゴニスト」は、ここで用いる場合、GABA−Aレセプターの活性部位又は調節部位に結合してGABA−A伝達(上で規定)を促進することのできる分子をいう。
【0051】
「有効な」:「有効な」は、ここで薬物の投薬量に関して用いる場合、特定の運動障害の症状(例えば、TDその他の遅発性運動障害、チック疾患、眼瞼痙攣その他の焦点ジストニー)が明らかな各患者個人用にあつらえた薬力学的に活性な薬剤の特定の量(その患者の不随意運動又は運動障害に関連した任意の他の症状の減少又は改善を引き起こすのに十分で且つ副作用が許容し得る量)の投与をいう。運動障害の症状は、ここでいう場合は、不随意運動だけでなく、不随意運動又はその背後の脳機能不全に帰せられ得る身体的、器具的、社会的及び職業的機能(視覚的機能、認識機能、及び手の使用を含む)における任意のすべての障害をもいう。
【0052】
実験的に、10〜30mgの範囲のメマンチンの投薬量は、有効であることが示されている(デキストロメトルファンでは、30mgを1日に4回〜60mgを1日に4回の投薬量を要する)。毎日3〜4回投与される333〜666mgの範囲のアカンプロセートの投薬量は、有効である。当業者は、投与すべき医薬の最適投与量が個人個人で変わるであろうことを認識するであろう。個々の患者における投薬量は、それらの患者の身長、体重、当の薬物の吸収速度及び代謝速度、治療すべき疾患のステージ、及び他の如何なる薬剤が同時に投与されるかを考慮すべきである。
【0053】
「運動障害」:「運動障害」は、ここで用いる場合、すべての形態の異常運動及び不随意運動をいうために用いられる。運動障害は、例えば、遅発性ジスキネジア(TD)、チック、ジルドラトゥーレット症候群(TS)、パーキンソン病、ハンチントン病、及び焦点ジストニー例えば眼瞼痙攣を包含する。この出願の主題である特定の運動障害は、制限はしないが、TDその他の遅発性運動障害、眼瞼痙攣その他の焦点ジストニーである(後者は、神経弛緩剤又は他のドーパミンアンタゴニストにさらされることと関係しているか否かによらない)。
【0054】
「チック疾患」:「チック疾患」は、ここで用いる場合、突然の反復する動作、身振り、又は発声(しばしば、目的のある行動の断片を真似る)をいう。チックは、型にはまった、反復するが、不規則なリズムの不随意運動により特徴付けられる。それらには、運動性チックと発声(有声)チックの両方が含まれる。チック疾患は、例えば、単純チック、多発性チック及び発声を伴う多発性チックと規定されるジルドラトゥーレット症候群を包含する。
【0055】
発明の詳細な説明
本発明は、運動障害(TDその他の遅発性運動障害、チック、トゥーレット症候群、眼瞼痙攣その他の焦点ジストニーを含むが、これらに限られず、後者は、神経弛緩剤又は他のドーパミンアンタゴニストにさらされることに関係するか否かによらない)の治療方法に関するものである。これらの運動障害が同じ生理的機構の幾つかを含むことはありそうなことであり、従って、同じ治療法に対して応答性であることはありそうなことである。本発明の一面において、私は、パーキンソン病の治療に用いられる薬物であるが、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニー又は焦点ジストニー(神経弛緩剤その他の薬物に関係しているか否かは問わない)の治療における使用が企図されたことのないメマンチンが、遅発性ジスキネジアに関係する不随意運動、認識症状及び機能不全を減少させるのに有効であるということを発見した。私は又、メマンチンが、チック及び関連チック疾患の有効な治療剤であるということも発見した。本発明の他の面において、私は、絶対禁酒のアルコール中毒者の治療に用いられるが、遅発性ジスキネジアその他の運動障害(トゥーレット症候群及びチックを含む)の治療での使用は企図されたことのない薬剤が、運動障害の患者の運動亢進及びジスキネジアを減少させるのに有効であるということを発見した。
【0056】
数年前に、私は、TDは、脳底神経節を含む神経回路における非線形振動の形態を表し、その振動は、興奮性神経伝達をブロックする薬剤により減少され得るという仮説を提唱した。PETスキャンの研究は、TDを有する精神***病患者の淡蒼球及び第一運動野における増大した代謝を示したが、TDでない者では示さなかった(Pahl等、J.Neuropsych Clin Neurosci 7:457,1995)。これは、TDが推定の非線形振動の部分であり得る運動制御回路における活動亢進と関係するということを示唆している。
【0057】
上記のように、私は、線条体を通る運動制御回路の利得を減じるように作用する薬剤は、TD及び関連運動障害(遅発性運動障害、焦点ジストニー、チック及びトゥーレット症候群を含む)に対する有益な作用を有し得るという仮説を進展させた。例えば、GABAは、線条体における阻害的神経伝達物質である。従って、私の仮説に対する支持は、GABAレセプターを直接又は間接に刺激する薬剤が神経弛緩剤で誘発されたジスキネジアを低減させ得るということを示す動物の証拠から得られる(Gao等,J Neural Transmission 95:63,1993;Stoessl,Pharmacol.Biochem.Behav.,54:541,1996)。神経弛緩剤で誘発されたジスキネジアを有するラットは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GABAの生成における速度制限酵素)の増大した線条体レベルを示す(Delfs等、Exp.Neurol.,133:175,1995)。
【0058】
ここに記載のこの発明の生化学的機構を制限するものではないが、仮説の振動する回路における利得を減じるように作用する薬物は、遅発性ジスキネジアの不随意運動を減じるようである。GABA、グルタメート及びドーパミンは、この回路における主たる神経伝達物質である。他の神経伝達物質(ノルエピネフリン、セロトニン、アセチルコリン及び内因性麻酔剤を含む)は、この振動する回路に対する間接的作用を有するという仮説が立てられる。私の同時係属中の特許出願第08/861,801号(その教示を、参考として本明細書中に援用する)においては、私は、興奮性神経伝達物質のある種のアンタゴニスト(及びアゴニスト)は、TD、遅発性ジストニー、チック及び類似の生化学的機構を共有する運動障害と関係する運動及び認識障害の両方の治療に有効であると論じた。
【0059】
アカンプロセート
本発明において、私は、NMDA型レセプターのグルタメートに対するシナプス後応答をも減じるGABAレセプターアゴニストのアカンプロセートが、TD並びに関連する不随意運動及び認識症状を改善し得るということを開示する。例えば、本発明の理論により、グルタメート伝達に対する共同効果を有するGABAアゴニストは、TDに伴う不随意運動の強度を減少させる。かかるGABAアゴニストは、焦点ジストニー例えばTDと関係する眼瞼痙攣及び拡張により特発性眼瞼痙攣(これが共通の機構を共有していることは、両者のドーパミンアンタゴニスト、GABAアゴニスト及びボツリヌス毒素注射に対する応答から考えて、ありそうなことである)を緩和する。更に、この点に対して、眼瞼痙攣の専門家であるハーバード・メディカル・スクールのGary Borodic博士は、神経弛緩剤で誘発された(遅発性)眼瞼痙攣は、一般に、自然のものより投薬に対して応答性が低いと述べている(Borodic,私信、1998)。もしそうならば、遅発性眼瞼痙攣に有効な治療剤が自然の眼瞼痙攣に有効であることは、大いにありそうなことである。
【0060】
同様に、アカンプロセートでの治療が、頸及び顔面下部のジストニー運動を伴う眼瞼痙攣であるメージュ症候群と関連する症状を緩和することはありそうなことである。アカンプロセートが、チック疾患(単純チック及び多発性チックの両方を含む)と関連するジスキネジア運動を劇的に減少させるということも又、本願において開示される。更に、私は、アカンプロセート及び他の(i)NMDA型グルタメート神経伝達を減少させ、(ii)GABA−Aレセプター神経伝達を増大させる薬剤が、一般的な及び重傷のチック疾患、トゥーレット症候群(多発性の運動性チック及び発声チックにより特徴付けられる)の治療において有用であることを提示する。
【0061】
アカンプロセート(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)は、ホモタウリン、アミノ酸タウリンの誘導体のカルシウム塩である。それは、絶対禁酒のアルコール中毒者の治療において、彼らのアルコール願望を減じ又は阻止するために臨床的に用いられている。アカンプロセート(阻害的神経伝達物質GABAに化学的に類似している)は、GABAアゴニスト(特に、GABA−Aレセプターにおけるアゴニスト)である。その上、それは、NMDA型グルタメートレセプターのシナプス後応答を減じ、電位型チャンネルを通してのカルシウムの流入を減じる(Wilde及びWagstaff,Drugs,53:1039-53,1997)。
【0062】
アカンプロセートは、その非常に低い毒性の故に、慢性的運動障害の治療のために特に魅力的な薬物である。3,338人の患者を含むアルコール中毒症の治療の管理された試みにおいて、アカンプロセートは、内科的又は神経病学的に重い副作用を有しなかった。事実、患者の脱落の割合は、アカンプロセート治療を受けたグループと偽薬を受けたグループとで等しかった(Wilde及びWagstaff,Drugs,6月,53(6):1038-53,1996)。これは、現存するTD及びTS用の全身治療剤と全く対照的である。これらについては、上で記したように、耐え難い副作用が普通であり、それらの臨床的有用性に対する主要な限界を課している。
【0063】
GABA(GABA−Aレセプターを介する)及びグルタメート(NMDAレセプターを介する)を含む運動制御回路に関する上記の仮説は、GABAアゴニストである及びNMDA型グルタメートアンタゴニストである任意の薬物がジスキネジア運動を改善し得るということを暗示している。アカンプロセート(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)は、私がヒトのジスキネジア治療における効力の直接的証拠を提供するかかる薬物の特定の例である。かかる薬物の他の例には、N−アセチルホモタウリンの他の塩、タウリン及びホモタウリンの誘導体(GABA及びNMDA型グルタメート伝達に対する同様の効果を有するもの)並びに肝臓、血液又は脳内で代謝されて同様の薬力学的特性を有するN−アセチルホモタウリン又は関連化合物を生じるプロドラッグが含まれる。
【0064】
従って、本発明の好適具体例は、患者に、運動障害の治療に有効な量のホモタウリン及びN−アセチルホモタウリンの誘導体を提供する。特に好ましいのは、胃腸管から容易に吸収されるアカンプロセートの誘導体である。アカンプロセートは、部分的にアセチルホモタウリネートイオンの極性、親水性のために、GI管から不規則に吸収される。薬物のある種の誘導体は、一層親油性であるので、一層よく且つ一層確実に吸収され得るということは当業者には周知である。例えば、アセチルホモタウリネートイオンから調製されたエステルは一層親油性であり、それ故、腸の粘膜を通しての一層多くのそして一層予想し得る吸収を有し得る。かかるエステルが非毒性で、身体中で自然に代謝される(例えば、血液、肝臓又は脳内で酵素により開裂される)ならば、それは、アセチルホモタウリネートイオンを脳に確実に送達するためのビヒクルとして特に好適である。その上、上記のような誘導体は、適当な投薬量で、アカンプロセートに応答する任意の運動障害の治療に同等以上の効力を有するであろう。一般に、改善された送達性を有するアカンプロセートの任意のプロドラッグは、本発明による好適な送達手段である。更に、特に好適な形態のアカンプロセートは、長い半減期を有するアカンプロセートの誘導体である。かかるアカンプロセートの誘導体は、アカンプロセートを用いた場合には1日当たり3〜4回の投与が必要であるところを毎日一回でよいであろうから、臨床的にアカンプロセートより優れているであろう。アカンプロセート又は関連薬物の半減期を延ばすための更なるアプローチは、それを経時的に放出するカプセルにて送達することである。
【0065】
他の好適具体例においては、これらの誘導体を用いて、神経弛緩剤に長期間さらされることと関係したジスキネジア運動障害を治療する。更に、上記の組成物を用いて、併発した精神異常(例えば、双極性障害又は精神***症)を神経弛緩剤で治療されている絶対禁酒のアルコール濫用者における遅発性ジスキネジアを治療することができる。一層特に、本発明の治療剤は、種々の関連運動障害の程度及び持続期間を減じる。
【0066】
本発明の他の好適具体例は、GABAアゴニスト及びNMDAアンタゴニストとして作用し、焦点ジストニーの治療剤として作用する薬剤を提供する。焦点ジストニーの一例である眼瞼痙攣は、本発明の治療剤の一つの標的である。上述のように、眼瞼痙攣は、不随意の力を込めて眼を閉じることを含む状態である。上述のように、眼瞼痙攣は、自然に生じ得る(特発性眼瞼痙攣)し、又は遅発性運動障害の形態であってもよい。特発性眼瞼痙攣の眼の運動障害は、臨床的には、神経弛緩剤にさらされた後に生じるものと同じであり、それ故、遅発性運動障害に効き目のある同じ治療剤に応答することが予想され得る。事実、両障害は、少なくとも短期間、神経弛緩剤及び他のドーパミンアンタゴニストにより改善され、両者は、ボツリヌス毒素の眼輪筋注射に応答性である(Casey,Neurology,7月,30:690-5,1980)。
【0067】
本発明は、アカンプロセートを用いる治療による遅発性ジスキネジアと関係する眼瞼痙攣の軽減を示すが、これは、アカンプロセート並びにGABA及びNMDA型グルタメートレセプターに対する総合作用を有する関連化合物及び誘導体が、特発性眼瞼痙攣及び他のすべての焦点ジストニー(自然のものでも神経弛緩剤投薬にさらされることにより誘発されたものでも)を有する人々に利益となることを示唆している。
【0068】
この発明のこの面の一つの好適具体例においては、医薬をGABAレセプターアゴニストとして作用し及び間接的又は調節的機構によりNMDAレセプター機能を減じるようにも作用する薬剤、例えば、制限はしないが、アカンプロセートカルシウム(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)、N−アセチルホモタウリネートの他の塩(例えば、マグネシウムN−アセチルホモタウリネート又はリチウムN−アセチルホモタウリネート)、アセチルホモタウリン塩基、他のホモタウリン誘導体(GABA及びグルタメート伝達に対する同様の薬力学的作用を有するもの)、並びに肝臓、血液又は脳内で代謝されてN−アセチルホモタウリネート又は関連化合物(GABA及びグルタメート伝達に対する同様の薬力学的作用を有するもの)を生じるプロドラッグの群から選択する。他の好適具体例においては、医薬を、線条体細胞においてグルタメートにより生じる興奮性シナプス後ポテンシャルを低下させる能力を有する薬剤(アカンプロセート及び類似の化合物範囲並びに上記のプロドラッグを含む)の群から選択する。他の好適具体例においては、2種以上の医薬の組合せを、その組合せが共同して作用して、GABA伝達を増大させ(特に、GABA−Aレセプターを介して)、NMDA型グルタメート伝達を減衰させる(例えば、NMDAレセプターに対する非競争阻害又は間接的若しくは調節的効果により減衰させる)ように選択する。第4の具体例は、かかる化合物又はそれらの混合物を、メマンチン又は以下に詳述する類似の非競争NMDAレセプターブロック剤と組み合わせることを含む。この組合せは、総合作用を有する混合物、共有結合された部分、又は血液、肝臓若しくは脳内で代謝されてこの組合せの各メンバーを放出するプロドラッグであってよい。
【0069】
TDの危険因子には、高齢、糖尿病、アルコール中毒症及び気分障害(***症ではなく)の第一次の精神医学的診断が含まれる。これらの危険の各々は又、マグネシウム欠乏症の高い罹患率とも関係している(Durlach等、Magnes Res,3月,1998;G'amez等、Sci.Total.Environ.,9月,15,203(3):245-51 1997;Gullestad等、J Am Coll Nutr,2月,13:45-50,1994;De Leeuw等、Magnes.Res.,6月,10:135-41,1997;Lipski等、Age Ageing,7月,22:244-55,1993;Martin等、J.Trace.Elem.Electrolytes Health Dis,9月,5:203-11,1991;Shane等、Magnes.Trace.Elem.,10:263-8,1991-1992;Zorbas等、Biol.Trace.Elem.Res.,7-8月,58:103-16,1997)。TD発症の危険にあるプロフィルに合う人々はマグネシウム欠乏の増大した危険を有するので、私は、マグネシウム欠乏(それ自体)も遅発性ジスキネジア及び他の運動障害の危険因子であるという仮説を提唱する。それ故、私は、更に、マグネシウムの補足が、運動障害を緩和し又は予防することができ、他の治療剤の作用を強化する(治療される個人がテタニー又はマグネシウム欠乏の他の徴候を示すか否かによらない)ということを主張する。(遅発性ジスキネジアの患者の治療がマグネシウム補足物の添加により促進された症例報告4を参照されたい。)
【0070】
運動障害を発症する危険は、本発明により、患者に、十分且つ非毒性の投与量のマグネシウムイオン(即ち、「マグネシウム負荷」)を投与し、続いて、その患者の尿中に排出されたマグネシウムイオンの量を測定することによって評価することができる。一層特に、神経弛緩剤又はドーパミンレセプター遮断剤に誘発された運動障害を発症する危険は、総マグネシウム状態の標準試験を行うことにより評価することができる。もしマグネシウム欠乏があるならば、正常のマグネシウム負荷の保持を超えるマグネシウム負荷の保持があり、尿中のマグネシウム排出が減少する。もし異常に低いマグネシウムの割合が患者の尿の24時間試料にて回収されるならば、その患者は、マグネシウム欠乏であり、運動障害を発症する危険にある。
【0071】
本発明は、マグネシウムの補足が単純チックに関連した症状を減少させ、単純チックの治療におけるアカンプロセートの作用を増大させることができることを示す(症例報告5参照)。その上、アカンプロセートと共に投与されたマグネシウムは、単純チックと関連した症状をマグネシウム又はアカンプロセート単独よりも一層よく軽減させる。合わせると、症例4及び5は、マグネシウムイオンの補足が、他の型の運動障害を上首尾に治療するために利用することができるということを示唆している。
【0072】
本発明の好適具体例においては、マグネシウムを、運動障害(例えば、TD、トゥーレット症候群及び焦点ジストニー、特に眼瞼痙攣)の治療に用いる。更には、マグネシウム補足物を用いて、運動障害を発症する危険を減少させる。一の好適具体例においては、運動障害は、マグネシウムの補足により予防することができる。他の具体例においては、マグネシウムの補足は、運動障害を発症する危険にあると同定された個人において、運動障害の開始を遅らせることができる。更に別の具体例においては、マグネシウムの補足は、様々な運動障害と関連した症状を減少させる。
【0073】
本発明により、マグネシウムの補足は、他のNMDA型レセプターアンタゴニスト及びダウンレギュレーターの治療効果を増大させる(症例報告5参照)。一の好適具体例においては、マグネシウムをアカンプロセート(カルシウムN−アセチルホモタウリン)と共に投与して、TD及び他の神経弛緩剤使用から生じる運動障害、チック、トゥーレット症候群、眼瞼痙攣その他の焦点ジストニー並びにパーキンソン病のピーク投与量ジスキネジアを治療する。特に好適な具体例においては、N−アセチルホモタウリンのマグネシウム塩及びN−アセチルホモタウリンの誘導体のマグネシウム塩(これらは、同様に、GABA伝達を促進して、NMDA−グルタメート神経伝達を減少させる)が、運動障害の有効な治療剤である。
【0074】
N−アセチルホモタウリンが有効な治療剤であるすべての状態、N−アセチルホモタウリンのマグネシウム塩及びN−アセチルホモタウリンの誘導体のマグネシウム塩(GABA神経伝達及びNMDA−グルタメート神経伝達に対する同様の効果を有する)も又、有効な治療剤であろうということは、当業者には認められよう。或は、任意のマグネシウム塩を、N−アセチルホモタウリンの誘導体の任意の塩と共に投与して、運動亢進及びジスキネジア運動障害を治療することができる。一の非制限的例において、適当な投与量のアカンプロセートを適当な投与量のマグネシウムと共に含む丸薬を配合して、運動障害を有する患者に投与することができる。他の好適具体例においては、NMDAアンタゴニスト活性及びGABAアゴニスト活性を有する薬剤を、一つの丸薬中で、適当な投与量のマグネシウムと組み合わせる。更に別の好適具体例においては、NMDAアンタゴニストを、一つの丸薬形態において、GABAアゴニスト及び適当な投与量のマグネシウムと組み合わせる。当業者は、投与の組成物は、丸薬に限られず、シロップ、液体、錠剤、時限式カプセル、エアゾール又は経皮的パッチであってもよいということを認識するであろう。
【0075】
アカンプロセートのマグネシウムに対する比は、これらの2成分の治療上の相乗作用を最適化するように変化させることができる。約1:20のマグネシウム:アセチルホモタウリネート比(重量比)を有するマグネシウムN−アセチルホモタウリネート(Durlach、前出;1980)は、これらの2成分の治療効果を最適化しない。アセチルホモタウリネートの典型的な治療用投薬量においては、マグネシウムの量は、グルタメート伝達に対する治療上適切な効果を有するには低すぎる。発明者の経験では、毎日2グラムの投薬量のアカンプロセートを1グラムのマグネシウム元素(塩又はキレート化合物として与えられる)と組み合わせることにより優れた治療結果を有した。この組合せは、2グラムのアカンプロセート単独よりも、TD及びチックの両方の一層優れた軽快を与える。発明者は又、300mgのマグネシウムの単与が666mgのアカンプロセートの単与の治療効果を増大させるということをも示した(下記の症例報告5を参照されたい)。個人の応答における変動、及びアカンプロセートとマグネシウムの両者の腸での吸収の変動を考慮して、発明者は、個々の患者のためのMg:アセチルホモタウリネートの最適比は、大体1:6〜1:1であろうということを主張する。マグネシウムのアカンプロセートに対する一層低い比がアカンプロセートの治療効果を有意に後押しすることはありそうになく、1:1より高い比率は、おそらく、典型的な毎日2グラムのアカンプロセートの投与量で、マグネシウム毒性を(少なくともGI不耐性を)生じるであろう。マグネシウムN−アセチルホモタウリネートが、カルシウムN−アセチルホモタウリネートよりもチック疾患の治療について僅かに効き目が勝っているにもかかわらず、本発明においては、我々は、アカンプロセート及び関連化合物のマグネシウム含量を、マグネシウムイオンを(塩又はキレート化合物として)N−アセチルホモタウリネートの塩と共に投与することにより有効に増している何故なら、マグネシウムをアカンプロセートに対して、アカンプロセートのマグネシウム塩中に存在するよりも一層高い比率で投与することに対する有意の利益があるからである
【0076】
アカンプロセートの効果は、その投与後数時間以内に得られる。この観察は、仮説の運動障害の治療におけるアカンプロセートの作用の機構にとって決定的に重要である。1997年に、Lidsky等(米国特許第5,602,150号)は、神経弛緩剤を使用している人々における遅発性ジスキネジアの予防のためのタウリン及びタウリン誘導体(アカンプロセートを含む)の利用を記載した。ゲッ歯動物モデルにおいて、動物に、神経弛緩剤が、タウリンを伴って又は伴わないで与えられた。数ヶ月にわたって、これらの内のタウリンを受けた動物は、ヒトのTDに類似する運動障害である空の咀嚼運動(VCM)を発症することは、一層ありそうでなかった。この効果を説明するために進められた機構は、タウリンの長期間の神経保護作用であった(該期間中、タウリンは、線条体ニューロンのグルタメート作動性の刺激過剰の長期の効果をブロックする)。当業者は、グルタメート誘導される興奮毒性に対する神経保護活性を有する薬剤が、運動障害の重い確立された症例の治療に必ず効き目があり、投与の数時間以内に利益を生じるとは予想しないであろう。事実、有効な予防薬は、予防すべき症状の確立された症例を現実に一層重くし得るという神経病学における周知の状況がある。例えば、ドーパミンアゴニスト抗パーキンソン病薬は、パーキンソン病についてレボドーパで治療されている患者におけるジスキネジアの開始を遅らせ得る。更に、ドーパミンアゴニストは、ジスキネジア運動が一度確立されたならば、それらを一層重くし得る。
【0077】
マグネシウムイオンは又、神経保護剤としても作用し、特に、NMDA型グルタメートレセプターにより媒介されるニューロン傷害モデルにおいて該剤として作用する(Ema等、Alcohol,2月,15:95-103,1998;Greensmith等、Neuroscience, 10月,68:807-12,1995;Heath等、J.Neurotrauma,3月,15:183-9,1998;Hoane等、Brain.Res.Bull.,45:45-51,1998;Muir等、Magnes.Res.,3月,11:43-56,1998;Vanick'y等、Brain.Res.,4月,789:347-50,1998)。しかしながら、確立された運動障害の治療におけるマグネシウムの事実上即時的な利益は、神経保護に基づくものではあり得ない。むしろ、神経伝達(グルタメート作動性伝達を含む)に対するマグネシウムの即時的且つ直接的効果が関係しているにちがいない。この点について、ヒトにおける神経保護のために用いられるマグネシウムの投薬量は、運動障害の治療においてここで用いられる最高投与量の1日1グラムよりかなり多いということに注意されたい。事実、マグネシウムは、それが単独薬剤である場合に用いられる投与量よりかなり低い投与量で投与された場合に、ここに記載のように、他の治療剤の有益な効果を増大させることができる。この発明の他の面は、NMDAアンタゴニスト及びアゴニストとして作用してTDを有するヒトにおける記憶及び認識を改善する薬剤を利用する方法を特徴とする。本発明の特に好適な具体例は、TDを示す患者における認識機能を改善する方法を開発することであり、特に記憶、集中の期間、及び特に認識に依存する活動における毎日の機能的動作を増大させることである。これらの機能の改善は、主観的及び客観的に測定される。記憶の改善は、標準的な神経心理学的試験により示すことができる。認識の改善は、神経心理学的試験(Rey Auditory-Verbal Learning Test及び選択反応時間の測定を含む)における動作により及び認識過程に大いに依存する課業における動作の主観的指標により示される。アカンプロセート又は他の上記の薬剤の何れかを含む治療養生法を受けている患者において認識が改善されたことを示すために、多くの異なる神経心理学的試験を用いることができるということは、当業者には明らかである(当該治療養生法は、制限はしないが、下記を包含する:ホモタウリン及びアセチルホモタウリンのアセチルホモタウリン誘導体の他の塩(NMDA−グルタメート及びGABA神経伝達に対する同様の薬力学的効果を有するもの)、血液、肝臓又は脳内で代謝されてアセチルホモタウリネート又は誘導体(NMDA−グルタメート及びGABA神経伝達に対する同様の薬力学的効果を有するもの)を生じるプロドラッグ、並びに合わさってNMDA−グルタメートアンタゴニスト及びGABAアゴニスト効果を有する2種以上の化合物の混合物)。これらの実在物のすべては又、グルタメート誘導された興奮毒性ダメージに対する神経保護作用をも有し得るが、それらの運動障害及び認識に対する事実上即時的で有益な効果(これは、投薬が中断されれば、可逆的である)が、かかる神経保護作用のためということはあり得ない。
【0078】
本発明の他の好適具体例は、チックを改善し、結果として、徴候を減じてチック又はチック疾患(例えば、TS)を有する患者の生活の質を改善する方法の開発である。この面及び本発明の更に別の具体例は、眼瞼痙攣及び関連する視覚機能障害(頻繁に力を込めて不随意に眼を閉じることにより暗示される)を緩和する方法の開発である。この発明のこの面の最後の具体例は、すべての焦点ジストニー(自然に発症したものか神経弛緩剤及び他のドーパミンレセプター遮断剤にさらされたことにより促進されたものであるかを問わない)を治療する方法を提供する。
【0079】
当業者は、本発明が、TD及び他のチック疾患を、GABA及びNMDAレセプターに対する直接的効果によって、NMDA型グルタメート神経伝達を減じ、GABA神経伝達を増大させる薬剤を用いて治療する方法に限られるものではないことを認識するであろう。レセプター部位に対する直接的効果に加えて、これらの薬剤は、NMDA−グルタメート及びGABA伝達を、レセプターに対する間接的効果(即ち、神経伝達物質の放出に対するシナプス前効果、レセプター部位のアロステリック改変、又は伝達物質のレセプターへの結合に対する細胞内応答に対する効果)、伝達物質放出に対するシナプス前効果、又は様々な機構のいずれかによって改変することができる。誘導体及びプロドラッグの範囲すべてが治療上有効であるべきであるということは、当業者には明らかとなろう。アカンプロセートの治療効果の基礎であるという仮説が立てられているグルタメート及びGABA伝達に対する効果を共有する如何なるものでも、現在請求の範囲に記載されている発明の範囲内にある。薬物、プロドラッグ又はこれらの混合物が如何にしてNMDA−グルタメート神経伝達を減じ、GABA神経伝達を増大させるかは、それがTD及びチックと関連する症状を、許容的に非毒性(即ち、受け入れられない毒性副作用を有しない)投与量で改善しさえすれば問題でない。
【0080】
前記のように、本発明の治療剤は、任意の形態の異常な又は不随意の運動により特徴付けられる任意の運動障害を治療するために用いることができる。その上、この発明の治療剤は、運動障害の結果である運動に無関係の症状(例えば、認識機能不全又は動作、気分若しくは衝撃制御の異常)を改善し又は除去するために用いることができる。後者は、不安、抑鬱、感情鈍麻、攻撃性及び強迫行動を包含する。線条体を含む脳底神経節は、運動、認識及び感情回路の交差点である。脳底神経節の病気は、頻繁に、認識、感情、行動及び欲求の変化並びに運動機能不全を含む。私は、TD、チック及び他の運動障害に有効な薬物治療が非運動症状の幾つか又はすべてを緩和することもできるということを予想する。一般に、脳底神経節の病気の治療剤は、非運動効果を有する。例えば、ドーパミンアゴニスト抗パーキンソン病薬は、パーキンソン病の患者の運動の割合を減じるだけでなく、それらは又、精神過程の速度をも改善する。マグネシウムの添加が運動障害の運動症状発現に対する薬物治療の効果を増大させる場合には、それは又、その治療の非運動症状発現に対する効果をも増大させ得る。
【0081】
メマンチン
本発明の他の面において、私は、NMDA型グルタメートレセプターアンタゴニストであるメマンチン(ドーパミンアゴニストとしても作用する)が、TD並びに関連する不随意運動及び認識症状を改善することができるということを開示する。特に、私は、2人の患者において、メマンチンが、一層拡張性の遅発性運動障害と関係する眼瞼痙攣を改善することができるということを示した。上記のように、本発明の理論によって、NMDAレセプターアンタゴニストは、TDと関係する不随意運動の程度を低下させる。かかるNMDA型レセプターアンタゴニストが焦点ジストニー及び特発性焦点ジストニー(TDの他の症状を伴うか否か、神経弛緩剤又は他のドーパミンレセプターアンタゴニストにさらされることに関係するか否かは問わない)を改善することは、幾つかの療法に対する共通の応答が共通の生理を意味するという仮説に基づいて、ありそうなことである。例えば、NMDAレセプターアンタゴニストは、TDと関係する眼瞼痙攣、及び拡張により、TDではなく薬物誘発された眼瞼痙攣、及び特発性眼瞼痙攣(これらが、共通の機構を共有することは、それらのドーパミンアンタゴニスト、GABAアゴニスト及びボツリヌス毒素注射に対する応答に照らして、ありそうなことである)の症状を軽快させるであろう。
【0082】
同様にして、メマンチンを用いる治療が、頸と下顎のジストニー運動を伴う眼瞼痙攣であるメージュ症候群と関連する症状を改善することは、ありそうなことである。TDを有する下記の2人の患者(症例報告1)の1人は、眼瞼痙攣を有しただけでなく、メージュ症候群との診断を可能にする顔面と頸のジストニー運動をも有した。眼瞼痙攣のみを有するならば、神経弛緩剤と関係しないメージュ症候群は、少なくとも遅発性メージュ症候群と同程度にメマンチンに応答することが予想され得る。
【0083】
上記のグルタメートを(NMDAレセプターを介して)含む運動制御回路に関する仮説は、NMDA型グルタメートアンタゴニストである任意の薬物が、有効投与量において比較的毒性を欠き、眼瞼痙攣、メージュ症候群及び遅発性運動障害を改善し得るということを示唆する。メマンチンは、私が、ヒトにおける効力の直接的証拠を提供するかかる薬物の特定の例である(症例報告1及び6参照)。
【0084】
上記のように、GABA−Aアゴニストは、単独では、特に強力なチック治療ではない。それ故、NMDAアンタゴニストが、おそらく、アカンプロセートの治療効果の必須部分であろう。その上、NMDAアンタゴニストは、本来、遅発性ジスキネジア及び遅発性ジストニーの治療において十分なものであり、これは、遅発性運動障害が関係する場合には、メマンチンのNMDAアンタゴニスト活性がそのドーパミンアゴニズムより一層重要であることを示唆している。ここに開示した証拠は、運動障害例えばチック及びトゥーレット症候群が遅発性運動障害と類似の様式でNMDAアンタゴニスト活性を有する薬物療法に応答するであろうことを示唆している。
【0085】
チック及びトゥーレット症候群に関して幾つかの療法に対する共通の応答は、共通の生理的機構を暗示するという仮説は、1)アカンプロセートが遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニー及びチックを緩和し;そして2)メマンチンが遅発性ジスキネジア及び遅発性ジストニーを緩和し;そして3)アカンプロセートとメマンチンの両者がNMDA型レセプターアンタゴニストであるという事実により支持される。従って、メマンチンも又トゥーレット症候群を含むチックの治療に有用であろうと予想することは、論理的である。事実、私は、本願において、メマンチンが、チック疾患(単純チックと多発性チックの両方を含む)に関係するジスキネジア運動を劇的に減少させるということを開示する。その上、私は、メマンチン及び同様の薬力学作用を有する他の薬剤(並びにこれらの同族体及び誘導体)(両者は、(i)NMDA型グルタメート神経伝達を減じて、(ii)ドーパミンレセプター神経伝達を増大させる)が、普通の及び重症のチック疾患、トゥーレット症候群(多発性の運動性及び発声チック)の治療において有用であるということを提唱する。症例報告5は、単純チックの患者がメマンチンの投与に際してチックの頻度の有意の低下を経験することを示す。
【0086】
NMDA型グルタメート伝達に対する類似の効果を有する薬物の他の例には、デキストロメトルファン、メマンチン及びデキストロメトルファンの誘導体、並びに肝臓、血液又は脳内で代謝されて類似の薬力学的特性を有する生物学的に活性な化合物を生じるプロドラッグが含まれる。デキストロメトルファンは、メマンチン及びアマンタジンと同様に、NMDAレセプターアンタゴニストである。本発明の一の好適具体例においては、デキストロメトルファン(並びにその同族体及び誘導体)を、運動障害の治療のために、患者に投与する。遅発性ジスキネジア、ジストニー又は他の運動障害の治療におけるデキストロメトルファンの利用の報告はない。
【0087】
本発明の好適具体例は、メマンチン及びデキストロメトルファンの誘導体を、有効な投与量で、運動障害の治療のために、患者に与える。更に、メマンチン及びデキストロメトルファンの特に好適な形態は、一層長い作用の持続期間を有する誘導体(例えば、一層長い排除の半減期により得られるもの)であろう。かかるメマンチン又はデキストロメトルファンの誘導体は、臨床的にメマンチン又はデキストロメトルファンより優れているであろう(何故なら、それらは、メマンチン又はデキストロメトルファンを用いる場合には1日当たり2〜4回の投与を必要とするところ、毎日一回の投与でよいから)。メマンチン、デキストロメトルファン又は関連する薬物の作用の持続期間を長くする更なるアプローチは、それらを時限放出カプセルにて送達することである。
【0088】
他の好適具体例においては、これらのメマンチン及びデキストロメトルファンの誘導体を用いて、神経弛緩剤に長期間さらされることと関係するジスキネジア及びジストニー疾患を治療する。更に、上記の組成物を用いて、遅発性ジスキネジアを、持続性の慢性の精神異常(例えば、双極性障害又は精神***症)のための神経弛緩剤を用いる治療を続けている患者において治療することができる。一層特に、メマンチン及び関連化合物は、様々な関連運動障害の程度及び持続期間を低減させる。本発明の他の好適具体例は、メマンチン、デキストロメトルファン並びにこれらの誘導体及び同族体を、焦点ジストニーの治療剤として提供する。焦点ジストニーの一例である眼瞼痙攣は、本発明における治療の一つの標的である。
【0089】
本発明は、遅発性ジスキネジアと関連する眼瞼痙攣のメマンチンでの治療による軽減を示すが、これは、メマンチン並びにNMDA型グルタメートに対する類似の作用を有する関連化合物及び誘導体が、特発性眼瞼痙攣及び他のすべての焦点ジストニー(自然発症のものか神経弛緩剤にさらされることにより誘発されたものであるかを問わない)を有する人々に有益であろうことを示唆している。
【0090】
この発明のこの面の一の好適具体例においては、医薬を、NMDAレセプター機能を低下させるように、非競争的アンタゴニスト、イオンチャンネル遮断剤、又はNMDAレセプター機能調節剤として作用する薬剤の群から選択する。これらには、制限はしないが、メマンチン、デキストロメトルファン及びデキストロルファン(公知のNMDAアンタゴニズムを有しヒトへの投与に際して許容し得る毒性を有するデキストロメトルファンの誘導体)が含まれる。当業者は、上記の具体例が、メマンチン、デキストロメトルファン及びデキストロルファンの同族体及び誘導体(グルタメート伝達に対する類似の薬力学的作用を有するもの)並びに肝臓、血液又は脳内で代謝されてグルタメート伝達に対する類似の薬力学的作用を有する関連化合物を生じるプロドラッグを含むということを認識するであろう。更に別の好適具体例においては、医薬を、線条体細胞においてグルタメート生成される興奮性シナプス後ポテンシャルを減じる能力を有する薬剤の群から選択する(メマンチン、デキストロメトルファン並びに前述の類似の化合物及びプロドラッグの範囲を含む)。他の好適具体例においては、2以上の医薬の組合せを、その組合せが、協力して、NMDA型グルタメート伝達を弱める(例えば、非競争的阻害により、NMDAレセプターに対する間接的若しくは調節的効果により、又はこれらの作用の組合せ若しくは連続による)ように選択する。第5の具体例は、かかる化合物又はそれらの混合物を類似の非競争的NMDAレセプター遮断剤(以下に詳述)と組み合わせることを含む。これらの組合せは、混合物、組み合わされた作用を有する共有結合部分、又はプロドラッグ(血液、肝臓又は脳内で代謝されて組合せの各メンバーを放出する)の何れかであってよい。
【0091】
上述のように、TDを発症する危険因子には、マグネシウム欠乏が含まれる。従って、私は、マグネシウム欠乏が他の運動障害の危険因子でもあり、マグネシウムの補足が単独でも他の治療と組み合わせても運動障害を緩和し又は予防することができるという仮説を立てた。
【0092】
症例報告2は、アカンプロセート及びメマンチンと組み合わせてのマグネシウム投与が、TDの治療におけるメマンチン及びアカンプロセートの治療作用を増大させることを示す。症例報告5は、メマンチンのみと組み合わせてのマグネシウムの投与は、単純チックの治療に対するメマンチン単独の治療作用を増大させるということを示す。従って、私は、マグネシウムが、チック及びトゥーレット症候群の治療のためにメマンチン又はデキストロメトルファンのみと組み合わせた場合に、アカンプロセートと組み合わせて用いたときのように治療を増大させるであろう(これらの化合物の通常の生理学的作用を仮定する)ということを提唱する。この仮説に対する更なる支持は、チック及びトゥーレット症候群が、遅発性運動障害と同様に、神経弛緩剤により一時的に抑制されるという事実である。
【0093】
マグネシウムの補足は、治療される個人がマグネシウム欠乏の臨床的徴候を示しているか否かにかかわらず有益であり得る(詳細は、症例報告2及び4並びに同時係属中の「Methods of Treating Tardive Dyskinesia and Other Movement Disorders」と題する特許出願第09/193,892号(1998年11月18日出願)を参照されたい。これらの症例は、遅発性ジスキネジアがNMDAレセプターアンタゴニストの投与により改善された患者がマグネシウムの添加によって、更に果然されるということを示している)。
【0094】
本発明の好適具体例においては、運動障害(例えば、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニー、及び特発性ジストニー特に眼瞼痙攣)の治療において、マグネシウムを用いて、メマンチン、デキストロメトルファン、又は他のNMDA−グルタメート神経伝達に対して類似の効力を有する薬剤の効力を増大させる。
【0095】
本発明により、マグネシウム補足物は、他のNMDA型レセプターアンタゴニスト及びダウンレギュレーターの治療効果を増大させるであろう。一の好適具体例においては、マグネシウムを、メマンチンと共に投与して、TD及び他の運動障害(神経弛緩剤の使用から生じたもの)並びに種々の焦点ジストニーを治療する。やはり本発明の好適具体例により、マグネシウムを、メマンチンと共に投与して、チック、トゥーレット症候群及び他のチック関連疾患を治療する。他の具体例においては、マグネシウムを、デキストロメトルファン及びメマンチンと共に投与して、TD、チック、トゥーレット症候群及び他の運動障害(神経弛緩剤の使用から生じたもの)並びに種々の焦点ジストニーを治療する。一の最終的具体例においては、マグネシウムを、運動障害の治療のために、メマンチン及びデキストロメトルファンの両者と共に投与する。
【0096】
メマンチン及びデキストロメトルファンが有効な治療剤であるすべての病状には、メマンチン及びデキストロメトルファンの誘導体及び同族体(NMDA−グルタメート神経伝達に対する類似の効果を有するもの)も又、有効な治療剤であろうということは、当業者には認められよう。一の非制限的例においては、適当な投与量のメマンチンを適当な投与量のマグネシウムと共に含む丸薬を処方して、運動障害を有する患者に投与することができる。或は、適当な投与量のデキストロメトルファンを適当な投与量のマグネシウムと共に含む丸薬を処方して、運動障害を有する患者に投与することができる。適当な投与量のメマンチン、デキストロメトルファン及びマグネシウムを、運動障害の治療のために患者に投与するための単一の丸薬中で組み合わせることもできる。他の好適具体例においては、NMDAアンタゴニスト活性を有する薬剤を、一の丸薬中で適当な投与量のマグネシウムと組み合わせる。他の好適な具体例においては、NMDAアンタゴニストを、ドーパミンアゴニスト及び適当な投与量のマグネシウムと丸薬形態に組み合わせる。当業者は、投与の組成物は丸薬に限られず、シロップ、エリキシル、液体、錠剤、時限式放出用カプセル、エアゾール又は経皮パッチでもよいということを認識するであろう。
【0097】
メマンチン及び/又はデキストロメトルファンのマグネシウムに対する比は、これらの2成分の治療上の相乗作用を最適にするように変えることができる。典型的には、5〜10mgのメマンチンと250〜300mgのマグネシウムの組合せを、運動障害を有する患者に、1日3回投与する。このマグネシウムの投薬量は、神経保護又は痙攣の治療に用いられる薬理学的投与量より低い。デキストロメトルファンについて推奨される投与養生法は、運動障害の治療のためには、250〜300mgのマグネシウムを伴って、30〜60mgの投与量で1日4回である。当業者は、個人の応答及び腸での吸収における種々の変動を実験してメマンチン又はデキストロメトルファンのマグネシウムに対する最適比を見出すことができる。当業者は又、最適投与量が、マグネシウムをデキストロメトルファン及びメマンチンと同時に投与するならば変化し得ることをも認識するであろう(マグネシウムは腎臓で排出されるので、マグネシウムの投与量は、運動障害に加えて腎機能不全を有する患者では、ずっと低い)。
【0098】
メマンチン、デキストロメトルファン及びマグネシウムは、すべて、神経保護剤として、特にNMDA型グルタメートレセプターに媒介される神経傷害のモデルにおいて発展してきた(メマンチンについての代表的引用文献:(Wenk GL等、Behav Brain Res,83:129-33,1997 2月;Kornhuber J等、J Neural Trans Suppl,43:91-104,1994;Weller M等、Eur J Pharmacol,248:303-12,1993 12月 1;Krieglstein J等、Neuropharmacology,35:1737-42,1996)。デキストロメトルファンについての代表的引用文献:(Duhaime AC等、J Neurotrauma,13:79-84,1996 2月;Steinberg GK等、Neurol Res,15:174-80,1993 6月;Britton P等、Life Sci,60:1729-40,1997)。マグネシウムについての代表的引用文献:Ema等、Alcohol,2月,15:95-103,1998;Greensmith等、Neuroscience,10月,68:807-12,1995;Heath等、J.Neurotrauma,3月,15:183-9,1998;Hoane等、Brain.Res.Bull.,45:45-51,1998;Muir等、Magnes.Res.3月,11:43-56,1998;Vanicky等、Brain.Res.,4月,789:347-50,1998)。しかしながら、アカンプロセートについて前述したように、遅発性運動障害に対するメマンチン、デキストロメトルファン及びマグネシウムの即時的な短期間の利益が、それらの神経保護作用のためということは、神経弛緩剤のための興奮毒性のニューロンのダメージが数ヶ月から数年かけて徐々に起きるのであり得ない(ここで発展される治療剤の治療作用は、事実上、即時的である)。
【0099】
当業者は、本発明が、NMDA型グルタメートレセプターを直接ブロックする薬物を用いる治療に限定されないということを認識するであろう。誘導体及びプロドラッグの範囲すべてが治療上有効であろうということは、当業者には明らかとなろう。もし薬物が、レセプターに対する直接的効果以外の機構によってNMDA−グルタメート伝達を減じるならば、又は活性物質が、投与されたプロドラッグの代謝産物であるならば、それは、TD、遅発性ジストニー及び他のジストニー(眼瞼痙攣を含む)と関係する症状を許容し得る非毒性投与量(即ち、重い副作用のない投薬量)で改善する限り、現在請求の範囲に記載の発明の範囲内にある。
【0100】
本発明を、今や、下記の非制限的実施例により説明する。
【0101】
症例報告1
45歳の女性が、長年にわたるTDを有したが、それは、元々、神経弛緩剤効果を有する抗欝剤のアモクサピンに7年間さらされることにより誘発されたものである。その患者の不規則なリズム運動は、力を込めた眼のまたたき(眼瞼痙攣)、舌を前方及び左右に押し出すこと、舌を曲げること、しかめつらをすること、肩をすくめること及び頸の広頸筋を緊張させることよりなるものであった(もしこの患者が神経弛緩剤にさらされることと関係していなかったならば、彼女の動作のサブセットは、眼瞼痙攣を伴う下顎ジストニーのメージュ症候群の特徴であり得たであろう)。この患者は、セミプロの音楽家であり;ジスキネジア運動は、有意の職業上の不都合(楽譜又はテキストを読むことの困難及び木管楽器の演奏の困難を含む)であった。彼女の読むことの障害の多くは、頻発する不随意のまたたき及び眼を閉じることのためであった。彼女は、TDの始まる前の彼女の動作と比べて、注意、集中及び記憶が低下していた。彼女は、有意に疲労しており、大抵毎日ある時点で休息を必要とした。この患者は、神経弛緩剤に誘発される副作用の評価において広範囲の経験を有する免許された委員の神経病学者によりTDと診断された。
【0102】
この患者のジスキネジア及びジストニーは、アモクサピンを中断した後に悪化した。アルプラゾラム(調節による不安緩解剤及びGABAアゴニスト;投薬量0.25mg、1日4回)及びトリヘキシフェニジル(シナプスでのドーパミンの再取り込みを阻害する抗コリン作動性抗パーキンソン病薬;投与量2mg、1日2回)を用いる待期療法が、別の内科医により処方された。この組合せは、最少の改善を生じた。この患者は、1992年の冬に、私による治療を開始して、更に、18ヶ月間、トリヘキシフェニジルでの治療を続けた。その後、トリヘキシフェニジルを中断したが、彼女の不随意運動に変化はなかった。1993年中、アルプラゾラムを、軽い不安の症状を治療するために、0.5mg、1日4回に増したが;この投薬量の変化は、この患者の不随意運動に検出し得る影響を有しなかった。
【0103】
ブスピロン、セルトラリン、ベラパミル及びビタミンEを用いる1992年の治療の試みは、彼女の不随意運動を僅かだけ減じた投与量において殆ど利益を生じないか又は耐えられないものであった。これらの薬物の何れも、この患者の日々の機能(即ち、テキスト若しくは楽譜を読むこと、根気又は集中する能力)を有意に改善しなかった。有意で且つ持続する利益を与えた最初の薬物は、ドーパミン作動性を間接的に減じるL型カルシウムチャンネルの遮断剤であるニモジピンであった(Bonci等;J.Neurosci.,9月 1,18(17):6693-703 1998)。
【0104】
1993年に開始して、ニモジピンを、30mgの投薬量で、1日4回投与した。初期には、彼女の他の投薬は、変えずに続けた。この治療養生法は、この患者の不随意運動を約50%減じた。残念ながら、この患者は、めまい、もうろうとすること及び動悸を含む副作用を経験した。彼女は又、認識機能においても、徴候的改善を有しなかった。彼女の楽譜を読んで演奏する能力には、有意の改善があった。しかしながら、たとえこの改善があっても、彼女は、疲労又は眼瞼痙攣に妨げられて、一度に30分より長時間テキスト又は楽譜を読むことはできなかった。
【0105】
1995年に、メマンチンが、比較的非毒性のNMDAレセプターアンタゴニストとして私の目に留まった。遅発性ジスキネジアの病態生理学に関する私の仮説の故に、私は、メマンチンは治療に有益であり得ると考えた。ニモジピンを中断して、この患者は、10mgの投薬量で1日2回のメマンチン使用を始めた。この患者のTDの不随意運動は、メマンチンの投与の24時間以内に、ニモジピンを用いて認められたときより実質的に大きい程度で減少した。副作用は、軽い酩酊感を含んだ。この治療養生法を調節して、この薬物を5mg、1日3回に減らしたところ、治療効果は維持されて、知覚される副作用はなかった。更に、この患者は、改善された気力、注意、及び集中を報告した。メマンチンは、私が、GABAアゴニズムの加えられた利益を有する間接的NMDAアンタゴニストとしてアカンプロセートを知るまで、1年半にわたって、この患者のTDの主たる治療剤であった。
【0106】
アカンプロセートでの治療の前は、この患者の不随意運動は、眼のまたたき、ほおにしわをよせること、舌を曲げること及び広頸筋を緊張させることよりなった(最適投与量のメマンチンの使用において)。これらの不随意運動は、普通は軽く、時には中位の強さであった。これらの運動は、過去においては、実質的に、一層重かったが、2年間の治療過程で有意に減少した。その上、この患者の不随意運動は、軽いが明確な認識障害を伴った。この患者の最も顕著な認識症状は、テキストの数頁以上を読むのに十分な長さの時間集中し続けることの困難であった。
【0107】
この患者は、メマンチンをやめて、333mgの投与量のアカンプロセート(1日4回)で治療した。アカンプロセートでは、この患者の不随意運動(力を込めた眼のまたたき(眼瞼痙攣)、舌を前方及び左右に押し出すこと、舌を曲げること、しかめつら、肩をすくめること及び頸の広頸筋を緊張させること)は、気付かれないほどになった。
【0108】
更に、この患者の認識機能は、主観的及び客観的に測定して、有意に改善された。アカンプロセートにより、この患者は、長時間集中し続けることができた。例えば、彼女は、現在、一度に1時間以上にわたって本を読むことができ、読んだことをよく思い出すことができる。この患者の認識の改善は又、正式の神経心理学的測定を用いて評価することもできる。この患者をこの薬物の使用中に試験し、それから、この薬物の使用をやめて2日後に試験した。この薬物の使用中には、この患者は、15項目の内の13を短い遅れの後に思い出すことができ、そして15項目の内の13を長い遅れの後に思い出すことができた(Rey Auditory Learning Testにより測定)。これを、この薬物をやめたときに行った試験において、15項目の内の7しか短い遅れの後に思い出せず、8しか長い遅れの後に思い出せないこの患者の能力と比較した。更に、この患者は、アカンプロセートの使用中には、これらの項目の15すべてを認識することができたが、この薬物をやめた(そして、メマンチンを2ヶ月にわたって使用してない)ときには、これらの項目の10しか認識できなかった。試験の状態は、薬物不使用状態に対する慣れの利点を与えるであろう。それにもかかわらず、薬物使用状態に有利な差異は沢山あった。
【0109】
他の神経心理学的試験との比較は、患者のアカンプロセート使用中に示された改善された認識所見が、薬物不使用状態での努力又は集中の非特異的不足によっては説明されないことを示した。これらの更なる試験は、基本的注意及び精神運動速度を反映するものであるが、この患者が、現実に、僅かによい結果をアカンプロセートなしで有したことを示した。かかる結果を示した試験は、Simple Reaction Time、Trail Making Test(両者共部分)及びPaced Auditory Serial Addition Test(PASAT)を含んだ。覚えていなければならない特定の仕事に対する基本的注意と集中の両方を必要とする試験である選択反応時間は、アカンプロセート使用時において僅かによく、これは、全体的認識機能は、単純な注意と反対に、アカンプロセート治療で改善するという仮説と一致した。
【0110】
下記の表は、これらの神経心理学的試験の結果に基づく報告である(薬物Iは、メマンチンであり、薬物IIは、アカンプロセートである):
【0111】
【表1】
Figure 0004562911
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【0112】
【表2】
Figure 0004562911
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【0113】
【表3】
Figure 0004562911
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【0114】
増大された認識能力に加えて、この患者は又、アカンプロセートの使用中、体力の増大も経験した。アカンプロセート養生法を始める前は、この患者は、午後の終わりには、疲労しており、晩に機敏でいるために休息を必要とした。この疲労は、アカンプロセート養生法において有意に減じたが、疲労に関係する認識機能における対応する改善もあった。アカンプロセート使用時には、この患者は、その日は、もはや、晩に機敏で活動的でいるために休む必要がなかった。
【0115】
アカンプロセートがこの患者における運動障害、認識機能及び体力の改善に関係することを確認するために、この患者を、アカンプロセート養生法(並びにメマンチン養生法)から4週間はずした。アカンプロセートなしの最初の2週間の間、この患者の不随意運動は、徐々に、彼女のアカンプロセート前の、メマンチンなしのベースラインに戻った。(この患者の薬物なしでのベースラインは、彼女が2年前にメマンチン治療を開始したときよりは重くなかったが、彼女の運動は、やはり、毎日の機能を有意に妨げるだけ十分に重いものであった。)この時点からアカンプロセートを再開するまで、彼女は、継続的に軽度〜中程度のしかめつら、広頸筋の緊張及び力を込めて眼をとじることを示した。これらの不随意運動は、ストレス又は疲労期間中には、尚一層悪化した。その上、この患者は、ずっと容易に、彼女の毎日の機能を顕著に減じる程にまで疲労した。主観的には、この患者は、集中及び記憶の両者とも低下したと報告した。
【0116】
アカンプロセートでの治療を再開して2日以内に、この患者は、気力、体力、集中及び記憶が前にアカンプロセートで治療したときに体験したレベルにまで改善されたと報告した。アカンプロセートの再開の2ヶ月後に、不随意運動は、ストレス時の非常に軽度の運動を除いては存在しなかった。
【0117】
1998年7月に、この患者は、アカンプロセートでの治療の補助としてのマグネシウム補足物の試みに参加した。1日4回の333gのCampral Cacamprosateと0.25mgのアルプラゾラムでの7日間のベースライン期間中、彼女は、6回の顔と頸を含む不随意運動の症状発現に気付いた(中程度2回、軽度4回)。その後の10日間にわたって、彼女は、250mgのキレート化マグネシウムを1日3回与えられた。このマグネシウム補足の期間中、彼女は、不水位運動に気付かなかった。
【0118】
別の機会に、この患者を、メマンチンで再び治療した。主観的には、この患者は、メマンチンでの治療中に、毎日の機能が、ニモジピンでの治療中に体験した改善より勝った程度に改善されたと報告した。彼女は、その日、一層少ない休息で一層長い時間にわたって読むことができ又は彼女の楽器を演奏することができた。客観的には、注意範囲、集中範囲及び記憶を含む彼女の認識機能は、神経心理学的試験により示されるように改善された。
【0119】
メマンチンの中止は、明らかに増大したジスキネジアを(その運動が、読むこと及び音楽活動を妨げる状態にまで)24時間以内に生じ、患者の主観的苦痛を引き起こした。メマンチンの再開後、不随意運動は、24時間以内に、前の薬物使用時のレベルにまで減少した。
【0120】
この患者のメマンチンに対する優れた応答は、NMDAレセプター遮断剤が遅発性ジスキネジアにおいて有用であるという私の仮説を支持した。その仮説を更に進めて、その患者を、NMDAレセプター上のメマンチンで認められたのとは異なる部位で作用すると考えられるNMDAレセプター遮断剤のデキストロメトルファンで治療した。その上、デキストロメトルファンは、メマンチンやアマンタジンのようにドーパミンアゴニストではない。メマンチンを中止して、この患者に、30mgのデキストロメトルファンでの治療(1日4回)を開始した。24時間以内に、この患者のジスキネジアの不随意運動は、その患者がメマンチンで治療されていたときに見られたレベルにまで減少した。しかしながら、この患者は、鎮静されて感じ、彼女の注意範囲は、メマンチンで治療されたときより短く且つ彼女の集中はメマンチンで治療されたときより悪かった。
【0121】
デキストロメトルファンの投与を1週間続けたが、この期間中、不随意運動の減少が続いた。増大したジスキネジアが、デキストロメトルファン投与の停止後に、短期間見られた。再びメマンチンを投与したところ、ジスキネジア運動が、前にメマンチンを投与したときと同じ程度にまで減少した。
【0122】
要約
この実施例は、TDに対する効き目のある治療剤には、メマンチン及びアカンプロセートが含まれるということを示している。両治療剤は、認識及び機能並びに不随意運動を改善する。その上、メマンチンとアカンプロセートの両者は、眼瞼痙攣及び一層拡張性の遅発性運動障害に関係するメージュ症候群を軽快させる。最後に、マグネシウムの経口投与(1:1.8の重量比でアカンプロセートと共に与える)は、TDの不随意運動に対するアカンプロセートの治療効果を増大させる。
【0123】
症例報告2
79歳の女性が、神経弛緩剤パーフェナジンでの数十年の治療の後に、長年にわたるTDを有した。彼女の不随意運動は、両上肢の舞踏病に加えて舌のねじり及び舌を噛むことを含んだ。後者の両運動は、非常に傷ついた舌を生じた。更に、この患者は、主として脳血管疾患に帰せられる短期記憶障害を経験した。
【0124】
メマンチンでの治療の後に、この患者の随意運動は改善されたが、軽度乃至中程度のレベルで続いた。彼女は又、傷ついた舌を有し続けた。彼女の認識症状は改善されなかった。メマンチンに加えて、この患者は、定期的に、抗癲癇薬(ガバペンチン及びラモトリジン)、抗血小板剤(アスピリン及びチクロピジン)並びに高血圧症、緑内障及び胃腸症状に対する薬物(イソソルビドモノニトレート、メトプロロール、チモロール点眼薬及びオルサラジン)を摂った。これらの種々の薬物は、この患者の不随意運動又は認識症状に影響を与えず;上記の薬物の何れを開始した時点においても目立った変化はなかった。
【0125】
この患者に、毎日3回の666mgのアカンプロセートの投与を含む治療養生法を施した。この症例においては、アカンプロセートを患者の養生法(メマンチンを含めて継続)に加えた。一度この患者がアカンプロセートを摂り始めると、彼女の舞踏病及び舌を噛むことは完全に停止し、舌のねじり運動は、実質的に減少した。主観的には、この患者の記憶は、彼女の長期のブリッジのパートナーがデュープリケートブリッジのプレー中のカードの記憶が目立ってよくなったと述べる程度にまで改善された。この患者が短期記憶の障害を有したという正式な試験からの過去の証拠にもかかわらず、彼女は、13の別々の事柄を含む2つの文を用いる患者の回想能力の試験を含む2つの文の記憶試験を正常に行った。この2つの文の記憶試験において、3回の試みで、この患者は、9つの事柄を思い出すことができ、複数選択フォーマットを用いて、全部で11の事柄を思い出すことができた。3回目の試みにおける9つの事柄の回想は、中年の成人について正常であるから、ましてや、彼女の試験時の80歳の年齢では正常である。
【0126】
メマンチンとアカンプロセートで丸一年治療した後に、メマンチンを中止したが、患者の症状に殆ど変化はなかった。アカンプロセート666mgを1日3回与えた場合、持続する症状は、手の軽度の舞踏病的運動、舌及び顎の軽度の不随意運動及び目に見える不随意運動に不相応に軽度の舌の傷を含んだ。
【0127】
酸化マグネシウム(250mg、1日3回)を、アカンプロセートと共に与えた。これらの運動及び舌の傷は、一層改善された。この効果は、明確であり、酸化マグネシウムを止めると運動が悪化し、再開すると改善された。マグネシウムを1ヶ月間続けた後に、アカンプロセートの投薬量を、666mg、1日4回に増し、一緒に、250mgの酸化マグネシウムを与えた。この養生法において、舌の運動及び舌の傷は、完全に消去された。唯一残ったTDの徴候は、軽度の手の不随意運動であった。
【0128】
要約
メマンチン及びアカンプロセートは、共に、単独投与したときに遅発性ジスキネジアの効き目のある治療剤である。一層特に、症例2は、メマンチンが不随意運動は改善するが認識は改善しない患者において、アカンプロセートがTDと関係した不随意運動並びに関連認識障害の両方を改善することができるということを示している。その上、マグネシウムは、アカンプロセートと共に投与した場合には、TDの治療におけるアカンプロセートの効果を増大させることができる。この症例においては、アカンプロセートとマグネシウムの組合せは、マグネシウム:アカンプロセートの比1:2.66において効き目があった。メマンチンとマグネシウムを用いる治療は、メマンチン治療剤だけよりもよいであろうと推論するのは、論理的である。
【0129】
症例報告3
56歳の看護学の女性の教授が、30代後半からパーキンソン病を有した。この患者のパーキンソン病は、レボドーパ/カルビドーパ及びブロモクリプチンを用いて治療された。この患者の専門職業は、高レベルの可動性及び身体的努力を必要としたが、仕事における適当な身体的機能を可能にするために十分な投薬量のレボドーパ/カルビドーパを摂ることは、その患者に、重いピーク投与量ジスキネジアを示す結果となった。この患者のピーク投与量ジスキネジアの症状発現は、上体のねじり運動、頸の左右への及び回転運動、並びに両上肢の舞踏病よりなった。この患者は、一層低い投薬量のレボドーパ−カルビドーパは、彼女をあまりに硬直化させて運動低下させて職務遂行できなくするので、これらの不随意運動を受け入れた。
【0130】
アカンプロセートでの治療開始前には、この患者は、1mgのペルゴリド(1日5回)、5mgのセレジリン(1日2回)及びレボドーパ/カルビドーパの組合せ(別々の投与量で投与される550〜600mgのレボドーパ及び125〜150mgのカルビドーパよりなる)よりなる抗パーキンソン病治療養生法を受けていた。彼女のパーキンソン症候群又はジスキネジアに影響を及ぼすように見えなかった同時投薬は、ベタンコール、セルトラリン、カルバマゼピン、抱合エストロゲン及びメドロキシプロゲステロンよりなった。(症例2で挙げた追加の薬物を用いたときのように、列記した薬物の各々の導入後に、この患者のパーキンソン症候群及びジスキネジアに目立った変化はなかった。)この患者は又、前に彼女のジスキネジア運動を重症から軽度乃至中程度まで軽快させた10mgのメマンチンをも1日3回受けた。
【0131】
この患者は、アカンプロセートを、上記の抗パーキンソン病養生法に追加して開始した。最初は、この患者は、666mgのアカンプロセート(1日3回投与)を受けた。2週間後に、この養生法を、患者が、昼間に100mgのレボドーパと25mgのカルビドーパと一緒に摂ることにより、333mgのアカンプロセートを1日4回受ける(333mgの丸薬を摂る)ように調節した。この患者は、夜間は、制御された放出のレボドーパ−カルビドーパの投与量(200mgのレボドーパ及び50mgのカルビドーパ)を続けたが、これは、アカンプロセートは伴わなかった。アカンプロセートを彼女の養生法に加えるとすぐに、この患者の重いピーク投与量ジスキネジアは、中程度乃至軽度にまで低下し、投与後ジスキネジアが全くなくなるまでの期間は2時間以下であった。彼女の運動低下及び硬直のレボドーパ/カルビドーパ治療の効力には、何の低下もなかった。アカンプロセートを用いて、この患者は、十分な運動機能の一層長い期間を経験したが、今や、彼女は、彼女の運動機能が仕事又は社会活動に不十分である期間を全く有しなかった。このジスキネジアの最少レベルへの低下は、上肢の目的のある運動機能における実質的な改善へと導いた。この患者の改善がアカンプロセートの投与のためであることを確認するために、この患者のアカンプロセートを停止した。アカンプロセートを止めた日の内に、この患者のジスキネジア運動は、アカンプロセートを最初に与える前と同じ位に重くなった。アカンプロセートを再開すると、この患者は、ジスキネジア運動の即時的減少を経験した。アカンプロセートなしの期間中、アカンプロセートをバクロフェン(GABAレセプターアゴニスト)で置き換える試みを行った(1日の総投与量30mgで、及びその後、1日当たり60mgの総投与量のバクロフェンを使用)。これらの投与量のバクロフェンは、鎮静及び悪心を生じるだけ十分高いものであったが、患者のジスキネジアには何らの有益な効果も有しなかった。更なるジスキネジアの改善が、その後、ペルゴリドを1mgのプラミペクソール(1日3〜4回投与)で置き換えることにより得られた。
【0132】
数ヶ月後に、この養生法に、マグネシウム(混合キレート化合物としての300mgのマグネシウム元素)を加えた。それを、1日3回、この患者のレボドーパ/カルビドーパの一の規定の投与量と共に摂った。ジスキネジアの程度が即時的に低下した。この改善がマグネシウムによるものか否かを確立するために、このマグネシウムを数週間停止した。2日以内に、ジスキネジアは、明確に悪化した。
【0133】
要約
症例3は、メマンチン及びアカンプロセートが治療中のパーキンソン病のピーク投与量ジスキネジアを改善することができるということを示している。このパーキンソン病のピーク投与量ジスキネジアの治療におけるメマンチンとアカンプロセートの効力は、マグネシウムを1:1.48の重量比でアカンプロセートと同時投与することにより更に増大させることができる。
【0134】
症例報告4
37歳の男性は、双極性障害のリチウム及び一組の神経弛緩剤を用いる15年にわたる治療の結果として、極めて重い遅発性ジスキネジア及びジストニーを有した。彼の不随意運動は、胴体の力を込めた伸張、下肢のねじり、左足底の屈曲、両腕の舞踏病、舌のねじり及びしかめつらよりなった。更に、彼は、不随意運動に関係してむやみに汗をかいた。椅子にじっと座っているために、彼は、両手を力を込めて握りしめなければならなかった。椅子の中で、胴体の力を込めた伸張は、事実上、彼を椅子から立ち上がらせた。彼の胴体及び脚は、損なわれたバランスを生じ、よろめく足取りとなり、殆どころびそうであった。これらの連続する重い運動は、彼の仕事を非効率的にする集中における障害を伴っていた。しかしながら、才能と知性により、彼は、ソフトウェアエンジニアとして競争的に仕事をすることができた。彼の双極性障害は、活動性の問題のままであったので、彼の精神的健康を維持するために継続的な神経弛緩剤治療は必要であった。彼は、1日300mgの炭酸リチウム及び1日4mgのリスペリドンを続けた。
【0135】
彼の運動障害は、ベンゾジアゼピン、抗コリン作動薬及びドーパミンアゴニストで治療されてきたが、すべて有意の利益はなかった。その後、彼は、アカンプロセート(最初は、333mgの投薬量で1日3回、その後、666mgの投薬量で1日3回)で治療された。次いで、アカンプロセート療法は、硫酸マグネシウム(300mg、1日3回)で増大された。数週間後、メマンチン(10mg、1日3回)を加えたが、メマンチンは、彼の運動障害を一層重くしたので数日後に中止した。
【0136】
彼の治療中のある時点で、この患者は、アカンプロセートを止め、アカンプロセートなしで3日間過ごした。アカンプロセートを止めて24時間後に、彼の運動障害は、その(重い)ベースラインに戻った。アカンプロセートの再開の72時間後に、彼は、前のレベルの利益を再び得た。
【0137】
この患者は、症状の週の対数を維持したが、ここに、それを表4として再現する。表4は、下記を示す:
1)アカンプロセート療法は、彼の症状のすべてにおける改善と関係していた。
彼の症状の幾つか(胴体の運動、バランス及び発汗)について、666mgのア
カンプロセート(1日3回)は、333mg3回より一層効き目があった
2)マグネシウムの添加は、幾つかの症状、即ち、顔と舌、頸及び四肢の運動;における更なる改善と関係した、
3)アカンプロセートの利益は、継続的治療により増大された;
4)主観的記憶により示される心理的機能は、不随意運動と共に改善された;
5)メマンチンの添加は、不随意運動を一層重くした。
【0138】
この患者の自己評価は、アカンプロセートとマグネシウムでの治療の前後にこの患者を調べた3人の医師(2人は神経科医であり1人は精神科医である)により認められた改善の程度を控えめに述べている。治療の前に、彼は、手を握りしめ、身もだえし、大きく揺れずには、椅子に座ることができなかった。治療後には、彼は、コップに入ったコーヒーをこぼさずに部屋を横切って歩いて運ぶことができた。
【0139】
【表4】
Figure 0004562911
Figure 0004562911
【0140】
要約
アカンプロセートは、重い遅発性ジスキネジア及びジストニーの治療において効き目がある。マグネシウムをアカンプロセートと共に投与することは、重いTD及び遅発性ジストニーの治療におけるアカンプロセートの治療作用を促進させる。報告した症例においては、1:2.22のマグネシウム:アカンプロセートの比で、よい結果が得られた。メマンチンは、遅発性ジスキネジアの治療でしばしば有効であるが、症例4に記載したようにある個人では、現に、それを一層重くし得る。アカンプロセートでの治療は、マグネシウムを伴っても伴わなくても、メマンチンにより一層重くされた運動障害の軽減に有用であり得る。更に、この症例報告は、マグネシウムを伴って又は伴わないで投与されたアカンプロセートが、精神病のための神経弛緩剤を受け続けている遅発性運動障害の患者における不随意運動及び他の症状を軽快させることができるということを示している。
【0141】
最後に、症例4は、TDのモデル動物における不随意運動の発症を予防する薬剤(即ち、メマンチン、Andreassen等、前出参照)が、確立されたTDを有する人の治療においては全く利益がないことがあり得るということを示している。
【0142】
症例報告5
46歳の男性が、力を込めた伸長及び右回転を含む頸の単純チックを有した。このチックは、鬱病のデキストロアンフェタミン及びプラミペキソール、ドーパミンアゴニスト剤を用いる治療のコンテキストにおいて始まったものである。このチックは、1時間に20〜50回起きたが、彼が疲れているかストレス下にあるときは、もっと高頻度であった。
【0143】
彼は、最初、666mgのアカンプロセート(1日3回)で治療された。アカンプロセート療法の開始後24時間以内に、チックの頻度及び程度が、劇的に、1時間に5未満の割合に減少した。この患者は、しばしば、各アカンプロセートの投与量後2〜3時間にわたって全くチックが出なかったが、その後、非常に徐々に戻った。この投与量を、その後、666mg、1日4回に増した。この投与量においては、1時間に5より多い割合は、異常にストレスのある環境下でのみ起き、4時間以上のチックのない期間が頻繁にあった。アカンプロセートを丸一日省くと、チックの頻度は、1時間当たり10を超えて急速に増した。アカンプロセートなしでの2日目には、チックの割合は、再び、1時間に20を超えた。
【0144】
その後、彼に、キレート化マグネシウムを、マグネシウム元素300mgの投薬量で1日3回与えた。マグネシウム補足を用いた場合、平均のチック頻度は、毎時6回以下に低下した。666mgのアカンプロセートを1日3回与え、一緒に300mgのマグネシウムを1日3回与えた場合には、各アカンプロセート投与量後の通常のチックのない期間が約3時間から5時間増大した。
【0145】
アカンプロセート治療を、その後、メマンチン(10mg、1日2回)に変えた(2投与量につき、補足のマグネシウム、300mgを伴う)。マグネシウムを伴うメマンチンは、6〜7時間のチックのない間隔を生じた。次に、メマンチン、10mgを、1日2回投与した(2投与量については、補足のマグネシウムを伴わない)。マグネシウムを伴わないメマンチンの投与は、投与量の約30分後に始まる4〜5時間だけのチックのない期間を生じた。
【0146】
要約
アカンプロセートは、単純チックの治療において効き目がある。アカンプロセートの効力は、マグネシウムの同時投与により増進される。この場合、優れた効果は、1:2.22のマグネシウム:アカンプロセート比で得られた。拡張により、アカンプロセートは、多発性チック及びジルドラトゥーレット症候群の治療において効き目があるであろう。その上、この研究は、メマンチンが、チックの効き目のある治療剤であるということ及びメマンチンの効力がマグネシウムの同時投与により増進される(アカンプロセートと類似の様式)ということを示している。
【0147】
症例報告6
文通している英国の医師が、最近、私に、慢性的精神***病及び重い遅発性ジスキネジアを有する47歳の女性の治療について報告した。症例1におけるように、この患者の不随意運動は、重い眼瞼痙攣を含んだ。更に、彼女は、症例2の患者のように、不随意の律動的な口の周囲の運動及び両手の舞踏病様の運動を有した。彼女は、認識愁訴も有さず、日常的な精神医学的試験において気付かれる認識異常もなかった。
【0148】
この患者は、1991年に、40歳で、偏執的精神***病の症状を発症した。その精神病の症状は、幻聴、奇怪な妄想及び迫害的恐怖を含んだ。彼女は、1992年7月に、外来患者として、経口ハロペリドールでの治療を開始したが、この薬物に対する急性のジストニー反応を有した。彼女は、その後、入院してフルフェンチキソールデカノエート(筋肉注射により与えられる蓄積性神経弛緩剤)で安定化された。TDの症状は、神経弛緩剤治療の28ヶ月後、1994年11月に発症した。この患者を典型的でない神経弛緩剤オランザピン又はリスペリドンに切り替えたが、彼女のTDは、消去されなかった。1997年10月に開始して、この患者は、精神***病について、2mgのリスペリドンだけで治療された。この典型的でない神経弛緩剤の控え目の投与量において、彼女は、TDの重い症状を有し、それに対する治療を熱心に求めた。
【0149】
1997年11月28日に、メマンチンを、1日5mgの投与量で開始し、7日後に、5mgを1日2回に増し、更に7日後に、5mgを1日3回に増やした。メマンチン治療の最初の2週間(5mg、1日2回)後に、眼瞼痙攣に顕著な改善があったが、これらの運動は、その日の第2の投与量の直前に再発し始めた。2週間後、5mg、1日3回で、改善を一層維持し、事実上、メマンチンの所定の投与量のピークで注意される不随意運動はなく、ただ投与量が与えられるべきときに注意される軽度の運動があっただけである。これらの不随意運動を完全に停止させるために更なる投薬量の増加を試みた。副作用なしで達成し得る最大投与量は、10mg、1日2回であった;そのレベルを超えると、この患者は、めまいを訴えた。メマンチンのその投与量を、1997年5月中維持した。その時点(メマンチンでの治療の6ヶ月後)で、この患者は、眼瞼痙攣又は四肢の舞踏病を有さず、軽い口の周囲の運動を有しただけである。
【0150】
1998年5月に、この患者は、不随意運動の完全な除去を得ようとして、アカンプロセートでの治療を開始した。最初は、アカンプロセート333mg(1日3回)を、メマンチン10mg(1日2回)に加えた。アカンプロセートを追加したところ、口の周囲の運動は消え、この患者は、本質的に、不随意運動がなくなった。メマンチンを1998年8月に中止し;この患者は、アカンプロセートだけで不随意運動のないままであった。
【0151】
要約
メマンチン及びアカンプロセートの両者は、神経弛緩剤治療を必要とし続ける慢性的精神***病の患者におけるTDの不随意運動を緩和することができる。両薬剤は、重い神経弛緩剤により誘発された眼瞼痙攣を軽減することができる。アカンプロセートは、この患者に許容される投与量のメマンチンに応答しないTDの不随意運動を軽減することができる。薬物に誘発された眼瞼痙攣のこれらの2種類の薬剤に対する応答は、メマンチン及びアカンプロセートが特発性(自然の)眼瞼痙攣の治療において有用であろうということを示唆する。拡張により、それらは、他の焦点ジストニーの治療において有用であることが予想され得る。
【0152】
検討
これらの提示した症例で検討した患者は、全員、ジスキネジア運動の頻度と程度において、アカンプロセート又はメマンチン治療に応答して、顕著な減少を示した。症状の軽減は、治療剤の投与から48時間以内に始まったが、もし、患者が、治療を中止すれば、症状が直ちに再発した。この証拠は、アカンプロセート、メマンチン及びデキストロメトルファン(同様の薬力学的作用を有するもの)等の医薬が、遅発性運動障害(TD、遅発性ジストニー、チック疾患(トゥーレット症候群を含む)、及び焦点ジストニーを含む)の治療において有用であろうという私の新規な仮説を支持している。特に、症例報告1及び6は、メマンチンが眼瞼痙攣及び一層広範囲の遅発性運動障害と関係するメージュ症候群を軽減することができることを示している。拡張により、私は、メマンチン(マグネシウムを伴うか又は伴わない)及び関連薬剤が、特発性眼瞼痙攣及びメージュ症候群並びに他の焦点ジストニー例えば痙性斜頸、書痙その他の職業ジストニーに対する上首尾の治療剤でもあろうということを予言する。
【0153】
その上、私は、他所において、マグネシウム、イオンチャンネル遮断によるNMDAグルタメート神経伝達のアンタゴニストが、他のNMDAレセプターアンタゴニストの運動障害(チック、遅発性ジスキネジア及び遅発性ジストニーを含む)に対する治療作用を増大させることができるという証拠を提出している(「Methods of Treating Tardive Dyskinesia and Other Movement Disorders」と題する、同時係属中の出願第09/193,892号(1998年11月18日出願)を参照されたい)。マグネシウムが、チック及び遅発性運動障害並びに遅発性運動障害に非常に似ている自然の運動障害(眼瞼痙攣及びメージュ症候群並びに他の焦点ジストニー例えば痙性斜頸、書痙その他の職業ジストニーを含むが、これらに限らない)に対するアカンプロセート、メマンチン及びデキストロメトルファンの治療効果を増大させるであろうということは、この仕事から推論することができ且つそれは、ここで示される。
【0154】
私は、マグネシウム元素の投与が、単純チックの治療におけるアカンプロセートの効力を増進するか否かを試験した。症例5においては、メマンチン又はアカンプロセートにマグネシウム塩を補足することが、チックを、メマンチン又はアカンプロセートだけよりも一層よく緩和するということが示されている。従って、マグネシウムは、GABA伝達を増大させ及び/又はNMDAグルタメート伝達を減少させる任意の他の薬剤と組み合わせて単純チックを更に抑制することができる。
【0155】
カルシウムアセチルホモタウリネート及びマグネシウムの塩若しくはキレート化合物の両者は、適当な投薬量で与えるならば、安全な薬物である。マグネシウムアセチルホモタウリネートは、GI管中で解離したときに、アカンプロセートとマグネシウム塩の混合物と同じマグネシウムイオンとホモタウリネートを生じる。私は、マグネシウムアセチルホモタウリネートも安全な薬物であろうと推論する。それ故、マグネシウムN−アセチルホモタウリネートは、マグネシウムイオンのNMDAレセプター阻害作用の故に、潜在的に運動障害に対するアカンプロセート(カルシウム)より高い効力を有する安全且つ有効な薬物である。しかしながら、初期から注意されていたように、それは、最大の治療効果のためにマグネシウムのN−アセチルホモタウリネートに対する理想的なモル比を有するものではない。それ故、N−アセチルホモタウリンの塩又は誘導体と組み合わされたマグネシウムの塩又はキレート化合物が、運動障害の治療剤として一層効き目があるということは、ありそうなことである。アカンプロセート及び関連化合物と組み合わせたマグネシウムイオンが、様々な運動亢進、ジスキネジア及びジストニー運動障害例えば多発性チック、トゥーレット症候群、遅発性ジスキネジア及び眼瞼痙攣並びに他の焦点ジストニーの症状を緩和することは、ありそうなことである。
【0156】
アカンプロセートでの治療開始後に、前に認識障害を示した患者が、認識機能における有意の改善を示した(症例1、2及び4参照)。この証拠は、アカンプロセート及び同様の薬力学的作用を有する誘導体が運動亢進性運動障害(ジスキネジア及びジストニー並びにそれらに関係する認識障害)の治療において有用であろうという私の新規な仮説を支持している。アカンプロセート及び類似の薬物は、GABA神経伝達とNMDA型グルタメート神経伝達に同時に作用する(それは、運動亢進性、ジスキネジアの及びジストニーの運動障害の治療に関して共同的であり得る)。他の関連化合物及び化合物の混合物が、GABA及びグルタメート神経伝達に対する類似の同時の効果を有すると拡張するならば、これらの関連化合物は、運動障害及び関連する認識障害に対する同じ又は類似の作用を有し得る。関連化合物には、N−アセチルホモタウリネートの他の塩(例えば、マグネシウムN−アセチルホモタウリネート)、アセチルホモタウリネート塩基、ホモタウリン、これらの化合物の誘導体並びに肝臓、血液又は脳内で代謝されてアセチルホモタウリネート又はGABA及びNMDA型グルタメート神経伝達に対する同様の薬力学的効果を有する同族体が含まれる(これらに限らない)。更に、経口投与後に容易に吸収され又は長い半減期を有する任意の誘導体又はプロドラッグは、特に望ましい。
【0157】
アカンプロセートは又、TD以外の運動亢進性又はジスキネジアの運動障害の治療に対する利益をも有する。症例3は、それが、レボドーパで治療されているパーキンソン病のピーク投与量ジスキネジアの緩和において有用であることを示している。症例1は、アカンプロセートを用いて、眼瞼痙攣(焦点ジストニー)及びメージュ症候群をこれらがTDに関係している場合に上首尾に治療することができることを示し、それを用いて、特発性眼瞼痙攣及びメージュ症候群を上首尾に治療することができることを示唆している。症例4は、アカンプロセートが、単純チックの並びに拡張により多発性チック及びジルドラトゥーレット症候群の治療において効き目があるということを示唆している。拡張により、アカンプロセートは、多分、神経弛緩剤に誘発されたのではない運動障害(これらは、神経弛緩剤に誘発された(遅発性)運動障害と同じ総合的臨床症状を示す)を有する患者に利益となるであろう。特に、上記のように、それは、任意の焦点ジストニーの治療に、及びハンチントン病の不随意運動の治療に効き目があり得る。ハンチントン病の患者は、線条体におけるGADの欠乏をも有し、NMDAレセプター媒介の興奮毒性のためのニューロン死を被っていると考えられる(DE Riley及びAE Lang:Movement Disorders[WG Bradley等編、Neurology in Clinical Practice,Boston:Butterworth-Heinemann,1991,p.1568中])。この疾患のこれらの特徴は、アカンプロセート(GABA及びNMDAレセプターに対する接合作用を有する薬物)に対する陽性応答に味方する。それ故、患者は、アカンプロセート、メマンチン及びデキストロメトルファン(単独で又はマグネシウムと組み合わせて)により少なくとも部分的に軽快されるであろうと予想することができる。
【0158】
上記のように、この発明の方法の一つの面は、TDと関係する認識障害の改善を特徴とする。TDの治療中に見られる認識及び毎日の機能的動作における改善は、アカンプロセートを、TDに頻繁に伴う認識障害を有する患者にとって特に魅力的なものとする。
【0159】
遅発性ジスキネジアと認識障害との間の関係は、完全には理解されていない。先在性の認識障害が、患者が神経弛緩剤を長期間にわたって受けるという事象においてTDを発症する危険を増大させるということは公知である。TDを有する治療中の精神***病患者は、TDを有しない場合よりも進行性の認識低下を示すことが一層ありそうであるということも公知である。しかしながら、TDの治療がTDと関係する認識欠損を改善するか否かは知られていない。上記の症例1、2及び4は、少なくとも幾つかのTDの治療がかかる認識欠損を改善することができるということを示唆している。従来技術は、アカンプロセートの投与が、アルコール中毒症の治療剤として用いられる場合には、その患者の認識を改善したということを報告していないが、私は、症例1、2及び4において見られた認識の改善は、彼らの運動障害の改善と関係したと推論する。これは、十分確立された認識過程における脳底神経節の関与と一致する(Sano等、Basal Ganglia Diseases[Fogel等(編)、Neuropsychiatry, Williams及びWilkins,1996中])。
【0160】
その上、アカンプロセートがアルコール中毒症の治療において用いられる薬剤としても知られているという事実は、アカンプロセートを、運動亢進性運動障害に加えてアルコール中毒症の病歴を有する患者の治療に特に適したものとする。一度かかる群が、精神***病とアルコール中毒症を有する患者(いわゆる「二重診断」患者)であって、TDを有するならば、アルコールは、それに対する危険因子である。

Claims (14)

  1. 神経弛緩剤により誘発された運動障害を治療するためのアカンプロセート(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)を含む組成物
  2. チック疾患を治療するためのアカンプロセート(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)を含む組成物
  3. 前記のチック疾患を、単純チック、複雑チック、多発性チック及びトゥーレット症候群よりなる群から選択する、請求項に記載の組成物
  4. レボドーパを用いるパーキンソン病治療で生じるピークドーズジスキネジアを治療するためのアカンプロセート(カルシウムN−アセチルホモタウリネート)を含む組成物
  5. 有効なアカンプロセート投与量が一日当たり0.999g〜2.664gである請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物
  6. 有効なアカンプロセート投与量が333mgの単回投与である請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物
  7. 有効なアカンプロセート投与量が666mgの単回投与である請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物
  8. 前記アカンプロセートが、体内で代謝されてアセチルホモタウリネートイオンを体内に放出する、請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物
  9. 記の運動障害を非毒性の投薬量にて改善する、請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物
  10. 限式放出カプセル又は経皮的パッチの形態である、請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物
  11. 更にマグネシウムを含む、請求項10いずれか1項に記載の組成物
  12. 前記マグネシウムは、無機塩又はキレート化合物である、請求項11に記載の組成物
  13. マグネシウム無機塩又はキレート化合物、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び種々のアミノ酸の何れかとキレート化したマグネシウムよりなる群から選択する、請求項12に記載の組成物。
  14. アカンプロセートのマグネシウム無機塩又はキレート化合物に対する重量比が、1:1〜6:1である、請求項12又は13に記載の組成物
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