JP4562227B2 - 光学用樹脂基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、セル基板やタッチパネル、電磁波シールド材や太陽電池カバー等に好適な光学用樹脂基板の製造方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
高速応答性等に着目されてSTN液晶や強誘電液晶に期待が寄せられる中、かかる液晶を用いたセルの形成に好ましく使用できる表面平滑性に優れるセル基板が求められている。表面粗さが大きいとウィリアムズドメイン等の配向不良が発生しやすくなってコントラストや視認性等の表示品位に大きく影響するためであり、0.8nm以下の表面粗さRaであることが望まれている。
【0003】
しかしながら、従来の研磨方式によるガラス基板や注型方式による樹脂基板では、研磨ムラや型板の表面粗さの反映で通例10nm以上の表面粗さRaとなり前記した表面粗さを達成することが困難な問題点があった。また研磨方式や注型方式では、量産性に乏しくその維持管理に多労力を要して基板の製造効率にも乏しい難点があった。
【0004】
【発明の技術的課題】
本発明は、表面平滑性に優れ、製造効率にも優れる光学用樹脂基板の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題の解決手段】
本発明の光学用樹脂基板の製造方法は、光学用樹脂基板の製造方法であって、前記光学用樹脂基板は、少なくとも樹脂層とベース層とを有する複層構造物であり、下記(a)〜(c)の工程を含む工程により、前記ベース層の表面粗さRaが、0.8nm以下、前記複層構造物の平均厚さが、100〜800μmとなるように形成することを特徴とする。
(a)表面粗さRaが0.02μm以下の支持体上に樹脂層用塗工液を展開して、前記樹脂層を形成する工程
(b)前記(a)工程後、前記樹脂層の上に、直接、または塗工方式により形成された他の樹脂層を介して、ベース層用塗工液を流動展開して自由表面を形成させ、さらに硬化させて、前記ベース層を形成する工程
(c)前記(b)工程後、前記樹脂層および前記ベース層を、前記支持体から剥離する工程
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、複層構造物化にて支持体上に易剥離性の樹脂層を形成してその上に基板のベース層となる樹脂層を塗工形成する製造方式を適用でき、鏡面等とした支持体の表面平滑性を易剥離性の樹脂層に良好に転写反映させつつその易剥離性の樹脂層を介し形成した複層基板を支持体より容易に剥離回収でき、また塗工方式による自由表面の形成で優れた表面平滑性を達成しつつ前記ベース層をエポキシ系樹脂等の硬化型樹脂で形成することも可能であり、表面平滑性に優れる光学用樹脂基板を効率よく得ることができる。また0.8nm以下の表面粗さRaの達成でSTN液晶や強誘電液晶を用いたコントラストや視認性等の表示品位に優れる液晶セルを形成することができる。
【0007】
【発明の実施形態】
本発明による光学用樹脂基板は、少なくとも片面における表面粗さRaが0.8nm以下であり、かつ平均厚さが100〜800μmの複層構造物からなる。その製造は、例えば鏡面等の表面が平滑な支持体の上に易剥離性の樹脂層を形成しつつ、その樹脂層の上にベース層となる樹脂塗工液をシート状に展開して皮膜化する方法などにより行うことができる。
【0008】
前記の方法において塗工液の展開には、例えばロールコート法やスピンコート法、ワイヤバーコート法やエクストルージョンコート法、カーテンコート法やスプレーコート法、ディップコート法などの、塗工液を流動展開させてシート状に成形しうる適宜な方式を適用することができる。かかる流動展開による自由表面の形成により表面平滑性を格段に高めて本発明の目的を達成することができる。
塗布効率や製造効率などの点よりは流延法、特にダイを介して塗工液を流動展開させるエクストルージョンコート法が好ましい。
【0009】
図1に前記のエクストルージョンコート法による連続製造方式の工程例を示した。この方法では先ず、エンドレスベルト1からなる支持体を駆動ドラム2と従動ドラム3を介し矢印方向に例えば0.1〜50m/分、就中0.2〜5m/分等の一定速度で回転走行させつつ、その上にダイ51を介し易剥離性樹脂の塗工液を連続的にシート状に塗布し、その展開層52を乾燥、あるいは必要に応じ加熱又は光照射などにより硬化処理して皮膜からなる易剥離性の樹脂層5とし、その幅方向の両端部に補強テープ8を接着する。なお図例では、紫外線照射装置53が配置されている。
【0010】
ついで易剥離性の樹脂層5を順次形成しつつその上に、ガイドロール73を介し水平レベルを維持した支持体1の上部に配置のダイ71を介し樹脂塗工液を順次塗布して通例100μm厚以上のシート状に展開し、その展開層72を硬化装置4を介し硬化処理して前記の樹脂層5と密着した硬化樹脂層(ベース層)7を順次形成しつつ、その硬化樹脂層7を当該樹脂層5と共に補強テープ8を介して支持体1より剥離回収し目的の光学用樹脂基板が連続製造される。
【0011】
前記の方法によれば、光学用樹脂基板を簡単な一連の操作を介し連続製造できて量産性に優れており、支持体1の上に最初に形成する樹脂層5が、得られた光学用樹脂基板を支持体より容易に効率よく剥離回収することを可能にする。また支持体を介した展開層の移動速度の調節で量産速度を容易に制御でき、その移動速度や塗工液展開量の調節で得られる光学用樹脂基板の厚さも容易に制御することができる。
【0012】
上記において支持体としては、例えばステンレスや銅やアルミニウムの如き金属、あるいはプラスチックなどからなるエンドレスベルト等の表面が平滑なベルト状物や板物などの、樹脂塗工液を順次連続的に展開でき、その展開層を支持してシート状に維持できる平面を有する適宜なものを用いることができ、展開層を可及的に水平状態に維持できるものが好ましい。就中、加温手段を介した速やかな温度制御性や耐久性などの点より樹脂層の展開表面がステンレスからなる支持体が好ましい。
【0013】
支持体の厚さは、強度等に応じて適宜に決定され、一般には0.1〜10mmとされる。金属からなる場合には強度と温度制御性等の点より0.5〜2mmの厚さが好ましい。また支持体の表面状態を転写反映させて平滑性に優れる樹脂層を得る点よりは、表面粗さRaが0.02μm以下の支持体を用いることが好ましい。また支持体の両端部には漏出防止等を目的とした耐熱性樹脂等からなる堰を設けることもできる。
【0014】
支持体上に最初に設ける易剥離性の樹脂層は、その上側に設けるベース層を一体的に支持体より容易に剥離できるようにすることを目的する。従ってその樹脂層の形成には、支持体と接着しないか、接着してもその接着力が弱くて容易に剥離できるものが用いられる。その樹脂の種類については特に限定はなく、適宜なものを用いうる。
【0015】
ちなみに前記樹脂の例としては、ウレタン系樹脂やアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂やポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体の如きポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂や塩化ビニリデン系樹脂、ポリアリレート系樹脂やスルホン系樹脂、アミド系樹脂やイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂やポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂やシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂やポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂やビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂やアクリロニトリル系樹脂などがあげられる。樹脂層の形成には、適宜な樹脂の2種以上のブレンド物なども用いうる。
【0016】
易剥離性樹脂層は、ベース層等と密着してそれと共に支持体より剥離回収されて光学用樹脂基板の片側表面を形成することより、透明性等の光学特性に優れるものであることが好ましい。また光学用樹脂基板の表面をコートして傷付きにくくするものが好ましい。かかる易剥離性や光学特性、ハードコート性、特にステンレス系支持体に対する易剥離性などの点より樹脂層の形成に好ましく用いうるものは、ウレタン系樹脂であり就中、下記の化学式で表されるものである。
【0017】
【0018】
易剥離性樹脂層の形成は、例えば易剥離性樹脂を必要に応じ有機溶媒や水等の適宜な溶媒にて溶液化して上記等の適宜な方式で支持体の所定面に塗布し必要に応じてそれを乾燥後、加熱処理や光照射等の樹脂に応じた方式にて硬化処理する方式などの適宜な方式にて皮膜化することにより行うことができる。易剥離性樹脂層を形成する塗工液の粘度は、適宜に決定しうるが、一般には塗工効率や均一塗布などの点より1〜100センチポイズとされ、上記したエクストルージョンコート法による場合には特に1〜10センチポイズに調製した樹脂液が好ましく用いうる。
【0019】
形成する易剥離性樹脂層の厚さは、適宜に決定しうるが一般には易剥離性や剥離の際にヒビ割れの生じることを防止する点などより、1〜10μm、就中8μm以下、特に2〜5μmとすることが好ましい。なおウレタン系樹脂等の塗工層を光照射にて硬化処理する場合には、中心波長が365nmや254nmの高圧や低圧の紫外線ランプを用いることが処理効率などの点より好ましい。
【0020】
なお易剥離性樹脂層の形成に際してはその塗工液に、支持体よりの剥離性の向上を目的とした例えばエチレンオキサイドを付加した炭素数25〜100のエチレンポリマーやパラフィン等の直鎖飽和炭化水素などの適宜な薬剤を配合することができる。
【0021】
図1に仮装線で例示した如く光学用樹脂基板の形成に際しては、易剥離性樹脂層5の上に必要に応じ別個の重畳層6を設けてその上にベースとなる樹脂層7を設けることもできる。図例では前記した樹脂層5の形成に準じて、ダイ61を介し重畳用の塗工液を樹脂層5の上に順次シート状に展開し、その展開層62を硬化装置63を介し皮膜化して重畳層6を形成するようになっている。
【0022】
易剥離性樹脂層5とベース層7の間に必要に応じて設ける前記の重畳層は、例えば耐薬品性や光学的異方性、低吸水性や低透湿性、低酸素透過性等のガスバリア性などの適宜な機能付与を目的とするものであってよい。従って別個に設ける当該重畳層は、1層又は2層以上であってもよい。
【0023】
ちなみに液晶セルにおいては、水分や酸素がセル基板を透過してセル内に侵入すると液晶の変質や気泡の形成による外観不良、透明導電膜パターンの断線などを発生させるおそれがある。従って液晶セルの場合には、水蒸気や酸素ガスの透過阻止が重要となり、それらガスの透過を阻止しうるガスバリア層を設けたセル基板が好ましく用いられる。
【0024】
前記のガスバリア層を形成するための塗工液は、目的とするガスの透過を阻止しうる液体化が可能な適宜な材料を用いて調製することができる。一般には水蒸気や酸素ガス等の目的とするガスの透過阻止能に優れる、就中、酸素透過係数が小さい例えばポリビニルアルコールやその部分けん化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリマー類が用いられる。特にガスバリア性や水分の拡散性ないし吸水度の均一性などの点よりビニルアルコール系ポリマーが好ましく用いうる。
【0025】
易剥離性樹脂層の上に設けるガスバリア層等の重畳層を形成するための塗工液は、例えば1種又は2種以上の形成材料を必要に応じ溶媒を併用して、ポリマー溶液の如く流動展開しうる状態とすることにより調製することができる。形成するガスバリア層等の各重畳層の厚さは、適宜に決定でき特に限定はない。一般には透明性や着色防止、ガスバリア性等の機能性や薄型化、得られる光学用樹脂基板のフレキシビリティーなどの点より15μm以下、就中10μm以下、特に1〜5μmの厚さとすることが好ましい。なお重畳層を設ける場合には易剥離性樹脂層、特にハードコート層としてのそれの厚さは1μm未満、就中0.1μm以上とすることもできる。かかる薄厚にても重畳層による補強硬化で支持体よりの破損のない剥離が可能である。
【0026】
易剥離性樹脂層又はその上の重畳層の上に展開してベース層を形成するための樹脂塗工液の調製には、光学用樹脂基板の使用目的などに応じて適宜な熱可塑性樹脂や硬化型樹脂の1種又は2種以上を用いることができ、特に限定はない。液晶セルを形成するためのセル基板を得る場合などには熱硬化型や紫外線硬化型等のエポキシ系樹脂が好ましく用いられる。そのエポキシ系樹脂の種類については特に限定はなく適宜なものを用いうる。
【0027】
ちなみに前記エポキシ系樹脂の例としては、ビスフェノールA型やビスフェノールF型、ビスフェノールS型やそれらの水添型の如きビスフェノール型、フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型の如きノボラック型、トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型の如き含窒素環型、脂環式型や脂肪族型、ナフタレン型の如き芳香族型やグリシジルエーテル型、ビフェニル型の如き低吸水率タイプやジシクロ型、エステル型やエーテルエステル型、それらの変性型などがあげられる。
【0028】
硬化変色を生じにくくて透明性等の光学特性などの点より好ましく用いうるエポキシ系樹脂は、ビスフェノールA型や脂環式型、トリグリシジルイソシアヌレート型のものなどである。またセル基板等として用いる場合における剛性や強度等の物性などの点より好ましく用いうるエポキシ系樹脂は、エポキシ当量が100〜1000で、軟化点が120℃以下の硬化樹脂を形成するものである。
【0029】
さらに塗工性やシート状への展開性等に優れるエポキシ系樹脂塗工液を得る点などよりは、塗工時の温度以下、就中、常温において液体状態を示す二液混合型のものが好ましく用いうる。その場合、粘度調製や強度、耐熱性の向上等を目的に固形状のエポキシ系樹脂を併用することもできる。従ってエポキシ系樹脂は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
エポキシ系樹脂塗工液には必要に応じて硬化剤を配合でき、熱硬化型のエポキシ系樹脂塗工液の場合には通例、硬化剤が配合される。用いる硬化剤については、特に限定はなく、併用のエポキシ系樹脂に応じた適宜な硬化剤を1種又は2種以上用いることができる。ちなみにその例としては、テトラヒドロフタル酸やメチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸やメチルヘキサヒドロフタル酸の如き有機酸系化合物類、エチレンジアミンやプロピレンジアミン、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクトやメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンの如きアミン系化合物類があげられる。
【0031】
またジシアンジアミドやポリアミドの如きアミド系化合物類、ジヒドラジットの如きヒドラジド系化合物類、メチルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルイミダゾールやイソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールやフェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾールやヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールの如きイミダゾール系化合物類も前記硬化剤の例としてあげられる。
【0032】
さらにメチルイミダゾリンや2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリンやイソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリンやフェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリンやヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンの如きイミダゾリン系化合物類、その他、フェノール系化合物類やユリア系化合物類、ポリスルフィド系化合物類も前記硬化剤の例としてあげられる。
【0033】
加えて酸無水物系化合物類なども前記硬化剤の例としてあげられ、低刺激性による作業環境性や得られる光学用樹脂基板の耐熱性向上による高温耐久性、変色防止性などの点よりは、かかる酸無水物系硬化剤が好ましく用いうる。その例としては無水フタル酸や無水マレイン酸、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸、無水ナジック酸や無水グルタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸やメチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸やメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ナジック酸やドデセニル無水コハク酸、ジクロロ無水コハク酸やベンゾフェノン無水テトラカルボン酸や無水クロレンディック酸などがあげられる。
【0034】
就中、前記の変色防止性などの点より無水フタル酸やテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸やメチルヘキサヒドロ無水フタル酸の如く無色系ないし淡黄色系で、分子量が約140〜約200の酸無水物系硬化剤が好ましく用いうる。
【0035】
硬化剤の使用量は、その種類やエポキシ系樹脂のエポキシ当量などに応じて適宜に決定でき、通例のエポキシ系樹脂硬化の場合に準じうる。一般には、得られる光学用樹脂基板の色相や耐湿性の低下防止などの点よりエポキシ基1当量に対し、0.5〜1.5当量、就中0.6〜1.4当量、特に0.7〜1.2当量の割合で硬化剤を使用することが好ましい。
【0036】
エポキシ系樹脂塗工液の調製に際しては、必要に応じて硬化促進剤やレベリング剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。硬化促進剤は、硬化速度の促進による必要硬化処理時間の短縮を目的に配合され、その配合にて支持体の必要長を不配合の場合の数分の1程度に短縮することもできる。従って量産性の向上や連続製造設備の小型化などの点より硬化促進剤を配合することが好ましい。
【0037】
用いる硬化促進剤については特に限定はなく、エポキシ系樹脂や硬化剤の種類などに応じて例えば、第三級アミン類やイミダゾール類、第四級アンモニウム塩類や有機金属塩類、リン化合物類や尿素系化合物類の如き適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。就中、第三級アミン類やイミダゾール類が好ましく用いうる。硬化促進剤の使用量は、促進効果などに応じて適宜に決定しうるが一般には変色防止性などの点よりエポキシ系樹脂100重量部あたり0.05〜7重量部、就中0.1〜5重量部、特に0.2〜3重量部が好ましい。
【0038】
一方、レベリング剤は、エポキシ系樹脂塗工液の展開層を空気との接触下に硬化処理する場合に、硬化剤等の飛散による表面張力のバラツキなどで梨地状の表面となることを防止して平滑な表面を形成することなどを目的に配合するものであり、例えばシリコーン系やアクリル系、フッ素系等の各種界面活性剤などの表面張力を低下させうる適宜なものを1種又は2種以上用いうる。就中シリコーン系界面活性剤が好ましく用いうる。
【0039】
また例えばフェノール系やアミン系、有機硫黄系やホスフィン系等の老化防止剤、グリコール類やシリコーン類、アルコール類等の変性剤、発泡防止剤や水酸基含有化合物、染料や顔料、変色防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤も配合することができる。前記の発泡防止剤は、得られる光学用樹脂基板中に光学特性の低下原因となる気泡が混入することの防止などを目的に添加され、グリセリン等の多価アルコールなどが好ましく用いうる。
【0040】
さらに紫外線照射により硬化処理するエポキシ系樹脂塗工液の場合には、光重合開始剤や増感剤などを配合することもできる。その光重合開始剤や増感剤としては、例えばアリルジアゾニウム塩やベンゾフェノン、ベンゾインなどの、エポキシ系樹脂の紫外線硬化処理で公知の適宜なものを用いることができる。
【0041】
ベース層を形成する樹脂塗工液は、配合成分を必要に応じ溶媒を併用して流動展開しうる状態とすることにより調製することができる。その塗工液の粘度は、適宜に決定しうるが、一般には厚さムラの抑制等による厚さ精度の向上や塗工効率、自由表面の形成に基づく表面平滑性の向上などの点より10ポイズ以上、就中30〜500ポイズ、特に150〜300ポイズの粘度で支持体上に展開することが好ましい。
【0042】
特にエクストルージョンコート法では厚さ精度や表面平滑性の向上等の点より、ダイの温度を10〜40℃、就中15〜35℃、特に20〜30℃の範囲に制御し、その温度変化を±0.5℃以下、就中±0.3℃以下、特に±0.1℃以下に制御しつつ塗工液の粘度を150〜300ポイズに調節して易剥離性樹脂層等の上に展開することが好ましい。
【0043】
またベース層を形成する樹脂塗工液の展開は、支持体のバランスを制御してその傾斜や変形等による流動で塗工層に厚さムラを生じることの抑制、ひいては基板の厚さ精度の向上などの点より支持体の幅に対して90%以上、就中95%以上の幅、特に可及的に同幅の展開層とすることが好ましい。従って支持体は、可及的に水平な状態で前記展開層を支持しうることが層厚を均一化する点より好ましい。ちなみに硬化処理時に支持体の水平レベルを、形成する硬化樹脂層の目的とする有効幅の5倍量あたり、就中20倍量あたり、特に40倍量あたり1mm以下に維持することで、形成される光学用樹脂基板の厚さ精度を±15%以下、就中±10%以下とすることも可能である。
【0044】
易剥離性樹脂層等の上に形成したベース層を形成する樹脂塗工液の展開層の必要に応じての硬化処理は、加熱硬化方式や紫外線硬化方式などの樹脂に応じた適宜な方式にて行うことができ、2種以上の硬化処理方式を併用することもできる。得られる硬化樹脂層の耐熱性の点よりは通例、加熱による硬化方式が好ましい。また硬化処理では樹脂塗工液の展開層が硬化する過程における粘度変化を制御して、得られる硬化樹脂層の厚さ精度の向上や光学歪の低減を図る点などより支持体の幅方向における温度のバラツキを抑制すること、特に幅方向の温度変化を0.5℃/cm以下、就中±0.3℃以下、特に±0.1℃以下に制御することが好ましい。
【0045】
前記した支持体の幅方向における温度制御は、適宜な方式にて行いうるが厚さ精度の向上や光学歪の低減等の点よりは展開層の硬化の進行段階に応じて温度制御できることが好ましく、かかる点より硬化装置を1〜10ゾーン、就中2〜6ゾーンに区分し加温手段を介して各ゾーン毎に温度制御する方式が好ましい。ちなみに図例では、加熱装置4を5ゾーンに区分しその各ゾーンで加熱温度を調節して展開層の粘度を制御できるようになっている。また支持体の水平レベルも、水平度レベルセンサ41による検知を介してガイドロール42により修正できるようになっている。
【0046】
また前記の温度制御は、加熱の時間や温度、昇温の速度等の加熱条件を調節する方式などにて行いうるが、速やかな温度制御の点よりは支持体の上下又はその一方に加温手段を配置し、その加温手段を介して例えば支持体の上下面の加熱、あるいは上面又は下面のみの加熱を組合せる方式などの適宜な方式にて温度制御する方式が好ましい。その加温手段には、例えば熱風や赤外線ヒータなどの適宜な手段を1種又は2種以上用いることができる。
【0047】
なお展開層の硬化処理を加熱方式で行う場合には、その加熱手段を前記の加温手段に兼ねさせることもできる。加熱硬化処理方式における加熱条件としては、30〜250℃、就中45〜220℃、特に60〜170℃の加熱温度で、5〜60分間、就中10〜40分間、特に15〜30分間の加熱時間などが一般的であるが、これに限定されない。
【0048】
光学特性の向上等の点よりは通例、例えば15〜30分間等の比較的短時間の加熱時間が好ましい。また熱風により加熱する場合には、0.1〜5m/秒、就中3m/秒以下、特に0.2〜1m/秒の風速とすることが厚さ精度の向上等の点より好ましい。さらに厚さ精度の向上の点よりは、展開層の幅方向における温度差を可及的に抑制することが好ましい。
【0049】
上記した硬化処理により通例、易剥離性樹脂層等と硬化樹脂層が良好に密着して一体化し、それらを一体物として取扱いうる光学用樹脂基板が形成される。なお紫外線等による硬化処理方式は、上記した易剥離性樹脂層の場合に準じうる。
また硬化処理に際しては加熱硬化方式と紫外線等による硬化方式を併用することもできる。
【0050】
形成する光学用樹脂基板の平均厚さは、その使用目的などに応じ100〜800μmの厚さで適宜に決定することができる。液晶セル基板用途などでは曲げ強度等の剛直性ないし柔軟性や表面平滑性、低位相差性や薄型軽量性などの点より200〜500μmの厚さが有利な場合も多い。
【0051】
また液晶セル基板用途等の場合、厚さ精度は±20%以下、就中±15%以下、特に±10%以下であることが好ましく、特に幅方向における厚さ精度が±15%以下、特に±10%以内にあるものが好ましい。幅方向の厚さ精度は、形成した光学用樹脂基板の両端部を切断除去する方式にても高めうるが、その場合には切断ロスが発生して歩留まりを低下させる。従って本発明にては可及的に広幅で目的とする厚さ精度の光学用樹脂基板を形成することが好ましい。
【0052】
なお上記した連続製造法において、形成した光学用樹脂基板の支持体よりの回収は、割れの防止などの点よりガラス転移温度近傍等の高温雰囲気下又は急冷による収縮応力の作用下に剥離することが好ましい。特に割れや亀裂と塑性変形や残留歪みの発生を防止しうるバランスのとれた柔軟性を達成する点より、ベース層のガラス転移温度の20℃低い温度以上、就中±10℃の温度範囲にて剥離することが好ましい。従って得られた光学用樹脂基板の回収は、ガラス転移温度近傍等の高温雰囲気にても塑性変形しない硬化状態となった後に行うことが前記の割れや歪の発生防止などの点より好ましい。
【0053】
前記の支持体よりの光学用樹脂基板の回収に際しては、必要に応じ剥離手段を用いることができる。ちなみに上記に例示した如く樹脂層又は必要に応じての重畳層の形成後その端部等に補強テープを接着し、その上にベース樹脂層を形成する方式などによりその補強テープを把持持ち上げて光学用樹脂基板を支持体より効率よく剥離回収することができる。形成された光学用樹脂基板の連続体は、必要に応じてレーザー光線や超音波カッター、ダイシングやウォータージェットなどの適宜な切断手段を介し適宜な寸法に切断して回収することもできる。
【0054】
本発明による光学用樹脂基板は、例えば液晶セル等の各種セルにおけるセル基板やタッチパネル、電磁波シールド材や太陽電池カバーなどの従来に準じた各種の目的に好ましく用いうる。なお光学用樹脂基板は、易剥離性樹脂層や重畳層やベース層の適宜な層の1層又は2層以上の着色化などを介して不透明体とすることもできるが、セル基板の如く光透過性であることが必要な場合には基板を形成する全部の層が透明層として形成される。
【0055】
前記した液晶セル基板としては、液晶セルの製造過程の高温雰囲気等に耐えるものとする点などよりガラス転移温度が120℃以上、就中130℃以上、特に140℃以上の光学用樹脂基板であることが好ましい。なお前記のガラス転移温度は、TMA(熱機械分析法)による引張モードにて昇温速度2℃/分の条件により測定することができる。本発明による光学用樹脂基板を用いた液晶セルの形成に際しては、従来に準じ必要に応じて透明導電膜や配向膜、偏光板や位相差板等の種々の機能層を重畳することもできる。また形成する液晶セルは、例えばTN型やSTN型、TFT型や強誘電性液晶型など任意である。
【0056】
【実施例】
実施例1
【0057】
上式で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート400部(重量部、以下同じ)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸500部、下式で表されるテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオエート15部、グリセリン9部及びシリコーン系界面活性剤1部を撹拌混合して25℃で200ポイズのエポキシ樹脂塗工液を調製した。
【0058】
【0059】
次に図1に例示の流延法にて、ウレタン系紫外線硬化型樹脂の17重量%トルエン溶液をダイより吐出させて、0.2m/分の一定速度で回転走行する幅500mm、表面粗さRa10nmのステンレス製エンドレスベルト上に流延塗布し、トルエンを揮発乾燥後、低圧水銀灯を介し紫外線(254nm)を2000mJ/cm2照射して硬化処理し、幅500mm、厚さ2μmのウレタン系樹脂層を形成した。
【0060】
ついで前記の操作を継続しつつ、硬化したウレタン系樹脂層の上にポリビニルアルコールの5.5重量%水溶液をダイより吐出させて流延塗布し、60℃で10分間乾燥させて幅450mm、厚さ4μmのポリビニルアルコール層を重畳形成し、その幅方向の両端部に幅40mmの耐熱ポリエステル基材粘着テープ(日東電工社製、MT−3155)を接着した。
【0061】
続いて前記したウレタン系樹脂層とポリビニルアルコール層の形成及び粘着テープの接着操作を継続しつつ、そのポリビニルアルコール層の上に支持体の水平レベルを200μm/mに維持しつつ上記で得たエポキシ系樹脂塗工液を25℃のダイより連続に吐出させて幅430mmのシート状に展開し、その展開層を支持体上下よりの熱風加熱式の硬化装置の各ゾーンを順次介して、かつ支持体の幅方向の温度変化を0.4℃/cm以下に制御しつつ90℃で5分間、120℃で5分間、140℃で15分間の加熱処理で硬化させた後、130℃に温調した従動ドラム上で硬化樹脂層をそれに密着したウレタン系樹脂層とポリビニルアルコール層と共にエンドレスベルトより粘着テープを介して剥離回収し、幅430mmの光学用樹脂基板を連続的に得、それを430mm角に切断した。
【0062】
前記で得た製造開始240時間後の光学用樹脂基板についてその内側420mm角の範囲内における60点の厚さをレーザ厚さ計にて測定し、その平均厚さと標準偏差を調べたところ、平均厚さ400μm、標準偏差7μmであった。また光学用樹脂基板の表裏における表面粗さRaを内側420mm角の範囲内における10点で調べたところ、その平均値はエポキシ樹脂からなる自由表面側で0.2nm、ウレタン系樹脂からなるベルト側で10nmであった。
【0063】
比較例
実施例1に準じて表面粗さRaが15nmで450mm角のステンレス製平板2枚の片面のそれぞれに厚さ2μmのウレタン系樹脂層を形成した後、その形成側を対面させてスペーサとシーリング剤を介し対向配置して隙間幅が400μmの金型を形成し、それにエポキシ系樹脂塗工液を注入して120℃で30分間、150℃で1時間の加熱処理で硬化させたのち金型を開いて樹脂基板を得、それを430mm角に切断した。その樹脂基板について実施例1に準じ平均厚さと標準偏差及び表面粗さを調べたところ、平均厚さが400μmで標準偏差が9μmであり、表面粗さRaが両面共に15nmであった。
【0064】
評価試験
実施例1、比較例で得た樹脂基板のエポキシ樹脂層上にITO膜をスパッタ形成し、その上にポリビニルアルコールのラビング膜を形成して4μmのセルギャップで対向配置し、それに市販のカイラル剤配合のネマチック液晶を封入してSTN型液晶セルを形成し、それに黒表示を補償するための位相差フィルムを接着して電圧の印加による黒表示状態で偏光顕微鏡観察したところ、実施例1では良好な黒表示で配向不良は認められなかったが、比較例では配向不良で光漏れが観察された。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造工程例の説明図
【符号の説明】
1:支持体(エンドレスベルト) 2,3:駆動・従動ドラム
4:硬化装置 5:易剥離性樹脂層 6:重畳層 7:ベース層
51,61,71:ダイ 52,62,72:展開層
Claims (5)
- 光学用樹脂基板の製造方法であって、
前記光学用樹脂基板は、少なくとも樹脂層とベース層とを有する複層構造物であり、
下記(a)〜(c)の工程を含む工程により、
前記ベース層の表面粗さRaが、0.8nm以下、
前記複層構造物の平均厚さが、100〜800μmとなるように形成することを特徴とする光学用樹脂基板の製造方法。
(a)表面粗さRaが0.02μm以下の支持体上に樹脂層用塗工液を展開して、前記樹脂層を形成する工程
(b)前記(a)工程後、前記樹脂層の上に、直接、または塗工方式により形成された他の樹脂層を介して、ベース層用塗工液を流動展開して自由表面を形成させ、さらに硬化させて、前記ベース層を形成する工程
(c)前記(b)工程後、前記樹脂層および前記ベース層を、前記支持体から剥離する工程 - 前記(b)工程において、前記ベース層用塗工液の粘度が、150〜300ポイズである請求項1記載の光学用樹脂基板の製造方法。
- 前記(b)工程において、前記ベース層用塗工液をエクストルージョンコート法によりダイから吐出して流動展開し、前記ダイの温度を15〜35℃に制御する、請求項1または2記載の光学用樹脂基板の製造方法。
- 前記(b)工程において、前記ベース層を加熱により硬化処理して形成し、前記加熱硬化処理における前記支持体の幅方向の温度変化を、0.5℃/cm以下に制御する請求項1から3のいずれか一項に記載の光学用樹脂基板の製造方法。
- 前記支持体が、ステンレス製である請求項1から4のいずれか一項に記載の光学用樹脂基板の製造方法。
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