JP4560174B2 - 塑性加工用潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塑性加工用潤滑油組成物に関し、詳しくは鉄合金や非鉄合金など種々の金属の冷間鍛造、プレス加工などの過酷な条件下でも使用し得る塑性加工用潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属をプレス加工、引抜き加工、しごき加工、曲げ加工、転造加工、冷間鍛造加工などをする際に用いる塑性加工用潤滑油においては、潤滑油は過酷な潤滑条件に曝される。そのため、塑性加工用潤滑油には極めて高い耐焼付き性などの潤滑性が要求される。したがって、この種の潤滑油には、従来から各種極圧剤が使用されている。
【0003】
ところが、最近生産効率向上のための加工工程の省力化の要請が高まり、その実現のためにさらに潤滑性が高い塑性加工用潤滑油が必要となっている。例えば、鉄合金の冷間鍛造においては、従来加工条件を緩和するために、鍛造加工前に、ボンデ処理などのリン酸塩皮膜を形成させる金属表面皮膜処理を行っていた。
しかし、ボンデ処理などはその廃液処理が環境問題を伴うのみでなく、この工程をなくすることで工程短縮により、生産効率向上とコストダウンが可能となる。
しかし一方、単にボンデ処理などを省略すると潤滑性が不充分であるため加工ができないという問題があった。
【0004】
また、従来の加工工程であっても、加工条件の高速化などによってさらに潤滑性が高い塑性加工用潤滑油が必要となっている。
さらにまた、鋼、ステンレス鋼、表面処理鋼などの鉄合金、アルミ合金、銅などの非鉄合金などの難加工材料が出現してきており、これを焼付きなどを起こさず加工するためにも潤滑性がさらに高い塑性加工用潤滑油が必要である。
【0005】
そして上記のような過酷な潤滑条件でも使用し得る塑性加工用潤滑油としては、例えば特開平7−118682号公報、同10−245579号公報,同10−273685号公報などがあり、いずれも、基油にジチオリン酸亜鉛と硫化油脂などのイオウ系極圧剤を配合した組成物を開示している。
【0006】
しかし、上記の塑性加工用潤滑油であっても、現実に耐焼付き性が不足したり、摩擦係数が大きいなどの潤滑性が充分でない場合が多かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたものであり、耐焼付き性が極めて高く、摩擦係数が小さいなどの潤滑性に優れることから、過酷な潤滑条件下でも使用し得るプレス加工、引抜き加工、しごき加工、曲げ加工、転造加工、冷間鍛造加工などの塑性加工用潤滑油を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、加工前にボンデ処理などのリン酸塩皮膜を形成させる金属表面皮膜処理を行なわずに冷間鍛造加工を行える塑性加工用潤滑油を提供することをも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のジチオリン酸亜鉛と特定カルボン酸の金属塩などとを併用するものが予想外に高い潤滑性を有することを見出し、かかる知見に基いて本発明を完成したものである。即ち、本発明の要旨は下記の通りである。
〔1〕 (A)成分として、下記の一般式(1)
【0010】
【化6】
【0011】
(式中、R1,R2,R3及びR4は、各独立に炭素数5以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。)で表されるジチオリン酸亜鉛5〜99質量%、(B)成分として、(b1)炭素数6以上のカルボン酸の亜鉛塩
【0015】
を1〜95質量%、及び(C)成分として基油0〜80質量%含有する塑性加工用潤滑油組成物。
〔2〕 一般式(1)のR1,R2,R3及びR4が、各独立に炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基である前記〔1〕に記載の塑性加工用潤滑油組成物。
〔3〕(b1)成分が、炭素数8〜40のカルボン酸の亜鉛塩である前記〔1〕又は〔2〕に記載の塑性加工用潤滑油組成物。
〔4〕 (B)成分として、(b1)炭素数6以上のカルボン酸の亜鉛塩、並びに(b2)塩基価500mgKOH/g以上のスルフォン酸の二価又は三価の金属塩、(b3)下記の一般式(2)
【0016】
【化9】
【0017】
(式中、Arは、アルキル基で置換されていてもよいフェニレン基又はナフチレン基を示し、mは、化合物の数平均分子量が300〜500,000となる正数である。)で表されるポリアリレンサルファイド、及び(b4)下記の一般式(3)
【0018】
【化10】
【0019】
(式中、R5、R6は、各独立に水素原子、又は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基であって、R5とR6の炭素数の合計が8以上である基を示し、xは1又は2の正数である。)で表される硫黄化合物から選ばれた一種又は二種以上を含有する前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
〔5〕(A)成分の配合割合が5〜50質量%である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
〔6〕(B)成分の配合割合が10〜50質量%である前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
〔7〕 塑性加工用潤滑油が、冷間鍛造用潤滑油である前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
〔8〕 塑性加工用潤滑油が、プレス加工用潤滑油、引抜き加工用潤滑油、しごき加工用潤滑油、曲げ加工用潤滑油又は転造加工用潤滑油である前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の塑性加工用潤滑油組成物においては、(A)成分として前記一般式(1)で表されるジチオリン酸亜鉛を含有する。
【0021】
式中、R1,R2,R3及びR4は、各独立に炭素数5以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。この炭素数については、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、12以上が特に好ましい。この炭素数が5未満では、塑性加工用潤滑油の潤滑性を充分に確保することが困難である。つまり、炭素数が6以上であれば潤滑性を高めることができ、炭素数が8以上であればよりその効果は高く、10以上ではさらに高く、12以上では特に著しい。一方炭素数の上限については、特に制限はないが、製造及び取扱いの容易さの観点からから30が好ましく、24がより好ましい。
【0022】
また、一般式(1)におけるR1,R2,R3及びR4のアルキル基及びアルケニル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。さらに、このアルキル基及びアルケニル基は、第1級(プライマリー)アルキル基やアルケニル基であってもよく、第2級(セカンダリー)アルキル基やアルケニル基又は第3級(ターシャリー)アルキル基やアルケニル基であってもよい。
【0023】
このような一般式(1)におけるR1,R2,R3及びR4の具体例としては、例えばペンチル基(各種異性体を含む。以下同じ)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オプタコシル基などのアルキル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基(オレイル基など)、ノナデセニル基、エイコセニル基、ヘンエイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ヘプタコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基などのアルケニル基が挙げられる。
【0024】
上記の一般式(1)におけるR1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立であって、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
なお、一般式(1)で表される本発明のジチオリン酸亜鉛は一種単独で使用してもよいが、二種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
本発明の塑性加工用潤滑油においては、上記(A)成分のジチオリン酸亜鉛は、組成物を基準で5〜99質量%配合する。ジチオリン酸亜の配合割合が5質量%未満では目的とする潤滑性が得られない。このジチオリン酸亜鉛の配合割合は10質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0026】
一方、(A)成分のジチオリン酸亜鉛の配合割合の上限については、99質量%である。これは相乗効果を現す(B)成分を配合する余地を残すためである。
この配合割合の上限については、95質量%がより好ましく、90質量%が特に好ましい。
【0027】
また、本発明における塑性加工用潤滑油組成物では、上記(A)成分と共に後述する(B)成分として(b1)〜(b4)から選ばれた一種又は二種以上を配合するが、(B)成分として(b1)成分である炭素数6以上のカルボン酸の二価又は三価の金属塩を用いる場合は、つまり(B)成分として(b1)、又は(b1)と(b1)以外の(B)成分との混合物を用いる場合は、(A)成分のジチオリン酸亜鉛の配合割合は、5〜50質量%であっても目的の潤滑性を得ることができる。この場合(A)成分のジチオリン酸亜鉛の配合割合は、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。また、この場合のジチオリン酸亜鉛の配合割合の上限は45質量%がより好ましく、40質量%が特に好ましい。
【0028】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物においては、上記(A)成分と共に、(B)成分として(b1)炭素数6以上のカルボン酸の二価又は三価の金属塩、(b2)塩基価500mgKOH/g以上のスルフォン酸の二価又は三価の金属塩、及び(b3)一般式(2)
で表されるポリアリレンサルファイド、及び(b4)一般式(3)で表される硫黄化合物から選ばれた一種又は二種以上を配合する。
【0029】
上記(b1)成分としては炭素数6以上のカルボン酸の二価又は三価の金属塩を用いる。この塩を構成するカルボン酸の炭素数が6未満のカルボン酸では塑性加工用潤滑油の潤滑性を高める効果は充分でない。したがってこの炭素数が8以上のカルボン酸がより好ましく、炭素数12以上のカルボン酸が特に好ましい。
また、このカルボン酸の炭素数の上限については、特に制限はないが、取扱いの容易さの点で40が好ましく、30がより好ましく、24が特に好ましい。
【0030】
また、上記カルボン酸の種類としては、脂肪酸、脂肪酸のダイマー酸やトリマー酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
具体的には、例えば、脂肪酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、セロチン酸などの直鎖脂肪酸、あるいは2,2−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2−エチル−2−メチルブタン、2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)、ジメチルヘキサン酸、2−n−プロピル−ペンタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、ジメチルオクタン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸などの分岐脂肪酸、さらには、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸が挙げられ、これらのダイマー酸、トリマー酸なども含まれる。また、ジカルボン酸としてはアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。また芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
【0031】
一方、カルボン酸の二価又三価の金属塩を構成する金属としては、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属や亜鉛、カドミウムなどの亜鉛族金属などの二価の金属、アルミニウム、インジウム、チタンなどの三価の金属(アルミニウム族金属)が挙げられる。これらの中でマグネシウム、カルシウム、亜鉛、及びアルミニウムが好ましく、特に亜鉛が好ましい。
【0032】
本発明の(B)成分の一つである(b2)成分としては、塩基価が500mgKOH/g以上のスルフォン酸のアルカリ土類金属塩(スルフォネート)を用いる。
【0033】
これは、いわゆる超塩基性スルフォネートである。このスルフォネートを構成するスルフォン酸としては、アルキル芳香族化合物をスルフォン化して得られるものであり、例えば石油スルフォン酸や、洗剤プラントから副生するアルキルベンゼン、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化したもの、ジノニルナフタレンなどのアルキルナフタレンをスルフォン化した合成スルフォン酸などが挙げられる。これらのアルキル芳香族化合物の分子量は、通常100〜2,000、さらには、200〜1,000のものが用いられる。このスルフォネートを構成する二価又三価の金属の具体例については、前記(b1)成分のカルボン酸の二価又三価の金属塩で用いたと同様な金属が挙げられる。これらの金属のうち効果が優れる点でマグネシウム、カルシウム、亜鉛及びアルミニウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。
【0034】
また、超塩基性スルフォネートは、通常上記スルフォン酸と二価又三価の金属との塩を炭酸ガスの存在下で反応させることによって得ることができる。この超塩基性スルフォネートの塩基性の程度は、本発明においては500mgKOH/g以上であることが必要である。塩基性が500mgKOH/g未満では、潤滑性の向上効果は達成できない。なお、ここでいう塩基価は、JIS K 2501に規定される塩酸法によって測定される値である。
【0035】
上記スルフォン酸のアルカリ土類金属塩は、一種用いてもよいが二種以上を混合して用いてもよい。
本発明の(B)成分の一つである(b3)成分としては、前記一般式(2)で表されるポリアリレンサルファイド化合物が用いられる。式中、Arは、フェニレン基又はナフチレン基を表わす。これらは、アルキル基で置換されていてもよい。この場合の置換されていてもよいアルキル基としては、通常炭素数が1〜20のものであり、直鎖、分岐を問わず、また飽和であっても不飽和であってもよい。またこの置換基はフェニレン基又はナフチレン基に複数置換していてもよい。mは、一般式(2)の化合物の分子量(数平均分子量)が,300〜500,000となる正数である。この分子量の下限は500がより好ましく、1,000が特に好ましい。一方、分子量の上限は、200,000がより好ましく、100,000が特に好ましい。これらの中でArがフェニレン基であるポリフェニレンサルファイドが、入手性、経済性の点で特に好ましい。
【0036】
次いで、本発明の(B)成分の一つである(b4)成分としては前記一般式(3)で表される硫黄化合物を用いる。
一般式(3)中、R5とR6は、各独立に水素原子、いずれも炭素数1〜30、好ましくは4〜20のアルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基であって、R5とR6の炭素数の合計が8以上、好ましくは12以上である基を表し、xは1又は2の正数である。したがって、一般式(3)で表される硫黄化合物は、メルカプタン化合物、モノサルファイド、及びジサルファイドを含んでいる。一般式(3)におけるR5とR6の炭素数の合計が8未満の化合物は、(A)成分の存在下で耐焼付き性などを向上させる効果は不充分であって適切でない。一方、R5とR6の炭素数の合計の上限については、特に制限はないが、入手性の点で、50以下が好ましく、およそ40以下のものがより好ましい。本発明で用いる一般式(3)で表される硫黄化合物のうち、メルカプタン化合物の好ましい具体例としては、例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン(ステアリルメルカプタン)、エイコシルメルカプタンなどの直鎖飽和アルキルメルカプタン、及びこれらに対応する分岐飽和アルキルメルカプタン、不飽和基であるアルケニルメルカプタンが挙げられる。
【0037】
また、本発明で用いる一般式(3)で表される硫黄化合物のうちモノサルファイド化合物の具体例としては、ジブチルモノサルファイド、ジヘキシルモノサルファイド、ジヘプチルモノサルファイド、ジオクチルモノサルファイド、ジノニルモノサルファイド、ジデシルモノサルファイド、ジウンデシルモノサルファイド、ジドデシルモノサルファイド(ジラウリルモノサルファイド)、ジテトラデシルモノサルファイド、ジヘキサデシルモノサルファイドなどが挙げられる。また、ジサルファイド化合物の具体例としては、上記モノサルファイド化合物に対応するジサルファイド化合物を挙げることができる。本発明においては、これらの一般式(3)で表される硫黄化合物の中でも、潤滑性を高める効果の点でメルカプタン化合物が特に好ましい。
【0038】
これらの硫黄化合物は、一種用いてもよいが二種以上を混合して用いてもよい。
上記、(b1)〜(b4)のいずれの(B)成分とも、(A)成分の存在下で耐焼付き性を高め、摩擦係数を小さくする効果が著しく、また、安定性(熱安定性)にも優れていてる。
【0039】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物においては、上記(B)成分は組成物を基準にして合計1〜95質量%配合する。(B)成分の配合割合が1質量%未満では、(A)成分の存在下でも耐焼付き性や摩擦係数の著しい向上は実現できない。
この(B)成分の配合割合の下限は3質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。一方、(B)成分の配合割合の上限は80質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましく、50質量%が特に好ましい。いずれも(A)成分との配合バランスを保つためである。
【0040】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物においては、(A)成分とともにB成分として(b1)、(b2)、(b3)及び(b4)成分から選ばれた一種又は二種以上を配合する。したがって、この(B)成分の配合方法は、(b1)成分、(b2)成分、(b3)成分、及び(b4)成分を一種配合してもよい。
【0041】
この(B)成分を一種配合した組成物の中では、(B)成分として(b1)成分を配合するのが好ましい態様の一つである。この態様では、耐焼付き性が特に高くなる効果があり、(A)成分の配合割合が比較的少量であっても、潤滑性の向上が達成できる。
【0042】
また、(B)成分として、(b1)〜(b4)成分のうち二種以上を配合する場合は、(b1)成分を配合し、これにさらに(b2)〜(b4)成分の中の一種又は二種以上を配合するのが好ましい態様の一つである。このように(A)成分の存在下で、(b1)成分とそれ以外の(b2)〜(b4)成分を一種又は二種以上含有する組成物は、(B)成分を一種のみ含む場合より、耐焼付き性を高く保ち、一層摩擦係数を小さくできる効果がある。このように(b1)成分を含む場合、(A)成分の配合割合は、50質量%以下であっても本発明の効果を発揮し得ることは、前記の通りである。なお、(A)成分の配合割合を50質量%以下にする場合、通常基油(C成分)を配合した組成物とするのが好ましい態様である。
【0043】
また、(B)成分として(b2)〜(b4)成分から選ばれた二種以上を併用する態様も好ましい態様の一つである。このような(A)成分の存在下で、例えば(b2)と(b3)成分、(b2)と(b4)成分、(b3)と(b4)成分が含まれる組成物の場合にも、耐焼付き性を高く保ち、一層摩擦係数を小さくする効果がある。
【0044】
なお、(B)成分として(b1)〜(b4)成分の成分を二種以上を配合する場合の(b1)〜(b4)の各成分の配合割合については、その合計が前記(B)成分の配合割合内であれば、特に制限はなく任意でよいが、各成分とも5〜30質量%の範囲で配合するのが好ましい。
【0045】
本発明においては、(C)成分として基油を配合してもよい。本発明で配合してもよい基油としては、あらゆる鉱油及び又は合成油が挙げられる。好ましい鉱油としては、例えば原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑留分が使用でき、通常これを溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などをして精製して得られるパラフィン系や、ナフテン系鉱油を使用する。また、合成油としては、ポリブテン、1−デセンのオリゴマーなどのポリα―オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、各種エステル類、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどが挙げられる。これらの基油の動粘度については、特に制限はないが、通常40℃における動粘度が1〜2,000mm2/sのものが好ましく,2〜1,000mm2/sのものがより好ましく、10〜500mm2/sのものが特に好ましく用いられる。これらの鉱油や合成油一種を単独で用いてもよいし、二種以上組合せて使用してもよい。本発明においては、上記の基油は、通常組成物を基準にして0〜80質量%,好ましくは0〜70質量%の範囲で配合する。特に(B)成分として(b1)を含み、しかも(A)成分の配合割合を50質量%以下にした組成物にあっては、この基油の配合割合は、20〜80質量%配合するのが好ましい。
【0046】
また,本発明においては、上記の各成分以外に所望により酸化防止剤、極圧剤、脱脂剤、泡消剤などの各種添加剤を配合してもよい。
また、各種添加剤のうち酸化防止剤としては、例えばフェノール系(ジ−tert−ブチルパラクレゾールなど)アミン系(ジオクチルジフェニルアミンなど)化合物が、極圧剤としては、リン酸エステル(トリクレシルホスフェート、トリオレイルホスフェートなど)、酸性リン酸エステル(モノオレイルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなど)、酸性リン酸エステルアミン塩(モノオレイルアシッドホスフェートのオレイルアミン塩など)、亜燐酸エステル(ジオレイルアシッドホスファイト、トリデシルホスファイト、トリスノニルフェニルスファイトなど)、油脂(牛脂、豚脂、大豆油、菜種油米ぬか油、ヤシ油、パーム油など)、硫化油脂、オレフィンポリサルファイド、エステル類(ヒンダードエステル、多価アルコールエステル、多価アルコール部分エステルなど)、脂肪酸(ラウリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸など)、及びカルボン酸、スルフォン酸、フェノール、サリチル酸などの金属塩やアミン塩などが挙げられる。また、脱脂剤としてはアルケニルスルホコハク酸があり、泡消剤としてはシリコーンオイルが挙げられる。
【0047】
これらの各添加剤は組成物基準で、通常0〜20質量%好ましくは、0.01〜10質量%の範囲で配合する。
上記の(A)成分及び(B)成分を配合し、必要に応じて()成分を配合し、さらに他の添加剤を配合して得られる本発明の塑性加工用潤滑油組成物は、その動粘度については特に制限するものではないが、取扱い性、経済性の観点から、40℃における動粘度が1〜2,000mm2/sのものが好ましく,2〜1,000mm2/sのものがより好ましく、10〜500mm2/sのものが特に好ましく用いられる。
【0048】
本発明に係る塑性加工用潤滑油組成物は、あらゆる塑性加工用の潤滑油として使用できるが、特に例えば、鋼、ステンレス鋼、表面処理鋼などの鉄合金、アルミ合金、銅などの非鉄合金などのプレス加工、引抜き加工、しごき加工、曲げ加工、転造加工、冷間鍛造加工などの潤滑油として好適である。また、冷間鍛造加工に用いる場合、加工前にボンデ処理などのリン酸塩皮膜を形成させる金属表面皮膜処理を行なわずに鍛造加工が可能である。
【0049】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〜12、比較例1〜3及び参考例1〜9〕
表1〜3に示す組成により、本発明に係る塑性加工用潤滑油組成物を製造した。また、表4に示すように、比較のために(B)成分が要件を満たさない化合物の場合についても組成物を製造した。なお、使用した各成分は、以下の通りである。
(A成分)
A1:ジラウリルジチオリン酸亜鉛(一般式(1)のR1〜R4が炭素数12の直鎖アルキル基)
A2:ジn−オクチルジチオリン酸亜鉛(一般式(1)のR1〜R4が炭素数8の直鎖アルキル基)
(B成分)
b11:ステアリン酸亜鉛b12:オクチル酸亜鉛(2−エチルヘキサン酸亜鉛)
b21:スルフォネート(塩基価520mgKOH/g)
b22:スルフォネート(塩基価400mgKOH/g)
b31:ポリフェニレンサルファイド(数平均分子量3,000)
b41:ステアリルメルカプタン
b51:硫化油脂(硫黄含有量11質量%)
(C成分)
C1 :パラフィン系鉱油(40℃における動粘度92mm2/s)
C2 :ナフテン系鉱油(40℃における動粘度102mm2/s)これら実施例、比較例の組成物につき以下に示す性能評価を行い、その結果を表1〜3に併記して示した。
〔評価方法〕
焼付き荷重
ファレックス焼付き試験で評価した。試験条件は、規定のピン(AISI C−1137)とブロック(AISI C−3135)を用い、回転数600rpm,荷重222N/minのステップアップ荷重法、給油方法は0.02mlをピンに塗布して行った。
摩擦係数
JASO M314−88に準拠して行った。油温は50℃である。
熱安定度試験
JIS K 2540に準拠し、170℃で24時間後の試料の外観を観察した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
表1、2及び3の評価結果より、本発明の塑性加工用潤滑油組成物は耐焼付き性に優れ、摩擦係数が小さく、熱安定性試験でも安定である。これに対し表4の結果のように,(B)成分として、塩基性が400mgKOH/gのスルフォネートを用いた場合(比較例1)、硫化油脂を配合した場合(比較例2、3)は、耐焼付き性が劣り、摩擦係数が大きい。またB成分として、硫化油脂を含有する組成物(比較例2,3)は、いずれも熱安定性試験において固化する。
【0055】
【発明の効果】
本発明に係る塑性加工用潤滑油組成物は、耐焼付き性が高く、摩擦係数が小さいなど潤滑性に優れる。また、熱安定性もよい。したがって、過酷な潤滑条件下でも使用し得るプレス加工、引抜き加工、しごき加工、曲げ加工、転造加工、冷間鍛造加工などの塑性加工用潤滑油として利用できる。
また、本発明に係る塑性加工用潤滑油組成物は、加工前にボンデ処理などのリン酸塩皮膜を形成させる金属表面皮膜処理を行なわずに冷間鍛造加工が可能な潤滑油である。
Claims (8)
- 一般式(1)のR1,R2,R3及びR4が、各独立に炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基である請求項1に記載の塑性加工用潤滑油組成物。
- (b1)成分が、炭素数8〜40のカルボン酸の亜鉛塩である請求項1又は2に記載の塑性加工用潤滑油組成物。
- (B)成分として、(b1)炭素数6以上のカルボン酸の亜鉛塩、並びに(b2)塩基価500mgKOH/g以上のスルフォン酸の二価又は三価の金属塩、(b3)下記の一般式(2)
- (A)成分の配合割合が5〜50質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
- (B)成分の配合割合が10〜50質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
- 塑性加工用潤滑油が、冷間鍛造用潤滑油である請求項1〜6のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
- 塑性加工用潤滑油が、プレス加工用潤滑油、引抜き加工用潤滑油、しごき加工用潤滑油、曲げ加工用潤滑油又は転造加工用潤滑油である請求項1〜6のいずれかに記載の塑性加工用潤滑油組成物。
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