本発明の骨子は、マルチキャリア信号を構成する全サブキャリアから受信電力が大きいサブキャリアを選択し、選択されたサブキャリアのみを用いてMIMO通信に利用可能な互いに独立したパスが多いセルの基地局装置を選択することである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムの構成の一例を示す図である。同図に示すように、基地局装置200がカバーするセル200aと基地局装置300がカバーするセル300aとの境界付近の領域に位置するマルチキャリア通信装置100は、基地局装置200および基地局装置300双方から送信される共通パイロットチャネルの信号(共通パイロット信号)を受信している。また、マルチキャリア通信装置100は、例えばスロットなどの短い時間単位ごとに基地局装置200および基地局装置300のいずれか一方を通信相手として切り替えている。
図2は、本実施の形態に係るマルチキャリア通信装置100の要部構成を示すブロック図である。図2に示すマルチキャリア通信装置100は、RF(Radio Frequency:無線周波数)受信部101−1、101−2、GI(Guard Interval:ガードインターバル)除去部102−1、102−2、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部103−1、103−2、セル分離部104、接続セル受信処理部105、観測セル受信処理部106、セル選択部107、多重部108、誤り訂正符号化部109、変調部110、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部111−1、111−2、GI挿入部112−1、112−2、およびRF送信部113−1、113−2を有している。なお、本実施の形態においては、マルチキャリア通信装置100が2本のアンテナを有する構成としているが、アンテナが3本以上の場合は、RF受信部からFFT部までの各処理部とIFFT部からRF送信部までの各処理部とがアンテナに対応して設けられる構成となる。
RF受信部101−1、101−2は、それぞれ対応するアンテナから信号を受信し、受信信号に対して所定の無線受信処理(ダウンコンバート、A/D変換など)を施す。なお、本実施の形態における受信信号は、周波数が異なる複数のサブキャリアに信号が重畳されたマルチキャリア信号である。
GI除去部102−1、102−2は、受信信号の各シンボル間に、シンボル間干渉を防止するために挿入されているガードインターバルを除去する。
FFT部103−1、103−2は、ガードインターバル除去後の受信信号を高速フーリエ変換し、複数のサブキャリアに重畳されている信号を抽出する。
セル分離部104は、各サブキャリアの信号をセルごとの信号に分離する。具体的には、セル分離部104は、現在マルチキャリア通信装置100の通信相手となっている基地局装置のセル(以下、「接続セル」という)の信号と、接続セルに隣接しておりマルチキャリア通信装置100の位置付近に接続セルとの境界があるセル(以下、「観測セル」という)の信号とに各サブキャリアの信号を分離する。なお、セル分離部104は、複数の観測セルがある場合には、各サブキャリアの信号をそれぞれの観測セルの信号に分離する。
接続セル受信処理部105は、接続セルの信号に対して受信処理を施し、受信データを出力する。また、接続セル受信処理部105は、接続セルの信号から無線品質を測定し、無線品質情報を多重部108へ出力する。さらに、接続セル受信処理部105は、接続セルの信号に対する受信処理の過程で特異値分解処理を行うとともに、接続セルのチャネル容量を算出してセル選択部107へ出力する。
ここで、特異値とは、MIMO通信において空間多重された信号が伝送される独立したパスごとの受信品質を示す指標であり、特異値分解処理とは、MIMO通信における受信処理の過程で、チャネル推定結果を用いて独立したパスごとの特異値を算出する処理のことをいう。また、チャネル容量とは、各セルがMIMO通信を行うのに適しているか否かを示す指標である。MIMO通信においては、互いに相関が無く受信品質が高い独立したパスが多いほど、空間多重された信号を受信側で分離できる可能性が高くなる。したがって、特異値が大きいパスが多いセルほどチャネル容量が大きくなり、MIMO通信に適したセルと言える。なお、特異値、チャネル容量、および接続セル受信処理部105の詳細な構成については、後に詳述する。
観測セル受信処理部106は、観測セルの信号に対して受信処理を施し、観測セルのチャネル容量を算出してセル選択部107へ出力する。ここで、観測セルの基地局装置はマルチキャリア通信装置100の通信相手ではないため、観測セル受信処理部106は、観測セルにおける共通パイロット信号に対する受信処理を施す。また、観測セルに関しては、すべてのサブキャリアに関してチャネル容量を求めるのではなく、総受信電力が大きいサブキャリアについてのみチャネル容量を算出する。このため、観測セル受信処理部106におけるチャネル容量算出の処理負荷を軽減することができる。なお、観測セル受信処理部106の詳細な構成については、後に詳述する。
セル選択部107は、接続セルのチャネル容量および観測セルのチャネル容量を大小比較し、チャネル容量が大きいセルの基地局装置を通信相手の基地局装置(選択基地局装置)とする。すなわち、セル選択部107は、チャネル容量が最大のセルを次の時間単位における接続セルとする。そして、セル選択部107は、選択基地局装置に関するセル選択情報を多重部108へ出力する。
多重部108は、セル選択情報、無線品質情報、および送信データなどを多重し、得られた多重データを誤り訂正符号化部109へ出力する。
誤り訂正符号化部109は、多重データを誤り訂正符号化し、得られた符号化データを変調部110へ出力する。
変調部110は、符号化データを変調し、得られた変調データをIFFT部111−1、111−2へ出力する。
IFFT部111−1、111−2は、変調データを逆高速フーリエ変換し、複数のサブキャリアに変調データを重畳し、得られたマルチキャリア信号をGI挿入部112−1、112−2へ出力する。
GI挿入部112−1、112−2は、マルチキャリア信号の各シンボル間に、ガードインターバルを挿入する。
RF送信部113−1、113−2は、ガードインターバル挿入後のマルチキャリア信号に対して所定の無線送信処理(D/A変換、アップコンバートなど)を施し、それぞれ対応するアンテナから送信する。
図3は、本実施の形態に係る接続セル受信処理部105の内部構成を示すブロック図である。
チャネル推定部1051は、接続セルの共通パイロット信号を用いて送受信側のアンテナ対に対応するパスごとのチャネル推定を行う。ここで、マルチキャリア通信装置100(受信側)のアンテナ数をMR本、基地局装置200および基地局装置300(送信側)のアンテナ数をMT(≧MR)本とすれば、チャネル推定の結果として、サブキャリアごとにサイズがMR×MTのチャネル行列が得られる。すなわち、サブキャリアiについて、基地局装置からの送信信号ベクトルをxi(t)、伝搬路における雑音信号ベクトルをni(t)とすれば、マルチキャリア通信装置100における受信信号ベクトルri(t)は、チャネル行列Aiを用いて以下の式(1)のように表すことができる。
ri(t)=Aixi(t)+ni(t) ・・・(1)
チャネル推定部1051は、接続セルについて上式(1)を満たすサブキャリアごとのチャネル行列Aiを求める。なお、基地局装置200のアンテナ数と基地局装置300のアンテナ数とは異なっていても良いが、ここでは説明の便宜上、いずれの基地局装置もMT個のアンテナを有しているものとする。
復調部1052は、特異値分解処理部1052aを有しており、接続セルの個別データ信号を復調する。復調部1052は、送信側(基地局装置200または基地局装置300)におけるMIMO多重方式および変調方式に対応した空間分離および復調の処理を行うとともに、復調後の個別データ信号を誤り訂正復号部1053および無線品質測定部1055へ出力する。特異値分解処理部1052aは、復調の過程でチャネル行列Aiを用いた特異値分解処理を行い、すべてのサブキャリアに関して、接続セルにおける独立したパスごとの特異値を算出する。具体的には、特異値分解処理部1052aは、サブキャリアiに関する接続セルの独立したパスごとの特異値を以下の式(2)によって算出する。
上式(2)において、A
i Hはチャネル行列A
iの共役転置行列、U
iは固有ベクトルを並べて得られるユニタリ行列、U
i Hはユニタリ行列U
iの共役転置行列を示している。また、diag()は対角行列を示しており、上式(2)においては行列Λ
iの対角成分にM
R個の特異値λ
i,1〜λ
i,MRが現れている。なお、ここではM
T≧M
Rと仮定したため、M
R個の特異値が求められるが、M
T<M
Rの場合は、M
T個の特異値が求められる。
誤り訂正復号部1053は、復調後の個別データ信号を送信側(基地局装置200または基地局装置300)における符号化率に対応して誤り訂正復号し、誤り訂正復号後の個別データ信号を分離部1054へ出力する。
分離部1054は、誤り訂正復号後の個別データ信号を受信データと送信側(基地局装置200または基地局装置300)における変調方式および符号化率を示す無線リソース割当情報とに分離し、受信データを出力するとともに無線リソース割当情報を復調部1052および誤り訂正復号部1053へ出力する。
無線品質測定部1055は、接続セルの共通パイロット信号を用いて接続セルにおける無線品質を測定し、無線品質情報を多重部108へ出力する。
特異値加工部1056は、サブキャリアごと、かつ独立したパスごとに求められた特異値を加工し、それぞれの独立したパスを代表する特異値を算出する。すなわち、特異値加工部1056は、例えばN個のサブキャリア1〜Nに関して求められたすべての特異値λ1,1〜λ1,MR、λ2,1〜λ2,MR、・・・、λi,1〜λi,MR、・・・、λN,1〜λN,MRについて、独立したパスjごとの特異値λ1,j〜λN,jの和を総サブキャリア数Nで除算して平均値を求めることにより、それぞれの独立したパスを代表する特異値λ1〜λMRを算出する。これにより、1つの独立したパスjには、1つの特異値λjが対応することになる。
チャネル容量算出部1057は、特異値加工部1056によって求められた独立したパスごとの特異値λ1〜λMRを所定の閾値と比較し、所定の閾値以上の特異値の数を接続セルのチャネル容量として算出する。上述したように、特異値は、MIMO通信において独立したパスそれぞれの受信品質を示している。そして、MIMO通信においては、受信品質が高いパスが多いほど、複数のアンテナから同時に送信された信号を正確に分離することができるため、所定の閾値以上の特異値の数が多いほど、スループットが高いことになる。チャネル容量算出部1057は、算出した接続セルのチャネル容量(すなわち、所定の閾値以上の特異値の数)をセル選択部107へ出力する。
図4は、本実施の形態に係る観測セル受信処理部106の内部構成を示すブロック図である。
チャネル推定部1061は、観測セルの共通パイロット信号を用いて送受信側のアンテナ対に対応するパスごとのチャネル推定を行い、観測セルのチャネル行列を求める。
サブキャリア選択部1062は、チャネル推定部1061によるチャネル推定結果からマルチキャリア通信装置100(受信側)のアンテナと観測セルの基地局装置(送信側)のアンテナとの各アンテナ対におけるサブキャリアごとの受信電力を算出し、すべてのアンテナ対の総受信電力が最も大きいサブキャリアを特異値分解処理用のサブキャリアとして選択する。すなわち、サブキャリア選択部1062は、1つのサブキャリアについて、MR本の受信側のアンテナにおいてそれぞれ受信されるMT本の送信側のアンテナからの信号の受信電力(すなわち、1つのサブキャリアについてMR×MT通りの受信電力)を加算してサブキャリアごとの総受信電力を算出し、総受信電力が最も大きいサブキャリアを選択する。
接続セルの信号とは異なり観測セルの信号としては、共通パイロット信号のみが受信されており、復調が行われないので、観測セルの信号の受信処理の段階で特異値分解処理が行われることはない。したがって、観測セルについては、セル選択のためだけに特異値分解処理を行う必要がある。このとき、上述したように総受信電力が最も大きいサブキャリアを選択し、このサブキャリアについてのみ特異値分解処理を行うことにより、特異値分解処理の処理負荷を軽減することができる。
また、総受信電力が最も大きいサブキャリアに関しては、チャネル行列が最も正確に求められているため、特異値分解処理の結果も正確になると考えられる。結果として、観測セルのチャネル容量を少ない処理量で正確に算出することができる。
なお、サブキャリア選択部1062は、総受信電力が最も大きいサブキャリア1つのみを選択するのではなく、総受信電力が大きい方から所定数のサブキャリアを選択したり、総受信電力が所定の閾値より大きいサブキャリアを選択したりしても良い。これらの場合には、特異値分解処理の対象とするサブキャリアの数が増加し、1つのサブキャリアのみを対象とする場合より処理負荷は大きくなるものの、特異値分解処理に用いられる情報量が多くなり、特異値の異常値を排除することができる。
特異値分解処理部1063は、観測セルのチャネル行列を用いて接続セルと同様に式(2)による特異値分解処理を行い、サブキャリア選択部1062によって選択されたサブキャリアのみに関して、観測セルにおける独立したパスごとの特異値を算出する。
なお、特異値分解処理部1063は、サブキャリア選択部1062によって1つのサブキャリアのみが選択された場合は、特異値分解処理によって得られる独立したパスごとの特異値をそのままチャネル容量算出部1064へ出力するが、複数のサブキャリアが選択された場合は、接続セル受信処理部105の特異値加工部1056と同様に、独立したパスを代表する特異値を算出してチャネル容量算出部1064へ出力する。
チャネル容量算出部1064は、特異値分解処理部1063から出力された独立したパスごとの特異値を所定の閾値と比較し、所定の閾値以上の特異値の数を観測セルのチャネル容量として算出する。
図5は、本実施の形態に係る基地局装置200の要部構成を示すブロック図である。図5に示す基地局装置200は、RF受信部201−1、201−2、GI除去部202−1、202−2、FFT部203−1、203−2、復調部204、誤り訂正復号部205、分離部206、リソース割当部207、送信制御部208、多重部209、誤り訂正符号化部210、変調部211、IFFT部212−1、212−2、GI挿入部213−1、213−2、およびRF送信部214−1、214−2を有している。なお、基地局装置300も基地局装置200と同様の構成を有している。
RF受信部201−1、201−2は、それぞれ対応するアンテナから信号を受信し、受信信号に対して所定の無線受信処理(ダウンコンバート、A/D変換など)を施す。
GI除去部202−1、202−2は、受信信号の各シンボル間に挿入されているガードインターバルを除去する。
FFT部203−1、203−2は、ガードインターバル除去後の受信信号を高速フーリエ変換し、複数のサブキャリアに重畳されている信号を抽出する。
復調部204は、各サブキャリアの信号を復調し、得られた復調信号を誤り訂正復号部205へ出力する。
誤り訂正復号部205は、復調信号を誤り訂正復号し、誤り訂正復号後の信号を分離部206へ出力する。
分離部206は、誤り訂正復号後の信号を受信データとセル選択情報および無線品質情報とに分離し、受信データを出力するとともにセル選択情報および無線品質情報をリソース割当部207へ出力する。
リソース割当部207は、セル選択情報を参照して自装置(基地局装置200)が選択基地局装置となったか否かを判定し、選択基地局装置となっていれば無線品質情報を参照してマルチキャリア通信装置100宛ての送信データに対して割り当てる無線リソースを決定する。
送信制御部208は、マルチキャリア通信装置100および他のマルチキャリア通信装置などに対する送信データの送信順序を制御し、送信データに対応する変調方式および符号化率を示す無線リソース割当情報を生成する。
多重部209は、送信データ、無線リソース割当情報、および図示しない共通パイロット信号などを多重し、得られた多重データを誤り訂正符号化部210へ出力する。
誤り訂正符号化部210は、それぞれの送信先に応じた符号化率で多重データを誤り訂正符号化し、得られた符号化データを変調部211へ出力する。
変調部211は、それぞれの送信先に応じた変調方式で符号化データを変調し、得られた変調データをIFFT部212−1、212−2へ出力する。
IFFT部212−1、212−2は、変調データを逆高速フーリエ変換し、複数のサブキャリアに変調データを重畳し、得られたマルチキャリア信号をGI挿入部213−1、213−2へ出力する。
GI挿入部213−1、213−2は、マルチキャリア信号の各シンボル間に、ガードインターバルを挿入する。
RF送信部214−1、214−2は、ガードインターバル挿入後のマルチキャリア信号に対して所定の無線送信処理(D/A変換、アップコンバートなど)を施し、それぞれ対応するアンテナから送信する。
次いで、上記のように構成されたマルチキャリア通信装置100によるセルの選択について、通信開始時および通信中の動作に分けて図6(a)、(b)に示すシーケンス図を参照しながら説明する。
まず、マルチキャリア通信装置100の電源投入時など、通信開始時の動作について図6(a)を参照して説明する。マルチキャリア通信装置100が基地局装置200のセル200aと基地局装置300のセル300aとの境界付近に位置する時、マルチキャリア通信装置100のRF受信部101−1、101−2には基地局装置200からの共通パイロット信号401および個別データ信号402と基地局装置300からの共通パイロット信号403および個別データ信号404とが受信される。
受信信号は、RF受信部101−1、101−2によって所定の無線受信処理が施され、GI除去部102−1、102−2によってガードインターバルが除去され、FFT部103−1、103−2によって高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、セル分離部104によって接続セルの信号と観測セルの信号とに分離されるが、ここでは、通信開始時であるため接続セルはなく、セル200aおよびセル300aの双方が観測セルである。したがって、セル200aおよびセル300a双方の信号が観測セル受信処理部106のチャネル推定部1061へ出力される。
そして、チャネル推定部1061によって、セル200aのチャネル行列およびセル300aのチャネル行列がそれぞれ求められ、サブキャリア選択部1062によって、それぞれのセルにおいて総受信電力が最も大きいサブキャリアが選択される(405)。
具体的には、例えば基地局装置200が送信アンテナ#1および送信アンテナ#2の2本のアンテナを有し、マルチキャリア通信装置100が受信アンテナ#1および受信アンテナ#2の2本のアンテナを有している場合、サブキャリア選択部1062によって、図7に示すように、各送信アンテナと受信アンテナとの対のサブキャリアごとの受信電力が加算され、総受信電力が求められる。そして、サブキャリア選択部1062によって、総受信電力が最も大きいサブキャリアPが選択される。同様に、サブキャリア選択部1062によって、基地局装置300のセル300aについても総受信電力が最も大きいサブキャリアが選択される。
それぞれのセルについて選択されたサブキャリアは、特異値分解処理部1063へ通知され、特異値分解処理部1063によって、選択されたサブキャリアに対応するチャネル行列が用いられて式(2)による特異値分解処理が行われ、セル200aおよびセル300aそれぞれについて、独立したパスごとの特異値が求められる。
このように、特異値分解処理の対象とするサブキャリアを選択して限定することにより、特異値分解処理による処理負荷の増大を最低限に抑制することができ、回路規模の増大を防止しつつ高速セル選択を実行することができる。また、サブキャリアの選択に際して、総受信電力が最も大きいサブキャリアを選択することにより、正確なチャネル行列を用いた特異値分解処理を行うことができ、求められた特異値も正確なものになる。
そして、チャネル容量算出部1064によって、所定の閾値以上の特異値の数がセル200aおよびセル300aそれぞれのチャネル容量として算出される(406)。算出されたチャネル容量は、セル選択部107へ出力され、セル200aおよびセル300aのうちチャネル容量が大きい方が次の時間単位における接続セルとして選択され(407)、接続セルに対応する基地局装置が選択基地局装置となる。そして、セル選択部107によって、接続セルに選択されたセルに関するセル選択情報が多重部108へ出力される。ここでは、セル200aが接続セルとして選択され、基地局装置200が選択基地局装置となったものとして説明を続ける。
ここで、本実施の形態においては、上述したように総受信電力が最も大きいサブキャリアを対象として特異値分解処理を行っているため、求められる特異値が正確なものとなり、結果としてチャネル容量の信頼度も高くなる。したがって、接続セルとして選択されたセル200aは、確実にセル300aよりもMIMO通信に適しており、スループットを改善してセルカバレッジを拡大することができる。
セル選択情報が多重部108へ入力されると、多重部108によって、送信データとセル選択情報とが多重され、多重データが生成される。そして、多重データは、誤り訂正符号化部109によって誤り訂正符号化され、変調部110によって変調され、変調データが得られる。
変調データは、IFFT部111−1、111−2によって逆高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳され、GI挿入部112−1、112−2によってガードインターバルが挿入され、RF送信部113−1、113−2によって所定の無線送信処理が施され、送信データおよびセル選択情報を含むマルチキャリア信号408がアンテナを介して送信される。なお、図6(a)では、選択されなかった基地局装置300への送信を省略しているが、基地局装置300に対してもセル選択情報が送信されるようにしても良い。
マルチキャリア通信装置100から送信されたマルチキャリア信号408は、基地局装置200のRF受信部201−1、201−2によってアンテナを介して受信される。そして、受信信号は、RF受信部201−1、201−2によって所定の無線受信処理が施され、GI除去部202−1、202−2によってガードインターバルが除去され、FFT部203−1、203−2によって高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、復調部204によって復調され、誤り訂正復号部205によって誤り訂正復号され、分離部206によって送信データとセル選択情報に分離される。そして、セル選択情報がリソース割当部207へ出力されると、リソース割当部207によって、自装置(基地局装置200)がマルチキャリア通信装置100の選択基地局装置となったと判断され、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データに対して割り当てる変調方式および符号化率などの無線リソースが決定される(409)。決定された無線リソースの情報は、送信制御部208へ出力され、マルチキャリア通信装置100宛ての信号の送信処理が開始される(410)。
すなわち、送信制御部208によって、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データとマルチキャリア通信装置100に割り当てられる符号化率および変調方式を示す無線リソース情報とが多重部209へ出力される。
そして、多重部209によって、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データと無線リソース情報とが多重され、多重データが生成される。そして、多重データは、誤り訂正符号化部210によって誤り訂正符号化され、変調部211によって変調され、変調データが得られる。
変調データは、IFFT部212−1、212−2によって逆高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳され、GI挿入部213−1、213−2によってガードインターバルが挿入され、RF送信部214−1、214−2によって所定の無線送信処理が施され、送信データおよび無線リソース情報を含む個別データ信号411がアンテナを介して送信される。
このようにして選択基地局装置である基地局装置200から送信された信号は、マルチキャリア通信装置100によって受信され、接続セル受信処理部105によって受信処理されることにより受信データが得られる。
次に、マルチキャリア通信装置100が基地局装置200を選択基地局装置として通信している(すなわち、セル200aが接続セル、セル300aが観測セル)状態の動作について図6(b)を参照して説明する。マルチキャリア通信装置100がセル200aを接続セルとしている時、マルチキャリア通信装置100のRF受信部101−1、101−2には基地局装置200からの共通パイロット信号451および個別データ信号452が受信される。
受信信号は、RF受信部101−1、101−2によって所定の無線受信処理が施され、GI除去部102−1、102−2によってガードインターバルが除去され、FFT部103−1、103−2によって高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、セル分離部104によって接続セルの信号と観測セルの信号とに分離されるが、ここでは、接続セルであるセル200aの信号が接続セル受信処理部105へ出力され、接続セルの信号の受信処理が行われる(453)。
すなわち、チャネル推定部1051によって、セル200aのサブキャリアごとのチャネル行列が求められ、復調部1052によって、基地局装置200においてマルチキャリア通信装置100に割り当てられたMIMO多重方式および変調方式で受信信号が復調され、この復調の過程で特異値分解処理部1052aによる特異値分解処理が行われる。特異値分解処理によって得られた接続セルにおける独立したパスごとの特異値は、特異値加工部1056へ出力される一方、復調された個別データ信号が誤り訂正復号部1053へ出力され、共通パイロット信号が無線品質測定部1055へ出力される。
誤り訂正復号部1053へ出力された個別データ信号は、基地局装置200においてマルチキャリア通信装置100に割り当てられた符号化率で誤り訂正復号され、分離部1054によって受信データと無線リソース情報とに分離され、無線リソース情報が復調部1052および誤り訂正復号部1053へ出力される。
また、特異値加工部1056へは、すべてのサブキャリアに関して独立したパスごとの特異値が出力されているが、特異値加工部1056によって、例えば独立したパスごとの平均値が求められることにより、それぞれの独立したパスを代表する特異値が算出される。
そして、チャネル容量算出部1057によって、所定の閾値以上の特異値の数がセル200aのチャネル容量として算出され、セル選択部107へ出力される。以上で、接続セルの信号の受信処理が完了する。
なお、無線品質測定部1055へ出力された共通パイロット信号は、接続セルであるセル200aの無線品質測定に用いられ、無線品質測定部1055によって無線品質情報が生成される。生成された無線品質情報は、受信確認応答などと多重され、受信確認応答信号454として基地局装置200へ送信されるようにしても良い。
一方、観測セルであるセル300aの基地局装置300から送信されている共通パイロット信号455は、RF受信部101−1、101−2によって随時受信され、所定の無線受信処理が施され、GI除去部102−1、102−2によってガードインターバルが除去され、FFT部103−1、103−2によって高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、セル分離部104によって接続セルの信号と観測セルの信号とに分離されるが、ここでは、観測セルであるセル300aの信号が観測セル受信処理部106のチャネル推定部1061へ出力される。
そして、チャネル推定部1061によって、セル300aのチャネル行列が求められ、サブキャリア選択部1062によって、図7に示したように、セル300aにおいて総受信電力が最も大きいサブキャリアが選択される(456)。
選択されたサブキャリアは、特異値分解処理部1063へ通知され、特異値分解処理部1063によって、選択されたサブキャリアに対応するチャネル行列が用いられて式(2)による特異値分解処理が行われ、セル300aについて、独立したパスごとの特異値が求められる。
そして、チャネル容量算出部1064によって、所定の閾値以上の特異値の数が観測セルであるセル300aのチャネル容量として算出される(457)。算出されたセル300aのチャネル容量は、セル選択部107へ出力され、セル200aおよびセル300aのうちチャネル容量が大きい方が次の時間単位における接続セルとして選択され(458)、接続セルに対応する基地局装置が選択基地局装置となる。そして、セル選択部107によって、接続セルに選択されたセルに関するセル選択情報が多重部108へ出力される。ここでは、観測セルであったセル300aが接続セルとして選択され、基地局装置300が選択基地局装置となったものとして説明を続ける。
セル選択情報が多重部108へ入力されると、多重部108によって、送信データとセル選択情報とが多重され、多重データが生成される。そして、多重データは、誤り訂正符号化部109によって誤り訂正符号化され、変調部110によって変調され、変調データが得られる。
変調データは、IFFT部111−1、111−2によって逆高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳され、GI挿入部112−1、112−2によってガードインターバルが挿入され、RF送信部113−1、113−2によって所定の無線送信処理が施され、送信データおよびセル選択情報を含むマルチキャリア信号459がアンテナを介して送信される。なお、図6(b)では、選択されなかった基地局装置200へは何の信号も送信されていないが、基地局装置200に対してセル選択情報が送信されるようにしても良い。
マルチキャリア通信装置100から送信されたマルチキャリア信号459は、基地局装置300のRF受信部201−1、201−2によってアンテナを介して受信される。そして、受信信号は、RF受信部201−1、201−2によって所定の無線受信処理が施され、GI除去部202−1、202−2によってガードインターバルが除去され、FFT部203−1、203−2によって高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、復調部204によって復調され、誤り訂正復号部205によって誤り訂正復号され、分離部206によって送信データとセル選択情報に分離される。そして、セル選択情報がリソース割当部207へ出力されると、リソース割当部207によって、自装置(基地局装置300)がマルチキャリア通信装置100の選択基地局装置となったと判断され、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データに対して割り当てる変調方式および符号化率などの無線リソースが決定される(460)。決定された無線リソースの情報は、送信制御部208へ出力され、マルチキャリア通信装置100宛ての信号の送信処理が開始される(461)。
すなわち、送信制御部208によって、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データとマルチキャリア通信装置100に割り当てられる符号化率および変調方式を示す無線リソース情報とが多重部209へ出力される。
そして、多重部209によって、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データと無線リソース情報とが多重され、多重データが生成される。そして、多重データは、誤り訂正符号化部210によって誤り訂正符号化され、変調部211によって変調され、変調データが得られる。
変調データは、IFFT部212−1、212−2によって逆高速フーリエ変換されることにより、複数のサブキャリアに重畳され、GI挿入部213−1、213−2によってガードインターバルが挿入され、RF送信部214−1、214−2によって所定の無線送信処理が施され、送信データおよび無線リソース情報を含む個別データ信号462がアンテナを介して送信される。
このようにして選択基地局装置である基地局装置300から送信された信号は、マルチキャリア通信装置100によって受信され、接続セル受信処理部105によって受信処理されることにより受信データが得られる。
以上のように、本実施の形態によれば、通信相手となっていない基地局装置から送信された共通パイロット信号に含まれるサブキャリアのうち、最も総受信電力が大きいサブキャリアを対象として特異値分解処理を行い、所定の閾値以上の特異値の数をチャネル容量として、チャネル容量が最大の基地局装置を選択基地局装置とする。このため、高速セル選択のための特異値分解処理による処理負荷の増大を最低限に抑制することができ、MIMO通信とマルチキャリア通信とを組み合わせた場合に、回路規模の増大を防止しつつ高速セル選択を実行し、スループットを確実に改善してセルカバレッジを拡大することができる。
なお、本実施の形態においては、マルチキャリア通信装置100から選択基地局装置に対して、セル選択情報を含むマルチキャリア信号(例えば図6(a)のマルチキャリア信号408)が送信されるものとしたが、上り回線の信号は、マルチキャリア信号に限定されず例えばCDMA信号などでも良い。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の特徴は、セル選択に用いるチャネル容量として行列式を用い、行列式の大小によって通信相手となる基地局装置を選択する点である。
本実施の形態に係る移動体通信システムの構成は、図1に示す移動体通信システムと同様であるため、その説明を省略する。また、本実施の形態に係るマルチキャリア通信装置100および基地局装置200の要部構成は図2および図5に示すマルチキャリア通信装置100および基地局装置200の要部構成と同様であるため、その説明を省略する。
本実施の形態においては、マルチキャリア通信装置100の接続セル受信処理部105および観測セル受信処理部106の内部構成のみが実施の形態1と異なっている。したがって、接続セル受信処理部105および観測セル受信処理部106の内部構成について説明する。
図8は、本実施の形態に係る接続セル受信処理部105の内部構成を示すブロック図である。同図において、図3と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図8に示す接続セル受信処理部105は、図3の特異値加工部1056およびチャネル容量算出部1057に代えて行列式算出部5001および行列式加工部5002を有する構成を採る。
行列式算出部5001は、接続セルのサブキャリアiに関するチャネル行列Aiを用いて、すべてのサブキャリアに関して、接続セルにおける独立したパスごとの行列式を算出する。具体的には、行列式算出部5001は、接続セルの独立したパスごとの受信品質の総和の指標となる行列式Ciを以下の式(3)によって算出する。
上式(3)において、det()は行列式を示し、I
MRはM
R×M
Rのサイズの単位行列を示している。上式(3)によって求められる行列式C
iは、サブキャリアごとに求められるスカラー量であり、MIMO通信における独立したパスの受信品質の総和を示す数値である。したがって、セル内に受信品質が高い独立したパスが多ければ多いほど行列式C
iは大きくなり、行列式C
iが大きいセルほど、スループットが高いことになる。
行列式加工部5002は、サブキャリアごとに求められる行列式Ciを加工し、接続セルを代表する行列式を算出して接続セルのチャネル容量とする。すなわち、行列式加工部5002は、例えばN個のサブキャリア1〜Nに関して求められたすべての行列式C1〜CNの和を総サブキャリア数Nで除算して平均値を求めることにより、接続セルを代表する行列式Cを算出する。上述したように、算出された行列式Cが大きければ接続セルの独立したパスの受信品質が高く、MIMO通信に適していることになるため、行列式加工部5002は、行列式Cを接続セルのチャネル容量としてセル選択部107へ出力する。
図9は、本実施の形態に係る観測セル受信処理部106の内部構成を示すブロック図である。同図において、図4と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図9に示す観測セル受信処理部106は、図4の特異値分解処理部1063およびチャネル容量算出部1064に代えて特異値分解処理部1063aおよび行列式算出部5003を有し、さらに空間多重情報生成部5004を追加した構成を採る。
行列式算出部5003は、観測セルのチャネル行列を用いて接続セルと同様に式(3)の演算を行い、サブキャリア選択部1062によって選択されたサブキャリアのみに関する行列式を観測セルのチャネル容量として算出する。
なお、行列式算出部5003は、サブキャリア選択部1062によって1つのサブキャリアのみが選択された場合は、算出された行列式をそのままチャネル容量としてセル選択部107へ出力するが、複数のサブキャリアが選択された場合は、接続セル受信処理部105の行列式加工部5002と同様に、接続セルを代表する行列式をチャネル容量として算出してセル選択部107へ出力する。
特異値分解処理部1063aは、セル選択部107によって接続セルおよび観測セルのチャネル容量が比較された結果、観測セルが次の時間単位における接続セルとして選択された場合にのみ、式(2)による特異値分解処理を行い、サブキャリア選択部1062によって選択されたサブキャリアのみに関して、独立したパスごとの特異値を算出する。すなわち、特異値分解処理部1063aは、セル選択部107から出力されるセル選択情報を参照して、観測セルが接続セルとなる場合にのみ、独立したパスごとの受信品質を判定するために特異値分解処理を行う。
空間多重情報生成部5004は、特異値分解処理部1063aによって特異値分解処理が行われると、特異値分解処理の結果に応じてMIMO通信またはSTC(Space Time Coding:時空間符号化)通信のいずれを行うかを示す空間多重情報を生成する。
ここで、MIMO通信は、複数のアンテナから異なるデータ系列が同時に送信されるのに対し、STC通信は、複数のアンテナから同一のデータ系列が同時に送信される。したがって、たとえ行列式の比較によって選択された接続セルの独立したパスごとの受信品質が比較的低く、MIMO通信を行うことができないと考えられる場合でも、STC通信に切り替えることで受信品質の劣化を防止し、ダイバーシチ利得を得ることができる。
本実施の形態においては、セル選択に用いる観測セルのチャネル容量算出において、特異値分解処理よりも処理負荷が大幅に小さい行列式の演算が行われる。そして、観測セルが次の時間単位における接続セルに選択された場合にのみ、特異値分解処理が行われるため、観測セルのチャネル容量算出のために常に特異値分解処理が必要となる実施の形態1よりも処理負荷を軽減することができる。
次いで、上記のように構成されたマルチキャリア通信装置100によるセルの選択について、図10に示すシーケンス図を参照しながら説明する。なお、本実施の形態においては、マルチキャリア通信装置100が基地局装置200を選択基地局装置として通信している(すなわち、セル200aが接続セル、セル300aが観測セル)状態の動作について説明する。図10において、図6(b)と同じ部分には同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。マルチキャリア通信装置100がセル200aを接続セルとしている時、マルチキャリア通信装置100のRF受信部101−1、101−2には基地局装置200からの共通パイロット信号451および個別データ信号452が受信される。
受信信号は、GI除去部102−1、102−2およびFFT部103−1、103−2を経て、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、セル分離部104によって接続セルの信号と観測セルの信号とに分離されるが、ここでは、接続セルであるセル200aの信号が接続セル受信処理部105へ出力され、接続セルの信号の受信処理が行われる(601)。
すなわち、チャネル推定部1051によって、セル200aのサブキャリアごとのチャネル行列が求められ、復調部1052によって、基地局装置200においてマルチキャリア通信装置100に割り当てられた変調方式で受信信号が復調される。復調された個別データ信号は、誤り訂正復号部1053によって、基地局装置200においてマルチキャリア通信装置100に割り当てられた符号化率で誤り訂正復号され、分離部1054によって受信データと無線リソース情報とに分離される。
これらの処理と並行して、チャネル推定部1051によって求められたチャネル行列は、行列式算出部5001へ出力され、行列式算出部5001によって、サブキャリアごとの行列式が算出され、行列式加工部5002によって、サブキャリアごとの行列式が加工され、例えばサブキャリアごとの行列式の平均値などの接続セルを代表する行列式が算出される。算出された行列式は、接続セルのチャネル容量としてセル選択部107へ出力される。以上で、接続セルの信号の受信処理が完了する。
なお、復調部1052から無線品質測定部1055へ出力された共通パイロット信号は、接続セルであるセル200aの無線品質測定に用いられ、無線品質測定部1055によって無線品質情報が生成される。生成された無線品質情報は、受信確認応答などと多重され、受信確認応答信号454として基地局装置200へ送信されるようにしても良い。
一方、観測セルであるセル300aの基地局装置300から送信されている共通パイロット信号455は、RF受信部101−1、101−2によって随時受信され、GI除去部102−1、102−2およびFFT部103−1、103−2を経て、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、セル分離部104によって接続セルの信号と観測セルの信号とに分離されるが、ここでは、観測セルであるセル300aの信号が観測セル受信処理部106のチャネル推定部1061へ出力される。
そして、実施の形態1と同様に、サブキャリア選択部1062によって、セル300aにおいて総受信電力が最も大きいサブキャリアが選択される(456)。
選択されたサブキャリアは、行列式算出部5003へ通知され、行列式算出部5003によって、選択されたサブキャリアに対応するチャネル行列が用いられて式(3)の演算が行われ、セル300aの行列式が求められる(602)。求められた行列式は、観測セルのチャネル容量としてセル選択部107へ出力され、セル200aおよびセル300aのうちチャネル容量が大きい方が次の時間単位における接続セルとして選択され(458)、接続セルに対応する基地局装置が選択基地局装置となる。そして、セル選択部107によって、接続セルに選択されたセルに関するセル選択情報が特異値分解処理部1063aおよび多重部108へ出力される。ここでは、観測セルであったセル300aが接続セルとして選択され、基地局装置300が選択基地局装置となったものとして説明を続ける。
観測セルであったセル300aが接続セルに選択された旨のセル選択情報が特異値分解処理部1063aへ出力されると、特異値分解処理部1063aによって、サブキャリア選択部1062によって選択されたサブキャリアに対応するチャネル行列が用いられて式(2)による特異値分解処理が行われる(603)。なお、引き続きセル200aが接続セルに選択された場合は、特異値分解処理は行われない。
特異値分解処理の結果、所定の閾値より大きい特異値が所定数より多ければ、空間多重情報生成部5004によって、セル300aにおけるMIMO通信が可能であると判断され、MIMO通信を行う旨の空間多重情報が生成される。また、所定の閾値より大きい特異値が所定数より少なければ、空間多重情報生成部5004によって、セル300aにおいてはSTC通信を行う方が良いと判断され、STC通信を行う旨の空間多重情報が生成される。生成された空間多重情報は、セル選択部107を経由して、多重部108へ出力される。
セル選択情報および空間多重情報が多重部108へ入力されると、多重部108によって、送信データ、セル選択情報、および空間多重情報が多重され、多重データが生成される。そして、多重データは、誤り訂正符号化部109からRF送信部113−1、113−2を経て、送信データ、セル選択情報、および空間多重情報を含むマルチキャリア信号604がアンテナを介して送信される。なお、図10では、選択されなかった基地局装置200へは何の信号も送信されていないが、基地局装置200に対してセル選択情報が送信されるようにしても良い。
マルチキャリア通信装置100から送信されたマルチキャリア信号604は、基地局装置300のRF受信部201−1、201−2によってアンテナを介して受信される。そして、受信信号は、GI除去部202−1、202−2およびFFT部203−1、203−2を経て、複数のサブキャリアに重畳されている信号が抽出される。
各サブキャリアの信号は、復調部204によって復調され、誤り訂正復号部205によって誤り訂正復号され、分離部206によって送信データ、セル選択情報、および空間多重情報に分離される。そして、セル選択情報および空間多重情報がリソース割当部207へ出力されると、リソース割当部207によって、自装置(基地局装置300)がマルチキャリア通信装置100の選択基地局装置となったと判断され、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データに対して割り当てる変調方式および符号化率などの無線リソースが決定される(460)。本実施の形態においては、無線リソースの決定に際して空間多重情報が参照され、MIMO通信またはSTC通信のいずれが行われるかが考慮される。決定された無線リソースの情報は、送信制御部208へ出力され、マルチキャリア通信装置100宛ての信号の送信処理が開始される(605)。
すなわち、送信制御部208によって、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データとマルチキャリア通信装置100に割り当てられる符号化率および変調方式を示す無線リソース情報とが多重部209へ出力される。また、送信制御部208によって、空間多重情報に従ってMIMO通信またはSTC通信のいずれの空間多重を行うかが判断される。
そして、多重部209によって、マルチキャリア通信装置100宛ての送信データと無線リソース情報とが多重され、多重データが生成される。そして、多重データは、誤り訂正符号化部210によって誤り訂正符号化され、変調部211によって変調され、変調データが得られる。
変調データは、IFFT部212−1、212−2からRF送信部214−1、214−2を介して個別データ信号462としてアンテナから送信される。このとき、個別データ信号462は、空間多重情報に応じてMIMO通信またはSTC通信によって送信される。
このようにして選択基地局装置である基地局装置300から送信された信号は、マルチキャリア通信装置100によって受信され、接続セル受信処理部105によって受信されることにより受信データが得られる。
以上のように、本実施の形態によれば、通信相手となっていない基地局装置から送信された共通パイロット信号に含まれるサブキャリアのうち、最も総受信電力が大きいサブキャリアを対象として行列式を求め、この行列式をチャネル容量として、チャネル容量が最大の基地局装置を選択基地局装置とする。このため、高速セル選択のための特異値分解処理による処理負荷の増大を最低限に抑制することができ、MIMO通信とマルチキャリア通信とを組み合わせた場合に、回路規模の増大を防止しつつ高速セル選択を実行し、スループットを確実に改善してセルカバレッジを拡大することができる。また、セル選択に際して、常に特異値分解処理を行うよりも処理負荷を軽減することができる。
なお、本実施の形態においては、マルチキャリア通信装置100から選択基地局装置に対して、セル選択情報を含むマルチキャリア信号(すなわち図10のマルチキャリア信号604)が送信されるものとしたが、上り回線の信号は、マルチキャリア信号に限定されず例えばCDMA信号などでも良い。
また、上記各実施の形態においては、送受信側のすべてのアンテナ対における総受信電力を用いてチャネル容量算出に用いるサブキャリアを選択するものとしたが、送信側または受信側のアンテナを限定した総受信電力を用いても良い。すなわち、例えば送信側のアンテナをいずれか1つに固定して、当該アンテナからのみの受信電力を用いてサブキャリアを選択するようにしても良い。こうすることにより、セル選択に必要な処理負荷をさらに軽減することができる。
本発明の第1の態様に係るマルチキャリア通信装置は、現在の時間単位における通信相手がカバーする接続セルの信号および前記接続セルに隣接する観測セルの信号を複数のアンテナから受信する受信手段と、前記接続セルの信号を用いて前記接続セルのチャネル容量を算出する第1算出手段と、前記観測セルの信号を構成する複数のサブキャリアから1以上のサブキャリアを選択するサブキャリア選択手段と、選択されたサブキャリアを対象として前記観測セルのチャネル容量を算出する第2算出手段と、前記接続セルのチャネル容量および前記観測セルのチャネル容量を比較し、チャネル容量が最大のセルを次の時間単位における接続セルとして選択するセル選択手段と、を有する構成を採る。
この構成によれば、接続セルのチャネル容量を算出するとともに、観測セルの信号を構成するサブキャリアから1以上のサブキャリアを選択して観測セルのチャネル容量を算出し、チャネル容量が最大のセルを次の接続セルとするため、観測セルのチャネル容量算出に必要とする処理量を削減することができ、MIMO通信とマルチキャリア通信とを組み合わせた場合に、回路規模の増大を防止しつつ高速セル選択を実行し、スループットを確実に改善してセルカバレッジを拡大することができる。
本発明の第2の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記サブキャリア選択手段は、前記複数のサブキャリアのうち、受信電力が最大のサブキャリアを選択する構成を採る。
この構成によれば、受信電力が最大のサブキャリアを選択するため、チャネル容量の算出に用いるチャネル行列が正確に求められており、観測セルのチャネル容量を正確に算出することができる。
本発明の第3の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記サブキャリア選択手段は、前記複数のサブキャリアのうち、受信電力が大きい方から所定数のサブキャリアを選択する構成を採る。
この構成によれば、受信電力が大きい方から所定数のサブキャリアを選択するため、チャネル容量の算出の対象となるサブキャリア数が多くなるため、情報量が多くなり、チャネル容量の異常値を排除することができる。
本発明の第4の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記サブキャリア選択手段は、前記複数のサブキャリアのうち、受信電力が所定の閾値以上のサブキャリアを選択する構成を採る。
この構成によれば、受信電力が所定の閾値以上のサブキャリアを選択するため、受信電力の相対比較ではなく、受信電力が絶対的に大きいサブキャリアを選択することができ、観測セルのチャネル容量をより正確に算出することができる。
本発明の第5の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記サブキャリア選択手段は、前記複数のアンテナのうちいずれか1つのアンテナにおける受信電力に応じてサブキャリアを選択する構成を採る。
この構成によれば、1つのアンテナにおける受信電力に応じてサブキャリアを選択するため、受信電力の算出などの演算量が削減され、セル選択に必要な処理負荷をさらに軽減することができる。
本発明の第6の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記第1算出手段は、前記接続セルの信号を構成する複数のサブキャリアそれぞれを対象に特異値分解処理を行って、前記接続セルにおける独立したパスごとの受信品質を示す特異値を前記独立したパスごとに前記複数のサブキャリア数ずつ求める特異値分解処理部と、求められた特異値に対して所定の加工を施し、前記接続セルにおける独立したパスごとに1つの特異値を得る特異値加工部と、前記特異値加工部によって得られた前記接続セルにおける独立したパスごとの特異値のうち、所定の閾値以上の特異値の数を前記接続セルのチャネル容量として算出するチャネル容量算出部と、を有する構成を採る。
本発明の第7の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記第2算出手段は、前記選択されたサブキャリアを対象に特異値分解処理を行って、前記観測セルにおける独立したパスごとに1つの特異値を求める特異値分解処理部と、前記観測セルにおける独立したパスごとの特異値のうち、所定の閾値以上の特異値の数を前記観測セルのチャネル容量として算出するチャネル容量算出部と、を有する構成を採る。
これらの構成によれば、特異値分解処理結果から独立したパスごとの特異値を求め、所定の閾値以上の特異値の数をセルのチャネル容量とするため、受信品質が高い独立したパスが多いセルほどチャネル容量が大きくなる。このため、チャネル容量が大きいセルほどMIMO通信に適していることになり、スループットを確実に改善できるセルを選択することができる。
本発明の第8の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記第1算出手段は、前記接続セルの信号を構成する複数のサブキャリアそれぞれを対象に演算を行って、前記接続セルにおける独立したパスごとの受信品質の総和を示す行列式を前記独立したパスごとに前記複数のサブキャリア数ずつ算出する行列式算出部と、算出された行列式に対して所定の加工を施し、前記接続セルにおける独立したパスごとに1つの行列式を前記接続セルのチャネル容量として得る行列式加工部と、を有する構成を採る。
本発明の第9の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第1の態様において、前記第2算出手段は、前記選択されたサブキャリアを対象に演算を行って、前記観測セルにおける独立したパスごとに1つの行列式を前記観測セルのチャネル容量として算出する行列式算出部、を有する構成を採る。
これらの構成によれば、独立したパスごとの受信品質の総和を示す行列式をセルのチャネル容量とするため、独立したパスの受信品質の総和が大きいセルほどチャネル容量が大きくなる。このため、特異値分解処理を行わずにMIMO通信に適したセルを選択することができ、セル選択に必要な処理負荷を軽減することができる。
本発明の第10の態様に係るマルチキャリア通信装置は、上記第9の態様において、前記セル選択手段によって現在の時間単位における観測セルが次の時間単位における接続セルとして選択された場合に、前記サブキャリア選択手段によって選択されたサブキャリアを対象に特異値分解処理を行って、前記観測セルにおける独立したパスごとの1つの特異値を求める特異値分解処理手段と、前記観測セルにおける独立したパスごとの特異値のうち、所定の閾値以上の特異値の数が所定数以上であればMIMO通信を行う旨の空間多重情報を生成し、所定の閾値以上の特異値の数が所定数未満であればSTC通信を行う旨の空間多重情報を生成する生成手段と、をさらに有する構成を採る。
この構成によれば、行列式の比較によって観測セルが接続セルとなる場合にのみ特異値分解処理を行って、この結果に基づいてMIMO通信またはSTC通信のいずれを行うかを示す空間多重情報を生成するため、必要な場合にのみ特異値分解処理を行うことで処理負荷を軽減することができるとともに、MIMO通信が不可能な場合でも受信品質の劣化を防止し、ダイバーシチ利得を得ることができる。
本発明の第11の態様に係るセル選択方法は、現在の時間単位における通信相手がカバーする接続セルの信号および前記接続セルに隣接する観測セルの信号を複数のアンテナから受信するステップと、前記接続セルの信号を用いて前記接続セルのチャネル容量を算出するステップと、前記観測セルの信号を構成する複数のサブキャリアから1以上のサブキャリアを選択するステップと、選択されたサブキャリアを対象として前記観測セルのチャネル容量を算出するステップと、前記接続セルのチャネル容量および前記観測セルのチャネル容量を比較し、チャネル容量が最大のセルを次の時間単位における接続セルとして選択するステップと、を有するようにした。
この方法によれば、接続セルのチャネル容量を算出するとともに、観測セルの信号を構成するサブキャリアから1以上のサブキャリアを選択して観測セルのチャネル容量を算出し、チャネル容量が最大のセルを次の接続セルとするため、観測セルのチャネル容量算出に必要とする処理量を削減することができ、MIMO通信とマルチキャリア通信とを組み合わせた場合に、回路規模の増大を防止しつつ高速セル選択を実行し、スループットを確実に改善してセルカバレッジを拡大することができる。