JP4556000B2 - 内視鏡用モノポーラ型高周波鋏 - Google Patents

Description

本発明は、内視鏡の処置具案内管路内に通して使用される内視鏡用モノポーラ型高周波鋏に関する。

内視鏡用高周波切開具としては、使用目的によって各種の形状のものがあるが、粘膜剥離術を行うためには、内視鏡の処置具案内管に挿脱されるシースの先端に、電気的に導通する一対の高周波電極が前方に向かって開閉するように設けられた内視鏡用モノポーラ型高周波鋏が用いられている（例えば、特許文献１）。
特開２００６−３４６４１７号公報

内視鏡用モノポーラ型高周波鋏を用いて粘膜剥離術を行う際には、予め内視鏡用高周波ナイフ等で表面が切開された粘膜の切開面に高周波鋏を差し込んでから、その電極に高周波電流を通電して、表面粘膜と筋層との間の筋等を切開する処置が行われる。
しかし、前記のような従来の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏では、切れ味のよい切開をしようとすると切開部分の周囲まで高周波電流による強い焼灼が行われて、周囲の生体組織を必要以上に損傷してしまう場合がある。そこで、周囲の生体組織の損傷を軽くしようと電流値を下げたりすると、切開の切れ味が落ちるだけでなく、切開部位に隣接する部分の凝固が不十分になって十分な止血効果が得られずに出血してしまう場合がある。このように従来の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏では、切開部分とその周囲の組織に対する焼灼の程度が不安定になる問題が生じていた。

本発明はそのような問題を解決するためになされたものであり、切れ味のよい高周波切開を行うことができ、しかも切開部分に隣接する組織を、必要以上に損傷することなく止血効果が適度に得られる程度に確実に凝固させることができる内視鏡用モノポーラ型高周波鋏を提供することを目的とする。

本発明の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏は、内視鏡の処置具案内管に挿脱されるシースの先端に、電気的に導通する一対の高周波電極が前方に向かって開閉するように設けられて、一対の高周波電極が閉状態のときに互いに向かい合う各高周波電極の対向位置に、電極露出面が前後方向に細長く形成され、高周波電極のその他の部分の表面は電気絶縁された構成を有する内視鏡用モノポーラ型高周波鋏において、高周波電極の長手方向に対して垂直な断面における高周波電極の断面形状が、中央部分に電極露出面が凸状に突出して、その両側に電極露出面に対して段差をなす段差部が形成され、その段差部の外縁より外側の部分は漸次外方に広がる斜面状に形成されている。

なお、高周波電極の電極露出面以外の部分の表面に、全体に一つながりに不活性材からなる電気絶縁性コーティング皮膜が被覆されていてもよい。そして、各高周波電極の長手方向に対して垂直な断面における電極露出面の幅をＷ、段差部の段差の高さをｈ、段差面の幅をｗとしたとき、Ｗ／４≦ｈ≦Ｗ、Ｗ／４≦ｗ≦Ｗであってもよく、ｈ＝Ｗ／２、ｗ＝Ｗ／２であるとより好ましい。また、高周波電極の開閉方向に対して斜面のなす角度をθとしたとき、１５°≦θ≦６０°であってもよく、３０°≦θ≦４５°であるとより好ましい。

本発明の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏によれば、高周波電極の断面形状が、中央部分に電極露出面が凸状に突出して、その両側に電極露出面に対して段差をなす段差部が形成され、その段差部の外縁より外側の部分は漸次外方に広がる斜面状に形成されていることにより、切れ味のよい高周波切開を行うことができ、しかも切開部分に隣接する組織を、必要以上に損傷することなく止血効果が適度に得られる程度に確実に凝固させることができる。

以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図２は本発明の第１の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の先端部分の側面断面図、図３はその平面図である。
１は、内視鏡の処置具案内管に挿脱自在な可撓性シースであり、ステンレス線を密着巻きしたコイルパイプにより形成されている。可撓性シース１の外周面には、電気絶縁性の可撓性チューブからなるシース外皮２が全長に被覆され、可撓性シース１の先端に固定的に取り付けられた先端口金３の外周にシース外皮２の先端が緊縛固定されている。４は、可撓性シース１内に緩く挿通された導電性の操作ワイヤーであり、可撓性シース１の基端に連結された操作部からの操作により、軸方向に進退させることができ、また軸周り方向に回転させることができる。

５は、先端口金３に対して軸方向に移動することはできないが、軸周り方向に回転自在に先端口金３に連結された先端支持枠であり、先端支持枠５に形成されたスリット７の先端部分に、一対の高周波電極６が支軸８を中心に回動自在に前方に向かって開閉自在に支持されている。一対の高周波電極６は互いが電気的に導通した状態に設けられており、高周波電流は、両高周波電極６と図示されていない対極板とが共に接触する生体組織中を流れる。

９は、高周波電極６を開閉駆動するための公知のリンク機構であり、操作ワイヤー４の先端がリンク機構に連結されている。その結果、操作部において操作ワイヤー４を進退操作すれば高周波電極６が支軸８を中心に開閉し、操作ワイヤー４を軸周り方向に回転操作すれば、先端支持枠５や高周波電極６等が一体となって先端口金３の軸周り方向に回転する。また、操作部側において操作ワイヤー４を高周波電源に接続することにより、操作ワイヤー４を経由して一対の高周波電極６に高周波電流を通電することができる。図２には、一対の高周波電極６が開いた状態が示されているが、閉じた状態も二点鎖線で図示されている。なお、一対の高周波電極６の開閉駆動をリンク機構以外の機構で行ってもよい。

図４は一対の高周波電極６が閉じた状態の正面図（図２において左方から見た図）、図１は、高周波電極６の長手方向に対して垂直な断面の断面図（図２に示されるＡ−Ａ線における断面図）である。また、図５は一対の高周波電極６が半開き状態の斜視図である。各高周波電極６の最先端部分には、他方の高周波電極６側に向かって突出する先端フック部６ａが、一対の高周波電極６が閉じた時に図４に示されるようにすれ違って横に並ぶ位置関係に設けられている。

各高周波電極６には、一対の高周波電極６が閉状態のときに互いに向かい合う対向位置に電極露出面６ｂが前後方向に細長く形成されていて、先端フック部６ａの裏面に形成された補助電極面６ｅとその電極露出面６ｂのみに金属面が露出し、高周波電極６のその他の面には例えばフッ素樹脂等のような化学的及び熱的に安定性が大きいいわゆる不活性の合成樹脂材からなる電気絶縁性コーティング皮膜１０が被覆されている。その結果、粘膜剥離処置の際に切開が必要な生体組織だけを安全に高周波切開することができる。なお、電気絶縁性コーティング皮膜１０部分は全図について砂目状に表示してある。

各高周波電極６の先端フック部６ａ以外の部分は、図１に示されるように、中央部分に電極露出面６ｂが凸状に突出して、その両側に電極露出面６ｂに対して段差をなす段差部６ｃが形成され、その段差部６ｃの外縁より外側の部分は漸次外方に広がる斜面状に形成されている（斜面部６ｄ）。電気絶縁性コーティング皮膜１０は電極露出面６ｂ以外の全面に一つながりに被覆されていて、高周波電極６を包み込む状態になっている。

なお、高周波電極６の長手方向に対して垂直な断面における電極露出面６ｂの幅をＷ、段差部６ｃの段差の高さをｈ、段差面の幅をｗ、高周波電極６の開閉方向に対して斜面部６ｄのなす角度をθとすると、この実施の形態においては、ｈ＝Ｗ／２、ｗ＝Ｗ／２、３０°≦θ≦４５°に形成されている。
図６は、この実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の使用状態であって、生体組織を挟んだ一対の高周波電極６に高周波電流が通電されて生体組織中を破線で示されるように高周波電流が流れる状態を略示している。生体組織を挟んでいる一対の高周波電極６間の間隔は、電極露出面６ｂ部分が最も狭く、段差部６ｃ部分では電極露出面６ｂ部分に比べて急に広がって一定の間隔になり、斜面部６ｄ部分では電極露出面６ｂから遠ざかるにしたがって次第に広がっていく。

その結果、高周波電流密度が最も大きい電極露出面６ｂ部分（即ち、一対の電極露出面６ｂで挟まれた領域）に発生するジュール熱が最も高くなってそこで生体組織が切断され、電流密度が疎になる段差部６ｃ部分（段差部６ｃで挟まれた領域）では生体組織が生焼け状態になって止血効果が得られる。そして、電極露出面６ｂの領域から段差部６ｃの領域への移行部では電流密度が急に低下していることにより、切断部と止血部との境界がハッキリして切れ味のよい切断状態が得られる。また、一対の高周波電極６間の間隔が一定になっている段差部６ｃの領域においては電流密度が一定であって、その領域全体で確実に止血効果が得られる。そして、斜面部６ｄの領域においては生体組織を流れる電流密度が徐々に低下して生体組織の焼灼状態が段差部６ｃの領域から急激に変化しないので、かさぶたがボロッと剥がれるような現象が抑制されて、安定した止血状態が維持される。

なお、このような効果を得られるｈ、ｗ及びθの大きさは各々ある程度の範囲を有しており、Ｗ／４≦ｈ≦Ｗ、Ｗ／４≦ｗ≦Ｗ、１５°≦θ≦６０°の範囲にあれば、一定の優れた切れ味と止血効果を得ることができる。
図７は本発明の第２の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏を示しており、先端フック部６ａを一対の高周波電極６の一方の先端部のみの中央位置に突出形成したものである。このように、本発明においては高周波電極６の最先端部分の形状等はどのようなものであっても差し支えない。また、高周波電極６が湾曲した形状等であってもよい。

本発明の第１の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の図２におけるＡ−Ａ線における断面図。 本発明の第１の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の先端部分の側面断面図。 本発明の第１の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の先端部分の平面図。 本発明の第１の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の一対の高周波電極が閉じた状態の正面図。 本発明の第１の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の高周波電極の斜視図。 本発明の第１の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の使用状態における、高周波電流が流れる状態を示す略示図。 本発明の第２の実施の形態の内視鏡用モノポーラ型高周波鋏の高周波電極の斜視図。

符号の説明

１…可撓性シース
６…高周波電極
６ａ…先端フック部
６ｂ…電極露出面
６ｃ…段差部
６ｄ…斜面部
１０…電気絶縁性コーティング皮膜

Claims (6)

1. 内視鏡の処置具案内管に挿脱されるシースの先端に、電気的に導通する一対の高周波電極が前方に向かって開閉するように設けられて、前記一対の高周波電極が閉状態のときに互いに向かい合う各高周波電極の対向位置に、電極露出面が前後方向に細長く形成され、前記高周波電極のその他の部分の表面は電気絶縁された構成を有する内視鏡用モノポーラ型高周波鋏において、
   前記高周波電極の長手方向に対して垂直な断面における前記高周波電極の断面形状が、中央部分に前記電極露出面が凸状に突出して、その両側に前記電極露出面に対して段差をなす段差部が形成され、その段差部の外縁より外側の部分は漸次外方に広がる斜面状に形成されていることを特徴とする内視鏡用モノポーラ型高周波鋏。
2. 請求項１に記載された内視鏡用モノポーラ型高周波鋏において、前記高周波電極の前記電極露出面以外の部分の表面に、全体に一つながりに不活性材からなる電気絶縁性コーティング皮膜が被覆されている内視鏡用モノポーラ型高周波鋏。
3. 請求項１又は２に記載された内視鏡用モノポーラ型高周波鋏において、前記各高周波電極の長手方向に対して垂直な断面における前記電極露出面の幅をＷ、前記段差部の段差の高さをｈ、段差面の幅をｗとしたとき、Ｗ／４≦ｈ≦Ｗ、Ｗ／４≦ｗ≦Ｗである内視鏡用モノポーラ型高周波鋏。
4. 請求項３に記載された内視鏡用モノポーラ型高周波鋏において、ｈ＝Ｗ／２、ｗ＝Ｗ／２である内視鏡用モノポーラ型高周波鋏。
5. 請求項３又は４に記載された内視鏡用モノポーラ型高周波鋏において、前記高周波電極の開閉方向に対して前記斜面のなす角度をθとしたとき、１５°≦θ≦６０°である内視鏡用モノポーラ型高周波鋏。
6. 請求項５に記載された内視鏡用モノポーラ型高周波鋏において、３０°≦θ≦４５°である内視鏡用モノポーラ型高周波鋏。

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