JP4553197B2 - スタッドを取外す方法 - Google Patents

Description

本発明は、ガスタービンエンジン構成部品からスタッドを取外す方法に関し、より具体的には、ガスタービンエンジン構成部品からキーリング・スタッド組立体を取外す方法に関する。

ねじ付きスタッドは、航空宇宙産業分野では極めて広範囲に用いられる。このスタッドは、加工物内のねじ穴にねじ込まれた第１のねじ付き端部によって加工物に固定される。第２のねじ付き端部は、該第２の端部を用いて別の部品を加工物に固定するように、加工物の表面から突出している。

スタッドを加工物から取外すことが、度々必要になる。例えば、ＣＦ６−８０Ｃ２型及びＣＦ６−８０Ｅ型エンジンのタービン後部フレームは、後部フランジハブ上に取付けた多数のキーリング（ｋｅｙ ｒｉｎｇ）・スタッド（ｓｔｕｄ）組立体を有する。スタッドは、タービン後部フレームに熱処理作業を行うときに取外す必要がある場合がある。同様に、これらのスタッドは、点検工程の間にスタッドに実使用不能な状態が発見された場合に、取外す必要がある場合がある。

タービン後部フレームからスタッドを取外す１つの方法を、図１に説明する。この図に示すように、スタッドの一部分は、ハブの表面の僅かに上方で切断することができる。次に、機械を据付けて、キーリング部分の底面よりも下方の深さまで穿孔加工する。次に、より小さい寸法のドリルを使用する第２の穿孔加工作業を用いて、スタッドの底部を貫通して又はその後のスクリュ・エキストラクタの使用に適した別の深さまで穿孔加工する。従って、穿孔加工は、使用する特定のスクリュ・エキストラクタに適した寸法にされたドリルを用いてスタッドを貫通して行われる。次に、てこ工具をキーリング部分の下方に到達するように使用して、このロッキング機構を取外す。その後、テーパ状の直径を有するスクリュ・エキストラクタにより、図１に示すように残りの内部スタッドを取外す。

上述の方法は有効であるが、構成部品の母材にまで穿孔しないように注意を払わなければならない。同様に、多数の穿孔加工作業を使用するので、構成部品のねじ穴を損傷させる危険性がある。本方法はまた、多数の補修作業及び装置の据付け工程を伴い、従って取外し工程を完了するのに、多くの場合多大の労働時間を必要とする。
米国特許第２７０９８９３号明細書

従って、ガスタービンエンジン構成部品からスタッド、特にタービン後部フレームのキーリング・スタッド組立体を、下にあるねじ穴を損傷させずに効率的に取外す方法に対する要求が存在する。本発明は、この要求を満たす。

本発明の１つの実施形態では、キーリング部分及びスタッドを含むキーリング・スタッド組立体をガスタービンエンジン構成部品のねじ穴から取外す方法を開示する。本方法は、キーリング・スタッド組立体のキーリング部分上に仮付け溶接部を形成する段階を含む。本方法はまた、仮付け溶接部にエキストラクタを溶接する段階と、仮付け溶接部に溶接したエキストラクタにプーラを取付ける段階と、スタッドをねじ穴内に残したままで、プーラを引っ張ることによってキーリング部分を取外す段階とを含む。本方法はさらに、スタッドに２つのナットを組付ける段階を含む。レンチ又は他の適当な工具を使用して、ガスタービンエンジン構成部品のねじ穴を損傷させずに、スタッドを取外すことができる利点がある。

本発明の別の実施形態では、キーリング部分及びスタッドを含むキーリング・スタッド組立体を加工物の穴から取外す方法を開示する。本方法は、キーリング・スタッド組立体のキーリング部分上に仮付け溶接部を形成する段階を含む。本方法はまた、仮付け溶接部にエキストラクタを溶接する段階と、仮付け溶接部に溶接したエキストラクタにプーラを取付ける段階と、スタッドを穴内に残したままで、プーラを引っ張ることによってキーリング部分を取外す段階とを含む。本方法はさらに、第１のナットがスタッドに組付けられ、また第２のナットが第１のナット上に固定されて固定状態になりかつ該第１のナットの動きを阻止するように、スタッドに２つのナットを組付ける段階を含む。レンチを使用して、加工物の穴を損傷させずに、スタッドを取外すことができる利点がある。

図に示すように、キーリング・スタッド組立体をガスタービンエンジンのタービン後部フレームから取外すことに関して本発明を説明することにする。しかしながら、本明細書で説明する方法及び装置は、任意のタイプの適当なスタッドを任意の所望の加工物から取外すことにも適用可能であることを理解されたい。例えば、本明細書に記載した方法は、スタッドを多くの異なるガスタービンエンジン構成部品又は他の加工物から有効にかつ効率的に取外すのに特に適している。

通常のキーリング・スタッド組立体８は、図２に示すように、キーリング部分１４又はロッキング機構と内部スタッド１０とを含む。キーリング部分１４は、２つのキーすなわち突出部１６を備えたリングの全体形状を有する。

図３を参照すると、また本発明の実施形態によると、キーリング部分１４上に仮付け溶接部１８を形成することができる。仮付け溶接部１８は、キーすなわち突出部１６の位置においてキーリング上に設置した２点仮付け溶接部であるのが好ましい。溶接作業において、中でもティグ溶接のような任意の適当な溶接法を用いることができる。溶接ワイヤを用いて、キーリング部分１４のキー１６上への仮付け溶接部の溶着を制御するようにするのが好ましい。例えば、中でも適当な長さ及び直径である、長さが約１インチ（２．５４センチメートル）で直径が約１０００分の３５インチ（０．０８９センチメートル）のワイヤの形状を有する溶加材を用いて、キーリング部分１４上に溶接ビードを形成することができる。下にある加工物と同一の材料で作られた溶接ワイヤを用いるのが好ましい。例えば、一部のタービン後部フレームは、Ｉｎｃｏ７１８合金材料で作られている。従って、この材料をまた、溶加材として用いるのが好ましいことになる。しかしながら、それが下にある加工物の材料と相容性がある限り、任意の適当な溶加材を用いることができる。

溶接工程の間、下にある部品の温度がエンジン実使用時におけるその作動温度を超えないように注意すべきである。好ましくは、冶金学的特性の変化を避けるために、下にある部品の作動温度に近づくことすらないように温度をモニタすべきである。例えば、一部のタービン後部フレームのケースでは、温度は約５００°Ｆ（２６０°Ｃ）を超えるべきではなく、この温度は、エンジン実使用時における予測作動温度の約半分である。熱伝対のような温度制御装置を用いて、適切な温度を超えないことを保証することができる。同様に、特定の温度に達すると色が変化するか又は融けるような他の公知の温度モニタリング又はマーキング装置が、特に有用である。例えば、Ｔｅｍｐｉｌ，Ｉｎｃ．によって販売されているＴｅｍｐｌｉｓｔｉｋ温度インジケータを用いることができる。

次に、図４に示すように、エキストラクタとも呼ばれるエキストラクタ工具１７を、上述のように、任意の適当な溶接装置及び溶加材を用いて仮付け溶接部に溶接することができる。溶加材は、仮付け溶接部の材料と同一であるのが好ましい。この溶接作業の間、上述したのと同様に、温度をモニタすべきである。

図５に、エキストラクタ工具１７の実施形態をさらに詳細に示す。エキストラクタ工具１７は、一般的に仮付け溶接部に溶接されたエキストラクタ工具１７の部分である２つの細長い脚部２０を含む。脚部２０は、従来どおり任意の適当な固定機構によってボルト２２に固定される。例えば、ボルト２２は、脚部２０に溶接するか又は脚部の一体形部分として形成することもできる。エキストラクタ工具１７はさらに、ボルト２２内部に嵌合した細長いねじ付き部分２４を含む。

次に、スライドハンマ・プーラと呼ばれることもあるプーラ２５を、図６に示すように、エキストラクタ１７に取付けることができる。プーラ２５は、一般的にロッド部分２６を含む。エキストラクタ工具１７の細長いねじ付き部分２４は、プーラ２５に取付けるために該プーラ２５のロッド部分２６内部に嵌合することができる。さらに、プーラ２５に上向きの引張力を作用させるのに先立って、スタッド１０に通常の潤滑油を適用してキーリング部分１４の取外しを助けることができる。キーリング部分１４を取外すためには、手動又は自動で真直ぐ上向き状態にプーラ２５を引っ張って、キーリング部分を外すことができる。キーリング・スタッド組立体８が設置されているねじ穴３２を損傷させないために装置を捻ったり回転させたりすることは避けるべきである。

取外したキーリング部分１４を把持しているエキストラクタ工具１７を、図７に示す。キーリング・スタッド組立体８の残りの部分すなわち内部スタッド１０は、その後ねじ穴３２から効率良く取外すことができる。具体的には、図８に示すように、２つのナット２８をスタッド１０に組付けるのが好ましい。第１のナットをスタッドに組付け、次に第２のナットを第１のナット上に固定して、第２のナットが固着状態になり、それによって第１のナットの動きを防止するようになる。次に、潤滑油を適用し、図９に示すように、レンチ３０又は他の適当な工具を用いて内部スタッド部分１０を取外すことができる。

図１０に示すように、キーリング・スタッド組立体８は、下にあるねじ穴３２を損傷させずに効率的に取外される。

本発明の実施形態の利点は、穿孔加工を使用する必要がない溶接加工をエキストラクタ工具と組合せて用いることである。従って、本発明の実施形態は、下にある部品を損傷させる危険性を減らし、かつスタッドを取外すのに必要な取外し作業の費用及び労働時間の全体量を低減する。その上、大掛かりな精密装置を必要としない。

本明細書では様々な実施形態を説明してきたが、当業者が実施形態における様々な要素の組合せ、変更又は改良を加えることができ、またそれらが本発明の技術的範囲内に属することは、本明細書から分かるであろう。

従来技術のスタッド取外し方法の概略図。 キーリング・スタッド組立体の概略図。 本発明の実施形態により、キーリング部分上に形成した仮付け溶接部の概略図。 本発明の実施形態により、図３の仮付け溶接部に溶接したエキストラクタ工具の概略図。 図４で用いるエキストラクタ工具の概略図。 本発明の実施形態で用いる、図４のエキストラクタ工具に取付けたプーラの概略図。 本発明の実施形態により、取外したキーリング部分を把持している、図５のエキストラクタ工具の概略図。 本発明の実施形態により、スタッドねじ部に組付けた２つのナットの概略図。 図８の内部スタッド部分を取外す即ちねじって外すレンチの概略図。 本発明の実施形態により、穴を損傷させずにねじ穴からキーリング・スタッド組立体を取外した概略図。

符号の説明

８ キーリング・スタッド組立体
１０ スタッド
１４ キーリング部分
１６ キー
１７ エキストラクタ工具
１８ 仮付け溶接部
２５ プーラ
２８ ナット
３０ レンチ
３２ ねじ穴

Claims (7)

1. キーリング部分（１４）及びスタッド（１０）を含むキーリング・スタッド組立体（８）をガスタービンエンジン構成部品のねじ穴から取外す方法であって、
   前記キーリング・スタッド組立体（８）のキーリング部分（１４）上に仮付け溶接部（１８）を形成する段階と、
   前記仮付け溶接部（１８）にエキストラクタ（１７）を溶接する段階と、
   前記仮付け溶接部（１８）に溶接したエキストラクタ（１７）にプーラ（２５）を取付ける段階と、
   前記スタッド（１０）をねじ穴内に残したままで、前記プーラ（２５）を引っ張ることによって前記キーリング部分（１４）を取外す段階と、
   前記スタッド（１０）に２つのナット（２８）を組付ける段階と、
   工具（３０）を使用して、前記ガスタービンエンジン構成部品のねじ穴を損傷させずに前記スタッド（１０）を取外す段階と、
   を含む方法。
2. 前記ガスタービンエンジン構成部品が、タービン後部フレームである、請求項１記載の方法。
3. 前記仮付け溶接部（１８）を形成するのに用いる溶加材が、前記構成部品と同一の材料である、請求項１記載の方法。
4. 前記エキストラクタ（１７）が、ボルト（２２）と前記ボルト内部に嵌合した細長いねじ付き部分と２つの脚部とを含み、前記脚部の端部が前記仮付け溶接部（１８）に溶接される、請求項１記載の方法。
5. 前記プーラ（２５）がロッド部分（２６）を含み、前記エキストラクタの細長いねじ付き部分が、前記プーラのロッド部分内部に嵌合する、請求項１記載の方法。
6. 前記仮付け溶接部（１８）が、前記キーリング部分（１４）のキー（１６）上の２点仮付け溶接部である、請求項１記載の方法。
7. 前記スタッド（１０）をねじって外すために、該スタッド（１０）に固定したナット（２８）にレンチ（３０）を取付ける段階を含む、請求項１記載の方法。

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