JP4552267B2 - モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電製品等に用いられる永久磁石を用いたモータの構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、永久磁石を用いたロータは、永久磁石を固定する手段として、次のような手段を用いていた。
(1)永久磁石内周とロータヨーク外周を接着剤で固定。
(2)永久磁石外周に、非磁性金属による管を嵌めることで固定。
【0003】
上記手段によると、(1)においては、高速回転における信頼性が低く、また、ロータヨークと永久磁石の間に接着剤の層ができるため、パーミアンスが低下し、効率が低下する。(2)においては、エアギャップが大きくなり、または、管に発生する渦電流によりモータ効率が低下していた。
【0004】
これらの課題を解決する一方法として、特許公開2000−78787号公報に示された電動機のロータがある。図11は、特許公開2000−78787号公報に示された電動機のロータの断面図である。永久磁石43と、ロータヨーク42と、出力伝達部44を連結し、これらを樹脂46、48により永久磁石43をロータヨーク42外周に固定し、かつ、ロータヨーク44と出力伝達部44を固定し、かつ、永久磁石43と出力軸45を絶縁している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような、特許公開2000−78787号公報に示された電動機のロータにおいては、樹脂の強度や、樹脂モールド成形後の樹脂収縮の面で課題がある。特にフェライトの焼結磁石を用いた場合、樹脂の収縮による永久磁石の割れが発生する場合がある。
【0006】
また、永久磁石の外周部に樹脂があるため、磁気的エアギャップが大きくなり、効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、十分な強度を持ち、成形後の樹脂収縮においても安定したモータを提供することができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、永久磁石の外周部はロータ回転中心に対して真円とせず、永久磁石の外周のロータ回転中心からの距離が、それぞれの永久磁石の円周方向中心付近で最大となり、円周方向端部において小さく、互いに隣接する永久磁石間に一定の隙間を設る。さらに、少なくとも、前記永久磁石の端部の外側と、互いに隣接する永久磁石間の隙間に樹脂を流しこみ、永久磁石をロータヨークに固定したものである。
【0009】
また、軸方向両端部にも樹脂を流しこみ、永久磁石の軸方向両端部のうち、互いに隣接する永久磁石間に、樹脂収縮緩和用穴または溝を設けた。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、ロータとステータを有するモータにおいて、前記ロータは複数の略円弧状の永久磁石を、鉄などの高透磁率材からなるロータヨークの表面に、樹脂モールドにより固定され、永久磁石の外周部はロータ回転中心に対して真円とせず、
永久磁石の外周のロータ回転中心からの距離が、それぞれの永久磁石の円周方向中心付近で最大となり、円周方向端部において小さく、
少なくとも、前記永久磁石の円周方向端部の外側と、軸方向両端部に樹脂を流しこみ、永久磁石をロータヨークに固定したロータであって、
永久磁石の軸方向両端部のうち、互いに隣接する永久磁石間に、樹脂収縮緩和用穴または溝を設けたことを特徴とするロータを用いたモータであって、非磁性絶縁物を介さず、永久磁石の磁束をロータヨークに直接伝達可能であるという作用を有し、また、樹脂モールド成形後、樹脂の収縮を緩和し、信頼性の高いモータを提供することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明は、ロータヨーク外周はロータ回転軸を中心とする円筒形であり、永久磁石の厚みを不均一とした、請求項1記載のモータであって、ロータヨークの加工が容易となり、ギャップ磁束密度を正弦波状とすることができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の発明は、永久磁石の厚みはほぼ均一であり、永久磁石外周の曲率半径がロータ回転中心から永久磁石外周までの距離よりちいさく、かつ、ヨーク外周を、永久磁石の内径形状にあわせて花びら状とした、請求項1記載のモータであって、磁石の加工が容易となり、ギャップ磁束密度を正弦波状とすることができる。
【0013】
本発明の請求項4に記載の発明は、ロータの外周側において、永久磁石の円周方向中心付近が樹脂で覆われていないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載のモータであって、エアギャップを小さくでき、効率の高いモータを提供することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図1から図10を用いて説明する。
【0021】
(実施例1)
図1は、本発明のモータに用いられるロータの斜視図である。図2は、本発明のモータに用いられるロータの、モールド前の分解斜視図である。図3は、本発明のモータに用いられるロータのA−A’断面図である。図4は、本発明のモータに用いられるロータのB−B’断面図である。図5は、本発明のモータに用いられるロータのC−O−D断面図である。図6は、本発明のモータに用いられるステータの平面図である。なお、渡り線、リード線等は便宜上省いてある。また、モールドしたステータの場合においても、モールド樹脂図は省略した。図7は、本発明のモータに用いられるステータのステータコアシートの打ちぬきパターンを示す図である。図8は,本発明のモータに用いられるステータのステータコアを展開した状態を示す図である。図9は、本発明のモータの平面図である。なお、ステータをモールドする場合においては、モールド直前の状態を示し、シャフトやベアリング、ブラケット、また、渡り線やリード線は省略した。
【0022】
鉄などの高透磁率材からなるロータヨーク12の表面に、8個の略円弧状の永久磁石11を配置している。永久磁石11の外周部はロータ回転中心に対して真円とせず、永久磁石の外周のロータ回転中心からの距離が、それぞれの永久磁石の円周方向中心付近で最大値Rmaxをとり、円周方向端部において最小値Rminをとる。
【0023】
互いに隣接する永久磁石間に一定の隙間Wを設ける。
【0024】
また、永久磁石11は、円周方向の中心部11cで厚く、円周方向の端部11eで薄くなっており、ロータヨーク12の外周部はロータの回転中心を中心とした円筒形である。すなわち、ステータ内部と永久磁石との磁気的エアギャップは、永久磁石11の円周方向中央部11cにおいて最も小さく、永久磁石11の円周方向両端部11eにおいて大きくなる。
【0025】
永久磁石11、ロータヨーク12、ボス13を樹脂15でモールドし、これらを固定している。
【0026】
本構成により、エアギャップの磁束密度が正弦波状となり、トルク脈動が小さく、振動や騒音を低減できる。
【0027】
ロータヨーク12の内周には、一定の距離をおいてシャフトと勘合し出力伝達部となるボス13が設けられている。ロータヨーク12の内側とボス13の外側には、わずかな距離をおいて互いに対向した3個の突起12t、13tが等間隔に設けられている。それぞれの突起の数3は、ロータ極数8とは互いに素である。
【0028】
本構成により、ロータヨーク12と出力軸との間が絶縁され、ロータヨークに発生した電流が出力軸に伝達せず、音の原因となるベアリングの電触等が発生しにくくなる。また、樹脂の強度は鉄に比べて弱いため、わずかな距離をもって互いに対向した突起12t、13tの存在により、半径方向の磁気吸引力や負荷の重力等による荷重に対して高い剛性を保つことが可能である。さらに、樹脂の収縮による芯ずれも防止できる。また、それぞれの突起の数3と、ロータ極数8とは互いに素であるため、モータ運転時にロータ極数個発生する振動モードの節と、前記突起により剛性が向上する部分とが完全に一致することがない。すなわち、8極の場合、磁気吸引力は1周当り4または8箇所、等間隔に強くなっているが、半径方向に対して剛性の強い部分を3個所等間隔に持ってるため、剛性の弱い部分と、磁気吸引力が大きくなる部分が、完全に一致することがなく、ステータの円環振動が発生しにくい。
【0029】
上記永久磁石の外周の形状は、エアギャップの磁束密度の空間分布を正弦波状に近づけるものであるため、騒音、振動を低減することができる。
【0030】
樹脂モールド成形する際は、永久磁石11、ロータヨーク12、ボス13を仮固定するが、永久磁石は、モールド成形後も樹脂の覆われない、円周方向の中心部11cを外側から押さえれば良い。
【0031】
モールドした樹脂は、永久磁石11の円周方向の端部11eの外側14a、互いに隣接する永久磁石11の間の隙間14b、永久磁石の軸方向両端部外側空間14c、場合によってはロータヨーク12の内周部に流れこみ、永久磁石11をロータヨーク12に固定する。この時、永久磁石11の円周方向中心付近の外側には樹脂でモールドせず、ロータ回転中心から永久磁石の円周方向中心付近が樹脂で覆われていない、すなわち、永久磁石の円周方向中心部の距離をRmaxとすると、半径Rmax未満の範囲のみ樹脂モールドするようにすれば、エアギャップを拡大することなく、モータ効率を低下させることがない。
【0032】
さらに、ロータヨーク12内周側とボス13外周側に設けられた突起部12t、13tと、対向した突起間の隙間14fを樹脂でモールドし、ロータヨーク12とボス13を絶縁している。
【0033】
ロータヨーク12とボス13の間のうち、突起のない部分のモールドの軸方向厚さLnが、突起部のモールドの厚さLt(突起部を含む)より小さい。こうすることにより、ロータの強度を確保しつつ、樹脂の使用量も低減できる。また、樹脂量低減は、突起のない部分に貫通孔を介設する(前記Lnに関係せず)、あるいは、突起のない部分を空間とすることでも実現することができる。
【0034】
永久磁石11、ロータヨーク12、ボス13を樹脂モールド成形した後、樹脂は収縮しようとし、永久磁石に応力を与える。そこで、応力を緩和する必要がある。そこで、永久磁石の軸方向両端部のうち、樹脂量の多い、互いに隣接する永久磁石間に、樹脂収縮緩和用穴16を設けている。樹脂収縮緩和用穴16は、生産性の観点から、軸方向に開けられており、永久磁石端部に達するまで、または、その手前までの深さの穴または溝である。
【0035】
さらに、永久磁石の軸方向両端部内側に施された樹脂モールドのうち、前記突起を半径方向に延長した部分に、樹脂収縮緩和用穴17を設けている。これは、ロータヨークの突起部12tの軸方向両端部を覆う樹脂が収縮した時、永久磁石11の軸方向両端部を内周側に力が働き、応力が集中しやすい。そこで、応力の集中しやすい部分付近に樹脂収縮緩和用穴17を設けている。特に、ロータヨーク12の軸方向長さが永久磁石11の軸方向長さより小さく、永久磁石11の軸方向の両端部において、ロータヨーク12に接触していない部分を有するとき、特に有効である。なお、必要に応じて、上記以外の穴18、19を適当に設けても良い。これらの穴16,17,18,19を設けることにより、モールド後の樹脂収縮による永久磁石の割れの発生率が約10分の1に減少した。
【0036】
上記構成において、ロータヨーク及びボスをパイプ状の材料から引抜き、あるいは鍛造等により成形した場合や、永久磁石の厚みが大きい場合等は、ステータコアは、ティース1個または複数個ごとに分割するとよい。
【0037】
図8に示すように、ティース1個ごとに分割しステータコアシートピース22を積層したステータコアピース23一直線状に接続し、巻線とコアとの間を絶縁し、線状に展開した状態で巻線25を施し、巻線後に環状にすれば、巻線性も良く、スロット占積率を大きくすることが可能である。また、ステータコアを、電磁鋼板を打ち抜いたステータコアシートを積層して成形する場合、図7に示すような打ち抜きパターンとすれば、材料取りが良く、スクラップを削減することができる。また、ステータコアには、交番磁束が発生するため、鉄損の小さい電磁鋼板を使用すると良いし、ロータヨークには、磁束の変化が小さいため、ステータコアよりも鉄損の大きい材料を使用することが可能である。
【0038】
なお、永久磁石の円周方向中心付近とは、前記円周方向中心の、ロータ回転中心からの距離を半径としロータ回転中心を中心とした円内に樹脂を成形する場合、樹脂の成形に十分な厚みを設けることのできない範囲である。
(実施例2)
図10は、本発明のモータに用いられる他のロータの横断面図を示す。
【0039】
永久磁石31の厚みはほぼ均一であり、永久磁石外周の曲率半径がロータ回転中心から永久磁石外周までの距離より小さく、従って、ロータ回転中心から永久磁石31の円周方向中央部31cまでの距離は、ロータ回転中心から永久磁石31の円周方向両端部31eまでの距離より大きくなっている。すなわち、ステータ内部と永久磁石との磁気的エアギャップは、永久磁石31の円周方向中央部31cにおいて最も小さく、永久磁石31の円周方向両端部31eにおいて大きくなる。
【0040】
かつ、ロータヨーク32外周を、永久磁石31の内径形状にあわせて花びら状とし、ロータ回転中心から永久磁石31の円周方向中央部31cと接する部分32cまでの距離が最も大きく、ロータ回転中心から永久磁石31の円周方向中央部31eと接する部分32eまでの距離が小さくなっている。
【0041】
その他の構成及び作用は、実施の形態1と同様であるので省略する。
【0042】
エアギャップが不均一であり、ギャップ磁束密度を正弦波状とすることができ、振動・騒音を低減することができる。また、永久磁石の厚みが均一であるため、減磁に対して、永久磁石のどの位置においても均一の耐力があり、永久磁石を必要にして最小限の厚みとすることが可能である。また、永久磁石の加工も容易である。
【0043】
なお、ロータの極数やロータヨークの形状、永久磁石の形状、ボスの形状、また、ステータのスロット数、巻線の方式等は、本発明の趣旨に応じて種種に変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0044】
【発明の効果】
上記説明より明らかなように、本発明の請求項1に記載の発明によれば、永久磁石を固定するために十分な強度を持ち、信頼性の高いモータを提供することができる。
【0045】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、樹脂モールド成形後、樹脂の収縮を緩和し、信頼性の高いモータを提供することができる。
【0046】
本発明の請求項2に記載の発明によれば、ロータヨークの加工が容易となり、ギャップ磁束密度を正弦波状とし、振動・騒音を低減することができる。
【0047】
本発明の請求項3に記載の発明によれば、磁石の加工が容易となり、ギャップ磁束密度を正弦波状ととし、振動・騒音を低減することができる。
【0048】
本発明の請求項4に記載の発明によれば、エアギャップを小さくでき、効率の高いモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のモータに用いられるロータの斜視図
【図2】本発明のモータに用いられるロータの、モールド前の分解斜視図
【図3】本発明のモータに用いられるロータのA−A’断面図
【図4】本発明のモータに用いられるロータのB−B’断面図
【図5】本発明のモータに用いられるロータのC−O−D断面図
【図6】本発明のモータに用いられるステータの平面図
【図7】本発明のモータに用いられるステータのステータコアシートの打ちぬきパターンを示す図
【図8】本発明のモータに用いられるステータのステータコアを展開した状態を示す図
【図9】本発明のモータの平面図
【図10】本発明のモータに用いられる他のロータの断面図
【図11】従来のロータの断面図
【符号の説明】
11 永久磁石
12 ロータヨーク
13 ボス
15 樹脂
16 樹脂収縮緩和用穴
17 樹脂収縮緩和用穴
22 ステータコアシートピース
23 ステータコアピース
Claims (4)
- ロータとステータを有するモータにおいて、前記ロータは複数の略円弧状の永久磁石を、鉄などの高透磁率材からなるロータヨークの表面に、樹脂モールドにより固定され、永久磁石の外周部はロータ回転中心に対して真円とせず、
永久磁石の外周のロータ回転中心からの距離が、それぞれの永久磁石の円周方向中心付近で最大となり、円周方向端部において小さく、
少なくとも、前記永久磁石の円周方向端部の外側と、軸方向両端部に樹脂を流しこみ、永久磁石をロータヨークに固定したロータであって、
永久磁石の軸方向両端部のうち、互いに隣接する永久磁石間に、樹脂収縮緩和用穴または溝を設けたことを特徴とするロータを用いたモータ。 - ロータヨーク外周はロータ回転軸を中心とする円筒形であり、永久磁石の厚みを不均一とした、請求項1記載のモータ。
- 永久磁石の厚みはほぼ均一であり、永久磁石外周の曲率半径がロータ回転中心から永久磁石外周までの距離より小さく、かつ、ヨーク外周を、永久磁石の内径形状にあわせて花びら状とした、請求項1記載のモータ。
- ロータの外周側において、永久磁石の円周方向中心付近が樹脂で覆われていないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載のモータ。
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