JP4547671B2 - 高飽和磁束密度低損失磁性合金ならびにそれを用いた磁性部品 - Google Patents

高飽和磁束密度低損失磁性合金ならびにそれを用いた磁性部品 Download PDF

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本発明は、大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、高周波用リアクトル、コモンモードチョークコイルや電磁シールドなどのノイズ対策部品、磁気シールド部材、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機用磁心や各種センサ部材等に用いられる温度特性が良好で特に高飽和磁束密度で低磁心損失を示す高飽和磁束密度低損失磁性合金およびそれを用いた高性能磁性部品に関する。
大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、高周波用リアクトル、コモンモードチョークコイルや電磁シールドなどのノイズ対策部品、磁気シールド部材、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機用磁心や各種センサ部材等に用いられる軟磁性材料としては、珪素鋼、フェライト、アモルファス合金やFe基ナノ結晶合金材料等が知られている。フェライト材料は飽和磁束密度が低く、温度特性が悪い問題があり、動作磁束密度が大きいハイパワーの用途にはフェライトが磁気的に飽和しやすく不向きである。珪素鋼板は、 材料が安価で磁束密度が高いが、高周波の用途に対しては磁心損失が大きいという問題がある。Fe基アモルファス合金は、磁歪が大きく応力により特性が劣化する問題や、可聴周波数帯の電流が重畳するような用途では騒音が大きいという問題がある。一方、Co基アモルファス合金は、飽和磁束密度が実用的な材料では1 T以下と低く、熱的に不安定である問題がある。このため、ハイパワーの用途に使用した場合、部品が大きくなる問題や経時変化のために磁心損失が増加する問題がある。
Fe基ナノ結晶合金は優れた軟磁気特性を示すため、コモンモ−ドチョ−クコイル、高周波トランス、パルストランス等の磁心に使用されている。代表的組成系は特公平4-4393号公報や特開平1-242755号公報に記載のFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−Si−B系合金やFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−B系合金等が知られている。これらのFe基ナノ結晶合金は、通常液相や気相から急冷し非晶質合金とした後、これを熱処理により微結晶化することにより作製されている。液相から急冷する方法としては単ロ−ル法、双ロ−ル法、遠心急冷法、回転液中紡糸法、アトマイズ法やキャビテーション法等が知られている。また、気相から急冷する方法としては、スパッタ法、蒸着法、イオンプレ−ティング法等が知られている。Fe基ナノ結晶合金はこれらの方法により作製した非晶質合金を微結晶化したもので、非晶質合金にみられるような熱的不安定性がほとんどなく、Fe系アモルファス合金と同程度の高い飽和磁束密度と低磁歪で優れた軟磁気特性を示すことが知られている。更にナノ結晶合金は経時変化が小さく、温度特性にも優れていることが知られている。
また、これらのFe基ナノ結晶合金にCoを添加することも検討されており、特開平9−20965号などに、良好なCo量比の範囲は0.2以下と記載されている。
特開平9−20965号公報((0019)、図1) 特開2004−218037号公報((0006),(0015),図3)
Fe基ナノ結晶軟磁性合金は従来の軟磁性材料に比べてほぼ同一の飽和磁束密度の材料で比較した場合、従来の軟磁性材料より透磁率が高く、磁心損失も低く軟磁気特性が優れている。しかし、代表的なナノ結晶軟磁性合金であるSi量の多いFeCuNbSiB系合金は飽和磁束密度が1.76 Tを超えるような材料で低磁心損失を実現することは困難である。また、Si量の多いFeCuNbSiB系合金にCoを添加しても飽和磁束密度の著しい上昇は認められない。また、Co基のナノ結晶合金としては、特開平3−249151に記載の合金が知られているが、高い磁束密度をこれらの合金において実現するのは困難である。
一方、FeZrB系やFeNbB系合金において1.76 Tを超える飽和磁束密度を示す材料はアモルファス形成能が低下してしまい、大量に材料を製造することは困難であり、熱処理を行っても低い磁心損失を実現するのは困難である。また、磁心損失が温度上昇に伴って急激に増加してしまい温度特性が悪いという欠点を有している。Coを添加すると温度特性が劣るという欠点は解消され、飽和磁束密度が高いという特徴は有しているものの、無磁界中で熱処理された合金は、Co無添加のFe基材料に比べると著しく磁心損失が大きい問題がある。このため、前述の各種磁性部品に使用するのは困難である。したがって、より高飽和磁束密度でかつ低磁心損失の材料の出現が強く望まれている。
このような欠点を解消できる材料として、特開2004−218037号公報に記載の合金が知られている。しかし、当該特許に開示されている合金の飽和磁束密度は1.76Tが最高であり、更なる高飽和磁束密度で低損失を示す合金が望まれていた。
上記問題点を解決するために本発明者らは鋭意検討の結果、Co量がある範囲にあり、Si量が一定量以下、かつB量が比較的多い、(Fe1−aCo100−y−c−z M’Siz(原子%)で表され、式中、M’はV,Ti,Zr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素、a,yおよびcはそれぞれ0.2<a<0.6、1≦y≦6、0<c≦2.5、7≦z≦15を満足し、かつ10≦y+c+z≦20を満足する組成であり、組織の一部または全部が粒径100nm以下の結晶粒からなる合金が、23℃における飽和磁束密度Bが1.76T超、120℃,100kHz,0.2Tにおける単位体積当たりの磁心損失Pcvが800kWm−3以下である特に高飽和磁束密度で低磁心損失特性を示し、温度特性にも優れた軟磁性合金が得られることを見出し本発明に想到した。

本発明合金は、前記組成の溶湯を単ロ−ル法等の超急冷法により急冷し、一旦アモルファス合金を作製後、これを加工し結晶化温度以上に昇温して熱処理を行い平均粒径100 nm以下の微結晶を形成することにより作製する。熱処理前のアモルファス合金は結晶相を含まない方が望ましいが一部に結晶相を含んでも良い。本合金に形成する結晶粒は粒径100nm以下の結晶粒であり、少なくとも一部または全部が体心立方構造の結晶粒である。
単ロール法などの超急冷法は活性な金属を含まない場合は大気中で行うことが可能であるが、活性な金属を含む場合はAr,Heなどの不活性ガス中あるいは減圧中で行う。また、窒素ガス、一酸化炭素あるいは二酸化炭素ガスを含む雰囲気で製造する場合もある。熱処理は通常はアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウム等の不活性ガス中あるいは真空中で行う。熱処理期間の少なくとも一部の期間合金が飽和するのに十分な強さの磁界を印加して磁界中熱処理を行い、誘導磁気異方性を付与する方がより磁心損失が低減するため望ましい結果が得られる。合金磁心の形状にも依存するが一般には薄帯の幅方向(巻磁心の場合は磁心の高さ方向)に8 kAm−1以上の磁界を印加する。印加する磁界は、直流、交流、繰り返しのパルス磁界のいずれを用いても良い。磁界は200℃以上の温度領域で通常20分以上印加する。昇温中、一定温度に保持中および冷却中も印加した方が、磁心損失が低くかつ角形比も小さくなり、より好ましい結果が得られる。角形比B ―1が10%以下に調整した場合に特に低い磁心損失が得られ、応用上も好ましい結果が得られる。磁界中熱処理を適用し、比較的大きな誘導磁気異方性を付与することにより、このような高飽和磁束密度合金においても優れた軟磁気特性を実現する。高飽和磁束密度組成においては比較的結晶粒径が大きくなるが、磁界中熱処理を行うと軟磁気特性の劣化を抑制することができる。これに対して、無磁界で熱処理し、磁界中熱処理を適用しない場合は、磁心損失が増加しやすい。
熱処理は通常露点が−30℃以下の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましく、露点が−60℃以下の不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うと、ばらつきが小さくより好ましい結果が得られる。熱処理の際の最高到達温度は結晶化温度以上であり、通常400℃から700℃の範囲である。一定温度に保持する熱処理パターンの場合は、一定温度での保持時間は通常は量産性の観点から24時間以下であり、好ましくは4時間以下である。熱処理の際の平均昇温速度は好ましくは0.1℃/minから200℃/min、より好ましくは0.1℃/minから100℃/min、平均冷却速度は好ましくは0.1℃/minから3000℃/min、より好ましくは0.1℃/minから100℃/minであり、この範囲で特に低磁心損失の合金が得られる。熱処理は1段ではなく多段の熱処理や複数回の熱処理を行うこともできる。更に、合金に直流、交流あるいはパルス電流を流して合金を発熱させ熱処理することもできる。
以上のようなプロセスを経て製造された本発明合金は、飽和磁束密度Bが1.76 Tを超え、120℃,100kHz, 0.2Tにおける単位体積当たりの磁心損失Pcvが800kW m-3以下の特性を実現することができる。
本発明において、Co量比aは0.2<a<0.6である必要がある。aが0.2以下では低損失な状態で1.76T以上の高い飽和磁束密度を得ることが困難なため好ましくなく、aが0.6以上では飽和磁束密度の低下や磁心損失の急激な増加が起こるため好ましくない。特に好ましいCo量比aの範囲は0.3≦a≦0.4である。この範囲で特に飽和磁束密度が1.8 T以上で室温よりも高い使用温度で低磁心損失の合金が得られるため実用上好ましい。
M’はアモルファス形成を促進する元素である。M’はV,Ti,Zr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素であり、M’量yは1≦y≦6である。yが1原子%未満では、磁心損失が著しく増加し好ましくない。yが6原子%を超えると飽和磁束密度の低下があり飽和磁束密度が1.76 Tを超えるのが困難となり好ましくない。さらに好ましい範囲は1.5≦y≦5である
Siは、必須の元素であり磁心損失を低減する効果を有するが、Si量cは、c≦2.5を満足する必要がある。これは、Si量cが2.5原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下を招くためである。特に好ましいSi量cは0.1≦c≦2である。この範囲で特に高い飽和磁束密度を維持しつつ、低い磁心損失を示す合金が得られる。Bは必須の元素であり、アモルファス形成を助ける効果がある。B量zは、7≦z≦15を満足する必要がある。B量zが7原子%未満では、1.76Tを超えるような飽和磁束密度を示す合金では、急冷時に完全にアモルファス化することが困難となり熱処理後に組織が不均一となり低磁心損失を実現するのが困難である。一方、B量zが15原子%を超えると、1.76 Tを超える飽和磁束密度を示す合金では、熱処理により結晶化すると結晶粒径が著しく増加してしまい、磁心損失が著しく増加するため好ましくない。特に望ましいB量zの範囲はz≧10である。この範囲で1.8T以上の高飽和磁束密度を示し低磁心損失の特性が得られる。M‘、Si、Bの総量y+c+zは、10≦y+c+z≦20を満足する必要がある。M‘、Si、Bの総量が10原子%未満では、急冷時にアモルファス化するのが困難となり、熱処理後の組織が不均一となるため、磁心損失が増加し好ましくなく、M‘、Si、Bの総量が20原子%を超えると飽和磁束密度が減少し1.76Tを超える飽和磁束密度を実現するのが困難となるため好ましくない。
Feの2原子%以下をCu、Auから選ばれた少なくとも一種の元素で置換した場合、Co量比aがa≦0.4の場合、著しく磁心損失を低減することが可能であり、好ましい結果が得られる。
Feの5原子%以下をNiで置換した場合、磁束密度の低下を抑えつつ、耐食性やリボン表面性状を向上することができる。
M’の一部をCr,Mn,Sn,Zn,In,Ag,Sc,白金属元素,Mg,Ca,Sr,Y,希土類元素,N,OおよびSから選ばれた少なくとも一種の元素で置換した場合、耐食性を改善する、低効率を高める、磁気特性を調整する等の効果が得られる。
Bの一部をC,Ge,Ga,AlおよびPから選ばれた少なくとも一種の元素で置換した場合、磁歪を調整する、結晶粒を微細化する等の効果が得られる。
平均粒径100nm以下の結晶粒の残部にアモルファス相が存在した方が高い抵抗率を実現でき、結晶粒が微細になり磁心損失も低減されるためより好ましい結果が得られる。この結晶粒は組織の30%以上の割合であることが望ましく、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。
本発明合金は必要に応じてSiO、MgO、Al等の粉末あるいは膜で合金薄帯表面を被覆する、化成処理により表面処理し絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成し層間絶縁を行う、ポリイミド系、エポキシ系、ポリアミド系、アクリル系などの有機系樹脂で表面に絶縁層を形成する等の処理を行うとより好ましい結果が得られる。これは特に層間を渡る高周波における渦電流の影響を低減し、高周波における磁心損失を改善する効果があるためである。この効果は表面状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された磁心に使用した場合に特に著しい。更に、本発明合金から磁心を作製する際に必要に応じて含浸やコーティング等を行うことも可能である。本発明合金は高周波の用途特にパルス状電流が流れるような応用に最も性能を発揮するが、センサや低周波の磁性部品の用途にも使用可能である。特に、磁気飽和が問題となる用途に優れた特性を発揮でき、ハイパワーのパワーエレクトロニクスの用途に特に適する。
使用時に磁化する方向とほぼ垂直な方向に磁界を印加しながら熱処理した本発明合金は、従来の高飽和磁束密度の材料よりも低い磁心損失が得られる。更に本発明合金は薄膜や粉末でも優れた特性を得ることができる。
前述の本発明合金中に形成する結晶粒は主にFeCoを主体とする体心立方構造(bcc)の結晶相であり、Si,B,Al,GeやZr等を固溶しても良い。また、規則格子を含んでも良く、a=0.5付近で規則格子が形成し易い。この付近の組成では規則化すると軟磁性が向上する。前記結晶相以外の残部は主にアモルファス相であるが、実質的に結晶相だけからなる合金も本発明に含まれる。CuやAuを含む合金の場合は、一部にCuやAuを含む面心立方構造の相(fcc相)も存在する場合がある。
また、アモルファス相が結晶粒の周囲に存在する場合、抵抗率が高くなり、結晶粒成長の抑制により、結晶粒が微細化されており軟磁気特性が改善されるためより好ましい結果が得られる。
本発明合金において化合物相が存在しない場合により低い磁心損失を示すが、軟磁気特性を劣化させない程度の化合物相を一部に含んでも良い。
もう一つの本発明は、前記温度特性に優れた高飽和磁束密度低損失磁性合金から構成されていることを特徴とする磁性部品である。前記本発明合金により磁性部品を構成することにより、アノードリアクトルなどの大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、磁気シールド、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機等に好適な高性能あるいは小型の磁性部品を実現することができる。
本発明によれば、大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機等に用いられる高飽和磁束密度で特に低い磁心損失を示す高飽和磁束密度低損失磁性合金およびそれを用いた高性能磁性部品を実現することができるため、その効果は著しいものがある。
以下本発明を実施例にしたがって説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(Fe0.75Co0.35bal.Cu0.9NbySi0.915-y(原子%)の合金溶湯を単ロ−ル法により急冷し、幅5mm厚さ21μmのアモルファス合金薄帯を得た。このアモルファス合金薄帯を外径19mm、内径15mmに巻回し、トロイダル磁心を作製した。
作製した磁心を窒素ガス雰囲気の熱処理炉に挿入し、図1に示す熱処理パタ−ンで熱処理を行った。熱処理の際、合金磁心の磁路と垂直方向(合金薄帯の幅方向)、すなわち磁心の高さ方向に240 kAm−1の磁界を印加した。図2に熱処理後の合金の自由凝固面のX線回折パターンを示す。X線回折パターンからは体心立方構造の相を示す結晶ピークが認められた。 図3に透過電子顕微鏡TEMにより観察したミクロ組織を示す。結晶粒径はNb量yが少なくなるに伴い増加しているが、100nm以下の結晶粒径である。次に、これらの合金磁心の直流B−Hループ、100kHz、0.2Tにおける単位体積当たりの磁心損失Pcvを測定した。図4に23℃における飽和磁束密度B、角形比B/B、保磁力H、1kHzにおける交流比初透磁率μ、120℃、100kHz、0.2Tにおける磁心損失Pcvを示す。また図5に(Fe0.75Co0.35bal.Cu0.9NbSi0.913合金の23℃における直流B−Hループを示す。
Nb量yが本発明範囲内である6原子%以下において1.76Tを超える高い飽和磁束密度Bsが得られ、Nb量yが1原子%未満では、磁心損失が800 kWm-3を超えてしまい低い磁心損失が得られないことが分る。図5から本発明合金は1.86Tという高飽和磁束密度でありながら、非常に直線性の良いヒステリシスの小さいB-Hループを実現できることが分る。このため各種チョークコイル、トランスの小型に寄与できる。
(実施例2)
表1に示す組成の合金溶湯をAr雰囲気中で単ロ−ル法により急冷し、幅5mm厚さ21μmのアモルファス合金薄帯を得た。このアモルファス合金薄帯を外径19mm、内径15mmに巻回し、トロイダル磁心を作製した。この合金磁心を実施例1と同様な熱処理パタ−ンで熱処理し磁気測定を行った。熱処理後の合金の組織中にはアモルファス母相中に粒径100nm以下の極微細な結晶粒が形成していた。主相はFeとCoを主に含むbcc相で、CuやAuを含む場合、X線では明確ではなく表には示していないが電子顕微鏡による電子線回折の結果CuやAuを含む粒径が10nm以下のfcc相も僅かに形成していることが確認された。表1に23゜Cにおける飽和磁束密度B、角形比B/B、120℃, 100kHz,0.2Tにおける単位体積当たりの磁心損失Pcvを示す。比較のため本発明組成外の合金の磁気特性も示す。角形比B/Bが10%以下の本発明合金は、特に低い磁心損失Pcvを示す。これに対して、本発明外の飽和磁束密度が1.76Tを超える合金は、本発明合金よりもPcvが大きく、高飽和磁束密度材料ではあるが磁心損失が大きく、本発明外の低磁心損失の合金はBsが1.76T以下と低く、本発明合金は1.76Tを超える高飽和磁束密度でありながら低磁心損失を示し優れた特性を示す。
(実施例3)
(Fe0.72Co0.38bal.Cu1.1Nb2.5Si1.112.5(原子%)の合金溶湯を単ロ−ル法により急冷し、幅20mm厚さ20.5μmのアモルファス合金薄帯を得た。このアモルファス合金薄帯を巻回し、トロイダル磁心を作製した。
作製した磁心を窒素ガス雰囲気の熱処理炉に挿入し、図1に示す熱処理パタ−ンで熱処理を行った。熱処理の際、合金磁心の磁路と垂直方向(合金薄帯の幅方向)、すなわち磁心の高さ方向に240kAm−1の磁界を印加した。熱処理後の合金は結晶化しており、電子顕微鏡観察の結果組織のほとんどが粒径50 nm程度の微細な体心立方構造の結晶粒からなっており、結晶粒の割合は65%程度と見積もられた。結晶相のほとんどは体心立方構造であった。残部のマトリックスは主にアモルファス相であった。23゜Cにおける飽和磁束密度Bは1.84T、120℃、20kHz、0.2Tにおける単位体積当たりの磁心損失Pcvは610 kW m−3であった。この磁心をエポキシ樹脂で含浸し、一部を切断し0.5mmのギャップを形成した。次にフォルマル線を巻きチョークコイルを作製し、10kHzの周波数において直流重畳特性を測定した断面積は1cm2、平均直径は3cm、巻数は20ターンとした。図6に23゜Cにおける直流重畳特性を示す。比較のために従来の材料を用いたチョークコイルの結果も示す。本発明合金を用いたチョークコイルの直流重畳特性は従来のチョークよりも優れており、より大電流まで高いインダクタンスを示し優れていることが分る。
本発明に係わる熱処理パタ−ンの一例を示した図である。 本発明に係わる合金の熱処理後の自由凝固面のX線回折パターンの一例を示した図である。 本発明に係わる合金の熱処理後の透過電子顕微鏡TEMにより観察したミクロ組織を示した図である。 本発明に係わる合金の飽和磁束密度B、角形比B/B、保磁力H、1kHzにおける交流比初透磁率μ、120℃、100kHz、0.2Tにおける磁心損失Pcvを示した図である。 本発明合金の直流B−Hループの一例を示した図である。 本発明合金および従来材料を用いたチョークコイルの直流重畳特性の一例を示した図である。

Claims (12)

  1. (Fe1−aCo100−y−c−z M’Siz(原子%)で表され、式中、M’はV,Ti,Zr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWから選ばれた少なくとも一種の元素、a,yおよびcはそれぞれ0.2<a<0.6、1≦y≦6、0<c≦2.5、7≦z≦15を満足し、かつ10≦y+c+z≦20を満足する組成であり、組織の一部または全部が粒径100nm以下の結晶粒からなり、23℃における飽和磁束密度Bが1.76T超、120℃,100kHz,0.2Tにおける単位体積当たりの磁心損失P が800kWm−3以下であることを特徴とする高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  2. 23℃における飽和磁束密度Bが1.80T以上であることを特徴とする請求項1に記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  3. 磁界中で熱処理されており、角形比B
    -1が10%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  4. z≧10であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  5. 0.1≦c≦2であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  6. アモルファス相が一部に存在することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  7. 粒径100nm以下の結晶粒の少なくとも一部または全部が体心立方構造の結晶粒であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  8. 0.3≦a≦0.4であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  9. Feの2原子%以下をCu、Auから選ばれた少なくとも一種の元素で置換したことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  10. Feの5原子%以下をNiで置換したことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  11. M’の一部をCr,Mn,Sn,Zn,In,Ag,Sc,白金属元素,Mg,Ca,Sr,Y,希土類元素,N,OおよびSから選ばれた少なくとも一種の元素で置換したことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金。
  12. 請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の高飽和磁束密度低損失磁性合金から構成されていることを特徴とする磁性部品。
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