以下、添付図面を参照しながら本発明による半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子アレイの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明による半導体レーザ素子アレイの第1実施形態の構成を示す概略斜視図である。図1を参照すると、半導体レーザ素子アレイ1は、複数の半導体レーザ素子3が一体に形成されてなる。半導体レーザ素子アレイ1が備える半導体レーザ素子3の数は幾つでもよく、一つのみ備える場合はアレイではなく単体の半導体レーザ素子となる。半導体レーザ素子アレイ1は、所定の軸Aと交差する方向に並んで設けられ、互いに対向する光出射面1a及び光反射面1bを有している。光出射面1a上には、複数の半導体レーザ素子3それぞれのレーザ光出射端4eが水平方向に並んで配置されている。レーザ光出射端4eからは、所定の軸Aの方向にレーザ光が出射される。
複数の半導体レーザ素子3のそれぞれは、リッジ状に成形された凸部25を有している。凸部25は、第1の部分25a及び第2の部分25bからなる。第1の部分25aの一端は光出射面1aに達しており、第1の部分25aの他端は第2の部分25bの一端と繋がっている。第2の部分25aの他端は、光反射面1bに達している。第1の部分25a及び第2の部分25bは、その長手方向が光出射面1a及び光反射面1bに対して斜めになるように設けられている。また、第1の部分25a及び第2の部分25bのそれぞれの長手方向は、所定の軸Aの方向に対する傾斜方向が互いに逆となっている。そして、第1の部分25a及び第2の部分25bは、互いの長手方向が交差するように繋がっている。半導体レーザ素子3には、凸部25に対応して屈折率型の導波路が生成される。レーザ光出射端4eは、この導波路の光出射面1a側の端面である。複数の半導体レーザ素子3は、所定の軸Aの方向と交差する方向に並んで配置されて一体に形成されている。
図2は、図1に示した半導体レーザ素子アレイ1のI−I断面を示す拡大断面図である。図2を参照すると、半導体レーザ素子アレイ1を構成する半導体レーザ素子3は、基板11を備える。また、半導体レーザ素子3は、第2導電型半導体層であるn型クラッド層12、第2光ガイド層13、量子井戸構造を有する活性層14、第1光ガイド層15、並びに第1導電型半導体層であるp型クラッド層16を備える。n型クラッド層12、第2光ガイド層13、活性層14、第1光ガイド層15、及びp型クラッド層16は、基板11上に順に積層されている。このうち、p型クラッド層16及び第1光ガイド層15は第1の半導体部31を構成しており、基板11、n型クラッド層12、及び第2光ガイド層13は第2の半導体部32を構成している。
第1の半導体部31には、リッジ部9が設けられている。リッジ部9の外側の層には、p型クラッド層16と電気的に接続されるp型キャップ層17が設けられている。リッジ部9は、基板11の光出射面1a側の面上に設けられた第1の部分9aと、基板11の光反射面1b側の面上に設けられた第2の部分9bとを有している。凸部25の第1の部分25aは、リッジ部9の第1の部分9aとp型キャップ層17とにより構成される。凸部25の第2の部分25bは、リッジ部9の第2の部分9bとp型キャップ層17とにより構成される。リッジ部9の両側には、リッジ部9の両側面に隣接して薄厚部10が形成されている。薄厚部10は、第1の半導体部31がエッチングされることにより形成された比較的薄い部分である。
p型キャップ層17よりも更に外側の層には外部からの電流を注入するp側電極層19が設けられている。p型キャップ層17とp側電極層19との間には絶縁層18が設けられており、絶縁層18は凸部25上の部分に開口部18aを有している。p側電極層19は開口部18aにおいてp型キャップ層17にのみ電気的に接触するようになっているので、外部からの電流注入はp型キャップ層17にのみ限定してなされる。また、基板11の各半導体層と反対側の面上にはn側電極層20が形成されている。なお、基板11の半導体材料としては、例えばn型GaAsが用いられる。また、基板11上に積層される各層の材料としては、例えば表1に示す組み合わせ1〜3が好適である。
基板11上に積層される各層の具体的な材料組成としては、例えば表2に示す組成を挙げることができる。また、各層の好適な厚さを表2にあわせて示す。
また、p型キャップ層17は、例えばp−GaAsからなる。p側電極層19は、例えばTi/Pt/Auからなる。n側電極層20は、例えばAuGe/Auからなる。絶縁層18は、例えばSiN、SiO2、Al2O3のうち少なくとも一種類の材料からなる。
p型キャップ層17に電流が注入されると、凸部25の第1の部分25a及び第2の部分25bに対応する活性層14の領域(換言すれば、リッジ部9に対応する領域)が活性領域となる。このとき、活性層14には実効的な屈折率差が生じるため、リッジ部9の第1の部分9aに対応する活性層14内に屈折率型の導波路4(4a)が生成され、リッジ部9の第2の部分9bに対応する活性層14内に屈折率型の導波路4(4b)が生成される。
ここで、図3及び図4を参照して第1の半導体部31について説明する。図3は第1の半導体部31を含む積層体8の斜視図、図4(a)は積層体8の平面図、図4(b)は図4(a)に示した積層体8のII−II断面及びIII−III断面を示す断面図である。積層体8は、n型クラッド層12、第2光ガイド層13、活性層14、第1光ガイド層15、並びにp型クラッド層16からなる。
第1の半導体部31には、光出射面1a及び光反射面1bに達する凸状のリッジ部9が設けられている。リッジ部9は第1の部分9a及び第2の部分9bからなる。リッジ部9の第1の部分9aの一端は光出射面1aに達しており、第1の部分9aの他端は第2の部分9bの一端と繋がっている。第2の部分9bの他端は、光反射面1bに達している。また、第1の半導体部31は、リッジ部9に沿った薄厚部10を有する。先に述べたように、薄厚部10は第1の半導体部31がエッチングされることにより形成される。
リッジ部9の第1の部分9aは、端面9eと、互いに対向する一対の側面9g及び9hとを有している。一対の側面9g及び9hは、それぞれリッジ部9の第1の部分9aの領域を規定しており、第1の部分9aと薄厚部10との境界となっている。端面9eは、光出射面1a上にある。側面9gは端面9eの一端からリッジ部9の第2の部分9bまで延び、側面9hは端面9eの他の一端からリッジ部9の第2の部分9bまで延びている。側面9g及び9hは、厚さ方向から見た平面図において、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θを有するように設けられている。
リッジ部9の第2の部分9bは、端面9fと、互いに対向する一対の側面9i及び9jとを有している。一対の側面9i及び9jは、それぞれリッジ部9の第2の部分9bの領域を規定しており、第2の部分9bと薄厚部10との境界となっている。端面9fは、光反射面1b上にある。側面9iは端面9fの一端から第1の部分9aの側面9gまで延び、側面9jは端面9fの他の一端から第1の部分9aの側面9hまで延びている。側面9i及び9jは、厚さ方向から見た平面図において、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θを有するように設けられている。また、側面9i及び9jは、厚さ方向から見た平面図において、所定の軸Aの方向に対して側面9g及び9hとは逆の方向に傾斜している。具体的には、リッジ部9をp型キャップ層17側(図2参照)から見た場合に、光出射面1aに対する側面9g及び9hの相対角度が時計方向にθであるのに対し、光出射面1aに対する側面9i及び9jの相対角度は反時計方向にθとなっている。
活性層14にはリッジ部9の形状に対応した導波路4が生成される。ここで、図5は、活性層14内に生成される導波路4の平面図である。導波路4は、リッジ部9への電流注入により生じる活性層14内部での実効的な屈折率分布によって形成される屈折率型導波路である。本実施形態では、活性層14にはリッジ部9の第1の部分9a及び第2の部分9bにそれぞれ対応して導波路4の第1の部分4a及び第2の部分4bが生成される。導波路4の第1の部分4aには、リッジ部9の端面9eに対応してレーザ光出射端4eが生成される。また、導波路4の第1の部分4aには、リッジ部9の側面9g、9hそれぞれに対応して一対の側面4g、4hが生成される。導波路4の第2の部分4bには、リッジ部9の端面9fに対応してレーザ光反射端4fが生成される。また、導波路4の第2の部分4bには、リッジ部9の側面9i、9jそれぞれに対応して一対の側面4i、4jが生成される。レーザ光出射端4e及びレーザ光反射端4fは、活性層14のへき開面の一部であり、レーザ光Lに対する共振面として機能する。また、側面4g〜4jは、導波路4内外の屈折率差によって生じる面であり、屈折率が連続的に変化している場合にはそれぞれが或る一定の厚さを有してもよい。側面4g〜4jは、導波路4内で発生したレーザ光Lを当該側面への入射角に応じて選択的に透過又は反射させる反射面として機能する。
側面4iの一端はレーザ光反射端4fの一端に接しており、側面4jの一端はレーザ光反射端4fの他端に接している。側面4iの他端は側面4gの一端に繋がっており、側面4jの他端は側面4hの一端に繋がっている。側面4gの他端はレーザ光出射端4eの一端に接しており、側面4hの他端はレーザ光出射端4eの他端に接している。側面4g〜4jと光出射面1a及び光反射面1bとは、互いに相対角度θをなしている。換言すれば、側面4g〜4jは、それぞれ所定の軸方向Aと角度約π−θで交差している。側面4gと側面4iとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっており、側面4hと側面4jとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっている。
導波路4の第1の部分4aにおける側面4g及び4hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ(すなわち、リッジ部9の第1の部分9aにおける側面9g及び9hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ)は、導波路4の第1の部分4aの側面4g、4hにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。同様に、導波路4の第2の部分4bにおける側面4i及び4jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ(すなわち、リッジ部9の第2の部分9bにおける側面9i及び9jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θ)は、導波路4の第2の部分4bの側面4i、4jにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。ここで、導波路4の側面における全反射臨界角θcは、屈折率型導波路である導波路4の内外の実効的な屈折率差によって規定される全反射臨界角である。全反射臨界角θcは、第1の半導体部31の薄厚部10の厚さに依存する。
また、第1の部分4aにおける側面4g及び4hと第2の部分4bにおける側面4i及び4jとは、所定の軸Aの方向に対する傾斜方向が互いに逆となっている。このため、厚さ方向から見た平面図において、導波路4はV字形状を呈している。具体的には、導波路4を第1の半導体部31側から見た場合に、前述したリッジ部9の平面形状に対応して、光出射面1aに対する側面4g及び4hの相対角度は時計方向にθとなっており、光出射面1aに対する側面4i及び4jの相対角度は反時計方向にθとなっている。
相対角度θが全反射臨界角θcに基づいて決定されることにより、導波路4の一対の側面4g及び4h、並びに一対の側面4i及び4jが、光出射面1a側または光反射面1b側から所定の軸Aの方向に沿って入射するレーザ光Lを全反射させる。なお、本実施形態では第1の部分4aの側面4g及び4hと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度、及び第2の部分4bの側面4i及び4jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度を同じ角度θとしているが、相対角度は互いに異なっても良い。その場合、第1の部分4aの側面4g及び4hの全反射臨界角と、第2の部分4bの側面4i及び4jの全反射臨界角とが互いに異なる。そして、側面4g〜4jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度は、側面4g〜4jにおける全反射臨界角に基づいて個別に決定される。なお、側面4g〜4jにおける全反射臨界角は、例えば薄厚部10の厚さを調整するなどの方法によって任意の値に設定することができる。
図5に示すように、レーザ光反射端4fにおいて所定の軸Aの方向に沿って略垂直に反射したレーザ光Lは、第2の部分4bの側面4jに入射角θで入射し、全反射する。そして、レーザ光Lは側面4iに入射角θで入射し、全反射する。側面4iにおいて反射したレーザ光Lは第1の部分4aの側面4gに入射角θで入射し、全反射する。そして、レーザ光Lは側面4hに入射角θで入射し、全反射する。こうして、側面4g〜4jで全反射したレーザ光Lは所定の軸Aの方向に沿って進み、レーザ光出射端4eに達する。レーザ光出射端4eに達したレーザ光Lの一部は、レーザ光出射端4eを透過して外部へ出射される。また、他のレーザ光Lはレーザ光出射端4eにおいて所定の軸Aの方向に沿って略垂直に反射し、再び側面4g〜4jで全反射してレーザ光反射端4fに戻る。このようにして、導波路4内のレーザ光Lは、レーザ光出射端4eとレーザ光反射端4fとの間を往復し、共振することとなる。
なお、導波路4の第1の部分4aの長さ及び側面4g及び4h同士の間隔は、レーザ光出射端4eとレーザ光反射端4fとの間で共振するレーザ光Lが、第1の部分4aの一対の側面4g及び4hのそれぞれにおいて同じ回数反射するように設けられる。同様に、導波路4の第2の部分4bの長さ及び側面4i及び4j同士の間隔は、レーザ光出射端4eとレーザ光反射端4fとの間で共振するレーザ光Lが、第2の部分4bの一対の側面4i及び4jのそれぞれにおいて同じ回数反射するように設けられる。
ここで、レーザ光Lが前述した光路に限定されるしくみについて説明する。図6は、側面4hに様々な入射角θiで入射する光L1〜L3について説明するための図である。なお、図6において、側面4hを側面4gに置き換えても同様の作用が得られる。また、側面4hを側面4iまたは4jに、レーザ光出射端4eをレーザ光反射端4fにそれぞれ置き換えても、同様の作用が得られる。
図6を参照すると、側面4hに角度θ(≧θc)と等しい入射角θiで入射したレーザ光L1は、側面4hにおいて全反射し、レーザ光出射端4eに対し所定の軸Aの方向に沿って垂直に入射する。そして、レーザ光L1は、レーザ光出射端4eにおいて反射したのち、同一の光路を辿って戻る。従って、レーザ光L1は同一光路上を共振することとなる。
これに対し、側面4hに角度θよりも小さな入射角θi=θ−Δθで入射したレーザ光L2は、θ−Δθが全反射臨界角θcよりも小さいと、側面4hを透過することとなり、共振しない。また、側面4hに角度θよりも大きな入射角θi=θ+Δθで入射したレーザ光L3は、入射角θiが全反射臨界角θcよりも大きいために側面4hにおいて全反射するが、レーザ光出射端4eにおいて反射した後、再度側面4hに入射する際に入射角θiがθi=θ−Δθとなる。θ−Δθの値が全反射臨界角θcよりも小さいと、レーザ光L3も、結局側面4hを透過することとなり、共振しない。このように、導波路4においては、Δθがθ−Δθ≧θcを満たす場合に、入射角θi(θ+Δθ≧θi≧θ−Δθ)で側面4h〜4jに入射するレーザ光Lのみが選択的に共振することとなる。
相対角度θが全反射臨界角θcとほぼ一致していれば、上述したΔθをほぼゼロにできるのでレーザ光Lの角度成分を極めて狭い範囲に制限できる。しかし、実際には素子の温度変化による全反射臨界角θcの変化などを考慮する必要がある。相対角度θが全反射臨界角θcより大きい範囲で全反射臨界角θcに近ければ、レーザ光Lの角度成分を或る程度制限することができる。ここで、図7は、相対角度θの大きさが許容される範囲を説明するためのグラフである。図7において、横軸は相対角度θの大きさであり、縦軸は側面4g〜4jへのレーザ光Lの入射角θiと相対角度θとの差θi−θである。なお、ここでは、側面4g〜4jにおける全反射臨界角θcを86°と仮定して説明する。
図7を参照すると、座標(θ,θi−θ)=(86,0)、(90,0)、(90,4)で囲まれる領域Bが図示されている。この領域Bは、レーザ光Lがレーザ光出射端4eとレーザ光反射端4fとの間で共振することができる範囲を示している。例えば、相対角度θが89°のとき、0°≦θi−θ≦3°、すなわち入射角θiが86°以上89°以下のレーザ光Lであれば、側面4g〜4jにおいて全反射臨界角θc(=86°)を超えることなく共振することができる。しかしながら、相対角度θが全反射臨界角θcよりも過大であると、導波路4内でのレーザ光Lの空間モード数が増大してしまう。従って、例えば相対角度θを86°≦θ≦87°(すなわち、θc≦θ≦θc+1°)とすることにより、0°≦θi−θ≦1°、つまり入射角θiを86°以上87°以下に制限することができ、レーザ光Lの角度成分を実用上有効な程度に制限することができる。
ここで、半導体レーザ素子アレイ1の製造方法について図8(a)〜図8(d)を参照しながら説明する。図8(a)〜図8(d)は、各製造工程における半導体レーザ素子アレイ1の拡大断面図を示している。まず、n型GaAsの基板11を準備し、基板11上に順に、n型Al0.35Ga0.65Asを1.2μm、ノンドープAl0.15Ga0.85Asを0.4μm、In0.2GaAs量子井戸構造を80Å、ノンドープAl0.15Ga0.85Asを0.4μm、p型Al0.35Ga0.65Asを1.2μm、p型GaAsを0.1μmエピタキシャル成長させ、それぞれn型クラッド層12、第2光ガイド層13、活性層14、第1光ガイド層15、p型クラッド層16、及びp型キャップ層17を形成する(図8(a)参照)。
続いて、p型キャップ層17側にフォトワークによりリッジ部9に対応する形状に保護マスク37を形成し、p型キャップ層17、p型クラッド層16、及び第1光ガイド層15をエッチングすることにより、リッジ部9を含む第1の半導体部31を形成する。このとき、エッチングを活性層14に達しない深さで停止することにより、薄厚部10を形成する(図8(b)参照)。
続いて、SiN膜といった絶縁材料を結晶表面全体に堆積し、フォトワークによりリッジ部9に対応する位置のSiN膜を除去し、絶縁層18を形成する(図8(c)参照)。続いて、Ti/Pt/Au膜でp側電極層19を結晶表面全体に形成する。また、基板11側の表面の研磨、化学処理を行い、AuGe/Auによりn側電極層20を形成する(図8(d)参照)。こうして、半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)が完成する。
本実施形態の半導体レーザ素子3による効果を説明する。先に述べたように、半導体レーザ素子3においては、導波路4の側面4g〜4jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θが、側面4g〜4jにおける全反射臨界角θcに基づいて決定されている。これにより、導波路4内でのレーザ発振に関わる光の角度成分が制限されるので、導波光の位相が揃って、単一モードか或いは単一モードに近い発振が生じる。従って、本実施形態の半導体レーザ素子3によれば、シングルモード型のように導波路の幅が制限されないので、導波路幅を拡張することによりレーザ光Lの水平方向の出射角をより狭くできるとともに、より高い強度のレーザ光を出射することが可能となる。
また、本実施形態による半導体レーザ素子3では、所定の軸Aの方向に対する導波路4の第1の部分4aの側面4g、4hの傾斜方向と、所定の軸Aの方向に対する第2の部分4bの側面4i、4jの傾斜方向とが、互いに逆となっている。本発明者らは、このように所定の軸Aの方向に対する側面4g、4hの傾斜方向と側面4i、4jの傾斜方向とが互いに逆であることにより、半導体レーザ素子3の遠視野像におけるサブピークが低減されることを見出した。
図9(a)は、本実施形態による半導体レーザ素子3の一実施例における遠視野像(レーザ光強度プロファイル)を示すグラフである。なお、図9(a)では、半導体レーザ素子アレイ1のレーザ光強度が30W、50W、及び80Wである場合について、半導体レーザ素子3の遠視野像を示している。また、図9(a)の縦軸はレーザ光強度を規格化した値を示し、横軸は所定の軸Aの方向を0°とする放射角を示している。本実施例においては、導波路4の側面4g〜4jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θを86°とし、導波路4の幅を30μmとし、光出射面1aと光反射面1bとの間隔(共振器長)を1800μmとした。
また、図9(b)は、比較のため、所定の軸方向に対して導波路が一方向にのみ傾斜している場合の半導体レーザ素子の遠視野像を示すグラフである。なお、図9(b)では、半導体レーザ素子アレイの駆動電流が20A、40A、及び60Aである場合について、半導体レーザ素子の遠視野像を示している。また、図9(b)の縦軸はレーザ光強度を規格化した値を示し、横軸は所定の軸方向を0°とする放射角を示している。この半導体レーザ素子においては、導波路の側面と光出射面及び光反射面との相対角度を86°とし、導波路幅を40μmとし、光出射面と光反射面との間隔(共振器長)を1200μmとした。
図9(b)を参照すると、所定の軸方向に対して導波路が一方向にのみ傾斜している半導体レーザ素子では、所定の軸方向(0°)に対して−20°〜−30°逸れた放射角付近に無視できないサブピークが発生していることがわかる。このサブピークの発生によって、半導体レーザ素子において発生したレーザ光の利用効率が低下してしまう。また、このサブピークに含まれるレーザ光成分が、半導体レーザ素子アレイにおける他の半導体レーザ素子からのレーザ光と干渉してしまう。このようなサブピークは、導波路の長手方向に沿った発振モード(すなわち、導波路側面において全く反射しないか、或いは片側の側面でのみ反射するような発振モード)が存在するためと考えられる。
これに対し、本実施形態の半導体レーザ素子3によれば、図9(a)に示すように遠視野像におけるサブピークが効果的に抑えられている。これは、所定の軸Aの方向に対する側面4g、4hの傾斜方向と側面4i、4jの傾斜方向とが互いに逆であることによって、導波路側面において全く反射しないか、或いは片側の側面でのみ反射するような発振モードが抑制されたためと考えられる。このように、本実施形態の半導体レーザ素子3によれば、遠視野像におけるサブピークを低減することができる。
また、本実施形態による半導体レーザ素子3では、光出射面1aと光反射面1bとの間で導波路4内を共振するレーザ光L1が、一対の側面4g及び4h(或いは4i及び4j)のそれぞれにおいて同じ回数反射するように、第1の部分4a及び第2の部分4bそれぞれの長さ及び側面間隔が設定されることが好ましい。これにより、レーザ光Lは光出射面1a及び光反射面1bの双方において所定の軸Aの方向に沿って略垂直に入射/反射することができる。また、レーザ光Lが導波路4の側面4g〜4jにおいて少なくとも1回ずつ全反射するので、導波路4内において光出射面1aと光反射面1bとを直線で結ぶような光路は存在しない。従って、本実施形態の半導体レーザ素子3によれば、導波路4内のレーザ光Lの光路を好適に制限することができる。
また、本実施形態による半導体レーザ素子アレイ1によれば、上記効果を有する半導体レーザ素子3を複数備えることによって、大きな強度のレーザ光を出射することができるとともに、各半導体レーザ素子3の遠視野像におけるサブピークを低減することができる。
さらに、本実施形態による半導体レーザ素子アレイ1は、次の効果を有する。すなわち、半導体レーザ素子アレイ1では、第1の半導体部31のリッジ部9によって、活性層14に対して電流が部分的に集中して注入される。これにより、隣り合う半導体レーザ素子3の導波路4同士での光の結合や干渉が生じにくくなる。従って、導波路4同士の間隔を比較的狭くすることが可能になるので、導波路4をより多く設けることができ、大出力で安定したレーザ光を出射することができる。さらに、活性層14に対して電流が部分的に集中して注入されることにより、電気・光変換効率が高まり、無効電流を低減できるので、半導体レーザ素子3の熱発生を低減できる。従って、半導体レーザ素子アレイ1の信頼性が高まり、長寿命化を実現できる。
(第1の変形例)
次に、上記実施形態による半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)の第1の変形例について説明する。図10は、本変形例による半導体レーザ素子が有する導波路41を示す平面図である。導波路41は、第1の部分41a及び41cと、第2の部分41b及び41dとを有する。第1の部分41aは、互いに対向する一対の側面41g及び41hを有する。第1の部分41aの一端はレーザ光出射端41eとなっており、他端は第2の部分41bの一端と繋がっている。第2の部分41bは、互いに対向する一対の側面41i及び41jを有する。第2の部分41bの他端は第1の部分41cの一端と繋がっている。第1の部分41cは、互いに対向する一対の側面41k及び41lを有する。第1の部分41cの他端は、第2の部分41dの一端と繋がっている。第2の部分41dは、互いに対向する一対の側面41m及び41nを有する。第2の部分41dの他端は、レーザ光反射端41fとなっている。
側面41mの一端はレーザ光反射端41fの一端に接しており、側面41nの一端はレーザ光反射端41fの他端に接している。側面41mの他端は側面41kの一端に繋がっており、側面41nの他端は側面41lの一端に繋がっている。側面41kの他端は側面41iの一端に繋がっており、側面41lの他端は側面41jの一端に繋がっている。側面41iの他端は側面41gの一端に繋がっており、側面41jの他端は側面41hの一端に繋がっている。側面41gの他端はレーザ光出射端41eの一端に接しており、側面41hの他端はレーザ光出射端41eの他端に接している。側面41g〜41nは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θを有する。換言すれば、側面41g〜41nは、それぞれ所定の軸方向Aと角度約π−θで交差している。側面41mと側面41kとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっており、側面41nと側面41lとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっている。側面41kと側面41iとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっており、側面41lと側面41jとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっている。側面41iと側面41gとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっており、側面41jと側面41hとは互いに角度2(π−θ)をなして繋がっている。なお、図中の補助線Cは、光出射面1a及び光反射面1bと平行な補助線である。
所定の軸Aの方向に対する第1の部分41a及び41cの側面41g、41h、41k、及び41lの傾斜方向と、所定の軸Aの方向に対する第2の部分41b及び41dの側面41i、41j、41m、及び41nの傾斜方向とは、互いに逆となっている。換言すれば、導波路41を第1の半導体部31(図2参照)側から見た場合に、光出射面1aに対する側面41g、41h、41k、及び41lの相対角度は時計方向にθとなっており、光出射面1aに対する側面41i、41j、41m、及び41nの相対角度は反時計方向にθとなっている。相対角度θは、側面41g〜41nにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。なお、側面41g〜41nのうち、全反射臨界角θcが他の側面とは異なる側面があってもよい。その場合においても、側面41g〜41nのそれぞれと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度は、各側面41g〜41nのそれぞれにおける全反射臨界角θcに基づいて個別に決定される。
本変形例の導波路41において、レーザ光反射端41fを所定の軸Aの方向に沿って反射したレーザ光Lは、側面41n、41m、41k、41l、41j、41i、41g、41hの順に全反射されることによって、所定の軸Aの方向に沿ってレーザ光出射端41eに入射することとなる。レーザ光出射端41eに達したレーザ光Lの一部はレーザ光出射端41eにおいて反射し、上記と同様の光路を逆に辿ってレーザ光反射端41fに達する。このようにして、レーザ光Lは、レーザ光出射端41eとレーザ光反射端41fとの間を共振する。
本発明による半導体レーザ素子では、本変形例のように、所定の軸方向に対する側面の傾斜方向が互いに異なる第1及び第2の部分を導波路が幾つ含んでも良い。導波路がこのような第1及び第2の部分を多く含むほど、遠視野像におけるサブピークをより低減することができる。
(第2の変形例)
次に、上記実施形態による半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)の第2の変形例について説明する。図11は、本変形例による半導体レーザ素子が有する導波路42を示す平面図である。導波路42は、第1の部分42a及び第2の部分42cを有する。更に、導波路42は、第1の部分42aと第2の部分42cとの間に第3の部分42bを有する。第1の部分42aは、互いに対向する一対の側面42g及び42hを有する。第1の部分42aの一端はレーザ光出射端42eとなっており、他端は第3の部分42bの一端と繋がっている。第2の部分42cは、互いに対向する一対の側面42k及び42lを有する。第2の部分42cの一端はレーザ光反射端42fとなっており、他端は第3の部分42bの他端と繋がっている。第3の部分42bは、互いに対向する一対の側面42i及び42jを有する。
第1の部分42aの側面42g及び42hは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θを有する。第2の部分42cの側面42k及び42lは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θを有する。第3の部分42bの側面42i及び42jは、所定の軸Aの方向に沿って延びている。また、所定の軸Aの方向に対する第1の部分42aの側面42g及び42hの傾斜方向と、所定の軸Aの方向に対する第2の部分42cの側面42k及び42lの傾斜方向とは、互いに逆となっている。相対角度θは、側面42g、42h、42k、及び42lにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。なお、側面42g、42h、42k、及び42lのうち、全反射臨界角θcが他の側面とは異なる側面があってもよい。その場合においても、側面42g、42h、42k、及び42lのそれぞれと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度は、各側面42g、42h、42k、及び42lのそれぞれにおける全反射臨界角θcに基づいて個別に決定される。
本変形例の導波路42において、レーザ光反射端42fを所定の軸Aの方向に沿って反射したレーザ光Lは、第2の部分42cの側面42l及び42kにおいて全反射されることによって、第3の部分42bに所定の軸Aの方向に沿って入射する。第3の部分42bの側面42i及び42jは所定の軸Aの方向に沿って延びているため、レーザ光Lは側面42i及び42jに沿って進み、第1の部分42aに入射する。レーザ光Lは、第1の部分42aの側面42g及び42hにおいて全反射され、レーザ光出射端42eに入射する。レーザ光出射端42eに達したレーザ光Lの一部はレーザ光出射端42eにおいて反射し、上記と同様の光路を逆に辿ってレーザ光反射端42fに達する。このようにして、レーザ光Lは、レーザ光出射端42eとレーザ光反射端42fとの間を共振する。
本発明による半導体レーザ素子では、本変形例のように、導波路42が、第1の部分42aと第2の部分42cとの間に位置する第3の部分42bを有し、第3の部分42bの側面42i、42jが所定の軸Aの方向に沿っていてもよい。本発明者らの知見によれば、導波路側面が途中で曲折しているような場合には、その折れ曲がり角に応じて、導波路内を共振するレーザ光に損失が発生してしまう。本変形例によれば、第1の部分42aと第2の部分42cとの間に第3の部分42bを設けることにより、第1の部分42aと第2の部分42cとの境目における導波路側面の折れ曲がり角を緩和し、レーザ光の損失を低減することができる。
(第3の変形例)
次に、上記実施形態による半導体レーザ素子アレイ1(半導体レーザ素子3)の第3の変形例について説明する。図12は、本変形例による半導体レーザ素子が有する導波路43を示す平面図である。導波路43は、第1の部分43a及び第2の部分43cを有する。更に、導波路43は、第1の部分43aと第2の部分43cとの間に第4の部分43bを有する。第1の部分43aは、互いに対向する一対の側面43g及び43hを有する。第1の部分43aの一端はレーザ光出射端43eとなっており、他端は第4の部分43bの一端と繋がっている。第2の部分43cは、互いに対向する一対の側面43k及び43lを有する。第2の部分43cの一端はレーザ光反射端43fとなっており、他端は第4の部分43bの他端と繋がっている。第4の部分43bは、互いに対向する一対の側面43i及び43jを有する。
第1の部分43aの側面43g及び43hは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θを有する。第2の部分43cの側面43k及び43lは、光出射面1a及び光反射面1bに対して相対角度θを有する。第4の部分43bの側面43i及び43jは、その平面形状が湾曲している。本実施形態では、側面43i及び43jの平面形状は略一定の曲率を有している。そして、側面43i及び43jの一端における接面が第1の部分43aの側面43g及び43hと一致しており、側面43i及び43jの他端における接面が第2の部分43cの側面43k及び43lと一致している。
また、所定の軸Aの方向に対する第1の部分43aの側面43g及び43hの傾斜方向と、所定の軸Aの方向に対する第2の部分43cの側面43k及び43lの傾斜方向とは、互いに逆となっている。相対角度θは、側面43g、43h、43k、及び43lにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。なお、側面43g、43h、43k、及び43lのうち、全反射臨界角θcが他の側面とは異なる側面があってもよい。その場合においても、側面43g、43h、43k、及び43lのそれぞれと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度は、各側面43g、43h、43k、及び43lのそれぞれにおける全反射臨界角θcに基づいて個別に決定される。
本変形例の導波路43において、レーザ光反射端43fを所定の軸Aの方向に沿って反射したレーザ光Lは、第2の部分43cの側面43l及び43kにおいて全反射され、所定の軸Aの方向に沿って第4の部分43bを通過し、第1の部分43aに入射する。レーザ光Lは、第1の部分43aの側面43g及び43hにおいて全反射され、レーザ光出射端43eに入射する。レーザ光出射端43eに達したレーザ光Lの一部はレーザ光出射端43eにおいて反射し、上記と同様の光路を逆に辿ってレーザ光反射端43fに達する。このようにして、レーザ光Lは、レーザ光出射端43eとレーザ光反射端43fとの間を共振する。
本発明による半導体レーザ素子では、本変形例のように、導波路43が、第1の部分43aと第2の部分43cとの間に位置する第4の部分43bを有し、第4の部分43bの側面43i、43jが、その平面形状において湾曲していてもよい。前述したように、導波路側面が途中で曲折しているような場合には、その折れ曲がり角に応じて、導波路内を共振するレーザ光に損失が発生する。本変形例によれば、第1の部分43aと第2の部分43cとの間に第4の部分43bを設けることにより、第1の部分43aと第2の部分43cとの境目における導波路側面の折れ曲がり角を緩和し、レーザ光の損失を低減することができる。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子アレイ(半導体レーザ素子アレイ)の第2実施形態について説明する。図13は、本実施形態の半導体レーザ素子3aにおける導波路42付近の構成を示す平面図である。本実施形態の半導体レーザ素子3aは、前述した第1実施形態の第2変形例における導波路と同様の構成を有する導波路42を備える。また、本実施形態の半導体レーザ素子3aは、更に、周期的な回折格子(グレーティング)71a及び71bを備える。回折格子71a及び71bは、導波路42内部を共振するレーザ光Lの波長を選択するための波長選択手段であり、導波路42の少なくとも一部(本実施形態では、第3の部分42b)に沿って設けられている。
図14は、図13に示した半導体レーザ素子3aのIV−IV断面の一部を示す断面図である。図14を参照すると、回折格子71aは、導波路42の第3の部分42bに沿った第1光ガイド層15とp型クラッド層16との境界面に形成されている。この回折格子71aのピッチpは、モード次数をM、導波路42(42b)の屈折率をn、発振波長をλとしてp=M×λ/2nによって決定される。例えば、発振波長λ=940nm、屈折率n=3.4とすると、1次モードではピッチp=138nm、2次モードではピッチp=276nmとなる。
図15(a)〜図15(c)は、回折格子71aの形成工程の一例を示す図である。まず、図15(a)に示すように、基板11上にn型クラッド層12、第2光ガイド層13、活性層14、及び第1光ガイド層15を順次成長させた後、第1光ガイド層15上に周期的な開口73aを有するレジスト膜73を形成する。このとき、レジスト膜73の開口73aの形成方法としては、マッハツェンダー干渉系などによるレーザ光の干渉縞を用いる光束干渉露光法や、電子ビームをレジスト膜73に当てることにより開口73aを形成する電子ビーム直描法などを用いることができる。そして、レジスト膜73を介して第1光ガイド層15をエッチングすることにより、図15(b)に示すように、第1光ガイド層15の表面に回折格子71aが形成される。続いて、図15(c)に示すように、第1光ガイド層15上にp型クラッド層16及びp型キャップ層17を成長させる。こうして、第1光ガイド層15とp型クラッド層16との境界面に回折格子71aが形成される。なお、この例では回折格子71aを第1光ガイド層15とp型クラッド層16との境界面に形成しているが、活性層14と第1光ガイド層15との境界面や、第1光ガイド層15の内部に回折格子を形成してもよい。
図16(a)は、図13に示した半導体レーザ素子3aのV−V断面を示す断面図である。また、図16(b)は、図16(a)に示した半導体レーザ素子3aのVI−VI断面の一部を示す断面図である。なお、図16(a)及び図16(b)においては、絶縁層18、p側電極層19、及びn側電極層20の図示を省略している。図16(a)及び図16(b)を参照すると、回折格子71bは、導波路42の第3の部分42bに沿った第1の半導体部31の薄厚部10の表面に形成されている。なお、回折格子71bの形成方法の一例としては、第1の半導体部31をエッチングして薄厚部10を形成(図8(b)参照)した後に、薄厚部10の表面を、周期的な開口を有するレジスト膜を介してエッチングするといった方法がある。なお、回折格子71bは、回折格子71aのピッチpと同じピッチで形成される。
本実施形態の半導体レーザ素子3aのように、半導体レーザ素子は、導波路42内を共振するレーザ光Lの波長を選択するための波長選択手段(回折格子71a及び71b)を更に備えることが好ましい。導波路42の側面42g、42h、42k、及び42lにおける全反射臨界角θcは、側面42g、42h、42k、及び42lにおいて反射するレーザ光Lの波長に依存する。本実施形態の半導体レーザ素子3aによれば、導波路42内を共振するレーザ光Lの波長を回折格子71a及び71bによって選択することにより、導波路42の側面42g、42h、42k、及び42lにおける全反射臨界角θcのばらつきを無くし、レーザ光Lの光路を効率よく制限することができる。
図17(a)及び図17(b)は、本実施形態による半導体レーザ素子3aの変形例を示す平面図である。図17(a)を参照すると、導波路42の第3の部分42bに沿った波長選択手段として回折格子71aのみが設けられている。また、図17(b)を参照すると、導波路42の第3の部分42bに沿った波長選択手段として回折格子71bのみが設けられている。これらのように、回折格子71a及び71bは、それぞれ単独で設けられてもよく、導波路42内を共振するレーザ光Lの波長を好適に選択できる。
(第3の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子(半導体レーザ素子アレイ)の第3実施形態について説明する。図18は、本実施形態による半導体レーザ素子3bの導波路4付近の構成を示す平面図である。本実施形態の半導体レーザ素子3bと第1実施形態の半導体レーザ素子3との相違点は、誘電体多層膜77の有無である。誘電体多層膜77は、導波路4内部を共振するレーザ光Lの波長を選択するための波長選択手段である。
誘電体多層膜77は、半導体レーザ素子3bの光出射面1a上に設けられている。なお、誘電体多層膜77は、光反射面1b上に設けられてもよく、光出射面1a及び光反射面1bの双方の上に設けられてもよい。誘電体多層膜77は、例えばSiO2、TiO2、α−Si、Al2O3、Ta2O3などの誘電体材料が交互に積層されてなる。誘電体多層膜77は、例えばスパッタリングや電子ビーム蒸着などの方法によって光出射面1a上に形成される。誘電体多層膜77の各層の層厚tは、各材料の屈折率をn、選択波長をλとしてt=λ/4nに設定される。
半導体レーザ素子が備える波長選択手段は、本実施形態のような誘電体多層膜77を含んでもよい。半導体レーザ素子3bが誘電体多層膜77を備えることによって、導波路4内を共振するレーザ光Lの波長が選択されるので、導波路4の側面4g〜4jにおける全反射臨界角θcのばらつきを無くし、レーザ光Lの光路を効率よく制限することができる。
(第4の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子(半導体レーザ素子アレイ)の第4実施形態について説明する。図19は、本実施形態による半導体レーザ素子3cの導波路4付近の構成を示す平面図である。本実施形態の半導体レーザ素子3cと第1実施形態の半導体レーザ素子3との相違点は、波長選択素子79の有無である。波長選択素子79は、導波路4内部を共振するレーザ光Lの波長を選択するための波長選択手段である。
波長選択素子79としては、エタロンや部分反射ミラー(例えば反射率30%)などが好適に用いられる。波長選択素子79は、半導体レーザ素子3cの光出射面1aと対向する位置に設けられる。なお、波長選択素子79は、半導体レーザ素子3cに固定されていてもよいし、光学系において半導体レーザ素子3cと並んで固定されていてもよい。また、波長選択素子は、光反射面1bと対向する位置に設けられてもよく、光出射面1aと対向する位置及び光反射面1bと対向する位置のそれぞれに設けられてもよい。波長選択素子79と対向する半導体レーザ素子3cの面(本実施形態では光出射面1a)の面上には、反射防止膜(ARコート)81が設けられることが好ましい。
半導体レーザ素子が備える波長選択手段は、本実施形態のような波長選択素子を含んでもよい。半導体レーザ素子3cが波長選択素子79を備えることによって、導波路4内を共振するレーザ光Lの波長が選択されるので、導波路4の側面4g〜4jにおける全反射臨界角θcのばらつきを無くし、レーザ光Lの光路を効率よく制限することができる。なお、波長選択素子としては、例示したエタロンや部分反射ミラー以外にも、同様の機能をもつ様々な素子を用いることができる。
また、波長選択手段としては、上述した第2実施形態の回折格子71aや71b、第3実施形態の誘電体多層膜77、及び第4実施形態の波長選択素子のうち、2つ以上の構成を用いても良い。また、波長選択手段としては、これら以外にも同様の機能をもつ様々な手段を用いることができる。
(第5の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子(半導体レーザ素子アレイ)の第5実施形態について説明する。図20(a)は、本実施形態による半導体レーザ素子3dの導波路42付近の構成を示す平面図である。また、図20(b)は、図20(a)に示した半導体レーザ素子3dのVII−VII断面を示す断面図である。図20(a)及び図20(b)を参照すると、半導体レーザ素子3dの導波路42は、第1の部分42a、第2の部分42c、及び第1の部分42aと第2の部分42cとの間に設けられた第3の部分42dを備える。第1の部分42a及び第2の部分42cの構成は、第1実施形態の第2変形例(図11参照)で説明した構成と同様である。導波路42の第3の部分42dは、所定の軸Aの方向に沿った一対の側面42i及び42jを有する。側面42i及び42jの一端は第1の部分42aの側面42g及び42hとそれぞれ繋がっており、側面42i及び42jの他端は第2の部分42cの側面42k及び42lとそれぞれ繋がっている。
また、導波路42の第3の部分42dは、複数の導波領域42p〜42rを含んでいる。導波領域42p〜42rは、それぞれ所定の軸Aの方向を長手方向としており、所定の軸Aの方向と交差する方向に並んで設けられている。導波領域42p〜42rのうち隣り合う導波領域を導波するレーザ光L同士の位相は、互いに結合される。このような導波領域42p〜42rは、以下に説明する構成によって実現される。
本実施形態の半導体レーザ素子3dは、基板11、第2の半導体部32、活性層14、第1の半導体部31a、p型キャップ層17p〜17r、及び電流ブロック部75を備える。第2の半導体部32は、n型クラッド層12及び第2光ガイド層13によって構成される。第1の半導体部31aは、活性層14上に設けられており、第1光ガイド層15、及び第1光ガイド層15上に形成されたp型クラッド層16p〜16rによって構成される。
第1の半導体部31aには、所定の軸Aの方向に沿って延びる凸状のリッジ部9p〜9rが設けられている。リッジ部9p〜9rは、導波路42の第3の部分42dが生成されるべき位置に、所定の軸Aと交差する方向に並んで設けられる。p型クラッド層16p〜16rは、リッジ部9p〜9rにそれぞれ含まれている。リッジ部9p〜9rの外側の層には、p型クラッド層16p〜16rと電気的に接続されるp型キャップ層17p〜17rが設けられている。
また、半導体レーザ素子3dは、リッジ部9p〜9rのそれぞれを挟む位置に電流ブロック部75を備える。電流ブロック部75は、リッジ部9p〜9rに電流を集中させるための部分であり、例えば第1の半導体部31aとは反対導電型の半導体や、或いは絶縁性材料によって構成される。p側電極層19は、リッジ部9p〜9r上及び電流ブロック部75上にわたって設けられており、リッジ部9p〜9r上においてp型キャップ層17p〜17rと接触している。また、基板11の裏面上には、n側電極層20が設けられる。
活性層14には、リッジ部9p〜9rの形状に対応した導波領域42p〜42rが生成される。すなわち、導波領域42p〜42rは、リッジ部9p〜9rへの電流注入により生じる活性層14内部での実効的な屈折率分布によって生成される、屈折率型の導波領域である。半導体レーザ素子3dにおいては、隣り合う導波領域を導波するレーザ光L同士の位相が互いに結合する程度に導波領域42p〜42rが近接するように、リッジ部9p〜9r同士の間隔が設定される。或いは、半導体レーザ素子3dにおいては、隣り合う導波領域を導波するレーザ光L同士が互いにエバネッセント結合される程度に導波領域42p〜42rが近接するように、リッジ部9p〜9r同士の間隔が設定される。
本実施形態による半導体レーザ素子3dでは、導波路42の第3の部分42dが、所定の軸Aの方向と交差する方向に並設された屈折率型の複数の導波領域42p〜42rを含んでおり、隣り合う導波領域内を共振するレーザ光Lの位相が互いに結合される。本発明者らは、導波路42内部を共振するレーザ光Lの位相差が小さいほど(すなわち位相が揃っているほど)、遠視野像におけるサブピークをより低減できることを見出した。この半導体レーザ素子3dの構成によれば、複数の導波領域42p〜42rを導波するレーザ光Lの位相を結合することによって、導波路42内部を共振するレーザ光Lの位相を揃えることができるので、遠視野像におけるサブピークを更に低減できる。なお、本実施形態においては導波路42の第3の部分42dが3つの導波領域42p〜42rを含んでいるが、導波路の第3の部分は、導波領域を2つ以上であれば幾つ含んでもよい。また、隣り合う導波領域を導波するレーザ光同士の位相が結合するような構成であれば、本実施形態の構成に限らず、例えば第1実施形態のようなリッジ型の構成でもよい。
(第6の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子(半導体レーザ素子アレイ)の第6実施形態について説明する。図21は、本実施形態による半導体レーザ素子アレイの構成の一部を示す断面図である。本実施形態の半導体レーザ素子アレイは、複数の半導体レーザ素子3eを備える。本実施形態の半導体レーザ素子3eと第1実施形態の半導体レーザ素子3との相違点は、電流ブロック部の有無である。本実施形態の半導体レーザ素子3eは、第1実施形態の絶縁層18に代えて電流ブロック部21a及び21bを備えている。なお、半導体レーザ素子3eの他の構成については、第1実施形態の半導体レーザ素子3の構成と同様なので、詳細な説明を省略する。
電流ブロック部21a及び21bは、リッジ部9に電流を集中的に流すための部分である。電流ブロック部21a及び21bは、例えば第1の半導体部31とは反対導電型の半導体や、或いは絶縁性材料によって構成される。本実施形態では、電流ブロック部21a及び21bは例えばn−GaAs或いはn−AlxGa1−xAs(0<x<0.3)からなる。電流ブロック部21aは、リッジ部9の第1の部分9aの側面9g、及びリッジ部9の第2の部分9bの側面9iに沿って薄厚部10上に設けられる。電流ブロック部21bは、リッジ部9の第1の部分9aの側面9h、及びリッジ部9の第2の部分9bの側面9jに沿って薄厚部10上に設けられる。p側電極層22は、リッジ部9上及び電流ブロック部21a、21b上にわたって設けられており、リッジ部9上においてp型キャップ層17と接触している。
活性層14には、リッジ部9に対応する部分に集中的に電流が流れることにより、リッジ部9の形状に対応した屈折率型の導波路5が形成される。導波路5は、リッジ部9の第1の部分9aの平面形状と同様の平面形状を有する第1の部分5aと、リッジ部9の第2の部分9bの平面形状と同様の平面形状を有する第2の部分5bとを含む。導波路5の第1の部分5aの側面5g及び5h、並びに第2の部分5bの側面5i及び5jは、導波路5内外の屈折率差によって生じる面であり、屈折率が連続的に変化している場合には或る一定の厚さを有してもよい。
導波路5の側面5g〜5jと光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)との相対角度は、側面5g〜5jにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。本実施形態において、全反射臨界角θcは、電流ブロック部21a及び21bの材料組成に依存する。すなわち、電流ブロック部21a及び21bの材料組成(例えば、n−AlxGa1−xAsの組成比x)を変化させると、電流ブロック部21a及び21bの屈折率が変化する。従って、側面5g〜5jにおける実効的な屈折率差が変化するので、全反射臨界角θcが変化することとなる。また、導波路5の第1の部分5aの側面5g及び5hと、第2の部分5bの側面5i及び5jとは、所定の軸A(図1参照)の方向に対する傾斜方向が互いに逆となっている。
本発明による半導体レーザ素子は、第1実施形態のようなリッジ型の半導体レーザ素子3に限らず、本実施形態の半導体レーザ素子3eのような構成でも好適に実施することができる。なお、本実施形態においても、導波路5の第1の部分5aの側面5g及び5hと第2の部分5bの側面5i及び5jとは、光出射面1a及び光反射面1bに対する相対角度θが互いに異なっていてもよい。この場合、導波路5の側面5g〜5jにおける全反射臨界角θcは、電流ブロック部21a及び21bの材料組成が調整されることによって個別に設定される。
(第7の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子(半導体レーザ素子アレイ)の第7実施形態について説明する。図22は、本実施形態による半導体レーザ素子アレイの構成の一部を示す断面図である。本実施形態の半導体レーザ素子アレイは、いわゆる埋め込みヘテロ構造を有する複数の半導体レーザ素子3fによって構成されている。
図22を参照すると、本実施形態の半導体レーザ素子3fは、第1の半導体部33と、第2の半導体部34と、第1の半導体部33及び第2の半導体部34の間に設けられた活性層35とを備えている。第1の半導体部33は、p型クラッド層27及び第1光ガイド層26を含んでいる。第2の半導体部34は、n型半導体からなる基板11、n型クラッド層23、及び第2光ガイド層24を含んでいる。また、半導体レーザ素子3fは、p型キャップ層28を備えている。n型クラッド層23、第2光ガイド層24、活性層35、第1光ガイド層26、p型クラッド層27、及びp型キャップ層28は、順に基板11上に積層されており、積層体7を構成している。積層体7は、第1実施形態のリッジ部9の平面形状と同様の平面形状を有する。すなわち、積層体7は、第1実施形態のリッジ部9の第1の部分9aに相当する第1の部分7aと、第2の部分9bに相当する第2の部分7bとを有する。積層体7の第1の部分7aは、一対の側面7g及び7hを有する。積層体7の第2の部分7bは、一対の側面7i及び7jを有する。活性層35は、積層体7の側面7g〜7jに含まれる側面35g〜35jを有する。
また、半導体レーザ素子3fは、電流ブロック部29a及び29bと、p側電極層30と、n側電極層20とを備えている。このうち、n側電極層20の構成は上記第1実施形態と同様である。
電流ブロック部29a及び29bは、活性層35へ電流を狭窄して流すための部分である。電流ブロック部29a及び29bは、例えばi−AlxGa1−xAs(0<x<0.3)といったノンドープの半導体材料、或いは絶縁性材料によって構成される。電流ブロック部29aは、積層体7の側面7g及び7iに沿って(すなわち活性層35の側面35g及び35iに沿って)、基板11上に設けられる。また、電流ブロック部29bは、積層体7の側面7h及び7jに沿って(すなわち活性層35の側面35h及び35jに沿って)、基板11上に設けられる。p側電極層30は、積層体7上、電流ブロック部29a上、及び電流ブロック部29b上にわたって設けられており、積層体7上においてp型キャップ層28と接触している。
活性層35には、側面35g〜35jにおいて活性層内外に屈折率差が生じることにより、導波路2が形成される。この導波路2は、積層体7の第1の部分7aに形成される第1の部分2aと、積層体7の第2の部分7bに形成される第2の部分2bとを有する。導波路2の第1の部分2aは、活性層35の側面35g及び35hによって規定される一対の側面2g及び2hを有する。側面2g及び2hは、光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)に対し相対角度θを有する。また、導波路2の第2の部分2bは、活性層35の側面35i及び35jによって規定される一対の側面2i及び2jを有する。側面2i及び2jは、光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θを有する。また、導波路2の第1の部分2aの側面2g及び2hと、第2の部分2bの側面2i及び2jとは、所定の軸A(図1参照)の方向に対する傾斜方向が互いに逆となっている。
導波路2の側面2g〜2jと光出射面1a及び光反射面1bとの相対角度θは、側面2g〜2jにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。本実施形態において、全反射臨界角θcは、電流ブロック部29a及び29bと活性層35との屈折率差に依存する。この屈折率差は、例えば電流ブロック部29a及び29bの材料組成を調整することによって任意に設定することができる。
本発明による半導体レーザ素子は、本実施形態のような埋め込み型の半導体レーザ素子3fでも好適に実施することができる。なお、本実施形態においても、導波路2の第1の部分2aの側面2g及び2hと第2の部分2bの側面2i及び2jとは、光出射面1a及び光反射面1bに対する相対角度θが互いに異なっていてもよい。この場合、導波路2の側面2g〜2jにおける全反射臨界角θcは、活性層35と電流ブロック部29a及び29bとの屈折率差が調整されることによって個別に設定される。
(第8の実施の形態)
次に、本発明による半導体レーザ素子アレイの第8実施形態について説明する。図23は、本実施形態の半導体レーザ素子アレイが備える第2の半導体部の一部を示す斜視図である。図24は、図23に示すVIII−VIII断面及びIX−IX断面における半導体レーザ素子アレイの拡大断面図である。
本実施形態の半導体レーザ素子アレイは、複数の半導体レーザ素子3gを備える。半導体レーザ素子3gは、第2の半導体部61を備える。図23及び図24を参照すると、第2の半導体部61は、n型半導体からなる基板51と、基板51上に積層されたn型クラッド層52と、n型クラッド層52上に積層された第2光ガイド層53とを含んで構成されている。また、第2の半導体部61は、第2光ガイド層53の表面に主面61cを有する。
また、第2の半導体部61は、凸状のリッジ部61a及び61bを有する。リッジ部61a及び61bは、第1実施形態のリッジ部9の第1の部分9a及び第2の部分9b(図3参照)と同様の平面形状を有する。リッジ部61a及び61bは、主面61cを分割する位置に形成されている。リッジ部61aは、主面61cとリッジ部61aとの境界となる一対の側面61g及び61hを有する。リッジ部61bは、主面61cとリッジ部61bとの境界となる一対の側面61i及び61jを有する。側面61g〜61jは、第2の半導体部61の厚み方向からみて光出射面1a及び光反射面1bに対し相対角度θを有する。また、リッジ部61aの側面61g及び61hと、リッジ部61bの側面61i及び61jとは、所定の軸Aの方向に対する傾斜方向が互いに逆となっている。リッジ部61aの一端は光出射面1aまで延びて端面61eとなっており、リッジ部61aの他端はリッジ部61bの一端と繋がっている。リッジ部61bの他端は、光反射面1bまで延びて端面61fとなっている。
また、半導体レーザ素子3gは、第1の半導体部60と、第1の半導体部60及び第2の半導体部61の間に位置する活性層54と、p型キャップ層57とを備える。第1の半導体部60は、第1光ガイド層55及びp型クラッド層56を含んで構成される。活性層54、第1光ガイド層55、p型クラッド層56、及びp型キャップ層57は、リッジ部61a及び61b上を含む第2の半導体部61上に順に積層される。
また、半導体レーザ素子3gは、絶縁膜58、p側電極層59、及びn側電極層64を備える。p側電極層59はp型キャップ層57上に設けられており、絶縁膜58はp側電極層59とp型キャップ層57との間に設けられている。絶縁膜58には、第2の半導体部61のリッジ部61a及び61bに対応する領域に電流集中手段として開口部58aが形成されており、開口部58aを介してp側電極層59とp型キャップ層57とが互いに接触している。また、絶縁膜58の開口部58aに対応するp型クラッド層56の領域は、電流集中手段としてZnが拡散されて低抵抗領域56aとなっている。開口部58a及び低抵抗領域56aは、活性層54におけるリッジ部61a及び61b上の領域に電流を流すための手段である。n側電極層64は、主面61cとは反対側の基板51の面上に設けられている。
活性層54には、絶縁膜58の開口部58aに対応する領域(すなわち、リッジ部61a及び61bに対応する領域)に集中的に電流が流れることにより、リッジ部61a及び61bの形状に対応した導波路6が生成される。導波路6は、リッジ部61aに対応する第1の部分6a、及びリッジ部61bに対応する第2の部分6bを有する。導波路6の第1の部分6aは、一対の側面6g及び6hを有する。導波路6の第2の部分6bは、一対の側面6i及び6jを有する。導波路6の側面6g〜6jは、活性層54を覆う第1光ガイド層55及びp型クラッド層56と活性層54との屈折率差によって生じる面であり、その平面形状がリッジ部61a及び61bの側面61g〜61jにより規定される。なお、第1光ガイド層55及びp型クラッド層56の屈折率が連続的に変化している場合には、導波路6の側面6g〜6jは或る一定の厚さを有してもよい。
導波路6の側面6g〜6jと光出射面1a及び光反射面1b(図1参照)との相対角度θは、側面6g〜6jにおける全反射臨界角θcに基づいて決定される。本実施形態において、側面6g〜6jにおける全反射臨界角θcは、側面6g〜6jに対応するリッジ部61a、61bの側面61g〜61jそれぞれの高さhaに依存する。
本発明による半導体レーザ素子は、本実施形態の半導体レーザ素子3gのような構成でも好適に実施することができる。なお、本実施形態においても、導波路6の第1の部分6aの側面2g及び2hと第2の部分6bの側面2i及び2jとは、光出射面1a及び光反射面1bに対する相対角度θが互いに異なっていてもよい。この場合、導波路6の側面6g〜6jにおける全反射臨界角θcは、側面6g〜6jに対応するリッジ部61a、61bの側面61g〜61jそれぞれの高さhaが調整されることによって個別に設定される。
なお、導波路6の側面6g〜6hにおける全反射臨界角θcは、リッジ部61a、61b上の第1光ガイド層55及びn型クラッド層56の材料組成にも依存する。従って、第1光ガイド層55及びn型クラッド層56の材料組成を調整することにより、側面6g〜6jにおける全反射臨界角θcを調整することができる。
また、本実施形態では第2の半導体部61のリッジ部61a及び61bが、基板51のリッジ部61a及び61bに対応する部分以外をエッチングすることによって形成されている。リッジ部61a及び61bは、これ以外にも、例えば平坦な基板上に積層されたn型クラッド層または第2光ガイド層をエッチングすることによっても形成可能である。
図25は、半導体レーザ素子3gの変形例として、半導体レーザ素子3hの構成を示す断面図である。本変形例の半導体レーザ素子3hが上記実施形態の半導体レーザ素子3gと異なる点は、電流集中手段の構成である。本変形例の半導体レーザ素子3hは、上記実施形態の絶縁膜58を備えておらず、p型クラッド層56に低抵抗領域56aも形成されていない。本変形例の半導体レーザ素子3hでは、これらの電流集中手段に代えて、高抵抗領域63が形成されている。高抵抗領域63は、第1の半導体部60のうち、リッジ部61a上及び61b上を除く領域のp型キャップ層57側に形成されている。高抵抗領域63は、例えば第1の半導体部60にプロトンを注入することにより形成される。本変形例の半導体レーザ素子3hでは、電流集中手段である高抵抗領域63がリッジ部61a上及び61b上の活性層54の領域に電流を集中させることによって、活性層54に導波路6が生成される。
本変形例の半導体レーザ素子3hでは、上記実施形態の半導体レーザ素子3gと同様に、導波路6の側面6g〜6jの全反射臨界角θcは、リッジ部61a、61bの側面61g〜61jの高さhaに依存する。また、導波路6の側面6g〜6jの全反射臨界角θcは、第1光ガイド層55及びn型クラッド層56の材料組成にも依存する。
また、本実施形態においては、導波路6の側面6g〜6jの全反射臨界角θcは、高抵抗領域63と活性層54との間隔にも依存する。高抵抗領域63と活性層54との間隔は、例えば第1の半導体部60に対するプロトンの打ち込み深さを制御することによって調整することができる。
本発明による半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子アレイは、上記各実施形態及び変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記各実施形態においてリッジ型や埋め込みヘテロ型などの半導体レーザ素子構造を示したが、本発明はこれらの構造に限られるものではなく、導波路を有する半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子アレイであれば適用できる。また、上記各実施形態ではGaAs系半導体レーザ素子を例示したが、本発明の構成は、GaN系やInP系など、他の材料系の半導体レーザ素子にも適用できる。
また、本発明による半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子アレイは、導波路の第1の部分と第2の部分との間に導波路が存在しないような構成も含む。例えば、第1実施形態の第2変形例(図11参照)では、導波路42が、第1の部分42aと第2の部分42cとの間に所定の軸Aに沿った第3の部分42bを含んでいるが、この第3の部分42bの側面42i及び42jが屈折率差を有さず、実質的に第3の部分42bが存在しないような構成であっても、本発明の効果を好適に得ることができる。
1…半導体レーザ素子アレイ、1a…光出射面、1b…光反射面、3…半導体レーザ素子、3a〜3h…半導体レーザ素子、4…導波路、4a…第1の部分、4b…第2の部分、4e…レーザ光出射端、4f…レーザ光反射端、4g〜4j…側面、10…薄厚部、11…基板、12…n型クラッド層、13…第2光ガイド層、14…活性層、15…第1光ガイド層、16…p型クラッド層、17…p型キャップ層、18…絶縁層、18a…開口部、19…p側電極層、20…n側電極層、A…所定の軸。