JP4544147B2 - 電子写真用感光体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、電子写真方式の複写機や画像形成装置等に用いられる保護体(表面保護層、表面保護膜)を有する電子写真感光体の製造方法及びそれを用いた電子写真感光体に関する。
有機質材料からなる電子写真感光体は、成膜が容易であることや、安価であること、また安全性が高いことなどから複写機や画像形成装置などに幅広く利用されている。しかしながら、感光層が有機質材料であるために脆弱であり、例えば帯電ローラーやクリーニングブレード等との摺動により磨耗しやすく、機械的な耐久性の面で劣っていた。近年の環境問題の高まりからも、有機質材料からなる電子写真感光体の高寿命化、すなわち耐久性の向上或いは高耐刷性が求められるようになっており、感光層の構成材料の改質による磨耗しにくい感光層の検討や感光層の表面に保護体を設ける等の検討がなされている。保護体には、有機系材料からなる保護体と無機系材料からなる保護体がある。無機系の保護体は、例えば非晶質カーボンが代表的であり、プラズマCVD法、熱CVD法、スパッタリング法、蒸着法等の種々の方法により、感光層の表面に形成されている。
その中で、プラズマCVD法による成膜は、比較的低温度で、均質な非晶質カーボンを容易に得ることができる。特に、基体にパルス状の高周波電力とパルス状のバイアス電圧とを印加して、主として炭化水素ガスからなる原料ガスを分解して、基体表面に非晶質カーボンからなる保護体を形成する方法は、保護体を比較的低温度で成膜するにもかかわらず、硬度に優れ、比較的強い付着強度を有する保護体を形成する事ができて、有機感光体の耐刷性の向上に効果的であり、またこの成膜方法は、円筒状の被成膜体であっても、保護体の膜厚や特性の均質性を容易に得ることができるなど生産性の面でも優れている。
しかしながら、負帯電の有機感光体に上記のプラズマCVD法で保護体を形成した場合、画像特性の劣化、特に白色の画像データに対して画カブリと呼ばれる黒点ノイズが発生し問題となっていた。
この問題に対して例えば(特許文献1)には、画カブリの対策として、例えば非晶質カーボン層を形成する工程と非晶質カーボン層に対してフッ素を含むガスをプラズマ化してエッチング処理を行うことでフッ素化を行った非晶質カーボンからなる保護体を形成後に、保護体の表面を水素ガスでボンバード処理を行うという技術が開示されている。(特許文献1)によれば、感光体の表面がフッ素の電気陰性度のためにマイナスの極性を帯び、プラスに帯電したトナー(逆帯電トナー)が感光体に付着することで地カブリが発生するという観点のもとに、フッ素化した保護体の表面を水素ガスボンバードによって表面を中性化することにより、画カブリを防止できるとしている。
特開2001−337473号公報
しかしながら(特許文献1)においては、保護体をフッ素化された非晶質カーボン層等で構成した場合に、プラスに帯電したトナー(逆帯電トナー)に対して画カブリが解消されるという点が示唆されているに留まる。実際に本発明者等はフッ素化しない負帯電の有機感光体の表面に、(特許文献1)の実施例に従い保護体を形成、負帯電のトナーを用いて画カブリの発生を調べてみたが、画カブリの発生を抑制することはできなかった。即ち保護体を構成した感光体においては、(特許文献1)で開示される要因以外にも画カブリ等の画質劣化要因が存在するということである。(特許文献1)では保護体を構成する非晶質カーボン層の膜質に関しては何らの言及もなされていないが、本発明者等は上述した画質劣化が保護体の膜質に大きく影響を受けることを見出した。
本発明は上記の課題を解決するものであり、画カブリ、縦筋、画ボケなどの画像ノイズの発生が無く、下地に対する付着強度や膜強度が十分に強い保護体であり、優れた耐刷性を有する電子写真感光体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、支持体上に設けられた感光層を保護する保護体を有する電子写真感光体の製造方法において、炭化水素系のガスを使用し、非晶質カーボンを堆積させて保護層を形成する第1の工程と、この第1の工程で形成された前記保護層へ水素プラズマを照射する第2の工程を有し、前記第1の工程と前記第2の工程を交互に繰り返すことにより、前記保護体を形成するようにしたものである。
本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、感光層を保護する保護体の膜質を均一化することが可能となり、下地に対する付着強度が十分強く、また機械的強度が強い保護体を電子写真感光体の表面に均一に形成することができるため、耐刷性に優れ、画カブリなどの画質劣化を有効に防止できる電子写真感光体を容易に生産性良く製造できる。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、支持体上に設けられた感光層を保護する保護体を有する電子写真感光体の製造方法において、炭化水素系のガスを使用し、非晶質カーボンを堆積させて保護層を形成する第1の工程と、この第1の工程で形成された前記保護層へ水素プラズマを照射する第2の工程を有し、前記第1の工程と前記第2の工程を交互に繰り返すことにより、前記保護体を形成するようにしたものである。これによって感光層を保護する保護体の膜質を均一化することが可能となり、下地に対する付着強度が十分強く、また機械的強度が強い保護体を電子写真感光体の表面に均一に形成することができるため、耐刷性に優れ、画カブリなどの画質劣化を有効に防止できる電子写真感光体を容易に生産性良く製造できる。
また本発明は、支持体上に設けられた感光層を保護する保護体を有する電子写真感光体の製造方法において、炭化水素系のガスを使用し、非晶質カーボンを堆積させて保護層を形成する第1の工程と、水素プラズマを照射する第2の工程を有し、この第2の工程の後に前記第1の工程と前記第2の工程を交互に繰り返すことにより、前記保護体を形成するようにしたものである。予め感光層の表面(例えば電荷輸送層)へ水素プラズマを照射することにより、感光層の表面に残存していた油脂分等の汚染物質の除去や、物理的な変化或いは化学的な変化が引き起こされ、感光層の表面を活性化することができる。ここで、動作ガスには軽元素の水素ガスを用いているために、例えば有機物から構成される感光層の表面(例えば電荷輸送層)に与える衝撃が小さく、感光層の特性劣化を抑えることができるとともに、感光層の表面に新たな堆積物が形成されることはない。
また本発明は、前記第1の工程と前記第2の工程を交互に複数回繰り返される際、前記第2の工程を最終工程としたものである。保護層の最表面に対して水素プラズマの照射を行なうことで、保護層の最表面の機械的強度の弱い部分は除去或いは縮小される事になり、保護体の剥離の発生が無くなり耐刷性を更に向上させることができる。
また本発明は、前記第1の工程および前記第2の工程において、それぞれ異なる所定のガス雰囲気中で支持体にパルス高周波電圧と負のパルスバイアス電圧とを重畳して印加するようにしたものである。このようなプラズマCVDを採用することで、保護体を構成する保護層を簡易に形成することができる。
また本発明は、前記第1の工程において、前記炭化水素系のガスとしてメタンガスを使用したものである。メタンガスは炭素と水素を構成元素とするガスの中で最も簡単な構造であり、これによってより安定した保護体を形成することができる。
また本発明は、前記第1の工程のガス圧を90Pa以上200Pa以下の範囲としたものである。これにより画カブリの発生を防止でき、耐剥離性等の耐刷特性に優れた電子写真感光体を容易に生産性良く製造することができる。
また本発明は、前記第1の工程の前記パルスバイアス電圧を−1kVから−4kVの範囲としたものである。これにより画カブリの発生の防止など画像特性を劣化させることなく、基体と保護体の付着強度を向上させることができ、更に成膜速度も向上できるので、耐剥離性等の耐刷特性に優れた電子写真感光体を生産性良く製造することができる。
また本発明は、前記第2の工程において水素ガスを使用したものである。これにより保護体内の機械的強度の弱い部分の除去若しくは縮小を図れ、耐剥離性等の耐刷特性に優れた電子写真感光体を容易に製造することができる。
また本発明は、前記第2の工程のガス圧を1Pa以上100Pa以下の範囲としたものである。これにより保護体内の機械的強度の弱い部分の除去若しくは縮小を図れ、耐剥離性等の耐刷特性に優れた電子写真感光体を容易に製造することができる。
また本発明は、前記第2の工程のパルスバイアス電圧を−1kVから−4kVの範囲としたものである。これにより画像特性を劣化させることなく保護体内の機械的強度の弱い部分の除去若しくは縮小を図ることができ、耐剥離性等の耐刷特性に優れた電子写真感光体を容易に製造することができる。
また本発明は、前記保護体の膜厚を150nm以上500nm以下の範囲に構成したものである。これにより画カブリなど画質劣化の発生の防止など画像特性を劣化させることなく耐剥離性等の耐刷特性に優れた電子写真感光体を生産性良く製造することができる。
以下、本発明の実施例1について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例1に係る電子写真感光体1の部分断面図である。電子写真感光体1は、導電性支持体2と電荷発生層3と電荷輸送層4と、これらの保護体5とが積層されて構成される。以降実施例1において導電性支持体2に電荷発生層3と電荷輸送層4とが積層されたものを「基体6」と呼び、電荷発生層3と電荷輸送層4からなるものを「感光層7」と呼ぶものとする。導電性支持体2は、電子写真感光体1の形状を機械的に維持するものであり、電荷発生層3は、外部からの入射光に応じて電荷を発生する層であり、電荷輸送層4は、電荷発生層3で発生した電荷を電荷輸送層4の表面まで輸送するための層である。また保護体5は、画像形成過程での感光層7の磨耗を防止し、耐刷性を向上させるための層状構造物である。
実施例1では、導電性支持体2に導電性を有し軽量で加工し易い事からアルミニウムを用いている。また電荷発生層3は、半導体レーザーの波長領域に吸収がある材料を選択し、例えばフタロシアニンなどの電荷発生物質をブチラール樹脂などのバインダー樹脂に分散させた材料から構成されるもので、0.2μm程度の厚みで導電性支持体2の上に形成した。また電荷輸送層4は、正孔を輸送する材料として、例えば、トリフェニルアミン系化合物などの電子供与物質をポリカーボネイトなどのバインダー樹脂に分散させた材料から構成されるもので、20μm程度の厚みで電荷発生層3の上に形成した。
なお、導電性支持体2には、表面がアルマイト処理された導電性支持体、或いはアルミニウムの表面に酸化チタンとポリアミドとからなる下引き層を形成した導電性支持体を用いてもよい。また支持体にアクリルなどの樹脂を用い、この樹脂表面にアルミニウムなどからなる金属導電層を蒸着によって形成したものを用いてもよい。
このような一般的に利用されている有機質材料(有機物)からなる感光層7が構成された基体6の表面に、保護体5をパルス高周波電圧と負のパルスバイアス電圧とを重畳して被成膜体に印加する方式のプラズマCVD装置を用いて形成した。実施例1では保護体5を非晶質カーボンからなる保護層で形成したが、例えば非晶質シリコンカーバイド(SiC)を用いてもよい。
図2は本発明の実施例1におけるプラズマCVD装置の概略構成図である。
以降図2を用いてプラズマCVD装置の構成と動作について説明する。
プラズマCVD装置は、基体6の表面の改質或いは成膜を行うための真空容器8、真空容器8内の空気の排除或いは、動作ガスのガス圧などを制御するための真空ポンプ9、動作ガスを反応室に導くためのガス管10、動作ガスの流量を制御するための流量計11、動作ガス源12、パルス高周波電圧を発生するためのパルス高周波電源13、パルスバイアス電圧を発生するためのパルスバイアス電源14、パルス高周波電圧とパルスバイアス電圧とを重畳する重畳装置15から構成される。基体6は真空容器8内の基体ホルダ16に保持され、基体6にはこの基体ホルダ16を介してパルス高周波電圧とパルスバイアス電圧とが重畳された電圧が印加される。
基体6の電荷輸送層4の表面への保護体5の形成は次のようにして行った。非晶質カーボンからなる保護体5の形成は、電荷輸送層4の表面のクリーニング工程に加えて、基体6の表面に非晶質カーボン(保護層)を堆積させる第1の工程と第1の工程で堆積した非晶質カーボンの表面に水素プラズマ照射を施す第2の工程とを交互に繰り返すことにより保護体5を形成する。
最初に電荷輸送層4の表面のクリーニングを行う。先ず、基体6をプラズマCVD装置の真空容器8内の基体ホルダ16にセットする。次に、プラズマが空気など動作ガス以外のガスからの影響を避けるために真空容器8内の空気を真空ポンプ9を用いて排気する。真空容器8の真空度が例えば、1×10-3Pa程度まで排気を行った後に動作ガスを導入する。動作ガスは炭化水素を含まないガスとして、水素ガスを選択し、真空容器8内のガス圧が、10Paとなるようにガスの導入量と真空ポンプ9の排気弁の開度を調節する。ガス流が安定した後に、電源を投入する。電源は13.56MHzのパルス高周波電源13を用いる。パルス高周波電源13から出力されるパルス高周波電圧を所定のパルス幅で断続的に入力するとともに、パルス高周波電圧を入力後所定の時間が経過した後にパルスバイアス電源14から出力されるパルスバイアス電圧を所定の時間印加した。これら2種類の電圧は重畳装置15により重畳された後に、真空容器8内の基体ホルダ16にセットされた基体6に伝えられ、グランド電位に保持された真空容器8との間で、水素ガスを動作ガスとした放電が発生する。この放電により、水素ガスはイオン化され化学的に活性な水素ラジカルを含む水素プラズマが形成されることになる。一方で、基体6にはパルスバイアス電圧が印加されており、負のパルスバイアス電圧により水素プラズマ中の正帯電物は、基体6の方に向かって加速され、水素ラジカルを伴いながら基体6に照射されることになる。基体6への水素プラズマの照射により、基体6の表面は、活性な表面に変化する。具体的な変化の過程は今のところ定かではないが、基体6の表面である電荷輸送層4表面に残存していた油脂分等の汚染物質の除去や、物理的な変化或いは化学的な変化を受けることに因るものと考えている。ここで、動作ガスには軽元素の水素ガスを用いているために、電荷輸送層4に与える衝撃が小さく、電荷輸送層4の特性劣化を抑えることができるとともに、電荷輸送層4の表面に新たな堆積物を形成することはない。
なお、電荷輸送層4に有機質材料(有機物)を用いたのは、有機質材料による電荷輸送層の形成は、正帯電のアモルファスシリコン等と異なり、塗布法等の比較的簡易な設備構成で形成できること、また原材料自体が比較的安価であることなどによるものであり、このような有機質材料からなる有機感光体の表面に保護体5を施すだけで高耐刷化をはかる事ができれば、生産性の面からも望ましいためである。
次に保護体5を形成した。保護体5は、硬度や剥離強度また、電気抵抗をその製造条件により最適化しやすい一方で、膜の摩擦特性、すなわち保護体5表面の摩擦係数を小さくできることなどから非晶質カーボンを選択した。
保護体5は、基体6の表面に保護層である非晶質カーボンを堆積させる第1の工程と第1の工程で堆積した非晶質カーボンの表面に水素プラズマ照射を施す第2の工程とを交互に繰り返すことにより形成される。
すなわち実施例1では、支持体上(導電性支持体2)に設けられた感光層(電荷発生層3と電荷輸送層4)7を保護する保護体5を有する電子写真感光体1の製造方法において、保護層(非晶質カーボン)を形成する第1の工程と、水素プラズマを照射する第2の工程を有し、電荷輸送層4の表面のクリーニングとして第2の工程を行なった後に第1の工程と第2の工程を交互に繰り返すことにより、保護体5を形成するのである。
先ず第1の工程は次のようにした。
電荷輸送層4の表面のクリーニング処理が終了したら、水素ガスを停止するとともに、真空ポンプ9のバルブを全開にして真空容器8内の水素ガスを排出する。所定時間の排気の後に、非晶質カーボンからなる保護体5形成のための動作ガスとして、炭化水素系ガスの中からメタンガスを選択し、真空容器8内に導入する。
なお、動作ガスに構成元素が炭化水素を含むガス(炭化水素系ガス)としたのは、炭素と水素の化合物からなるガスを用いると安定した非晶質カーボンを形成し易いからであり、その中でメタンガスを選択したのは、炭素と水素を構成元素とするガスでは最も簡単な構造であり、より安定に非晶質カーボンを形成できるためである。
メタンガスを導入後、ガスの導入量と真空ポンプ9の排気弁の開度を調節して真空容器8内のガス圧が、所定のガス圧となるようにした。
ガス流が安定し、ガス圧が一定になった後に、電源を投入する。
電源は、13.56MHzのパルス高周波電源13を用いた。パルス高周波電源13から出力されるパルス高周波電圧を所定のパルス幅で断続的に入力するとともに、パルス高周波電圧を入力後所定の時間が経過した後にパルスバイアス電源14から出力されるパルスバイアス電圧をまた所定の時間印加した。これらの電力と電圧とは、重畳装置15で重畳された後に真空容器8内の基体ホルダ16にセットされた基体6に伝えられ、グランドに保持された真空容器8との間で、メタンガスを動作ガスとした放電が発生する。この放電により、メタンガスは分解、イオン化され、化学的に活性な炭化水素ラジカルを含む炭化水素プラズマが形成されることになる。一方で、基体6にはパルスバイアス電圧が印加されており、負のパルスバイアス電圧により炭化水素プラズマ中の正帯電物は、基体6の方に向かって加速され、炭化水素ラジカルを伴いながら基体6に照射されることになる。このように、基体6への炭化水素プラズマの照射により、基体6の表面の電荷輸送層4の表面には非晶質カーボンが形成されることになる。なお、非晶質カーボンの膜厚は所望の膜厚となるように膜形成の時間により調整した。
このようにして、第1の工程により、基体9上に非晶質カーボン(保護層)からなる第1の工程の保護体5を形成した。
次に第2の工程を行う。
第2の工程では、第1の工程で形成した非晶質カーボンからなる保護体5の表面に水素ガスからなる水素プラズマを照射するものである。
第1の工程が終了したら、メタンガスの導入を止め、真空容器8内に残留するメタンガス等の炭化水素からなる原料ガスを真空ポンプ9を用いて排気する。
真空容器8の真空度が例えば、1×10-3Pa程度まで排気を行った後に動作ガスを導入する。動作ガスは炭化水素を含まないガスとして、水素ガスを選択し、真空容器8内のガス圧が、所定のガス圧となるようにガスの導入量と真空ポンプ9の排気弁の開度を調節する。ガス流が安定した後に、電源を投入する。電源は、13.56MHzのパルス高周波電源13を用いる。パルス高周波電源13から出力されるパルス高周波電圧を所定のパルス幅で断続的に入力するとともに、パルス高周波電圧を入力後所定の時間が経過した後にパルスバイアス電源14から出力されるパルスバイアス電圧を所定の時間印加した。これらの電力と電圧とは重畳装置15により重畳された後に、真空容器8内の基体ホルダ16にセットされた基体6に伝えられ、グランド電位に保持された真空容器8との間で、水素ガスを動作ガスとした放電が発生する。この放電により、水素ガスはイオン化され化学的に活性な水素ラジカルを含む水素プラズマが形成されることになる。一方で、基体8にはパルスバイアス電圧が印加されており、負のパルスバイアス電圧により水素プラズマ中の正帯電物は、基体6の方に向かって加速され、水素ラジカルを伴いながら基体6に照射されることになる。
第1の工程で形成した非晶質カーボンからなる保護体5を有する基体6へ、水素イオンや水素ラジカルからなる水素プラズマが照射され、この水素プラズマの照射により、第1の工程で形成した非晶質カーボンの機械的強度の弱い領域は除去、或いは構成の再配列などの変化を受けることになり、非晶質カーボンはより強固な保護体5となる。
ここで、動作ガスには水素ガスを用いているために、膜面に与える衝撃は小さく、例えば電荷輸送層4の特性劣化を抑制することができ、また非晶質カーボンの表面に新たな堆積物を形成することはない。
第2の工程である非晶質カーボンへの水素プラズマの照射が終了したら、再度第1の工程へ戻る。上述したような第1の工程の手順により、第2の工程の水素プラズマの照射を行った非晶質カーボンの表面に再度非晶質カーボンを形成することになる。また、非晶質カーボンの形成が終了したら、更に上述したような第2の工程の手順により水素プラズマの照射を行うことになる。このように、第1の工程と第2の工程を繰り返しながら、基体6上に非晶質カーボンからなる保護体5を形成することになる。第1の工程で形成した非晶質カーボンは、膜の成長に伴い、機械的強度に劣る部分が発生したりするが、第2の工程によって非晶質カーボンの表面に水素プラズマを照射することで、機械的強度に劣る部分は除去されたり、或いは構成元素の再配列などにより、消失するか若しくは縮小することになる。
即ちこの第2の工程によって第1の工程で形成された非晶質カーボン(保護層)に存在する欠陥部分は除去、再配列などを施され、非晶質カーボン(保護層)は均質化される。そしてこのような、機械的強度が劣る部分を処理した後に、再度第1の工程で非晶質カーボンを形成する事になる。このように、機械的強度が劣る部分は、消失若しくは縮小されながら、保護体5は形成されていくので、機械的強度が劣る部分が保護体5内に連続して形成されることはなくなり、機械的強度に優れた保護体5を形成できるようになる。
このようにして、導電性支持体2に少なくとも電荷発生層3と電荷輸送層4とを順次積層してなる基体6の表面に、非晶質カーボンからなる保護体5を、導電性支持体2にパルス高周波電圧と負のパルスバイアス電圧とを重畳して印加して形成するプラズマCVD法により、基体6の表面に前記非晶質カーボンを堆積させる第1の工程と第1の工程で堆積した非晶質カーボンの表面に水素プラズマ照射を施す第2の工程とを交互に繰り返すことにより保護体5を形成した。即ち実施例1では、支持体(導電性支持体2)上に設けられた感光層(電荷発生層3と電荷輸送層4)7を保護する保護体5を有する電子写真感光体1の製造方法において、保護層(非晶質カーボン)を形成する第1の工程と、この第1の工程で形成された保護層(非晶質カーボン)を均質化する第2の工程を有し、第1の工程と第2の工程を交互に繰り返すことにより、保護体5を形成するのである。
そしてこの製造方法によって支持体(導電性支持体2)に少なくとも感光層(電荷発生層3と電荷輸送層4)7を形成してなる基体6の表面を保護する保護体5を有する電子写真感光体1であって、保護層(非晶質カーボン)を形成する第1の工程と、保護層(非晶質カーボン)を均質化する第2の工程を交互に繰り返すことにより形成された保護体5を有する電子写真感光体1が得られる。
なお、第1の工程と第2の工程の繰り返し回数は、多ければ良いというものではなく、第1の工程で非晶質カーボンを堆積する場合の成膜条件、保護体5の全体の膜厚等から、最適な繰り返し回数を決めれば良い。要は、第1の工程で堆積させる非晶質カーボン内の弱部、即ち機械的強度の弱い部分の成長を抑制するために、第1の工程だけで非晶質カーボンを連続して堆積させて保護体5を形成するのではなく、第1の工程で非晶質カーボンを堆積後、その膜の表面に炭化水素を含まないガスからなるプラズマの照射により、機械的強度の劣る領域の除去、或いは構成の再配列などの変化を進行させる事により、その後に形成する非晶質カーボンに機械的強度が劣る部分が連続して成長しないようにし(即ち保護層である非晶質カーボンを均質化する、あるいは保護層の膜質または構造をミクロなレベルで改善するということである)、これにより保護体5全体で良好な機械的強度を得ようとするものである。
また、第1の工程と第2の工程とを繰り返しながら非晶質カーボンを形成し、保護体5を形成する場合、最表面の非晶質カーボンも、第1の工程に従って形成するが、最表面の膜へも第2の工程の適用すること、即ち最表面の非晶質カーボンへの水素プラズマの照射は必ずしも必要というものではないが、水素プラズマの照射を行えば、最表面の非晶質カーボンの機械的強度が弱い部分は除去或いは縮小される事になり、耐刷試験を行っても保護膜の剥離の発生が無くなり高耐刷性の面でより効果的である。従って保護体5の形成工程においては第2の工程を最終工程と位置付けることが望ましい。
なお実施例1では、基体ホルダ16にセットされた基体6とグランドに保持された真空容器8との間の放電によるプラズマで保護体5の形成を行ったが、基体ホルダ16にセットされた基体6の近傍の周囲にグランドに保持された円筒状の導電体を配置して保護体5の形成を行っても良い。この場合、基体ホルダ16にセットされた基体6とグランドに保持された円筒状の導電体との間の放電によるプラズマにより保護体5の形成が行われる事になる。基体6の周囲にグランドを配置することにより、放電が安定するとともに、原料ガスも円筒状の導電体に沿って流れるなどのために、保護体5の膜厚が更に均質なものを得やすくなる。なお、円筒状の導電体は、全面が導電体でも構わないし、動作ガスの流れの偏り等をなくす等の目的でメッシュ状であっても構わない。
基体上に第1の工程と第2の工程との繰り返しにより作製した保護体5を有する試験体について、画像特性の試験を行った。試験は図3に示したような画像形成装置を用いて、所定の枚数の耐刷試験を行い、その時の画像特性を評価した。
本発明の実施例1における画像形成装置の画像形成工程を説明するための概略構成図を図3に示す。画像形成装置は、図示するように、電子写真感光体1の近傍に帯電装置17、露光装置18、現像装置19、及び転写装置20、クリーニング装置21が配置されて構成される。電子写真感光体1は図示してはいないが駆動機構を有し、図中の矢印方向に回転する。帯電装置17は電子写真感光体1の表面を均一に帯電させる。露光装置18は、帯電された電子写真感光体1の表面をレーザー光により露光し電子写真感光体1の表面に潜像画像を形成するものである。現像装置19は内蔵する現像ローラー22により非磁性の現像剤を電子写真感光体1に供給し一定量のトナーを、電子写真感光体1の表面に形成された潜像画像に付着させる。転写装置20は、潜像画像に付着したトナーを搬送ローラー23により搬送される記録紙24に対して転写するものである。転写装置20の下流側にはクリーニング装置21が配置されている。クリーニング装置21は記録紙24への転写後に電子写真感光体1の表面上に残留するトナーを除去するもので、電子写真感光体1の表面に残留したトナーに直接接触して除去するクリーニングブレード25を備えている。
このような構成の画像形成装置に第1の工程と第2の工程との繰り返しにより作製した保護体5を有する試験体を組み込んで、所定の枚数を印刷した後の画像特性の変化を評価する耐刷試験を行った。
先ず、第1の工程と第2の工程を2回繰り返して保護体5を形成した試験体の1と第1の工程と第2の工程を4回繰り返して保護体5を形成した試験体の2、及び第2の工程の水素プラズマの照射を施さない、即ち第1の工程のみで保護体5を形成した試験体の3を作製した。何れの試験体も第1の工程の非晶質カーボンを形成する際のパルス高周波電圧は300W、ガス圧は150Pa、パルスバイアス電圧−2kVとし、第2の工程の水素プラズマの照射を行う際のパルス高周波電圧は300W、ガス圧は10Paとし、パルスバイアス電圧−2kVとして処理を行った。保護体5全体の膜厚は、ほぼ200nmで一定となるようにした。この3つの試験体について、上記構成の画像形成装置を用いて、5000枚数を印刷した後の画像特性の変化を評価する耐刷試験を行った。試験前の画像特性及び、耐刷試験後の画像特性の評価結果を(表1)に示す。
Figure 0004544147
(表1)に示したように、保護体5を第1の工程と第2の工程との繰り返しにより形成した試験体の1と試験体の2は、初期画像及び耐刷試験後の画像特性も共に良好であるが、保護体5を水素プラズマ照射の工程を入れずに形成した試験体の3は、初期画像は良好なのであるが、耐刷試験後の画像特性はスジや濃度ムラ等の発生が認められた。
耐刷試験終了後の試験体の表面観察を行った。試験体の1、2では保護体5の剥離や磨耗が認められなかった。これは、150Paという高いガス圧で保護体5を形成したにもかかわらず、成膜の途中で成膜の連続性を断つ水素プラズマ照射の工程により、高いガス圧のために発生する膜内の機械的な弱部が除去或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長も断絶され、保護体5全体の機械的強度が向上したことによるものと考えられる。一方、試験体3では、保護体5全体を150Paの高いガス圧で形成したので、膜内に機械的な弱部が保護体5内に残存し、しかも弱部は膜内部で連続して成長することになるために耐刷試験により、保護体5の剥離や磨耗が発生したものと考えられる。また、保護体5の剥離や磨耗の影響が画像特性の劣化として出てきたものと考えられる。
次に第1の工程のガス圧を変えて試験体を作製し、画像特性の評価試験を行った。なお、ここでの試験体は何れの試験体についても、前述の試験体の1と同様に、第1の工程と第2の工程とを2回繰り返して保護体5を形成した。何れの試験体も、第1の工程ではパルス高周波電圧は300W、パルスバイアス電圧−2kVとし第2の工程のパルス高周波電圧は300W、ガス圧は10Pa、パルスバイアス電圧は−2kVとした。保護体5全体の膜厚は、ほぼ200nmで一定となるようにした。このようにして作製した試験体について、上記構成の画像形成装置を用いて、5000枚印刷後の画像特性の変化を評価する耐刷試験を行った。試験前の画像特性及び、耐刷試験後の画像特性の評価結果を(表2)に示す。
Figure 0004544147
(表2)に示したように第1の工程のガス圧が、90Paから200Paの範囲で、画像特性は初期、耐刷試験後共に良好な画像特性を示した。一方で、ガス圧が60Paと低い場合は、画像特性は不良であるが、これは画カブリと呼ばれる画像ノイズが発生したためである。ガス圧が低いと画カブリが発生し、ガス圧が高くなると画カブリが消失する。その原因については明確にはなってはいないが、ガス圧が高くなることにより、膜形成時のエネルギーが低減し、感光層7への損傷等が低減したためではないかと考えられる。ガス圧が、220Paと高い場合には、異常放電が発生し均質な保護体5の形成が困難であった。
耐刷試験終了後の試験体の表面観察では、60Pa〜200Paの試験体で保護体5の剥離や磨耗が認められなかった。これは、比較的高いガス圧で保護体5を形成したにもかかわらず、成膜の途中で成膜の連続性を断つ水素プラズマの照射を行う第2の工程により、高いガス圧のために発生する膜内の機械的な弱部が除去或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長も断絶され、保護体5全体の機械的強度が向上したことによるものと考えられる。一方、220Paのガス圧の試験体では、異常放電に起因すると思われる不均一性や放電痕等が認められガス圧としては適当ではない。
以上から、第1の工程のガス圧は、90Paから200Paの範囲が保護体5の形成に有効である。
次に第2の工程のガス圧を変えて試験体を作製し、画像特性の評価試験を行った。なお、ここでの試験体は何れの試験体についても、試験体の1と同様に、第1の工程と第2の工程とを2回繰り返して保護体5を形成した。何れの試験体も、第1の工程ではパルス高周波電圧は300W、パルスバイアス電圧−2kV、ガス圧は150Paとし、第2の工程のパルス高周波電圧は300W、パルスバイアス電圧は−2kVとした。保護体5全体の膜厚は、ほぼ200nmで一定となるようにした。このようにして作製した試験体について、上記構成の画像形成装置を用いて、5000枚印刷後の画像特性の変化を評価する耐刷試験を行った。試験前の画像特性及び、耐刷試験後の画像特性の評価結果を(表3)に示す。
Figure 0004544147
(表3)に示したように第2の工程のガス圧が、1Paから100Paの範囲で、画像特性は初期、耐刷試験後共に良好な画像特性を示した。一方で、ガス圧が0.5Paと低い場合は、画像特性は不良であるが、これは画ボケが発生したためである。ガス圧が低い場合、感光層7への損傷が発生しているのではないかと考えられる。
耐刷試験終了後の試験体の表面観察では、0.5Pa〜100Paの試験体で保護体5の剥離や磨耗が認められなかった。これは、比較的高いガス圧で保護体5を形成したにもかかわらず、成膜の途中で成膜の連続性を断つ水素プラズマ照射の工程により、高いガス圧のために発生する膜内の機械的な弱部が除去或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長も断絶され、保護体5全体の機械的強度が向上したことによるものと考えられる。なお、0.5Paのガス圧で試験後の画像特性が不良となっているが、これは、耐刷試験の初期から画像特性は不良であったためである。一方、200Paのガス圧の試験体では、保護層の磨耗や剥離が観察された。これは、200Paと高いガス圧下で水素プラズマの照射を行ったので、水素プラズマ照射の効率が低下し、膜内に機械的な弱部が残存し、しかも弱部は膜内部で連続して成長することになるために耐刷試験により保護体5の剥離や磨耗が発生したものと考えられる。
以上から、第2の工程のガス圧は、1Paから100Paの範囲が保護体5の形成に有効である。
次に保護体5の膜厚を変えて試験体を作製し、画像特性の評価試験を行った。ここでの試験体は保護体5の膜厚に応じて、第1の工程と第2の工程との繰り返し回数を変えて保護体5を形成した。保護体5の膜厚は100nmから600nmの範囲で変えて試験体を形成したが、第1の工程と第2の工程との繰り返し回数は、保護体5の膜厚は150nm以下の試験体では2回、200nmの試験体では4回、300nmの試験体では6回、500nmの試験体では10回、600nmの試験体では12回とした。何れの試験体も、パルスバイアス電圧は、−2kVとし第1の工程の保護体5の形成の際のガス圧は150Paで、第2の工程の水素プラズマ照射の際のガス圧は50Paとして作製した。このようにして作製した試験体について、上記構成の画像形成装置を用いて、5000枚印刷後の画像特性の変化を評価する耐刷試験を行った。試験前の画像特性及び、耐刷試験後の画像特性の評価結果を(表4)に示す。
Figure 0004544147
(表4)に示したように保護体5の膜厚が、150nmから500nmの範囲で、画像特性は初期、耐刷試験後共に良好な画像特性を示した。一方で、保護体5の膜厚が100nmと薄い場合は、初期の画像特性は良好であるが、耐刷試験終了後の画像特性に劣化がみとめられた。また、保護体5の膜厚が、600nmでは、初期の画像特性でも白ヌケ(画ムラ)などの画像特性の劣化が認められた。これは、保護体5の膜厚が厚くなりすぎたことにより、感光層7と保護体5の表面との間での電荷の授受に起因するものと考えられる。
耐刷試験終了後の試験体の表面観察を行った。保護体5の膜厚が、150nmから600nmの試験体で保護体5の剥離や磨耗は認められなかった。これは、比較的高いガス圧で保護体5を形成したにもかかわらず、成膜の途中で成膜の連続性を断つ水素プラズマ照射の工程により、150Paと高いガス圧のために発生する膜内の機械的な弱部が除去或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長も断絶され、保護体5全体の機械的強度が向上したことによるものと考えられる。一方、100nmの試験体では、保護体5の部分的な剥離や磨耗などが観察され、これが原因で画像特性に劣化が発生したものと考えている。成膜の途中で成膜の連続性を断つ水素プラズマ照射の工程により、150Paと高いガス圧のために発生する膜内の機械的な弱部が除去或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長も断絶され、保護体5全体の機械的強度の向上が期待されたが、保護体5として耐刷性を得るためには、100nmでは薄すぎると言える。
以上から、有機感光体上の保護体5の膜厚は150nmから500nmの範囲としなければならない。
次に第1の工程のパルスバイアス電圧を変えて試験体を作製し、画像特性の評価試験を行った。ここでの試験体は何れの試験体についても、第1の工程と第2の工程とを2回繰り返して保護体5を形成した。何れの試験体も、パルスバイアス電圧−2kVとし第1の工程の保護体5形成の際のガス圧は150Paで、第2の工程の保護体5表面への水素プラズマ照射の際のガス圧は50Pa、パルスバイアス電圧−2kVで、保護体5全体の膜厚を、ほぼ200nmとして作製した。このようにして作製した試験体について、上記構成の画像形成装置を用いて、5000枚印刷後の画像特性の変化を評価する耐刷試験を行った。試験前の画像特性及び、耐刷試験後の画像特性の評価結果を(表5)に示す。
Figure 0004544147
(表5)に示したように第1の工程のパルスバイアス電圧が、−1kVから−4kVの範囲で、画像特性は初期、試験後共に良好な画像特性を示した。一方で、第1の工程のパルスバイアス電圧が−0.5kVと小さい場合は、初期の画像特性は良好であるが、耐刷試験終了後の画像特性に劣化がみとめられた。また、第1の工程のパルスバイアス電圧が−5kVと大きい場合は、初期及び試験終了後で画像特性の劣化、特に画ボケが認められた。これは、第1の工程のパルスバイアス電圧が大きすぎ、感光層7表面の電荷輸送層4へ損傷を与えたためではないかと考えている。
耐刷試験終了後の試験体の表面観察を行った。第1の工程のパルスバイアス電圧が−1kVから−5kVの範囲の試験体で保護体5の剥離や磨耗は認められなかった。
これは、比較的高いガス圧で保護体5を形成したにもかかわらず、成膜の途中で成膜の連続性を断つ水素プラズマ照射の工程により、150Paと高いガス圧のために発生する膜内の機械的な弱部が除去或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長も断絶され、保護体5全体の機械的強度が向上したことによるものと考えられる。一方、第1の工程のパルスバイアス電圧が−0.5kVの試験体では、保護体5の膜剥離などが観察され、これが原因で画像特性に劣化が発生したものと考えている。第1の工程のパルスバイアス電圧が−0.5kVでは、有機感光体と保護体5との付着強度が十分ではなく、その為に保護体5の膜剥れが発生したものと予想される。
以上から、第1の工程のパルスバイアス電圧は、−1kVから−4kVの範囲が保護体5の形成に有効である。
次に第2の工程のパルスバイアス電圧を変えて試験体を作製し、画像特性の評価試験を行った。ここでの試験体は何れの試験体についても、第1の工程と第2の工程とを2回繰り返して保護体5を形成した。何れの試験体も、第1の工程のパルスバイアス電圧を−2kV、ガス圧を150Paとした。また、第2の工程の保護体5表面への水素プラズマ照射の際のガス圧は50Paとした。保護体5全体の膜厚は、ほぼ200nmとして作製した。このようにして作製した試験体について、上記構成の画像形成装置を用いて、5000枚印刷後の画像特性の変化を評価する耐刷試験を行った。試験前の画像特性及び、耐刷試験後の画像特性の評価結果を(表6)に示す。
Figure 0004544147
(表6)に示したように第2の工程のパルスバイアス電圧が、−1kVから−4kVの範囲で、画像特性は初期、試験後共に良好な画像特性を示した。一方で、第2の工程のパルスバイアス電圧が−0.5kVと小さい場合は、初期の画像特性は良好であるが、試験終了後の画像特性に劣化がみとめられた。また、第2の工程のパルスバイアス電圧が−5kVと大きい場合は、初期及び試験終了後で画像特性の劣化、特に画ボケが認められた。これは、第2の工程のパルスバイアス電圧が大きすぎ、感光層7表面の電荷輸送層4へ損傷を与えたためではないかと考えている。
耐刷試験終了後の試験体の表面観察では、第2の工程のパルスバイアス電圧が−1kVから−5kVの範囲の試験体で保護体5の剥離や磨耗は認められなかった。
これは、比較的高いガス圧で保護体5を形成したにもかかわらず、成膜の途中で成膜の連続性を断つ水素プラズマ照射の工程により、150Paと高いガス圧のために発生する膜内の機械的な弱部が除去、或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長も断絶され、保護体5全体の機械的強度が向上したことによるものと考えられる。
一方、第2の工程のパルスバイアス電圧が−0.5kVの試験体では、保護体5の膜剥れなどが観察され、これが原因で画像特性に劣化が発生したものと考えている。第2の工程のパルスバイアス電圧が−0.5kVでは、第1の工程で形成した非晶質カーボンへの水素プラズマの照射による、膜内の機械的な弱部の除去、或いは構成の再配列等の変化を受けることにより、弱部の連続的な成長の断絶が不十分であり、保護体5内に機械的強度が弱い部分が残留し、それにより、耐刷試験で保護体5の剥離やキズが発生したものと考えられる。
以上から、第2の工程のパルスバイアス電圧は、−1kVから−4kVの範囲が保護体5の形成に有効である。
実施例1では感光層を電荷発生層3と電荷輸送層4からなる2層構造として説明したが、感光層は例えば電荷発生層3の単層構造であっても構わない。また電子写真感光体1はいわゆる正帯電型であっても、負帯電型のいずれであってもよい。
また実施例1では保護体5をいわゆる表面保護層として電子写真感光体1の最表面にあって、下部構造である感光層7を保護する部材として説明したが、保護体5の上に更に機能性膜を設けるような構造であってもよい。
また実施例1では非晶質カーボンからなる保護層の形成と、水素プラズマの照射を交互に繰り返すようにしたが、この繰り返し工程の一部に、フッ素を含むガスをプラズマ化してエッチング処理を行う撥水性処理を挿入してもよい。
また、第1の工程として保護層形成、第2の工程として撥水性付与、第3の工程として保護層均質化(本発明の第2の工程に係る水素プラズマの照射が対応)を繰り返すような工程としてもよい。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、支持体上に設けられた感光層を保護する保護体を有する電子写真感光体の製造方法において、保護層を形成する第1の工程と、この第1の工程で形成された保護層を均質化する第2の工程を有し、第1の工程と第2の工程を交互に繰り返すことにより、保護体を形成するようにしたものである。
また実施例1で詳細に説明したように、より具体的な実施態様としては、導電性支持体に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層してなる基体の表面に、非晶質カーボン(保護層)からなる保護体を、導電性支持体にパルス高周波電圧と負のパルスバイアス電圧とを重畳して印加して形成する電子写真感光体の製造方法であって、基体の表面に非晶質カーボン(保護層)を堆積させる第1の工程と第1の工程で堆積した非晶質カーボンの表面に水素プラズマ照射を施す第2の工程とを交互に繰り返すことにより保護体を形成するようにしたものである。
これにより通常成膜される条件とは外れた高いガス圧などの条件で成膜しても、膜内の機械的な弱部が排除されるとともに、膜内での機械的な弱部の連続的な成長が抑制されるために保護体全体の機械的強度が向上した電子写真感光体を得ることができ、画カブリ等の画像特性に劣化のない高耐刷性の電子写真感光体として有用である。
また本発明の電子写真感光体は、支持体上に有機物によって構成された感光層に対しても容易に適用できることから、耐刷性に優れた電子写真感光体を低コストで提供することができる。このような特徴を有する電子写真感光体は、帯電、露光、現像、転写などの電子写真プロセスを応用した複写機、プリンタ、MFP(マルチファンクションプリンタ)、FAX、印刷機に適用することができる。またこれらの機器をカラー化した製品に対しても応用できることは言うまでもない。
本発明の実施例1に係る電子写真感光体の部分断面図 同実施例1におけるプラズマCVD装置の概略構成図 同実施例1における画像形成装置の画像形成工程を説明するための概略構成図
符号の説明
1 電子写真感光体
2 導電性支持体
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 保護体
6 基体
7 感光層
8 真空容器
9 真空ポンプ
10 ガス管
11 流量計
12 動作ガス源
13 パルス高周波電源
14 パルスバイアス電源
15 重畳装置
16 基体ホルダ
17 帯電装置
18 露光装置
19 現像装置
20 転写装置
21 クリーニング装置
22 現像ローラー
23 搬送ローラー
24 記録紙
25 クリーニングブレード

Claims (11)

  1. 支持体上に設けられた感光層を保護する保護体を有する電子写真感光体の製造方法において、炭化水素系のガスを使用し、非晶質カーボンを堆積させて保護層を形成する第1の工程と、この第1の工程で形成された前記保護層へ水素プラズマを照射する第2の工程を有し、前記第1の工程と前記第2の工程を交互に繰り返すことにより、前記保護体を形成したことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 支持体上に設けられた感光層を保護する保護体を有する電子写真感光体の製造方法において、炭化水素系のガスを使用し、非晶質カーボンを堆積させて保護層を形成する第1の工程と、水素プラズマを照射する第2の工程を有し、この第2の工程の後に前記第1の工程と前記第2の工程を交互に繰り返すことにより、前記保護体を形成したことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記第1の工程と前記第2の工程を交互に複数回繰り返される際、前記第2の工程を最終工程としたことを特徴とする請求項1、2記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記第1の工程および前記第2の工程において、それぞれ異なる所定のガス雰囲気中で前記支持体にパルス高周波電圧と負のパルスバイアス電圧とを重畳して印加することを特徴とする請求項1、2記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記第1の工程において、前記炭化水素系のガスとしてメタンガスを使用したことを特徴とする請求項1、2記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記第1の工程のガス圧を90Pa以上200Pa以下の範囲としたことを特徴とする請求項1、2記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記第1の工程の前記パルスバイアス電圧を−1kVから−4kVの範囲としたことを特徴とする請求項4記載の電子写真感光体の製造方法。
  8. 前記第2の工程において水素ガスを使用したことを特徴とする請求項4記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 前記第2の工程のガス圧を1Pa以上100Pa以下の範囲としたことを特徴とする請求項8記載の電子写真感光体の製造方法。
  10. 前記第2の工程の前記パルスバイアス電圧を−1kVから−4kVの範囲としたことを特徴とする請求項4記載の電子写真感光体の製造方法。
  11. 前記保護体の膜厚を150nm以上500nm以下の範囲に構成したことを特徴とする請求項1、2記載の電子写真感光体の製造方法。
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