本発明は、例えば、複写機、プリンタ、光メディア機器及びハードディスク機器等の情報機器や、空調機器、空気清浄機、給湯機と言った機器に搭載されるモータを駆動するためのモータ駆動装置に関する。さらにまた、その駆動装置により駆動されるモータ、及びその駆動装置により駆動されるモータを搭載した機器に関する。
例えば、空調機器又は情報機器に搭載される各種駆動用モータは、長寿命、高信頼性、速度制御の容易さなどの長所を活かして、ブラシレスDCモータ(以下、モータという)が用いられることが多い。
図17は従来におけるモータ駆動装置の回路構成図である。図18は図17に示すモータ駆動装置の動作説明図、すなわち、モータ回転角(電気角)に対する回路各部の信号波形図である。
図17において、同図に示すモータの駆動装置は、ホール素子などからなる複数個の位置検出素子901、903及び905を用いてモータのロータの位置を検出する。3相分配器890は、それぞれの位置検出素子901、903及び905からの位置信号Hu、Hv及びHwを入力し、3相分配信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0をパルス幅変調器(PWM変調器)840に対して出力する。速度設定器860は、比較器850の一方の入力端子に対して速度設定信号Sを出力する。三角波発振器847は、比較器850の他方の入力端子に対してキャリア信号CYを出力する。比較器850は、信号Sと信号CYとを比較し、信号Sに対応したパルス幅を有する信号をパルス幅変調器840に出力する。それにより、パルス幅変調器840は、信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0を信号Sに応じたパルス幅を有する信号に変調し、その変調された各信号をゲートドライバ830に対して出力する。通電器820は、ゲートドライバ830からの各信号を入力し、その信号に基づき、通電器820を構成する6個のトランジスタを順次オン又はオフするように制御する。
こうして、モータのステータに備えられた3相の駆動コイル811、813及び815への給電は、図18に示す信号U、V、Wのように、ロータ位置に応じて順次切り換えられて、それに伴ないモータは回転する。
このような従来における回路構成の場合、モータ起動時において、次のように回路の機能を保持する必要がある。すなわち、ゲートドライバ内のバッファ831、833及び835の各出力端子s1h、s2h及びs3hをある一定期間毎にグランドと同電位とし、同バッファ831、833及び835の各出力端子g1h、g2h及びg3hから信号を出力する回路機能を保持する必要がある。なぜなら、バッファ831、832、833、834、835及び836は、それぞれ信号G1H、G1L、G2H、G2L、G3H及びG3Lを受けて、それぞれトランジスタ821、822、823、824、825及び826を動作させるのに十分な電圧を、それぞれの出力端子g1h、g1L、g2h、g2L、g3h及びg3Lから出力する役割をしているためである。
その中で、端子g1L、g2L及びg3Lからの出力は、トランジスタ822、824及
び826のソース端子がグランドに接続されているので、グランドと十分な電圧差を持てばトランジスタ822、824及び826をオンさせることができる。しかし、端子g1h、g2h及びg3hからの出力は、グランドとの電圧差ではなく、端子s1h、s2h及びs3hの電圧に対して十分な電圧差を持つ必要がある。トランジスタ821、823及び825のソース端子と接続されている端子s1h、s2h及びs3hは、それぞれ駆動コイル811、813及び815にも接続されているため、トランジスタ821、822、823、824、825及び826のオンオフに伴い、それら端子s1h、s2h及びs3hの各電圧は変動する。そして、トランジスタ821、823及び825がオンした場合、端子s1h、s2h及びs3hの電圧は電源電圧Vdcとなる。この電圧より高
い電圧が外部より供給されない場合は、その電圧を作り出す必要が有り、それには、端子s1h、s2h及びs3hにそれぞれコンデンサを接続しておき、端子s1h、s2h及びs3hがグランドと同電位になった時に、次にトランジスタ821、823及び825を動作させるのに十分な電圧を各コンデンサに充電する。そして、バッファ831は、その充電電圧と、端子s1hの電圧との加算電圧を端子g1hから出力する。バッファ833は、その充電電圧と、端子s2hの電圧との加算電圧を端子g2hから出力する。バッファ835は、その充電電圧と、端子s3hの電圧との加算電圧を端子g3hから出力する。上記のように、各コンデンサを充電するために、端子s1h、s2h及びs3hを一定期間毎にグランドと同電位にする必要がある。もしも各コンデンサへ十分な充電が行われないと、トランジスタ821、823及び825のトランジスタがオンできない。その結果、3相コイル811、813及び815に正常な通電がなされず、モータは回転しない。
具体的な回路動作としては、通常、通電器820内のトランジスタ821、823及び825がオフの場合に、トランジスタ822、824及び826をオンさせることで端子s1h、s2h及びs3hを強制的にグランド電位としている。
しかしながら、その回路動作の際、駆動コイル811、813及び815はトランジスタ822、824及び826を介して互いに接続されるため、モータはブレーキ状態となる。その状態は、通常駆動時には問題とならないが、モータを減速する場合には、そのブレーキによって急減速するため、振動が大きくなり、騒音の原因となっていた。
また、従来における別のモータ駆動装置におけるモータのトルク制御方法は次の通りである。すなわち、モータの振動や騒音を低減するための方法として、モータの目標回転数を変化させるときに、トルクパターンのトルク補償量の幅を一旦所定値よりも狭くしておき、目標回転数に到達した後に、所定時間経過後に上記トルク補償量を所定値に戻している。(例えば特許文献1参照)
特開2002−27777号公報 上記従来のモータの駆動装置では、この方法により、モータの駆動中の振動や騒音の低減は可能である。しかしながら、この装置では、トルクパターンのトルク補償量の幅を一旦所定値よりも狭くしておき、目標回転数に到達した後に、所定時間経過後にトルク補償量を所定値に戻すといった複雑な回路動作が必要であり、複雑な制御を行わなければならなかった。
また、減速時の振動がモータを搭載する機器と共振して騒音を生じる要因になったり、モータの振動が伝わって機器を振動させたりして、機器全体の品質及び性能向上の阻害要因となる虞があった。
本発明は、上記課題を解決するもので、モータ駆動時において低振動及び低騒音を簡素な構成で実現できるモータ駆動装置を提供することを目的とする。
本発明のモータ駆動装置、そのモータ駆動装置により駆動されるモータ、そして、そのモータ駆動装置により駆動されるモータを搭載した機器において、そのモータ駆動装置は次の構成を有する。
(a)3相の駆動コイルを有するモータと;
(b)駆動コイルに対して通電を行うための通電器と;
(c)通電器が駆動コイルに対して行う通電方式を制御するための通電制御器とを含み、その通電制御器は、
モータの停止状態から所定の設定回転数までの第1通電期間では、駆動コイルへ電圧を印加する期間における各コイル電位を、通電器内のトランジスタをオン又はオフすることにより、電源電圧又はグランドのどちらかの電位にするように制御し、
設定回転数を超えて駆動される第2通電期間では、駆動コイルへ電圧を印加する期間における各コイル電位を、電源電圧の電位とするか、又は通電器内のトランジスタをオフして駆動コイルを開放するように制御する。具体的には、以下のとおりである。
本発明の第1の発明は、(a)3相の駆動コイルを有するモータと、
(b)前記駆動コイルに対して通電を行うための通電器と、
(c)前記通電器が前記駆動コイルに対して行う通電方式を制御するための通電制御器とを含む構成を有し、
前記通電制御器には、位置検出器と、回転数検出器と、通電信号発生器と、パルス幅変調器と、ゲートドライバとを含む構成を有し、
さらには三角波信号と速度指令信号とを備え、この三角波信号と速度指令信号とを電圧比較する比較器を具備し、
前記通電器には前記駆動コイルの第1端子に接続される上アームのトランジスタと下アームのトランジスタとを含み、この上アームのトランジスタと下アームのトランジスタとの接続点と前記駆動コイルの第1端子とを接続する構成であり、前記駆動コイルの第2端子は前記モータの中性点に接続される構成を有し、
前記通電信号発生器には、前記位置検出器からの位置検出信号と、前記回転数検出器からの通電期間検出信号とを入力し、前記通電信号発生器からは通電波形信号を出力され、
前記パルス幅変調器には、前記通電波形信号を入力しかつ前記比較器の出力端子とを接続し、
前記通電波形信号は、前記パルス幅変調器及び前記ゲートドライバを介して前記通電器に入力することにより前記駆動コイルは通電される構成を有し、
前記通電信号発生器は前記検出器から出力される通電期間検出信号に基づいて第1の通電波形信号及び第2の通電波形信号を出力し、モータの停止状態から所定の設定回転数までの第1通電期間には前記第1の通電波形信号を出力し、前記設定回転数を超えて駆動される第2通電期間には前記第2の通電波形信号を出力する構成を具備し、
前記第1通電期間では、前記第1の通電波形信号に基づいて前記駆動コイルへ電圧を印加する通電期間における各コイル電位の制御を、前記通電器内の前記上アームのトランジスタをオンのときに前記下アームのトランジスタをオフすること、また逆に前記上アームのトランジスタをオフのときに前記下アームのトランジスタをオンすること、とを繰り返すことにより、前記各コイル電位を電源電圧の電位とすることと、前記各コイル電位をグランドの電位とすることとを繰り返し、
前記第2通電期間では、前記第2の通電波形信号に基づいて前記駆動コイルへ電圧を印加する通電期間における各コイル電位を、前記通電器内の前記上アームのトランジスタをオンのときに前記下アームのトランジスタをオフして電源電圧の電位とすることと、前記上アームのトランジスタをオフのときに前記下アームの前記トランジスタをオフして駆動コイルを開放することとを繰り返すように制御する構成を具備するモータ駆動装置である。
本発明の第2の発明は、第1の発明において、
前記第1通電期間又は前記第2通電期間における少なくとも一方の通電角が、電気角で120°以上、180°以下の任意の通電角であるモータ駆動装置。
本発明の第3の発明は、請求項1記載のモータ駆動装置において、
さらに、前記駆動コイルに対して電気角150°幅の通電を行うための広角通電器を含み、
前記広角通電器は、前記駆動コイルのうち相隣る駆動コイルが同じ通電状態になる重なり期間を検出し得る構成を具備し、
前記通電制御器は、前記重なり期間の間、前記駆動コイルへの通電の大きさを第1の値とし、前記重なり期間以外の間、前記通電の大きさを第2の値とする構成を具備するモータ駆動装置である。
本発明の第4の発明は、第3の発明において、前記第1の値と前記第2の値との比率をsin(π/3):1とするモータ駆動装置である。
本発明の第5の発明は、第1の発明のモータ駆動装置を具備するモータである。
本発明の第6の発明は、第5の発明において、前記第1通電期間又は前記第2通電期間における少なくとも一方の通電角が、電気角で120°以上、180°以下の任意の通電角であるモータである。
本発明の第7の発明は、第5の発明において、さらに、前記駆動コイルに対して電気角150°幅の通電を行うための広角通電器を含み、前記広角通電器は、前記駆動コイルのうち相隣る駆動コイルが同じ通電状態になる重なり期間を検出し得る構成を具備し、前記通電制御器は、前記重なり期間の間、前記駆動コイルへの通電の大きさを第1の値とし、前記重なり期間以外の間、前記通電の大きさを第2の値とする構成を具備するモータである。
本発明の第8の発明は、第7の発明において、前記第1の値と前記第2の値との比率をsin(π/3):1とするモータである。
本発明の第9の発明は、第1の発明のモータ駆動装置を搭載した機器である。
本発明の第10の発明は、第9の発明において、前記第1通電期間又は前記第2通電期間における少なくとも一方の通電角が、電気角で120°以上、180°以下の任意の通電角である機器である。
本発明の第11の発明は、第9の発明において、さらに、前記駆動コイルに対して電気角150°幅の通電を行うための広角通電器を含み、前記広角通電器は、前記駆動コイルのうち相隣る駆動コイルが同じ通電状態になる重なり期間を検出し得る構成を具備し、前記通電制御器は、前記重なり期間の間、前記駆動コイルへの通電の大きさを第1の値とし、前記重なり期間以外の間、前記通電の大きさを第2の値とする機器である。
本発明の第12の発明は、第11の発明において、前記第1の値と前記第2の値との比率をsin(π/3):1とする機器である。
モータ駆動時の振動及び騒音を大幅に低減することができる。
発明を実施するための形態について、実施例を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施例におけるモータ駆動装置の回路構成図であり、図2は図1に示すモータ駆動装置の動作説明図である。
ここでは、第1及び第2通電期間において、3相各駆動コイルへの通電が、電気角120°の矩形波通電波形による通電の場合について説明する。
図1において、モータ10は、U相駆動コイル11、V相駆動コイル13及びW相駆動コイル15からなる3相の駆動コイルを有している。その各駆動コイルは、次のようにして通電器20に接続されている。通電器20は、3つの電界効果トランジスタ(FET)21、23及び25により上アームを構成し、同トランジスタ22、24及び26により下アームを構成している。U相駆動コイル11の第1端子は、トランジスタ21及び22の接続点に接続されている。V相駆動コイル13の第1端子は、トランジスタ23及び24の接続点に接続されている。W相駆動コイル15の第1端子は、トランジスタ25及び26の接続点に接続されている。U相駆動コイル11、V相駆動コイル13及びW相駆動コイル15のそれぞれの第2端子は、互いに接続され中性点Nを成している。
直流電源(図示せず)の正側給電端子(電源電圧Vdc)は、通電器20の上アームの各トランジスタに接続されている。一方、直流電源の負側給電端子(図示せず)は、グランドに接続されている。通電器20の下アームの各トランジスタもまたグランドに接続されている。このよう回路構成により、3相駆動コイルには、直流電源から通電器20の上アームのトランジスタ群、及び下アームのトランジスタ群を介して電力が供給される。
位置検出器101、103及び105は、ホール素子又はホールICなどで構成される。それら検出器101、103及び105は、モータ10の可動子(図示せず。回転運動型のモータではロータ、リニア運動型のモータでは可動子、以降はロータとして説明する。)の各相駆動コイル11、13及び15に対する位置を検出する。検出器101、103及び105から出力されるそれぞれの位置検出信号Hu、Hv及びHwは、通電信号発生器90に入力される。通電信号発生器90は、図2に示すような通電波形信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0をパルス幅変調器(PWM変調器)40に対して出力する。なお、信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0は、「H」レベルのとき、通電器20を構成するトランジスタ21、22、23、24、25及び26がオンし、逆に「L」レベルのときオフするように構成している。また、信号UH0、VH0、WH0は互いに電気角120°の位相差をもち、信号UL0、VL0、WL0もまた互いに電気角120°の位相差をもっている。
ここで、通電信号発生器90には、さらに回転数検出器70が接続されている。それにより、通電信号発生器90は、検出器70が出力する通電期間検出信号OL1に基づき、モータの停止状態から所定の設定回転数までの第1通電期間には図2左図に示すような第1の通電波形信号を、上記所定の設定回転数を超えて駆動される第2通電期間には図2右図に示すような第2の通電波形信号を出力する。
パルス幅変調器40は、ANDゲート41、43及び45と、片側インバータ入力のANDゲート42、44及び46とを備えている。ゲート41、43及び45の一方の入力端子には、それぞれ信号UH0、VH0及びWH0が入力される。ゲート41、43及び45の他方の入力端子は、共通接続され比較器50の出力端子に接続される。ANDゲート42、44及び46の一方の入力端子には、それぞれ信号UL0、VL0及びWL0が入力される。ANDゲート42、44及び46の他方の入力端子であるインバータ入力端子には、それぞれゲート41、43及び45の出力端子が接続される。比較器50は、速度設定器60が出力する速度指令信号Sと、三角波発生器47が出力する三角波信号CYとを電圧比較する。なお、信号CYは、パルス幅変調におけるいわゆるキャリア信号であり、その周波数は(数kHz〜数100kHz程度)であり、信号Sの周波数に比べかなり高く設定されている。
ゲートドライバ30は、バッファ31、32、33、34、35及び36を備えている。バッファ31、33及び35には、それぞれゲート41、43及び45の各出力信号G1H、G2H及びG3Hが入力される。バッファ32、34及び36には、それぞれゲート42、44及び46の各出力信号G1L、G2L及びG3Lが入力される。
バッファ31、32、33、34、35及び36の出力端子からの出力信号g1h、g1L、g2h、g2L、g3h及びg3Lは、それぞれトランジスタ21、22、23、24、25及び26のそれぞれゲートに入力される。
また、バッファ31、33及び35のもう1つの出力端子(出力信号s1h、s2h及びs3h)は、それぞれトランジスタ21と22との接続点、トランジスタ23と24との接続点及びトランジスタ25と26との接続点に接続される。
ここで、通電器20が3相駆動コイル11、13及び15に対して行う通電方式を制御するための通電制御器100は、位置検出器101、103、105、回転数検出器70、通電信号発生器90、パルス幅変調器40及びゲートドライバ30を含んでいる。
上記のように構成された第1の実施例のモータ駆動装置における動作について、図2を参照し説明を加える。図2は通電制御器100の動作説明図である。
位置検出信号Hu、Hv及びHwは、図2にその動作タイムチャートを示すように、互いに電気角120°の位相差を有している。
通電信号発生器90は、信号Hu、Hv及びHwを用いて、通電波形信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0を図2に示すタイムチャートによって生成する。これら信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0を、パルス幅変調器40及びゲートドライバ30を介して通電器20に入力することにより、モータ10が駆動される。モータ駆動において、通電制御器100は、停止状態から所定の設定回転数までの第1通電期間では、モータ10の3相の駆動コイル端子U、V及びWに対して、図2左図に示すように、電気角120°通電となる通電サイクルの給電を行うように制御する。
この場合、信号G1H、G1L、G2H、G2L、G3H、G3Lは、それぞれが対応するバッファ31、32、33、34、35、36を介して、それぞれが対応するトランジスタ21、22、23、24、25、26に入力される。そして、電気角120°の通電期間に注目すると、通電器20内のトランジスタ21、23、25がオン又はオフし、通電器20内のトランジスタ22、24、26がオフ又はオンする。それに応じて各駆動コイル端子U、V、Wは、電源電圧又はグランドのどちらかの電位になるように制御される。
より詳しく説明する。信号G1Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ31を介した信号g1hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G1Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ32を介した信号g1Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ21がオン、トランジスタ22がオフとなり、駆動コイル端子Uは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。実際には、駆動コイル端子Uは、電源電圧Vdcからトランジスタ21のソース・ドレイン間のオン電圧分の電圧降下を引いた電位となる。このソース・ドレイン間のオン電圧は、電源電圧Vdcに比べ無視できるほど小さい値である。(駆動コイル端子V及び駆動コイル端子Wに関しても同様)したがって、本発明の請求項においては、「各コイル電位を電源電圧の電位にする。」との表現としている。
また逆に、信号G1Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ31を介した信号g1hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G1Lは「H」レベルであり、その信号を、バッファ32を介した信号g1Lもまた「H」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ21がオフ、トランジスタ22がオンとなり、駆動コイル端子Uはグランドの電位に略等しくなる。実際には、駆動コイル端子Uは、グランド電位にトランジスタ22のソース・ドレイン間のオン電圧分を加えた電位となる。このソース・ドレイン間のオン電圧は、電源電圧Vdcに比べ無視できるほど小さい値である。(駆動コイル端子V及び駆動コイル端子Wに関しても同様)したがって、本発明の請求項においては、「各コイル
端子Uをグランドの電位にする。」との表現としている。
同様に、信号G2Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ33を介した信号g2hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G2Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ34を介した信号g2Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ23がオン、トランジスタ24がオフとなり、駆動コイル端子Vは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。また逆に、信号G2Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ33を介した信号g2hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G2Lは「H」レベルであり、その信号を、バッファ34を介した信号g2Lもまた「H」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ23がオフ、トランジスタ24がオンとなり、駆動コイル端子Vはグランドの電位に略等しくなる。
同様に、信号G3Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ35を介した信号g3hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G3Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ36を介した信号g3Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ25がオン、トランジスタ26がオフとなり、駆動コイル端子Wは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。また逆に、信号G3Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ35を介した信号g3hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G3Lは「H」レベルであり、その信号を、バッファ36を介した信号g3Lもまた「H」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ25がオフ、トランジスタ26がオンとなり、駆動コイル端子Wはグランドの電位に略等しくなる。
上記から明らかなように、バッファ31、33及び35の出力が「H」レベルと「L」レベルの変化を繰り返すのに対応して、バッファ32、34及び36の出力は「L」レベルと「H」レベルの変化を繰り返す。こうして、定期的にトランジスタ22、24及び26がオンするため、端子s1h、s2h及びs3hが定期的にグランド電位となり、バッファの機能は保持継続される。
次に、上記の所定の設定回転数を超えて駆動される第2通電期間においては、通電制御器100は、モータ10の3相の駆動コイル端子U、V及びWに対して、図2右図に示すような給電制御を行う。
すなわち、信号G1H、G1L、G2H、G2L、G3H、G3Lは、それぞれが対応するバッファ31、32、33、34、35、36を介して、それぞれが対応するトランジスタ21、22、23、24、25、26に入力される。そして、電気角120°の通電期間に注目すると、通電器20内のトランジスタ21、23、25がオン又はオフし、通電器20内のトランジスタ22、24、26がオフすることにより、各駆動コイル端子U、V、Wは、電源電圧の電位に略等しくなるか、又は開放するように制御される。
より詳しく説明する。信号G1Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ31を介した信号g1hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G1Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ32を介した信号g1Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ21がオン、トランジスタ22がオフとなり、駆動コイル端子Uは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。一方、信号G1Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ31を介した信号g1hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G1Lは「L」レベルを維持し、その信号を、バッファ32を介した信号g1Lもまた「L」レベルを維持する。この状態においては、トランジスタ21と、トランジスタ22とがともにオフとなり、駆動コイル端子Uは開放状態となる。
同様に、信号G2Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ33を介した信号g2hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G2Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ34を介した信号g2Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ23がオン、トランジスタ24がオフとなり、駆動コイル端子Vは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。一方、信号G2Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ33を介した信号g2hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G2Lは「L」レベルを維持し、その信号を、バッファ34を介した信号g2Lもまた「L」レベルを維持する。この状態においては、トランジスタ23と、トランジスタ24とがともにオフとなり、駆動コイル端子Vは開放状態となる。
同様に、信号G3Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ35を介した信号g3hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G3Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ36を介した信号g3Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ25がオン、トランジスタ26がオフとなり、駆動コイル端子Wは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。一方、信号G3Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ35を介した信号g3hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G3Lは「L」レベルを維持し、その信号を、バッファ36を介した信号g3Lもまた「L」レベルを維持する。この状態においては、トランジスタ25と、トランジスタ26とがともにオフとなり、駆動コイル端子Wは開放状態となる。
図2においては、横軸を電気角にて表わしているために、第1通電期間と第2通電期間における120°通電期間の長さが同じとなっている。しかしながら、第2通電期間は、第1通電期間に比べ駆動回転数が高い。時間的に見れば、第2通電期間の120°通電期間は、第1通電期間のそれに比べ短い。したがって、第2通電期間においては、図2右図に示す程度の定期的で第1通電期間に比べて短期な周期でのトランジスタのオン信号G1L、G2L及びG3Lにより、トランジスタ22、24及び26は定期的で短期な周期でオンする。それにより、端子s1h、s2h及びs3hのそれぞれに接続されたコンデンサ(図示せず)は、定期的で短期な周期で充電が行われ、各コンデンサは放電することなく必要な充電電圧が保たれる。したがって、次にトランジスタ21、23及び25をオンする際には、バッファ31は、その充電電圧と、端子s1hの電圧との加算電圧を端子g1hから出力する。バッファ33は、その充電電圧と、端子s2hの電圧との加算電圧を端子g2hから出力する。バッファ35は、その充電電圧と、端子s3hの電圧との加算電圧を端子g3hから出力する。こうして、各バッファ31、33及び35は、出力信号g1h、g2h及びg3hの信号電圧として十分な電圧を確保し、バッファの機能を保持できる。
また、従来のように、強制的に端子s1h、s2h及びs3hをグランド電位としなくてもよい。すなわち、トランジスタ21、23及び25がオフすると、それらトランジスタからの電流供給が止められるが、駆動コイルに流れる電流は、コイルの特性から、引き続き流れようとする。その影響でトランジスタ22、24及び26と並列に、かつそのアノードをグランドに接続されているそれぞれのダイオード(図示せず)がオンし、駆動コイルに電流を供給するように動作する。こうして、各ダイオードがオンすることで、図に示すように3相駆動コイルU、V及びWの電位がグランド電位となるため、端子s1h、s2h及びs3hもグランド電位となり、バッファの機能を保持できる。
したがって、第2通電期間において、たとえ、モータの減速が発生したとしても、従来例のように、3相駆動コイルU、V及びWの相互間がトランジスタを介して接続されることがないため、ブレーキ状態にならず、急減速状態には陥らない。その結果、騒音や振動の少ないと言った優れた効果を奏する。
なお、本実施例における各種信号処理は、アナログあるいはディジタル回路によるハードウェア処理により実現することも可能であり、また、マイクロコンピュータ、デジタルシグナルプロセッサなどを用い、ソフトウエア処理を行っても良いことは言うまでもないし、またIC化あるいはLSI化しても良いこともいうまでもない。
また、本発明のモータは、モータ駆動装置より駆動されるものであり、そのモータ駆動装置として、上記本発明の第1の実施例におけるモータ駆動装置を使用することができる。それにより、本発明のモータは、騒音や振動の少ないと言った優れた効果を奏する。本発明の機器は、モータ駆動装置より駆動されるモータを搭載したものであり、そのモータ駆動装置として、上記本発明の第1の実施例におけるモータ駆動装置を使用することができる。それにより、本発明の機器は、騒音や振動の少ないと言った優れた効果を奏する。
図3は広角通電信号発生器を含むモータ駆動装置の回路構成図、図4は図3に示すモータ駆動装置における広角通電信号発生器の動作説明図、図5は図3に示すモータ駆動装置において、重なり期間検出信号OLが出力される様子を示す図、図6は図3に示すモータ駆動装置において、各相コイル端子への給電波形を示す図、図7は図3に示すモータ駆動装置において、各相コイルの給電波形を示す図、図8は本発明の第2の実施例におけるモータ駆動装置の回路構成図であり、図9A及び図9Bは図8に示すモータ駆動装置の動作説明図である。
まず、本発明の第2の実施例におけるモータ駆動装置の説明に先立ち、図3−図7を用いて、広角通電信号発生器を含むモータ駆動装置について説明する。
ここでは、第1及び第2通電期間において、3相各駆動コイルへの通電が、電気角150°の広角通電波形の場合について説明する。
図3において、3相の駆動コイル、すなわち、U相コイル11、V相コイル13及びW相コイル15は、次のようにして通電器220に接続される。
通電器220は、3つの電界効果トランジスタ(FET)221、223及び225により上アームを構成し、トランジスタ222、224及び226により下アームを構成している。U相コイル11の第1端子は、トランジスタ221及び222の接続点に接続される。V相コイル13の第1の端子は、トランジスタ223及び224の接続点に接続される。W相コイル15の第1の端子は、トランジスタ225及び226の接続点に接続される。これら3相コイルのそれぞれの第2端子は、互いに接続され中性点Nを成している。
直流電源(図示せず)は、その出力電圧Vdcを通電器220に印加し、その通電器220を介して3相コイルに電力を供給する。
位置検出器101、103及び105は、ホール素子又はホールICなどで構成され、モータの可動子(図示せず。回転運動型モータではロータ、リニア運動型モータでは可動子、以降はロータとして説明する。)の各相コイル11、13及び15に対する位置を検出する。広角通電信号発生器290は、検出器101、103及び105から位置検出信号Hu、Hv及びHwを入力し、信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0を出力する。これら信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0は、図4に示すように、電気角150度の間「H」レベルとなる信号である。なお、これら信号は、「H」レベルのとき、通電器220を構成するトランジスタ221、222、223、224、225及び226がオンし、逆に「L」レベルのときオフするように構成されている。また、信号UH0と信号UL0とは、電気角30度の「L」レベル区間を互いに共有し、相補的に電気角150度の間「H」レベルとなる関係がある。信号VH0と信号VL0との関係、また信号WH0と信号WL0との関係についても同様である。さらに信号UH0、VH0、WH0は、互いに電気角120度の位相差をもっている。信号UL0、VL0、WL0についても同様に互いに電気角120度の位相差をもっている。
パルス幅変調器(PWM変調器)240は、ANDゲート241、243及び245を備えている。ゲート241、243、245のそれぞれの第1入力端子には、それぞれ信号UH0、VH0、WH0が入力される。ゲート241、243、245のそれぞれの第2入力端子は、互いに共通接続されると共に比較器250の出力に接続される。比較器250は、速度設定器260が出力する速度指令信号Sに基づいて出力される信号L0と、三角波発振器247の出力である三角波信号CYとを電圧比較する。なお、その信号CYは、パルス幅変調におけるいわゆるキャリア信号である。そして、信号CYの周波数は、数kHz〜数100kHz程度であり、信号Sあるいは信号L0の周波数に比べかなり高く設定されている。
ここで、信号L0は、速度設定器260からの信号Sを基にして得られる第1の値L1と第2の値L2のうちどちらか一方を、選択器280によって選択して得られる信号である。また、その選択は、広角通電信号発生器290が出力する重なり期間検出信号OLにより決定される。
また、第1の値L1は、信号Sを抵抗271と抵抗272とから成るレベル設定器270で分圧することで得られる。第2の値L2は、信号Sの値そのものにより得られる。ここで、抵抗271と抵抗272の値は、第1の値L1と第2の値L2との比率がsin(π/3):1(およそ0.866:1)となるよう設定されている。
ゲートドライバ230は、バッファ231、232、233、234、235及び236を備えている。バッファ231、233、235にはそれぞれゲート241、243、245の各出力信号G1H、G2H、G3Hが入力される。バッファ232、234、236にはそれぞれ広角通電信号発生器290からの信号UL0、VL0、WL0が入力される。バッファ231、232、233、234、235及び236のそれぞれの出力は、トランジスタ221、222、223、224、225及び226のそれぞれゲートに入力される。
なお、上記各構成要素220、230、240、290、101、103及び105は、広角通電器201を成している。また上記各構成要素247、250、260、270及び280は、通電量制御器202を成している。
上記のように構成された本第2の実施例の駆動装置における動作について、図4から図7を参照し説明する。
図4は広角通電信号発生器290の動作説明図である。
広角通電信号発生器290の出力信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0はそれぞれ、図4に示す通り、電気角150度の間「H」レベルをとる信号である。これらの信号は、位置検出器101、103及び105から出力される位置検出信号Hu、Hv及びHwに基づき生成される。
一般に信号Hu、Hv及びHwは、互いに電気角120度の位相差を有する信号であり、これらの信号を直接論理合成しても150度の間「H」レベルとなる信号を生成することはできない。しかし、例えば、信号Hu、Hv、Hwのうち少なくとも1つの信号(例えば、信号Hu)の1周期を計測し、その1周期を電気角15度刻みで分割するなどの電気的内挿処理を施した信号Hclを得ることは可能である。そして、その信号Hclを利用して電気角150度の間「H」レベルとなる信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0を生成するができる。図4にその動作タイムチャートを示す。
もちろん、信号Hu、Hv及びHwを全て活用し、それら信号を合成して得られる周波数のより高い合成信号の1周期を使用しても良い。しかし、検出器101、103及び105の絶対的あるいは相対的な取り付け機械精度を配慮すると、信号Hu、Hv及びHwのうち1つの信号を使用した方が現実的である。また、1周期の分割幅は必ずしも15度刻みである必要はなく、さらに細分化しても良い。本第2の実施例では信号Huに対して15度幅刻みの分割による電気的内挿処理を施した信号Hclを利用している。
図4に示すタイムチャートによって生成される信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0によりモータ10を駆動すると、モータ10の各相コイル端子U、V及びWには同図に示すように、互いに電気角120度の位相差を有し、それぞれ、電気角150度通電、30度休止となる通電サイクルの給電(電圧印加)が行われる。
このような給電が行われると、合隣る相コイル端子が同じ給電状態(共に正方向通電、あるいは、共に負方向通電)となる重なり期間が、電気角30度の間、位相差30度の間隔で順次発生するようになる。重なり期間検出信号OLは、この重なり期間のとき「H」レベルなる信号であり、図5に示す通りである。
本第2の実施例においては、信号OLが「H」レベルのとき、レベル設定器270と選択器280との作用により、速度設定器260の信号Sを、sin(π/3)(およそ0.866)倍にした第1の値L1を信号L0とし、値L1に基づくPWM変調を行う。また、上記重なり期間以外は、信号OLは「L」レベルとなり、このとき、信号Sそのものである第2の値L2を信号L0とし、値L2に基づくPWM変調を行う。
その結果、モータ10の各相コイル端子U、V及びWへの給電波形は、図6に示すように、重なり期間の間は、通電期間150度における非重なり期間に比べてわずかに小さな値(sin(π/3)でおよそ0.866倍)の給電が行われる。
コイル端子U、V及びWをこのような給電波形により駆動すると、各相コイル11、13及び15の中性点Nには図7に示す波形Nが現われる。このとき、各相コイル11、13及び15にはそれぞれ、各コイル端子U、V及びWと、中性点Nとの電圧差に応じた給電が行われ、例えば、U相コイル11の場合、図7の信号U−Nに示される波形によって給電される。
この信号U−Nは、“−(2/3)×sin(π/3)”、“−(1/2)”、“−(1/3)×sin(π/3)”、“0(無通電)”、“(1/3)×sin(π/3)”、“(1/2)”、“(2/3)×sin(π/3)”の各値を階段状にとる波形である。これらの値は、正弦波の波形信号(“(1/√3)・sinθ”、ここでθ=nπ/6、nは整数)に乗った値(近似値)であることがわかる。
信号U−Nがこのような正弦波の波形信号に乗った階段状の波形になるのは、“sin(π/3):1”の比率に設定された第1の値L1と第2の値L2との選択を、上述した重なり期間検出信号OLによって切り換えて各相コイルへの給電を行うからに他ならない。
V相コイル13、W相コイル15についてもU相コイル11と同様であり、特に図示していないが、信号V−N、信号W−Nも同様に正弦波の波形信号に乗った階段状の波形になる。
このような給電波形により各相コイルを駆動すると、ほぼ正弦波駆動に匹敵するような低トルクリップル駆動が可能になる。
広角通電信号発生器290は、信号Hu、Hv及びHwを用いて、通電波形信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0を図4に示すタイムチャートによって生成する。これら信号UH0、UL0、VH0、VL0、WH0及びWL0を、パルス幅変調器240及びゲートドライバ230を介して通電器220に入力することにより、モータ10が駆動される。
さて、上述の広角通電信号発生器を含むモータ駆動装置を踏まえ、本発明の第2の実施例におけるモータ駆動装置について説明する。
図8は本発明の第2の実施例におけるモータ駆動装置の回路構成図である。本第2の実施例のモータ駆動装置が、図3に示すモータ駆動装置と異なる点の1つは、パルス幅変調器の構成である。図8に示す本第2の実施例のモータ駆動装置におけるパルス幅変調器248の構成は次の通りである。
パルス幅変調器248は、ANDゲート241、243及び245と、片側インバータ入力のANDゲート242、244及び246を備えている。ゲート241、243及び245の一方の入力端子には、それぞれ信号UH0、VH0及びWH0が入力される。ゲート241、243及び245の他方の入力端子は、共通接続され比較器250の出力端子に接続される。ANDゲート242、244及び246の一方の入力端子には、それぞれ信号UL0、VL0及びWL0が入力される。ANDゲート242、244及び246の他方の入力端子であるインバータ入力端子には、それぞれゲート241、243及び245の出力端子が接続される。
ゲートドライバ230は、バッファ231、232、233、234、235及び236を備えている。バッファ231、233及び235には、それぞれゲート241、243及び245の各出力信号G1H、G2H及びG3Hが入力される。バッファ232、234及び236には、それぞれゲート242、244及び246の各出力信号G1L、G2L及びG3Lが入力される。
また、本第2の実施例のモータ駆動装置が図3に示すモータ駆動装置と異なるもう1つ
点は、次の点である。回転数検出器270の出力信号OL1は、広角通電信号発生器290に入力される。その検出器270は、モータ回転中の回転数を検出するものである。広角通電信号発生器290は、第1通電期間と第2通電期間との境目となる設定回転数を認
識する機能を有している。広角通電信号発生器290は、第1通電期間又は第2通電期間とでは異なる信号波形を出力する。すなわち、出力信号UH0、ULO、VHO、VLO、WHO及びWLOは、第1通電期間においては図9Aに示す波形、第2通電期間においては図9Bに示す波形を出力する。
その他の構成は、図3に示す回路構成と同様である。
上記のように構成された第2の実施例のモータ駆動装置における動作について、図9A及び図9Bを参照し説明を加える。図9A及び図9Bは、通電制御器200の動作説明図である。
まず、図9Aのタイムチャートは、モータ駆動において、停止状態から所定の設定回転数までの第1通電期間を示す。図9Aにおいて、電気角150°の通電期間に注目すると、通電器220内のトランジスタ221、222、223、224、225、226がオン又はオフする。それに応じて各駆動コイル端子U、V、Wは、電源電圧又はグランドのどちらかの電位になるように制御される。
より詳しく説明する。信号G1Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ231を介した信号g1hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G1Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ232を介した信号g1Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ221がオン、トランジスタ222がオフとなり、駆動コイル端子Uは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。実際には、駆動コイル端子Uは、電源電圧Vdcからトランジスタ221のソース・ドレイン間のオン電圧分の電圧降下を引いた電位となる。このソース・ドレイン間のオン電圧は、電源電圧Vdcに比べ無視できるほど小さい値である。(駆動コイル端子V及び駆動コイル端子Wに関しても同様)したがって、本発明の請求項においては、「各コイル電位を電源電圧の電位にする。」との表現としている。
また逆に、信号G1Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ231を介した信号g1hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G1Lは「H」レベルであり、その信号を、バッファ232を介した信号g1Lもまた「H」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ221がオフ、トランジスタ222がオンとなり、駆動コイル端子Uはグランドの電位に略等しくなる。実際には、駆動コイル端子Uは、グランド電位にトランジスタ22のソース・ドレイン間のオン電圧分を加えた電位となる。このソース・ドレイン間のオン電圧は、電源電圧Vdcに比べ無視できるほど小さい値である。(駆動コイル端子V及び駆動コイル端子Wに関しても同様)したがって、本発明の請求項においては、「各コイル端子Uをグランドの電位にする。」との表現としている。
同様に、信号G2Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ233を介した信号g2hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G2Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ234を介した信号g2Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ223がオン、トランジスタ224がオフとなり、駆動コイル端子Vは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。また逆に、信号G2Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ233を介した信号g2hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G2Lは「H」レベルであり、その信号を、バッファ234を介した信号g2Lもまた「H」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ223がオフ、トランジスタ224がオンとなり、駆動コイル端子Vはグランドの電位に略等しくなる。
同様に、信号G3Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ235を介した信号g3hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G3Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ236を介した信号g3Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ225がオン、トランジスタ226がオフとなり、駆動コイル端子Wは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。また逆に、信号G3Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ235を介した信号g3hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G3Lは「H」レベルであり、その信号を、バッファ236を介した信号g3Lもまた「H」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ225がオフ、トランジスタ226がオンとなり、駆動コイル端子Wはグランドの電位に略等しくなる。
上記から明らかなように、バッファ231、233及び235の出力が「H」レベルと「L」レベルの変化を繰り返すのに対応して、バッファ232、234及び236の出力は「L」レベルと「H」レベルの変化を繰り返す。こうして、定期的にトランジスタ222、224及び226がオンするため、端子s1h、s2h及びs3hがグランド電位となり、バッファの機能は保持継続される。
次に、上記の所定の設定回転数を超えて駆動される第2通電期間においては、図9Bに示すように、通電制御器200は、モータ10の3相の駆動コイル端子U、V及びWに対して、同図に示すような給電制御を行う。
すなわち、信号G1H、G1L、G2H、G2L、G3H、G3Lは、それぞれが対応するバッファ231、232、233、234、235、236を介して、それぞれが対応するトランジスタ221、222、223、224、225、226に入力される。そして、電気角150°の通電期間に注目すると、通電器220内のトランジスタ221、223、225がオン又はオフし、通電器220内のトランジスタ222、224、226がオフすることにより、各駆動コイル端子U、V、Wは、電源電圧の電位に略等しくなるか、又は開放するように制御される。
より詳しく説明する。信号G1Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ231を介した信号g1hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G1Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ232を介した信号g1Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ221がオン、トランジスタ222がオフとなり、駆動コイル端子Uは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。一方、信号G1Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ231を介した信号g1hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G1Lは「L」レベルを維持し、その信号を、バッファ232を介した信号g1Lもまた「L」レベルを維持する。この状態においては、トランジスタ221と、トランジスタ222とがともにオフとなり、駆動コイル端子Uは開放状態となる。
同様に、信号G2Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ233を介した信号g2hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G2Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ234を介した信号g2Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ223がオン、トランジスタ224がオフとなり、駆動コイル端子Vは電源電圧Vdcの電位に略等しくなる。一方、信号G2Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ233を介した信号g2hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G2Lは「L」レベルを維持し、その信号を、バッファ234を介した信号g2Lもまた「L」レベルを維持する。この状態においては、トランジスタ223と、トランジスタ224とがともにオフとなり、駆動コイル端子Vは開放状態となる。
同様に、信号G3Hが「H」レベルの時、その信号を、バッファ235を介した信号g3hもまた「H」レベルとなる。その時、信号G3Lは「L」レベルであり、その信号を、バッファ236を介した信号g3Lもまた「L」レベルとなる。この状態においては、トランジスタ225がオン、トランジスタ226がオフとなり、駆動コイル端子Wは電源電圧Vdcの電位に略等しくなるか。一方、信号G3Hが「L」レベルの時、その信号を、バッファ235を介した信号g3hもまた「L」レベルとなる。その時、信号G3Lは「L」レベルを維持し、その信号を、バッファ236を介した信号g3Lもまた「L」レベルを維持する。この状態においては、トランジスタ225と、トランジスタ226とがともにオフとなり、駆動コイル端子Wは開放状態となる。
図9A及び図9Bにおいては、横軸を電気角にて表わしているために、第1通電期間と第2通電期間における150°通電期間の長さが同じとなっている。しかしながら、第2通電期間は、第1通電期間に比べ駆動回転数が高いので、時間的に見れば、第2通電期間の150°通電期間は、第1通電期間のそれに比べ短い。したがって、第2通電期間においては、同図に示す程度の定期的なトランジスタのオン信号G1L、G2L及びG3Lにより、バッファの機能を保持できる。また、従来のように、強制的にs1h、s2h及びs3hをグランド電位としなくても駆動コイルに流れる電流の影響で図に示すように3相駆動コイルU、V及びWの電位がグランド電位となるため、端子s1h、s2h及びs3hもグランド電位となり、バッファの機能を保持できる。この点は第1の実施例と同様である。
第2通電期間においては、たとえ、モータの減速が発生しても、従来例のように、3相駆動コイルU、V及びWの相互間がトランジスタを介して接続されることがないため、ブレーキ状態にならず、急減速は発生しない。その結果、騒音や振動の少ないと言った優れた効果を奏する。
なお、本実施例における各種信号処理は、アナログあるいはディジタル回路によるハードウェア処理により実現することも可能であり、また、マイクロコンピュータ、デジタルシグナルプロセッサなどを用い、ソフトウエア処理を行っても良いことは言うまでもないし、またIC化あるいはLSI化しても良いこともいうまでもない。
また、本発明のモータは、モータ駆動装置より駆動されるものであり、そのモータ駆動装置として、上記本発明の第2の実施例におけるモータ駆動装置を使用することができる。それにより、本発明のモータは、騒音や振動の少ないと言った優れた効果を奏する。本発明の機器は、モータ駆動装置より駆動されるモータを搭載したものであり、そのモータ駆動装置として、上記本発明の第2の実施例におけるモータ駆動装置を使用することができる。それにより、本発明の機器は、騒音や振動の少ないと言った優れた効果を奏する。
上述のように、第1の実施例においては、第1及び第2通電期間が、電気角120°の矩形波通電波形の場合であり、第2の実施例においては、第1及び第2通電期間が、電気角150°の広角通電波形の場合について説明した。さらに、第1及び第2通電期間の電圧印加波形において、通電角が電気角で120°以上、180°以下の任意の通電角であっても、第1及び第2の実施例と同様な効果が得られる。
また、第2の実施例においては、第1及び第2通電期間が広角通電波形の場合であったが、第1通電期間又は第2通電期間のいずれかが広角通電波形であり、残りの期間が電気角120°通電波形である場合についても同様な効果が期待できる。例えば、第1通電期間において電気角120°の矩形波通電波形、第2通電期間においては電気角150°の広角通電波形にて駆動するように構成した本発明に係るモータ駆動装置は、騒音や振動の低減、モータ効率などを総合的に考慮した場合、実用に適した好ましい実施形態の1つであると言える。
図10Aから図16は、本発明の第3の実施例における機器の構造を具体的な機器を取り上げて、その構成図を示したものである。
図10A及び図10Bは空調機器の構造を示す構成図である。図10Aは、エアコン室内機の概略図であり、送風用クロスフローファンを回転させるためのモータ301が搭載されている。そのモータ301は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ない静かなエアコン室内機を提供できる。
また、図10Bは、エアコン室外機の概略図であり、送風用ファンを回転させるためのモータ302が搭載されている。そのモータ302は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ない静かなエアコン室外機を提供できる。
図11は給湯器の構造を示す構成図であり、燃焼に必要な空気を送風するためのファンを取り付けたモータ303が搭載されている。そのモータ303は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ない静かな給湯器を提供できる。
図12は空気清浄機の構造を示す構成図であり、空気循環用のファンを取り付けたモータ304が搭載されている。そのモータ304は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ない静かな空気清浄機を提供できる。
図13はプリンタの構造を示す構成図であり、紙送り用にモータ305が搭載されている。そのモータ305は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ないプリンタを提供できる。
図14は複写機の構造を示す構成図であり、紙送り用にモータ306が搭載されている。そのモータ306は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ない複写機を提供できる。
図15は、例えばコンパクトディスク等の光メディア機器の構造を示す構成図であり、光メディアディスクを回転させるためのスピンドルモータ307が搭載されている。そのモータ307は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ない光メディア機器を提供できる。
図16はハードディスク機器の構造を示す構成図であり、ハードディスクを回転させるためのスピンドルモータ308が搭載されている。そのモータ308は、上記第1又は第2の実施例のモータ駆動装置によって駆動されるように構成されている。それにより、騒音及び振動が少ないハードディスク機器を提供できる。
本発明は、モータ駆動時の低振動及び低騒音を簡素な構成で実現できるモータ駆動装置である。また、本発明は、本発明のモータ駆動装置により駆動されるモータであり、低振動及び騒音を実現することができる。また、本発明は、本発明のモータ駆動装置により駆動されるモータを搭載した機器であり、様々な機器に利用でき、その機器の低振動及び騒音を実現することができる。
本発明の第1の実施例におけるモータ駆動装置の回路構成図
図1に示すモータ駆動装置の動作説明図
広角通電信号発生器を含むモータ駆動装置の回路構成図
図3に示すモータ駆動装置における広角通電信号発生器の動作説明図
図3に示すモータ駆動装置において、重なり期間検出信号OLが出力される様子を示す図
図3に示すモータ駆動装置において、各相コイル端子への給電波形を示す図
図3に示すモータ駆動装置において、各相コイルの給電波形を示す図
本発明の第2の実施例におけるモータ駆動装置の回路構成図
(A)及び(B)は図8に示すモータ駆動装置の動作説明図
(A)及び(B)は本発明の第3の実施例における機器(空調機器)の構造を示す構成図
本発明の第3の実施例における機器(給湯器)の構造を示す構成図
本発明の第3の実施例における機器(空気清浄機)の構造を示す構成図
本発明の第3の実施例における機器(プリンタ)の構造を示す構成図
本発明の第3実施例における機器(複写機)の構造を示す構成図
本発明の第3実施例における機器(光メディア機器)の構造を示す構成図
本発明の第3実施例における機器(ハードディスク機器)の構造を示す構成図
従来におけるモータ駆動装置の回路構成図
図17に示すモータ駆動装置の動作説明図
11 U相駆動コイル
13 V相駆動コイル
15 W相駆動コイル
20 通電器
70 回転数検出器
90 通電制御器