JP4543036B2 - 皮膚再生システム - Google Patents
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Description
(ii)ビトロネクチン(VN)またはαvインテグリン受容体と結合可能なその断片、
(iii)非共有結合により会合しているタンパク質複合体中にIGF−Iが存在する場合、IGFBP、
(iv)上皮成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のうちの少なくとも一方、および
(v)無血清、または濃度が1%(v/v)以下である血清
を含むことを特徴とする哺乳動物上皮細胞培養培地を提供する。
vivoのケラチノサイト初代培養物において顕著な増殖応答を刺激するという発見から生まれた。
したがって、本発明は、ex vivoで皮膚を再生させるための現行の最善の臨床業務を改善する技術を提供する。さらに、本発明は、組織生検からのケラチノサイトの誘導および樹立も提供する。好ましい形態では、本発明は、患者自身の血清から単離された自己ビトロネクチンまたは組換え生産された自己ビトロネクチンを利用し、それによって異種または同種異系の支援システムの使用がさらに最小限に抑えられるだけでなく、不確定な補充製品の使用が排除されるケラチノサイトの培養培地および培養システムを提供する。したがって、このことから、好適な治療用途に転換することのできる、自己細胞を主体とした組織工学システムが提供されることになろう。
「ポリペプチド」とは、アミノ酸が50個以上のタンパク質である。
特定の態様では、本発明は、血清などの外来の動物由来の因子を必要としないか、または細胞の増殖および生存能力のうち少なくともいずれかが維持されるのに必要な前記因子のレベルが実質的に低減された、IGF−IおよびIGF−IIのうち少なくともいずれ
かを含む細胞培地および細胞培養システムを提供する。
そのような細胞は、一般に、上皮細胞、筋芽細胞およびそれらの前駆細胞、骨髄細胞、樹状細胞などの中胚葉由来の細胞である。
したがって、「血清を含まないか、または前記少なくとも1種類のIGFの非存在下では細胞増殖を支持しないと思われる量の血清を含む」とは、血清が全く存在しないか、またはin vitroでの最適な細胞の増殖および/または発育に本来必要な血清の量または濃度よりも実質的に低減された量または濃度の血清が含まれることを意味する。
IGF−Iが存在する実施形態では、IGF−Iはタンパク質複合体の一成分であり、該複合体がIGFBPおよびビトロネクチン(VN)をさらに含んでなることが好ましい
。
IGFBPは、IGFBP3またはIGFBP5であることが好ましい。
IGF−IIが存在する実施形態では、IGF−IIは単離型タンパク質複合体の一成分であり、該複合体がビトロネクチン(VN)をさらに含んでなることが好ましい。
特定の1実施形態では、本発明は、精製された自己VNを含む。
ケラチノサイトは、当業界で通常使用されるような培養容器で培養することが好ましい。したがって、培養中に存在するIGF、VN、およびIGFBPの各量は、培養容器の大きさ、容器中に存在する液体培地の量、細胞密度、および当業界で知られている他の要因などの諸要因に応じて決まることが理解されよう。
VN:50〜5000ng、より好ましくは100〜500ng、または有利なものとして250〜350ng;
IGF:0.1〜1000ng、より好ましくは10〜200ng、または有利なものとして50〜150ng;
IGFBP:1〜1000ng、より好ましくは30〜700ng、または有利なものとして300〜500ng
である。
al.)、1999年、前掲)、またはトランスフェリン(ウェインジマーら(Weinzimer et al.)、2001年、J.Clin.Endocrinol.Metab.、第86巻、p.1806)などの使用も企図する。
EGFやbFGFなどの追加の生物活性タンパク質は、1.9cm2の培養ウェルあたり0.1〜1000ng存在してよいが、有利には1〜100ng存在してよい。
別の特定の実施形態では、本発明は、単離型タンパク質複合体に加え、細胞の分化を抑制するLIFおよび/または他の作用物質の使用を企図する。
ケラチノサイトおよび/またはケラチノサイト前駆細胞に関しては、血清非存在下での培養の最初の6〜7日間は(放射線照射した3t3フィーダー細胞などの)フィーダー細胞が存在していてもよく、その後、最高で2継代の間はフィーダー細胞がなくてもよい。
通常、ビトロネクチンおよび/またはフィブロネクチンは、培養容器に結合、固定、もしくはコーティングされるか、または別の方法で培養容器に結び付けられる。IGF、および任意選択でIGFBPを加えると、培養容器に結合、固定、もしくはコーティングされるかまたは別の方法で培養容器に結び付けられたビトロネクチンおよび/またはフィブロネクチンとの複合体が形成される。
記の成長因子の少なくとも1ドメインが結合または連結すると、細胞の増殖、分化、生存および/または遊走などの細胞応答が誘発される。
通常、前記の残基はチロシンである。
通常、前記の残基はチロシンである。
別の実施形態では、前記ドメインは、IGF−Iの残基4〜70を含んでなるか、または同残基4〜70から構成される。
この成分としては、αvインテグリンに結合することのできる、VNもしくはFNの任意のドメインを挙げることができ、これらが包含される。
国際出願番号第PCT/AU2004/000117号に記載されているように、VN(および同様にFN)のヘパリン結合ドメイン(HBD)は、単離型タンパク質複合体の完全な生物活性にとって必要ではない。
ポリアニオン領域は、成熟型VN配列のアミノ酸残基53〜64である。
本明細書では、「キメラタンパク質」は、VNもしくはFNのインテグリン受容体結合
ドメイン由来の連続したアミノ酸配列と、成長因子または成長因子の少なくとも受容体結合ドメインとを含んでなる。
1実施形態では、前記のリンカー配列は、1または複数のグリシン残基と1または複数のセリン残基とからなる。
別の実施形態では、リンカー配列には、Leu Ile Lys Met Lys Proの配列など、プラスミン切断認識部位が含まれる。
上記は、成長因子、成長因子結合タンパク質、およびビトロネクチン/フィブロネクチンのうち少なくともいずれかの生物活性を有する断片の例である。
90%を上回る配列同一性が測定されることが好ましく、配列同一性が実質的に本発明の合成タンパク質の全長にわたっていると有利である。
本明細書では、「誘導体」とは、例えば、他の化学基の付加、結合、もしくは複合体化によって、または当業界で十分に理解されているような翻訳後修飾技術によって改変されているものである。
誘導体の生成;他のチオール化合物との混合型ジスルフィドの生成;マレイミド、マレイン酸無水物、または他の置換マレイミドとの反応;ヨード酢酸またはヨードアセトアミドとのカルボキシメチル化;シアナートを用いるアルカリ性pHでのカルバモイル化などの方法によって修飾することができる。
ペプチド合成の際に非天然アミノ酸および誘導体を組み込む例には、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、t−ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2−チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD−異性体の使用が含まれるがこの限りでない。
1実施形態では、タンパク質は、実質的に純粋な天然型でよい。
別の実施形態では、タンパク質は化学合成によって生産することができる。化学合成技術は当業界でよく知られているが、当業者は、適切な方法の例について、コリガンら編「CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE」、米国ニューヨーク所在のジョンウィリーアンドサンズ社(1995〜2001年)の第18章を参照してもよい。
組換えタンパク質の製造は、当業界でよく知られており、当業者は、例えば、本願明細書に援用するサンブロックら(Sambrook et al.)の「MOLECULAR CLONING.A Laboratory Manual」(コールドスプリングハーバープレス社(Cold Spring Harbor Press)、1989年)、特に第16項および第17項;本願明細書に援用するアウスベルら編「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」(ジョンウィリーアンドサンズ社、1995〜1999年)、特に第10章および第16章;ならびに本願明細書に援用するコリガンら編「CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE」(ジョンウィリーアンドサンズ社、1995〜1999年)、特に第1、第5、および第6章に記載されているような標準のプロトコールを参照してもよい。
よく知られている融合パートナーの例としては、限定するものではないが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒトIgGのFc部分、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびヘキサヒスチジン(HIS6)を挙げることができ、これらはアフィニティクロマトグラフィによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティクロマトグラフィによって融合タンパク質を精製する目的については、関連するアフィニティクロマトグラフィ用マトリックスは、それぞれグルタチオン−、アミロース−、およびニッケルもしくはコバルトに結合した樹脂である。このような多くのマトリックスは
、HIS6融合パートナーとともに使用可能なQIAexpress(商標)システム(キアゲン社(Qiagen))や、ファルマシア社(Pharmacia)のGST精製システムなど、「キット」の形態で入手可能である。
(i)組換えIGF、
(ii)組換えIGFBP、
(iii)組換えビトロネクチン、
(iv)前述のような組換えキメラタンパク質、および
(v)EGFやbFGFなど追加の生物活性タンパク質
からなる群から選択される少なくとも1種の組換えタンパク質を発現させることのできる、ケラチノサイトやケラチノサイト前駆細胞などの細胞の使用を企図する。
通常、発現構築物は、発現の対象である(組換えタンパク質をコードしている)核酸を、プロモータに作動可能なように連結され、または作動可能なように接続された状態で含んでいる。
構成的プロモータまたは誘導プロモータとしては、例えば、テトラサイクリン抑制性、エクジソン誘導性、アルコール誘導性、およびメタロチオネイン誘導性のプロモータが挙げられる。プロモータは、天然のプロモータ(例えば、αクリスタリンプロモータ、ADHプロモータ、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ヒト伸長因子αプロモータ、およびSV40、CMV、HTLV由来プロモータなどのウイルスプロモータ)でもよいし、または2種以上のプロモータの要素が組み合わされている合成ハイブリッドプロモータ(例えば、SRαプロモータ)でもよい。
、形質転換した細菌の選択を行う目的にも(bla、kanR、tetRなど)、形質転換した哺乳動物細胞の選択を行う目的にも(ハイグロマイシン、G418、ピューロマイシンなど)有用である。
本発明は、本発明の培地および/または培養システムを使用して生産された、その限りではないがケラチノサイトなどの1または複数の細胞と、薬剤として許容可能な担体、希釈剤、もしくは賦形剤とを含んでなる薬剤組成物も提供する。
一般に、本発明の組成物は、必要に応じて治療処置または予防処置に使用することができる。例えば、薬剤組成物は、皮膚の修復、創傷の治癒、火傷の治癒、および他の皮膚科学的処置のための治療用もしくは美容用調製物の形態で適用することができる。
特定の実施形態では、薬剤組成物は、本発明に従って培養した自己または同種異系のケラチノサイトを含む。
Co.)、1991年)であり、これを本願明細書に援用する。
剤、エアロゾル、経皮パッチなどが含まれる。これらの剤形には、本目的用に特別に設計された注射用もしくはインプラント用の徐放デバイス、または本目的用にも作用するように改変された他の形態のインプラントも挙げることができる。
用語「噴霧」は、「エアロゾル」もしくは「ミスト」、または一般に液滴の形の液体懸濁物であるとされる「濃縮物」などの用語を包含し、またこれらの用語を例として挙げられる。
特定の1実施形態では、本発明の皮膚噴霧組成物は、調節器によって制御される医療用の圧縮空気流中へ送達することによって、フィブリン糊の噴霧式の適用を円滑にし、液体をエアロゾル化する、Tissomat(登録商標)(バクスターヘルスケア社(Bax
ter Healthcare))を構成する。69〜207kPa(10〜30psi)の圧力が適切であるが、圧力を増大させると生存率の低下が認められる。細胞は、0.5〜1.5×106/mlの濃度で噴霧するとよい。0.2ミリリットルの細胞懸濁液を138kPa(20psi)で適用すると、約25平方センチメートルの面積を覆うのに十分である(in vitroで7日間増殖させた後の、細胞で覆われた表面積の測定に基づく)。細胞は、無血清の増殖培地に含めて送達することが好ましいが、市販のTisseel/Tissucol(登録商標)(バクスターヘルスケア社(Baxter Healthcare))などのフィブリン糊に懸濁させてもよい。
[治療への使用]
特定の態様では、本発明は、火傷、創傷、および潰瘍の治療方法、ならびに肌質または肌の外観を改善し、または向上させるための皮膚の美容処置に関する方法を提供する。
その方法としては、上述のように規定した薬剤組成物の投与を挙げることができ、米国特許第6090790号に記載のものなど、特定の組織部位への微細針による注射;米国特許第6054122号に記載のものなど、創傷、火傷、もしくは潰瘍に適用する局所用のクリーム、ローション、またはシーラント包帯剤;または国際公開公報第99/47070号に記載のものなど、組成物を放出するインプラントを用いるものでよい。
これらの方法を使用して細胞の遊走を刺激し、それによって、創傷および火傷の治癒、潰瘍などの皮膚病変の修復、自己の皮膚のin vitro培養などによる組織の置換および移植、腎臓や肺などの内部臓器の上皮再形成、ならびに損傷神経組織の修復を促進し、または進行させることができる。
et al.)、1998年(前掲)に記載されているように、代替皮膚の作出を円滑にする目的でポリマー骨格も企図されており、同様に創傷および火傷に皮膚細胞を送達するための作用物質としてミクロスフェアも企図されている(ラフランスおよびアームストロング(LaFrance&Armstrong)、1999年、Tissue Eng.、第5巻、p.153)。
しかし、患者の外傷、感染の危険、瘢痕化、および永久的な皮膚移植に先立って現在必要とされる高価な仮の皮膚置換の必要性を減らすために、より早期の皮膚置換が早急に求められている。また、培養皮膚のシートは、多くの皮膚細胞を含み、該皮膚細胞は成熟しているものもあれば、未成熟のものもある。培養ケラチノサイトを集密(コンフルエント)にするという(皮膚シートの生産に必要な)単純な行為が原因で、細胞は最初に有していた特性を早期に喪失してしまう、すなわち分化してしまう。培養皮膚シートが適用されるとき、未成熟の細胞のみが患者に接着し、定着することができる。狭い面積しか付着していないので、シートは、摩擦や患者の動きによって生じる損傷を非常に受けやすく、時には移植片全体を失うことになりかねない。その上、シート移植片では、シート中の皮膚細胞が成熟しているほど、移植片は定着しにくく、細胞自体も創傷床で増殖や遊走をしにくくなると思われる。したがって、未成熟な皮膚細胞をより早期に適用することが、より良好な移植片の定着をもたらし、瘢痕を減らすことは明らかである。
る。
材料および方法
増殖因子濃度/培養用プラスチックへの予備的吸着
全ての実験において、VN、IGFおよびIGFBPを添加する標準法を使用した。培養用プラスチックを、無血清培地中のビトロネクチン150ng/cm2とともに37℃で2時間インキュベーションすることによって調製する。次に、VN溶液を取り除き、IGFBP(250ng/cm2)、IGF−I(50ng/cm2)、およびEGF(50ng/cm2)を含む無血清培地に置き換える。これらの増殖因子を1晩4℃(冷蔵庫内)に放置してVN処理プラスチックに吸着させる。翌日、増殖因子溶液を取り除き、VN 50ng/mL、IGFBP 50ng/mL、IGF−I 15ng/cmおよびEGF 15ng/cmを含む増殖培地(以下に定める)に置き換える。細胞を、以下の密度で加える。一般に、培地は3日に1度交換する。各培養物を、約6日間増殖させてから継代前する。すなわち継代の間隔は約6日間である。
基本培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)にHam’s F12培地を3:1に混合したものであり、通常L−グルタミン(2mM)、コレラ毒素(0.1μg/mL)、アデニン(180μM)、ヒドロコルチゾン(0.4μg/mL)、および非必須アミノ酸混合物(1%v/v)を添加する。
播種密度
培養物を、増殖を停止させたマウス3t3細胞(密度2.5×104/cm2)の存在下で増殖させた。3t3細胞は、使用直前のガンマ線照射によって「増殖を停止」させる。
従来の血清含有増殖培地との培養物の比較
図1を参照すると、このグラフは、単離したばかりのケラチノサイトの、VitroGro(登録商標)を用いた平均的な増殖(+3t3細胞)を、ウシ胎児血清と3t3細胞とのいずれも存在する従来法と比較して示すものである。P0、P1、およびP2は、細胞を回収して再播種した回数に相当する(P0=皮膚試料から単離した直後の細胞による実施)。MTTによる染色を利用してデータを取得した。該データは、単離タンパク質複合体存在下の血清非存在下での培養が、10%血清含有下で達成される細胞増殖の少なくとも90%を常に達成したことを示している。
vitroの機能アッセイにおける細胞の反応(接着、遊走、増殖)も、実施可能である。
図3を参照すると、IGFBP5を含む単離タンパク質複合体が、ケラチノサイトの収量に関して、IGFBP3を含む複合体よりも効果的であることが明らかである。
チノサイトの増殖]
材料および方法
初代ケラチノサイトの培養
ラインヴァルトおよびグリーン(Rheinwald&Green)、1977、Nature、265巻、p.421によって最初に報告された方法と基本的に同一である標準法を使用して、ヒト成人皮膚からケラチノサイトを単離した。簡潔に述べると、該方法はDispaseII(商品名)溶液中での37℃、1時間の皮膚試料の消化を伴うものであった。続いて、回収した上皮は、細胞を分離させるために0.25%トリプシン/0.02%EDTAと共に37℃でさらに10分間消化される。残存トリプシン活性を不活化し、次いで回収した細胞を洗浄し、致死線量を照射した3t3マウス線維芽細胞の存在下または非存在下、組織培養ディッシュに播種する。これらの標準条件を使用して培養した「対照」細胞を、10%ウシ胎児血清、0.1%ペニシリン・ストレプトマイシン溶液、0.4μg/mLヒドロコルチゾン、0.1μg/mLコレラ毒素、10ng/mLヒト組換え上皮増殖因子(EGF)、5μg/mLインスリン、5μg/mLトランスフェリン、および2nMトリヨードサイロニンを添加したDMEM/F12培地中で増殖させるが、一方、単離増殖因子複合体で処理する細胞には、インスリンを含まないということを除いて同じ培地を使用した。インスリンは、インスリンが1型IGF受容体へ競合的に結合するのを最小限にするために、単離タンパク質複合体処理と同時に使用される培地には含めなかった。また、単離増殖因子複合体でコーティングしたディッシュで培養した細胞は、放射線処理したマウス線維芽細胞を含まないプレートに細胞を播種するという点で、標準法にしたがって培養される細胞とは異なっていた。
ケラチノサイトは、成人皮膚生検由来であり、Green培地、血清、およびフィーダー細胞を取り入れた標準法を使用して継代数2まで増殖させた。次にこれらの細胞を、タンパク質合成の促進に関して、IGF+VN複合体の存在下および不在下で評価した。ここでは、24ウェル・プレートを、ビトロネクチン300ngで2時間コーティングし、次に結合していないビトロネクチンを除去するために洗浄された。次に、調べようとする増殖因子と共にウェルをインキュベートした。使用した増殖因子は、上皮増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子I、およびインスリン様増殖因子IIであり、インスリン様増殖因子結合タンパク質5と組み合わせてウェルに加え、ビトロネクチンに1晩結合させた。翌日、結合していない増殖因子をすべて除去するためにウェルを2回洗浄し、プレートを風乾した。次に、ケラチノサイトを回収し、1ウェルあたり細胞1×105個の密度で、[3H]ロイシン 1μCi/ウェルを加えたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に播種した。選択されたウェルにおいては、ケラチノサイトの無血清培養のための市販品である規定ケラチノサイト培地(Defined Keratinocyte Medium 、DKM)(インビトロジェン(Invirogen ))に細胞を播種した。次にプレートを48時間インキュベーションし、取り込まれなかった[3H]ロイシンをすべて除去するために洗浄した。de novo合成されたタンパク質への[3H]ロイシンの取り込みを、βシンチレーション計測用に可溶化タンパク質の沈渣を採取することによって評価した。
ヒト・ケラチノサイトを単離し、致死線量を照射したマウス3t3細胞のフィーダー層が共存する添加剤を全て含んだGreen培地での標準培養技術を使用して、培養細胞を確立した。細胞を継代数3まで増殖させ、Green培地を含む24ウェル・プレートに、ウシ胎児血清(FCS)および3t3細胞の存在下または非存在下で播種した。選択した処理については、ウェルを単離タンパク質複合体でコーティングした。ウェルをビトロネクチン300ngと共に2時間インキュベーションし、吸引除去してからIGF−IとIGFBP3またはIGFBP5、あるいはIGF−IIを加えた。プレートを1晩インキュベーションし、吸引除去してから細胞を播種した。培養物について、すでに報告され
ているMTT‐Estaアッセイ(Ealeyら、1988、J Mol Endocrinol、第1巻、R1〜R4)を使用して測定したように、代謝活性に関して評価した。
樹立細胞株において単離増殖因子複合体によって得られた機能的反応の有意な促進(国際公開公報第02/24219号パンフレット;Nobleら、2003、前掲;Krickerら、2003、前掲)を考慮し、本発明者らは、最近になって本発明者らの研究を成人皮膚に由来するケラチノサイトの細胞培養へと広げた。特に、本発明者らは、自己の分層皮膚移植のためのex vivoにおけるケラチノサイトの増殖のために、現在最善の臨床業務において使用される血清およびフィーダー細胞を、単離増殖因子複合体に置き換える可能性について検討した。この方法は、熱傷の患者に利用可能な非常に進歩した治療法であるが、患者由来のケラチノサイトの培養は、病原体の供給源となる可能性があり、半確定状態の生体異物製品であるウシ胎児血清(FBS)の存在下で実施される。さらに、ケラチノサイトの分離および確立を行う初期の段階において、第2の生物種、すなわちマウス3t3細胞に由来するフィーダー細胞層が、細胞の接着と増殖とを助長するためのサイトカインおよびマトリクス成分の供給源として使用される。FBSもこれらの作用に寄与する。
材料および方法
ここでは2つの問題を扱う。第1に、噴霧用細胞懸濁物が適用できるようになる十分な数の細胞が、1週間以内にVitroGro上で生産される。したがって、この技術は既に使用されている市販品(クリニカルセルカルチャーリミテッド(Clinical Cell Culture Ltd ))の技術と一致するが、無血清という利点がある。第2に、VitroGroで増殖した細胞は噴霧後も生存が維持される。本発明者らが使用してきた送達システムはTissomat(登録商標)(バクスターヘルスケア(Baxter Healthcare ))である。Tissomat送達システムは、フィブリン糊の噴霧施用のために設計されており、調整器で制御された医療用圧搾空気流の中に送達することで液体をエアロゾル化する。しかしながら、代替の噴霧法(噴霧器のキャップに取り付けたシリンジ)を使用しても同様の結果が達成可能であると本発明者らは期待している。圧力は69〜207kPa(10〜30psi)が適切であるが、圧力を上昇させると生存率の低下が観察される。細胞を1ミリリットルあたり0.5〜1.5×106個の濃度で噴霧するとよい。細胞懸濁液0.2ミリリットルを138kPa(20psi)で適用すると、約25cm2の領域の被覆に十分である(in vitroで7日間増殖させた後に細胞で覆われる表面域の測定に基づく)。細胞を無血清増殖培地中で送達することも可能であるが、市販品のTisseel(登録商標)/Tissucol(登録商標)(バクスターヘルスケア)といったフィブリン糊に懸濁して使用してもよい。本発明者らの研究によると、フィブリン糊は、注射用無菌水で等張条件に希釈し、さらに最終フィブリン糊成分を無菌生理食塩水でフィブリノゲンについては1〜10mg/mL、トロンビンについては10〜100単位/mL
に調整することによって、使用前に調製するべきである。
図6は、ケラチノサイトを、コラーゲンでコーティングされた直径150mmの培養ディッシュに噴霧送達した後の細胞の分布および増殖を示す。重要なことには、VitroGroで増殖した細胞は、噴霧後に良好な生存率を示す。噴霧領域の被覆に必要な細胞数を測定するために、細胞を2つの異なる濃度で噴霧した。噴霧に使用した培養物は、対照(血清含有)、またはIGFBP−3およびIGF−Iを伴うビトロネクチンのいずれかで元々培養したものとした。全ての培養物は、3t3細胞存在下で調製した。噴霧後、創傷部位における条件を模倣するために、細胞を血清存在下で増殖させた。該培養物を、細胞分布を示すためにクリスタル・バイオレットで染色した。
皮膚生検の採取
適切なドナー部位を選び、剃毛と殺菌剤による消毒とによって準備する。約10cm2の分層皮膚移植片を、手術室で局所麻酔の下に採取する。この生検物を、抗生物質を含む無菌生理食塩水中に入れ、処理のために直ちに皮膚培養室に運ぶ。ドナー部位には、担当外科医の判断にしたがってOpsite(登録商標)または他の被覆材を貼付する。
皮膚培養施設に到着後、各患者の生検物を無菌緩衝液で洗浄し、その後の培養における細菌汚染の可能性を低減させるために、抗生物質中において室温で1時間インキュベーションする。表皮層および真皮層を、トリプシン消化によって分離する。分離した組織の向かい合う面をこすり取って、取り出した細胞(主として基底ケラチノサイト)を洗浄し、大豆トリプシン阻害剤を含む無血清培地中に再懸濁する。この最終細胞懸濁液を、25cm2の組織培養フラスコに播種するが、フラスコには、増殖を停止させたマウス3t3線維芽細胞(2.5×104個/cm2)ならびにビトロネクチン(VN、50ng/cm2)、インスリン様増殖因子I(IGF−I、15ng/cm2)、インスリン様増殖因子結合タンパク質5(IGFBP5、50ng/cm2)、上皮増殖因子(EGF、15ng/cm2)、アデニン(180μM)、コレラ毒素(0.1μg/mL)、L−グルタミン(2mM)、ヒドロコルチゾン(0.4μg/mL)、および非必須アミノ酸類(1%v/v)を添加したDMEM/F12培地5mLが含まれる。培養フラスコを、タンパク質複合体が予め吸着しやすくするために、VN(300ng/cm2)、IGF−I(100ng/cm2)、IGFBP5(500ng/cm2)、およびEGF(100ng/cm2)で前処理する。新鮮培地を、3日後に加える。6日間の培養後に、3t3細胞をEDTA含有緩衝生理食塩水中でのインキュベーションによって取り除く。残るケラチノサイトを、トリプシン/EDTAでさらにインキュベーションすることによって採
取し、大豆トリプシン阻害剤を含む緩衝生理食塩水で洗浄する。回収した細胞の濃度を、0.2%ヒト血清アルブミンを含む緩衝生理食塩水で2×106個/mLに調製し、手術室に運ぶ。
TESSEEL Duo 500(登録商標)を、製造元の指示に従って37℃に静置して融解させる。融解したら、フィブリノゲンおよびトロンビンのシリンジをそれぞれのホルダから取り外し、無菌プラスチック・チューブに分注する。フィブリノゲン成分は、注射用無菌水で1:1に希釈してから患者細胞懸濁液ストック(第2段階で調製したように細胞2×106個/mL)でさらに1:4に希釈する。トロンビン成分は、注射用無菌水で1:0.25(すなわち4:1)に希釈する。希釈処理した各成分(フィブリノゲン+細胞およびトロンビン)の等容量を別個の1mLシリンジに装填し、Duploject(登録商標)噴霧ノズルを介してTISSOMATに装着する。適用時には、2本のシリンジが均等に圧縮され、さらに各成分が1:1の混合物となる。このように、噴霧産物中の最終濃度は、細胞が0.8×106個/mL、トロンビンが170IU/mL、フィブリノゲンが4.7mg/mLとなる。混合液約0.5mLを、10cmの高さから138kPa(20psi)で連続的に各20cm2の分層創傷に送達する。従って、適用される細胞の平均播種密度は0.2×105個/cm2である。各噴霧の高さおよび間隔は、手の幅(高さ)および3指を合わせた幅(間隔)を使用して概算される。処置される創傷は、日常的な自家分層皮膚移植(火傷の治療や痙縮解除処置)を実施する過程で生じるものである。各創傷のおよそ半分を、噴霧時に無菌マスクで覆って非処置対照とする。2つのドナー部位を使用するとよい。すなわち、1つは処置用、1つは非処置用である。細胞懸濁液を適用する前後に、各創傷を写真撮影する。処置した創傷をOpsite(登録商標)シリコン被覆材で覆う。
外毛根鞘(ORS)初代培養細胞は、同意を得た糖尿病患者の頭皮から採取された成長相の毛嚢に由来するものとし、リマトおよびフンツィカー(Limat&Hunziker)、2002、Cells Tissues Organs、第172巻、p.79〜85および国際公開第01/59442号パンフレットによって記載された方法を使用して培養する。細胞は、事前に形成した***終了ヒト皮膚線維芽細胞フィーダー層およびウシ胎児血清添加培地を使用して、皮膚由来のケラチノサイトについて前述したように、ex vivoで増殖させる。培養物を、最大継代数を3としてほぼコンフルエントな状態で維持し、単離タンパク質複合体存在下での細胞増殖の形態学的かつ機能的評価を、血清およびフィーダー細胞の非存在下で検討する。
ex vivoで増殖させたORS由来ケラチノサイト前駆細胞が、単離タンパク質複合体存在下で増殖かつ遊走することが実証されたため、次に、成長相のORSからの最初の細胞採取と以後の初代培養とについても、血清およびフィーダー細胞を含まない条件で実施可能かどうかを評価する。よって、成長相の毛嚢のORSを細胞培養インサートの微小孔性膜上に移植し、該膜インサートの下側を***終了皮膚線維芽細胞のフィーダー層で被覆するかわりに単離タンパク質複合体で被覆する。細胞を、無血清培地のみ、または患者から採取した自家血清を添加した培地、または単離タンパク質複合体を含む培地で増殖させる。単離タンパク質複合体存在下で増殖させたORS由来細胞の増殖速度を、従来の方法を使用してインサート上で増殖させた細胞と比較する。
患者血液から精製された自家ビトロネクチン(通常は血液中に0.4mg/mLで存在する)を、ex vivoにおける患者自身のケラチノサイトの増殖を支持するために使用する。本発明者らは、ビトロネクチンに対して作製されたモノクローナル抗体でありヒト血清からのビトロネクチンの精製における使用に成功している抗体(アンダーウッド(Underwood)ら、2001、J Immunol Method.、第247巻、p.217〜24)について検討する。検討用に選択したモノクローナル抗体を、血清からのVNの精製について記載された方法と同様の方法を使用して、精製用マトリクス支持体に連結させる。この段階で、本発明者らは、1m2の患者の細胞を培養するためには0.25mgのVNが必要であると推測するが、この量は20mLの患者血液から容易に得られるはずである。アンダーウッド(Underwood)ら、2001、前掲による精製方法を、最小限の操作および簡便性に力点をおいて改変するが、理想的には2〜3回の洗浄ステップだけで済む使い捨てのアフィニティ精製マトリクスを開発することが目的である。VNは患者自身に由来するため、得られたVNが依然として効果的に細胞増殖を促進可能であるなら、純粋なVNである必要性は低減される。したがって、開発されたプロトコールを使用して精製されたVNを、ケラチノサイトの増殖を促進する有効性について評価するとともに、SDS−PAGE、N末端タンパク質配列決定、静電噴霧質量分析法、ならびにIGFおよびIGFBPの結合といった標準的生化学的分析を通して評価し、またプロメガ(株)(Promega Pty.Ltd.)から購入したVNと比較する。
Claims (30)
- (i)IGF−IおよびIGF−IIから選択された少なくとも1種類のIGF、
(ii)ビトロネクチン(VN)またはαvインテグリン受容体と結合可能なその断片、
(iii)非共有結合により会合しているタンパク質複合体中にIGF−Iが存在する場合、IGFBP、
(iv)上皮成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のうちの少なくとも一方、および
(v)無血清、または濃度が1%(v/v)以下である血清
を含むことを特徴とする哺乳動物上皮細胞培養培地。 - 血清の濃度が0.5%(v/v)以下である、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 血清の濃度が0.1%(v/v)以下である、請求項2に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 血清を含まないことを特徴とする請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記IGFがIGF−IIである、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記IGFがIGF−Iである、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記IGFBPが、IGFBP1、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP5、およびIGFBP6からなる群から選択される、請求項6に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記IGFBPが、IGFBP3およびIGFBP5からなる群から選択される、請求項7に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記IGFBPがIGFBP5である、請求項8に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記VN断片がヘパリン結合性ドメイン(HBD)を含まない、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記VN断片が成熟型VNの53〜64番目の残基を有するポリアニオン領域を含む、請求項10に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記VN断片が、αvβ3インテグリンまたはαvβ5インテグリンから選択されるインテグリン受容体に結合することができる、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- ビトロネクチン(VN)が精製された自己ビトロネクチン(VN)である、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- IGF−I、IGFBP、およびビトロネクチンを単離型タンパク質複合体の形で含む、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- IGF−IIおよびビトロネクチンを単離型タンパク質複合体の形で含む、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 前記単離型タンパク質複合体が合成キメラタンパク質である、請求項14または請求項15に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 初代上皮細胞を培養する際に使用される、請求項1に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地。
- 培養容器と、請求項1〜17のいずれか1項に記載の哺乳動物上皮細胞培養培地とからなる哺乳動物上皮細胞培養システム。
- ビトロネクチンおよびフィブロネクチンのうち少なくともいずれか、またはこれらの断片が、固定、結合、またはその他の方法で前記培養容器に結び付いている、請求項18に記載の哺乳動物上皮細胞培養システム。
- 請求項18または請求項19に記載の哺乳動物上皮細胞培養システムで1または複数の哺乳動物細胞を培養する工程を含む細胞培養方法。
- 培養期間のうち少なくとも一部の期間はフィーダー細胞が存在しない、請求項20に記載の方法。
- 前記1または複数の哺乳動物細胞が上皮細胞である、請求項20に記載の方法。
- 前記1または複数の哺乳動物細胞がケラチノサイトまたはケラチノサイト前駆細胞である、請求項22に記載の方法。
- 前記1または複数の哺乳動物細胞が角膜細胞である、請求項22に記載の方法。
- 請求項20に記載の方法に従って1または複数のケラチノサイトを培養し、培養ケラチノサイトを生産する工程と、
前記培養ケラチノサイトを、薬剤として許容可能な担体、希釈剤、もしくは賦形剤と組み合わせて、薬剤組成物を生産する工程と、
からなるケラチノサイトまたはケラチノサイト前駆細胞をエアロゾル送達するための薬剤組成物の製造方法。 - 噴射剤を加える工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
- フィブリン糊を加える工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
- IGF−IおよびIGF−IIから選択された少なくとも1種類のIGFを加える工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
- IGF−I、IGFBP、およびビトロネクチンまたはαvインテグリン受容体に結合可能なその断片が単離型タンパク質複合体の形で加えられる、請求項28に記載の方法。
- IGF−II、およびビトロネクチンまたはαvインテグリン受容体に結合可能なその断片が単離型タンパク質複合体の形で加えられる、請求項28に記載の方法。
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