JP4531538B2 - ポリビニルアルコール系樹脂及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有する新規なポリビニルアルコール系樹脂及びその用途に関し、さらに詳しくは、水溶液の粘度安定性、高速塗工性、架橋剤との反応性、フィルムとしたときの水溶性に優れ、さらに、これらの特性をpHによって制御することが可能であるポリビニルアルコール系樹脂及びその用途に関する。
従来より、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する)は、その優れた水溶性、界面特性、皮膜特性(造膜性、強度、耐油性等)、等を利用して、分散剤、乳化剤、懸濁剤、繊維加工剤、紙加工剤、バインダー、接着剤、フィルム等に広く用いられている。
かかるPVA系樹脂は、その使用目的に応じた変性が試みられており、共重合により種々の官能基が側鎖に導入された変性PVAが上市されている。中でも、側鎖にカルボキシル基を導入した変性PVAは、繊維加工剤、紙加工剤として広く用いられている。このカルボキシル基変性PVAは、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸とビニルエステル化合物とを共重合したのち、ケン化されて製造されるもので、未変性のPVAと比較して、水溶性、水溶液の粘度安定性、高剪断速度下での流動特性、金属イオンとのキレート形成能に優れており(例えば、非特許文献1参照。)、紙加工剤として用いた場合、紙中の硫酸バンドとの反応によって表面に効率良く歩留まり、優れたバリヤー性が得られることが知られている。
POLYVINYL ALCOHOL−DEVELOPMENTS、Edited by C.A.FINCH、1992年、p157
しかしながら、上述の非特許文献1に記載のカルボキシル基変性PVAは、カルボキシル基が隣接水酸基との反応によってラクトン環を形成しやすいため、共重合によって導入されたカルボキシル基の一部が不活性となり、また、その特性向上のために変性割合を増やそうとすると、同様にラクトン環形成によって水酸基量が減少したり、あるいは分子間架橋のため、PVA系樹脂本来の特徴である水溶性が損なわれる恐れがあった。すなわち、近年、紙加工用途において求められているさらなる表面強度や、使用量低減の要求に対して、かかるカルボキシル基変性PVAでは対応できなくなっているのが現状であり、これに代わる変性PVA系樹脂が求められている。
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有するPVA系樹脂が上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
かかる側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有するPVA系樹脂は、一般式(1)で表される構造単位を含有するPVA系樹脂である。
Figure 0004531538
(式中、R は水素原子、アルキル基、アリル基またはアルカリ金属を示す。)
本発明の一般式(1)で示される側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有する構造単位を含有するPVA系樹脂は、水溶液の粘度安定性、高速塗工性に優れ、カルボキシル基による金属イオンのキレート形成能、各種架橋剤との反応性に優れることから、紙加工剤、耐水性被膜剤(特に感熱記録用媒体の保護層用樹脂)、接着剤等に好適に用いられる。また、成形物、特にフィルムとしたときの水への溶解性に優れ、農薬、洗剤、洗濯用衣類、土木用添加剤、殺菌剤、染料、顔料などの包装用水溶性フィルムとして有効である。また、該PVA系樹脂は、その水溶液のpHを酸性とすることでハイドロゲルとなり、その際に、水溶液中に混在する有機化合物をゲル中に取り込むため、各種有機化合物の分離回収剤として使用することも可能である。さらに、本発明のPVA系樹脂は、その特性を利用して各種用途、特には接着剤、乳化剤、懸濁剤、繊維加工剤等の用途に有効である。
以下、本発明について詳述する。
本発明のPVA系樹脂は、側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有するもので、より具体的には下記一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂である。
Figure 0004531538
上記一般式(1)において、R は水素原子、アルキル基、またはアルカリ金属を示し、該アルキル基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ベフェニル基等が好ましく、該アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムが好ましい
かかるPVA系樹脂を得るに当たっては、特に限定されないが、ビニルエステル系単量体と下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法が好ましく用いられる。
Figure 0004531538

一般式(2)で示される化合物としては、ウンデシレン酸およびそのエステル、塩等の誘導体が挙げられ、中でも入手の容易さや良好な共重合性を有する点で、特にRが水素であるウンデシレン酸が好ましい。
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済的な点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
また、本発明においては、上記の共重合成分以外にも本発明の目的を阻害しない範囲において、他の単量体を0.1〜20モル%程度共重合させることも可能で、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
さらに、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体、アセトアセチル基含有単量体、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、エチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等も挙げられる。
中でも、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン類を共重合成分として得られる、α―オレフィン−ビニルアルコール共重合体は、乳化力向上や水溶液の粘度安定性の点で好ましく、かかるα―オレフィンの好ましい含有量は0.1〜20モル%(さらには2〜10モル%)である。
上記のビニルエステル系単量体と一般式(2)で示される化合物(さらには他の単量体)を共重合する方法としては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
共重合時の単量体成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用される。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(単量体)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられ、重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、特には0.02〜0.15モル%が好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により30℃〜沸点程度で行われ、より具体的には、35〜150℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行われる。
本発明においては、一般式(2)で示される化合物の共重合割合は特に限定されないが、後述のカルボキシル基含有アルキル基の導入量に合わせて共重合割合を決定すればよい。
得られた共重合体は、次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系単量体及び一般式(2)で示される化合物の合計量1モルに対して0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜15ミリモルの割合が適当である。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃(特には、20〜50℃)であることが好ましい。
かくして得られるPVA系樹脂の側鎖に存在するカルボキシル基含有アルキル基の含有量は、特に限定されないが、0.1〜20モル%(さらには0.5〜15モル%、特には1〜10モル%)であることが好ましい。かかるカルボキシル基含有アルキル基の含有量が0.1モル%未満である場合、水溶液の粘度安定性、高速塗工性の点で効果が認められず、架橋剤との反応性も低いなど、本発明の作用効果が十分に得られず、逆に20モル%を超えると、共重合時の重合速度が低くなったり、得られたPVA系樹脂の重合度が低くなったりして、その結果、紙表面サイジング剤として用いた場合、充分な表面紙力強度が得られなかったり、フィルムあるいは被覆剤として用いた場合は、強度および耐水性が不充分となる場合があるため好ましくない。
本発明のPVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は使用目的により適宜選択され、特に限定されないが、通常は300〜4000(さらには300〜2600、特には500〜2200)であることが好ましく、かかる平均重合度が300未満の場合、被膜にしたときの強度が低くなるため好ましくない。また、本発明の効果が得られるに充分な量のカルボキシル基含有アルキル基をPVA系樹脂中に導入する場合、平均重合度が4000を超えるPVAを得ることは困難である。
また、かかるPVA系樹脂のケン化度は特に限定されず、使用目的により適宜選択されるが、通常は50モル%以上(さらには70モル%以上、特には80モル%以上)であることが好ましく、かかるケン化度が50モル%未満では水溶性が低くなるため、好ましくない。
かくして得られた側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有するPVA系樹脂は、カルボキシル基による高分子電解質としての特性を有し、かかるカルボキシル基はアルキル基を介して主鎖と結合しており、分子内ラクトン環形成がおこりにくいため、非特許文献1に記載のカルボキシル基変性PVAよりも少ない変性量で同等以上の効果を得ることができる。
すなわち、かかるPVA系樹脂は、通常の未変性PVA系樹脂と比較して、水への溶解速度が大きく、水溶液の粘度安定性も優れており、カルボキシル基による金属イオンのキレート形成能や、各種架橋剤との反応性にも優れている。また、かかるPVA系樹脂の水溶液は、高速塗工時の高剪断下においても異常流動をおこすことなく、良好な塗工性を有する。また、成形物、特にフィルムとしたときの水への溶解性に優れている。さらに、かかるPVA系樹脂の水溶液は、pHを酸性にすることでゲル化するため、容易にハイドロゲルを得ることができる。
かかるPVA系樹脂の金属イオンとのキレート形成能を利用した用途として、紙加工剤(表面サイジング剤)が挙げられる。これは、かかるPVA系樹脂を含有する塗工液を紙表面に塗工した際に、紙中の硫酸バンドとの反応により、紙表面に効率良く歩留まり、少量の使用で高いバリヤー性能を示すものである。
同様に、かかるPVA系樹脂は各種金属表面とも良好な接着性を示し、その特性の利用例としては、スケーリング防止剤が挙げられる。これは、例えば、塩化ビニルの重合缶の缶壁にかかるPVA系樹脂の水溶液を塗布、乾燥させて、被膜を形成することで、塩化ビニル重合時に缶内壁に付着するスケールを防止することが可能になるものである。かかるスケール防止剤には、さらに、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、アミン変性PVA系樹脂などの含窒素高分子化合物等や、ポリフェノール類等の抗酸化剤、キノン化合物等を併用することが効果的である。
また、かかるPVA系樹脂水溶液を凍結−融解を繰り返したり、水溶液のpHを酸性にすることで、粘着性、保水性、及び低温柔軟性に優れたハイドロゲルを得ることが出来る。その際、水溶液中に各種金属塩を共存させておくことで、金属イオンが複合されたハイドロゲルを得ることも可能であり、かかるハイドロゲルは、生体研究用、生体治療用、生体診断用等の生体電極用のイオン導電性粘着剤や経皮吸収膜剤用、冷却治療用等の含水貼付剤等に用いられるハイドロゲルとして有用である。
かかる金属塩としては、塩化カリウム、塩化銀、塩化セシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム等の一価の金属塩よりも、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化パラジウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化ニッケル等を挙げることができる。
また、かかるPVA系樹脂のpH変化によるゲル化作用(酸性にてゲル化し、アルカリ性にて解ゲルする)を利用する用途として、有機化合物の分離回収剤が挙げられる。これは、水中に溶解あるいは分散状態にある有機化合物に対し、かかるPVA系樹脂の水溶液を混在させ、系のpHを酸性にすることでPVA系樹脂をハイドロゲルとし、その中に有機化合物を取り込むというもので、生成した有機化合物含有ハイドロゲルを濾過等の方法により水性液から分離することで、かかる有機化合物の除去回収が可能になる。
かかる有機化合物除去剤の対象となる有機物としては、ダイオキシン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリブロモエチレン、ジブロモエタン、ジブロモメタン、ダイオキシンなどの有機ハロゲン化合物、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、パラクロロフェノールなどの芳香族化合物などが挙げられる。
また、カルボキシル基がもつ高い反応性を利用した例として、種々の有機系および無機系架橋剤の併用による、耐水性フィルムあるいは被膜が挙げられる。かかる有機系架橋剤としてはアルデヒド系化合物(ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルジアルデヒド等)、アミノ樹脂(尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン系樹脂、メチロールメラミン等)、エポキシ系化合物(水溶性エポキシ樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等)、アミン系化合物(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、1,3―ビスアミノシクロヘキサン、ポリオキシアルキレン型ジアミン又はポリアミン等)、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物(アジピン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、ポリヒドラジド等)、酸無水物、ポリイソシアネート、ブロックイソシアネートなどが挙げられる。また、無機系架橋剤としては、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ砂等)、ジルコニウム化合物(クロロヒドロキシオキソジルコニウム(第一稀元素化学製「ジルコゾールZC−2」)、硝酸ジルコニル(第一稀元素化学製「ジルコゾールZN」))、チタニウム化合物(テトラアルコキシチタネート等)、アルミニウム化合物(硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等)、リン化合物(亜リン酸エステル、ビスフェノールA変性ポリリン酸等)、アルコキシ基やグリシジル基などの反応性官能基を有するシリコーン化合物、などが挙げられ、これらの架橋剤を単独あるいは二種類以上併用してもよい。中でも、水溶性エポキシ樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等のエポキシ系化合物が有効であり、本発明のPVA系樹脂を感熱記録用媒体の保護層用樹脂として用いる際の架橋剤として好適である。
また、本発明のPVA系樹脂は、農薬、洗剤、洗濯用衣類、土木用添加剤、殺菌剤、染料、顔料等の各種物品に対する水溶性包装材の原料として有用である。かかる水溶性包装用途に用いるときのPVA系樹脂のケン化度は、65〜98モル%が好ましい。特に酸性物質、あるいはアルカリ性物質を包装する場合には、そのケン化度は98.1〜100モル%が好ましく、更には99〜100モル%が好ましく、これは、かかるケン化度が98.1モル%未満では、酸性物質やアルカリ性物質を包装し保管する際に、フィルムの水溶解性が経時により低下する恐れがあるためである。
更に、本発明のPVA系樹脂はその特性を利用して各種用途に使用することができ、一部の用途については前述したが、その他の具体例として以下のものが挙げられる。
(1)接着剤関係
木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バインダー、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト型接着力、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤、等。
(2)成形物関係
繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用、水溶性繊維、等。
(3)被覆剤関係
紙のクリアーコーティング剤、紙の顔料コーティング剤、紙のサイジング剤、感熱紙用オーバーコート剤、繊維製品用サイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、船底塗料、スケ―リング防止剤、インクジェット用紙のシリカバインダー用途等。
(4)乳化剤関係
酢酸ビニル等のエチレン性不飽和化合物、ブタジエン性化合物、各種アクリル系単量体の乳化重合用乳化剤、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂等の疎水性樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン、ビチューメン等の後乳化剤、等。
(5)懸濁剤関係
塗料、墨汁、水性カラー、接着剤等の顔料分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤、等。
(6)疎水性樹脂用ブレンド剤関係
疎水性樹脂の帯電防止剤、及び親水性付与剤、複合繊維、フィルムその他成形物用添加剤、等。
(7)凝集剤関係
水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、パルプ、スラリーの濾水性、等。
(8)増粘剤関係
各種水溶液やエマルジョンの増粘剤、ゲル化剤等。
(9)土壌改良剤関係
(10)感光剤、感電子関係、感光性レジスト樹脂、等。
(11)その他イオン交換樹脂、イオン交換膜関係、キレート交換樹脂、等。上記の中でも、(1)〜(9)の用途に特にその有用性が期待される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1200g、メタノール60g、ウンデシレン酸(R、R、R、R、Rが水素、Rが水素で、n=8)102.6g(4モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.04モル%(対仕込み酢酸ビニル単量体)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。重合を開始して2時間後に、更にアゾビスイソブチロニトリル0.04モル%(対初期の仕込み酢酸ビニル単量体)を添加し更に重合を続けた。その後、酢酸ビニルの重合率が75.2%となった時点で、重合禁止剤仕込み重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニル単量体を系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モル単位に対して8ミリモルとなる量を加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したPVAを濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
得られたPVA系樹脂(I)のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.2モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、860であった。又、該PVA系樹脂(I)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、8.94mPa・s(20℃)であり、変性量はNMR測定より算出したところ3.8モル%であった。
得られたPVA系樹脂(I)のIRスペクトル及びH−NMR(内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:DMSO−d6)スペクトルの帰属は以下の通りであった。IRチャートを図1に、NMRチャートを図2に示す。
[IR](図1参照)
3330cm−1:OH(strong)
2940、2910cm−1:メチレン(strong)
1650cm−1:−COOH(medium broad)
1560cm−1:−COO−Na+(medium)
1430cm−1:メチレン(strong)
1240cm−1:メチン(weak)
1100cm−1:C−O(medium)
850cm−1:メチレン(medium)
670cm−1:OH(mediumu broad)
H−NMR](図2参照)
1.21〜1.23ppm:メチレンプロトン(変性種に起因)
1.35〜1.58ppm:メチレンプロトン
1.86〜1.92ppm:メチレンプロトン(変性種に起因)
3.81〜3.85ppm:メチンプロトン
4.13〜4.78ppm:水酸基
得られたPVA系樹脂(I)について以下の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
[水溶液の粘度安定性]
PVA系樹脂の8%水溶液をガラス容器に入れ、水溶液の温度を20℃とした。次に、ガラス容器を5℃の恒温水槽内に放置して、1時間及び24時間放置後の粘度を測定し、増粘倍率を求め以下の通り評価した。
○・・・増粘倍率が2.5倍未満
×・・・増粘倍率が2.5倍以上
尚、増粘倍率は下式より算出される。
増粘倍率=(5℃で24時間放置後の粘度)/(5℃で1時間放置後の粘度)
[高速塗工性]
PVA系樹脂の10%水溶液の30℃における高剪断速度下での粘度上昇を測定し、下記の通り評価した。尚、測定装置としては島津製作所社製のフローテスターCFT−500Cを用いた。
○・・・剪断速度が6×10/s以上で粘度上昇が極大値を示す場合
×・・・剪断速度が6×10/s未満で粘度上昇が極大値を示す場合
[フィルムの水溶性]
PVA系樹脂の10%水溶液を60℃の熱ロールに流延し厚さ30μmのキャストフィルムを作成した。フィルムを40mm×40mmに切り、これをスライドマウントにはさみ、20℃で攪拌している水中に浸漬し、フィルムが完全に溶解するまで時間(秒数)を測定し以下の基準で評価した。
○:40秒未満
△:40〜70秒
×:70秒以上
[フィルムの耐アルカリ性]
上記のフィルムを熱シールして作成した100mm×100mmの袋に、炭酸ナトリウムを実包し、40℃×80%RHの条件にて半年間放置した後、袋から40mm×40mmのフィルム片を採集し、20℃で攪拌している水中に浸漬しフィルムが完全に溶解するまで時間(秒数)を測定し以下の基準で評価した。
○:炭酸ナトリウム実包後の完全溶解時間/実包前の完全溶解時間が1.3未満
△:炭酸ナトリウム実包後の完全溶解時間/実包前の完全溶解時間が1.3以上、 1.5未満
×:炭酸ナトリウム実包後の完全溶解時間/実包前の完全溶解時間が1.5以上
[有機化合物の分離回収性]
PVA系樹脂の4%水溶液100g中に、トリクロロエチレン(ETC)を20g添加し振とう後、1N塩酸を用い、水溶液のpHを4.0以下に調整した。その後、生成したハイドロゲルを濾紙にて濾別後、濾液を60℃で1hr静置した後、分離した水/ETC層の回収を行い以下の基準で評価した。
○:濾液中のETC量が5g未満
△:濾液中のETC量が5g以上、10g未満
×:濾液中のETC量が10g以上
[スケーリング防止性]
PVA系樹脂の4%水溶液を、内容量1Lのリフラックスコンデンサーおよびジャケット付きステンレス製重合槽の内面にスプレー塗布し乾燥した。
この重合槽に、PVA(ケン化度80モル%、重合度2400)0.14g、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート0.08g、脱イオン水400g、塩化ビニルモノマー200gを仕込み、撹拌しながら、ジャケットに熱水を通して57℃まで昇温し、重合を開始した。重合開始時に約7.0kg/cmGであった重合槽内圧力が6.0kg/cmGに低下したところで、未反応モノマーを回収、重合体スラリーを系外に取り出した。重合槽壁に付着した重合後スケールをスクラバーで剥がし、スケール付着量を測定し、以下の基準で評価した。
○:スケール付着量10mg未満
△:スケール付着量10mg以上、50mg未満
×:スケール付着量50mg以上
[紙表面サイズ剤適性]
PVA系樹脂の4%水溶液を、秤量60g/mの酸性紙に樹脂固形分1.0g/mになるように試験用サイズプレス装置(熊谷理機工業社製、速度:90m/min、線圧:11kg/cm)で塗布し、円筒回転式ドライヤーで105℃、2分間の条件で乾燥後、更にスーパーカレンダー(温度:80℃、線圧:40kg/cm)で両面仕上げを行い、コーティング紙を得た。
得られたコーティング紙についてステキヒトサイズ度、透気度、吸油度及び表面強度の評価を以下の要領で行った。
ステキヒトサイズ度:JIS P−8122に準拠して測定を行った。
透気度:JIS P−8117に準拠して、王研式透気度試験器(旭精工社製)に試験片を固定し、100mLの空気が通過する時間(秒)を測定した。
吸油度:JIS P−8130に準拠して、オイル吸油度試験器(熊谷理機工業社製)を用いて、油が紙の表面から内部へ吸収されていく時間(秒)を測定した。
表面紙力強度:IGT印刷試験機(熊谷理器工業社製)により、インキにFINE INK TV−20(大日本インキ化学工業社製)を用いて、IGTピック強度(cm/秒)の測定を行った。
[感熱用途]
下記の要領で感熱記録用媒体を作製し、その評価を行った。
イ液の調製:3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン10部、1,3−ジ(2−メチルフェノキシ)エタン25部、メチルセルロース5%水溶液5部、水50部を混合し、サンドミルで平均粒子径が3μmになるまで粉砕した。
ロ液の調製:4−ヒドロキシ−4−イソプロポキシジフェニルスルフォン10部、メチルセルロース 5%水溶液5部、水25部を混合し、サンドミルで平均粒子径が3μmになるまで粉砕した。
記録層の作製:イ液90部、ロ液40部、酸化澱粉20%水溶液50部、水10部を混合、攪拌した後、乾燥後の塗布量が6g/mになるように塗布乾燥し、感熱記録層を得た。
保護層の作製:得られた感熱記録層の上にPVA系樹脂の10%水溶液200部、カオリン70部、ステアリン酸亜鉛30%水分散液30部、ポリアミドエピクロルヒドリン5%水溶液20部、水100部を混合、攪拌した塗工液をロールブレイドコーティング法により乾燥後の塗布量が4g/mとなるよう塗布乾燥しカレンダー処理を行い、保護層を有する感熱記録体を得た。
記録濃度:感熱シミュレーター(大倉電機社製、TH−PMID)にて得られた記録画像の濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、RD−100型)にて測定。
耐溶剤性:記録面にエタノールを一滴垂らし、カブリの状態を目視で観察。
◎:実用上全く問題なし
○:実用上ほとんど問題なし
△:実用上若干問題有り
×:実用上問題有り
耐可塑剤性:記録後の感熱記録体を、可塑剤を含む塩化ビニルフィルムを三重に巻き付け40℃で72時間放置した後の褪色を目視で観察。
◎:実用上全く問題なし
○:実用上ほとんど問題なし
△:実用上若干問題有り
×:実用上問題有り
印刷適性:オフリン用インキ(タック値10)0.4ccを明製作所社製RI型試験器機にて感熱記録体の保護層上に印刷し、そのインクセット性を目視で観察。
◎:実用上全く問題なし
○:実用上ほとんど問題なし
△:実用上若干問題有り
×:実用上問題有り
実施例2
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1600g、メタノール320g、ウンデシレン酸(R、R、R、R、Rが水素、Rが水素で、n=8)68.4g(2モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.04モル%(対仕込み酢酸ビニル単量体)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。重合を開始して2時間後に、更にアゾビスイソブチロニトリル0.04モル%(対初期の仕込み酢酸ビニル単量体)を添加し更に重合を続けた。その後、酢酸ビニルの重合率が73.1%となった時点で、重合禁止剤仕込み重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニル単量体を系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モル単位に対して8ミリモルとなる量を加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したPVA系樹脂を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
得られたPVA系樹脂(II)のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.6モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準して分析を行ったところ、1300であった。又、該PVA系樹脂(II)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、12.4mPa・s(20℃)であり、変性量はH−NMR測定より算出したところ2.1モル%であった。
得られたPVA系樹脂(II)について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
実施例3
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1600g、メタノール320g、ウンデシレン酸ベフェニル(R、R、R、R、Rが水素、Rがベフェニル基(−C2245)、n=8)45.8g(0.5モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.06モル%(対仕込み酢酸ビニル単量体)添加し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。
酢酸ビニルの重合率が81.2%となった時点で、重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニル単量体を系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モル単位に対して9ミリモルとなる量を加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。
生成したPVA系樹脂を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
得られたPVA系樹脂(III)のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.4モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、2100であった。又、該PVA系樹脂の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、46.5mPa・s(20℃)であり、変性量はH−NMR測定より算出したところ0.3モル%であった。
得られたPVA系樹脂(III)のIRスペクトル及び1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン、溶媒:DMSO―d6)スペクトルの帰属は以下の通りであった。
[IR](図3参照)
3330cm−1:OH(strong)
2940、2910cm−1:メチレン(strong)
1720cm−1:−COO−R
1650cm−1:−COOH(medium broad)
1560cm−1:−COO−Na+(medium)
1430cm−1:メチレン(strong)
1240cm−1:メチン(weak)
1100cm−1:C−O(medium)
850cm−1:メチレン(medium)
670cm−1:OH(mediumu broad)
H−NMR](図4参照)
1.21〜1.23ppm:メチレンプロトン(変性種に起因)
1.35〜1.58ppm:メチレンプロトン
1.86〜1.92ppm:メチレンプロトン(変性種に起因)
3.81〜3.85ppm:メチンプロトン
4.13〜4.78ppm:水酸基
得られたPVA系樹脂(III)について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
実施例4
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1800g、メタノール1260g、ウンデシレン酸メチル(R、R、R、R、Rが水素、Rがメチル基で、n=8)8.28g(0.2モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.06モル%(対仕込み酢酸ビニル単量体)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。
酢酸ビニルの重合率が80.1%となった時点で、重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニル単量体を系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モル単位に対して9ミリモルとなる量を加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。
生成したPVA系樹脂(IV)を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
得られたPVA系樹脂(IV)のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.4モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、1000であった。又、該PVA系樹脂の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、11.0mPa・s(20℃)であり、変性量はNMR測定より算出したところ0.21モル%であった。
得られたPVA系樹脂(IV)のIRスペクトル及びH−NMR(内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:DMSO−d6)スペクトルの帰属は以下の通りであった。
[IR]実施例3の図3と同様のスペクトルが得られた。
H−NMR]実施例3の図4と同様のスペクトルが得られた。
得られたPVA系樹脂(IV)について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
比較例1
実施例1において、ウンデシレン酸を仕込まず、酢酸ビニルのみを重合(S/M=0.5、S:メタノール、M:酢酸ビニル)し、ケン化を行った以外は同様に行い、PVA系樹脂(V)を得た。
得られたPVA系樹脂(V)のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.5モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、1100であった。又、該PVA系樹脂(V)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、13.1mPa・s(20℃)であった。
得られたPVA系樹脂(V)について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
比較例2
実施例1においてウンデシレン酸に代えてマレイン酸モノメチル(2mol%)を添加し、重合(S/M=0.5、S:メタノール、M:酢酸ビニル)し、ケン化を行った以外は同様に行い、PVA系樹脂(VI)を得た。
得られたPVA系樹脂(VI)の鹸化度は99.2モル%であり、重合度は1100であった。また該PVA系樹脂(VI)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ 13.0mPa・s(20℃)であった。
得られたPVA系樹脂(VI)について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
Figure 0004531538
Figure 0004531538
Figure 0004531538
Figure 0004531538
本発明のPVA系樹脂は、水溶液の粘度安定性、高速塗工性に優れ、金属イオンのキレート能、各種架橋剤との反応性に優れることから、紙加工剤、耐水性被膜剤、接着剤、各種物品の包装用水溶性フィルム、各種有機化合物の分離回収剤、接着剤、乳化剤、懸濁材、繊維加工剤等の用途に有効である。
PVA系樹脂(I)のIRスペクトルチャートである。 PVA系樹脂(I)のH−NMRスペクトルチャートである。 PVA系樹脂(III)のIRスペクトルチャートである。 PVA系樹脂(III)のH−NMRスペクトルチャートである。

Claims (14)

  1. 一般式(1)で示される側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有する構造単位を含有することを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂。
    Figure 0004531538
    (式中、R は水素原子、アルキル基、またはアルカリ金属を示す)
  2. ビニルエステル系単量体と一般式(2)で示されるカルボキシル基含有アルキル基を有する不飽和単量体との共重合体をケン化してなることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂。
    Figure 0004531538
    (式中、R は水素原子、アルキル基、またはアルカリ金属を示す)
  3. 一般式(1)で示される側鎖にカルボキシル基含有アルキル基を有する構造単位の含有量が0.1〜20モル%であることを特徴とする請求項1または2記載のポリビニルアルコール系樹脂。
  4. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする紙加工剤。
  5. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする接着剤。
  6. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とするハイドロゲル。
  7. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする有機化合物除去剤。
  8. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする成形物。
  9. 農薬、洗剤、洗濯用衣類、土木用添加剤、殺菌剤、染料及び顔料から選ばれる物品の包装用水溶性フィルムであることを特徴とする請求項記載の成形物。
  10. ケン化度が90モル%以上のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする請求項またはいずれか記載の成形物。
  11. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする被覆剤。
  12. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とするスケーリング防止剤。
  13. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする乳化剤。
  14. 請求項1〜いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする懸濁剤。
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