以下、本発明の実施の形態を実施例及び参考例に基づいて説明する。
〈参考例1〉
図1、図2及び図3は本発明の実施の形態を説明するための第1参考例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置の全体構成を示す概略図である。ここで、図1は内燃機関の始動時及び暖機中、図2は内燃機関の高水温制御時(一般走行による低負荷時)、図3は内燃機関の低水温制御時(高負荷時)における制御状態を示す。
図1、図2及び図3において、内燃機関(エンジン)1とラジエータ3との間には、冷却水を循環するための往路としての冷却水通路2及び復路としての冷却水通路4が接続されている。このうち、往路の冷却水通路2の途中にはバイパス通路5が接続され、このバイパス通路5の下流側は2温度切替弁6の導入口6aに接続されている。また、2温度切替弁6の導出口6b,6cにはそれぞれ低水温制御用冷却水通路7及び高水温制御用冷却水通路8が接続され2分岐されている。2温度切替弁6には吸気導入管9が接続されており、吸気導入管9の途中に配設されている常開の吸気導入制御弁10を介して吸気導入管9から導入される内燃機関1の吸気圧PMにより弁位置が切替えられることでバイパス通路5からの冷却水が低水温制御用冷却水通路7(図3参照)または高水温制御用冷却水通路8(図1及び図2参照)の何れか1つの通路に導入される。
また、復路の冷却水通路4の途中にはサーモスタット11が設けられており、ラジエータ3を通過し冷却された冷却水はサーモスタット11の作動(図2及び図3参照)に伴ってその導入口11aから導出口11bへと導かれる。更に、低水温制御用冷却水通路7の下流側がサーモスタット11の導入口11cに接続されている。このため、低水温制御用冷却水通路7がサーモスタット11を介して復路の冷却水通路4に接続されている。そして、高水温制御用冷却水通路8の下流側には蓄熱器12が設けられている。蓄熱器12の下流側には蓄熱水通路13が接続されており、この蓄熱水通路13は下流側で復路の冷却水通路9と合流され内燃機関1の戻り側と接続されている。更に、高水温制御用冷却水通路8の途中にはバイパス通路14が接続されており、このバイパス通路14の下流側はサーモスタット11の導入口11dに接続されている。
内燃機関1には、冷却水の冷却水温THWを検出する水温センサ21、図示しない吸気通路内の吸気圧PMを検出する吸気圧センサ22、図示しないクランク軸の回転に基づく機関回転数NEを検出するクランク角センサ23が配設されている。なお、本参考例では蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温は後述のように、推定によって求められるため蓄熱水温センサ24は不要である。
これら水温センサ21、吸気圧センサ22及びクランク角センサ23からの出力信号はECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)30に入力される。また、蓄熱水温センサ24を必要とするシステムではその出力信号もECU30に入力される。ECU30は、周知の中央処理装置としてのCPU、制御プログラムを格納したROM、各種データを格納するRAM、B/U(バックアップ)RAM、入出力回路及びそれらを接続するバスライン等からなる論理演算回路として構成されている。なお、本システムが故障時には、ECU30によるフェイルセーフ処理として、常開の吸気導入制御弁10が強制的に閉弁状態とされることで吸気導入管9が閉塞状態とされ2温度切替弁6の弁位置が低水温制御側に保持される(図3参照)。
次に、本参考例の内燃機関用熱制御システムにおける内燃機関1の冷却系統における冷却水の流れについて図1、図2及び図3を参照して説明する。
まず、図1に示す内燃機関1の始動時及び暖機中における冷却水の流れについて説明する。内燃機関1の始動時及び暖機中では、内燃機関1で発生される吸気圧(絶対圧が小さな負圧)が吸気導入管9を介して2温度切替弁6に導入されることで、2温度切替弁6の弁位置はばね(図示略)の付勢力に打勝って図示のように左方向に移動保持される。このとき、サーモスタット11周囲の冷却水の冷却水温が低いとサーモスタット11の弁位置が図示のように左端に移動保持されることで、ラジエータ3からの復路の冷却水通路4が閉塞される。このため、内燃機関1からの冷却水は冷却水通路2からバイパス通路5側に全て導入されることとなる。そして、バイパス通路5からの冷却水は導入口6aから2温度切替弁6の内部に入りその左方向に移動保持された弁位置によって導出口6c側から高水温制御用冷却水通路8側に導入される。この高水温制御用冷却水通路8側に導入された冷却水はバイパス通路14側にも多少流れるが、その大部分が蓄熱器12側に流れることとなる。このとき、蓄熱器12内に高水温の蓄熱水が貯留されていると、その蓄熱水は蓄熱器12に導入される冷却水によって蓄熱水通路13側に押出されて優先的に内燃機関1内に導入されることとなり、内燃機関1は蓄熱水によって早期暖機されることとなる。
次に、図2に示す内燃機関1の高水温制御時(一般走行による低負荷時)における冷却水の流れについて説明する。内燃機関1の高水温制御時(一般走行による低負荷時)では、内燃機関1で発生される吸気圧(絶対圧が小さな負圧)が吸気導入管9を介して2温度切替弁6に導入されることで、2温度切替弁6の弁位置は始動時及び暖機中と同様、図示のように左方向に移動保持される。また、バイパス通路14の冷却水の冷却水温によってサーモスタット11の弁位置が図示のように中間位置に移動される。このため、内燃機関1からの冷却水は往路の冷却水通路2からラジエータ3側にも多少流れるが大部分はバイパス通路5側に流れることとなる。したがって、ラジエータ3を通過した少量の冷却水は冷却されるが、バイパス通路5からの冷却水の大部分は蓄熱器12側に流れることとなる。このため、蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温は常時、高水温となる。そして、蓄熱器12からの蓄熱水は蓄熱水通路13を通過し、サーモスタット11を通過した復路の冷却水通路4側からの冷却水と合流されたのち内燃機関1内に導入されることで内燃機関1は高水温制御されることとなる。
次に、図3に示す内燃機関1の低水温制御時(高負荷時)における冷却水の流れについて説明する。内燃機関1の低水温制御時(高負荷時)では、内燃機関1で発生される吸気圧(絶対圧が大きな負圧)が吸気導入管9を介して2温度切替弁6に導入されることで、2温度切替弁6の弁位置はばね(図示略)の付勢力によって図示のように右方向に移動保持される。また、低水温制御用冷却水通路7の冷却水の冷却水温によってサーモスタット11の弁位置が図示のように右端に移動保持されることで、サーモスタット11のバイパス通路14側の導入口11dが閉塞される。このため、内燃機関1からの冷却水は往路の冷却水通路2からバイパス通路5側にも多少流れるが、その大部分がラジエータ3側に流れることとなる。このとき、バイパス通路5を通過した冷却水は2温度切替弁6によって全て低水温制御用冷却水通路7側に導入されるため、高水温制御用冷却水通路8側、即ち、蓄熱器12方向には流れない。そして、低水温制御用冷却水通路7側に導入された冷却水によってサーモスタット11周囲が高水温に保持されることで、サーモスタット11の弁位置も右端に保持される。このため、ラジエータ3からの冷却水は復路の冷却水通路4を介して導入口11aからサーモスタット11内部に導入され、サーモスタット11の導入口11cからの冷却水と合流されたのち、サーモスタット11の導出口11bから復路の冷却水通路4を通って内燃機関1内に導入されることで内燃機関1は低水温制御されることとなる。
次に、本発明の実施の形態を説明するための第1参考例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置で使用されているECU30による内燃機関停止時の蓄熱水温等検出の処理手順を示す図4のフローチャートに基づき、図6のタイムチャートを参照して説明する。なお、この内燃機関停止時における検出ルーチンは所定時間毎にECU30にて繰返し実行される。
図4において、ステップS101で、クランク角センサ23にて検出された機関回転数NEが予め設定された所定値α未満であるかが判定される。ステップS101の判定条件が成立、即ち、機関回転数NEがα未満と低いとき(図6参照)には内燃機関1が停止状態にあるとしてステップS102に移行し、このとき内燃機関1の停止時の蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温が、本システムでは図1〜図3に示す蓄熱水温センサ24を有しないため、内燃機関1に配設された水温センサ21からの冷却水温に基づき推定され、蓄熱水温THWW0 (図6参照)としてECU30のRAM内の記憶領域に格納される。次にステップS103に移行して、この時刻が内燃機関停止時刻TT0 (図6に示す停止判定と同時の内燃機関停止時刻)としてECU30のRAM内の記憶領域に格納され、本ルーチンを終了する。一方、ステップS101の判定条件が成立せず、即ち、機関回転数NEがα以上と高いときには内燃機関1が運転状態にあるとして、何もすることなく本ルーチンを終了する。
次に、本発明の実施の形態を説明するための第1参考例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置で使用されているECU30による内燃機関の始動時及び暖機中の故障診断の処理手順を示す図5のフローチャートに基づき、図6のタイムチャートを参照して説明する。なお、この故障診断ルーチンは、図1〜図3に示す蓄熱水温センサ24を有しないシステムに対応し、所定時間毎にECU30にて繰返し実行される。
図5において、ステップS201で、内燃機関1の始動後タイマが作動中であるかが判定される。ステップS201の判定条件が成立せず、即ち、始動後タイマが作動していないときにはステップS202に移行し、図示しないイグニッションスイッチのオン時刻をTT1 (図6に示す内燃機関始動時刻)としたのちステップS203に移行する。ステップS203では、ステップS202による内燃機関1の始動時刻TT1 から図4のステップS103で格納されている内燃機関1の停止時刻TT0 (図6に示す停止判定と同時の内燃機関停止時刻)が減算された内燃機関1の停止後経過時間が予め設定された所定値β以上であるかが判定される。ステップS203の判定条件が成立せず、即ち、内燃機関1の停止後経過時間(TT1 −TT0 )が所定値β未満と経過時間が少ないときには、ステップS204に移行する。
ステップS204では、内燃機関1の停止時の冷却水温と内燃機関1の停止後経過時間とからイグニッションスイッチがオン時の蓄熱器12における蓄熱水温が推定され推定蓄熱水温THWW1 (図6参照)とされる。次にステップS205に移行して、ステップS204で推定された推定蓄熱水温THWW1 が予め設定された所定値γ以上であるかが判定される。ステップS205の判定条件が成立、即ち、推定蓄熱水温THWW1 が所定値γ以上と高水温であるときにはステップS206に移行し、蓄熱による早期な暖機が可能であるとして始動前における冷却水温がTHW0 (図6参照)とされたのちステップS207に移行する。
ステップS207では、内燃機関1の機関回転数NEが予め設定された所定値δ以上であるかが判定される。ステップS207の判定条件が成立、即ち、機関回転数NEが所定値δ以上と高いとき(図6に示す始動判定と同時の内燃機関始動時刻)にはステップS208に移行し、内燃機関1が始動されたとして始動後タイマが起動される。次にステップS209に移行して、始動後タイマ起動後、予め設定された所定時間T1 (図6参照)が経過しており、始動後タイマの終了時であるかが判定される。ステップS209の判定条件が成立、即ち、始動後タイマの終了時であるときにはステップS210に移行し、始動後タイマの終了時における冷却水温がTHW1 とされる。
次に、ステップS211に移行して、ステップS210による始動後タイマの終了時における冷却水温THW1 からステップS206による始動前における冷却水温THW0 が減算され、それが始動後タイマの所定時間T1 で除算されて求められた冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が予め設定された所定値ε以上であるかが判定される。ステップS211の判定条件が成立せず、即ち、冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が所定値ε未満と小さいとき(図6に立ち上がりの破線にて示す異常時冷却水温参照)には蓄熱水循環経路としての高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13を含む蓄熱器12に異常が生じているとしてステップS212に移行し、蓄熱水循環経路を含む蓄熱器12の異常が警告ランプの点灯等によりユーザへ警告される。次にステップS213に移行して、これ以降の始動時及び暖機中における蓄熱水循環経路を含む蓄熱器12側への冷却水の導入が禁止、即ち、吸気導入制御弁10を強制的に閉弁状態とすることで2温度切替弁6の弁位置が図3に示す右方向に保持され、低水温制御用冷却水通路7側のみへの冷却水の導入とされ、本ルーチンを終了する。
一方、ステップS201の判定条件が成立、即ち、始動後タイマが作動中であるときには、何もすることなく本ルーチンを終了する。また、ステップS203の判定条件が成立、即ち、内燃機関1の停止後経過時間(TT1 −TT0 )が所定値β以上と経過時間を経ているとき、またはステップS205の判定条件が成立せず、即ち、推定蓄熱水温THWW1 が所定値γ未満と低水温であるときには蓄熱水が冷え過ぎているとしてステップS214に移行し、蓄熱器12による早期暖機ができないことがユーザへ報知されたのち本ルーチンを終了する。そして、ステップS207の判定条件が成立せず、即ち、機関回転数NEがδ未満と低く、内燃機関1が未だ始動されていないときには何もすることなく本ルーチンを終了する。更に、ステップS209の判定条件が成立せず、即ち、始動後タイマの終了時でないときには何もすることなく本ルーチンを終了する。また、ステップS211の判定条件が成立、即ち、冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が所定値ε以上と大きいとき(図6に立ち上がりの一点鎖線にて示す正常時冷却水温参照)には蓄熱器12等は正常に動作しているとしてそのまま本ルーチンを終了する。
このように、本参考例の内燃機関用熱制御システムの故障診断装置は、内燃機関1の始動時には内燃機関1の冷却系統の冷却水のうち蓄熱器12に貯留された蓄熱水を優先的に前記内燃機関1内に循環する冷却水通路2,4、2温度切替弁6、高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13等からなる蓄熱水循環手段と、内燃機関1内の冷却水の冷却水温THWを検出する水温センサ21からなる冷却水温検出手段と、内燃機関1の停止時における冷却水温THWから推定される蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温THWW0 及び停止時刻TT0 を記憶するECU30にて達成される記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前回の内燃機関1の停止時に推定された蓄熱水温THWW0 と停止時刻TT0 から始動時刻TT1までの停止後経過時間(TT1 −TT0 )とにより内燃機関1の始動時の蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温THWW1 を推定するECU30にて達成される蓄熱水温推定手段と、前記蓄熱水温推定手段で推定された蓄熱水温THWW1 が十分高いにもかかわらず、内燃機関1の暖機中の冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が予め設定された所定値εを下回っているときには、蓄熱水循環経路としての高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13等を含む蓄熱器12の故障であると診断するECU30にて達成される故障診断手段とを具備するものである。
したがって、内燃機関1の停止時、水温センサ21にて検出される内燃機関1内の冷却水の冷却水温THWから蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温THWW0 が推定され、この蓄熱水温THWW0 とその停止時刻TT0 と、内燃機関1の始動時(始動時刻TT1 )における停止後経過時間(TT1 −TT0 )とから、そのときの蓄熱水温THWW1 が推定される。この推定された蓄熱水温THWW1 が十分高いのに、暖機中における冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1}が所定値εより小さいときには、高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13を含む蓄熱器12に何らかの異常が生じていると判るのである。これにより、始動時及び暖機中における蓄熱水循環経路や蓄熱器12の故障が診断できることとなり、ユーザへの警告等が実施できると共に、この場合には蓄熱水循環経路や蓄熱器12側への冷却水の流入を禁止することでフェイルセーフを達成することができる。
〈参考例2〉
図7は本発明の実施の形態を説明するための第2参考例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置で使用されているECU30による内燃機関の始動時及び暖機中の故障診断の処理手順を示すフローチャートである。なお、本参考例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置の構成は上述の第1参考例における図1〜図3の概略図と同一であるためその詳細な説明を省略する。
まず、この故障診断ルーチンに先立って上述の第1参考例と同様に実行されるECU30による内燃機関の停止時の蓄熱水温等検出の処理手順を図4に基づき、図8のタイムチャートを参照して説明する。なお、この内燃機関停止時における検出ルーチンは、図1〜図3に示す蓄熱水温センサ24を有し、蓄熱器12内に貯留されている蓄熱水の蓄熱水温を直接検出するシステムに対応し、所定時間毎にECU30にて繰返し実行される。
図4において、ステップS101で、クランク角センサ23にて検出された機関回転数NEが予め設定された所定値α未満であるかが判定される。ステップS101の判定条件が成立、即ち、機関回転数NEがα未満と低いとき(図8参照)には内燃機関1が停止状態にあるとしてステップS102に移行し、このとき蓄熱水温センサ24にて検出される蓄熱水温が内燃機関停止時の蓄熱水温THWW0 (図8参照)としてECU30のRAM内の記憶領域に格納される。次にステップS103に移行して、この時刻が内燃機関停止時刻TT0 (図8に示す停止判定と同時の内燃機関停止時刻)としてECU30のRAM内の記憶領域に格納され、本ルーチンを終了する。一方、ステップS101の判定条件が成立せず、即ち、機関回転数NEがα以上と高いときには内燃機関1が運転状態にあるとして、何もすることなく本ルーチンを終了する。
次に、図7の故障診断ルーチンについて、図8に示すタイムチャートを参照して説明する。本参考例の故障診断ルーチンは、図1〜図3に示す蓄熱水温センサ24を有し、蓄熱器12内に貯留されている蓄熱水の蓄熱水温を直接検出するシステムに対応し、所定時間毎にECU30にて繰返し実行される。
図7において、ステップS301で、内燃機関1の始動後タイマが作動中であるかが判定される。ステップS301の判定条件が成立せず、即ち、始動後タイマが作動していないときにはステップS302に移行し、図示しないイグニッションスイッチのオン時刻をTT1 (図8に示す内燃機関始動時刻)としたのちステップS303に移行する。ステップS303では、ステップS302による内燃機関1の始動時刻TT1 から図4のステップS103で格納されている内燃機関1の停止時刻TT0 (図8に示す停止判定と同時の内燃機関停止時刻)が減算された内燃機関1の停止後経過時間が予め設定された所定値β以上であるかが判定される。ステップS303の判定条件が成立せず、即ち、内燃機関1の停止後経過時間(TT1 −TT0 )が所定値β未満と経過時間が少ないときには、ステップS304に移行する。
ステップS304では、図示しないイグニッションスイッチがオン時に蓄熱水温センサ24にて検出される蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温がTHWW2 (図8参照)とされる。次にステップS305に移行して、図4のステップS102で格納されている内燃機関1の停止時の蓄熱水温THWW0 (図8参照)がステップS304による蓄熱水温THWW2 にて除算され、それがステップS302による内燃機関1の始動時刻TT1 から図4のステップS103による内燃機関1の停止時刻TT0 が減算された時間で更に除算されて求められた蓄熱水温下降率{(THWW0 /THWW2 )/(TT1 −TT0 )}が予め設定された所定値ζ以上であるかが判定される。ステップS305の判定条件が成立せず、即ち、蓄熱水温下降率{(THWW0 /THWW2 )/(TT1 −TT0 )}が所定値ζ未満と低いときにはステップS306に移行し、ステップS304による蓄熱水温THWW2 が所定値γ以上であるかが判定される。ステップS306の判定条件が成立、即ち、蓄熱水温THWW2 が所定値γ以上と高水温であるときにはステップS307に移行し、蓄熱による早期な暖機が可能であるとして始動前における冷却水温がTHW0 (図8参照)とされたのちステップS308に移行する。
ステップS308では、内燃機関1の機関回転数NEが予め設定された所定値δ以上であるかが判定される。ステップS308の判定条件が成立、即ち、機関回転数NEが所定値δ以上と高いとき(図8に示す始動判定と同時の内燃機関始動時刻)にはステップS309に移行し、内燃機関1が始動されたとして始動後タイマが起動される。次にステップS310に移行して、始動後タイマ起動後、予め設定された所定時間T1 (図8参照)が経過しており、始動後タイマの終了時であるかが判定される。ステップS310の判定条件が成立、即ち、始動後タイマの終了時であるときにはステップS311に移行し、始動後タイマの終了時における冷却水温がTHW1 とされる。
次に、ステップS312に移行して、ステップS311による始動後タイマの終了時における冷却水温THW1 からステップS306による始動前における冷却水温THW0 が減算され、それが始動後タイマの所定時間T1 で除算されて求められた冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が予め設定された所定値ε以上であるかが判定される。ステップS312の判定条件が成立せず、即ち、冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が所定値ε未満と小さいとき(図8に立ち上がりの破線にて示す異常時冷却水温参照)、またはステップS305の判定条件が成立、即ち、蓄熱水温下降率{(THWW0 /THWW2)/(TT1 −TT0 )}が所定値ζ以上と大きいとき(図8に立ち下がりの太い破線にて示す異常時蓄熱水温参照)には蓄熱水循環経路としての高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13を含む蓄熱器12に異常が生じているとしてステップS313に移行し、蓄熱水循環経路の異常が警告ランプの点灯等によりユーザへ警告される。次にステップS314に移行して、これ以降の始動時及び暖機中における蓄熱水循環経路を含む蓄熱器12側への冷却水の導入が禁止、即ち、吸気導入制御弁10を強制的に閉弁状態とすることで2温度切替弁6の弁位置が図3に示す右方向に保持され、低水温制御用冷却水通路7側のみへの冷却水の導入とされ、本ルーチンを終了する。
一方、ステップS301の判定条件が成立、即ち、始動後タイマが作動中であるときには、何もすることなく本ルーチンを終了する。また、ステップS303の判定条件が成立、即ち、内燃機関1の停止後経過時間(TT1 −TT0 )が所定値β以上と経過時間を経ているとき、またはステップS306の判定条件が成立せず、即ち、蓄熱水温THWW2 が所定値γ未満と低水温であるときには蓄熱水が冷え過ぎているとしてステップS315に移行し、蓄熱器12による早期暖機ができないことがユーザへ報知されたのち本ルーチンを終了する。そして、ステップS308の判定条件が成立せず、即ち、機関回転数NEがδ未満と低く、内燃機関1が未だ始動されていないときには何もすることなく本ルーチンを終了する。更に、ステップS310の判定条件が成立せず、即ち、始動後タイマの終了時でないときには何もすることなく本ルーチンを終了する。また、ステップS312の判定条件が成立、即ち、冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が所定値ε以上と大きいとき(図8に立ち上がりの一点鎖線にて示す正常時冷却水温参照)には蓄熱器12等は正常に動作しているとしてそのまま本ルーチンを終了する。
このように、本参考例の内燃機関用熱制御システムの故障診断装置は、内燃機関1の始動時には内燃機関1の冷却系統の冷却水のうち蓄熱器12に貯留された蓄熱水を優先的に内燃機関1内に循環する冷却水通路2,4、2温度切替弁6、高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13等からなる蓄熱水循環手段と、蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温を検出する蓄熱水温センサ24からなる蓄熱水温検出手段と、内燃機関1の停止時における蓄熱水温THWW0 と停止時刻TT0とを記憶するECU30にて達成される記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前回の内燃機関1の停止時における蓄熱水温THWW0 と停止時刻からの停止後経過時間(TT1 −TT0 )と、内燃機関1の始動時に蓄熱水温センサ24で検出される蓄熱水温THWW2 とによる蓄熱水温下降率{(THWW0 /THWW2 )/(TT1 −TT0 )}が予め設定された所定値ζを上回っているときには、蓄熱器12の故障であると診断するECU30にて達成される故障診断手段とを具備するものである。
したがって、内燃機関1の停止時、蓄熱水温センサ24にて検出される蓄熱器12内の蓄熱水の蓄熱水温THWW0 とその停止時刻TT0 と、内燃機関1の始動時(始動時刻TT1 )における停止後経過時間(TT1 −TT0 )及び蓄熱水温THWW2 とによる蓄熱水温下降率{(THWW0 /THWW2 )/(TT1−TT0 )}が所定値ζより大きいときには、蓄熱器12に何らかの異常が生じていると判るのである。これにより、始動時及び暖機中における蓄熱器12の故障が診断できることとなり、ユーザへの警告等が実施できると共に、この場合には蓄熱器12側への冷却水の流入を禁止することでフェイルセーフを達成することができる。
また、本参考例の内燃機関用熱制御システムの故障診断装置は、更に、内燃機関1内の冷却水の冷却水温THWを検出する水温センサ21からなる冷却水温検出手段を具備し、ECU30にて達成される故障診断手段は、内燃機関1の始動時に蓄熱水温センサ24で検出された蓄熱水温THWW2 が十分高いにもかかわらず、内燃機関1の暖機中に水温センサ21で検出される冷却水温による冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が予め設定された所定値εを下回っているときには、蓄熱水循環経路としての高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13を含む蓄熱器12の故障であると診断するものである。つまり、内燃機関1の始動時における蓄熱水温THWW2 が十分高いのに、暖機中における冷却水温上昇率{(THW1 −THW0 )/T1 }が所定値εより小さいときには、高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13を含む蓄熱器12に何らかの異常が生じていると判るのである。これにより、始動時及び暖機中における蓄熱水循環経路や蓄熱器12の故障が診断できることとなり、ユーザへの警告等が実施できると共に、この場合には蓄熱水循環経路や蓄熱器12側への冷却水の流入を禁止することでフェイルセーフを達成することができる。
次に、本発明の実施の形態を説明するための第2参考例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置で使用されているECU30による始動時及び暖機中の故障診断の処理手順の変形例を示す図9のフローチャートを参照して説明する。なお、この故障診断ルーチンは、図1〜図3に示す蓄熱水温センサ24を有し、蓄熱器12内に貯留されている蓄熱水の蓄熱水温を直接検出するシステムに対応し、所定時間毎にECU30にて繰返し実行される。
図9において、ステップS401で、内燃機関1の始動後タイマが作動中であるかが判定される。ステップS401の判定条件が成立せず、即ち、始動後タイマが作動していないときにはステップS402に移行し、図示しないイグニッションスイッチのオン時に蓄熱水温センサ24にて検出される蓄熱器12内の蓄熱水温がTHWW3 とされる。次にステップS403に移行して、ステップS402による蓄熱水温THWW3 が予め設定された所定値γ以上であるかが判定される。ステップS403の判定条件が成立、即ち、蓄熱水温THWW3 が所定値γ以上と高水温であるときにはステップS404に移行し、内燃機関1の機関回転数NEが予め設定された所定値δ以上であるかが判定される。
ステップS404の判定条件が成立、即ち、機関回転数NEが所定値δ以上と高いときにはステップS405に移行し、内燃機関1が始動されたとして始動後タイマが起動される。次にステップS406に移行して、始動後タイマ起動後、予め設定された所定時間T2 が経過しており、始動後タイマの終了時であるかが判定される。ステップS406の判定条件が成立、即ち、始動後タイマの終了時であるときにはステップS407に移行し、始動後タイマの終了時に蓄熱水温センサ24にて検出される蓄熱器12内の蓄熱水温がTHWW4 とされる。
次にステップS408に移行して、ステップS407による始動後タイマの終了時における蓄熱水温THWW4 からステップS402による始動後タイマが作動されていないときの蓄熱水温THWW3 が減算され、それが始動後タイマの所定時間T2 で除算されて求められた蓄熱水温下降率{(THWW4 −THWW3)/T2 }が予め設定された所定値η以上であるかが判定される。ステップS408の判定条件が成立せず、即ち、蓄熱水温下降率{(THWW4 −THWW3)/T2 }が所定値η未満と小さいときには高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13に異常が生じているとしてステップS409に移行し、蓄熱水循環経路の異常が警告ランプの点灯等によりユーザへ警告される。次に、ステップS410に移行して、これ以降の始動時及び暖機中における蓄熱水循環経路側への冷却水の導入が禁止、即ち、吸気導入制御弁10を強制的に閉弁状態とすることで2温度切替弁6の弁位置が図3に示す右方向に保持され、低水温制御用冷却水通路7側のみへの冷却水の導入とされ、本ルーチンを終了する。
一方、ステップS401の判定条件が成立、即ち、始動後タイマが作動中であるとき、またはステップS403の判定条件が成立せず、即ち、蓄熱水温THWW3 が所定値γ未満と低水温であるとき、またはステップS404の判定条件が成立せず、即ち、内燃機関1の機関回転数NEが所定値δ未満と低く、内燃機関1が未だ始動されていないとき、またはステップS406の判定条件が成立せず、即ち、始動後タイマの終了時でないときには何もすることなく本ルーチンを終了する。また、ステップS408の判定条件が成立、即ち、蓄熱水温下降率{(THWW4 −THWW3 )/T2 }が所定値η以上と大きいときには蓄熱器12等が正常に動作しているとしてそのまま本ルーチンを終了する。
このように、本参考例の内燃機関用熱制御システムの故障診断装置は、ECU30にて達成される故障診断手段が内燃機関1の暖機中に蓄熱水温センサ24で検出される蓄熱水温による蓄熱水温下降率{(THWW4 −THWW3 )/T2}が予め設定された所定値ηを下回っているときには、蓄熱水循環経路としての高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13の故障であると診断するものである。
つまり、内燃機関1の暖機中における蓄熱水温下降率{(THWW4 −THWW3 )/T2 }が所定値ηより小さいときには、高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13に何らかの異常が生じていると判るのである。これにより、暖機中における高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13の故障が診断できることとなり、ユーザへの警告等が実施できると共に、この場合には高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13側への冷却水の流入を禁止することでフェイルセーフを達成することができる。
〈実施例1〉
図10は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置で使用されているECU30による内燃機関の冷却水温制御における故障診断の処理手順を示すフローチャートである。なお、本実施例にかかる内燃機関用熱制御システムの故障診断装置の構成は上述の第1参考例における図1〜図3の概略図で、蓄熱器12を省き高水温制御用冷却水通路8と蓄熱水通路13とを直接接続し、蓄熱水温センサ24を省いたものであるためその詳細な説明を省略する。
図10の故障診断ルーチンに基づき、図11に示すタイムチャートを参照して説明する。なお、この故障診断ルーチンは所定時間毎にECU30にて繰返し実行される。
図10において、まず、ステップS501では、本システムが故障中であることを示す故障判定フラグXTHWFが「0」で、現在、本システムが故障中でなくつまり、正常状態であるかが判定される。ステップS501の判定条件が成立、即ち、XTHWF=0で正常状態であるときにはステップS502に移行し、内燃機関1に配設されている水温センサ21にて検出された冷却水温THWが予め設定された所定値θ以上であるかが判定される。ステップS502の判定条件が成立、即ち、冷却水温THWが所定値θ以上と高水温であるときにはステップS503に移行し、内燃機関1における負荷として例えば、吸気圧センサ22にて検出された吸気圧PMが予め設定された所定値ι以上であるかが判定される。ステップS503の判定条件が成立、即ち、負荷が所定値ι以上と高負荷であるときにはステップS504に移行し、本システムが低水温による制御中であることを示す低水温制御中判定フラグXTHWLが「0」であるかが判定される。
ステップS504の判定条件が成立、即ち、XTHWL=0で本システムが現在、低水温制御されていないときにはステップS505に移行し、低水温化タイマが起動される(図11に示す低水温化タイマ始動時刻)。次にステップS506に移行して、内燃機関1に対する低水温制御処理が実行される。この低水温制御とは、内燃機関1の冷却水温を低水温側に移行させ予め設定された低水温に保持することで高負荷時等におけるオイルの温度上昇を抑制しオイル劣化を防止しつつ異常摩耗等を回避させるものである。次にステップS507に移行して、低水温制御中判定フラグXTHWLが「1」にセットされる。一方、ステップS504の判定条件が成立せず、即ち、XTHWL=1で本システムが既に低水温制御されているときにはステップS505〜ステップS507がスキップされる。
次に、ステップS508に移行して、ステップS505で起動された低水温化タイマが作動中であるかが判定される。ステップS508の判定条件が成立せず、即ち、低水温化タイマの終了時(図11に示す低水温化タイマ終了時刻)にはステップS509に移行し、冷却水温THWが予め設定された所定値κ以下であるかが判定される。ステップS509の判定条件が成立せず、即ち、冷却水温THWが所定値κを越えて高水温であるとき(図11に立ち下がりの二点鎖線にて示す異常時参照)にはステップS510に移行し、蓄熱水循環経路が故障しているとして警告ランプの点灯等によりユーザへ警告される。次に、ステップS511に移行して、本システムの故障判定フラグXTHWFが「1」にセットされ本ルーチンを終了する。
なお、ステップS501の判定条件が成立せず、即ち、故障判定フラグXTHWFが「1」で、本システムが故障中であるとき、またはステップS508の判定条件が成立、即ち、低水温化タイマが未だ作動中であるとき、またはステップS509の判定条件が成立、即ち、冷却水温THWが所定値κ以下と既に低水温であるとき(図11に立ち下がりの実線にて示す正常時参照)には何もすることなく本ルーチンを終了する。
一方、ステップS502の判定条件が成立せず、即ち、冷却水温THWが所定値θ未満と低水温であるとき、またはステップS503の判定条件が成立せず、即ち、内燃機関1の負荷が所定値ι未満と小さいときにはステップS512に移行し、本システムが高水温による制御中であることを示す高水温制御中判定フラグXTHWHが「0」であるかが判定される。
ステップS512の判定条件が成立、即ち、XTHWH=0で本システムが現在、高水温制御されていないときにはステップS513に移行し、高水温化タイマが起動される(図11に示す高水温化タイマ始動時刻)。次にステップS514に移行して、内燃機関1に対する高水温制御処理が実行される。この高水温制御とは、内燃機関1の冷却水温を高水温側に移行させ保持することで摩擦による摩耗等を減少させ出力向上を図るものである。次にステップS515に移行して、高水温制御中判定フラグXTHWHが「1」にセットされる。一方、ステップS512の判定条件が成立せず、即ち、XTHWL=1で本システムが既に高水温制御されているときにはステップS513〜ステップS515がスキップされる。
次に、ステップS516に移行して、ステップS513で起動された高水温化タイマが作動中であるかが判定される。ステップS516の判定条件が成立せず、即ち、高水温化タイマの終了時(図11に示す高水温化タイマ終了時刻)にはステップS517に移行し、冷却水温THWが予め設定された所定値λ以下であるかが判定される。ステップS517の判定条件が成立、即ち、冷却水温THWが所定値λ以下と低水温であるとき(図11に立ち上がりの二点鎖線にて示す異常時参照)にはステップS518に移行し、蓄熱水循環経路が故障しているとして警告ランプの点灯等によりユーザへ警告される。次にステップS519に移行して、この場合には高水温制御処理が実行できないため低水温制御処理として、吸気導入制御弁10が常開状態から常閉状態とされ吸気導入管9が閉塞状態とされる。これにより、2温度切替弁6の弁位置は低水温制御用冷却水通路7側に常時、開保持され冷却水温THWが低水温側に戻されるようフェイルセーフ処理が実行される(図11参照)。次にステップS520に移行して、本システムの故障判定フラグXTHWFが「1」にセットされ本ルーチンを終了する。
なお、ステップS516の判定条件が成立、即ち、高水温化タイマが未だ作動中であるとき、またはステップS517の判定条件が成立せず、即ち、冷却水温THWが所定値λを越えて高水温であるとき(図11に立ち上がりの実線にて示す正常時参照)には何もすることなく本ルーチンを終了する。
このように、本実施例の内燃機関用熱制御システムの故障診断装置は、内燃機関1内の冷却水の冷却水温THWを検出する水温センサ21からなる冷却水温検出手段と、内燃機関1の運転状態における負荷としての吸気圧センサ22で検出される吸気圧PMに応じて、ラジエータ3に導入する冷却水量を増減し、冷却水温を低負荷時には高水温、高負荷時には低水温に制御する冷却水通路2,4、2温度切替弁6、低水温制御用冷却水通路7、高水温制御用冷却水通路8、吸気導入管9、サーモスタット11等にて達成される冷却水温制御手段と、低負荷時の冷却水温が予め設定された所定の高水温に達しないとき、または高負荷時の冷却水温が予め設定された所定の低水温に達しないときには前記冷却水温制御手段の故障であると診断するECU30にて達成される故障診断手段とを具備するものである。
したがって、内燃機関1の運転状態における吸気圧PMに応じて、冷却水温制御手段を達成する冷却水通路2,4、2温度切替弁6、低水温制御用冷却水通路7、高水温制御用冷却水通路8、吸気導入管9、サーモスタット11等によってラジエータ3に導入される冷却水量が増減され、冷却水温が低負荷時には高水温、高負荷時には低水温に制御される。ここで、冷却水温が低負荷時に所定の高水温、または高負荷時に所定の低水温に達しないときには故障診断手段を達成するECU30で冷却水温制御手段に何らかの異常が生じていると判るのである。これにより、冷却水通路2,4、2温度切替弁6、低水温制御用冷却水通路7、高水温制御用冷却水通路8、吸気導入管9、サーモスタット11等の故障が適切に診断できることとなる。
また、本実施例の内燃機関用熱制御システムの故障診断装置は、ECU30にて達成される故障診断手段が冷却水通路2,4、2温度切替弁6、低水温制御用冷却水通路7、高水温制御用冷却水通路8、吸気導入管9、サーモスタット11等にて達成される冷却水温制御手段の故障であると診断したときには、その旨をユーザへ警告すると共に、冷却水温が低水温側となるように制御するものである。つまり、冷却水通路2,4、2温度切替弁6、低水温制御用冷却水通路7、高水温制御用冷却水通路8、吸気導入管9、サーモスタット11等の異常であると判定されたときには、ユーザへの警告等が実施されると共に、吸気導入管9を吸気導入制御弁10にて閉塞させ、2温度切替弁6から低水温制御用冷却水通路7側に連通させサーモスタット11を作動させ復路の冷却水通路4を通過状態とすることで冷却水温が低水温側となるように制御するものである。このため、高水温制御用冷却水通路8及び蓄熱水通路13側への冷却水の流入が禁止され、これ以降では冷却水の大部分がラジエータ3側に導入される低水温制御とされフェイルセーフを達成することができる。
ところで、内燃機関1の暖機中における冷却水の冷却水温が所定時間内に予め設定された冷却水温以上に上昇しないときには、蓄熱水循環経路を含む蓄熱器12の故障であると診断するようにしてもよい。
また、低水温制御時、内燃機関1の冷却水温が所定時間で所定の下降率未満であるとき、または高水温制御時、内燃機関1の冷却水温が所定時間で所定の上昇率未満であるときには本システムの故障と診断するようにしてもよい。