JP4528872B2 - ニトリラーゼ、それらをコードする核酸及びそれらの作製と使用 - Google Patents

ニトリラーゼ、それらをコードする核酸及びそれらの作製と使用 Download PDF

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Description

本発明は、一般に分子生物学、生化学又は化学の分野に関し、部分的にニトリラーゼ活性を有する酵素タンパク質にも関する。本発明は、また、その酵素をコードするポリヌクレオチド、及びそのようなポリヌクレオチドおよび酵素の使用に関する。
ニトリルを広範に有用な生成物や中間体へ変換するための工業的な化学プロセスにおける使用に多大な可能性を有する天然に存在する酵素が存在する。 そのような酵素には、ニトリルを直接カルボン酸に転換することのできるニトリラーゼが含まれる。ニトリラーゼ酵素は、 Bacillus、Norcardia、Bacteridium、Rhodococcus、Micrococcus、Brevibacterium、Alcaligenes、Acinetobacter、Corynebacterium、Fusarium及びKlebsiellaの種を含む中温性微生物の広い範囲に見い出される。又、細菌中に存在する好熱性ニトリラーゼもある。
ニトリルから類似酸への主な経路には二つある:(1)ニトリラーゼは、アンモニアの遊離を伴い、ニトリルのカルボン酸への直接加水分解を触媒する;又は(2)ニトリルヒドラターゼは、水の分子を炭素窒素結合に付加して 対応するアミドを与え、それは、アンモニアの遊離を伴った炭素窒素結合を加水分解してカルボン酸生成物を与えるアミダーゼ酵素の基質として作用することができる。ニトリラーゼ酵素は、より直接的な酸への経路を提供する。
ニトリル基は、合成経路を工夫する点において多くの利点を与え、それは、しばしば容易に分子構造へ導入されたり、多くのプロセスを通してマスクされた酸やアミドとして担持されることができる。しかしながら、これは、ニトリルが合成における適切な段階でアンマスクすることができる場合に限られる用途である。シアニドは、炭素化合物の合成に使用され得る、広範囲に適用可能なC1synthon(シンソン)を意味する(シアニドは、数少ない水-安定カルバニオンの一つである)。しかしながら、このように得られたニトリルの更なる変換は、通常の化学合成法を使用したその加水分解に要求される厳しい反応条件のために妨げられる。ニトリルの反応を触媒するための酵素の使用は、ニトリラーゼ酵素が多くの伝統的化学法よりも少ない環境的に危険な試薬や副産物を伴う反応を起こせるために魅力的である。事実、ニトリルの化学選択的な生体触媒加水分解は、環境的な温度及び生理的pHの付近で起こることから、価値ある代替えであることを示している。
薬のデザイン及び発見における不整有機合成の重要性は、新しい合成法や生物学的に重要な複合分子の開発において使用され得るキラル前駆体の探索を促進した。キラル分子中の一つの重要なクラスは、α置換カルボン酸であり、これにはαアミノ酸が含まれる。これらの分子は、数多い生物学的に活性な複合分子への重要なキラル前駆体として久しく認識され、多くの研究結果が対掌的に純粋なαアミノ酸及びキラル薬剤の合成法の開発に貢献した。
キラル薬剤を作製する合成系化学者にとって、非無菌状態下で有用であり、非生物学的研究室において有用であり、保存や使用のために便利な形状で入手可能であり、広い基質特異性を持ち、水に難溶性の基質に作用し、生成物の構造が予想可能であり、酸又はアミド生成物の選択が可能であり、及び、キラル分化が可能である酵素システムは特に有用である。従って、例えばαアミノ酸やαヒドロキシ酸のような対掌的に純粋なα置換カルボンを生成するための能率的で、廉価で、高収率の合成法の需要が存在する。
更に、頻繁に、特別な変換を行う酵素の発見又は進化は、簡便なハイスループットスクリーニング又は選択プロセスの利用により補助する事ができる。効果的な超ハイスループット(UHTP)スクリーニングが使用不可能な場合、代用基質が使用されるかもしれない一方、好ましい転換を特異的に行う酵素を直接スクリーニングすることが望まれるかもしれない。UHTPスクリーニングを設計する試みは、例えば、その発見又は進化プログラムが唯一の立体異性体又はエナンチオマーを生成するエナンチオマー選択的変換を見出すことに着眼された場合に明白となる。この場合、利用可能なハイスループットスクリーニング法が少ない。一方、最も簡単な方法は、問題の二種のエナンチオマーを分離するためにキラル液体又はガスフェーズ分離を使用することであり、しばしば、このアプローチは、要求される非常に高いスループット能を供与しない。質量分光計(MS)技術を使用することによる、非常に高いスループットスクリーニングが可能である。しかしながら、慣習的な方法で適用された場合、MSは、キラリティー又は鏡像選択性に関する情報を与えない。
別のアプローチは、単一エナンチオマー化合物でエナンチオマー混合物を化学的に誘導体化することである。このようにして、あるアキラルな定常相において分離することができる精製されたジアステレオマー混合物を生成する。ここでも、これは扱いにくいアプローチで、ハイスループットスクリーニングには適していない。
本明細書の全体を通して、様々な文献が著者及び日付によって参照される。これら文献の全ての開示は、この中に記述され述べられる本発明が記載された日における、それらの技術に熟練した者に知られる現状の技術をより完全に記述するために、本明細書中に引用により取り込まれる。
ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドおよびそれらをコードするヌクレオチド、それらの断片を提供する。また、本発明のニトリラーゼ活性を有するポリペプチドまたはそれらの断片と特異的に結合する抗体を提供する。また、本発明は、キラルαハイドロキシ酸分子、キラルアミノ酸分子、キラルβハイドロキシ酸分子、又はキラルγヒドロキシ酸分子生成法を提供する。
本発明は、 配列番号 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385と少なくとも約50%の同一性を有し、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む単離又は組換え核酸に関する。本発明の別例として、前記核酸は、それら配列番号又はそれらの変種、と少なくとも約 50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の、又は完全な(100%同一)同一性を有するヌクレオチドを含んでいる核酸を含む。典型的な変種は、例えば、一つ以上の以下に示す変異を有する配列番号195、205、207、209、又は 237の変種を含んでよい: 部位163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位178-180 GAA、又はGAG;部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG、又はACG;部位571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;又はそれらのどのような組み合わせ。本発明の一例として、それらの変種は、例えば、3−ヒドロキシグルタリルニトリル(HGN)の(R)-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸への転換において、それら配列番号によってコードされるポリペプチドより改善又は低下した鏡像選択性を有するポリペプチドをコードする。
本発明の一例として、本核酸は、配列番号に実質的に同一な配列を有するヌクレオチド:又はその変種、を含む。他の一例として、本発明は、配列番号33に少なくとも79%の配列同一性を有する連続ヌクレオチドを含む、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離又は組換え核酸を提供する。本発明は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、それらの核酸の断片を提供する。本発明は、また、それらの如何なる核酸にも相補的な単離又は組換え核酸を提供する。本発明は、また、ストリンジェントな条件下において、これらの核酸のいずれかとハイブリダイズする単離又は組換え核酸を提供する。一例として、ストリンジェントな条件は、少なくとも50%のホルムアミド、及び約37℃から約42℃の条件を含む。
本発明は、約15〜10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500又はそれ以上のヌクレオチドを含み、配列番号 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385の核酸配列、それらの変種、又はそれらの相補物中の標的領域と少なくとも50%相補的である核酸プローブを提供する。一例として、この核酸プローブは、その核酸標的領域と少なくとも55%相補的な連続塩基を含む。一例として、本発明は、連続ヌクレオチドがその核酸標的領域と少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、又は100%相補的な核酸プローブを提供する。別例として、その核酸は、本質的に約20〜50のヌクレオチドから成っている。他の例において、その核酸は、少なくとも約20、25、30、35、40、45、50、75、100、150 のヌクレオチド長である。
本発明は、宿主細胞において複製のできる、本発明の核酸を含む核酸ベクターを提供する。本発明は、また、その核酸を含む宿主細胞を提供する。本発明は、また、宿主細胞を含む宿主生物体を提供する。一例として、その宿主生物体は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌又は真核生物を含む。別例として、グラム陰性細菌は、Escherichia coliやPseudomonas fluorescensを含む。更なる例において、グラム陽性細菌は、Streptomyces diversa、Lactobacillus gasseri、Lactococcus lactis、Lactococcus cremoris、又はBacillus subtilisを含む。更なる例において、真核細胞には、Saccharomyces sp.、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris、Kluyveromyces lactis、Hansenula polymorpha、又はAspergillus nigerが含まれる。
本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386、又はそれらの変種に対して少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離又は組換え核酸を提供し、前記ポリペプチドは、ニトリラーゼ活性を有する。一例として、そのポリペプチドは、それら配列番号又はそれらの変種と約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。典型的な変種は、例えば、以下に示す一以上の変異を有する、配列番号196、206、208、210又は238の変種を含む:残基55リジン、グリシン、又はグルタミン;残基60グルタミン酸;残基111セリン;残基190セリン、ヒスチジン、チロシン又はスレオニン;残基191ロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン又はメチオニン;残基199グルタミン酸又はロイシン;残基222ロイシン;又はそれらの組み合わせ。
本発明は、また、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386、又はそれらの変種配列の一部と配列同一性を有する少なくとも10連続アミノ酸を含むポリペプチドをコードしている単離又は組換え核酸を提供する。
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386、又はそれらの変種と少なくとも50%同一な配列を有するアミノ酸配列を含む単離又は組換えポリペプチドであって、ニトリラーゼ活性を有する前記ポリペプチド。本発明の一例において、そのポリペプチドは、それら配列番号又はそれらの変種と約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明は、以下のいずれかの配列として示される配列を有するヌクレオチドを含む単離又は組換え核酸を提供する: 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385、及びそれらの変種(以下、「グループA核酸」と言及)。本発明は、また、グループA核酸のいずれかの配列に対して特定された最小配列同一性パーセンテージを有する核酸にも関する。
別例として、本発明は、以下のいずれかの配列として示される配列を有するアミノ酸残基ヌクレオチドを含んだ単離(精製)又は組換えポリペプチドを提供する: 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386、及びそれらの変種(以下、「グループBアミノ酸配列」と言及)。本発明は、また、グループBアミノ酸配列のいずれかの配列に対して特定された最小配列同一性パーセンテージを有する精製されたポリペプチドにも関する。
本発明は、ニトリラーゼ活性を有する少なくとも50アミノ酸長を有するポリペプチドの断片を提供する。更に、本発明は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドのペプチド擬似体又は断片を提供する。本発明は、ニトリラーゼ活性を有する、特定の生物体又は細胞に対して至適化されたコドン至適化ポリペプチド又はそれらの断片を提供する。Narum et al. Infect. Immun. 2001 Dec、69(12):7250-3 は、マウスシステムにおけるコドン至適化を記述している。Outchkourov et al. Protein Expr. Purif. 2002 Feb; 24(1):18-24 は、酵母システムにおけるコドン至適化を記述している。Feng et al. Biochemistry 2000 Dec 19、39(50):15399-409 は、E. coliにおけるコドン至適化を記述している。Humphreys et al. Protein Expr. Purif. 2000 Nov、20(2):252-64 は、E.coliにおける分泌にコドン使用頻度がどの様に影響を及ぼすかを述べている。
一例として、生物体又は細胞は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、又は真核生物を含む。本発明の他の一例として、グラム陰性細菌は、Escherichia coli又はPseudomonas fluorescensを含む。本発明の他の一例として、グラム陽性細菌は、Streptomyces diversa、Lactobacillusgasseri、Lactococcuslactis、Lactococcus cremoris、又はBacillus subtilisを含む。本発明の他の一例として、真核生物は、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris、Kluyveromyces lactis、Hansenula plymorpha、又はAspergillus nigerを含む。
他の一例として、本発明は、ニトリラーゼ活性を有する本発明のポリペプチド、又はそれらの断片と特異的に結合する精製抗体を提供する。一例として、本発明は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体の断片を提供する。
本発明は、本発明のポリペプチドの少なくとも一つを含む酵素標品を提供し、その標品は、液体又は乾燥品である。その酵素標品は、緩衝液、補欠因子、あるいは第二又は追加タンパク質を含む。一例として、その標品は、固相支持体に結合される。本発明の一例として、固相支持体は、ゲル、樹脂、ポリマー、セラミック、ガラス、極小電極及びそれらの如何なる組み合わせでもよい。他の一例として、その標品は、ゲル又はビーズに包埋されることができる。
更に、本発明は、ニトリラーゼ活性を有する本発明のポリペプチドの少なくとも一つ又はその断片、あるいはそのペプチド擬似体、又はそれらの組み合わせを含む本発明の核酸を少なくとも一つ含む組成物を提供する。
本発明は、ニトリラーゼ活性にとって適切な条件において、ニトリラーゼ活性を有する本発明のポリペプチドの少なくとも一つ又はその断片、あるいはそのペプチド擬似体とニトリル分子とを接触させることを含む、ニトリルのカルボン酸への加水分解のための方法を提供する。一例として、その条件は、水性条件を含む。他の一例として、その条件は、約pH 8.0及び/又は約37℃から約45℃の温度を含む。
本発明は、ニトリラーゼ活性にとって適切な条件において、ニトリラーゼ活性を有する本発明のポリペプチドの少なくとも一つ又はその断片、あるいはそのペプチド擬似体と分子とを接触させることを含む、前記分子のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を加水分解するための方法を提供する。
本発明は、キラルαハイドロキシ酸分子、キラルアミノ酸分子、キラルβハイドロキシ酸分子、又はキラルγヒドロキシ酸分子生成法を提供し、その方法は、エナンチオマー選択的ニトリラーゼ活性を有する、グループBアミノ酸配列のいずれかにも少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその断片、あるいはそのペプチド擬似体と、シアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を有するポリペプチドとを混合させることを含む。一例として、キラル分子は、(R)-エナンチオマーである。他の例として、キラル分子は、(S)-エナンチオマーである。本発明の一例として、ある特定の酵素は、ある特定の基質に対してR-特異性を持ち、その同じ酵素が、異なる特定の基質に対してはS-特異性を有することができる。
本発明は、また、組成物又はその中間体の生成法を提供し、その方法は、その組成物又は中間体の、シアノヒドリン部分またはアミノニトリル部分を含む前駆体とニトリラーゼ活性を有する本発明のポリペプチドの少なくとも一つ又はその断片、あるいはそのペプチド擬似体とを混合することを含み、それにより前記前駆体中のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を加水分解してその組成物又はその中間体を生成する。一例として、その組成物又は中間体は、(S)-2-アミノ-4-フェニルブタン酸を含む。更なる一例として、その組成物又は中間体は、L-アミノ酸を含む。更なる一例として、その組成物は、食品添加物又は医薬品を含む。
本発明は、(R)-エチル4-シアノ-3-ヒドロキシブチル酸の生成法を提供し、その方法は、ヒドロキシグルタリルニトリルと、(R)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシブチル酸を生成するような(R)-エナンチオマーを選択的に生成するニトリラーゼ活性を有する、グループBアミノ酸配列のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその断片若しくはそのペプチド擬似体の少なくとも一つとを接触させることを含む。一例において、そのeeは、少なくとも95%あるいは少なくとも99%である。他の一例として、ヒドロキシグルタリルニトリルは、1,3-ジ-シアノ-2-ヒドロキシ-プロパン又は3-ヒドロキシグルタロニトリルを含む。更なる一例として、そのポリペプチドは、グループBアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を有する、又はニトリラーゼ活性を有するその断片若しくはそのペプチド擬似体である。
本発明は、又(S)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシブチル酸の生成法を提供し、その方法は、ヒドロキシグルタリルニトリルと(S)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシブチル酸を生成するような(S)エナンチオマーを選択的に生成するニトリラーゼ活性を有するグループBアミノ酸配列のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその断片若しくはそのペプチド擬似体の少なくとも一つとを接触させることを含む。
本発明は、(R)-マンデル酸を生産するための方法を提供し、これには、適切なニトリラーゼ活性を有するグループBアミノ酸配列のいずれかを有するポリペプチド、又はその断片若しくはそれらのペプチド擬似体の少なくとも一つとマンデロニトリルを混合することが含まれる。一例として、この (R)-マンデル酸には (R)-2-クロロマンデル酸が含まれている。他の一例として、この (R)-マンデル酸には以下のような、芳香環のオルト位、メタ位、若しくはパラ位に置換基を有する化合物が含まれている:(R)-マンデル酸の1-ナフチル誘導体、(R)-マンデル酸のピリジル誘導体、(R)-マンデル酸のチエニル誘導体、若しくはこれらの組み合わせ。
本発明は、(S)-マンデル酸を生産するための方法を提供しており、これには、適切なニトリラーゼ活性を有するグループB配列のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその断片若しくはそれらのペプチド擬似体の少なくとも一つとマンデロニトリルを混合することが含まれる。一例として、この(S)-マンデル酸には(S)-メチルベンジルシアニドが含まれ、このマンデロニトリルには(S)-メトキシベンジルシアニドが含まれている。他の一例として、この(S)-マンデル酸には以下のような、芳香環のオルト位、メタ位、若しくはパラ位に置換基を有する化合物が含まれている:(S)-マンデル酸の1-ナフチル誘導体、(S)-マンデル酸のピリジル誘導体、(S)-マンデル酸のチエニル誘導体、若しくはこれらの組み合わせ。
本発明は、また、(S)-フェニル乳酸誘導体又は(R)-フェニル乳酸誘導体を生産するための方法を提供し、これには、フェニルラクトニトリルと、(S)-エナンチオマー、又は(R)-エナンチオマーの何れかを選択的に生産する、グループBアミノ酸配列の中から選ばれるポリペプチド、又はその活性断片又はそれらのペプチド擬似体の少なくとも一つとを混合することを含んでおり、それにより、(S)-フェニル乳酸誘導体又は(R)-フェニル乳酸誘導体が生産される。
本発明は 本発明のポリペプチド、若しくはそのフラグメントを生産するための方法を提供しており、これには、(a)宿主細胞によりそのポリペプチドの合成が行われる条件下でそのポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞へ導入すること、及び(b)生産されたポリペプチドを回収すること、が含まれている。
本発明は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸の変種の作製法を提供し、その変種は、天然に存在するニトリラーゼとは異なる生物学的活性を有している。この方法には、以下の工程(a)が含まれている:(a)(i)天然、若しくは非天然のヌクレオチド中の一以上のヌクレオチドを異なるヌクレオチドに置換すること;(ii)一以上のヌクレオチドを削除すること; (iii)一以上のヌクレオチドを付加すること;または(iv)これらの何れかの組み合わせ、によって核酸を改変する工程。一例として、この非天然のヌクレオチドにはイノシンが含まれている。他の一例として、この方法には、その改変された核酸によりコードされるポリペプチドの、改変されたニトリラーゼ活性に対するアッセイも含まれており、このアッセイにより、改変されたニトリラーゼ活性を有する、改変された核酸によりコードされるポリペプチドが同定される。一例として、工程(a)の改変は、PCR、変異性 PCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチド特異的変異法、アッセンブリPCR、セクシュアルPCR 変異法、インビボ突然変異、カセット変異法、再帰的アンサンブル変異法、エクスポネンシャルアンサンブル変異法、部位特異的変異法、遺伝子再アッセンブリ、遺伝子飽和部位変異法、リガーゼ連鎖反応 (ligase chain reaction)、インビトロ突然変異、オリゴヌクレオチド合成、若しくはその他のDNA 作製技術やこれらの組み合わせによる工程により行われる。他の一例として、この方法は改変工程(a)を少なくとも一回は反復することを含む。
本発明は、更に、二以上の核酸からのポリヌクレオチドの作製法を提供し、この方法には (a)少なくとも一つは本発明の核酸を含む二以上の核酸間における相同性領域及び多様性領域の同定;(b)二以上の核酸中の少なくとも二種の核酸と配列的に一致する一組のオリゴヌクレオチドの提供;及び(c)ポリメラーゼによるそのオリゴヌクレオチドの伸長、それによるポリヌクレオチドの作製、が含まれている。
本発明は、更に、ニトリラーゼを同定するためのスクリーニングアッセイを提供し、このアッセイは (a)少なくとも一つの本発明の核酸を含む複数の核酸又は少なくとも一つの本発明のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを提供すること;(b)前記複数の集団中から、ニトリラーゼ活性を試験すべきポリペプチド候補を得ること;(c)前記候補をニトリラーゼ活性について試験すること;及び(d)これらの候補がニトリラーゼであることを同定すること、を含んでいる。一例として、この方法には、これらの候補のニトリラーゼ活性測定に先立つ、これらの核酸、若しくはポリペプチドの少なくとも一つの改変も含まれている。その他の一例として、工程(c)の試験は、更に宿主細胞、若しくは宿主生物中におけるポリペプチドの改良された発現に対する試験も含む。更なる一例として、工程(c)の試験には、約pH3から約pH12の範囲におけるニトリラーゼ活性の評価も含まれている。更なる一例として、工程(c)の試験は、約pH5から約pH10の範囲におけるニトリラーゼ活性の評価も含んでいる。他の一例として、工程(c)の試験には、約4℃から約80℃の温度範囲におけるニトリラーゼ活性の評価も含まれている。他の一例として、工程(c)の試験は、約4℃ から約55℃の温度範囲におけるニトリラーゼ活性の評価も含んでいる。他の一例として、工程(c)の試験は、エナンチオマー選択的な反応生産物を与えるニトリラーゼ活性の測定を含んでいる。他の一例として、工程(c)の試験は、更に、位置選択的な反応生産物を与えるニトリラーゼ活性の測定をも含んでいる。
本発明は、ニトリラーゼ活性を有する本発明の核酸、若しくはその断片、又はそのペプチド擬似体の、遺伝子の有する特性又は遺伝子によりコードされるポリペプチドの有する特性を最適化するために設計された方法における使用を提供する。一例として、この方法にはその核酸配列中のヌクレオチド配列への改変の導入が含まれている。他の一例として、これらの改変は、PCR、変異性PCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチド特異的変異法、アッセンブリPCR、セクシュアルPCR変異法、インビボ突然変異、カセット変異法、再帰的アンサンブル変異法、エクスポネンシャルアンサンブル変異法、部位特異的変異法、遺伝子再アッセンブリ、遺伝子飽和部位変異法、リガーゼ連鎖反応、インビトロ突然変異、オリゴヌクレオチド合成、若しくはその他のDNA 作製技術やこれらの組み合わせによる方法により導入される。更なる一側面として、これらの方法は繰り返される。
ニトリラーゼ活性を有する本発明のポリペプチド、若しくはそのフラグメント、又はそのペプチド擬似体は、工業的プロセスにおいて利用される。一側面として、その行程は、医薬品の製造、化学品の製造、食品添加物の製造、廃棄物分解の触媒、医薬品中間体の製造である。更に他の例として、そのプロセスには、これらのポリペプチドを利用したヒドロキシグルタリルニトリル基質の加水分解も含まれる。更に他の例として、そのプロセスは、LIPITORTM の製造プロセスである。他の一側面として、その利用されるポリペプチドは、配列番号44、196、208、210、若しくは238に示された配列中の連続したアミノ酸配列を有するポリペプチド、若しくはニトリラーゼ活性を有するそれらのフラグメントを含んでいる。他の一側面として、そのプロセスは、洗剤の生産工程である。他の一側面として、そのプロセスは、食品の生産プロセスである。
本発明は、トランスジェニック生物の調製における、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードした本発明の核酸又はその断片の使用を提供する。
本発明は、以下を含むキットを提供する:(a)ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードした本発明の核酸又はその断片、又は、(b)本発明のポリペプチド、又はニトリラーゼ活性を有するその断片又はペプチド擬似体、又はその組み合わせ;及び、(c)緩衝液 。
本発明は、以下を含む、分子を改変するための方法を提供する:(a)反応混合物を生成するために、ニトリラーゼ活性を有する本発明のポリペプチド又は断片又はそのペプチド擬似体を出発分子と混合すること;(b)前記出発分子を前記ポリペプチドと反応させて改変分子を生成すること。
本発明は、改変された化合物を同定するための方法を提供する。その方法は、以下を含む:(a)本発明のポリペプチド、又はニトリラーゼ活性を有する断片若しくはそのペプチド擬似体と出発化合物とを混合し、反応混合物、及びその後、改変出発化合物のライブラリーを生成すること;(b)前記ライブラリーを試験し、所望の活性を示す改変された出発混合物がライブラリー中に存在するかどうかを決定すること;(c)所望の活性を示す改変された化合物を同定すること。
本発明は、以下を含む鏡像選択的変換のためのスクリーニングアッセイを提供する:(a)二種のプロキラル又は対掌部分を有する分子を提供すること;(b)前記分子の少なくとも一つのプトキラル又は対掌部分を標識すること;(b)選択的触媒により、二つの残基の少なくとも一つを改変すること;及び、(c)質量分光計による結果を検出すること。そのスクリーニングアッセイは、エナンチオマー超過率(ee)又はジアステレオマー超過率(de)を決定又は検出するために使用することができる。本アッセイに有用な例示的な標識は、重同位体又は軽同位体である。本アッセイに有用な選択的触媒は、酵素であり得る。本スクリーニングアッセイは、両方の部分を標識して行うこともできる。そのスクリーニングアッセイはどちらの方向(即ち、反応物から生成物および生成物から反応物)にも行わうことができる。
本発明は、本発明の核酸が保存されたコンピューター読み取り可能媒体、例えば、配列番号 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385、及びそれらの変種からなるグループから選択される少なくとも一つのヌクレオチド配列を含む核酸の配列、及び/又は 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386、及びそれらの変種からなるグループから選択される少なくとも一つのアミノ酸配列が保存されたコンピューター読み取り可能媒体を提供する。。
本発明は、処理機及びデータ保存装置を含むコンピューターシステムを提供し、前記データ保存装置は、例えば、以下に示す本発明の核酸を保存している:配列番号 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385、及びそれらの変種からなるグループから選択される少なくとも一つのヌクレオチド配列を含む核酸、及び/又は 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386、及びそれらの変種からなるグループから選択される少なくとも一つのアミノ酸配列。一側面として、コンピューターシステムは、更に、配列比較アルゴリズム及び少なくとも一つの対照配列を保存したデータ保存装置を含む。他の例として、配列比較アルゴリズムは、多型性を同定するコンピュータープログラムを含む。
本発明は、以下を含む、配列の特徴を同定するための方法を提供する:(a)その配列をコンピューターへ入力すること;(b)配列特徴同定プログラムを動作させる、配列の中の特徴を同定すること;及び、(c)配列中の特徴を同定することであって、前記配列は本発明の核酸、例えば、配列番号1-386の少なくとも一つ、又はその変種、あるいはそのいかなる組み合わせ、を含む核酸である。
本発明は、以下を含む、ポリペプチドの機能断片を同定するためのアッセイを提供する:(a)本発明の少なくとも一つのポリペプチドから断片を得ること;(b)工程(a)による少なくとも一つの断片とシアノヒドリン部分あるいはアミノニトリル部分を有する基質をニトリラーゼ活性に適切な条件の下に接触させること;(c)工程(b)の少なくとも一つの各断片によって生成される反応生成物の量を測定すること;及び、(d)ニトリラーゼ反応生成物を生成し得る少なくとも一つの断片を同定すること;それにより、そのポリペプチドの機能的断片を同定する。一側面として、工程(a)の断片は、その断片を合成することにより得られる。他の一側面として、工程(a)の断片は、ポリペプチドの断片化により得られる。
本発明は、以下を含む、ポリペプチドの機能的変種を同定するためのアッセイを提供する:(a)本発明の少なくとも一つのポリペプチドから少なくとも一つの変種を得ること;(b)工程(a)による少なくとも一つの変種とシアノヒドリン部分あるいはアミノニトリル部分を有する基質をニトリラーゼ活性に適切な条件の下に接触させること;(c)工程(b)による少なくとも一つの各変種によって生成される反応生成物の量を測定すること;および、(d)ニトリラーゼ反応生成物を生成し得る少なくとも一つの変種を同定すること;それにより、そのポリペプチドの機能的断片を同定する。
キラルα-ヒドロキシ酸又はアミノ酸を生成するために、立体選択的なニトリラーゼがシアノヒドリン又はアミノニトリルを加水分解する化学反応スキームを示す。 ニトリラーゼ活性の存在を同定するために使用されるOPAをベースにしたシアナイド検出アッセイを描写している。 立体選択的乳酸脱水素酵素をベースにしたα-ヒドロキシ酸の検出及び測定のための分光学的システムを描写している。 立体選択的アミノ酸酸化酵素をベースにしたα-アミノ酸の検出及び測定のための分光学的システムを描写している。 ニトリラーゼスクリーニング法の段階を図示している。 基質と生成物の組み合わせの特徴的なクロマトグラムである。ブランクサンプルを表すD-フェニルグリシン(図6A) 基質と生成物の組み合わせの特徴的なクロマトグラムである。酵素的反応サンプル(図6B) 基質と生成物の組み合わせの特徴的なクロマトグラムである。緩衝液中の細胞溶解液から成るネガティブコントロール(図6C)。 基質と生成物の組み合わせの特徴的なクロマトグラムである。フェニルグリシンのキラル分析(図6D)。 基質と生成物の組み合わせの特徴的なクロマトグラムである。D-エナンチオマーのニトリルピーク溶出(図6E)。 (R)-2-クロロマンデル酸の基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。図7Aは、緩衝液中の2-クロロマンデロニトリルのみを示す。 (R)-2-クロロマンデル酸の基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。図7Bは、標準クロロマンデル酸を示す。 (R)-2-クロロマンデル酸の基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。図7Cのクロマトグラムは、生成物の出現と基質ピークの減少を示す。 (R)-2-クロロマンデル酸の基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (R)-2-クロロマンデル酸の基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (S)-フェニル乳酸の基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (S)-フェニル乳酸の基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 L-2-メチルフェニルグリシンの基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 L-2-メチルフェニルグリシンの基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 L-tert-ロイシンの 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 L-tert-ロイシンの 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 L-tert-ロイシンの 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸の 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸の 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸の 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 4-メチル-D-ロイシンと4-メチル-L-ロイシンの 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 4-メチル-D-ロイシンと4-メチル-L-ロイシンの 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 4-メチル-D-ロイシンと4-メチル-L-ロイシンの 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 4-メチル-D-ロイシンと4-メチル-L-ロイシンの 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (S)-シクロヘキシルマンデル酸の 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 (S)-シクロヘキシルマンデル酸の 基質及び生成物のコンビネーションの特徴的なクロマトグラムである。 本発明のスクリーニングアッセイに関連した典型的な標準曲線の二例を示す。 本発明のスクリーニングアッセイに関連した典型的な標準曲線の二例を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明の酵素及び/又は方法を使用したニトリラーゼ触媒反応により生成され得る選択化合物を示す。 本発明のニトリラーゼ反応の一典型例を示す。
本発明の詳細な説明
本発明は、ニトリラーゼ、ニトリラーゼにコードされた核酸、及びその使用に関連する。この中で使用される「ニトリラーゼ」という用語は、ニトリラーゼ活性、例えば、カルボン酸とアンモニアへ対応するニトリルの加水分解する能力、を有するどのようなポリペプチドをも含む。ニトリラーゼは、エナンチオマー選択的な芳香族及び脂肪族アミノ酸又はヒドロキシ酸の合成に使用される生体触媒として商業的有用性を有する。
ニトリラーゼ化学反応は、以下のとおりである。
Figure 0004528872
ヒドロキシ酸調製のためのニトリラーゼ反応は、以下のとおりである。
Figure 0004528872
アミノ酸調製のためのニトリラーゼ反応は、以下のとおりである。
Figure 0004528872
更に、前述の各加水分解反応において、水が二分子消費され、アンモニア一分子が遊離される。
サンプル中にニトリラーゼ活性が存在するか、あるいはある特定のポリペプチドがニトリラーゼ活性を示すかを試験することができる、数種の異なるタイプのアッセイがある。例えば、そのアッセイは、ニトリラーゼによって触媒される化学反応からの生成物又は副生成物の存否を検出することができる。例えば、ニトリラーゼ活性の存在は、シアノヒドリン又はアミノニトリルからそれぞれ生成するα-ヒドロキシ酸又はα-アミノ酸により検出することができ、そのニトリラーゼ活性のレベルは、生成された反応生成物の相対的な量を測定することにより定量することができる。図1は、高収率でキラルα-ヒドロキシ酸又はα-アミノ酸を生成する立体選択的なニトリラーゼの使用の化学反応スキームを示す。出発物質は、アンモニアとの反応によりアルデヒドから生成されるアルデヒドあるいはイミンである。ヒドラジンシアニドとアルデヒド又はイミンである。シアン化水素とアルデヒド又はイミンとの反応は、相当するシアノヒドリン及びアミノニトリルのエナンチオマー混合物を生成する。立体選択的なニトリラーゼは、あるエナンチオマーを相当するα-ヒドロキシ酸又はα-アミノ酸に立体選択的に変換するために使用することができる。図3は、α-ヒドロキシ酸の立体選択的なニトリラーゼに依存した生成、及び乳酸デヒドロゲナーゼをベースとした、α-ヒドロキシ酸の相当するα-ケト酸への変換及び付随する検出可能な色素の酸化還元を基にするα-ヒドロキシ酸の分光学的な検出に関する模式図である。図4は、α-アミノ酸の立体選択的なニトリラーゼに依存した生成、及びアミノ酸酸化酵素によるα-アミノ酸の相当するα-ケト酸への変換及び付随する検出可能な色素の酸化還元を基にするα-アミノ酸の分光学的な検出に関する模式図である。
本発明の実施における使用を考慮されるニトリラーゼは、ニトリル又はシアノヒドリンを相当する酸及びアンモニアに立体選択的に加水分解するものを含む。一側面として、本発明のニトリラーぜは、ニトリル又はシアノヒドリンを相当する酸及びアンモニアに立体選択的に加水分解ことができる。ニトリラーゼは、例えば、グループBのアミノ酸配列として示されるそれらのような本発明のニトリラーゼを含む。基質を立体選択的に加水分解するいくつかのニトリラーゼは、以下の表に示される。
本発明のニトリラーゼは、更に以下の特徴を共有する:(1)約333アミノ酸から約366アミノ酸という完全長アミノ酸配列、(2)約2サブユニットから約16サブユニットのホモマルチマーとしての集合と活性、(3)Glu-Lys-Cys連続アミノ酸の触媒トリアッドの存在、(4)約pH5から約pH9までの最適pH、及び、(5)約0℃から約100℃、あるいは約40℃から約50℃の至適温度。
新規ニトリラーゼ間の共通配列
本明細書中に開示するニトリラーゼは、バイオインフォマティクス及び配列比較プログラムを利用して調べられ、以下の共通した情報が収集された。保存モチーフの三つの領域が、ニトリラーゼポリペプチド内に同定された。これらは、ニトリラーゼ酵素中に存在する触媒トリアッド(E-K-C)に対応する(H. Pace and C. Brenner (Jan. 15、2001) "The Nitrilase Superfamily:classification、structure and function" Genome Biology Vol. 2、No. 1、pp 1-9)。
本明細書における略語は、慣習的なアミノ酸の一文字コードである:A、アラニン;B、アスパラギン又はアスパラギン酸;C、システイン;D、アスパラギン酸;E、グルタミン又はグルタミン酸;F、フェニルアラニン;G、グリシン;H、ヒスチジン;I、イソロイシン;K、リジン;L、ロイシン;M、メチオニン;N、アスパラギン;P、プロリン; Q、グルタミン; R、アルギニン; S、セリン; T、スレオニン; V、バリン; W、トリプトファン; Y、チロシン; Z、グルタミン又はグルタミン酸。L. Stryer、Biochemistry、1988、W. H. Freeman and Company、New York、を参照。
本発明のニトリラーゼポリペプチド配列間でなされたコンピューター配列比較により、各アミノ酸配列中に以下のモチーフが明らかになった:

Figure 0004528872
このfはイタリック体
以下の残基(下線)は、同定された全てのニトリラーゼ中に完全に保存されている:第一のモチーフ又は領域(E、グルタミン)中の3番目のアミノ酸;第二のモチーフ中の第二残基(R、アルギニン);第二のモチーフ中の第三残基(K、ロイシン);第三のモチーフ中の第三残基(C、システイン);及び第三のモチーフ中の第五残基(E、グルタメミン)
ボックス中、大文字は、本発明のニトリラーゼ中で90%又はそれ以上の一致を示す一方、小文字は、50%又はそれ以上の一致を示す。イタリック体の文字は、本発明のニトリラーゼ中で30%又はそれ以上の一致を示す。ボックス中の点は、保存されていない残基を示す。
ニトリラーゼスーパーファミリーのニトリラーゼブランチ中のニトリラーゼの配列は、触媒トリアッドを持つものとして、PaceとBrennerの論文(Genome Biology、2001、Vol. 2、No. 1、pp. 1-9)中で述べられている。しかしながら、本発明のニトリラーゼの触媒トリアッド領域は、PaceとBrennerの引用において同定されたものと、以下の点において異なる。
第一モチーフにおける相違:第一モチーフの最初のボックス中のFは、先に同定されたそれらの50%程度に比べ、本発明のニトリラーゼの90%中に保存されている。、本発明のニトリラーゼにおいては、第一モチーフ中の第四残基は"t"、スレオニンであり、それは50%又はそれ以上の一致で見られる。しかしながら、この残基は、"a"(アラニン)としてPaceとBrennerでは同定されている。第一モチーフ中の最後の残基は、"f"(フェニルアラニン)として同定され、50%又はそれ以上の一致が示された。しかしながら、本発明のニトリラーゼは、僅か30%の一致しか"f"(フェニルアラニン)を示さなかった。
第二モチーフにおける相違:本発明のニトリラーゼの第二モチーフの最初のボックス中に"r"(アルギニン)がある。しかしながら、PaceとBrennerのその部位における一致は、"h"(ヒスチジン)を示している。二番目のボックス中の"R"(アルギニン)は、本発明のニトリラーゼ中に完全に保存されるが、PaceとBrennerの文献において、その残基は、90%の一致で見られる。第二モチーフ中の四番目のボックス中の"L"(ロイシン)は、本発明のニトリラーゼ中に90%、あるいはそれ以上の割合で保存されている。しかしながら、PaceとBrennerのニトリラーゼは、配列中に僅か50%しかその残基が保存されていない。同様に、第二モチーフ中の六番目のボックス中の"P"(プロリン)は、本発明のニトリラーゼ中に90%、あるいはそれ以上の中で保存される。しかしながら、PaceとBrennerのニトリラーゼは、その配列の僅か50%にその残基が保存されている。
第三モチーフにおける相違:最初のボックス中の"L"は、本発明のニトリラーゼ中に90%、あるいはそれ以上で保存される。しかしながら、同時に、PaceとBrennerの文献では、僅か50%の出現見るのみである。最終的に、本発明のニトリラーゼの第三モチーフ中の六番目のボックスは、同時に、50%又はそれ以上の割合でヒスチジンを示している。しかしながら、PaceとBrennerの文献では、同時に、そのポジションは、アスパラギン("n")50%を示している。
本発明は、第一領域が五個のアミノ酸を含み、その第一領域の最初のアミノ酸はFであり、四番目のアミノ酸がTである三つの領域を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドを提供する。本発明は、また、第二領域が七個のアミノ酸を含み、その第二領域の最初のアミノ酸はRであり、六番目のアミノ酸がPである三つの領域を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドを提供する。本発明は、また、第三領域が九個のアミノ酸を含み、その第三領域の最初のアミノ酸はLであり、六番目のアミノ酸がHである三つの領域を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドを提供する。
本発明は、また、第一共通部分配列がFPETFであり、第二共通部分配列がRRKLXPTであり、第三共通サブ配列がLXCWEXXXPである三つの共通部分配列を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドを提供する。
本発明は、また、第一共通部分配列がFPEXXであり、第二共通部分配列がXRKLXPTであり、第三共通サブ配列がLXCWEXXXPである三つの共通部分配列を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離ポリペプチドを提供する。
本発明に従って、対掌的に純粋なα-置換カルボン酸の生成するための方法が提供される。本発明の方法により生成された対掌的に純粋なα-置換カルボン酸は、以下の構造を有する:
Figure 0004528872
式中、R1 ≠ R2 及びR1 及び R2 は、さもなければ、それぞれ独立に、-H、置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、ヘテロアリル、シクロアルキル、又はヘテロサイクリックであり、前記置換は低級アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、メルカプト、シクロアルキル、ヘテロサイクリック、アリル、ヘテロアリル、アリロキシ、又はハロゲンであり、又は場合により、R1及びR2は、直接的又は非直接的共有結合して環状官能基部分を形成する。Eは、N(Rx)2又はOHであり、各Rxは、それぞれ独立にH又は低級アルキルである。
本明細書において、用語「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルその他を含む1〜24炭素原子から成る直鎖又は分枝鎖又は環状炭化水素基を言及する。用語「低級アルキル」は、1〜6炭素原子から成る一価の直鎖又は分枝鎖又は環状ラジカルを言及する。
本明細書において「アルケニル (alkenyl) 」とは一つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、2〜24 個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、若しくは環状炭化水素基を意味する。
本明細書において「アルキニル (alkynyl) 」とは、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有し、2〜24 個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、若しくは環状炭化水素基を意味する。
本明細書において「シクロアルキル (cycloalkyl) 」とは、約3 から約14 個の炭素原子を含む環状炭化水素基を意味する。
本明細書において「複素環 (heterocyclic) 」とは、一以上のヘテロ原子 (例えば、窒素、 酸素、 硫黄、リン、セレン、ホウ素など) をその環構造中に含み、約3 から約14 個の炭素原子を有する環状基を意味している。
本明細書において「アリール (aryl) 」とは、約6 から約14 個の炭素原子を含む芳香基 (即ち、共役二重結合系を有する環状基) を意味している。
本明細書中,化学基又は部位において、用語「置換」とは、一つ以上の非水素原子による置換を有している化学基又は部位を意味している。このような置換の例には、これらに限定されないが、(例えば、ケトン、アルデヒド、エーテル、若しくはエステル基中の) オキシ、ヒドロキシ、(低級アルキル基中の) アルコキシ、アミノ、チオ、(低級アルキル基中の) メルカプト、シクロアルキル、置換シクロアルキル、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、アミド、-C(O)H 、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、スルフリルなどが含まれる。
好ましい例として、本発明の方法により生産される光学的に純粋なα-置換型カルボン酸は、α-アミノ酸又はα-ヒドロキシ酸である。幾つかの例として、その光学的に純粋なα-アミノ酸は、D-フェニルアラニン、D-フェニルグリシン、L-メチルフェニルグリシン、L-tert-ロイシン、D-アラニン、D-ヒドロキシノルロイシン [(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸] 、R-パントラクトン、2-クロロマンデル酸、若しくは(S)- 、又は(R)-マンデル酸であり、光学的に純粋なα-ヒドロキシ酸は、(S)-シクロヘキシルマンデル酸である。この中で使用される「低分子化合物」には分子量が25 ダルトン以上の全ての分子が含まれている。
用語「約 (about) 」が本明細書中で使用されており、この用語は「およそ (approximately) 」、「大体 (roughly) 」、「そのあたり (around) 」、若しくはこれらの範囲内を意味している。用語「約 (about) 」が数値と併せて使用されるとき、その数値は、示された数値より上、及び下にその数値幅が拡大される。概して本報では、この用語「約 (about) 」はある数値を、その言及された値の20%より上、若しくは下 (高く、若しくは低く) の変動幅に改変するために利用されている。
本明細書中で使用される「若しくは」、「又は」とは、ある特定のリスト中の何れかの構成要素、及びそのリスト中の構成要素の組み合わせのうちの何れのものをも含んでいる。
本明細書中で使用される「核酸」とは、天然又は合成のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを意味し、これにはDNA 、RNA 、DNA-RNA ハイブリッド、一本鎖、二本鎖、センス、アンチセンスなどが含まれ、これらは、ワトソン-クリック型の塩基対形成により、相補的な核酸とハイブリダイゼーションできる。本発明の核酸にはヌクレオチド類縁物質 (例えば、BrdU) やヌクレオシド同士が非フォスフォジエステル結合で連結されたもの [例えば、ペプチド核酸 (PNA、peptide nucleic acid) 、若しくはチオジエステル結合] も含まれる。具体的には、核酸には、これらに限定されないが、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA 、若しくはこれらの何れかの組み合わせも含まれる。ある例として、本発明の「核酸」は、例えば、グループBアミノ酸配列に記載されている核酸、及びそれらの変種をコードしている核酸を含んでいる。この中で使用される用語「核酸配列」は、ヌクレオチドを表している略語、文字、符号、若しくは単語の連続的なリストを意味している。一側面として、核酸は、「プローブ」であり、これは、通常、100ヌクレオチド以下の長さの比較的短い核酸である。核酸プローブは、しばしば、約10ヌクレオチドから約50ヌクレオチドの長さである。核酸の「標的領域」とは関心対象となる核酸部位である。
核酸の「コード領域」とは、適切な調節領域の調節下に置かれたとき、配列特異的な様式で特定のポリペプチド又はタンパク質を生産するために転写、及び翻訳される核酸の部分である。コード領域は、このようなポリペプチド、若しくはタンパク質を「コード」していると称される。
用語「遺伝子」は、ポリペプチドの発現をある様式で調節できる適切な調節領域と動作可能に連結されたコード領域を意味している。遺伝子は、コード領域 [読み枠 (ORF、open reading frame)]の前部 (上流) 及び後部(下流)のDNA領域という非翻訳調節領域 (例えばプロモーター、エンハンサー、リプレッサーなど)を含み、個々のコード領域 (即ちエクソン) 間に介在配列(即ちイントロン)を含む場合もある。
本明細書中で使用される「ポリペプチド」は、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、遺伝子産物、発現産物、若しくはタンパク質の何れかを意味している。ポリペプチドは、連続したアミノ酸を含んでいる。この用語「ポリペプチド」には、天然及び合成ポリペプチドが含まれる。
更に、本明細書中で使用される「ポリペプチド」は、ペプチド結合、若しくは改変されたペプチド結合(例えば、ペプチドイソスター)でお互いに連結されたアミノ酸を意味し、これらは遺伝子によりコードされる20種類のアミノ酸以外の改変されたアミノ酸を含み得る。これらのポリペプチドは、翻訳後修飾などの天然に存在するプロセス又は当業者に良く知られている化学的技術により改変することができる。これらの改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ又はカルボキシル末端など、そのペプチドの何れの部位においても可能である。同様のタイプの改変が、そのポリペプチド中の数ヶ所において、同一又は異なる程度に存在し得ることを理解するべきである。また、ポリペプチドは、多くのタイプの改変を受けることができる。これらの改変には、これらに限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、共有結合的クロスリンク又は環化、フラビンの共有結合、ヘムの共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、シスチン又はピログルタミン酸の形成、フォルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPI アンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ポリエチレングリコール化 (PEGylation) 、タンパク質加水分解酵素処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫化、及びアルギニル化などのtRNA により媒介されるタンパク質へのアミノ酸の添加 [Proteins - Structure and Molecular Properties 2nd Ed.、T.E. Creighton、W.H. Freeman and Company、New York (1993); Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B.C. Johnson、Ed.、Academic Press、New York、pp. 1-12 (1983) を参照] などが含まれる。
本明細書中で使用される「アミノ酸配列」は、アミノ酸残基を表している略語、文字、符号、若しくは単語のリストを意味している。
本明細書中で使用される「単離(された)」とは、ある成分がその起源環境より取り出されたことを意味している。例えば、動物中に存在する天然のポリヌクレオチド又はポリペプチドは「単離された」とは言及されないが、これらがその天然環境中に共存する他の全ての成分より分離された場合、これらのポリヌクレオチド又はポリペプチドは「単離された」と表現される。このようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部と成ることができ、及び/又はこのようなポリヌクレオチド又はポリペプチドは組成物の一部となることができ、ベクター又は組成物はそれらの起源環境の一部ではないという点で、そのようなポリペプチドは単離されたものである。
核酸に関して本明細書中で使用される用語「組換え」は、その核酸が天然環境において隣接していなかった核酸と共有結合的に連結されて隣接された核酸を意味する。更に、核酸集団中の特定の核酸に関してこの中で使用される用語「濃縮(富化)された (enriched) 」は、その特定の核酸が、核酸分子集団中の核酸のうちの5% 、若しくはそれ以上の分子数を占めていることを意味している。通常、濃縮された核酸は、核酸分子集団中の核酸のうちの15% 、若しくはそれ以上の分子数を占めている。より一般的には、濃縮された核酸は、核酸分子集団中の核酸のうちの50% 、90% 、若しくはそれ以上の分子数を占めている。
「組換え」ポリペプチド又はタンパク質とは組換えDNA 技術により生産されたポリペプチド又はタンパク質、即ち、目的のポリペプチド又はタンパク質をコードする外来性組換えDNA 構築物を導入された形質転換細胞により生産されるポリペプチド又はタンパク質を意味している。「合成」ポリペプチド又はタンパク質は、化学的合成 (例えば、固相ペプチド合成) により調製されたポリペプチド又はタンパク質を意味している。化学的ペプチド合成は、当業者には良く知られている技術であり [例えば、Merrifield (1963)、Am. Chem. Soc. 85:2149-2154; Geysen et al. (1984)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA 81:3998 を参照] 、合成用キット、及び自動化ペプチド合成機は商業的に入手可能である (例えば、Cambridge Research Biochemicals、Cleveland、英国;Model 431A 合成機、Applied Biosystems、Foster City、CA) 。このような装置を用いた直接的な合成、若しくは他の既知技術を利用した連結可能な一連のフラグメントの合成により、本発明のペプチドは容易に得られる。
核酸及びアミノ酸の配列対に関して本明細書中で使用される用語「同一性(identity)とは、二種類の配列が、整列できる位置範囲においてどの程度不変であるかを表している。二種類の与えられた配列間における%同一性は、BLAST[Altschul et al. (1990)、J. Mol. Biol. 215:403-410]などのアルゴリズムを利用して計算される。BLASTに関してはwww.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo を参照。250ヌクレオチド又は80アミノ酸以下の配列 (「short queries」) に対してこの BLAST アルゴリズムを利用する場合の検索パラメータは、以下の通りである:フィルターoff、スコアーマトリクスPAM30、単語サイズ3又は2、E 値は1000又はそれ以上、及びギャップ値は11、1 。250ヌクレオチド又は80アミノ酸以上の配列の場合はデフォルト検索パラメータを使用する。このBLAST ウェブサイトは、ある環境下において特定の検索を行う上で有用である。
本明細書中で使用される「相同性 (homology) 」は、ヌクレオチド配列に関連して使用される用語「同一性 (identity) 」と同様の意味である。しかし、アミノ酸配列に関してこの用語が利用された場合、この「相同性」には、同一のアミノ酸に加え、保存的に置換されたアミノ酸のパーセンテージも含まれる。相同性のパーセンテージは、Smith とWatermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482(1981))に従って計算される。
本明細書において、二又はそれ以上の核酸配列に関して、二つの配列が最大の一致を示すように整列され、上述の配列比較アルゴリズムを使用して比較したときに、これらが少なくとも99.5%のヌクレオチド同一性を示す場合、これら二つの配列は「実質的に同一」である。更に、これらの配列が実質的に同一であるかどうかを決定する上で、コード領域中の同一のアミノ酸をコードするコドンは、遺伝子コードの縮重性を考慮して、同一であると扱うことが出来る。典型的には、実質的同一性の決定が行われる領域は、少なくとも20残基の範囲であり、より一般的には、これらの配列は少なくとも25か200残基の範囲にわたって実質的に同一である。
本明細書において、二又はそれ以上のアミノ酸配列に関して、二つの配列が最大の一致を示すように整列され、上述の配列比較アルゴリズムを使用して比較された際、これらが少なくとも99.5%の同一性を示した場合、これら二つの配列は「実質的に同一」である。更に、これらの配列が実質的に同一であるかどうかを決定する上で、保存的に置換されたアミノ酸は、そのポリペプチドが実質的にその生物学的機能を保持している場合、同一であると見なされる。
「ハイブリダイゼーション」とは、核酸鎖がその相補的核酸鎖と、相補的塩基間での水素結合を通じて結合する過程を意味している。ハイブリダイゼーションアッセイは、感度が高く、選択的であるため、目的とする特定の配列が試料中に低濃度で存在するものであってもその同定が可能である。ストリンジェントな条件は、プレハイブリダイゼーション溶液、及びハイブリダイゼーション溶液中の塩又はホルムアミド濃度により、又はハイブリダイゼーション温度により規定され、これらは当業者に良く知られている。塩濃度の低下、ホルムアミド濃度の増加、若しくはハイブリダイゼーション温度の上昇によりストリンジェンシーは高められる。具体的には、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、本明細書中で使用されるような50%ホルムアミド中で42℃、5X SSPE、0.3% SDS、及び200 ng/mlの切断変性された鮭***由来DNA、及びこれと類似する条件が含まれる。この条件の変法は、当業者には良く知られている。
用語「変種」は、一以上のヌクレオチド又はアミノ酸残基が改変された本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチド(それぞれ)を意味し、これらによりコードされるペプチド又はペプチド(それぞれ)はニトリラーゼ活性を有している。変種は、以下の方法及びこれらのうちの何れかの方法により作製される:変異性 PCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチド特異的変異法、アッセンブリPCR、セクシュアルPCR 変異法、インビボ突然変異、カセット変異法、再帰的アンサンブル変異法、エクスポネンシャルアンサンブル変異法、部位特異的変異法、遺伝子再アッセンブリ、遺伝子飽和部位変異法(GSSM)、若しくはこれらの組み合わせ。
既知の配列に基づくペプチド擬似体の作製法は、例えば、米国特許5,631,280;5,612,895;及び5,579,250に記載されている。ペプチド擬似体の利用には、非アミド結合による目的の位置への非アミノ酸残基の導入が含まれている。本発明の一例には、結合、ペプチド骨格、若しくはアミノ酸成分が適当な擬似体で置換されたペプチド擬似体が含まれている。適当なアミノ酸擬似体となる非アミノ酸の例には以下の物質が含まれる:β-アラニン、L-α-アミノ酪酸、L-γ-アミノ酪酸、L-α-アミノイソ酪酸、L-ε-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、N-ε-Boc-N-α-CBZ-L-リジン、N-ε-Boc-N-α-Fmoc-L-リジン、L-メチオニンスルホン、L-ノルロイシン、L-ノルバリン、N-α-Boc-N-δCBZ-L-オルニチン、N-δ-Boc-N-α-CBZ-L-オルニチン、Boc-p-ニトロ-L-フェニルアラニン、Boc-ヒドロキシプロリン、Boc-L-チオプロリン。
本明細書中で使用される「低分子化合物」には分子量が約20 ダルトンから約 1.5 キロダルトンの分子が含まれている。
サブクローニング等の分子生物学的手法は、当業者に良く知られている常法を利用して行われた(Sambrook、J. Fritsch、EF、Maniatis、T. (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd ed.)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview NY を参照) 。
コンピューターシステム
本発明の一側面として、本発明の全ての核酸配列、及び/又はポリヌクレオチド配列は、コンピューターによって読まれ、アクセスすることのできる如何なる媒体上にも保存、記録、及び細工することができる。この中で使用される用語「記録される」及び「保存される」とは、コンピューター媒体上に情報を保存するためのプロセスを意味する。本発明の他の一例は、配列番号1-386 に記載されている配列のうちの少なくとも 2、5、10、15、若しくは20の核酸配列、及びそれらの配列と実質的に同一の配列を保存できる、コンピューターが読み取り可能な媒体である。更に他の一例は、コンピューターによる本発明の核酸配列間又はポリペプチド配列間での比較、及び本発明の配列とその他の配列との比較である。コンピューター読み取り可能媒体には磁気的に読める媒体、視覚的に読める媒体、電気的に読める媒体及び磁気/視覚媒体を含む。例えば、これらのコンピューター読み取り可能媒体は、ハードディスク、フロッピィーディスク、磁気テープ、CD-ROM、デジタル多様ディスク(DVD)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、あるいはリードオンリーメモリー(ROM) や、他のタイプの当業者に既によく知られている他の媒体でもよい。
本発明の一例には、システム(例えば、インターネットを基にしたシステム)、特に、コンピューターシステムが含まれ、これらを利用してこの中で使用される配列や配列情報を保存したり細工したりする。この中で使用される「コンピューターシステム」とは、配列番号1-386 に記載されている全ての配列 (核酸又はポリペプチドの何れでも良い) のうちの少なくとも一つの核酸配列、及びそれらの配列と実質的に同一の配列を分析するためのハードウェアー、ソフトウェア、及びデータ保存のための構成設備を意味している。このコンピューターシステムには、通常、配列データについて処理、アクセス及び細工するための処理装置が含まれている。この処理装置は、例えば、IntelのPentium(登録商標) III、あるいはSun 、Motorola、Compaq、AMD、若しくはInternational Business Machinesなどにより提供されている既知のタイプの中央演算処理装置である。
典型的には、このコンピューターシステムは、処理装置、データ保存のための一つあるいはそれ以上の内部データ保存装置、及びデータ保存装置に保存したデータの読み出しのための一つ、若しくはそれ以上のデータ読み出し装置を含む一般的に合目的的なシステムである。
具体的な一側面として、このコンピューターシステムは、バスを通じてメインメモリー(好ましくはRAMとして装備)と連結された処理装置、及び一つ又はそれ以上の、ハードドライブ及び/又はデータの記録された、コンピューター読み取り可能媒体のような内部データ保存装置を含んでいる。或る例においてこのコンピューターシステムは、更に、内部データ保存装置上に保存したデータを読むための一つ又はそれ以上の読み出し装置を含んでいる。
データ読み出し装置とは、例えば、フレキシブルディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブ、あるいは遠隔データ保存システム(例えば、インターネットを通して)等に接続可能なモデムなどに相当する。具体例として、内部データ保存装置は、制御論理、及び/又は記録されたデータを含んでいるフレキシブルディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブ等のような取り出し可能なコンピューター読み取り可能媒体である。コンピューターシステムは、一旦データ読み出し装置に挿入された制御論理及び/又はデータをデータ保存コンポネントから読み出すための適当なソフトウェアを含むか、あるいはそのためにプログラムされてもよい。
コンピューターシステムは、コンピューター使用者に出力を表示するためのディスプレーを含んでいる。このコンピューターシステムが、コンピューターシステムへの中央集中的アクセスを提供するあるネットワーク又は広域ネットワークを通じて他のコンピューターシステムに接続できることも注目すベきことである。幾つかの例において、このコンピューターシステムは、配列比較アルゴリズムをも更に含むことができる。「配列比較アルゴリズム」とは、あるヌクレオチド配列をデータ保存媒体中の他のヌクレオチド及び/又は化合物と比較するための、コンピューターシステム上で実行される(限局的又は遠隔的に)一以上のプログラムを意味している。
ニトリラーゼの使用
ニトリラーゼは、高純度化成品企業において、貴重な中間体、及び薬物の中間体であるキラルα-ヒドロキシ酸を産生するための重要な酵素として同定された。本発明のニトリラーゼ酵素は、キラルα-ヒドロキシ及びα-アミノ酸をそれぞれ生産するシアノヒドリン及びアミノニトリルの立体選択的な加水分解の触媒に有用である。
厳しい条件を要求せず、またより環境適合性があることから、立体選択的酵素は、化学的分離法において重要な利点を提供する。ニトリラーゼの使用は、キラルアミノ酸及びヒドロキシ酸の産生において特に重要性がある。立体選択的ニトリラーゼの使用により、水溶性の状態における基質のラセミ化のために、動的分離の条件が確立され得る。従って100%の理論的な収率の達成が可能である。
本発明は、天然に存在する資源から発見及び分離されたニトリラーゼに関する。本発明は、また、多様で極端な環境から新しい遺伝子や遺伝子経路を進化させることにも関する。入手可能な酵素の最も広汎な類別の開発努力により、世界中の様々な生息地から集められたサンプルからDNAが直接抽出された。これらの努力により、世界中の環境遺伝子ライブラリーの大規模な収集開発が行われた。これらライブラリーの広汎なハイスループットスクリーニングを通して、今までに192のユニークな新配列を有するニトリラーゼ酵素が発見された。本発明の前には、20よりも少ない微生物由来のニトリラーゼが文献及び公共データベースに報告されているだけである。
ニトリラーゼのような生体触媒は、生物の基礎代謝反応の触媒作用において重要な役割を担う。更に、生体触媒は、多くの異なった反応を行うことができるという化学産業における応用を見い出している。ニトリラーゼ使用の利点のいくつかの例を以下に示す: 高エナンチオ-、ケモ-、及び、部位-選択性を提供する;穏やかな反応状態の下で作用する;生成物への直接アクセスを提供する-最小限の保護と共に;高い触媒効果を有する;化学的な別報と比較して廃物を削減する;酵素又は細胞として容易に固定化される;回収及び再利用が可能であり、又、分子生物学テクニックにより取扱いが可能である;全細胞プロセスにおいて再生可能;有機溶媒に耐性である;それらは、進化、あるいは至適化され得る。至適化されたニトリラーゼは、本発明の作用例としてここに示される。
ニトリラーゼは、ニトリル部分の加水分解を触媒し、対応するカルボン酸を生成する。ニトリルの慣習的な化学加水分解は、強酸又は塩基及び高温を要求する。しかしながら、本発明の一つの利点は、穏やかな条件の下でこの反応を行うニトリラーゼを提供することである。広範囲のニトリル基質を、ニトリラーゼ によってエナンチオ- 、ケモ- 及びレジオ-選択的に変換することができる。
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nitrilase:ニトリラーゼ
表1 本発明のニトリラーゼの幾つかの特徴
Figure 0004528872
動的キネティック分離:ニトリラーゼの使用は、急速に平衡化する二種のエナンチオマー間の識別を可能とし、100%の理論的な収量において単一生成物を与えることを可能とする。ニトリラーゼは、対掌的に純粋なα-カルボン酸及びα-アミノ酸を作製するために重要なシアノヒドリン及びアミノニトリルの動的分離のために利用される。本明細書中で示される新規に発見されたニトリラーゼは、95%以上のエナンチオマー過剰率(ee)及び95%以上の収量を以て生成物を与える。本ニトリラーゼは、水溶液又は有機溶媒中における穏やかな条件下に、この変換を効率的に行う。
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Rpid Racemization:迅速なラセミ化
Nitrilase:ニトリラーゼ
α-Hydroxy Acids:α-ヒドロキシ酸
α-Amino Acids:α-アミノ酸
示されてはいないが、上述のこれらの生成物は、反対の鏡像異性体も含んでいる。一例において、本発明は、如何なるグループA核酸配列に示されるような配列、又はそれに一致する配列、あるいはそれに相補的な配列を有する単離核酸を提供する。
別例として、本発明は、グループA核酸配列に示される核酸配列の一部分に同一な少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む単離核酸、または、それに実質的に同一な配列、あるいはそれに相補的な配列を有する、ヌクレオチドを含む単離核酸を提供する。
別例として、本発明は、グループBアミノ酸配列に示される配列を有する、あるいはそれに実質的に同一な配列を有するポリペプチドをコードした単離核酸を提供する。
別例として、本発明は、グループBアミノ酸配列に示されるような配列の一部分に同一な少なくとも10個の連続するアミノ酸、あるいは実質的にそれと同一の配列を有するポリペプチドをコードした単離核酸を提供する。
更なる別例として、本発明は、グループBアミノ酸配列に示される配列、あるいはそれと実質的な同一な配列を有する連続アミノ酸残基を含む実質的に精製されたポリペプチドを提供する。
別例として、本発明は、本発明のポリペプチドと特異的に結合する単離抗体を提供する。本発明は、また、特異的にそのポリペプチドと結合する能力を有する抗体断片をも提供する。
別例として、本発明は、グループBアミノ酸配列に示される配列、及びそれに実質的に同一な配列を有するポリペプチドの作成方法を提供する。その方法は、そのポリペプチドをコードした核酸を宿主細胞中へ導入すること、及びその核酸の発現が可能な条件下で宿主細胞を培養することを含む。前記核酸は、動作可能にプロモーターに結合されている。
別例として、本発明は、グループBアミノ酸配列に示される配列に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸、及びそれと実質的に同一な配列を有するポリペプチドの生成方法を提供する。その方法は、そのポリペプチドをコードした核酸を宿主細胞中へ導入すること、及びその核酸の発現が可能な条件下で宿主細胞を培養することを含み、それによってポリペプチドを生成する。前記核酸は、動作可能にプロモーターに結合されている。
別例として、本発明は、ニトリラーゼの変種生成の方法を提供する。それにはグループA核酸配列に示される核酸配列の選択、及びその配列中の一以上のヌクレオチドを他のヌクレオチドへ変えること、その配列中の一以上のヌクレオチドを削除すること、あるいはその配列に一以上のヌクレオチドを挿入することを含んでいる。
別例として、本発明は、グループBアミノ酸配列のポリペプチドの酵素的機能を保持するグループBアミノ酸配列の機能的変種を同定するためのアッセイを提供する。そのアッセイは、グループBアミノ酸配列又はその一部の配列と同一の配列、グループBアミノ酸配列又はその一部と実質的に同一な配列、あるいはニトリラーゼ活性を保持するグループBアミノ酸配列の変種である配列、を有する連続アミノ酸残基を含むポリペプチドを、そのポリペプチドが機能できる条件下において、基質分子と接触させ、基質レベルの低下、又はポリペプチドと基質間における反応の特異的な反応生成物のレベルの上昇を検出する。それにより、そのような配列の機能的変種を同定することを含む。
本発明のポリペプチドの改変
酵素は、選択性の高い触媒である。その優秀な点は、従来の合成化学において類のない優れた立体選択性、レジオ選択性、及びケモ選択性を伴った触媒作用能力である。更に、酵素は、著しい多様性を有する。それらは、有機溶媒中での機能させるため、極度なpH(例えば、酸又は塩基の条件)、極度な温度(例えば、高温及び低温)、極度な塩濃度(例えば、高塩分及び低塩分)で処理させるため、及び酵素学的な活性部位以外、構造的に、それらの天然、生理学的基質とは関係のない化合物と反応を触媒させるために改変することができる。
本発明は、ニトリラーゼ活性を保持するが望ましい特徴に関して改良された新しいポリペプチドを得るために、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチド又はそのようなポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドを改変するための方法を提供する。そのような改良には、有機溶媒中で機能する能力(例えば、ニトリラーゼ活性の呈示)、あるいは極度又は非特徴的pHで機能する能力、あるいは極度又は非特徴的温度で機能する能力、あるいは極度又は非特徴的塩濃度で機能する能力、あるいは異なる基質との反応触媒能力等が含まれ得る。
本発明は、これら酵素のユニークな触媒作用の特性を開発するためのニトリラーゼの使用法に関する。化学変換における生体触媒(即ち、精製又は粗酵素)の使用は、通常、特定の出発化合物と反応する特定の生体触媒の同定を必要とするが、本発明は、選択された生体触媒及び複数の出発化合物に存在する官能基に対する特異的な反応条件を使用する。各々の生体触媒は、一つの官能基、あるいはいくつかの関連した官能基に特異的なものであり、この官能基を含む多くの出発化合物と反応し得る。
酵素は、出発化合物内の特定部位に、その分子の残りの部分に影響を与えずに反応するが、この過程は、従来の化学的な方法を利用して達成することは困難である。この高度な特異性は、化合物のライブラリーの中に単一の活性化合物を同定する手段を提供する。このライブラリーは、いわゆる「生合成ヒストリー」と呼ばれるものを生成のための一連の生体触媒反応によって特徴付けられる。生物活性についてライブラリーをスクリーニングすることや生合成ヒストリーを追跡することにより、活性化合物を生成する特異反応の順序が同定される。その反応の順序は、繰り返され、合成化合物の構造が決定される。他の合成及びスクリーニングとは異なり、この同定様式は、固定化技術を要求しない。又、化合物を合成し、実質上どのようなタイプのスクリーニングアッセイを使用しても溶液中の遊離状態で試験することができる。官能基に関するこの高度な酵素反応の特異性により、生体触媒的に生成されるライブラリーを作る特異的酵素反応の“トラッキング”が可能となることに注目することは重要である(小分子を含む分子の改変に関する更なる教示については、PCT/US94/09174を参照。その全体が引用により本明細書に取り込まれる)。
一例において、本発明は、関連ニトリラーゼ遺伝子ファミリー及びそれらにコードされる関連生成産物ファミリーのキメラ化を提供する。従って、本発明のこの側面により、複数のニトリラーゼ核酸の配列(例えば、グループA核酸)は、先に記述したような配列比較アルゴリズムを使用して整列させられるニトリラーゼの「鋳型」として働く。一カ所又はそれ以上の境界点が、整列された鋳型の中に同定され、それは、一カ所又はそれ以上の相同部位に位置している。境界点は、核酸構造ブロックの境界を決定するために使用することができ、キメラニトリラーゼの生成のために使用される。従って、ニトリラーゼの鋳型分子の中で同定及び選択される境界点は、キメラニトリラーゼ分子の組み立てにおける潜在的なキメラ化点として働く。
典型的には、有用な境界点は、少なくとも二種の祖先鋳型間での局所的に同一な領域であるが、好ましくは、少なくとも半分、又は少なくとも3分の2、又は少なくとも4分の3、あるいはほぼすべての鋳型によって共有される同一な領域である。
その境界点により定義されるビルディングブロックは、混合し(文献的に、溶液中で、あるいは理論的に、紙上又はコンピューターで)、キメラニトリラーゼ遺伝子を作製するために再アッセンブルすることができる。一側面として、その遺伝子再アッセンブリプロセスは、全ての可能な組み合わせから成る網羅的ライブラリーを作製するために、網羅的に行われる。換言するとその核酸ビルディングブロックの全ての可能な並びの組み合わせが一群の最終的なキメラ核酸分子中に提示される。しかしながら、それと同時に、各アッセンブリにおける5'から3'方向における各ビルディングブロックの集合順序は、その鋳型におけるその順序を反映し、望まない、機能しない産物の産生を抑えるように設計される。
いくつかの例において、遺伝子再アッセンブリプロセスは、例えば、一つずつ系統的にスクリーニングすることができる区分を有する区分化ライブラリーを作製するために、系統的に実施される。言い換えれば、本発明は、特異的な核酸ビルディングブロックの選択的及び賢明な使用と、選択的及び賢明な連続的集合反応の組み合わせにより、反応容器中の各々においてキメラ産物の特別な一群ができるような実験デザインを達成させる。これは、系統的な試験及びスクリーニング操作の実行を可能にする。従って、それは、潜在的に非常に多数のキメラ分子を小さなグループにおいて系統的に調べることを可能にする。
いくつかの例において、ビルディングブロックが作製又は再構成される工程の合成的性質は、後に、インビトロのプロセス(例えば、変異導入)又はインビボのプロセス(例えば、宿主細胞の遺伝子スプライシング能力を利用)において任意に除去できるヌクレオチド配列(例えば、コドン又はイントロン又は調節配列)の設計と導入を可能にする。これらヌクレオチドの導入は、有用な境界点を形成させる潜在的利点を含む多くの理由から望ましいかも知れない。
本発明の合成遺伝子再アッセンブリ法は、複数の核酸構成ブロックを用い、それらの各々は、二つの連結可能な末端を有する。各核酸構成ブロック上の二つの連結可能な末端の例には、二つの平滑末端、又は一つの平滑末端と一つの突出部、あるいは二つの突出部が含まれるが、これらには限定されない。更なる非限定的な例において、その突出端は、一塩基対、二塩基対、三塩基対、四塩基対又はそれ以上の対である。
二本鎖核酸のビルディングブロックは、様々なサイズのものでよい。これらビルディングブロックの好ましいサイズは、一塩基対(突出部は一切含まない)から100,000塩基対(突出部は一切含まない)までの範囲である。これ以外の好ましいサイズ範囲として、下限が1〜10,000塩基対(その間の全整数を含む)、上限が2〜100,000塩基対(その間の全整数を含む)も与えられる。
一例によれば、二本鎖の核酸ビルディングブロックは、初めに二つの一本鎖核酸を最初に作製し、これらをアニーリングさせて二本鎖核酸ビルディングブロックを形成させることにより作製される。二本鎖の核酸ビルディングブロックの二本鎖は、突出部を形成するものを除いて、各ヌクレオチドにおいて相補的でよい:従って、突出部を除けば、ミスマッチを一切含まなくてよい。あるいは、二本鎖の核酸ビルディングブロックの二本鎖は、突出部を形成するものを除いて、全ヌクレオチドより少ないヌクレオチドにおいて相補的であってよい。特に、本明細書中に述べられている部位飽和変異法のような方法を用いて、コドン縮重を導入するために鎖間のミスマッチを利用することができる。
分子のインビボシャッフリングは、変種の作製に有用であり、多量体を組み換える細胞の自然な特性を利用して実施することができる。インビボでの組換えが分子の多様性のための主要な天然経路を与えているのに対し、遺伝子組換えは、以下に関与する比較的複雑な過程を残している:(1)相同性の認識;(2)組換えキアズマの産生をもたらす、鎖切断、鎖侵入、代謝工程;(3)キアズマの個々の組換え分子への解離。キアズマの形成には、相同的配列の認識が必要である。
従って、本発明は、少なくとも第一のポリヌクレオチドと第二のポリヌクレオチドからインビボにおいてキメラ又は組換えポリヌクレオチドを作製する方法を含む。本発明を使用して、部分的に配列相同性(例えば、グループAの核酸配列、及びそれらの組み合わせ)の少なくとも一領域を共有する少なくとも第一のポリヌクレオチドと第二のポリヌクレオチドを適切な宿主細胞に導入することにより、組換えポリヌクレオチドを作製することができる。部分的に配列相同性の領域は、組換えポリヌクレオチドを作製する配列再構成が起こる過程を促進する。そのような雑種ポリヌクレオチドは、DNA分子間の配列組換えを促進する分子間組換え事象によって起こり得る。加えて、そのような雑種ポリヌクレオチドは、DNA分子内のヌクレオチド配列を改変する反復配列を利用して、分子内還元的再構成プロセスによっても起こり得る。
本発明は、生物学的に活性な変種ポリペプチド(例えば、ニトリラーゼ変種)をコードする組換えポリヌクレオチドの作製する手段を提供する。例えば、ポリヌクレオチドは、ある微生物に由来するある特定酵素をコードするかもしれない。ある生物体に由来する第一のポリヌクレオチドによりコードされる酵素は、例えば、特別な環境条件、例えば、高塩度、の下で効果的に機能するかもしれない。異なる生物に由来する第二のポリヌクレオチドにコードされる酵素は、超高温のような、異なる環境条件下で効果的に機能するかもしれない。第一及び第二の元のポリヌクレオチドに由来する配列を含む組換えポリヌクレオチドは、元のポリヌクレオチドによりコードされた両酵素の特性を示す酵素をコードする。従って、組換えポリヌクレオチドによりコードされる酵素は、第一及び第二のポリヌクレオチドによりコードされる両酵素の各々が共有する環境条件、例えば、高塩度及び超高温、の下で効果的に機能することができる。
変種ポリペプチドは、元の酵素が提示しない特別な酵素活性を有し得る。例えば、ニトリラーゼをコードするポリヌクレオチドの組換え及び/又は縮小的再組換えに続き、組換えポリヌクレオチドによりコードされる結果として生じる変種ポリペプチドは、元の各々の酵素から得られる特殊化されたニトリラーゼ活性、即ち、そのニトリラーゼが機能する温度又はpH、についてスクリーニングことができる。元のポリヌクレオチドの供給源は、個々の生物体から単離したもの(「単離物」)、規定培地中で生育させた生物体の集まり(「富化培養物」)、又は、非培養生物体(「環境サンプル」)のいずれでもよい。生物多様性の未開発資源への到達を可能にするため、環境サンプルから新規生物活性をコードするポリヌクレオチドを誘導する培養非依存的手法が最も好ましい。ポリヌクレオチドを調製する微生物は、Xanthobacter、Eubacteria及びArchaebacteriaのような原核微生物、及びカビ、数種の藻類及び原生動物のような下等真核微生物を含む。ポリヌクレオチドは、核酸が生物体を培養しなくても回収できたり、又は一以上の培養生物体から回収できる場合、環境サンプルから単離することができる。一側面として、そのような微生物は、超好熱菌、好冷菌、低温発育菌、好塩基性菌、好圧菌及び好酸性菌のような好極限性細菌でよい。好極限性微生物から単離した酵素をコードしているポリヌクレオチドは、特に好ましい。そのような酵素は、地熱温泉や深海孔の熱泉の100℃を超える温度、北極海水中の0℃を下回る温度、死海の飽和塩環境、石炭鉱床及び地熱イオウ高含有泉における0前後のpH、及び汚泥における11を超えるpH値でも機能するかもしれない。
組換えタンパク質の発現に使用される哺乳動物発現システムの例は、COS-7、C127、3T3、CHO、Hela及びBHK細胞株を含む。哺乳動物の発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーター及びエンハンサー、及び必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与及び受容部位、転写終結配列、及び5'隣接非転写配列を含んでいる。SV40スプライスに由来するDNA配列、及びポリアデニル化部位は、必要な非転写遺伝的エレメントを提供するために利用することができる。米国特許6,054,267は、その全体が本明細書に引用により取り込まれる。
興味対象のポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択又は遺伝子の増幅のために改変された慣用される栄養培地で培養することができる。温度、pH及びその類などの培養条件は、発現のために選択した宿主細胞について用いたものと同様であり、通常の当業者には明らかであろう。特別の酵素活性を有するものとして同定されたクローンは、次に、好ましい活性又は性質を有する酵素をコードする組換えポリヌクレオチド配列を同定するために配列決定されるかもしれない。
一側面として、本発明は、単離ニトリラーゼを単離核酸又は単離ポリペプチドとして提供し、その核酸又はポリペプチドは、少なくとも一つの非培養微生物に由来するDNA集団からDNAを回収すること、及び特殊化されたタンパク質をスクリーニングするライブラリーを作製するために回収されたDNAを宿主に形質転換することにより調製される。Shortによる米国特許6,280,926は、そのような方法について記述しており、それは、全ての目的のためにその全体が、本明細書に引用により取り込まれる。
従って、一側面として、本発明は、生物学的に活性な組換えニトリラーゼポリペプチドを作製及び下記の工程により、そのようなポリペプチドを好ましい活性及び性質についてスクリーニングするための方法に関連する:
1)少なくとも、第一のニトリラーゼポリヌクレオチド及び第二のニトリラーゼポリヌクレオチドを適切な宿主細胞に導入する工程であって、前記第一のニトリラーゼポリヌクレオチド及び第二のニトリラーゼポリヌクレオチドが、配列相同性を有する少なくとも一つの領域を共有している、前記工程;
2)組換えニトリラーゼポリヌクレオチドを生じる配列再構成を促進する条件下で宿主細胞を増殖させる工程;
3)組換えニトリラーゼポリヌクレオチドによりコードされた組換えニトリラーゼポリペプチドを発現させる工程;
4)好ましい活性又は性質について前記組換えニトリラーゼポリペプチドをスクリーニングする工程;および、
5)前記組換えニトリラーゼポリペプチドをコードする組換えニトリラーゼポリヌクレオチドを単離する工程。
使用し得る典型的なベクターには、ウイルス粒子、バキュロウイルス、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、フォスミド、バクテリア人工染色体、ウイルスDNA(例えば、ワクチニア、アデノウイルス、ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、及び SV40の誘導体)、P-1由来人工染色体、酵母プラスミド、酵母人工染色体、及び特定の宿主(Bacillus、Aspergillus、及び酵母)に対して特異的なその他のベクターが含まれる。多数の有用なベクターが、関連技術内で知られており、これらは商業的な入手が可能である。代表的なベクターには、細菌用:pQE ベクター(Qiagen、Valencia、CA)、pBluescriptプラスミド、pNHベクター、及びラムダ-ZAPベクター(Stratagene、La Jolla、CA);及びptrc99a、pKK223-3、pDR540、pRIT2Tベクター(Pharmacia、Peapack、NJ)。真核細胞用:pXT1、pSG5 (Stratagene、La Jolla、CA);および、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVLSV40ベクター(Pharmacia、peapack、NJ)が含まれる。しかし、宿主内での複製が可能である限り、その他のどのようなプラスミドやベクターも使用することが出来る。
本発明の使用のための好ましいタイプのベクターには、f因子 (稔性因子)複製起点が含まれる。このf因子は、接合におけるそれ自身の高頻度の細菌染色体の移動に影響を及ぼすプラスミドである。特に好ましい例は、「フォスミド」といわれるクローニングベクター又は細菌人工染色体(BAC)ベクターを使用することである。これらは、ゲノムDNAの大きな断片を安定に伝播できるE.coliのf-因子に由来している。
発現ベクター中のDNA配列は、RNA合成を誘導するための、プロモーターを含む適切な発現調節配列と動作可能に結合している。有用な細菌のプロモーターには、lacIプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、gptプロモーター、ラムダ PR、PL及びtrpプロモーターが含まれる。有用な真核生物のプロモーターには、CMV 前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期及び後期 SV40プロモーター、レトロウイルス由来LTRプロモーター、及びマウス メタロチオネインIプロモーターが含まれる。適切なベクター及びプロモーターの選択は、関連技術における通常の技術のレベルで決定してよい。発現ベクターは、また、翻訳開始のためのリボゾーム結合部位及び転写終了配列を含む。ベクターは、また、発現を増幅するために適切な配列含んでもよい。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクター又は選択マーカーを有するほかのベクターを利用して、好ましいどのような遺伝子から選択してもよい。
更に、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型を与える一以上の選別用マーカー遺伝子を含み得る。有用な選別用マーカーには、真核細胞用として、ジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子又はネオマイシン耐性遺伝子、大腸菌におけるテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子が含まれる。
ベクターは、形質転換、トランスフェクション、トランスダクション、ウイルス感染、遺伝子銃、あるいはTi-媒介遺伝子導入を含む様々な技術により宿主細胞に導入されてもよい。特有の方法として、カルシウムリン酸によるトランスフェクション、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクション、あるいはエレクトロポレーション法が含まれる。
還元的再構成−別例として、ニトリラーゼポリヌクレオチドの変種を還元的再構成の過程を利用して作製することができる。組換えは、細菌では、一般に「RecA依存」現象として見られるような「分子間」過程であるが、「還元的再構成」(reductive reassortment)過程は、「分子内」RecA依存的過程により起こる。この側面において、本発明は、配列の削除により細胞の準反復配列の複雑度を低下させる還元的過程を媒介する細胞の能力に依存し得る。この方法は、連続配列(本来のコード配列)を含む構築体の作製、それらの適当なベクターへの挿入、及びそれに続く適切な宿主細胞への導入に関わる。個々の分子の再構成は、相同領域を有する構築物中の連続配列間、又は準反復ユニット間における組み合わせプロセスにより行われる。再構成プロセスは、複雑度及び反復配列の程度を再構成及び/又は低下させ、かつ新規分子種の作製をもたらす。紫外線処理、またはDNAを損傷する化学物質等の様々な処理を、再構成率を促進させるために適用してよい。更に、増強された「遺伝的不安定性」レベルを提示する宿主細胞株を使用することができる。
反復配列 - 反復配列又は「準反復」配列は、遺伝的不安定性において役割を果たす。本発明において、「準反復」とは、構造に関して同一でないが、高い配列類似性又は同一性を有する一連の連続配列を提示する反復である。細胞中における還元的再構成又は削除プロセスは、準反復配列内の部位間で配列を欠失させることにより、結果として得られる構築物の複雑度を低下させる。欠失(挿入の可能性もある)イベントは、準反復ユニット内のどこでも起こり得ることから、これらの配列は、潜在的な変種の大きなレパートリーを提供する。
準反復配列が全て同じ方向、例えば、頭から尾又はその逆、にライゲーションされる場合、欠失の終点は、殆どの場合、準反復配列内のどこでも均等に起こり得る。対照的に、例えば、これらのユニットが、頭から頭又は尾から尾へ表示される場合、逆転した準反復配列は、隣接ユニットのエンドポイントを規定し、それにより独立したユニットの欠失を支持する二重鎖を形成する。従って、準反復配列のランダムな方向は、再構成の効率の低下を招く一方、これらの配列の一貫した方向性は、その高い効率を与えることから、本発明においては、再構成される配列は、同じ方向にあることが好ましい。しかしながら、同じ方向の連続配列を少なくすることは再構成の効率を低下させるが、なお新規分子の効果的回収に十分なバリエーションを与えるであろう。
配列は、下記を含む様々な方法のどれを用いても、頭から尾の方向にアッセンブルさせることができる:
a)一本鎖で作製された場合に方向を提供するような、ポリAヘッド及びポリTテイルを含むプライマーを利用することができる。これは、プライマーの最初の数塩基をRNAから作製し、その結果、容易にRnaseHで除去することによって達成される。
b)唯一の制限酵素部位を含むプライマーを利用することができる。マルチ部位、一組の固有の配列、ならびに反復合成及びライゲーション段階が必要であろう。
c)プライマー内部の数塩基は、チオール化することができ、更に、適切にテイルを施された分子を作製するためにエキソヌクレアーゼを使用することができる。
再構成された配列の回収は、ある縮小反復指数(RI)を有するクローニングベクターの同定に依存している。再構成されたコード配列は、次に、増幅により回収することができる。これらの産物は、再クローニングされ、発現される。縮小RIを有するクローニングベクターの回収は、下記により影響されうる:
1)構築物の複雑度が低下した場合にのみ安定して維持されるベクターの使用。
2)短かくなったベクターの物理的操作による物理的回収。この場合、クローニングベクターは、標準的なプラスミド単離法及びアガロースゲル又は低分子量カットオフのカラムのいずれかを利用したサイズ分画により回収される。
3)挿入サイズが減少した場合に選択することができる中途切断された遺伝子を含むベクターの回収。
4)発現ベクター及び適切な選択法を利用した直接的な選択技術の使用。
関連生物に由来するコード配列は、高度の相同性を示すが、それにも拘らず、極めて多様なタンパク質産物をコードするかもしれない。これらの配列のタイプは、準反復物として本発明において特に有用である。しかしながら、以下の例が高度の同一性を有するコード配列(準反復)の再組換えを提示する一方、このプロセスは、このようなほぼ同じ反復に限定されるものではない。
以下の例は、本発明の方法を示したものである。三種の異なる種に由来する準反復コード配列が得られる。各配列は、異なる一群の性質を有するタンパク質をコードする。その配列の各々は、「A」、「B」及び「C」と示される塩基ペアーの一以上が配列中のユニークな部位において異なっている。その準反復配列は、全ての可能な順列及び組合わせがライゲーションされた分子集団において生じるように、個別に又はまとめて増幅され、かつランダム集合体へとライゲーションされる。準反復ユニットの数は、アッセンブリ条件により制御することができる。構築物内の準反復ユニットの平均数は、反復指数(RI)として定義される。
一旦、構築物が形成されると、その構築物は、文献的なプロトコールに従ったアガロースゲルによるサイズ分画をされ、クローニングベクターへ挿入されたり、適切な宿主細胞へトランスフェクションすることができる。その細胞は、次に、「還元的再構成」を起こさせるために増殖される。望ましいならば、還元的再構成プロセスの割合は、DNA損傷の導入により促進されることができる。RIの縮小が、「分子内」機構による反復配列間の削除形成により媒介されるか、もしくは「分子間」機構による組換え様の現象により媒介されるものかは重要ではない。最終結果は、全ての可能な組み合わせへ分子を再構成させることである。
別例として、組換え又は再構成の操作前又はその間に、本発明の方法により作製されたポリヌクレオチドが、初期ポリヌクレオチドへの変異の導入を促進する操作又はプロセスに付与されることが構想される。そのような変異の導入は、得られる雑種ポリヌクレオチド及びそれらによりコードされたポリペプチドの多様性を増大させるであろう。変異を促進する操作又はプロセスは、以下を含むことができるが、これらに限定されるものではない:(+)-CC-1065、あるいは(+)-CC-1065-(N3-アデニン)のような合成アナログ(Sun他 (1992)、Biochemistry 31(10):2822-9);DNA合成を阻害することが可能なN-アセチル化又は脱アセチル化された4'-フルオロ-4-アミノビフェニル付加物(例えば、Van de Poll他(1992)、前述、を参照);又は、DNA合成を阻害することが可能なN-アセチル化又は脱アセチル化された4-アミノビフェニル付加物(同じくvan de Poll等、1992、pp.751-758参照);DNA複製を阻害することが可能な三価クロム、三価クロム塩、多環式芳香族炭化水素(「PAH」)DNA付加物、例えば7-ブロモメチル-ベンズ[α]アントラセン(「BMA」)、リン酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)(「Tris-BP」)、1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン(「DBCP」)、2-ブロモアクロレイン(2BA)、ベンゾ[α]ピラン-7,8-ジヒドロジオール-9-10-エポキシド(「BPDE」)、ハロゲン化プラチナ(II)塩、N-ヒドロキシ-2-アミノ-3-メチルイミダゾ-[4,5-f]-キノリン(「N-ヒドロキシ-IQ」)、およびN-ヒドロキシ-2-アミノ-1-メチル-6-フェニルイミダゾ[4,5f]-ピリジン(「N-ヒドロキシ-PhIP」)。PCR増幅を遅延又は停止する特に好ましい手段は、UV光(+)-CC-1065及び(+)-CC-1065-(N3-アデニン)から成る。特に包含される手段は、DNA付加物又はそのポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド集団に由来したDNA付加物を含有するポリヌクレオチドであり、これは、更にプロセッシングする前に、そのポリヌクレオチドを含む溶液を加熱することを含むプロセスにより放出又は除去することができる。
GSSM TM - 本発明は、また、各アミノ酸部位で全範囲に及ぶ単アミノ酸置換を表示する一群の子孫ポリペプチドを作製するために、ポリヌクレオチド中に点変異を導入する縮重N,N,G/T配列を含むコドンプライマーの使用を提供する。その方法は、遺伝子部位飽和変異法(GSSMTM)と呼ばれる。使用されるオリゴヌクレオチドは、近接する第一の相同配列、縮重N,N,G/T配列、及びおそらく第二の相同配列が含められる。
一側面として、一つのそのような縮重オリゴヌクレオチド(例えば、一つの縮重N,N,G/Tカセットを含む)が、親ポリヌクレオチド鋳型の各コドンを全範囲でコドン置換させるために使用される。他の例として、同じオリゴヌクレオチド又は異なる少なくとも二種の縮重カセットが、親ポリヌクレオチド鋳型の少なくとも二つコドンを全範囲でコドン置換させるために使用される。従って、一以上のN,N,G/T配列を、一ヶ所以上の部位でアミノ酸の変異を導入するための一つのオリゴヌクレオチドに含めることができる。この複数のN,N,G/T配列は、直接連続的であるか、又は一以上の付加的なヌクレオチドによって分けることができる。他の例として、挿入及び削除を導入するために使われるオリゴヌクレオチドは、N,N,G/T配列を有するコドン単独又は組み合わせで、如何なる組換え、あるいはアミノ酸の挿入、削除、及び/又は置換を導入するために使用可能である。
具体例として、連続的なN,N,G/Tトリプレット、即ち、縮重(N,N,G/T)n配列を含むオリゴを使用して、二つ又はそれ以上の連続したアミノ酸部位を同時に変異させることが可能である。
他の例として、本発明は、N,N,G/T配列に比べてより少ない縮重を有する縮重カセットの使用を提供する。例えば、ある例では、一つのNだけを含む縮重トリプレット配列を使用することが望ましいかもしれない。このNとは、トリプレットの第一、第二又は第三番目の位置にある。如何なる組合せ及びここに含まれる変換を含む他のどのような塩基でもトリプレットの残った部位に使用することができる。代わりに、ある例では、縮重N,N,Nトリプレット配列又はN,N,G/Cトリプレット配列を使用することが好ましいかもしれない。
しかしながら、本発明において開示したように、縮重トリプレット(例えば、N,N,G/T又はN,N,G/Cトリプレット)の使用は、いくつかの理由で有利であることが理解される。一側面として、本発明は、系統的及び容易にポリペプチドのアミノ酸一残基ごとに20種の可能な全てのアミノ酸による置換生成する手段を提供する。従って、100アミノ酸ポリペプチドでは、2000の異なる変種(即ち、部位当たり20種の可能なアミノ酸 X 100アミノ酸部位)を作製することができる。縮重N,N,G/Tトリプレットを含むオリゴヌクレオチドを用いることによって、32の個々の配列が可能な20種全てのアミノ酸でコードできることが理解できる。従って、親ポリヌクレオチド配列が少なくとも一つのそのようなオリゴヌクレオチドを用いた飽和変異法に供与されると、試験管内では、20種の異なるポリペプチドをコードしている32種の異なる子孫ポリヌクレオチドが存在する。対照的に、部位特異的変異導入に非縮重オリゴヌクレオチドを使用すると、反応当たり一種の子孫ポリペプチド産物だけが得られる。
本発明は、また、非縮重オリゴヌクレオチドの使用を提供し、それは、開示した縮重プライマーの組み合わせにより任意に使用することができる。いくつかの状況においては、対象ポリヌクレオチド中に特定の点変異を発生させるために非縮重オリゴヌクレオチドを使用することは有利である。これは、特定のサイレント点変異、対応するアミノ酸の変異を導く点変異、及び停止コドンやポリペプチド断片の発現を引き起こす点変異を作り出す一つの手段を提供する。
従って、各飽和変異誘発反応容器には、親ポリヌクレオチド中の変異されるコドンに対応する特定アミノ酸部位で20種のアミノ酸全てが表示されるように、少なくとも20種の子孫ポリペプチド分子をコードしたポリヌクレオチドが含まれる。各飽和変異誘発反応から得られる32倍に縮重した子孫ポリペプチドは、クローンを増幅(例えば、発現ベクターを用いて、大腸菌のような適した宿主にクローン化される)したり、発現スクリーニングにかけることができる。特性の好ましい変化(親ポリペプチドと比較して)を表示する個々の子孫ポリペプチドがスクリーニングによって同定された場合、その中に含まれた相当する好ましいアミノ酸置換を同定するために配列決定が行われる。
本明細書中に開示されるような飽和変異誘発法を使用して親ポリペプチドの各アミノ酸部位を変異させた場合、好ましいアミノ酸変異が一ヶ所以上のアミノ酸部位で同定されるかもしれないことが理解される。これらの好ましいアミノ酸置換を全体又は一部の組合せとして含む一種以上の新しい子孫分子を作製することができる。例えば、ポリペプチドのアミノ酸部位三ヶ所それぞれに二種の特別の好ましいアミノ酸変異が同定されれば、変異は各部位において三つの可能性(元のアミノ酸からの変異が無いか、それぞれ二種の好ましい変異)及び三ヶ所の部位を含んでいる。従って、3 x 3 x 3又は27の可能性が存在し、それには前に調べられた7種を含んでいる-6種の単一点変異(即ち、三ヶ所のそれぞれで二種)とどの部位にも変異の無いもの。
更なる別例として、部位飽和変異誘発法は、配列を変化させるための他の確率的又は非確率的な手段、例えば、合成ライゲーション再アッセンブリ(以下参照)、シャフリング、キメラ化、再組換え、及び他の変異プロセスや変異試薬等とともに使用することができる。この発明は、反復的な飽和変異誘発を含むあらゆる変異プロセスの使用を提供する。一側面として、スクリーニングと組み合わせて、どのような変異プロセスの反復使用も利用される。
従って、非限定的な例として、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドは、雑種ポリヌクレオチドが組換え及び還元的再構成により産生されるように、二種以上の関連ポリヌクレオチドが適切な宿主細胞に導入されるような付加的な他の変異プロセスとの組み合わせによる飽和変異法に由来されることができる。
遺伝子の全配列に沿って変異導入を実施する以外に、変異導入法はポリヌクレオチド配列中の任意の数の塩基を各々置換するために使用することができ、変異させる塩基数は、好ましくは、15から100,000までのあらゆる整数であり得る。従って、分子に沿って全ての位置に変異を導入するのではなく、各塩基又は個別の数の塩基(例えば、合計15〜100,000のサブセットであり得る)を変異に付すことができる。一側面において、ポリヌクレオチド配列に沿った各位置又は位置グループに変異を導入するために個別のヌクレオチドを使用する。変異が導入される三つの位置のグループはコドンであり得る。変異は、変異プライマーを用いて導入することができ、その際、そのプライマーは、異種カセットを含み、変異カセットとも呼ばれている。例えば、カセットは、1〜500塩基を有することができる。このような異種カセットにおける各ヌクレオチド位置は、N、A、C、G、T、A/C、A/G、A/T、C/G、C/T、G/T、C/G/T、A/G/T、A/C/T、A/C/G又はEであり、その際、Eは、A、C、G、又はTではない任意の塩基である。
一般的な意味で、飽和変異法は、変異を導入しようとする規定ポリヌクレオチド配列(ここで、変異を導入しようとする配列は、約15〜100,000塩基長である)における変異導入カセット(例えば、各カセットは、約1〜500塩基長である)の全セットに変異を導入することを含む。従って、変異の一グループ(1〜100変異の範囲)は、変異を導入しようとする各カセットに導入される。一つのカセットに導入される変異のグループ分けは、飽和変異導入のラウンドの実施中に第二のカセットに導入される第二の変異グループ分けとは、異なっていても同じでもよい。そのようなグループ分けの例としては、欠失、付加、特定コドンのグループ分け、並びに、特定のヌクレオチドカセットのグループ分けにより具体化される。
変異が導入される規定配列としては、全遺伝子、経路、cDNA、全オープンリーディングフレーム(ORF)、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー/トランスアクチベーター、複製起点、イントロン、オペレーター、又はあらゆるポリヌクレオチド官能基が含まれる。一般に、この目的のための「規定配列」は、15塩基ポリヌクレオチド配列、及び15塩基から15,000塩基長(その間の全整数を含む)までのポリヌクレオチド配列を含むどのようなポリヌクレオチドでよい。コドンのグループ分けを選択することに関する考慮には、縮重変異カセットによりコードされるアミノ酸の種類が含まれる。
変異カセットに導入されることのできる変異のグループ分けの特に好ましい具体例において、本発明は、特に、各部位で2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20種のアミノ酸をコードする縮重コドン置換(縮重オリゴを使用)、及びこれによってコードされるポリペプチドのライブラリーを提供する。
本発明の一側面は、グループAの核酸配列、それらと実質的に同一の配列、相補的な配列、又はグループAの核酸配列の一つの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、又は500連続塩基を含む断片を含む単離核酸である。単離された核酸は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAを含むDNAを含んでもよい。そのDNAは、二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖の場合にはコーディング鎖でも非コーティング(アンチセンス)鎖でもよい。あるいは、単離核酸は、RNAを含んでもよい。
以下に更に詳述されるように、本発明の単離核酸は、グループBのアミノ酸配列、それらと実質的に同一の配列、又はグループBのアミノ酸配列及びそれらと実質的に同一の配列の一つのポリぺプチドの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片のポリペプチドの一つを調製するために使用することができる。
あるいは、グループAの核酸配列、又はそれらと実質的に同一の配列のポリヌクレオチドへサイレントな変化を導入するために、本発明の核酸配列は、部位特異的変異法のような慣用的な手法、又は当業者によく知られる他の手法を用いて変異導入させてもよい。この中でに用いられる「サイレントな変化」とは、例えば、ポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を変化させない変化が含まれる。そのような変化は、宿主細胞において高頻度で存在するコドン又はコドン対を導入することにより、そのポリぺプチドをコードするベクターを含む宿主細胞によって産生されるポリぺプチドのレベルを高めるために望ましいかもしれない。
本発明は、また、本発明のポリぺプチド(例えば、グループBのアミノ酸配列)においてアミノ酸置換、付加、融合、切断を生じるヌクレオチド変化を有するポリヌクレオチドに関連する。そのようなヌクレオチドの変化は、部位特異的変異法、ランダム化学変異法、エキソヌクレアーゼIII欠失、又は他の組換えDNA技術のような手法を用いて導入されることができる。代わりに、そのようなヌクレオチド変化は、グループAの核酸配列、又はそれらと実質的に同一の配列(又は相補的な配列)の一つの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、又は500連続塩基を含むプローブに対して本明細書中に示された高い、中程度又は低いストリンジェンシーの下で特異的にハイブリッドする核酸配列を同定することにより単離された天然に存在する対立遺伝子変種であるかもしれない。
固定化酵素固相支持体
酵素、その断片、その酵素と断片をコードしている核酸は、固相支持体に固定化させることができる。これは、工業的工程での酵素の使用においてしばしば経済的であり効率が良い。例えば、特別な化学反応に用いられる酵素(又はその活性断片)の共同体又は反応混液は、固相支持体に結合させ、プロセスバットへ浸漬させることができる。その酵素反応が起こり得る。次に、反復使用のために、固相支持体をそれに付けた酵素とともにバットから取り出すことができる。本発明の一側面として、単離核酸を固相支持体に固定化させる。本発明の別例として、固相支持体は、ゲル、樹脂、ポリマー、セラミック、ガラス、微小電極及びそれらの組合わせの中から選ばれる。
例えば、本発明に用いられる固相支持体は、ゲルを含む。ゲルのいくつかの例には、セファロース、ゼラチン、グルタルアルデヒド、キトサン処理グルタルアルデヒド、アルブミン-グルタルアルデヒド、キトサン-キサンタン、トヨパールゲル(ポリマーゲル)、アルギン酸塩、アルギン酸-ポリリシン、カラゲーナン、アガロース、グリオキシルアガロース、磁気アガロース、デキストラン-アガロース、ポリ(カルバモイルスルホン酸)ヒドロゲル、BSA-PEGヒドロゲル、リン酸化ポリビニルアルコール(PVA)、モノアミノエチル-N-アミノエチル(MANA)、アミノ、又はその組合わせが含まれる。
本発明に有用な他の固相支持体は、樹脂又はポリマーである。樹脂又はポリマーのいくつかの例には、セルロース、アクリルアミド、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アニオン交換樹脂、AMBERLITETM XAD-7、AMBERLITETM、XAD-8、MBERLITETM、IRA-94、AMBERLITETM、IRC-50、ポリビニル、ポリアクリル、ポリメタクリレート、又はその組合わせが含まれる。本発明に有用な固相支持体の他のタイプは、セラミックである。いくつかの例は、非多孔質セラミック、多孔質セラミック、SiO2、Al2O3が含まれる。用いられる固相支持体の他のタイプは、微小電極である。一例は、ポリエチレンイミン被覆マグネタイトである。固相支持体としてグラファイト粒子を使用し得る。固体支持体の他の例は、細胞、例えば、赤血球である。
固定化方法
酵素、その断片、又は核酸を固相支持体に固定化するために、当業者に知られる多くの方法がある。そのような方法のいくつかの例は、静電的小滴生成、電気化学的手段、吸着、共有結合、架橋、化学反応又は工程、封入、からみつきに、アルギン酸カルシウム、又はポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)による方法が含まれる。同様の方法がMethods in Enzymology、Immobilized Enzymes and Cells、Part C. 1987. Academic Press. Edit. S. P. Colowick and N. O. Kaplan. Volume 136:Immobilization of Enzymes and Cells. 1997. Humana Press. Edit. G. F. Bickerstaff. Series:Methods in Biotechnology、Edit. J. M. Walkerに記載されている。
プローブ−前述の配列の一つにおける少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、又は500連続塩基を含むグループAの核酸配列の単離核酸、それに実質的に同一の配列、相補的な配列、又は断片は、また、土壌試料のような生物試料が本発明の核酸配列を有する生物体又はその核酸が得られた生物体を含むかを調べるためのプローブとして用いることができる。そのような操作において、核酸が分離された生物を潜在的に含んでいる生物試料を入手し、核酸がその試料から得られる。核酸とプローブとを、存在している相補的配列に対してプローブが特異的にハイブリダイズできる条件下で接触させる。
必要な場合、プローブが相補的配列に特異的にハイブリダイズできる条件は、相補的配列を含まない対照配列および相補的配列を含むことがわかっている試料に由来する相補的配列とを接触させた状態でプローブを与えることにより決定することができる。ハイブリダイゼーション緩衝液の塩濃度、ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアミド、又はハイブリダイゼーション温度のようなハイブリダイゼーション条件は、プローブが相補的核酸に対して特異的にハイブリダイズすることができる条件を同定するために変動させることができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は本明細書に記載される。
ハイブリダイゼーションは、放射性同位体、蛍光色素又は検出可能な産物の生成を触媒することができる酵素のような検出可能物質でプローブを標識することにより検出することができる。
試料中の相補的核酸の存在を検出するための標識プローブの使用に関する多くの方法は、当業者によく知られている。これらには、サザンブロット、ノーザンブロット、コロニーハイブリダイゼーション法、又はドットブロットが含まれる。これらの方法の各々のプロトコールは、Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、Inc. 1997やSambrook他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989に記載され、本明細書中にその全体が引用により取り込まれる。
一側面として、プローブDNAは、特異的な結合ペアー(即ち、リガンド)のパートナーを以て“標識”することができ、その結合対のパートナーは、標的をその供給源からの容易な分離を提供するために固相マトリックスに結合される。例えば、リガンドと特異的な結合パートナーは、いずれの方向であっても、次のものから選択することができる:(1)抗原又はハプテンと抗体又はその特異的結合断片;(2)ビオチン又はイミノビオチンとアビジン又はストレプトアビジン;(3)糖とそれに特異的なレクチン;(4)酵素とその阻害剤;(5)アポ酵素と補欠因子;(6)相補的なホモポリマーのオリゴヌクレオチド;及び、(7)ホルモンとその受容体。一側面として、固相は、以下から選ばれる:(1)ガラス又はポリマーの表面;(2)ポリマービーズの充填カラム;(3)磁性粒子又は常磁性粒子。
あるいは、一以上のプローブ(核酸試料中に存在する相補的配列に対して特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも一つ)を、試料が本発明の核酸配列を含む生物(例えば、核酸が分離された生物)を含むかを調べるための増幅反応に使用することができる。典型的には、そのプローブは、オリゴヌクレオチドを含んでいる。一側面として、増幅反応は、PCR反応を含むことができる。PCRプロトコールは、前述のAusubel他(1997)、及びSambrook他(1989)に記載されている。また、増幅は、リガーゼ鎖反応、3SR、又は鎖置換反応を含むことができる。(Barany、F.、“The Ligase Chain Reaction in a PCR World,” PCR Methods and Applications 1:5-16、1991; E. Fahy et al.、“Self-sustained Sequence Replication (3SR): An Isothermal Transcription-based Amplification System Alternative to PCR”、PCR Methods and Applications 1:25-33、1991; Walker G.T. et al.、“Strand Displacement Amplification-an Isothermal in vitro DNA Amplification Technique”、Nucleic Acid Research 20:1691-1696、1992を参照。これらは、この中にその全体が引用により取り込まれる。)。
グループA中に示される核酸配列、及びそれと実質的に同一な配列、の末端近傍の配列に由来するプローブは、上記の核酸配列に隣接して位置するゲノム配列を含むクローンを同定するために染色体ウォーキング法において用いることができる。そのような方法は、付加的なタンパク質をコードする遺伝子を宿主生物体からの分離を可能にする。
グループA核酸配列中に示される単離核酸配列、それと実質的に同一な配列、相補的な配列、又は前述の配列の一つの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、又は500連続塩基を含む断片は、関連した核酸を同定分離するためのプローブとして使用することができる。いくつかの例において、関連した核酸は、核酸が分離された生物以外の生物に由来するcDNA又はゲノムDNAであってもよい。例えば、その他の生物は、関連した生物であってもよい。そのような工程において、核酸サンプルは、関連した配列に対してプローブが特異的にハイブリダイズできる条件下でプローブと接触させられる。次に、関連した生物由来の核酸に対するプローブのハイブイリダイゼーションは、上記方法のいずれかを用いて検出される。
核酸ハイブイリダイゼーション反応において、特定のレベルのストリンジェンシーを得るために用いられる条件は、ハイブリダイズされる核酸の性質に依存して変動するであろう。例えば、核酸の長さ、核酸間の相補性の度合い、ヌクレオチド配列の組成(例えば、GCリッチ対ATリッチの含量)、核酸のタイプ(例えば、RNA対DNA)をハイブイリダイゼーション条件の選択に考慮することができる。ストリンジェンシーは、プローブの融解温度より低い種々の温度でハイブリダイゼーションを行うことにより変えることができる。融解温度、Tmは、標的配列の50%が完全に相補的なプローブに対してハイブリダイズする温度(特定のイオン強度とpHの下で)である。ストリンジェントな条件は、具体的なプローブのTmに同じか約5℃低いように選定される。プローブの融解温度は、以下の式を用いて計算してもよい。
長さが14〜70ヌクレオチドのプローブの場合、融解温度(Tm)は、次式:Tm=81.5+16.6(log [Na+])+0.41(G+C断片)-(600/N)(式中、Nはプローブの長さ)を用いて計算される。
ハイブリダイゼーションがホルムアミドを含有する溶液中で行われる場合は、融解温度は、以下の式を用いて計算される:Tm=81.5+16.6(log [Na+])+0.41(G+C断片)-(0.63% ホルムアミド)-(600/N)(式中、Nはプローブの長さ) 。
発現ライブラリー−発現ライブラリーは、発現ベクター及び宿主細胞と本発明のポリヌクレオチドとの組み合わせにより作製することができる。このライブラリーは、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドをインビボで発現させることを可能にする。そのような発現ライブラリーを作製した後、細胞選別によってスクリーニングする前にそのようなライブラリーを“バイオパニング”する工程を更に含めることができる。“バイオパニング”は、以下のようにして調製されたクローンのライブラリーについて配列相同性をスクリーニングすることにより特異的な生物活性を有するクローンを同定する方法を意味する:(i)特定の生物活性を有するポリペプチドをコードしているDNA配列の少なくとも一部を含む少なくとも一つのDNAプローブの使用により、少なくとも一つの微生物に由来するDNAから標的DNAを選択的に単離する;および、(ii)場合により、特定の生物活性についてスクリーニングされるクローンのライブラリーを作製するために、宿主を単離した標的DNAで形質転換する。
少なくとも一つの微生物に由来するDNAから興味対象の標的DNAを選択的に単離するために用いられるDNAプローブは、既知の活性の酵素のDNAの完全長又は部分的なコード領域配列であり得る。元のDNAライブラリーは、特別な酵素活性を有する酵素をコードしているDNA配列の少なくとも一部を含むプローブの混合物を用いて検索されることができる。これらのプローブ又はプローブライブラリーは、一本鎖であり、また、一本鎖へ変換された微生物のDNAである。特に適したプローブは、スクリーニングされる特定された酵素活性と同様の又は同一の活性を有する酵素をコードしているDNAに由来するものである。
ある生物体から選択的に単離されたクローンの多様性が得られた後、そのようなクローンは、特別な酵素活性及び特定された生物活性を有するクローンを同定するためにスクリーニングされる。
酵素活性のスクリーニングは、個々の発現クローンに影響されるか、あるいは混合物が一以上の特別な酵素活性を有するものか否かを確認するための発現クローンの混合物に影響されるかもしれない。混合物が特別な酵素活性を有する場合、個々のクローンは、次に、その酵素活性について再スクリーニングされるか、あるいはより高い比活性についてスクリーニングされる。従って、例えば、そのようなクローン混合物がニトリラーゼ活性を有する場合、個々のクローンを回収し、そのようなクローンのどれがニトリラーゼ活性を有するかを調べるためにスクリーニングすることができる。
上記した例の一つについて述べたように、本発明は、以下を含む、微生物に由来する選択されたDNAを含むクローンを酵素活性についてスクリーニングする方法を提供する:ライブラリーについて特定の酵素活性をスクリーニングする工程であって、前記のライブラリーは多数のクローンを含み、前記クローンは微生物のゲノムDNAから回収された選択されたDNAから調製され、前記DNAは特定の活性を有する酵素をコードするDNA配列の全体又は一部である少なくとも一つのDNA配列に対するハイブイリダイゼーションによって選択されるDNAである、前記工程;および、前記選択されたDNAで宿主を形質転換し、特定の酵素活性についてスクリーニングされるクローンを生成する工程。
一側面として、微生物由来のDNAライブラリーは、特定の酵素活性を有する酵素をコードしているDNAの全体又は一部である少なくとも一つのDNA配列とハイブリダイズするDNAをその中から選択するための以下による選択操作に付される:
(a)DNAライブラリーに由来する一本鎖DNA集団とリガンドに結合したDNAプローブを、ストリンジェントなハイブイリダイゼーション条件下で接触させ、前記プローブと前記DNAライブラリーのメンバー間の二本鎖を形成させる;
(b)前記二本鎖を、前記リガンドに対して特異的に結合する固相パートナーと接触させる;
(c)前記DNAライブラリーの非二本鎖メンバーから前記固相二本鎖複合体を分離する;
(d)前記DNAライブラリーのメンバーを遊離させるために前記二本鎖を変性させる;
(e)前記メンバーを二本鎖DNAにするために、工程(d)のメンバーの相補的DNA鎖を作製する;
(f)前記メンバーDNAによりコードされたポリペプチドを発現させるために、前記二本鎖DNAを適切な宿主へ導入する;および、
(g)発現させたポリペプチドが特定の酵素活性を有するかを調べる。
別例として、他の態様においては、本方法は、シグナル配列又は分泌配列を含むDNAを回収する予備選択を含んでいる。このようにして、本明細書中に前述されたように、ハイブイリダイゼーションにより、ゲノムDNA集団からシグナル配列又は分泌配列を含むDNAのみを選択することは可能である。次節は、本発明のこの側面、一般的な分泌シグナル配列の性質と機能及びそのような配列の分析又は選択過程への個々の具体的な適用のための方法を記述する。
この側面の具体的な例は、前述の(a)の後で上記(b)の前に更に以下の工程を含む:
(i)(a)の一本鎖DNA集団と、与えられたクラスのタンパク質に固有の分泌シグナル配列に対して相補的なリガンド結合オリゴヌクレオチドプローブとを、二本鎖DNAを形成するハイブイリダイゼーション条件下で接触させる;
(ii)(i)の二本鎖と前記リガンドに対する特異的結合固相パートナーとを接触させ、固相複合体を生成する;
(iii)(a)の一本鎖DNA集団から前記固相複合体を分離する;
(iv)前記二本鎖を変性させ、ゲノム集団の一本鎖DNAメンバーを遊離させる;および、
(v)プローブに結合した固相から一本鎖DNAを分離する。
シグナル配列が含まれるように選択分離されたDNAは、次に、特定の酵素活性を有する酵素をコードしているDNAに由来する一以上のDNAプローブ配列に結合するDNAをその中から選択分離するための前述された選別操作に付与される。この手順は、米国特許6,054,267に記載および例示されており、本明細書中にその全体が引用として取り込まれる。
インビボバイオパニングは、FACSベースの装置を用いて行うことが出来る。複合遺伝子ライブラリーは、転写RNAを安定化する配列を含むベクターを用いて構築される。例えば、RNAの転写領域に隣接するように設計されたヘアピンのような二次構造を生じる配列を含ませると、それらの安定性を高める働きがあり、それにより細胞内での半減期が増大する。バイオパニングプロセスに用いられるプローブ分子は、標的分子がプローブと結合する際にのみ蛍光を発するレポーター分子で標識されたオリゴヌクレオチドから成っている。これらのプローブは、いくつかの形質転換法の一つを用いてライブラリーから組換え細胞へ導入される。そのプローブ分子は、DNA/RNAヘテロデュプレックスを生ずる転写された標的mRNAに結合する。
プローブの標的への結合は、スクリーニングのプロセスでFACS装置により検出され選別される蛍光シグナルを生じる。
いくつかの例において、グループBのアミノ酸配列のポリペプチドの一つをコードしている核酸、それと実質的に同一な配列、あるいはそれらの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片は、翻訳されたポリペプチドまたはその断片の分泌を導くことのできるリーダー配列と適切な位相でアッセンブルされる。場合により、その核酸は、グループBのアミノ酸配列のポリペプチドの一つ、それと実質的に同一な配列、あるいはそれらの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片がぺプチドのような異種ぺプチド又はポリぺプチドに融合している融合ポリぺプチドをコードでき、それら異種配列は、向上した安定性又は簡単に精製されるような、好ましい特性を与えるN末端同定ペプチドのような異種のペプチド又ポリぺプチドである。
宿主細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、又は植物細胞を含む、当業者によく知られた宿主細胞のいずれであってもよい。適切な宿主の具体的な例として、以下が言及されるかもしれない:E. coli、Streptomyces、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium及び Pseudomonas、Streptomyces、及びStaphylococcus属に含まれる様々な種、 酵母のようなカビ細胞、Drosophila S2及びSpodoptera Sf9のような昆虫細胞、CHO、COS又はBowesメラノーマのような動物細胞、及びアデノウイルス。適切な宿主の選択は、当業者の能力の範囲内である。
適切な場合、操作された宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換細胞の選択又は本発明の遺伝子の増幅に適するように改変した慣用の栄養培地で培養することができる。適切な宿主株を形質転換し、その宿主株を適切な細胞密度まで増殖した後、適切な手段(例えば、温度移動又は化学的誘導)によって選択プロモーターを誘導してもよく、その細胞を望まれるポリぺプチド又はその断片を生産させることができる期間、更に培養してもよい。
細胞は、遠心分離によって回収し、物理的又は化学的手段によって破砕することができ、得られる粗抽出物は、精製のために保持される。タンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解、超音波処理、機械的破砕、又は細胞溶解剤の使用を含む簡便な方法によって破砕することができる。そのような方法は、当業者によく知られている。発現されたポリぺプチド又はその断片は、組換え細胞培養物から、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー又はレクチンクロマトグラフィーを含む方法によって回収精製されることができる。必要に応じてポリぺプチドの配置を完全にするためにタンパク質リフォールディング工程を用いることができる。所望であれば、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製工程に用いることができる。
種々の哺乳動物細胞培養系も、組換えタンパク質を発現、又は過剰発現するために用いることができる。哺乳動物発現系の例には、サル腎線維芽細胞のCOS-7系(Gluzman (1981)、Cell 23:175を参照)や適合するベクターからタンパク質を発現させることができる他の細胞系、例えば、C127、3T3、CHO、HeLa、BHKの細胞系が含まれる。
本発明は、また、種々のグループBのアミノ酸配列、それと実質的に同一の配列、又はそれらの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150の連続アミノ酸に関連する。特に、変種は、グループBのアミノ酸配列、及びそれと実体的同一の配列と、そのアミノ酸配列において一つ以上の置換、付加、欠失、融合、切断、又はそれらの組み合わせによって異なり得る。
変種は、天然に生じ得る、または、インビトロで作製することもできる。特に、そのような変種は、部位特異的変異導入、ランダム化学的変異導入、エキソヌクレアーゼIII欠失法、又は標準的なクローニング技術のような遺伝子操作技術を利用して作製することができる。あるいは、そのような変種、断片、類似体、又は誘導体は、化学的合成又は改変法を利用して作製することができる。
変種を作製する他の方法も当業者によく知られている。これらには、天然の分離物から得られた核酸を工業用途又は実験用途での価値を高める特性を有するポリぺプチドをコードしている核酸を作製するための改変方法が含まれる。そのような方法において、天然の分離体から得られた配列に関して、一以上のヌクレオチドの違いを有する多くの変種配列が産生され、調べられる。典型的には、これらのヌクレオチドには、天然分離体由来の核酸によってコードされたポリぺプチドについてアミノ酸の変化が生じる。
例えば、変種は、変異性PCRを用いて作製されてもよい。変異性PCRでは、PCRは、DNAポリメラーゼの忠誠度が低い条件下で行われ、PCR産物の全長に沿って高率の点変異が得られる。変異性PCRは、Leung、D.W.、et al.、Technique、1:11-15、1989)やCaldwell、R. C. & Joyce G.F.、PCR Methods Applic.、2:28-33、1992に述べられており、その開示は、それらの全体が本明細書中に引用により取り込まれる。概要としては、そのような方法では、PCR産物の全長に沿って高率の点変異を達成するために、変異導入すべき核酸をPCRプライマー及び試薬(例えば、反応緩衝液、MgCl2、MnCl2、Taqポリメラーゼ、適切な濃度のdNTP)と混合する。例えば、反応は、20fMの変異導入すべき核酸、30pモルの各PCRプライマー、50mM KClと、10mMトリスHCl (pH 8.3)と、0.01% ゼラチンとを含む反応緩衝液、7mM MgCl2、0.5mM MnCl2、5単位のTaqポリメラーゼ、0.2mM dGTP、0.2mM dATP、1mM dCTP、1mM dTTPを用いて行うことができる。PCRは、94℃で1分間、45℃で1分間、72℃で1分間を30サイクル行えばよい。しかしながら、これらのパラメータは、適切に変動させてもよいことが理解される。変異導入した核酸は、適切なベクターへクローン化され、変異導入した核酸によってコードされたポリぺプチドの活性が評価される。
興味対象のどのようなクローン化DNAにおいても部位特異的変異を生成させるために、変種は、また、オリゴヌクレオチド特異的変異法を用いて作製することもできる。オリゴヌクレオチド変異導入は、Reidhaar-Olson、J.F. and Sauer、R.T.、et al.、Science、241:53-57、1988に述べられており、その開示は、それらの全体が本明細書中に引用により取り込まれる。概要として、そのような手順においては、クローン化DNAへ導入すべき一以上の変異を有する多数の二本鎖オリゴヌクレオチドが合成され、変異導入されるクローン化DNAへ挿入される。変異導入したDNAを含むクローンは、回収され、コードしているポリぺプチドの活性が評価される。
アッセンブリPCR
変種を作製する他の方法は、アッセンブリPCRである。アッセンブリPCRは、小さなDNA断片の混合物に由来するPCR産物のアッセンブリを含む。ある反応の産物が他の反応産物にプライムする多くの異なるPCR反応が同じ反応バイアル中で並行して起こる。アッセンブリPCRは、米国特許5,965,408に記載されており、これは本明細書中にその全体が引用により取り込まれる。
セクシュアルPCR変異法
変種を作製する他の方法は、セクシュアルPCR変異法である。セクシュアルPCR変異法では、強制的相同組換えが、配列相同性に基づくDNA分子のランダム断片化の結果として、インビトロで異なっているが非常に関連性の高いDNA配列のDNA分子間で起こり、続いてPCR反応においてプライマー伸張によるクロスオーバーの固定が起こる。セクシュアルPCR変異法は、Stemmer、W.P.、PNAS、USA、91:10747-10751、1994に記載されそれは、本明細書中にその全体が引用により取り込まれる。概要として、そのような手順では、組換えられる複数の核酸が、Dnaseにより平均サイズが50-200ヌクレオチド断片に消化される。好ましい平均サイズを有する断片が精製され、PCR混合物中に再懸濁される。PCRは、核酸断片間の組換えを容易にする条件下で行われる。例えば、PCRは、10-30ng/μl濃度の精製した断片を0.2mMの各dNTP、2.2mM MgCl2、50mM KCl、10mMトリスHCl、pH 9.0、0.1% トリトンX-100の溶液に再懸濁することにより行うことができる。100μlの反応混合液に対して2.5単位のTaqポリメラーゼを添加し、次のレジメを用いてPCRを行う: 94℃で60秒間、94℃で30秒間、50〜55℃で30秒間、72℃で30秒間(30〜45回)、72℃で5分間。しかしながら、これらのパラメータは、適時変えてもよいことは理解される。一側面として、オリゴヌクレオチドをPCR反応に含めてもよい。他の例において、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片をPCR反応の最初のセットに用いることができ、Taqポリメラーゼは、それに引き続くPCR反応のセットに用いられてもよい。組換え配列は分離され、コードしているポリぺプチドの活性が評価される。
インビボ変異法
変種は、また、インビボ変異法により作製することができる。ある例において、興味対象の配列内のランダム変異は、DNA修復経路に一以上の変異を有するE. coli株のような細菌株中において、興味対象の配列を増殖させることにより作製される。そのような “変異導入”株は、野生型の親よりランダム変異率が高い。そのような株の1つにおいてDNAを増殖すると、最終的にそのDNA内にランダム変異が生じる。インビボ変異法に用いるために適した変異導入株は、PCT WO 91/16427に記載され、それは、本明細書中にその全体が引用により取り込まれる。
カセット変異法
変種は、また、カセット変異法を用いて作製することができる。カセット変異導入において、二本鎖DNA分子の小領域が、元の配列とは異なる合成オリゴヌクレオチド「カセット」で置き換えられる。そのオリゴヌクレオチドは、往々にして、ランダム化された元の配列を完全に及び/又は部分的に含む。
再帰的アンサンブル変異法
再帰的アンサンブル変異法を用いて変種を作製してもよい。再帰的アンサンブル変異法は、アミノ酸配列が異なり、表現型の関連した変種の多様な集団を作製するために開発されたタンパク質操作(タンパク質変異法)のためのアルゴリズムである。この方法は、連続ラウンドのコンビナトリアルカセット変異法を制御するためにフィードバックメカニズムを用いる。再帰アンサンブル変異法は、Arkin、A.P. and Youvan、D.C.、PNAS、USA、89:7811-7815、1992に記載され、本明細書中にその全体が引用として取り込まれる。
エクスポネンシャルアンサンブル変異法
いくつかの例において、変種は、エクスポネンシャルアンサンブル変異法を用いて作製される。エクスポネンシャルアンサンブル変異法は、高割合のユニークで機能的な変種を有する組換えライブラリーを作製する方法であって、それぞの変異部位で機能的タンパク質に導くアミノ酸を同定するために小グループの残基が同時にランダム化される。エクスポネンシャルアンサンブル変異法は、Delegrave、S. and Youvan、D.C.、Biotechnol. Res.、11:1548-1552、1993に記載され、本明細書中にその全体が引用として取り込まれる。
無作為及び部位特異的変異法
無作為及び部位特異的変異法は、Arnold、F.H.、Current Opinion in Biotechnology、4:450-455、1993に記載され、本明細書中にその全体が引用として取り込まれる。
シャッフリング操作
いくつかの例おいて、変種は、異なるポリぺプチドをコードしている複数の核酸の一部が共に融合してキメラポリぺプチドをコードするキメラ核酸配列を作製するシャッフリング法を利用して作製される。それは、米国特許5,965,408及び5,939,250に記載され、そのそれぞれは、本明細書中にその全体が引用として取り込まれる。
グループBのアミノ酸配列のポリぺプチドの変種は、グループBのアミノ酸配列のポリぺプチドの1つ以上のアミノ酸残基が保存又は非保存的アミノ酸残基(例えば、保存的アミノ酸残基)で置換された変種であってもよく、そのような置換アミノ酸残基は、遺伝コードによってコードされたものであってもなくてもよい。
保存的置換は、ポリぺプチド内のあるアミノ酸を同じような特性を有する他のアミノ酸で置換するものである。典型的には、保存的置換として見られるのは次の置換である:Ala、Val、Leu、又はIleのような脂肪族アミノ酸を他の脂肪族アミノ酸で置換する;SerをThrで置換する又はその逆の置換;AspやGluのような酸性残基を他の酸性残基で置換する;AsnやGlnのようなアミド基をもつ残基をアミド基をもつ他の残基で置換する;LysやArgのような塩基性残基を他の塩基性残基で置換する;Phe、Tyrのような芳香族残基を他の芳香族残基で置換する。
他の変種は、グループBのアミノ酸配列のポリぺプチドの一以上のアミノ酸残基が置換基を含むものである。
他の変種は、ポリぺプチドをポリぺプチドの半減期を増大させるような他の化合物(例えば、ポリエチレングリコール)と結合させたものである。
更なる変種は、リーダー配列、分泌配列、プロタンパク質配列又はポリぺプチドの精製、富化、又は安定化を促進させる配列のようなポリぺプチドに融合しているものである。
ある側面において、断片、誘導体、又は類似体は、グループBのアミノ酸配列のポリぺプチドやそれと実質的に同一の配列と同じ生物機能又は活性を保持している。別の側面として、断片、誘導体、又は類似体は、その断片、誘導体、又は類似体はプロタンパク質部分を切断されることにより活性化され、活性ポリぺプチドを生産するようなプロタンパク質を含む。
本発明の他の例は、グループBのアミノ酸配列、それらと実質的に同一の配列、又はそれらの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片に対する相同性が少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約95%、又は約95%以上の相同性を有するポリぺプチド又はその断片である。パーセント同一性は、上述した比較する配列を整列させ、それらの相同性又は類似性の度合いを調べる如何なるプログラムを利用して決定されてもよい。アミノ酸「相同性」には、上述したような保存的アミノ酸置換が含まれることが理解される。本発明の一側面として、その断片は、抗体を作製するために使用することができる。このような抗体は、商業プロセスに利用できるニトリラーゼを固定化するために使用することができる。本発明のニトリラーゼをコードするポリヌクレオチドは、同様に利用することができる。
あるいは、相同ポリぺプチド又は断片は、生化学的富化法又は精製法により得てもよい。潜在的に相同なポリぺプチド又は断片の配列は、タンパク質分解消化、ゲル電気泳動及び/又はミクロシークエンシングにより決定されてもよい。予想される相同ポリぺプチド又は断片の配列は、グループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列、又はそれらの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片と、この中に述べられているどのようなプログラムを利用しても決定されることができる。
本発明の別の側面は、断片又はグループBのアミノ酸配列の変種、あるいはそれらと実質的に同一な配列を同定するためのアッセイであり、それらの配列は、グループBのアミノ酸配列、及びそれ等と実質的に同一の配列の酵素機能を保持する。例えば、その断片又はグループBのアミノ酸配列の変種は、生化学的反応を触媒するために用いられることができ、前述の断片又は変種は、グループBのアミノ酸配列のポリペプチドの酵素活性を保持する。
変種の断片がグループBのアミノ酸配列のポリペプチド、及びそれらと実質的に同一な配列の酵素活性を保持するかを調べるためのアッセイは、以下の工程を含む:ポリペプチド断片又は変種と基質とを、前記ポリぺプチド断片又は変種が機能し得るできる条件下で接触させる工程、及び基質レベルの低下か又はポリぺプチドと基質間の反応の個々の反応産物レベルの増加を検出する工程。
グループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列又はそれらの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片は、種々の用途に利用することができる。例えば、そのポリぺプチド又は断片は、生化学的反応を触媒するために用いることができるかもしれない。本発明の一例に従うと、グループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列、又はそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを利用したアミノニトリルを加水分解するためのプロセスが提供される。そのような操作において、ハロアルカン化合物を含む基質とグループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列が、ハロアルカンが容易に加水分解される条件下で接触される。
抗体−グループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列、又はそれらの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片は、酵素ポリペプチド又はその断片と特異的に結合する抗体の作製に使用することができる。結果として得られる抗体は、そのポリペプチドを単離又は精製する免疫アフィニティークロマトグラフィーに使用する、あるいは生物的なサンプル中にそのポリペプチドが存在するかを調べるために使用することができる。そのような操作において、抽出物のようなタンパク質標品、又は生物的サンプルが、グループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列、又は前述の配列の断片の一つと特異的に結合できる抗体と接触させる。
免疫アフィニティーの操作において、抗体は、ビーズ又はカラムマトリックスのような固相支持体に結合される。そのタンパク質標品は、その抗体と、その抗体がグループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列、又はそれらの断片の一つと特異的に結合する条件下で抗体と接触された状態に置かれる。非特異的結合タンパク質を除去するための洗浄後、特異的に結合したポリぺプチドを溶出させる。
生物試料中のタンパク質の抗体に結合する能力は、当業者によく知られた種々の操作のいずれを利用して決定してもよい。例えば、結合は、抗体を蛍光試薬、酵素標識、又は放射性同位体のような検出可能な標識で標識することにより決定されてもよい。代わりに、抗体の試料への結合は、そのような検出可能な標識を有する二次抗体を利用して検出されてもよい。特別なアッセイには、ELISAアッセイ、サンドイッチアッセイ、ラジオイムノアッセイ、及びウェスタンブロットが含まれる。
本発明の抗体は、固相支持体に結合することができ、本発明のニトリラーゼの固定化に利用することができる。そのような固定化ニトリラーゼは、前述されたように、ニトリルの広範囲に及ぶ有用な産物及び中間体への変換のための商業的プロセスに利用することができる。
グループBのアミノ酸配列のポリペプチド、それらと実質的に同一な配列、又はそれらの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片に対して作製されたポリクローナル抗体は、そのポリぺプチドを動物に直接注入することにより又は動物に投与することにより得ることができる。そのように得られた抗体は、ポリぺプチド自体と結合するであろう。このように、そのポリぺプチドの断片のみをコードしている配列さえ、元の全ポリぺプチドと結合するかもしれない抗体を生産するために使用することができる。そのような抗体は、次に、そのポリペプチドを発現している細胞からそのペプチドを単離するために使用することができる。
モノクローナル抗体の作製のためには、細胞系の連続培養によって抗体を作製するどのような技術も利用することができる。例としては、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein (1975)、Nature、256:495-497、その開示は、その全体が引用により本明細書中に取り込まれる)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al. (1983)、Immunol. Today 4:72、その開示は、その全体が引用により本明細書中に取り込まれる)、EBV-ハイブリドーマ技術(Cole(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、Inc.、pp77-96、その開示は全体が引用によりこの中に取り込まれる)が含まれる。
一本鎖抗体の製造に関して記載されている技術(米国特許4,946,778その開示は、その全体が引用により本明細書中に取り込まれる)は、例えば、グループBのアミノ酸配列又はその断片のポリぺプチドに対する一本鎖抗体を作製するために適合させることができる。あるいは、トランスジェニックマウスを用いてこれらのポリぺプチド又は断片に対するヒト化抗体を発現させてもよい。
グループBのアミノ酸配列、それらと実質的に同一な配列、又はそれらの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、又は150連続アミノ酸を含む断片に対して作製されたポリクローナル抗体は、ポリぺプチドのポリぺプチドに対して生産された抗体は、他の生物体及び試料から類似ポリぺプチドをスクリーニングするために用いるることができる。そのような技術において、その生物体に由来するポリぺプチドは、その抗体と接触され、抗体と特異的に結合するポリぺプチドが検出される。上記操作のいずれもが抗体結合を検出するために用いられることができる。そのような一スクリーニングアッセイは、“Methods for Measuring Cellulase Activities”、Methods in Enzymology、Vol 160、pp. 87-116に記載され、その全体が引用により本明細書中に取り込まれる。
核酸を含む細胞全体の使用
本発明は、一以上の本発明のニトリラーゼをコードしている核酸(又はそれらの活性断片)で形質転換された細胞全体の使用を提供する。本発明は、また、ある基質のニトリラーゼ反応を起こしているそのような細胞全体の使用を提供する。従って、本発明は、この中に開示された少なくとも一つの核酸又はポリペプチド(配列番号1〜386)を含む細胞全体を用いた、シアノヒドリン又はアミノニトリル結合を加水分解する方法を提供する。例えば、あるニトリラーゼをコードしている核酸で安定に形質転換された細胞全体(本発明は、また、一過性にトランスフェクション又は形質転換された細胞全体も含む)は、本発明の一つの例である。そのような細胞は反応混合物中で基質に作用し、ニトリラーゼ活性を示す試薬として有用である。
配列分析ソフトウェア
二以上の配列間のパーセント同一性又は相同性は、典型的には配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、Madison、WI)を用いて測定することができる。そのようなソフトウェアは、パーセント同一性又は相同性を種々の欠失、置換、及び他の改変に帰属させることにより、類似の配列をマッチングさせる。二以上の核酸又はポリペプチド配列の関係に関する用語「パーセント同一性」は、指定された領域又は比較「ウィンドウ」の最大対応に対して比較し整列させた場合に同じであるヌクレオチド又はアミノ酸配列のパーセンテージを意味する。あるアルゴリズムの下では、保存的アミノ酸置換は「同一」であると考えることができ、コドンのゆらぎの部位における置換も「同一」であると考えることができる。
「アラインメント(整列)」は、適切なアラインメントアルゴリズムの関連範囲内で定義された場合、同一性又は相同性の度合いを帰属させる目的のために最大の対応を達成するための、二種以上の配列を整列させる処理を意味する。
配列比較のために、典型的な一配列が対照配列として作用し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムが使用された場合、試験及び対照配列は、コンピューターに入力され、必要である場合にはサブ配列が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが特別なアルゴリズムのために指定される。デフォルトプログラムパラメータを用いることができ、又は代替的パラメータを指定することもできる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、対照配列に相対する試験配列のパーセント同一性又は相同性を計算する。
この中で用いられる「比較ウィンドウ」は、20〜600、通常は約50〜200、より通常的には約100〜150ヌクレオチド又は残基から成る核酸又はアミノ酸配列における連続部位のセグメントであり、それらは、二種の配列が最適に整列された後に同じ又は異なる数の連続部位の対照配列と比較され得る。比較のための配列のアラインメント法は、当該技術においてよく知られている。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith and Waterman (1981)、Adv. Appl. Math. 2:482 の局部的相同アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970)、J. Mol. Biol 48:443、の相同アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444-2448、の類似性方法の探索、これらのアルゴリズムのコンピューター化した実行、又はマニュアルアラインメント及び視覚的検査により行うことができる。相同性又は同一性を求める他のアルゴリズムには、例えば、BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool、National Center for Biological Information)、BESTFIT FASTA、及び TFASTA (Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、Madison、WI)、ALIGN、AMAS(Analysis of Multiply Aligned Sequences)、AMPS (Alignment of Multiple Protein Sequence)、ASSET(Aligned Segment Statistical Evaluation Tool)、BANDS、BESTSCOR、BIOSCAN (Biological Sequence Comparative Analysis Node)、BLIMPS (BLocks IMProved Searcher)、Intervals and Points、BMB、CLUSTAL V、CLUSTAL W、CONSENSUS、LCONSENSUS、WCONSENSUS、Smith-Waterman algorithm、DARWIN、Las Vegas algorithm、FNAT (Forced Nucleotide Alignment Tool)、Framealign、Framesearch、DYNAMIC、FILTER、FSAP (Fristensky Sequence Analysis Package)、GAP (Global Alignment Program)、GENAL、GIBBS、GenQuest、ISSC (Sensitive Sequence Comparison)、LALIGN (Local Sequence Alignment)、LCP (Local Content Program)、MACAW (Multiple Alignment Construction and Analysis Workbench)、MAP (Multiple Alignment Program)、MBLKP、MBLKN、PIMA (Pattern-Induced Multi-sequence Alignment)、SAGA (Sequence Alignment by Genetic Algorithm)及びWHAT-IFが含まれる。そのようなアラインメントプログラムは、また、実質的に同じ配列をもつポリヌクレオチドを同定するためにゲノムデータベースのスクリーニングに使用することができる。多くのゲノムデータベースが利用可能であり、例えば、ヒトゲノムのかなりの部分がヒトゲノムシークエンシングプロジェクト(Gibbs、1995)の一部として利用可能である。少なくとも21の他のゲノムが既に配列決定されており、例えば、それらは、M. genitalium (Fraser et al.、1995)、M. jannaschii (Bult et al.、1996)、H.influenzae (Fleischmann et al.、1995)、E. coli (Blattner et al.、1997)、及び酵母 (S.cerevisiae) (Mewes et al.、1997)、及びD. melanogaster (Adams et al.、2000)を含んでいる。マウス、C. elegans、及びArabadopsis spのようなモデル生物のゲノム配列決定が著しく進歩した。ある機能的情報の注釈がついたゲノム情報を含むデータベースは、異なる組織によって維持され、インターネットでアクセスできる。例えば、http://wwwtigr.org/tdb;http://www.genetics.wisc.edu;http://genome-www.stanford.edu/~ball; http://hiv-web.lanl.gov;http://www.ncbi.nlm.nih.gov;http://www.ebi.ac.uk;http://Pasteur.fr/other/biology;及びhttp://www.genome.wi.mit.edu。
有用なアルゴリズムの例は、BLAST、BLAST 2.0、BLAST 2.2.2アルゴリズムであり、Altschul (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、及びAltschul (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させたときに、ある正の値の閾値スコアTに一致するか満足させる照会配列中の長さWのショートワードWを同定することにより、高スコアリング配列(HSP)を同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul (1990) 前述)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含む長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして働く。
ワードヒットは、累積したアラインメントスコアが増加し得る限り、それぞれの配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(一組の一致している残基に対する報酬スコア;常に>0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合、累積スコアの計算が、スコアリングマトリックスを計算するために使用される。それぞれの方向のワードヒットの伸張は、以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが最大達成値から量Xだけ減少する場合;一つ以上の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積のために、累積スコアがゼロ以下になる場合;又はいずれかの配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、Xは、アラインメントの感度と速度を決定する。核酸配列の場合、BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、ワード長(W)11、期待(E)10、M=5、N=-4、及び両鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPは、ワード長3、期待(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照)がデフォルトとして使用される。
BLASTアルゴリズムは、二種の配列間の類似性の統計的な分析をも行う(例えば、Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873を参照)。BLASTアルゴリズムによって示される類似性の一基準は、二種のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間の適合が偶然に生じる確率を示す最小和確率(P(N))である。例えば、試験核酸と対照核酸との比較における最小和確率が約0.2未満、約0.01未満、又は約0.001未満である場合、核酸は、対照配列に類似していると考える。
一側面として、タンパク質及び核酸配列の相同性は、Basic Local Alignment Search Tool (「BLAST」)を用いて評価される。特に、五種のBLASTプログラムが以下のタスクを実行するために使用される:(1)BLASTP及びBLAST3は、タンパク質配列データベースに対してアミノ酸照会配列を比較する;(2)BLASTNは、ヌクレオチド配列データベースに対してヌクレオチド照会配列を比較する;(3)BLASTXは、タンパク質配列データベースに対して照会ヌクレオチド配列(両鎖)の6フレームの推定翻訳産物を比較する;(4)TBLASTNは、6全リーディングフレーム(両鎖)内で翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対して照会タンパク質配列を比較する;及び、(5)TBLASTXは、ヌクレオチド配列データベースの6フレーム翻訳に対してヌクレオチド照会配列の6フレーム翻訳を比較する。
BLASTプログラムは、類似セグメントを同定することにより相同配列を同定し、それは、本明細書中で、照会アミノ酸配列又は核酸配列とタンパク質又はあるタンパク質又は核酸配列データベースから得ることができる試験配列間の「高スコアリングセグメント対」と呼ばれる。高スコアリングセグメント対は、その多くが当該技術において既知であるスコアリングマトリックスによって同定(即ち、整列)される。一例において、使用されるスコアリングマトリックスは、BLOSUM62マトリックス(Gonnet et al. (1992)、Science 256:1443-1445; Henikoff and Henikoff (1993)、Proteins 17:49-61)である。他の例において、PAM又はPAM250マトリックスを用いてもよい(例えば、 Schwartz and Dayhoff、eds. (1978)、Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure、Washington: National Biomedical Research Foundationを参照)。 BLASTプログラムは、例えば、U.S. National Library of Medicine、www.ncbi.nlm.nih.govを通してアクセスが可能である。
上記のアルゴリズムに使用されるパラメータは、調べられる配列の長さ及び相同性の度合いに依存して適合させることができる。いくつかの例において、そのパラメータは、ユーザーからの指示がない場合にそのアルゴリズムにより使用されるデフォルトパラメータでもよい。
特定の側面において、本発明は、改変小分子を作製するために、本明細書中に述べられるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド又はそれらの酵素的に活性な断片と小分子を接触させることを含む、小分子を改変する方法を提供する。改変小分子のライブラリーは、そのライブラリー中に所望の活性を呈示する改変小分子が存在するかを調べるために試験される。好ましい活性の改変小分子を産生する特異的な生体触媒反応は、そのライブラリーの一部を作製するために使用された生体触媒反応の各々を系統的に取り除くこと、所望の活性を有する改変小分子の存否をその一部のライブラリー中に作られた小分子を試験することにより同定される。所望の活性の改変小分子を生成する特異的な生体触媒反応は、場合により繰り返される。その生体触媒反応は、小分子中に見られる異なる構造残基と反応する一群の生体触媒を利用して行われ、各生体触媒は、一つの構造部分又は関連構造部分に特異的であり、各生体触媒は、異なる構造残基を含む多くの異なる小分子と反応する。
ニトリラーゼのいくつかの側面は以下のとおりである:
α-ヒドロキシ酸-ニトリラーゼは、シアノヒドリンの加水分解によりα-ヒドロキシ酸を生成する。マンデル酸やその誘導体の生成はこの一例である。この反応の重要な応用には、高収率、且つ高度に立体選択的なマンデロニトリルからの(R)-マンデル酸の商業的生産が含まれる。マンデル酸やその誘導体は、多くのキラル医薬品や農業用試薬生産における中間体及び解決試薬として広範に利用されている。数種の既知ニトリラーゼを利用した類縁基質を用いた方法による従来の試みは、非常に低い活性、生産性、及び選択性という問題を抱えている。
Figure 0004528872
フェニル乳酸誘導体
その他の利用法は、高収率、且つ高度に立体選択的な、(S)-フェニル乳酸の誘導体の生産である。フェニル乳酸誘導体は、多くのキラル医薬品や農業用試薬の生産に利用される。
Figure 0004528872
β-ヒドロキシ酸
ニトリラーゼは、商業的に重要な材料として、4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸のエナンチオマーの何れかを生産するために利用され、その(R)-エナンチオマーは、医薬品LIPITORTM の合成における主要な中間体である。
Figure 0004528872
以下のニトリラーゼは、ヒドロキシグルタリルニトリルの、(R)-3-ヒドロキシ-4-シアノ-酪酸への変換に利用されるニトリラーゼのその他の例である:配列番号205、206、配列番号207、208、配列番号195、196、配列番号43、44、配列番号321、322、及び配列番号237、238。上図は、配列番号107、108、配列番号109、110、配列番号111、112、配列番号127、128、配列番号129、130、配列番号133、134、配列番号113、114、配列番号145、146、配列番号101、102、配列番号179、180、配列番号201、202、配列番号159、160、配列番号177、178、配列番号181、182、配列番号183、184、配列番号185、186、配列番号57、58、配列番号197、198、配列番号59、60、配列番号67、68、及び配列番号359、360の配列を有する「選別されたニトリラーゼ」が、ヒドロキシグルタリルニトリルの、(R)-3-ヒドロキシ-4-シアノ-酪酸への変換に利用されることを示している。
本発明の特定の実施態様を以下に列挙する。
(1) 配列番号195、205、207、209、又は237と少なくとも50%の配列同一性を有する配列、または、配列番号195、205、207、209若しくは237の変種配列であって部位163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位178-180 GAA又はGAG;部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG又はACG;部位571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに一つ以上の変異を有する配列、又はその組み合わせを有する変種配列、を有する単離核酸または組換え核酸、又はそれらの断片であって、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記組換え核酸又は断片、またはそれらの相補物。
(2) 配列番号195、205、207、209、又は237と実質的に同一の配列を有するヌクレオチド、または、配列番号195、205、207、209若しくは237の変種配列であって部位163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位 178-180 GAA 又はGAG; 部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG 又はACG;部位571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを有する配列を有するヌクレオチド、又は、それらの相補物を含む、請求項1記載の単離核酸または組換え核酸。
(3) 配列番号195、205、207、209、又は237と同一の配列若しくは前記配列の相補配列を有するヌクレオチド、または、ニトリラーゼ活性を有するそれらの断片、またはそれらの相補物を含む、単離又は組換え核酸。
(4) 以下のヌクレオチドを含む単離又は組換え核酸:配列番号195、205、207、209、又は237の部位163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位178-180 GAA 又はGAG;部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG 又はACG;部位571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを有する配列を有するヌクレオチド、ニトリラーゼ活性を有するそれらの断片、又はそれらの相補物。
(5) 以下の核酸とハイブリダイズする単離又は組換え核酸、または、ニトリラーゼ活性を有するそれらの断片、又はそれらの相補物:配列番号195、205、207、209、又は237の配列を有する核酸、又は前記配列の部位163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位178-180 GAA 又はGAG;部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG 又はACG;部位 571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを含む変種配列を有する核酸。
(6) ストリンジェンなコンディションが、少なくとも50%ホルムアミド、約37℃から約42℃の温度を含む、(5)記載の単離又は組換え核酸。
(7) 約15ヌクレオチドから約50ヌクレオチドを含む核酸プローブであって、少なくとも15の連続したヌクレオチドが、
配列番号195、205、207、209、若しくは237の配列、又は、
配列番号195、205、207、209、又は237の部位163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位178-180 GAA 又はGAG;部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG 又はACG;部位 571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを有する変種配列、又は、
それらの相補物、
中の核酸標的領域に対して少なくとも50%の相同性を有する前記核酸プローブ。
(8) 以下の配列中の核酸標的領域の少なくとも15連続ヌクレオチドを含む核酸プローブ:配列番号195、205、207、209、又は237の配列、又は配列番号195、205、207、209、又は237の部位163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位178-180 GAA 又はGAG;部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG 又はACG;部位 571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを有する変種配列、又はそれらの相補物。
(9) (1)から(6)、(12)、又は(13)のいずれかに記載の核酸を含む、宿主細胞での複製が可能な核酸ベクター。
(10) (1)〜(6)、(12)、又は(13)のいずれか1項記載の核酸を含む宿主細胞。
(11) (10)記載の宿主細胞を含む宿主生物。
(12) 以下の配列と少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離又は組換え核酸または、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするその断片、またはそれらの相補物:配列番号196、206、208、210 又は238、あるいは配列番号196、206、208、210 又は238における、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシンの少なくとも一つ以上に変異又は前記変異の組み合わせを有する配列。
(13) 以下の配列を有するアミノ酸配列を含む単離又は組換え核酸、または、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするその断片、又はそれらの相補物:配列番号196、206、208、210 又は238配列、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシンの少なくとも一つ以上または前記変異の組合せを有する配列。
(14) 固相支持体に固定化された、(1)〜(6)、(12)、又は(13)のいずれかに記載の単離又は組換え核酸。
(15) 固相支持体が、ゲル、樹脂、ポリマー、セラミック、ガラス、微小電極、及びこれらの組み合わせから選択される、(14)記載の単離又は組換え核酸。
(16) 配列番号196、206、208、210又は238、又は、配列番号196、206、208、210 又は238における、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシンの少なくとも一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを有する配列、と少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ニトリラーゼ活性を有する単離又は組換えポリペプチドまたはニトリラーゼ活性を有するその断片。
(17) 配列番号196、206、208、210又は238、又は、配列番号196、206、208、210又は238における、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシンの少なくとも一つ以上の変異又はそれらの組み合わせを有するアミノ酸配列を含み、ニトリラーゼ活性を有する単離又は組換えポリペプチド、またはニトリラーゼ活性を有するその断片。
(18) 少なくとも20アミノ酸長であって、ニトリラーゼ活性を有する、(16)又は(17)記載の単離又は組換えポリペプチド。
(19) (16)又は(17)記載のポリペプチドのペプチド疑似体又は前記ポリペプチドの断片であって、ニトリラーゼ活性を有する前記擬似体又は断片。
(20) ニトリラーゼ活性を有する、(16)又は(17)記載のポリペプチドのコドン至適化ポリペプチド又はその断片であって、コドン使用頻度が特定の生物体又は細胞のために至適化された、前記ポリペプチド又はその断片。
(21) 固相支持体に固定化された、ニトリラーゼ活性を有する(16)又は(17)記載のポリペプチド又はその断片、あるいはニトリラーゼ活性を有するそれらのペプチド疑似体。
(22) 固相支持体が、ゲル、樹脂、ポリマー、セラミック、ガラス、微小電極、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、(21)記載のポリペプチド。
(23) (16)又は(17)記載のポリペプチド又はニトリラーゼ活性を有する前記ポリペプチドの断片に特異的に結合する精製抗体。
(24) ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドに特異的に結合する(23)記載の抗体断片。
(25) (16)又は(17)のいずれか1項記載のポリペプチドを少なくとも一つ含む酵素の、液体又は乾燥品である調製物。
(26) 固相支持体に固定化された、(25)記載の酵素調製物。
(27) (1)から(6)、(12)、又は(13)のいずれかに記載の核酸の少なくとも一つ、又は、ニトリラーゼ活性を有する、(16)又は(17)記載のポリペプチドの少なくとも一つ、または、それらの断片、またはそれらのペプチド疑似体、又はそれらの組み合わせを含む組成物。
(28) ニトリラーゼ活性に適した条件の下で、ニトリラーゼ活性を有する(16)又は(17)記載のポリペプチドの少なくとも一つ、又はそれらの断片、又はそれらのペプチド疑似体をニトリルと接触させることを含む、ニトリルのカルボン酸への加水分解方法。
(29) 分子のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分のカルボン酸への加水分解方法であって、ニトリラーゼ活性に適した条件の下で、ニトリラーゼ活性を有する、(16)又は(17)記載のポリペプチドの少なくとも一つ、又はそれらの断片、又はそれらのペプチド疑似体を前記分子と接触させることを含む、分子のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分の加水分解方法。
(30) シアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を有する分子と、鏡像選択性ニトリラーゼ活性を有する、(16)又は(17)記載のアミノ酸配列の少なくとも一つを有するポリペプチド、又はその断片、又はそれらのペプチド疑似体と前記分子とを混合を含む、キラルアルファヒドロキシ酸分子、又はキラルアミノ酸分子の作製方法。
(31) 組成物又は前記組成物の中間体の製造方法であって、前記組成物または中間体のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を含む前駆体を、ニトリラーゼ活性を有する(16)又は(17)記載のポリペプチドの少なくとも1つ又はそれらの断片又はそれらのペプチド疑似体と混合すること、および、前駆体中のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を加水分解することを含む、前記製造方法。
(32) (R)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸の製造方法であって、以下の配列を有する核酸によりコードされ、選択的に(R)- 光学異性体を生成して(R)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸を生成する、少なくとも一つのポリペプチドとヒドロキシグルタリルニトリルとを接触させることを含む前記方法:配列番号195、205、207、209、又は237の配列、配列番号195、205、207、209、又は237の部位 163-165 AAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAG;部位178-180 GAA 又はGAG;部位331-333 TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGC;部位568-570 CAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG 又はACG;部位571-573 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACG;部位595-597 GAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTG;部位664-666 TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに一つ以上の変異又は前記変異の組合せを有する変種配列、又はニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする断片。
(33) (S)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸の製造方法であって、(S)-エナンチオマーを生成するニトリラーゼ活性を有し、以下のアミノ酸配列のいずれかを有するポリぺプチド、又は、前記ポリペプチドの断片又はペプチド疑似体の少なくとも一つとヒドロキシグルタリルニトリルとを接触させることを含む前記方法:配列番号196、206、208、210 又は238、あるいは配列番号196、206、208、210 又は238における、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシンに一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを有する配列。
(34) (R)-マンデル酸の製造方法であって、マンデルニトリルと以下のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも一つ、または、ニトリラーゼ活性を有する、前記ポリペプチドの断片又はペプチド疑似体、とを混合することを含む前記方法:配列番号196、206、208、210 又は238、あるいは配列番号196、206、208、210 又は238における、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基の190セリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシン、又はそれらの組み合わせ。
(35) (S)-マンデル酸の製造方法であって、マンデルニトリルと以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドの少なくとも一つ、又は、ニトリラーゼ活性を有する前記ポリペプチドの断片又はペプチド疑似体、とを混合することを含む前記方法:配列番号196、206、208、210 又は 238、あるいは配列番号196、206、208、210 又は238における、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシンに一つ以上の変異又は前記変異の組み合わせを有する配列。
(36) (S)-フェニル乳酸誘導体又は(R)-フェニル乳酸誘導体の製造方法であって、フェニルラクトシアノニトリルと以下から選択されるポリペプチドの少なくとも一つを混合すること、を含む前記方法:配列番号196、206、208、210 又は 238、あるいは配列番号196、206、208、210 又は238における、残基55のリジン、グリシン、又はグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン、残基199のグルタミン酸、又はロイシン、残基222のロイシンに一つ以上の変異を有する変種又は前記変異の組み合わせを有する配列を有するポリペプチド、又はニトリラーゼ活性を有する前記ポリペプチドの断片又はペプチド疑似体、又は選択的に(S)-エナンチオマー又は(R)-エナンチオマーを産生する如何なる活性断片又はペプチド疑似体。
(37) 以下を含む、(16)又は(17)記載のポリペプチド又はそれらの断片の作製方法:
a) 宿主細胞によりポリペプチドが生合成される条件下でポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞へ導入すること;および、
b)生合成されたポリペプチドを回収すること。
(38) 下記により、(1)-(6)、(12)、又は(13)記載の核酸を改変することを含む、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸変種であって、天然に存在するものとは異なる、改変された生物学的な活性を有する前記変種の製造方法:
i.1つ以上のヌクレオチドを、天然又は非天然ヌクレオチドを含む異なるヌクレオチドで置換する;
ii.1つ以上のヌクレオチドを削除する;
iii.1つ以上のヌクレオチドを挿入する;または、
iv. i〜iiiの組み合わせ。
(39) 下記を含む、二つ以上の核酸からポリヌクレオチドを作製する方法:
a)少なくとも一つの核酸が(1)-(6)、(12)、又は(13)記載の核酸を含む二つ以上の核酸の間での同一領域と多様性領域を確認すること、
b)前記二つ以上の核酸の少なくとも二つ以上の核酸配列に一致するオリゴヌクレオチドの組を提供すること、および、
c)ポリメラーゼによる前記オリゴヌクレオチドの伸長によりポリヌクレオチドを作製すること。
(40) 以下を含むニトリラーゼ同定のためのスクリーニングアッセイ:
a)(1)-(6)、(12)、又は(13)記載の核酸の少なくとも一つ、または(16)又は(17)記載のポリペプチドの少なくとも一つ、又はそれらの断片を含む複数の核酸又はポリペプチドを提供すること、
b)前記複数の核酸又はポリペプチドの中からニトリラーゼ活性をテストすべきポリペプチド候補を選択すること、
c)前記候補のニトリラーゼ活性をテストすること、および、
d)ニトリラーゼであるポリペプチド候補を同定すること。
(41) 以下を含むキット:
a)(1)-(6)、(12)、又は(13)記載のいずれかの核酸、又はニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記核酸の断片、又は、
b)(16)又は(17)記載のポリペプチドのいずれか、又は、ニトリラーゼ活性を有する前記ポリペプチドの断片若しくはペプチド疑似体、又はそれらの組み合わせ、および、
c)緩衝液。
(42) 以下を含む、分子を改変する方法:
a)(16)又は(17)記載のいずれかのポリペプチド、又はニトリラーゼ活性を有する前記ポリペプチドの断片若しくはペプチド疑似体と出発分子とを混合して、反応混合物を作製すること、
b)前記出発分子と前記ポリペプチドとを反応させて改変された分子を生産すること。
(43) 以下を含む、改変された分子を同定する方法:
a) (16)又は(17)記載のポリペプチドのいずれか、又はニトリラーゼ活性を有する前記ポリペプチドの断片若しくはペプチド疑似体、と出発分子とを混合して反応混合物を生産し、改変された分子のライブラリーを生産すること、
b)前記ライブラリーをテストして、前記ライブラリー中に所望の活性を示す改変された分子が存在するかどうかを決定すること、
c)所望の活性を示す前記改変された分子を同定すること。
(44) 以下の配列からなる群より選ばれる少なくとも一つのヌクレオチド配列:配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385の配列、および前記配列の変種、
および/又は、
以下の配列からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミノ酸配列:配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386の配列、及び前記配列の変種、
が保存されているコンピューター読み取り可能媒体。
(45) 処理装置、及びデーター保存装置を含むコンピューターシステムであって、前記データー保存装置に、
以下の配列からなる群より選ばれる少なくとも一つのヌクレオチド配列:配列番号 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、283、285、287、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、331、333、335、337、339、341、343、345、347、349、351、353、355、357、359、361、363、365、367、369、371、373、375、377、379、381、383、385の配列および前記配列の変種、および/又は、
以下の配列からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミノ酸配列: 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、254、256、258、260、262、264、266、268、270、272、274、276、278、280、282、284、286、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、330、332、334、336、338、340、342、344、346、348、350、352、354、356、358、360、362、364、366、368、370、372、374、376、378、380、382、384、386,及びその変種、
が保存されている前記コンピューターシステム。
(46) 以下を含む、配列中の特徴を同定する方法:
a)配列をコンピューターへ入力すること、
b)前記配列における一つ又はそれ以上の特徴を同定するコンピュータープログラムを動作させること、
c)配列番号1-386の配列、前記配列の変種、又はこれらの組み合わせを含む配列における特徴を同定すること。
(47) 以下を含む、ポリペプチドの機能性断片を決定するアッセイ方法:
a)(16)又は(17)記載の少なくとも1つのポリペプチドの断片を取得する工程、
b)ニトリラーゼ活性に適した条件の下で、工程(a)の少なくとも1つの断片と、シアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を含む基質とを混合する工程、
c)工程(b)の少なくとも一つの断片の各々によって生成された反応生成物の量を測定する工程、
d)ニトリラーゼ反応生成物を生成することのできる前記少なくとも一つの断片を同定し、それによりポリペプチドの機能断片を同定する工程。
(48) 以下を含む、ポリペプチドの機能性変種を同定するためのアッセイ方法:
a)(16)又は(17)の記載の少なくとも一つのポリペプチドの変種を取得する工程、
b)ニトリラーゼ活性に適した条件下で、工程(a)の少なくとも一つの変種と、シアノヒドリン部分またはアミノニトリル部分を含む基質と混合する工程、
c)工程(b)の少なくとも一つの変種の各々によって生成された反応生成物の量を測定する工程、
d)ニトリラーゼ反応生成物を産生することのできる少なくとも1つの断片を同定し、それにより、ポリペプチドの機能性変種を同定する工程。
(49) 以下を含む、鏡像選択的変換のスクリーニング方法:
a)分子中の二つのプロキラル部分又はエナンチオトロピック部分のうちいずれかを標識すること、
b)選択的触媒により前記二つの部分のうちの少なくとも一方を改変して生成物を作製すること、
c)質量分析によって最終産物を決定すること。
(50) 標識が、重又は軽同位体である、(49)記載の方法。
(51) 選択的触媒が酵素である、(49)記載の方法。
(52) 質量分析が、ポジティブモード又はネガティブモードである、(49)記載の方法。
(53) 分析が、親質量あるいはフラグメンテーション質量について行われる、(49)記載の方法。
(54) %エナンチオマー超過率又は%ジアステレオマー超過率を測定又は決定するために使用することが出来る、(49)記載の方法。
(55) 以下の配列を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離又は組換えポリペプチド:配列番号196、206、208、210 または238から成る配列、および残基55のリジン、残基55のグリシン、残基55 のグルタミン、残基60のグルタミン酸、残基111のセリン、残基190のセリン、残基190のヒスチジン、残基190のチロシン、残基190のスレオニン、残基191のロイシン、残基191のバリン、残基191のメチオニン、残基191のアスパラギン酸、残基191のグリシン、残基191のグルタミン酸、残基191のチロシン、残基191のスレオニン、残基199のグルタミン酸、残基199のロイシン、残基222のロイシンからなる群より選ばれる位置において少なくとも一つ以上の変異または前記変異の組合せを含む配列。
(56) 以下の配列を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離又は組換えポリペプチド:配列番号 196、206、208、210、又は238からなる配列において残基190又は同等の部位においてアラニンが水素結合性アミノ酸又はペプチド疑似体前記に置換された変異を有する配列。
(57) 以下の配列を含む、ニトリラーゼ活性を有する単離又は組換えポリペプチド:配列番号 196、206、208、210、又は238からなる配列において残基190又は同等の部位においてアラニンが疎水性アミノ酸又はペプチド疑似体により置換された変異を有する配列。
(58) 配列番号:196、206、208、210、又は238の残基55のリジン、グリシン又はグルタミン;残基60のグルタミン酸;残基111のセリン、残基190のセリン、ヒスチジン、チロシン、又は スレオニン;残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニン;残基199のグルタミン酸、又はロイシン;残基222のロイシンによる変異と同等の変異を少なくとも一つ以上有している、単離または組換え核酸。
(59) (1)の配列又はその部分配列を含む核酸を増幅することのできる、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を増幅する増幅プライマー対。
(60) 少なくとも10〜50の連続した配列、又は12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30以上の連続した配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、(59)記載の増幅プライマー対。
(61) (59)の増幅プライマーペアを用いたポリヌクレオチドの増幅により産生される、ニトリラーゼをコードする核酸。
(62) 増幅がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行われる(61)記載のニトリラーゼをコードする核酸。
(63) 遺伝子ライブラリーの増幅により作製される、(62)記載のニトリラーゼをコードする核酸。
(64) 遺伝子ライブラリーが環境ライブラリーである、(63)記載のニトリラーゼをコードする核酸。
(65) (61)記載のニトリラーゼをコードする核酸によりコードされる単離又は組換えニトリラーゼ。
本発明は、更に、以下の例に関しても記述されている。しかし、本発明は、これらの例に限定されていないことを理解するべきである。むしろ、本発明の実行における現時点での最適な方法を記載した本開示を考慮すれば、当業者により、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、多くの改変や変更が試されるであろう。本発明と同等の意義の範囲内における全ての変更、改変、及び変法は、本発明の範囲内であるとみなされるべきである。
実施例1:ファージミド感染
ニトリラーゼのスクリーニングに使用される各々のライブラリーは、以下の方法で感染させられる:5 mlのOD600nm=1を有するSEL700 細胞の懸濁液と、1mlのスクリーニングすべきファージミドライブラリーとを混合する。この混合液を37℃の水浴中で45分間インキュベートする。
この感染混合物の10μlを用いて、10 mM硫酸マグネシウム中に以下のような連続希釈を作製した。
ライブラリーの力価 希釈倍率
〜105 cfu/ml 10-1 希釈
〜106 cfu/ml 10-1、10-2希釈
〜107 cfu/ml 10-1、10-2、10-3希釈
以下の希釈液の各々 60 μlが、LB-kan50 プレート上に置いた:
ライブラリーの力価 希釈倍率
〜105 cfu/ml 未希釈原液、10-1希釈
〜106 cfu/ml 10-1、10-2希釈
〜107 cfu/ml 10-2、10-3希釈
感染混合液中の細胞を、卓上用遠心分離機により、4℃、4.6k rpmにおいて 10分間遠心分離し、沈殿させた。その上澄み液を、ペレットよりデカンテーションにより除いた。細胞は残りの液中に懸濁させた。懸濁した全ての細胞を、一枚の大きなLB-kan50 プレート上に播いた。全てのプレートは、30℃において一夜インキュベーションした。
実施例2:選別スクリーニング
各々の感染プレート中の細胞を、〜4ml の10mM 硫酸マグネシウム溶液中に再懸濁し、一本のチューブに移した。各々のプレート上の残りの細胞は、〜3ml の10mM 硫酸マグネシウム溶液中に懸濁し、最初の細胞懸濁液と混ぜた。各々のチューブ中の溶液量は、10mM硫酸マグネシウム溶液により12ml に合わせ、徹底的に混合した。このチューブを、卓上用遠心分離機により、4℃、4.6k rpmにおいて10分間遠心分離した。その上澄み液は、ペレットよりデカンテーションにより除いた。各々のチューブ中の洗浄された細胞は、10ml の10mM硫酸マグネシウム溶液中に懸濁した。各々のライブラリーより得られた懸濁液は、選別培地が調製されるまで、4℃にて保存した。
各々の再懸濁液に利用される選別培地は、以下のように調製した:
1)ニトリラーゼ選別培地は以下のように調製した:窒素源を含まず、0.2% グルコース、及び50μg/mlカナマイシン(pBKファージミドライブラリーの場合)(pBS ライブラリーの場合は、アンピシリンを使用する)を含む 1X M9培地。
2)この培地の5mlを、50ml容量のスクリュートップコニカルチューブに分注した。
3)このチューブに、保存した再懸濁液の25μlを加えた。
4)このチューブに、5μlのアジポニトリルを加え最終濃度を 8.8 mM となるようにした。アジポニトリルの代わりに他のニトリル基質を使用してもよい。
5)この混合物を30℃にて培養した。

1-5の工程を、各々のニトリル基質に対して繰り返した。
実施例3:選別培地からのポジティブニトリラーゼクローンの単離
生育させた選別培養液の10μlを小さなLB-kan50 プレート上に播き、30℃において二夜培養した。五つの単離されたcfuを採取し、それらの各々を2mlのニトリラーゼ選別培地中で30℃において培養した。各々の培養液を観察し(ここでの生育は、ポジティブなコロニーが選択されたことを示している)、その生育が定常期に入ったと判定されたときに取り出した。その 1mlからプラスミドを調製し、40μlの溶出バッファーにより溶出した。このうちの5から8μlのDNAを、Pst I/Xho I、若しくはSacI/Kpn I制限酵素で消化し、ベクター中の挿入配列を切り出した。制限断片長多型 (restriction fragment length polymorphism、RFLP)の決定は、挿入配列の長さを同定することにより行った。次に、その挿入配列の配列決定を行った。
実施例4:ニトリラーゼのスクリーニング及び特性決定
本発明のニトリラーゼを標的基質に対してスクリーニングした。一次スクリーニングにおいて加水分解活性を示したもののうち、20% 以上の鏡像異性体超過率 [enantiomeric excess (ee)] を有する酵素を更なる特性決定のために選別した。これらの酵素は、以下に基づいて選択した:1) 目的基質のうちの一つに対する活性を有するもの、及び2) 35 %以上のeeを示すもの。このスクリーニング工程の結果は、上記の表 1 に記載されている。
スクリーニングに使用された生産物は以下の物質である:D-フェニルグリシン、L-フェニル乳酸、(R)-2-クロロマンデル酸、(S)-シクロヘキシルマンデル酸、L-2-メチルフェニルグリシン、(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸及び4-メチル-L-ロイシン。
標的基質であるD-フェニルグリシンに対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
フェニルグリシノニトリルの加水分解実験を行った。これらの酵素のうちの幾つかは20% 以上のeeを示し、これらを予備的な特性決定のために選別した。
予備的な特性決定実験に基づき、多くの推定上のヒットがフェニルグリシノニトリルに関して同定され、これらの酵素に関する非常に多くのデータが蓄積された。これらのデータは、多くの共通の特性を示していた:大多数の酵素はpH7で最適な酵素活性を示し、概して低い pH において高い立体選択性を示した。これらの酵素は、しばしば立体選択性を低下させるような高温(特に38℃)において、より高い活性を示した。反応における親水性溶媒の使用は実用的な選択肢の一つであることが示されている。酵素反応液中への10〜25%(v/v)メタノールの添加は実質的な酵素反応には影響を与えず、多くの場合、立体選択性の増加をもたらした。酵素活性を維持させるような、70%(v/v)までのヘキサン(時としてトルエン)の添加による二相系の使用もまた有用である。しかし、二相系における酢酸エチルの使用は、活性の低下をもたらした。
フェニルグリシノニトリルに対して活性を示した酵素のうち、いくつかの酵素の鏡像選択性は、35%以上のee という成功基準を上回っていた。予備的な特性決定データは、これらの酵素のうちのいくつかがD-フェニルグリシンに対して高い鏡像選択性を持ち、対応する目的生産物への40〜60%の変換率を有することを示していた。これらの酵素のうちの幾つかの反応速度は、基質のラセミ化速度よりも速いことが更なる実験結果により示された。酵素濃度を抑えることで鏡像選択性が改善された:よって、化学的ラセミ化と酵素反応との相対的速度を調節することにより、いくつかの利点が得られるものと思われる。
標的基質である(R) 2-クロロマンデル酸に対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
2-クロロマンデル酸に対して活性を示す酵素が同定された。2-クロロマンデロニトリル及びフェニルグリシノニトリルに対して活性を示した酵素間には、高度に重複した配列が存在していた。これらの酵素の多くは、また、独特な配列群を形成していた。
これらの活性酵素は、中性pHにおける高い温度で最も高い活性を示した。殆どのニトリラーゼにおいて、鏡像選択性もまた高い温度(特に38℃)で増加していた。これらの酵素は、25 %までのメタノール、若しくは10%までのイソプロパノールの存在下においてもその活性を保持していた;これらの多くの場合、立体選択性もまた増加していた。特に非水系溶媒としてヘキサンを使用したとき、二相系における酵素活性は水溶液条件における活性とほぼ同一であった。異なるニトリラーゼでは、トルエンに対して異なる寛容性が観察された。
表2. 2-クロロマンデロニトリルのエナンチオマー選択的加水分解実験により決定された最適条件の概要
Figure 0004528872
標的基質である(S)-フェニル乳酸に対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
試験したニトリラーゼの多くは、フェニルアセトアルデヒドに対して活性を示した。これらの酵素の多くは二種類の関連した配列群の一部に属しており、フェニルグリシノニトリル及びクロロマンデロニトリルに対して活性を示す酵素とは異なっていた。
これらの酵素の最適pHは概してpH 7以上 (即ち pH 8若しくは 9) であり、そのpHにおいてこれらの酵素は高い立体選択性を示した。殆どの酵素は、より高い温度 (特に 38℃) において優れた活性を示した。これらの酵素の立体選択性における温度効果は様々であった; 殆どの場合、立体選択性は、高温下ではわずかに低下していた。これらの酵素は、特に 10 % (v/v)メタノールなどの付加的な溶媒に対して寛容性を示したが、これらの添加による活性や鏡像選択性の改善は見られなかった。二相系の利用もまた可能であることが示された。
表3. フェニルアセトアルデヒドシアノヒドリンの鏡像選択的加水分解実験により決定された最適条件の概要
Figure 0004528872
標的基質であるL-2-メチルフェニルグリシンに対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
ニトリラーゼは、この基質に対して活性を示し、目的のL-2-メチルフェニルグリシンよりはむしろD-2-メチルフェニルグリシンを優先的に産生することが知られている。
標的基質であるL-ヒドロキシノルロイシン [(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸] に対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルに対して活性を示すいくつかのニトリラーゼが単離された。これらの酵素は全てL-エナンチオマーのみを生産するような鏡像選択性を示した。
これらの酵素の全ては、高いpHにおいてより高い鏡像選択性を示し、試験されたその他のニトリラーゼと比べて、溶媒添加による影響を受けやすいことが示された。酵素活性は有機溶媒存在下においても検出されたが、概して、対照である水溶液中での活性に比べ低下していた。更に、酵素活性は酸性の生産物、及びアルデヒドを有する出発物質により阻害された。
表4. 2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルの鏡像選択的加水分解実験により決定された最適条件の概要
Figure 0004528872
2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルに対して確認されたヒット酵素の中には様々な加水分解活性が認められた。
標的基質である4-メチル-D-ロイシン及び4-メチル-L-ロイシンに対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
いくつかのニトリラーゼを用いて2-アミノ-4,4-ジメチルペンタンニトリルの加水分解を行った。これらの中のいくつかは、ニトリルの加水分解により対応する酸のL-異性体を生成することが示され、更なる特性実験を行うための候補として選別した。
表5. 2-アミノ-4,4-ジメチルペンタンニトリルの立体選択的加水分解実験により決定された最適条件の概要
Figure 0004528872
標的基質である (S)- シクロヘキシルマンデル酸に対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
標的基質であるマンデロニトリルに対するニトリラーゼのスクリーニング
Figure 0004528872
ニトリラーゼの集団を、マンデロニトリルに対してもスクリーニングした。これらのニトリラーゼはフェニルグリシノニトリル及びクロロマンデロニトリルの両方を加水分解した。
鏡像選択性決定のための酵素アッセイ
キラルα-ヒドロキシ酸及びα-アミノ酸を同定するための分光系の設計において、生産物の生成と鏡像選択性を検出できる酵素系アッセイを開発し、利用した。
乳酸デヒドロゲナーゼ(L-LDH 及びD-LDH)、及びアミノ酸オキシダーゼ (L-AA Oxid 、及び D-AA Oxid) を利用したα-ヒドロキシ酸及びα-アミノ酸の検出用分光系が図 6及び7に提示されている。これらの酵素が選ばれた理由は、これらの酵素がほぼ完全なエナンチオマー特異性を保持しつつ、適切で広範な基質特異性を示すことが報告されているからである。
この系の全体的な実行可能性が立証された (表 12)。ヒドロキシニトリル及びアミノニトリルのどちらの親化合物も二次的な酵素及び検出用酵素により代謝分解されなかったことから、出発物質は反応を妨害しない。加熱処理されていない細胞溶解物は、乳酸デヒドロゲナーゼ系におけるバックグラウンド活性を示した; しかし、加熱による不活化によりこのバックグラウンド活性は除去される。細胞溶解物は、アミノ酸オキシダーゼアッセイを妨害しないと思われる。一つの問題は、残存シアニドによる、FMN補欠因子を利用するアミノ酸オキシダーゼの不活化である。しかし対照実験により、2 mM PGN (2 mM までのHCN が遊離される)不活化は問題無いことが示された。このアッセイは384 ウェル (若しくはそれ以上) のマイクロタイタープレートを用いる自動化アッセイに適している。
表6. 酸性生産物のキラル検出に対する二次酵素の同定の概要
Figure 0004528872
1: 三級アルコールはこの特定の酸化反応を受けないため、このアッセイはシクロヘキシルマンデル酸及び2-メチルフェニルグリシンに対しては適用できない。
実施例 5:標準的アッセイ条件
以下の溶液を調製した:
・基質保存溶液:50 mMアミノニトリル基質の 0.1 Mリン酸緩衝液(pH 7)溶液、若しくは 50 mMシアノヒドリン基質の0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5)溶液
・酵素保存溶液:20 mgの凍結乾燥された細胞溶解物を含む各々のバイアルに、3.33 mlの0.1 M リン酸緩衝液(pH 7)を加えたもの(最終濃度は 6 mgタンパク質/ml)
手順:
・100 μlの 50 mM基質溶液を96ウェルプレートの適当なウェルに加える
・80 μlの緩衝液を各々のウェルに加える
・20 μlの酵素溶液を各々のウェルに加える
・ブランクコントロールウェルには、酵素溶液の代わりに20 μlの緩衝液を加える
・この実験の多くの場合、180 μlの緩衝液中に20 μlの酵素溶液を含むネガティブコントロールが利用される。細胞溶解物が生産物の検出を妨害しないことが一旦立証された場合は、これらのコントロールは加えなかった。
反応液のサンプリング:
・各々のウェル中の反応液の適量(15〜50 μl)を回収し、以下のように希釈した:
・非キラル系HPLC分析用試料:
・フェニルグリシン、2-クロロマンデル酸及びフェニル乳酸:先ず、試料は水により2 倍に希釈し、更にメタノール若しくはアセトニトリルにより2倍希釈した (最終希釈率:4 倍)。これらの試料を8倍希釈にすることにより、クロマトグラフィーによる分離が改善されることがわかった。
・(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸、4-メチルロイシン、t-ロイシン、2-メチルフェニルグリシン、及びシクロヘキシルマンデル酸:試料はメタノール、若しくはアセトニトリルにより1:1 に希釈した。溶媒は、HPLC分析において利用される溶媒に基づいて選択した。
キラルHPLC 分析用試料:
・ フェニルグリシン、2-クロロマンデル酸及びフェニル乳酸:上述の非キラル分析に記載されたように、キラル分析用の試料も、先ず、2倍に希釈し、その後の段階においては4倍に希釈した。
・ (S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸、4-メチルロイシン、t-ロイシン、2-メチルフェニルグリシン:試料は、メタノール若しくはアセトニトリルにより1:1に希釈した。
各々の実験において、生産物の標準曲線がHPLC分析に含まれている。標準曲線は、X-Y軸上にプロットされ、試料中の生産物濃度をこれらの曲線の傾斜より計算した。
予備的な特性決定実験において、酵素活性が直線性を示すような試料を調製した;この実験は、完全な変換に対する影響よりは、むしろ、反応速度に対する様々なパラメータの影響の違いを調べるために行った。試料の回収時間は、本報中の表に記載されている。
試料は表20及び21に示された方法を用いたHPLC により分析した。
実施例6:酵素活性、及び立体選択性に対する pH の影響の決定
酵素活性及び鏡像選択性に対するpHの影響を、様々な異なる緩衝液を用いた標準的アッセイにより検討した:
0.1 M クエン酸リン酸pH 5
0.1 M クエン酸リン酸pH 6
0.1 M リン酸ナトリウムpH 7
0.1 M トリス-塩酸pH 8
0.1 M トリス-塩酸pH 9
これらの試料を非キラル及びキラルHPLC法により分析し、その実験結果例を本表5 、8及び11に示した。
実施例7:酵素活性及び鏡像選択性に対する温度の影響の決定
酵素活性及び立体選択性に対する温度の影響を室温、38℃及び55℃における標準的アッセイにより検討した。これらの試料は、非キラル及びキラルHPLC法により分析し、その実験結果例を表 5 、8及び11に示した。
実施例8:酵素活性及び鏡像選択性に対する溶媒の影響の決定
酵素に対する水混和性溶媒、及び非水混和性溶媒の影響を調べるため、これらの溶媒の存在下、及び二相系における酵素反応を行った。緩衝液をメタノール若しくはイソプロパノールで置換した反応液中における、標準条件下での酵素反応がこれらの水混和性溶媒の存在下において行った。反応液中の溶媒の最終濃度は0、10、25及び40 %(v/v)であった。
非水混和性有機溶媒による非水層二相系反応もまた標準条件下において行った。その溶媒は以下のように添加された:水層に対して0 %、10 %、40 %、及び70 %(v/v) 。これらの反応液から得られた試料は、真空下での遠心分離により気化させ、メタノール若しくはアセトニトリルと水の50:50混合液中に溶解した。これらの試料は、非キラル及びキラルHPLC法により分析した。
実施例9:酵素活性及び鏡像選択性活性に対する反応成分の影響の決定
活 性
酵素活性に対する反応成分の影響を、酵素反応系への個々の成分の添加により検討した。これらの成分には、ニトリル合成反応において触媒的に作用する量のトリエチルアミンに加え、ニトリル合成のための出発物質、アルデヒド、シアニド、及びアンモニウムが含まれた。これらの反応物の濃度は、可能な反応条件を考慮して選択し、酵素アッセイに使用した反応物の量に合わせた。いくつかの場合には、アルデヒド、及び生産物の溶解性は比較的低かった; このような場合、最も高濃度に溶解した溶液を最高濃度として、この溶解量の10 %を低濃度として反応液に添加した。
標準条件下において、以下の成分のうちの一以上の成分を加えた酵素反応を行った: ベンズアルデヒド、フェニルグリシン、フェニルアセトアルデヒド、フェニル乳酸、2-クロロベンズアルデヒド、2-クロロマンデル酸、5-ヒドロキシペンタナール、(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸、4-メチルロイシン、KCN、トリエチルアミン、塩化アンモニウム。対照反応は、何も加えず標準条件下で行った。試料は、非キラルHPLC で分析した。
安定性
標準条件下での酵素活性測定アッセイに先立ち、その反応条件における酵素の安定性を、予め定められた一定の時間、個々の反応成分の存在下での酵素のインキュベーションにより測定した。これらの実験において1.2 mgタンパク質/mlの濃度の酵素を、以下に示した各々の反応成分の存在下においてインキュベートした:メタノール、ベンズアルデヒド、フェニルグリシン、フェニルアセトアルデヒド、フェニル乳酸、2-クロロベンズアルデヒド、2-クロロマンデル酸、5-ヒドロキシペンタナール、(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸、KCN、塩化アンモニウム。
アッセイ条件
これらの特定の添加物を加えてから 0、2、6及び24 時間のインキュベーション後、その酵素溶液の50 μlを取り除き、50 μlの50 mM基質保存溶液を加えて、標準条件下においてその酵素活性を測定した。基質添加後、以下に示した時間にその反応液をサンプリングした:フェニルグリシノニトリル: 10 分; フェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1 時間;2-クロロマンデロニトリル:2 時間。対照反応は、何も加えず緩衝液のみの溶液中での酵素のインキュベーションにより行った。これらの試料は非キラルHPLCにより分析した。
実施例10:ヒットと推定された酵素の確認
ヒットと推定された酵素が高い変換活性を示した場合、予備的な特性実験に続き、それらの特性(特に鏡像選択性)を評価するために、適当な条件下におけるアッセイを行った。これらの酵素は、本報中の表に記述されたpH及び温度条件下において25 mMの基質を用いてアッセイした。特に記述されていない場合、各々の酵素は標準濃度である0.6 mgタンパク質/mlの濃度で使用した。
実施例11:酵素反応液のクロマトグラフィー分析の具体例
この実施例においては、各々の基質、及び生産物の組み合わせにおけるクロマトグラフィー分析の典型例が、この方法における幾つかの問題点に対する議論、及びその解決策と共に示される。
D-フェニルグリシン
非キラル分析において、基質によるピークは2.6 分及び3.2 分に溶出された(図 8A-8E を参照)。この二本のピークは、高濃度のニトリルを含む全ての試料中に観察された;二番目のピークはニトリルに関連する生産物と思われた; このピークは時間経過に伴い減少し、生産物への変換が完全に行われると見られなくなった。図 8A に示されたクロマトグラムは、ニトリル及び緩衝液のみを含むブランクコントロールによるものである;これらの試料は、上記の項目1において説明されたように、全て水で希釈した。これは、以下に記述されるように、全ての試料に対して繰り返した。酵素反応試料により得られたクロマトグラムの一例が図 8B に示されており、ここでは0.4 分にその生産物が溶出されている。
これらのクロマトグラムにおいて注目すべきことは、0.3 分に溶出が始まる小さな溶媒によるピークである。更に、クロマトグラム上に現れたこのピークの典型例が図 8C に示されており、ここでは緩衝液中に細胞溶解物を含むネガティブコントロールが分析された。非常に小さなピークが0.4 分の生産物と共に溶出された。この実験の初期段階において、正確度を維持するために適切な対照試料が各々の実験において分析されているが、このピークは分析上の問題になるものとみなされた。これらの実験において、細胞溶解物より得られるピーク面積は比較的小さいものではあるが、この酵素反応により得られた生産物のピーク面積より差し引かれた。この分析は、試料の更なる希釈及びHPLCへの更に少ない容量の注入により改善された。これらの改良により、図 6C のクロマトグラムに示されたように、このピークによる妨害が最小化された。
フェニルグリシンのキラル分析のクロマトグラムが図 6D に示されており、ここでは6 分にL-エナンチオマーが、11 分にD-エナンチオマーがそれぞれ溶出されている。これら二種類のエナンチオマーの良好な分離が得られた。しかし、ここで利用されたカラムは非常に敏感であり、その保持能が時間経過により変化するため、酸性物質の溶出時間が変化する。このことは適切な対照及び標準物質を利用することにより容易に検出できるが、更に大きな問題はニトリルピークのD-エナンチオマーとの共溶出である(図6Eにそのクロマトグラムが示されている)。この共溶出の原因は不明であるが、これは適切な標準物質を利用することにより容易に検出できる。更に、酸性物質の紫外線吸収曲線は非常に特徴的であるため、この特徴を利用してこのような共溶出を効果的に検出できる。この問題は、移動相中のメタノール含量を調節することによっても容易に解決された。
(R)-2-クロロマンデル酸
クロロマンデル酸及びクロロマンデロニトリルのHPLC分析によりフェニルグリシン試料の分析に関する多くの問題が提起された。図7Aに示されている緩衝液中にクロロマンデロニトリルのみを含む試料のクロマトグラムより、図7Bのクロマトグラムに示されたクロロマンデル酸の標準物質とクロロマンデロニトリルとが同時に一本のピークとして溶出されることが明白である。このピークに対する細胞溶解物の影響は非常に少ないことが明らかにされた;このピークに対して多大に影響を与える物質は、クロロマンデロニトリルに由来する物質であると推定され、これは、生産物の分解物、若しくはニトリル調製物中に含まれる夾雑物であると思われる。ピーク面積は、各々の実験を通じて一定であり、適切な対照を利用し生産物のピーク面積を差し引くことで十分に正確なピーク面積が得られた。生産物のピークを遅く溶出させるための様々なHPLC条件の検討を行った;しかしこれらの試みは成功しなかった。図7Cのクロマトグラムは、生産物によるピークの出現と基質によるピークの減少を示している。
クロロマンデル酸のキラル分析は殆ど問題なく行われた。(S)-エナンチオマーと同時に溶出される小さなピークの存在は幾らかの影響を示した(図7Dのクロマトグラムにおいて2.4 分に溶出されているピーク)。しかしこのピークは、ブランクコントロールを含む全ての試料で同等に観察され、クロロマンデル酸の有する紫外線吸収曲線とは異なることが示されたため問題とはされなかった。従って、各々の試料において、それは2.4 分に溶出されるピークより差し引かれた。(R)-エナンチオマーは、3 分に溶出された。
(S)-フェニル乳酸
フェニル乳酸の分析は、当初、フェニルグリシン及び2-クロロマンデル酸の項で述べられたものと同様の問題を抱えていた。しかしこの場合、非キラルHPLC分析における溶媒濃度の調整により酸性物質の保持時間が変化し、細胞溶解物のピークと共溶出されなくなった。この改良後、非キラル及びキラル分析の両方において何れの問題も認められなかった。生産物(1.9 分)及びシアノヒドリン基質(3.7 分)の典型的な非キラルクロマトグラムが図8Aに示されている。また、これらの酸性物質のキラルクロマトグラムが図8Bに示され、L-エナンチオマーが 2 分に、D-エナンチオマーが6分に溶出されている。
L-2-メチルフェニルグリシン
メチルフェニルグリシンの分析は問題なく行われたが、図 9A のクロマトグラムに示されたように、細胞溶解物によるピークと生産物によるピーク間でのベースラインにまで達する分離は得られなかった。この方法におけるアミノ酸標準物質は本実験の最終段階において提供されたため、分析法開発のための時間は最も短時間であった。図9Aに示されたクロマトグラムにおいて、このアミノ酸は0.7 分に、そしてアミノニトリルは5.0分に溶出された。生産物への変換を計算する上で、最初の二本のピークは十分な分離を示した。
この化合物のキラル分析は、図9Bのクロマトグラムに示されたように二種のエナンチオマー間の良好な分離を示した。L-エナンチオマーは 5 分に、D-エナンチオマーは8分に溶出されている。
L-tert-ロイシン
これらの実験における一連の生産物の中で、t-ロイシンの非キラル分析における細胞溶解物の影響が最も大きな問題を生じさせた。この問題は、このアミノ酸の有する低い分光学的特性に由来し、細胞溶解物と生産物とのピークの識別を困難にさせた。図10Aのクロマトグラムに示されたように、個々のエナンチオマー生産物の良好な分離がキラル分析により得られた。一次スクリーニングにおいて、幾つかの試料中にL-アミノ酸標準物質と同時に溶出される小さなピークが観察され(図10Bを参照)、これはアミノ酸であると思われた。しかし、更に分析法を改良し適切な対照を利用することにより、このピークは細胞溶解物に由来するものであることが証明された。
図 10Cに示されたように、アミノニトリルは、二本のt-ロイシンによるピークの間に溶出された;このクロマトグラムは、また、4.8分の細胞溶解物に由来するピークをも示している。ニトリルの紫外線吸収曲線は、アミノ酸の紫外線吸収曲線とは明確に異なっており、これにより酸性物質のピークは容易に識別された。
L-ヒドロキシノルロイシン [(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸]
(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸のキラル分析は確実且つ信頼性の高いものであった。これに反し、非キラル法には様々な問題があり、それらは、主に、ニトリルと酸性物質のピーク間での不十分な分離によるものである。本実験の後半に向け、活性確認法が開発され、首尾よく利用された。この方法が開発される以前は、殆どの場合、キラル法が利用されていた;反応を定量化するため、生産物の標準曲線が作成されていた。(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸の典型的なクロマトグラムが図11Aに示され、(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸が6分に溶出されている。アミノニトリルは、この方法によっては検出されなかった。
2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸の各々のエナンチオマーの分離が図11Bに示されている。そのL-エナンチオマーが、先ず、2分に溶出され、そして3分にD-エナンチオマーが溶出されている。図11Cに酵素反応の一例が示されている;僅かに懸念される唯一の問題は、L-エナンチオマーの溶出前に出現する負のピークである。しかし、それは、このエナンチオマーの溶出には顕著な影響を与えなかった;分析法の改良によってもこの負のピークは除けなかった。
4-メチル-D-ロイシン及び4-メチル-L-ロイシン
4-メチルロイシンの検出において、そのキラルHPLC法は、更に信頼性の高いものであることが示された。この方法の低い活性と低い感度の両方がこの化合物の非キラルHPLCによる検出を困難にしていた。図12Aに示されているように、このアミノ酸の25 mM標準物質は、約40 mAUの高さのピークを与える;これは芳香族化合物で検出されるピークの高さと比べ非常に低かった。図12BにキラルHPLC法により検出された酵素変換反応の一例が示されている;明白ではないが、2.7分に溶出される非常に低く狭い面積のピークが4-メチルロイシンであると思われた。このピークは、キラルHPLC 分析においてネガティブであった試料中では検出されなかった。
4-メチル-L-ロイシン及び4-メチル-D-ロイシンのキラル分析は問題なく行われた。そのL-エナンチオマーが5分に溶出され、そして7分にD-エナンチオマーが溶出された。しかし、フェニルグリシンの項目(i)で記述されたようなカラムの感受性により、これらの保持時間は若干変化した。図12C-12Dに示されているクロマトグラムにこれらのアミノ酸の分離が示されている;最初の試料は二種類のエナンチオマーを生産する酵素を、もう一方の試料は、L-エナンチオマーを優先的に加水分解し少量のD-アミノ酸を形成する酵素を示している。
(S)-シクロヘキシルマンデル酸
シクロヘキシルマンデル酸の標準物質、及びこれに対応するニトリルのクロマトグラムが図13A及び図13Bに各々示されている。この酸は、1.3分に、そしてシアノヒドリンは2.5分にそのピークが観察された。2.1分に溶出されているピークは、ケトン標準物質の溶出により示されたように、現段階ではシクロヘキシルフェニルケトンであると思われた。
実施例12:酵素ライブラリーを用いた生物触媒へのアプローチ:カルボン酸誘導体の鏡像選択的生産のためのニトリラーゼプラットフォームの開発
生物触媒過程は、従来の化学的手法によっては困難である変換に対して特異な利点を提供できる (Wong、C.-H.; Whitesides、G.M. Enzymes in Synthetic Organic Chemistry; Pergamon、New York、1994; Drauz、K.; Waldmann、H.、Roberts、S.M. Eds. Enzyme Catalysis in Organic Synthesis; VCH: Weinheim、Germany、2nd ed.、2002) 。ニトリラーゼ (EC 3.5.5.1) は、有機ニトリル系物質の対応するカルボン酸への直接的な加水分解的変換を促進する (Kobayashi、M.; Shimizu、S. FEMS Microbiol. Lett. 1994、120、217; Bunch、A.W. In Biotechnology; Rehm、H.-J.; Reed、G.; Puhler、A.; Stadler、P.、Eds.; Wiley-VCH: Weinheim、Germany、Vol. 8a、Chapter 6、pp 277-324; Wieser、M.; Nagasawa、T. In Stereoselective Biocatalysis; Patel、R.N.、Ed.; Marcel Dekker: New York、2000、Chapter 17、pp 461-486.) 。現在までに、15 種類以下の微生物由来ニトリラーゼが同定され報告されている(Harper、D.B. Int. J. Biochem. 1985、17、677; Levy-Schil、S.; Soubrier、F.; Crutz-Le Coq、A.M.; Faucher、D.; Crouzet、J.; Petre、D. Gene 1995、161、15; Yu、F. 1999、US Patent 5872000; Ress-Loschke、M.; Friedrich、T.; Hauer、B.; Mattes、R.; Engels、D. PCT Appl. WO 00/23577、April 2000.) 。幾つかのニトリラーゼがカルボン酸の単一エナンチオマー調製のために研究されているが、実行可能な合成的手段としてのニトリラーゼの開発までには至っていない。本報では、多くの様々な一連のニトリラーゼの発見について記載しており、このニトリラーゼライブラリーが、効率的、且つ有用なカルボン酸誘導体の鏡像選択的生産を触媒する酵素の同定に利用できることを立証している。
自然界に存在する酵素のうちの可能な限り幅広く、且つ多様なものを利用する試みにおいて、我々は、生物の地球上における様々な生育環境より採集した環境試料から直接抽出したDNA よりなる複数のゲノミックライブラリーを作製した(これらの方法の詳細は、以下を参照:Short、J.M. Nature Biotech. 1997、15、1322; Handelsman、J.; Rondon、M.J.; Brady、S.F.; Clardy、J.; Goodman、R.M. Chem. Biol. 1998、5、R245; Henne、A.; Daniel、R.; Schmitz、R.A.; Gottschalk、G. Appl. Environ. Microbiol. 1999、65、3901.)。我々は、培養が困難な生物由来のDNA の混合集団を用いたスクリーニングにより、新規の活性を同定するための様々な方法を確立している(Robertson、D.E.; Mathur、E.J.; Swanson、R.V.; Marrs、B.L.; Short、J.M. SIM News 1996、46、3; Short、J.M. US Patent 5,958,672、1999; Short J.M. US Patent 6,030,779、2000)。これらの手段を通じ、およそ200 種類の新規ニトリラーゼを発見し、これらの特性を同定している(これらの研究の簡明な説明は、以下に記載されている「材料と方法」の項目を参照のこと)。これらの全てのニトリラーゼは、配列上新規であり、この酵素群に特徴的な保存されたキャタリティックトリアッドGlu-Lys-Cys を有していることが示された(Pace、H.; Brenner、C. Genome Biology 2001、2,0001.1-0001.9.)。我々のライブラリー中の各々のニトリラーゼは、特定の生物触媒機能を同定するための評価法を迅速に行うため、過剰発現させ、凍結乾燥されたこれらの細胞溶解物を保存した。
初期の研究は、シアノヒドリン1の加水分解によるα-ヒドロキシ酸 2 の生成に対するニトリラーゼの効果に焦点が絞られた。シアノヒドリンは、塩基性条件下において、HCN の可逆的消失により、速やかにラセミ化されることが広く記載されている(Inagaki、M.; Hiratake、J.; Nishioka、T.; Oda、J.; J. Org. Chem 1992、57、5643. (b)van Eikeren、P. US Patent 5,241,087、1993.)。よって、酵素が1の片方のエナンチオマーのみを選択的に加水分解し、理論的に100 %の2を高いエナンチオマー純度で産生するような動的な速度論的変換(動的速度論分離)が可能である。
この反応の一つの重要な応用例は、マンデロニトリルからの(R)-マンデル酸の商業的生産である(Ress-Loschke、M.; Friedrich、T.; Hauer、B.; Mattes、R.; Engels、D. PCT Appl. WO 00/23577、April 2000; Yamamoto、K.; Oishi、K.; Fujimatsu、I.; Komatsu、K. Appl. Environ. Microbiol. 1991、57、3028; Endo、T.; Tamura、K. US Patent 5,296,373、March 1994.)。マンデル酸及びその誘導体は、多くの医薬、農薬品の生産における中間体、及び反応試薬として広範に利用されている(Coppola、G.M.; Schuster、H.F. Chiral α-Hydroxy Acids in Enantioselective Synthesis; Wiley-VCH: Weinheim、Germany: 1997.)。しかし、培養生物由来のいくつかの既知ニトリラーゼが、これらの類縁物質の効率的、且つ選択的な加水分解を行う上で有用かどうかは明白でない。
Figure 0004528872
マンデロニトリル(3a、Ar = フェニル)のマンデル酸への加水分解に対する活性及び鏡像選択性をニトリラーゼライブラリーを用いてスクリーニングした。予備的な結果は、27 種の酵素が90 % 以上のeeでマンデル酸を生産した。そのうちの一つの酵素、配列番号385、386を更に詳しく試験し、マンデロニトリルの加水分解に対して非常に高い活性を示すことが明らかとなった。
Figure 0004528872
25 mMの3a及び0.12 mg/mlの酵素を用いた、10 %(v/v)メタノールを含む0.1 Mリン酸緩衝液中の37℃、pH 8による標準条件下での反応において、10分以内に98 %eeの (R)-マンデル酸が定量的に産生された。その合成的利用価値を確認するため、1.0gの3a(50 mM)及び9 mgのニトリラーゼ(0.06 mg/ml ニトリラーゼ I) を用いた反応を行った;反応3 時間後に (R)-マンデル酸が高収率(0.93 g、86 %)、且つ選択的 (98 % ee) に回収された。(a)反応は、標準条件下において行った(本文参照)。完全な4への変換を行うための反応時間は1〜3 時間であった。項目8-9はpH 9において5 mMの基質濃度を用いて行った。(b)5分間の変換時間における特異的活性が測定され、その活性は、μmol mg-1 min-1 で示した。(c) TOF とは、回転率(turnover frequency)を表しmol生成物/mol触媒/秒で示した。(d)鏡像選択性は、キラルHPLC分析により決定した。ヒドロキシ酸が単離され、それらの絶対配置は全て(R)であると決定された。
次に、配列番号385及び386の基質範囲を試験した。表13に示されたように、この方法により芳香族及び複素環式類縁体(4)と同様に、様々な種類のマンデル酸誘導体が調製されるであろう。配列番号385及び386は、マンデロニトリル誘導体芳香環のオルト位、メタ位、及びパラ位に置換基を有する化合物を基許容し、4のタイプの化合物は高度に鏡像選択に生産された。1-ナフチル及び2-ナフチル基などのその他の更に大きな芳香環を有する化合物もまた、これらの酵素の活性部位に適合し、高度に選択に4のタイプの酸性化合物が生産される(表13、項目8-9)。最後に、この方法によりマンデル酸の3-ピリジル及び3-チエニル類縁体が容易に得られた。本法はこのように様々なマンデル酸誘導体、及び4 のような複素環式類縁体を産生するニトリラーゼに関する最初の報告である。立体障害の大きいオルト置換体、及び1-ナフチル誘導体に対する高い活性は特に注目に値する。
Figure 0004528872
我々は、次に、アリール乳酸誘導体6のそれに対応するシアノヒドリン5の加水分解による調製について試験した。フェニル乳酸及びその誘導体は、多くの生理活性物質生産における幅広いビルディングブロックとして利用できる(Coppola、G.M.; Schuster、H.F. Chiral α-Hydroxy Acids in Enantioselective Synthesis; Wiley-VCH: Weinheim、Germany: 1997)。親化合物シアノヒドリン 5a(Ar = フェニル基)に対する我々のニトリラーゼライブラリーのスクリーニングにより、6aを高いeeで生産するいくつかの酵素を発見した。そのうちの一つの酵素、配列番号 103、104の特性を更に調べた。配列番号 103、104で示される酵素は最適化の後、非常に高度な鏡像選択性(98 % ee)を示し、6 時間の反応時間において基質の完全な変換(50 mM)による(S)-フェニル乳酸(6a)の生産を行うことができた。今までに報告されている化合物5の6への生物触媒変換において最高の鏡像選択性は、Pseudomonas 株を利用した全細胞系変換による75 % eeである (Hashimoto、Y.; Kobayashi、E.; Endo、T.; Nishiyama、M.; Horinouchi、S. Biosci. Biotech. Biochem. 1996、60、1279)。
表7. ニトリラーゼ IIにより触媒されるアリール乳酸誘導体、及び6の類縁体の生産a
Figure 0004528872
(a) 表 13 に示される反応条件を使用した(0.016 mg/ml ニトリラーゼを除く)。化合物6への完全変換は、6時間以内に観察された。(b)-(d):表 13 を参照。
キラルHPLC法による溶出時間の比較に基づき、フェニル乳酸の絶対配置(S)は 、化合物2-11として示された化合物の絶対配置も(S)であると決定された。
オルト及びメタ置換体は、ニトリラーゼ IIによく寛容され、オルト置換型誘導体は、驚くべきことに、親基質5aに比べ非常に速い速度で変換された。2-ピリジル、3-ピリジル、2-チエニル及び3-チエニル乳酸のような新規の複素環式誘導体(化合物 8-11)が高い変換率で、高度に鏡像選択的に得られた。予期せぬことに、パラ置換体は、これらの反応速度を大きく低下させ、完全に変換されるまでに二週間かかった。
我々が調べた最後の変換は、非常に有用なプロキラル基質、3-ヒドロキシグルタリルニトリル(7)のヒドロキシ酸(R)-8への脱対称化であり (Johnson、F.; Panella、J.P.; Carlson、A.A. J. Org. Chem. 1962、27、2241)、(R)-8は、 (R)-9へとエステル化された際、コレステロール低下薬LIPITORTMの工業的生産における中間体となる。この工程において酵素を利用する試みが以前報告されたが成功せず、8は低いエナンチオマー純度 (最高でも 22 % ee)で生産され、かつ、目的とされない(S)-配置であった(Crosby、J.A.; Parratt、J.S.; Turner、N.J. Tetrahedron: Asymmetry 1992、3、1547; Beard、T.; Cohen、M.A.; Parratt、J.S.; Turner、N.J. Tetrahedron: Asymmetry 1993、4、1085; Kakeya、H.; Sakai、N.; Sano、A.; Yokoyama、M.; Sugai、T.; Ohta、H. Chem. Lett. 1991、1823)。
Figure 0004528872
ニトリラーゼライブラリーをスクリーニングし、目的の生産物である(R)-8を高い変換率(>95 %)で、90 %を超えるeeで生産する酵素が発見、単離された。この方法は、(R)-特異的ニトリラーゼのうちの一つの酵素を使用し、1.0 gの規模(240 mM の化合物 7、30 mgの酵素、22℃ 、pH 7)で行われ、22時間後に95 %のeeを示す(R)-8が98 %の収率で回収された。興味深いことに、同様のスクリーニング系によりもう一方のエナンチオマー(S)-8を90〜98 % eeで生産するニトリラーゼも同定された。このように、様々な生物資源の広範なスクリーニングにより、中間体8のいずれかのエナンチオマーを高度に鏡像選択的に認識する酵素が発見できた。(R)-8を生産する最初の酵素が発見されたことは、多くの様々なニトリラーゼを含むライブラリーをスクリーニングすることの利点を強調している。
未培養DNAより作製された環境ゲノムライブラリーを調べることにより、我々は多くの一連の新規ニトリラーゼを発見した。この研究により4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸の何れか一方のエナンチオマーと同様に、マンデル酸及びアリル乳酸誘導体を高い変換率(95 % 以上)及びeeで生産する特異的なニトリラーゼが示された。
工程手順及び分析データ
ヒドロキシグルタリルニトリルは、TCI Americaより購入し、そのまま利用した。アリール乳酸標準物質を調製するためのアミノ酸は、PepTech(Cambridge、MA)より購入した。3-ヒドロキシ-4-シアノ酪酸は Gateway Chemical Technology(St. Louis、MO)より入手した。(R)-及び (S)-マンデル酸、および、(R)-及び (S)-フェニル乳酸標準物質の全ては、Sigma Aldrichより購入した。その他全ての試薬は、Sigma Aldrichより入手し、精製せずに利用した。シリカゲル(70-230 メッシュ、60Å)は、Aldrichより購入し、クロマトグラフィーによる精製工程で利用された。1H NMR及び13C NMRは、全て、BrukerモデルAM-500により室温で測定され、1H NMRでは500 MHz、13C NMRでは125 MHzの分解能が利用された。質量分析は、Perkin-Elmer Sciex API-4000 TURBOIONTMスプレー LC/MS/MSシステムを利用したフローインジェクション分析により行われた。LC 系における流動相には、0.05 % 酢酸及びメタノールが利用され、LC-10Advpポンプ(島津製作所)により展開された。試料の注入には、Valco 注入バルブが利用された。HPLC分析は、Agilent 1100 HPLC システムが利用され、カラムにはAstec 社のChirobiotic R カラム(100 x 4.6 mm、カタログ番号 13022、若しくは 150 x 4.6 mm、カタログ番号 13023)又はDaicel社のChiralcel OD カラム(50 x 4.6 mm、カタログ番号14022)が使用され、DAD検出器は、210、220、230、及び 250 nm にセットされた。比旋光度測定には、Perkin Elmerモデル 341旋光計が使用され、長さ100 mmの光路長を有するセルを用い、ナトリウムランプによる室温での589 nmにおける旋光度が測定された。比旋光度測定における濃度は、溶媒100 mlあたりのグラム数で与えられる。
微生物学的手法は、出版されているプロトコールに従って行った(Sambrook、J. Fritsch、EF、Maniatis、T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed.)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview NY)。グリコール酸生産物は、単離され、立体配置が明確にされている化合物の文献上の旋光度値との比較により、我々の知る限り単一のエナンチオマーとして知られる(-)-3-ピリジルグリコール酸以外の化合物の絶対配置は全て(R)であると決定された(マンデル酸、2-クロロマンデル酸、2-メチルマンデル酸、3-クロロマンデル酸、3-ブロモマンデル酸及び4-フルオロマンデル酸に関しては Hoover、J.R. E.; Dunn、G. L.; Jakas、D.R.; Lam、L.L.; Taggart、J. J.; Guarini、J.R.; Phillips、L. J. Med. Chem. 1974、17(1)、34-41; 2-ブロモマンデル酸に関しては Collet、A.; Jacques、J.; Bull. Soc. Chem. Fr. 1973、12、3330-3331; 1- 、及び2-ナフチルグリコール酸に関しては Takahashi、I; Y. Aoyagi、I. Nakamura、Kitagawa、A.、 Matsumoto、K.、Kitajima、H. Isa、 K. Odashima、K. Koga、K. Heterocycles 1999、51(6)、1371-88; 3-チエニルグリコール酸に関してはGronowitz、S. Ark. Kemi、1957、11、519-525 を参照)。
アリール乳酸生産物については、フェニル乳酸の絶対配置は、文献中に報告されている旋光度値との比較により(S)であることが確定され、その他全てのフェニル乳酸系生産物の絶対配置はキラルHPLC における溶出順序に基づいて予測した。3-ヒドロキシ-4-シアノ-ブタン酸の絶対配置はこの化合物を(R)-(-)-メチル(3-O-[ベンゾイル]-4-シアノ)-ブタン酸へと誘導体化し、その旋光度値を絶対配置が決定されている化合物の旋光度値と比較することにより決定された(3. Beard、T. Cohen、M. A. Parratt、J.S. Turner、N. J. Tetrahedron:Asymm. 4(6)、1993、1085-1104)。
ニトリラーゼの発見及び特性決定法
1. ニトリラーゼの選別
スクリーニング用宿主株 Escherichia coli、SEL700をニトリル基質に対するニトリラーゼの選別用に最適化した。このスクリーニングにおいてライブラリーを完全に網羅するために、スクリーニング用宿主SEL700を10 mM硫酸マグネシウム 溶液中にAbs600nm = 1で含む細胞懸濁液を、カナマイシン耐性遺伝子を含むDNAライブラリーにより45分間、37℃でインフェクションした。カナマイシン耐性を示す感染細胞をカナマイシンLB プレート上に播き、30℃で一夜培養した。インフェクション効率を決定するためのタイタープレートも調製した。翌日、回収された細胞は洗浄後、10 mM硫酸マグネシウム溶液中に懸濁した。形質転換されたクローンは、10 mMニトリル基質を含むM9培地 (窒素源を含まない) 中に植菌された。M9培地は 1X M9塩類(塩化アンモニウムを除く)、0.1 mM 塩化カルシウム、1 mM硫酸マグネシウム、0.2 %グルコース、及び約10 mMの選別用ニトリル基質を含んでいる。この選別用培養物を、30℃において 200 rpmの振とう数で最高5週間培養した。ニトリラーゼ陽性菌は、ニトリル基質を加水分解する能力を有するため、その生育により同定される。選別用培地上で生育した陽性クローンを単離し、そのコロニーの二次培養を同一の制限培地中で行った。ニトリラーゼ遺伝子の発見、及びその遺伝子の新規性を確認するために、ここで生育した全ての陽性菌よりDNAを単離し、それらの配列を決定した。
2. ニトリラーゼバイオパンニング
伝統的なフィルターリフトハイブリダイゼーションによるスクリーニング法では約106から107種類よりなるライブラリーしかスクリーニングできない。一つのライブラリーをスクリーニングするために、約5,000のフィルターリフトが必要となるであろう。よって、108種類までの環境ライブラリーを迅速にスクリーニングするために、配列に基づく超ハイスループットスクリーニングのための溶液法、及びその他のバイオパンニング法が開発されている。溶液法において、複数のクローンライブラリーより単離されたDNAがハイブリダイゼーションを促進する条件下で、タグを有する目的の分子と混合する。タグを有するクローンおよびハイブリダイズしたDNAを溶液中より分離し、このプローブと配列同一性を持たないクローンを除くために、特定のストリンジェンシーで洗浄する。ハイブリダイズされたDNAを溶出および回収する。目的のクローンは、配列決定し、目的の酵素活性を得るためにクローニングする。この方法により目的の配列が1,000倍まで濃縮されることが立証されている。
3. ハイスループットニトリラーゼ活性測定法
活性測定は 25 mM(〜3 mg/ml)の基質、0.1 mg/mlのニトリラーゼを含む反応溶液中で行った。反応溶液は、0.1 Mリン酸ナトリウム緩衝液中に0〜10 % (v/v)のメタノールを含み、その反応はpH 7から9において37℃又は22℃で行った。特に記述されない限り、変換反応は5分間行い、その特異的活性をユニットμmol mg-1 min-1 で表した。エナンチオマー過剰量(ee)及び変換率は、ハイスループットHPLC分析法により酵素による生産物の濃度と酸性物質ラセミ体の標準曲線との比較により決定した。生産物の分析条件は、以下の表の通りである。
分析法
Figure 0004528872

Figure 0004528872
シアノヒドリン(基質)合成
マンデロニトリル合成法 A:アセトンシアノヒドリン(685 μl、7.5 mmol)、アルデヒド (5 mmol)及び触媒 DIEA (13 μl、0.075 mmol)を0℃ で混合した。反応液を氷上で45分間攪拌した。生産物を得る方向に平衡を傾けるため、アセトンを真空下で除去した。次に、粗反応物を硫酸(3 μl)で酸性化し、-20℃で保存した。反応の進行状態を確認するためにTLCを使用した(3:1 ヘキサン/酢酸エチル)。
マンデロニトリル合成法 B:シアン化カリウム (358 mg、5.5 mmol) のメタノール溶液 (1 ml) に、0℃ においてアルデヒド(5 mmol)及び酢酸(315 μl、5.5 mmol)を加えた。氷上で1時間攪拌後、メタノールを真空下で除去し、その粗混合物を酢酸エチル及び水を用いて分画分液した。その有機溶媒相を回収し、真空下で濃縮した。反応の進行状態を確認するためにTLCを使用した(3:1ヘキサン/酢酸エチル)。
アリルアセトアルデヒドシアノヒドリン:窒素ガス下において、二首型の 500 ml丸底フラスコ中で、50 mlの無水テトラヒドロフラン(THF)にアリール乳酸(50 mmol)を溶解させた。この溶液を0℃ に冷却し、激しく攪拌しながら 105 mmol のヘキシルクロロボラン-ジメチルスルフィド(2.55 M 塩化メチレン溶液)をゆっくりと加えた。この反応は一夜行った。反応を止めるため、及び反応液を酸性にするため、過剰量の酢酸(10 ml)を加え、その後10 mlの水を添加した。室温で1時間攪拌後、溶媒を真空下で除き、その残渣は100 mlの水に溶解後、200 mlの酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層は、硫酸ナトリウムで乾燥後濾過し、真空下で濃縮した。次に、その残渣に 60 mmol のシアン化カリウム、及び 100 ml のメタノールを添加した。この溶液を、0℃に冷却し、60 mmolの酢酸を添加した。全てのシアン化カリウムが溶解後1〜2 時間、この溶液を攪拌した。溶媒を真空下で除去し、その残渣を 100 mlの水に溶解後、200 mlの酢酸エチルを添加した。その水層を、再度、酢酸エチルで抽出した。まとめた酢酸エチル層を飽和塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後濾過し、真空下で濃縮することにより粗シアノヒドリン生産物を得た。このシアノヒドリンは、必要ならば、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。
2-クロロマンデロニトリル: 1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ7.69 (m、1H)、7.41 (m、1H)、7.36 (m、2H)、5.84 (s、1H)、3.07 (br、1H). 13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 132.89、132.73、131.22、130.19、128.48、127.84、118.24、60.87. C8H6ClNOの分子量の計算値は、167.01 であり、実測値は、167.9 (LC-MS +)であった。
2-ブロモマンデロニトリル:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ7.72 (d、1H、J= 6.58)、7.62 (d、1H、J= 8.35)、7.43 (t、1H、J= 8.42)、7.30 (t、1H、J= 7.00)、5.85 (s、1H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ134.550、133.584、131.564、128.819、128.535、122.565、118.153、63.379。
2-メチルマンデロニトリル:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ: 7.60 (d、1H、J = 7.4)、7.23-7.35 (m、3H)、5.66 (s、1H)、2.44 (s、3H)。13C NMR (CDCl3、298 K、125 MHz) δ: 136.425、133.415、131.450、130.147、127.204、126.894、118.952、18.916。C9H9NO の分子量の計算値は、147.07 であり、実測値は、147.2 (ESI +)であった。
3-クロロマンデロニトリル:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ7.55 (s、1H)、7.43-7.37 (m、3H)、5.54 (s、1H). 13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ137.183、135.480、130.718、130.303、127.047、124.891、118.395、63.156。C8H6ClNO の分子量の計算値は、167.01であり、実測値は、167.9 (LC-MS +)であった。
3-ブロモマンデロニトリル:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ7.69 (s、1H)、7.56 (d、J= 6.2 Hz、1H)、7.45 (d、J= 5.5Hz、1H)、7.32 (t、J= 6.4. Hz、1H)、 5.53 (s、1H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz)δ 137.376、133.201、130.934、129.208,125.359、123.380、118.458、63.006。C8H6BrNO の分子量の計算値は、212.0であり、実測値は、211.9 (LC-MS +)であった。
4-フルオロマンデロニトリル:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 5.54 (s、1H)、7.13 (m、2H)、7.51-7.53 (m、2H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ63.02、116.44、118.97、128.90、131.54、132.51、162.575。
4-クロロマンデロニトリル:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ7.47 (d、J= 7.0 Hz 、2H)、7.42 (d、J= 7.0 Hz 、2H)、5.53 (s 、1H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ136.209、133.845、129.647、128.232、118.630、63.154。C8H6ClNO の分子量の計算値は、167.01であり、実測値は、167.9 (LC-MS +)であった。
1-ナフチルシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ8.14 (d、1H、J = 8.5)、7.92 (t、2H、J = 6.1)、7.82 (d、1H、J = 5.7)、7.62 (t、1H、J = 6.1)、7.56 (t、1H、J = 6.1)、7.50 (t、1H、J = 6.1)、6.18 (s、1H); 13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ137.0、135.7、134.2、131.1、129.2、127.5、126.7、125.8、125.3、123.1、119.0、62.4;C12H9O の分子量の計算値は、183.21であり、実測値は、183.2 (ESI +)であった。
2-ナフチルシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 8.03 (s、1H)、7.92 (d、1H、J = 8.6)、7.87-7.91 (m、2H)、7.61 (dd、1H、J = 6.7、1.2)、7.55-7.60 (m、2H)、5.72 (s、1H);13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 134.9、133.9、132.7、129.6、128.6、128.0、127.4、127.2、126.4、123.9、118.9、64.1;C12H9Oの分子量の計算値は、183.21であり、実測値は、183.2 (ESI +)であった。
3-ピリジルシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 8.62 (d、1H、J = 1.8)、8.57 (d、1H、J = 5.1)、7.94 (d、1H、J = 8.1)、7.41 (dd、1H、J = 8.1、5.1)、5.64 (s、1H);13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 149.921、147.355、135.412、133.044、124.443、118.980、61.085。C7H6N2Oの分子量の計算値は、134.05であり、実測値は、135.2 (ESI +)であった。
3-チエニルシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.45 (d、J = 2.2 Hz 1H)、7.56 (dd、J = 6.2 Hz、1H)、7.45 (d、J= 5.5Hz、1H)、7.32 (t、J= 6.4. Hz、1H)、 5.53 (s、1H). 13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 137.376、133.201、130.934、129.208,125.359、123.380、118.458、63.006。C6H5NOSの分子量の計算値は、139.01であり、実測値は、139.9 (LC-MS +)であった。
フェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.34 (m、5H)、4.64 (t、J = 6.75 Hz、1H)、3.11 (d、J = 6.75 Hz、2H)、2.75 (br、1H). 13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 133.96、129.91、129.16、128.08、119.47、62.33、41.55。
2-メチルフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.11 (m、4H)、4.61 (t、J = 6.62 Hz、1H)、3.12 (d、J = 6.62 Hz、2H)、2.14(s、3H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 136.94、136.47、132.57、130.48、127.61、125.75、120.11、62.95、44.73。C10H11NOの分子量の計算値は、161.08であり、実測値は、162.2 (M+Na、ESI +)であった。
2-ブロモフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.20 (m、4H)、4.78 (t、J = 6.5 Hz、1H)、3.26 (d、J = 6.5 Hz、2H)。13C NMR (CDCl3、100 MHz) δ 133.93、132.82、131.72、129.21、128.12、124.86、119.41、63.02、44.89。
2-フルオロフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.2 (m、2H)、7.02 (m、2H)、4.50 (dd、J = 4.62 Hz、J = 7.88 Hz、1H)、3.23(dd、J = 4.62 Hz、1 J = 14.12 Hz、1H)、2.97 (dd、7.88 Hz、14.12 Hz、1H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 132.18、131.52、129.66、129.03、128.07、124.05、115.8、63.02、44.79。C9H8FNOの分子量の計算値は、165.06であり、実測値は、164.2 (ESI +)であった。
3-メチルフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.18 (m、1H)、7.02 (m、3H)、4.54 (dd、J = 4.62 Hz、J = 8 Hz、1H)、3.06 (dd、J = 4.62 Hz、J = 14.38 Hz、1H)、2.83(dd、J = 8 Hz、J = 14.38 Hz、1H)、2.36 (s、3H) 13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 176.25、138.18、136.0、130.97、128.93、127.68、126.58、76.42、34.29、37.69。C10H12O3 の分子量の計算値は、180.08であり、実測値は、180.0 (ESI +)であった。
3-フルオロフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.18 (m、2H)、6.95 (m、2H)、4.44 (dd、1H)、3.11(dd、1H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 130.40、125.53、124.85、116.92、114.87、114.50、119.77、61.97、41.27。
1-ナフチルアセトアルデヒドシアノヒドリン: 1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 8.07(m、1H)、7.86(m、1H)、7.74(m、1H)、7.41(m、4H),4.20 (t、J = 7 Hz、1H)、3.33 (d、J = 6.8 Hz、2H) 13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 177.7、140.31、129.74、129.24、128.92、128.26、127.84、125.63、124.53、124.05、123.42、70.58、38.0。C13H11NOの分子量の計算値は、197.08であり、実測値は、197.1 (ESI +)であった。
2-ピリジルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 8.50 (m、1H)、7.85 (m、1H)、7.48 (m、1H)、7.34 (m、1H)、4.42 (m、1H)、3.19 (dd、J = 3.5 Hz、J = 13.7 Hz、2H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 157.44、145.69、140.24、126.96、126.16、122.99、60.30、42.60。C8H8N2Oの分子量の計算値は、148.06であり、実測値は、149.1 (ESI +)であった。
3-ピリジルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 8.62 (d、1H、J = 1.8)、8.57 (d、1H、J = 5.1)、7.94 (d、1H、J = 8.1)、7.41 (dd、1H、J = 8.1、5.1)、5.64 (s、1H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ: 149.921、147.355、135.412、133.044、124.443、118.980、61.085。C7H6N2Oの分子量の計算値は、134.05であり、実測値は、135.2 (ESI +)であった。
2-チエニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.1 (m、1H)、6.9 (m、1H)、6.8 (m、1H)、4.11 (t、J = 7.0Hz、1H)、2.86 (d、J = 7.0Hz、2H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 127.68、127.41、125.58、124.60、118.70、63.25、44.84。
3-チエニルアセトアルデヒドシアノヒドリン:1H NMR (CDCl3、500 MHz) δ 7.09 (m、3H)、4.60 (t、J = 6.25Hz、1H)、3.12 (d、J = 6.25Hz、2H)。13C NMR (CDCl3、125 MHz) δ 129.05、127.16、125.27、122.65、119.87、61.58、44.90。
マンデル酸ラセミ体標準物質の対応するシアノヒドリンからの調製:(Stoughton、R.W. J. Am. Chem. Soc. 1941、63、2376):2-ブロモマンデロニトリル(230 mg、1.08 mmol)を1 mlの濃塩酸に溶かし、室温で18 時間、更に70℃で24時間攪拌した。冷却後、この反応混合物を、2 mlのジエチルエーテルで4回抽出さした。有機溶媒層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、真空下で濃縮した。2-ブロモマンデル酸が無色の粉末として単離された(180 mg、0.78 mmol、収率 70 %)。
アリール乳酸ラセミ体標準物質の対応するアミノ酸からの調製 : フェニルアラニン(10 mmol、1.65 g)を、窒素ガス化における室温で、30 mlの2N硫酸に溶解させた。激しく攪拌されたこの反応液に、窒素ガス化における室温で、亜硝酸ナトリウム(1.4 gの 3 ml水溶液、2等量)を3〜4 時間かけてゆっくりと添加した。この反応混合液を、一夜攪拌し、フェニル乳酸生産物をジエチルエーテルにより抽出した(30 mlで3回)。エーテル層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、真空下で濃縮した(Kenji、I.; Susumu、A.; Masaru、M.; Yasuyoshi、U.; Koki、Y.; Koichi、K. Patent Number、WO0155074、公開日: 2001-08-02)。
α-ヒドロキシ酸の一般的な酵素的調製法:
(R)-(-)-マンデル酸 : 10 % (v/v) のメタノールを含む150 mlの 100 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 8)にマンデロニトリル(1.005 g、7.56 mmol) を溶解し、37 ℃において窒素ガス置換を行った。この溶液に9 mgのニトリラーゼ 1(ニトリラーゼ含量で標準化)を添加した。反応は窒素ガス下で回転式シェーカーを用いて行った。反応の進行状態はこの反応液の一部を用いたHPLC 分析により確認した。3時間の反応後、反応混合液を1N塩酸によりpH 2に調整し、ジエチルエーテルで抽出した(50 mlで4回)。有機溶媒層を真空下で濃縮し、10 % の重炭酸ナトリウム溶液となるように調製した。この溶液はジエチルエーテル(50 ml で 3 回)で洗浄し、1N塩酸によりpH 2に調整した後、ジエチルエーテル(50 mlで 3回)で抽出した。分取された有機溶媒層を飽和塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後濾過し、真空下で濃縮した。(R)-(-)-マンデル酸が無色の粉末として単離された(933 mg、6.22 mmol、収率 86 %)。各種の物理化学的測定の結果は、以下のとおりであった:1H NMR (DMSO-d6、 500 MHz) δ 12.6 (br、s、1H)、7.41 (m、2H)、7.34 (m、2H)、7.28 (m、1H)、5.015 (s、1H)。13C NMR DMSO-d6、125 MHz) δ 174.083、140.216、128.113、127.628、126.628、72.359。C8H8O3の分子量の計算値は、150.07であり、実測値は、150.9 (ESI +)であった;ee = 98 % [HPLC]。[α]20 598 = -134.6 (c = 0.5、メタノール)。
(-)-2-クロロマンデル酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.75 (m、1H)、7.44 (m、1H)、7.34 (m、2H)、5.34 (s、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 173.070、137.985、132.105、129.399、129.158、128.705、127.235。C8H7ClO3の分子量の計算値は、186.0であり、実測値は、185.0 (LC-MS -)であった。ee = 96 % [HPLC]。収率は92 %。[α]20 598 = -137.6 (c= 0.5、エタノール)。
(-)-2-ブロモマンデル酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.60 (d、J = 7.93、1H)、7.48 (m、1H)、7.40 (m、1H)、7.25 (m、1H)、 5.30 (s、1H). 13C NMR DMSO-d6、 125 MHz) δ 172.994、139.61、132.355、129.652、128.753、127.752、122.681、71.644. MS calc'd for [C8H7BrO3の分子量の計算値は、230.0であり、実測値は、230.9であった。ee = 96 % [HPLC]。収率は92 %。 [α]20 598 = -116.4 (c= 0.5、エタノール)。
(-)-2-メチルマンデル酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 11.78 (bs、1H)、7.38 (m、1H)、7.16-7.38 (m、3H)、5.18 (s、1H)、2.35 (s、3H). 13C NMR DMSO-d6、125 MHz) δ 174.229、138.623、135.649、130.129、127.491、126.990、125.698、125.698、69.733、18.899。C9H10O3の分子量の計算値は、166.1であり、実測値は、165.2 であった。ee = 91 % [HPLC]。収率は86 %。 [α]20 598 = -164.4 (c = 0.5、エタノール)。
(-)-3-クロロマンデル酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.46 (s、1H)、7.36 (m、3H)、5.07 (s、1H). 13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 173.554、142.685、132.813、130.069、127.568、126.355、125.289、71.659。C8H7ClO3の分子量の計算値は 186.0であり、実測値は、185.34 (MALDI TOF -)であった。 ee = 98 % [HPLC]。収率は70 %。 [α]20 598 = -120.4 8 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-3-ブロモマンデル酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.60 (s、1H )、7.49 (m、1H)、7.42 (m、 1H)、7.31 (m、1H)、5.06 (s、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 173.551、142.917、130.468、130.379、129.237、125.687、121.404、71.605。C8H7BrO3の分子量の計算値は、229.98であり、実測値は、229.1 (LC-MS)であった。ee = 98 % [HPLC]。収率は82 %。[α]20 598 = -84.8 (c= 0.5、エタノール)。
(-)-4-フルオロマンデル酸:1H NMR (DMSO、298K、500MHz) δ 12.65 (s、1H)、7.44 (m、2H)、7.17 (m、2H)、5.91 (s、1H)、5.03 (s、1H) 13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 173.93、162.57、136.47、128.61、128.55、114.96、114.80、71.61. MS calc'd for [C8H7FO3の分子量の計算値は、170.0であり、実測値は、168.8 であった。ee = 99 % [HPLC]。収率は81 %。 [α]20 598 = -152.8 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-1-ナフチルグリコール酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 8.28-8.26 (m、 1H)、7.87-7.93 (m、 2H)、 7.47-7.58 (m、 4H)、5.66 (s、1H). 13C NMR DMSO-d6、 125 MHz) δ 174.288、136.284、133.423、130.654、128.353、128.192、125.926、125.694、125.613、125.266、124.558、70.940。C12H10O3の分子量の計算値は、202.21であり、実測値は、201.37 (MALDI TOF -) であった。ee = 95 % [HPLC]。収率は90 %。 [α]20 598 = -115.4 (c = 0.5、エタノール)。
(-)-2-ナフチルグリコール酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 12.6 (bm、1H)、7.88-7.93 (m、4H)、7.48-7.56 (m、3H)、5.20 (s、1H)。13C NMR DMSO-d6、125 MHz) δ 174.005,137.760,132.644,132.498、127.811、127.658、127.506、127.209、125.993、125.334、124.761、 72.472。C12H10O3の分子量の計算値は、202.21であり、実測値は、201.37 (MALDI TOF)であった。ee = 98 % [HPLC]。収率は68 %。[α]20 598 = -115.4 (c = 0.5、エタノール)。
(-)-3-ピリジルグリコール酸:この反応は、100 mM蟻酸アンモニウム緩衝液(pH 8)中で行われた。生産物を単離するため、この反応混合物を10,000 MWCOのメンブレンで濾過し、酵素を除き、真空下で濃縮した。1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 8.56 (s、1H)、8.36 (d、J = 4.57 Hz、1H)、8.25 (s、1H)、7.71 (m、1H)、7.25 (dd、J = 4.98、4.80 Hz 1H)、5.45 (s、1H)。13C NMR DMSO-d6、125 MHz) δ 165.911、147.862、147.251、139.118、133.381、122.746、71.508。C7H7NO3の分子量の計算値は、153.04であり、実測値は、154.0 ((MALDI TOF) であった。ee = 92 % [HPLC]、収率は84 %、[α]20 598 = -65.2 (c = 0.5、水)。
(-)-3-チエニルグリコール酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.48 (m、1H)、7.45 (d、J= 2.81、1H,)、7.10 (m、1H)、5.09 (s、1H)、3.33 (s、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 173.704、141.109、126.446、126.042、122.247、68.915。C6H6O3Sの分子量の計算値は、158.00であり、実測値は、157.224 (MALDI TOF)であった。ee = 95 % [HPLC]。収率は70 %。[α]20 598 = -123.2 8 (c= 0.5、メタノール)。
(S)-(-)-3-フェニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.28(m、5H)、4.17(dd、J = 4.5 Hz、J = 8.3 Hz、1H)、2.98(dd、J = 4.5 Hz、J = 13.7 Hz、1H)、2.79 (dd、J = 8.3 Hz、J = 13.7 Hz、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 178.16、133.4、129.27、128.6、127.3、70.45、44.12。ee = 97 % [HPLC]、収率は84 %。 [α]20 598 = -17.8 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-2-メチルフェニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.16 (m、4H)、4.47 (dd、J = 3.9 Hz、J = 8.8 Hz、1H)、3.25(dd、J = 3.9Hz、14.3 Hz、1H)、2.94 (dd、J = 8.8 Hz、J = 14.3Hz)、2.35(s、3H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 178.61、137.08、134.74、130.80、130.25、127.44、126.34、70.93、37.67、19.79。C10H12O3の分子量の計算値は、180.08であり、実測値は、180.0 (ESI +) であった。収率は86 %。ee = 95 % [HPLC]。[α]20 598 = -13.2 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-2-ブロモフェニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.28 (m、4H)、4.60(dd、J = 4.0 Hz、J = 9.1 Hz、1H)、3.45(dd、J = 4.0 Hz、J = 14.1 Hz、1H)、3.04(dd、J = 8.0 Hz、J = 14.1 Hz、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 178.70、136.05、133.21、132.10、128.99、127.72、125.0、70.04、40.76。C9H9BrO3の分子量の計算値は、243.9であり、実測値は、243.3 (ESI +)であった。収率は91 % 。ee = 93 % [HPLC]、[α] 20 598 = -17.6 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-2-フルオロフェニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.10 (m、4H)、4.64 (t、J = 6.8 Hz、1H)、3.11(d、J = 6.8 Hz、2H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 132.18、131.52、129.66、129.03、128.07、124.05、115.8、63.02、44.79。C9H8FNOの分子量の計算値は、165.06であり、実測値は、164.2 (ESI +)であった。収率は91 %。ee = 88 % [HPLC]。[α]20 598 = -14.0 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-3-メチルフェニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.18 (m、1H)、7.02 (m、3H)、4.54 (dd、J = 4.6 Hz、J = 8.0 Hz、1H)、3.06(dd、J = 4.54 Hz、J = 14.4 Hz、1H)、2.83(dd、J = 8.0 Hz、J = 14.4 Hz、1H)、2.36 (s、3H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 175.88、163.80、130.33、130.09、125.7、116.68、113.75、71.31、34.28。C10H11NOの分子量の計算値は、161.08であり、実測値は、162.2 (ESI +) であった。収率は80 %。ee = 98 % [HPLC]。[α]20 598 = -2.4 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-3-フルオロフェニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.2 (m、1H)、6.9 (m、3H)、4.56 (dd、4.5 Hz、J = 7.9 Hz、1H)、3.09(dd、J = 4.5 Hz、J = 14.1 Hz、1H)、2.86 (dd、J = 7.9 Hz、J = 14.1 Hz、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 175.88、163.80、130.33、130.09、125.7、116.68、113.75、71.31、34.28。C9H9O3Fの分子量の計算値は、184.05であり、実測値は、184.1 (ESI +)であった。収率は82 %。ee = 97 % [HPLC]。[α]20 598 = -5.2 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-1-ナフチル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 8.57 (m、1H)、8.21(m、1H)、8.08 (m、1H)、7.61 (m、4H)、4.64 (dd、3.5 Hz、8.5 Hz、1H)、3.84 (dd、J = 3.5 Hz、J = 14.5 Hz、1H)、3.38 (dd、J = 8.5 Hz、J = 14.5 Hz、1H) 13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 177.7、140.31、129.74、129.24、128.92、128.26、127.84、125.63、124.53、124.05、123.42、70.58、38.0. C13H11NOの分子量の計算値は、197.08であり、実測値は、197.1(ESI +)であった。収率は87 %。ee = 94 % [HPLC]。[α]20 598 = -16.2 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-2-ピリジル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 8.49 (m、1H)、7.62 (m、1H)、7.21 (m、2H)、4.50 (t、J = 5.0 Hz、1H)、3.01 (d、J = 5.0 Hz、2H)。13C NMR (DMSO、298K、125 MHz) δ 178.8、159.79、148.84、136.89、124.35、121.75、71.14、44.09。C8H9NO3の分子量の計算値は、167.06であり、実測値は、167.0 (ESI +)であった。収率は62 %。ee = 94 % [HPLC]、[α]20 598 = -3.6 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-3-ピリジル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 8.43(m、2H)、7.62(m、1H)、7.28(m、1H)、4.57(t、5.37Hz、1H)、 2.85(d、5.37Hz、2H)。13C NMR (DMSO、298K、125 MHz) δ 176.6、150.03、147.12、136.41、129.45、123.26、61.56、31.46。C8H9NO3の分子量の計算値は、167.06であり、実測値は、167.0 (ESI +)であった。収率は59 %。ee = 94 % [HPLC]。[α]20 598 = -4.0 (c = 0.5、メタノール)。
(-)-2-チエニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.18(m、1H)、6.94(m、1H)、6.90 (m、1H)、4.49 (dd、J = 4.1 Hz、J = 6.25 Hz、1H)、3.36 (dd、J = 4.1 Hz、J = 15.0 Hz、1H)、3.26(dd、J = 6.25 Hz、J = 15.0 Hz、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 127.68、127.41、125.58、124.60、118.70、63.25、44.84。C7H7NOSの分子量の計算値は、153.02であり、実測値は、153.0 (ESI +)であった。収率は85 %。ee = 95 % [HPLC]。[α]20 598 = -13.0 (c= 0.5、メタノール)。
(-)-3-チエニル乳酸:1H NMR (DMSO-d6、500 MHz) δ 7.30(m、1H)、7.13(m、1H)、7.01(m、1H)、4.50 (dd、J = 4.25 Hz、J = 6.5 Hz、1H)、3.21(dd、J = 4.25 Hz、J = 15.0 Hz、1H)、3.10 (dd、J = 6.5 Hz、J = 15.0 Hz、1H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 127.50、136.09、128.83、126.24、123.32、70.65、34.84。C7H8O3Sの分子量の計算値は、172.02であり、実測値は 172.1 (ESI +) であった。収率は81 %。ee = 96 % [HPLC]。[α]20 598 = -18.8 (c= 0.5、メタノール)。
3-ヒドロキシグルタリルニトリルの酵素的加水分解
3-ヒドロキシグルタリルニトリル(1.0 g、9.0 mmol、240 mM)を、窒素ガスでパージした 37.5 mlのリン酸ナトリウム緩衝液(100 mM、pH 7)中で、室温において懸濁した。ニトリラーゼ含有量で標準化した 30 mg の細胞溶解物を酵素濃度0.8 mg/mlとなるようにこの反応液に添加し、室温において100 rpmで振とうした。反応の進行状態は、TLCにより確認した(1:1 酢酸エチル/ヘキサン。ニトリルのRf 値は0.32であり、酸のRf 値は0.0である)。22 時間後、1M塩酸の添加により反応液を酸性にした。続いてこの反応溶液をジエチルエーテルで抽出した。酸性生成物は、黄色い油状物として単離された(1.15 g、収率 98 %):1H NMR (DMSO、298K、500MHz) δ 12.32 (s、1H)、5.52 (s、1H)、4.10 (m、1H)、2.70 (dd、1H、J = 16.8、4.1 Hz)、2.61 (dd、1H、J = 16.9、6.3 Hz)、2.44 (dd、1H、J = 15.4、5.3 Hz)、2.37 (dd、1H、J = 15.6、7.8 Hz). 13C NMR (DMSO、298K、125 MHz) δ 171.9、118.7、63.4、41.2、25.2。C5H7NO3の分子量の計算値は、129.0であり、実測値は、130.0 [M+H+]、(ESI +)であった。
(R)-(-)-メチル (3-O-[ベンゾイル]-4-シアノ)-ブタン酸の調製
攪拌されている(R)-メチル(3-ヒドロキシ-4-シアノ)-ブタン酸 (71.7 mg、0.501 mmol)のピリジン溶液(2.0 ml)に塩化ベンゾイル(0.068 ml、0.752 mmol)を室温で添加した。19時間後、更に0.5等量の塩化ベンゾイル(0.023 ml、0.251 mmol)を加えた。TLCによって決定したところ、反応は23時間で完了した。1mlの水を加えた後、エーテルで抽出した(10 mlで3 回)。まとめられた有機溶媒層を飽和塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後濾過し、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。残渣は、カラムクロマトグラフィー(2:1 ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。この精製画分をロータリーエバポレーターにより濃縮し、生成物を黄色の油状物質として回収した(46 mg、0.186 mmol、収率 37 %)。各種の物理化学的測定の結果は、以下の通りであった:1H NMR (DMSO、298K、500MHz) δ 7.96 (d、2H、J = 7.8)、7.70 (t、1H、J = 7.25)、7.56 (t、2H、J = 7.8)、5.55 (m、1H)、3.59 (s、3H)、3.13 (m、2H)、2.90 (m、2H)。13C NMR (DMSO、298K、125MHz) δ 169.6、164.5、133.8、129.3、128.9、128.5、117.3、66.0、51.8、37.5、22.2。C13H13NO4の分子量の計算値は、247.25であり、実測値は、270.3 [M+Na+]であった。ee = 95 % [HPLC]。[α]20 598 32.4 (c = 0.5、クロロホルム)。
(R)-エチル (3-ヒドロキシ-4-シアノ)-ブタン酸の合成
1.94 mlの無水エタノールに 50 mg(0.387 mmol)の(R)-3-ヒドロキシ-4-シアノ-ブタン酸を溶かした 0.2 M溶液を調製した。このエタノール溶液を、濾過された1 mlの1M無水塩酸(エーテルで希釈)と無水エタノールの 50:50(v/v)混液中に一滴ずつ添加した。反応液を、室温における窒素ガス下で一夜攪拌した。反応の進行状態はTLCにより確認された(1:1 酢酸エチル/ ヘキサン。エステルのRf値は0.45であり、酸のRf 値は0.0である。呈色反応はp-アニスアルデヒドにより行った)。30時間後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。粗生成物に25 mlのエーテルを加え、5 mlの飽和重炭酸塩溶液で洗浄後、更に5 mlの飽和塩水で洗浄した。この有機溶媒による抽出物を、硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、真空下において濃縮した。得られた生産物は、透明な油状物質であった。各種の物理化学的測定の結果は、以下のとおりであった:1H NMR (DMSO、298K、500MHz) δ 5.60 (d、1H、J = 5.58 Hz)、4.12 (m、1H)、4.07 (q、2H、J = 7.1)、2.66 (m、2H)、2.47 (m、2H)、1.87 (t、3H、J = 7.0). 13C NMR (DMSO、298K、125 MHz) δ 170.21、118.60、63.40、59.98、41.10、25.14、14.02。C7H11NO3の分子量の計算値、157.1であり、実測値は、158.2 [M+H+]であった。
実施例13:(R)-2-クロロマンデル酸の立体選択的生産におけるニトリラーゼの最適化
クロロマンデル酸の構造は、以下の通りである:
Figure 0004528872
(R,S)-2-クロロマンデロニトリルを選択的に(R)-2-クロロマンデル酸へと変換するニトリラーゼが同定された。酵素の鏡像選択性を改良するため、及びこれらの酵素の反応条件を確立するために有用なニトリラーゼを同定した。生産物のeeを改良するために酵素によるニトリル加水分解の反応条件を検討した。更に、これらの酵素に対する反応条件の効果についても検討した。
Figure 0004528872
この側面において、目標は(R)-2-クロロマンデル酸の鏡像選択的生産であった。配列番号 385及び386に示される一つの酵素を2-クロロマンデロニトリルに対する鏡像選択性を更に確認するために選択した。
配列番号 385及び386 に示される酵素は反応成分に対して安定であることが示され、その半減期は8時間であった。この酵素は、2-クロロベンズアルデヒド、及びシアノヒドリン基質中の夾雑物である2-クロロ安息香酸により阻害された。この酵素反応は、45 mM 2-クロロマンデロニトリルの基質濃度まで拡大して行った。この反応により90 %以上の変換率が得られ、そのeeは、97 % であった。基質中に存在する夾雑物によるピークを除くために、キラルHPLC法を改良した。この方法を利用することで鏡像選択性の決定における精度が改良された。
ニトリラーゼを2-クロロマンデロニトリルに対してスクリーニングしたところ、31種のニトリラーゼがこの基質に対する活性を示し、9種の酵素に高い鏡像選択性が認められた。これらのうちの5種の酵素における最適化を行い、そのうちの一つの酵素を次の開発段階への候補として選択した。
これら選ばれた酵素の(R)-2-クロロマンデル酸に対する鏡像選択性を改良する試みにおいて、この特性に影響を与える様々な既知の要因を酵素の活性と共に調べた。これらには、pH、温度、緩衝液の強度、及び反応液中への溶媒の添加が含まれていた。先ず、酵素の示す高い鏡像選択性に基づいて5 種のニトリラーゼをこの実験のために選別した。これらの酵素は、以下のものである:配列番号385、386、配列番号197、198、配列番号217、218、配列番号55、56、及び配列番号167、168 。
pHの影響
酵素反応を、pH 5からpH 9の範囲の様々なpHにおいて行った。全ての酵素においてpHの上昇に伴う酵素活性、及び鏡像選択性の増加が認められた。配列番号385、386を除く酵素において、酵素活性及び鏡像選択性に対する最適pH(0.1 M トリス- 塩酸緩衝液)は9であると決定された。配列番号385、386の酵素の最適pH(0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液)は8 であった。
温度の影響
これらの酵素は、温度に対して類似の挙動を示し、37℃及び45℃において最高の活性が測定された。後者の温度において高い変換が観察されたが、殆どの酵素の鏡像選択性は、低い温度において良好であり、37℃より上の温度においてそのee値は、10〜20 % 減少した。配列番号385、386 の酵素の場合、鏡像選択性に関するわずかな最適性は約37℃で明らかであった。よって、この温度をこれらの酵素による2-クロロマンデロニトリルの加水分解における最適温度と決定した。
酵素濃度の影響
並行して行われたフェニルアセトアルデヒドのL-フェニル乳酸への鏡像選択的加水分解の検討を通じて、反応液中の酵素濃度は反応の鏡像選択性に対して重要な影響を与えることがわかった。これは、この反応において酵素的加水分解速度が残存シアノヒドリンのラセミ化速度より速いことを示している。これに基づき、(R)-2-クロロマンデロニトリルに対する酵素の立体選択性における酵素濃度の影響を調べた。酵素反応を標準濃度(0.6 mg タンパク質/ml)、その半分及びその1/10の濃度の酵素を用いて行った。
以下の表に、その反応における最高の変換率がその際に与えられる ee 値と共に示されている。配列番号385、386の酵素を除き、たとえあったとしても非常に少ない鏡像選択性の増加しか観察されなかった。よって、残存クロロマンデロニトリルのラセミ化速度は、高い鏡像選択性を得る上での制限因子であるとは認められなかった。
その他の陽性酵素の検討
上記の表に示された酵素に加え、他の複数のニトリラーゼをその酵素の2-クロロマンデロニトリルに対する鏡像選択性に関してスクリーニングした。これらの酵素のうちの幾つかは新規に発見された酵素である。幾つかの酵素を、以前にその酵素において最適であると分かっている条件下(pH 8、37℃)において再検討した。このスクリーニングの結果は、以下の表に示されている。
共存溶媒濃度の検討
メタノールの反応溶液中への添加によりeeの上昇した酵素反応を確認した。反応液中に添加するメタノール量を最小限にするために、0〜20 %(v/v)の間で異なる濃度のメタノールを添加して酵素反応を行った。様々なメタノール濃度間において鏡像選択性における顕著な差異は認められなかった。しかし、これらの反応におけるeeは、97〜98 %であり、メタノールを添加しない対照反応でのeeは、95〜96 %であった。このee値における差異は、少ないものではあるが、一回以上の一連の実験においてメタノールの効果が繰り返し観察されたため、この差異は有意であると考えられた。
反応成分の配列番号385、386の活性に対する効果
酵素反応の最適化の検討における非常に重要な一部として、酵素反応液中に存在する各々の化合物の効果を決定することが含まれる。開始物質及びシアノヒドリンの平衡生産物である2-クロロベンズアルデヒド、生産物2-クロロマンデル酸及び基質中に含まれる夾雑物、2-クロロ安息香酸の配列番号385、386に対する効果を確認した。シアニドの反応液中への添加は酵素反応に対して何の影響も与えないことが確認された。痕跡量のトリエチルアミンの存在はこの酵素に許容されることが確認された。
配列番号385、386に対する反応液中の様々な成分の効果は、推定される阻害物質を様々な量でその酵素反応系に添加することで評価した。これらの実験より、アルデヒド及びその酸化物 2-クロロ安息香酸の両化合物が酵素反応に影響を与える物質であることが確認された。反応液中への5 mM 2-クロロベンズアルデヒド又は5 mM 2-クロロ安息香酸の添加により配列番号385、386の活性は各々約70 %及び40 %減少した。
2-クロロマンデロニトリルのスケールアップ加水分解
配列番号385、386の酵素による(R)-2-クロロマンデロニトリルの変換率、及び立体選択性を確認するために、スケールを大きくした反応を行い、その水溶性反応液中より生産物を単離した。反応は20 mlの反応液に45 mMのクロロマンデロニトリルを基質として加えて行った。シアノヒドリンへの完全な変換が行われ、30 mMの生産物が得られた。この生産物のeeは97 %であり、酵素の特異的活性は、0.13 mmol 生産物/mgニトリラーゼ/hであった。
この実験及びその他の実験より、生産物の形成によっては基質の完全な消失を説明できないことは明白である。シアノヒドリンの分解量を決定するために、全ての実験において、ニトリルを含む対照試料の反応が行われた。その結果、37℃での4時間反応により基質の約50 %が消失することが明らかとなった。この分解は、更に酸化される平衡生産物であるシアニド及び2-クロロベンズアルデヒドによるものであると考えられた。90 mMの2-クロロマンデロニトリルを基質として用いた、スケールを大きくした反応も行った。高濃度の基質において、平衡生産物である2-クロロベンズアルデヒド、及び夾雑物である2-クロロ安息香酸も高濃度で存在するものと思われた。上記の実験結果に基づき、このような条件下においては、酵素活性が完全に阻害される可能性があるものと思われた。
二相系での反応
二相系反応の利用は、酵素反応後の生産物の回収を促進する。この系は、また、酵素を阻害する生産物や副産物の除去にも利用される。ニトリラーゼは、様々な溶媒を用いた二相系条件下においてもその酵素活性を保持できることが示された。上記のような高い基質濃度において見られる低い変換率を改善するために、ヒット酵素を用いた二相系の更なる検討を行った。二相系の利用により、どのような阻害性因子を溶媒層に除くことが出来るか、及び、どのような利点が得られるのかを確認することは非常に重要である。
有機溶媒層にヘキサンを用いることにより有望な結果が得られた。よって、その後の実験では二種類の異なる量のヘキサン(水層の容量の100 %、及び70 %)を用い、基質濃度を最高90 mMまで増加させた。基質は有機層に溶解した。ヘキサンの量は、特に、2-クロロマンデロニトリル濃度が高い場合、生産物の形成に影響を与えないものと思われた。
また、二相系における5時間の反応により、回収率76 %という高い変換率で生産物が得られた。二相系により得られた生産物量は、これに対応する一相系 (この系での反応は 1 時間以内に完了する) と比べてわずかに低かった。二相系において低い鏡像選択性が観察された。これらの結果に対する説明として以下に示す可能性が考えられる: (i)物質移動速度が酵素活性の速度よりも遅い、若しくは(ii)非極性溶媒が直接酵素に影響を与える。
より高い基質濃度において、非常に低い変換が観察され、90mMの2-クロロマンデロニトリルから7mMの2-クロロマンデル酸が生産された。この変換率は低いが、同じ基質濃度を用いた一相系反応による変換率よりは高かった。これらの結果は、阻害性の2-クロロベンズアルデヒド又は2-クロロ安息香酸の一部が非極性溶媒中に保持されていることを示唆している。
標準的アッセイ条件
以下の溶液を調製した:
- 基質保存溶液: 50 mMシアノヒドリン基質の 0.1 Mリン酸緩衝液(pH 8)溶液。
- 酵素保存溶液: 20 mgの凍結乾燥した細胞溶解物を含む各々のバイアルに3.33 mlの0.1 Mリン酸緩衝液(pH 8)を加えたもの(最終濃度は6 mg タンパク質/ml)。
反応液容量は、経時的にサンプリングされる試料の検体数に依存して各実験毎に異なった。特に記述されていない場合、全ての反応液は、25 mMの2-クロロマンデロニトリル及び10 % (v/v)の酵素保存溶液(最終濃度は6 mgタンパク質/ml)を含んでいる。特に記述されていない場合、その反応は、37℃において行った。ニトリルの分解を観察するための対照反応を各々の実験において行った。これらの反応液は25 mMの2-クロロマンデロニトリルの0.1 Mリン酸緩衝液(pH 8)溶液を含んでいた。
反応液のサンプリング: 各々の反応液の適量を回収し、これらの試料を8倍に希釈した。一つの試料よりキラル系及び非キラル系HPLC分析用の試料を回収した。上図において特に記述されていない場合、反応開始後 0.5、1、1.5、2、3及び4時間後にサンプリングを行った。
HPLC法
非キラルHPLC法は、Synergi-RPTMカラム(4 μm; 50 x 2 mm)を使用し、移動相には10 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 2.5)を利用して行った。メタノール勾配を3.5分後に開始させ、1.5 分で50 %のメタノール濃度まで増加させ、その後0 %まで減少させた。2-クロロマンデル酸及び2-クロロマンデロニトリルの溶出時間は、各々2.5 分及び6.1分であり、もう一本のピークがニトリルと共に5.9分に溶出された。
上述のように、この実験の過程において、2-クロロ安息香酸と(S)-2-クロロマンデル酸との分離を改良するためにキラルHPLC 分析法を最適化した。この最適化された方法を後半の実験において使用し、カラムとしてChirobiotic-RTMを使用した。移動相は、80 %アセトニトリル: 20 %の0.5 % (v/v)酢酸を使用した。(S)-2-クロロマンデル酸及び(R)-2-クロロマンデル酸の溶出時間は、各々2.4分及び3.5分であった。2-クロロ安息香酸のピークが1.9分に溶出された。各々の実験において、生産物の標準曲線の作製がHPLC分析に含まれている。試料中の生産物濃度はこれらの曲線の傾斜より計算した。
pHの影響
酵素活性及び鏡像選択性に対する pH の影響を、様々な異なる緩衝液を用いた標準的アッセイにより検討した: 0.1 M クエン酸リン酸 pH 5; 0.1 M クエン酸リン酸 pH 6; 0.1 M リン酸ナトリウム pH 6; 0.1 M リン酸ナトリウム pH 7; 0.1 M リン酸ナトリウム pH 8; 0.1 M トリス-塩酸 pH 8; 0.1 M トリス-塩酸 pH 9。全ての酵素に関して標準的な酵素濃度を使用したが、配列番号385、386 の酵素に関しては標準的な酵素濃度の半分量を使用した(酵素保存溶液の5 % v/v)。
温度の影響
酵素活性、及び鏡像選択性に対する温度の影響を、様々な異なる温度における標準的アッセイにより検討した: 室温、37℃ 、45℃ 、50℃ 及び60℃。全ての酵素において、標準的な酵素濃度を使用したが、配列番号385、386の酵素においては標準的な酵素濃度の半分量を使用した(酵素保存溶液の5 % v/v)。

酵素濃度の影響
標準的条件下での反応を異なる濃度の酵素を用いて行った: 1 % 、5 % 及び10 % (v/v)の酵素保存溶液。反応液容量は、適当な緩衝液により標準化した。

溶媒の添加
メタノール存在下での酵素反応を行った。メタノールは、標準的反応液中に以下の濃度で添加した: 0 、5 、10 、15 及び20 %(v/v)。
ヘキサンを利用した二相系反応も検討した。水相には、10 % (v/v)となるように溶解した酵素保存溶液を含む0.1 M リン酸緩衝液(pH 8)を使用した。シアノヒドリンは、反応液へ添加する直前にヘキサンに溶解した。二種類の有機溶媒層を以下のように使用した: 水層の容量と等量、若しくは0.7容量。更に、以下のニトリル濃度を検討した: 25、45及び90 mM。これらの反応は、室温で行った。
これらの反応により得られた試料を水相及び有機溶媒相の両方より回収した。真空下での遠心分離によりヘキサンを蒸発させ、メタノールと水の50:50混液中に再溶解することにより水層由来の試料と同一の希釈倍率溶液とした。試料の分析は、キラル及び非キラルHPLCにより行った。
処理成分の影響
(i)活性: 酵素活性に対する操作中の成分の影響を反応液中への個々の成分、2-クロロベンズアルデヒド、2-クロロ安息香酸又は2-クロロマンデル酸の添加により確認した。酵素反応は、標準条件下において、二種の推定される阻害物質のうちの一種を以下のように添加して行った: 5、10、20、及び 25 mMの2-クロロベンズアルデヒド; 1.5 及び5 mMの2-クロロ安息香酸; 及び 10、20、40、及び80 mMの2-クロロマンデル酸。対照反応は、標準条件下において何も添加せずに行った。各々のサンプリング時間においてその試料を、10倍に希釈した。反応成分を含み酵素を含まない対照試料を使用し、同様の希釈倍率で希釈した。これらの試料は、非キラルHPLCにより分析した。
(ii) 安定性: 標準条件下での酵素活性測定アッセイに先立ち、その反応条件における酵素の安定性を、予め定められた一定の時間、反応成分、2-クロロベンズアルデヒド及び2-クロロマンデル酸の存在下で酵素をインキュベーションすることにより測定した。これらの実験において、3 mgタンパク質/mlの濃度の酵素を以下に示した各々の反応成分の存在下においてインキュベートした: 5、10、20、及び 25 mMの2-クロロベンズアルデヒド; 及び 10、20、40、及び80 mMの2-クロロマンデル酸。酵素を緩衝液のみを含む溶液中でインキュベーションした溶液を対照反応として使用した。
アッセイ条件: これらの特定の添加物を加えてから 0、4、8及び24時間のインキュベーション後、その酵素溶液の20 μlを取り出し、60 μlの41.6 mM基質保存溶液及び20 μlの緩衝液を加えた。標準条件下においてその酵素活性を測定した。基質添加後90分にその反応液をサンプリングし、非キラルHPLCにより分析した。

酵素反応のスケールアップ
二種類の異なる基質濃度(45 mM 及び90 mM)において酵素反応を行った。反応は、以下に示した標準条件下において行った: 0.1 Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH 8)、37℃及び10 % (v/v)の酵素保存溶液。基質は、緩衝液中への添加直前に10 %(v/v)のメタノールに溶解した。反応液の最終容量は、20 mlとし、電磁攪拌機で攪拌しながら反応を行った。
実施例14: L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸の鏡像選択的生産のためのニトリラーゼの最適化
Figure 0004528872
単離された酵素のうちの4種が2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルを(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸へと加水分解し、L-鏡像異性体に対する鏡像選択性を示すことが分かった。(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸と類似の構造を有する新規の標的化合物が同定された。一群の単離されたニトリラーゼを5,5-ジメトキシペンタナールアミノニトリルに対してスクリーニングした。この基質に対する陽性酵素が特定された。これらのニトリラーゼの、特定の標的基質に対する改良された鏡像選択性を最適化するために実験的進化技術を利用する。HPLCにより確認された推定上のポジティブ変種を同定するための一次スクリーニングを行う。
酵素の最適化: L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸の生産における鏡像選択性及び酵素活性を改良するために、選別されたニトリラーゼに対してGSSMTM及びGeneReassemblyTMを利用することができる。2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルをL-(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸へと鏡像選択的に加水分解する4種の酵素が同定された。しかし、新規の標的分子である L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸には僅かな構造的な差異が存在する。この差異が酵素の立体選択性及び酵素活性に影響を与えるのかどうかを調べるため、全てのニトリラーゼの新規の標的に対するスクリーニングを行った。
L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸の生産において、最も高い鏡像選択性及び酵素活性の両方を有する一つの酵素をGSSMTM実験に選ぶ。この酵素への変異導入後、生成した変種は、ハイスループットスクリーニング技術を利用して、5,5-ジメトキシペンタナールアミノニトリルに対してスクリーニングされるであろう。HPLCによるポジティブ変種の確認後、これらの変種の特性を更に増強するために、個々のポジティブ変種が組み合わせられるであろう。
GSSMTMと並行してGeneReassemblyTMを親酵素の組み合わせに使用することができ、これらの酵素のうちの少なくとも一つがL-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸に対する鏡像選択性及び酵素活性により選択される。高い相同性を有する少なくとも二種のその他のニトリラーゼを前者の酵素と再アッセンブルさせ、これらの酵素を、再アッセンブルされた配列に多様性を提供するために選別することができる。
この進化法の成功における重要な点は、鏡像選択性に対するハイスループットスクリーニングアッセイの開発である。このようなアッセイは、新規の酵素を基にした鏡像選択性アッセイであり、HPLC法と比べて非常に短期間で三万種を超える変種をスクリーニングできるようなアッセイ法である。
一側面として、合成連結再アッセンブリ(synthetic ligation reassembly)と呼ばれる非確率論的な方法が変種を作製するために利用される。この方法は、確率論的なシャッフリングと関連しているが、但し、核酸のビルディングブロックは、ランダムにシャッフル又はコンカテマー化又はキメラ化されるのではなく、非確率論的にアッセンブルされる。この方法では、シャッフリングされるべき核酸間での高い相同性は必要ではない。連結再アッセンブリ法を利用して、少なくとも10100、若しくは少なくとも101000 の異なるキメラを含む子孫分子のライブラリー (若しくはセット)を非確率論的に作製することができる。連結再アッセンブリは、設計により定められた全体的なアッセンブル順序を有する一組の最終的なキメラ核酸を作製する方法であり、核酸ビルディングブロックがアッセンブルされる際に相互に連結できる利用可能な末端を有する複数の特異的な核酸ビルディングブロックを作製する工程を含み、それにより設計した全体的なアッセンブル順序が達成される。
アッセンブルされるべき核酸ビルディングブロックの相互に連結が可能な末端は、これらがビルディングブロックを予め定められた順序に連結できる場合、このような順序づけされたアッセンブルにおいて「利用可能」であると考える。よって一側面として、この核酸ビルディングブロックが結合される全体的な集合順序は、連結が可能な末端の設計により決定され、一回以上のアッセンブル工程が行われる場合、この核酸ビルディングブロックが結合される全体的なアッセンブル順序は、そのアッセンブル工程の行われる順序によっても決定される。本発明の一側面として、アニーリングされたビルディングブロックの断片は、これらを共有結合させるためにリガーゼ(例えば、T4 DNAリガーゼ)のような酵素で処理される。
その他の一側面として、核酸ビルディングブロックの設計は、一組の最終的なキメラ核酸分子の子孫を生産するための基礎となる一組の前駆核酸鋳型の配列分析により得られる。よってこれらの前駆核酸鋳型は、変異(即ち、キメラ化、組換え、若しくはシャッフリング)が導入されるべき核酸ビルディングブロックを設計する上での配列情報源となる。
一側面として、本発明は、一群の関連遺伝子のキメラ化、及びそれらがコードする一群の関連生産物を提供している。具体的な一例として、コードされた生産物はニトリラーゼ酵素である。本発明のニトリラーゼをコードする核酸には、ここで記述された方法により変異が導入される。
よって本発明の一側面によって、ニトリラーゼをコードする複数の前駆核酸鋳型の配列は、一つ又はそれ以上の境界点(demarcation point)を選択するために整列され、この境界点は、相同的領域に位置し得る。境界点は、生産される核酸ビルディングブロックの境界を示すために利用できる。よって、前駆分子中で同定及び選択された境界点は、子孫分子の集合における潜在的キメラ化点として利用できる。
典型的には、利用可能な境界点は、少なくとも二種の前駆鋳型中の相同的領域(少なくとも一つの同一ヌクレオチド塩基を含む)中に存在するが、境界点は、少なくとも半分の前駆鋳型中の相同的領域、少なくとも2/3の前駆鋳型中の相同的領域、少なくとも3/4の前駆鋳型中の相同的領域、及び好ましくは殆ど全ての前駆鋳型中の相同的領域中に存在し得る。より好ましくは、実用的な境界点が全ての前駆鋳型に共通の相同的領域内に存在する。
一側面として、連結再アッセンブリ工程は、網羅的ライブラリーを作製するために網羅的に行われる。言い換えれば、全ての可能な順序の組み合わせを含む核酸ビルディングブロックが最終的なキメラ核酸分子の組に含まれる。同時に、各々の組み合わせにおけるアッセンブル順序(即ち、各々の最終的なキメラ核酸配列における5'から3'方向の各ビルディングブロックのアッセンブル順序)は、設計により(若しくは非確率的に、又は非ランダムに)決定される。この方法の非確率的な特性により、望ましくない副産物の生産確率は大きく低下する。
別の一側面として、この方法により、例えば、体系的に区分化されたライブラリーを作製するために、連結再アッセンブリ工程は系統的に行われ、この区分は、例えば、一つずつ系統的にスクリーニングされる。各々の区分(若しくはその部分)は、既知の特性を有するキメラ、若しくは組換え部位を有している。言い換えると、本発は、連続的工程によるアッセンブル反応の選択的また賢明な利用と組み合わせた、特異的な核酸ビルディングブロックの選択的、且つ賢明な利用による実験の設計法を提供し、これによりいくつかの反応容器中の各々で一連の特異的な子孫生産物が作製される。これにより系統的な検定及びスクリーニング工程の実行が可能となる。従って、より小さな群において潜在的に非常に多くの子孫分子の試験が可能となる。
特に前駆分子間での相同性が低い場合、この高度に柔軟で、包括的及び系統的なキメラ化を行うことができる本発明により多数の子孫分子より成るライブラリー (若しくはセット) の生産が可能である。この連結再アッセンブリ法の非確率的な特性のため、作製された子孫分子は、好ましくは、設計により選択された全体的アッセンブリ順序を有する最終的なキメラ核酸分子のライブラリーを含んでいる。特別な一側面として、このようにして作製されたライブラリーは、103以上から101000 以上の異なる子孫分子種より成っている。
他の一側面として、ビルディングブロックが作製される工程における合成的特性は、その後のインビトロでの工程(例えば、変異導入による)又はインビボでの工程(例えば、宿主生物の有するスプライシング能の利用による)で随意的に除かれるヌクレオチド (例えば、コドン、イントロン又は調節配列などの一つ、若しくはそれ以上のヌクレオチド)の設計及び導入を可能にする。利用可能な境界点を作製することの潜在的な利点に加え、多くの例において、これらのヌクレオチドの導入もまた多くの理由から有用であることが認識されている。
本発明の合成連結再アッセンブリ法では複数の核酸ビルディングブロックが利用され、これらの各々は、好ましくは、結合可能な配列を両末端に有している。各々の核酸ビルディングブロックの有する結合可能な両末端は、平滑末端(即ち、突出したヌクレオチドを有さない) 、若しくは、好ましくは、一端が平滑末端であり、もう一端が突出末端、若しくは更に好ましくは両末端が突出末端である。二本鎖核酸において、有用な突出末端は3'突出末端又は5'突出末端である。一つの核酸ビルディングブロックは、3'側一塩基突出末端、5'側一塩基突出末端、3'側二塩基突出末端又は5'側二塩基突出末端を有しているであろう。最終的なキメラ核酸分子を作製するためにアッセンブルされる核酸ビルディングブロックの全体的な順序は、実験上の意図された設計(例えば、5'、及び3'突出末端の配列に基づく、核酸ビルディングブロック間の突出末端の設計による)により決定されるものでありランダムではない。
好適な一例によると、核酸ビルディングブロックを二本の一本鎖核酸(又は、一本鎖オリゴとも言及される)の化学的合成により作製し、これらが二本鎖の核酸ビルディングブロックを形成するようなハイブリダイゼーション条件下で、これらの核酸ビルディングブロックをお互いに接触させる。様々な長さの二本鎖核酸ビルディングブロックが作製される。これらのビルディングブロックの長さは長いものもあれば短いものもある。これらのビルディングブロックの好適な長さは一塩基対(突出末端を含まない)から100,000塩基対(突出末端を含まない)へ及ぶ。その他の好適な範囲もまた提供され、それらは最低で一塩基対から10,000 塩基対 (この範囲内の全ての整数値を含む)、及び最高で二塩基対から100,000塩基対(この範囲内の全ての整数値を含む)である。
一例によると、二本鎖核酸ビルディングブロックは、二本の一本鎖核酸が先ず作製され、これらが二本鎖の核酸ビルディングブロックを形成するようにアニーリングされる。二本鎖核酸ビルディングブロック中の二本の鎖は、突出末端部位以外の全てのヌクレオチドがお互いに相補的であろう; よって、突出末端部位以外の全てのヌクレオチドにおいてミスマッチは存在しないであろう。他の一側面として、二本鎖核酸ビルディングブロック中の二本の鎖は、突出末端部位以外はいくつかのヌクレオチドを除いてお互いに相補的であろう。よってこの例において、二本鎖核酸ビルディングブロックは、コドンの縮重を導入するために利用することができる。好ましくは、このコドン縮重は、一つ又はそれ以上のN、N、GITカセット、若しくは一つ又はそれ以上のN、N、Nカセットを用いた本報に記述されている部位飽和突然変異(site-saturation mutagenesis)を利用して導入される。
実施例15: ニトリラーゼの活性及び鏡像選択性評価のためのアッセイ
ニトリラーゼの発見及び進化の両方におけるスクリーニング処理能を増強するためのハイスループットに向いた自動化アッセイ法を述べる。理想的なアッセイは、形成された生産物および基質の変換の両方を定量でき、且つee 値の定量も可能な方法である。ハイスループットスクリーニングが可能な二種類の非キラル、及び二種類のキラル比色アッセイ法を開発した。
開発された非キラル比色アッセイ法
残存基質のOPA アッセイ: OPA アッセイは、α-アミノニトリル又はα-ヒドロキシニトリル基質に対して適用される。全細胞の溶解は不要である。これらの結果は、2-クロロマンデロニトリル及びフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリンのHPLC分析により確認した。このアッセイは、芳香族ニトリルに対して最適であった。脂肪族化合物は、直線的な標準曲線を与え、蛍光吸収の低減によりアッセイ感度が低減されている。
生産されたヒドロキシ酸の定量及びee決定のためのLDHアッセイ: LDH アッセイは、フェニル乳酸に対しては適用されるが、2-クロロマンデル酸には利用されない。レサズリン検出系の利用により検出感度が高められ、バックグラウンドが低減される。全細胞によるバックグラウンド蛍光の問題は、アッセイの前の遠心分離又は加熱処理により解決された。
生産されたアミノ酸の定量及び ee 決定のためのAAO アッセイ: AAO アッセイは、フェニルアラニン及び(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸に対して適用される。Amplex Red検出系の利用により検出感度が高められる。細胞の溶解は必要でないことが示された。バックグラウンドの蛍光発色を抑えるために、細胞は合成培地で培養する。
OPA アッセイ
o-フタルアルデヒド (OPA) による蛍光に基づくニトリラーゼアッセイを利用して残存するα-ヒドロキシニトリル基質の量を定量する。OPAは、α-ヒドロキシニトリルの対応するアルデヒド及びシアニドへのpHにより制御される分解により遊離するシアニドと反応し、定量可能な蛍光生産物を生産する。OPAは、α-ヒドロキシニトリルの対応するアルデヒド及びシアニドへのpHにより制御される分解により遊離するシアニドと反応し、蛍光性の1-シアノ-2-R ベンゾイソインドールを生産する。
Figure 0004528872
以下の基質に対する標準曲線を作製した: 2-クロロマンデロニトリル (CMN、0.998)、シクロヘキシルマンデロニトリル (CHMN、0.99)、アセトフェノンアミノニトリル (APA、0.99)及びフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン (PAC、0.97) (カッコ内はR2 値) (図5)。また、フェニルグリシン (PGN、0.93) に対する標準曲線も作製した。試験した基質のうちの三化合物、ジメチルブタナールアミノニトリル (DMB、2-アミノ-4,4-ジメチルペンタンニトリル)、ヒドロキシパイブアルデヒド(hydroxypivaldehyde)アミノニトリル (HPA)及びパイブアルデヒドアミノニトリル (PAH) は、初めのアッセイ条件下では非常に低い蛍光強度を示し、信頼性の低いデータしか得られなかった。これらの化合物のため、色々なパラメータを変化させたが、これらの化合物の蛍光シグナル強度は試験された改良法によっても増加しなかった。
これらの三化合物の蛍光シグナルを増加させる試みにおいて、OPAの代わりにナフタレンジカルボキシアルデヒド (NDA)を使用した。OPA又はNDA による PAH、HPA及びDMBの標準曲線を作製した。感度とバックグラウンド蛍光発色を決定するため、各々の基質に対して触媒活性を有すると予想される、凍結乾燥されたニトリラーゼ溶解物(配列番号189、190)を添加した。四種類のうちの三化合物において加水分解反応が検出された。NDAは、しばしば非常に強くシグナルを増加させたが、恐らくはシグナルの飽和により、シグナルの直線性を減少させた。
NDAは脂肪族化合物を検出するための代わりの検出試薬として確立された。しかしアッセイでは、全ての基質に対して同一の検出系を利用することが望ましい。なぜなら、それにより複数のニトリラーゼ基質の評価を自動化により容易になるであろうから。現在のOPA アッセイは、PAC、CMN、CHMN、APA、MN、及びPGN の分析に対して有効である。一方、脂肪族化合物PAH、HPA、及びDMB に対する標準曲線が作成されている。
全細胞の最適化
未処理又は過熱処理された凍結乾燥ニトリラーゼ溶解物のアッセイ成分への添加の影響を評価した。何れの場合においても、バックグラウンド蛍光発色に対する干渉は認められなかった。次にOPAアッセイを評価し、全細胞系でのニトリラーゼ活性を検出するために最適化した。ニトリラーゼを発現している全細胞及びインサイツ(in-situ)で溶解した細胞の両方を評価した。凍結乾燥された細胞溶解物を評価し、対照として、それら各々の全細胞のクローンを並行して評価した。この最適化実験にはマンデロニトリル(MN)をモデル基質に選択した。
配列番号187、188の凍結乾燥細胞溶解物を、配列番号187、188を発現している全細胞、及びインサイツ(in-situ)で溶解した配列番号187、188を発現している細胞の両方と共に評価した。全細胞の添加は、蛍光吸収、及び蛍光消光の何れにも影響を示さなかった。全細胞系において、これら三種類の細胞溶解物溶液の何れかの添加は、マンデロニトリルの透過性(及びそれによる変換)を改善した。三種類の細胞溶解用溶液、B-PER (Pierce)、BugBuster (Novagen) 及び CelLytic B-II (Sigma)を評価し、これらがOPAアッセイに悪影響を与えないことが示された。生産物であるα-ヒドロキシ酸又はα-アミノ酸の添加はOPAアッセイによる検出に影響を与えなかった。
このアッセイを、数段階の液体移動工程を必要とする初期の形式から、一枚のマイクロタイタープレート中で細胞の生育、ニトリルの加水分解、及びOPA アッセイ反応が行える形式へと改変した。この単一ウェル形式を利用してマンデロニトリルを試験した。ここではE. coli を宿主とした遺伝子部位飽和突然変異(GSSMTM)を評価した。以下の三種類のクローンを試験した: 配列番号101、102、配列番号187、188、及び対照として挿入を含まない空のベクター。四種類の異なる時間経過における10 mM、20 mM、及び対照として0 mMでの加水分解を評価した。初期の実験において、クローン配列番号187、188がフェニルアセトアルデヒドシアノヒドリン基質(この酵素が活性を示さない基質)に対して検討したが、活性は認められなかった。
OPAアッセイは、α-ヒドロキシニトリル及びα-アミノニトリルの両方の基質の存在を検出できることが認められた。このアッセイにより芳香族化合物は容易に検出できたが、脂肪族化合物は、検出に関していくつかの問題を示した。凍結乾燥した細胞溶解物、インサイツ(in-situ)で溶解した全細胞又は溶解されていない細胞の何れを使用した場合においてもバックグラウンドに関する問題は認められなかった。このアッセイは、一枚のプレートにより行われる分析法であり、同一のプレート上で細胞が成育され、基質とインキュベートされ、アッセイされる: 液体の移動は必要とされず、容易に自動化される。試験された全てのニトリルが直線的な反応性を示したが、脂肪族化合物による蛍光反応は低かった。
キラル LDH アッセイ
シアノヒドリンのニトリラーゼによる触媒的加水分解により生産されるキラルα-ヒドロキシ酸の分析のため、乳酸デヒドロゲナーゼ(L-LDH)に基づく分光測定系を開発した。ヒドロキシニトリル基質は、第二の酵素及び検出酵素により代謝されないため、開始物質は妨害を与えない。加熱処理されていない細胞溶解物は、LDH 系においてバックグラウンド活性を示す。しかし、このバックグラウンド活性は、細胞溶解物の加熱処理又は遠心分離によるペレット形成により防ぐことができる(図4参照)。
本明細書に記述されているニトリラーゼに対する商業的に利用可能なD- 、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼの活性、及び鏡像選択性を評価した。あるLDHがD- 及びL-フェニル乳酸の両方の分析に適していることが確認された。2-クロロマンデル酸に適している酵素は見られなかった。選択されたLDH酵素は、事実上完全な立体選択性を示した。凍結乾燥した細胞溶解物を利用した、PACからのD-及びL-LDHの生産を検出するアッセイの実行可能性が確認された。
先ず三種類の比色用テトラゾリウム塩色素を評価した: NBT (3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレン) ビス [2,(4-ニトロフェニル) -5-フェニル-2H]-、クロライド) MTT (3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム ブロマイド) INT (2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-フェニル- 2H-テトラゾリウムクロライド)。これらの検出系における生産物の不溶性が分析上問題となった。これを解決するため、可溶性の生産物が報告されている他のテトラゾリウム塩、XTT(2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキシアニリドを評価した。XTT により可溶性の明るい赤色生産物が得られるが、その基質は、不溶性であり、これが同様に分析上の問題となった。このテトラゾリウム系色素の代わりとして、比色/蛍光の両方に利用できる色素であるレサズリン (resazurin)を評価した。レサズリンの酸化によりレゾルフィン(resourfin)が生産される。基質及び生産物の両方が可溶性であり、その色調の変化は、比色及び蛍光の両方で定量できるため精度が高められる。レサズリンの感度のため、0.05 mMの乳酸が定量できる。基質と同程度の色素を利用した際に最適な結果が得られた: 例えば、0.5 mMのレサズリンにより0.05から0.5の範囲の乳酸(又はその類縁体)の定量が可能であるが、最も高い直線性はこの範囲の低いところで得られる。レゾルフィンは、28時間まで安定であり、直線的な蛍光反応性を示した。
LDH アッセイ成分の存在下において、凍結乾燥された酵素は、バックグラウンド蛍光/吸収を与えた。この問題を解決するために、この溶解物を煮沸し、遠心分離した。これにより90%のバックグラウンドシグナルが減少した。興味深いことに、遠心分離のみ(14.1 rcf で5 分) 又は煮沸(100℃で5 分)後の遠心分離処理のどちらも蛍光発色をバックグラウンドレベルまで低減した。1536-ウェルプレート等のハイスループット形式において、煮沸は、蒸発量を増加させ(ウェルのサイズは8 μl)、場合によってはニトリル基質を揮発させるため、煮沸処理より遠心分離が適している。生育用培地(LB、TB、及びM9) 又は細胞溶解用溶液(B-PER、CelLytic、及び BugBuster)によるバックグラウンドシグナルは認められなかった。
キラルAAO アッセイ
ニトリラーゼが触媒するアミノニトリルの加水分解により生産されるキラルα-アミノ酸の分析のために、アミノ酸オキシダーゼ(AAO)に基づく分光光学系を開発した。

アッセイの開発とその評価
最初のアッセイ評価では、上述のように2,2'-アジノ-ジ-3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)による検出系を使用した。しかし発色が安定しなかったため、その後の試験にはλ max 510 nmで分析されるフェノールアミノアンチピリン(PAAP)による検出系を使用した。4-メチル-ロイシン、フェニルアラニン、(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸、及びtert-ロイシンの各々のエナンチオマーに対して適した活性を有する酵素が確認された。このアッセイは、メチルフェニルグリシンに対しては適用できず、フェニルグリシンに対しては効果が十分ではなかった。
フェニルアラニンに対する標準曲線を0-15 mMの範囲で作製した。この曲線は、濃度が1 mMより低い場合に非常に高い直線性を示した。色調は、暗所に保存している限り数日間は安定であった。三種類の細胞溶解用溶液、Bug Buster (BB)、Bacterial Protein Extracting Reagent(BPER)、及び Cell Lytic Reagent (CLR)を標準曲線作成用試料に添加したが、比色定量に対しては何の影響も与えなかった。細胞溶解物 (cl)はバックグラウンドとなるような色素を形成しなかった。開始物質であるフェニルアセトアルデヒドアミノニトリル硫酸 (PAS)の添加も色素形成に対して何の影響も与えなかった。
AAO系は、基質濃度が1 mMまでの場合に非常に高い直線性を示した。AAO 酵素及び基質の濃度を、L-AAOとD-AAOとの標準曲線の交点をグラフの中央に近い位置に移動させるように調節した。PAAP、HRP及びAAOを前もって混合することにより、効果的に、且つ何の影響も無く酵素活性を観察できることが示され、これは、アッセイ成分をカクテル形式でアッセイ系に添加できることを示唆している。
全細胞を用いたAAOアッセイにおいて、TB及びLB生育培地中に存在するL-アミノ酸による高いバックグラウンドが観察された。M9培地中の細胞を洗浄し懸濁させることにより、バックグラウンドは除去可能であった。全ての実験において、細胞は、0.2 %のグルコースを含むM9培地で培養した。溶解した細胞は、溶解していない細胞と比べ、ほんの僅かに良好な応答性を示した。よって、細胞の溶解は必ずしも必要ではない。配列番号187、188は、HPLC分析による一次スクリーニングにおいてHPAに対する活性を示した。
1536 ウェル又はギガマトリックスなどによる超ハイスループットスクリーニング形式でのアッセイを可能とする蛍光検出系の利用を検討した。我々のシステムに対して最も適した蛍光試薬は、強い蛍光を有するレゾルフィン(λex 545 nm; λem 590nm)を生産するAmplex Red (Molecular Probes)である。フェニルアラニン、及び(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸に対する標準曲線を作製した (0-100μM)。
蛍光細胞分析分離装置(FACS)によるアッセイの自動化において、ニトリラーゼを発現する細胞をM9培地、0.2 %グルコース及び0.25 mM IPTGを含むマイクロタイタープレートに添加した。以下の三種類のニトリラーゼを発現するクローン及び対照となる挿入を含まない空のベクターを試験した: 配列番号101、102、配列番号187、188、配列番号29、30、及び空のベクター。分注後の細胞の生育が不均一であったため、マイクロタイタープレートに細胞を分注するための他の方法として、コロニーピッキング法を現在検討している。ロボットインキュベーター中において、蓋をしていない1536-ウェルマイクロタイタープレートからの溶液の蒸発率は一日当たり約30 %である[インキュベーターの条件: 37℃で相対湿度 (RH) 85 %]。RHが85 %のインキュベーター中でのインキュベーションにより、蒸発率が一日当たり1 %まで低減された。
これら三種類のサブクローンが3.5 mMまでのニトリル存在下で生存し得ることはHPAニトリルを用いて確かめられた。生育速度は、ほんの僅か遅くなった(30 %未満)。Amplex Red を利用した検出系で確かめたところによれば、HPAの存在下で生育したこれらのサブクローンは、ヒドロキシノルロイシン(HNL)の形成を触媒するニトリラーゼを発現していることが確認された。これらの酵素は、S-選択的であるため、S-体のみを評価した。反応プレートを10 分毎に測定し、40 分間の反応において最も高い直線性が得られた。細胞の生育は、pH 7で生育させたとき5 mMを超えるHPAで顕著に阻害され、pH 8で生育させたとき0.1 mMを超えるHPAで阻害された。
HPLC によるAAO アッセイで得られた結果を評価するため、40 mMまでの高濃度のHPA[(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸のHPLC による検出が困難なため]および凍結乾燥された配列番号187、188の細胞溶解物を用いた反応を行った。
HNLに対するAAOアッセイデータとHPLC法によるデータとの比較
Figure 0004528872
HPLCに基づくスクリーニングで使用した20 mM基質濃度と比べ、低い基質濃度でのスクリーニングにより得られる結果に偏りが生じるかどうかを確認するため、三種類の異なる基質濃度を用いて配列番号187、188の実験を行った。実験誤差を除くため、各々の実験は三つ組で行った。
AAO アッセイは、M9培地、0.2 %グルコース及び0.25 mM IPTGを含む384-又は1536-ウェルプレートに細胞を添加した形式で行うことができる。細胞は、ニトリルの存在下(この場合はHPA)で生育させるか、あるいは細胞を一定の密度まで生育させた後、ニトリルを添加する。HPAを試験する場合、細胞溶解用試薬はこのアッセイ系を妨害しないが、細胞溶解用試薬は必要ないことが確認された。この親プレートを、ニトリルの添加前又は添加後に娘プレートへと分割し、L-及びD-エナンチオマーの各々に対してアッセイする。AAOとAmplex Red 試薬とのインキュベーション時間は、D-及びL-プレートを別々の時間に測定できるように調節する。
実施例16: 一連の高価値鏡像選択的生物反応を行うための確実で新規な酵素の同定、開発、及び生産
本発明は、L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸の生産工程において、多大な技術的及び商業的利点を提供する指向性進化を利用した、ニトリラーゼの開発法を提供する。
Figure 0004528872
ニトリラーゼ酵素は、L-エナンチオマーに対して選択性を示し、2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルを(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸へと加水分解することが示された。一群のニトリラーゼを5,5-ジメトキシペンタナールアミノニトリルに対してスクリーニングした。この基質に対してポジティブな酵素の特性を解析した。推定のポジティブ変種が一次スクリーニングにより同定され、これらはHPLCにより確認された。
L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸の生産における酵素の鏡像選択性及び酵素活性を改良するために、選択したニトリラーゼに対するGSSMTM、及び GeneReassemblyTM を行った。2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルを鏡像選択的に加水分解してL-(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸を生産するニトリラーゼが同定された。しかし、新規の標的分子であるL-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸には僅かな構造的差異が存在する。この構造的差異が酵素の活性や鏡像選択性に影響を与えるかどうかを決定するため、新規の標的に対するニトリラーゼの完全な基質スペクトルをスクリーニングした。
先ず、L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸に対するヒット酵素の更に詳細な特性分析を通じ、GSSM のための正確な標的遺伝子の同定を行った。この試みには、活性および鏡像選択性に対するpH の効果に関する更に広範な調査、及び反応工程における酵素安定性のより詳細な分析が含まれている。スクリーニングの開始に先立ち、アルキルアミノニトリルの一方のエナンチオマーの合成を行った:ラセミ化反応と酵素の鏡像選択性との関連性を理解するために、このニトリル化合物のラセミ化反応を行った。
2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸に対して最も高い酵素活性と鏡像選択性の両方を有する酵素をGSSMのために選択する。この標的酵素への変異導入に続き、これらの変種を、ハイスループットスクリーニング技術を利用して、5,5-ジメトキシペンタナールアミノニトリルに対してスクリーニングする。HPLC 分析によるポジティブ変種の確認後、その標的に対するGSSMの結果を評価する決定段階へと到達する。
GSSMTMと平行し、親酵素の組み合わせによるGeneReassemblyTMを行う。これら親酵素のうちの少なくとも一つは、L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸に対する活性及び鏡像選択性により選別されたものである。その他のニトリラーゼのうちの少なくとも二つの酵素を、前者の酵素と再アッセンブリする: これらの酵素は、再アッセンブリされた配列に多様性を与えるために選別される。
本発明は、元となる基質アミノニトリラーゼのラセミ化条件の開発法を提供する。本発明は、更に、これらのアミノニトリルを標的であるα-アミノ酸に動的な速度論的変換により変換できる酵素の同定法をも提供する。本発明は、更に、ニトリラーゼにより触媒される(R)-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸(allysine、アリシン)生産における速度論的分離方法に関するスクリーニング及び開発法をも提供している。(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸はこの速度論的分離の開発にモデル基質として利用されるであろう。
標的とされるα-アミノ酸生産物を以下に示す:
(i)D-4-フルオロフェニルグリシン
Figure 0004528872
(ii)L-2-アミノ-6,6-ジメトキシヘキサン酸(アリシン)
Figure 0004528872
ニトリラーゼにより触媒されるD-4-フルオロフェニルグリシン及び2-アミノ-4,4-ジメチルペンタンニトリル(アリシン)の生産におけるアミノニトリル基質のラセミ化条件が開発される。二種類のモデル基質、フェニルグリシノニトリル及びペンタナールアミノニトリルを先ず使用し、酵素の非存在下でのラセミ化を試験する。様々なラセミ化条件下において、一以上の利用可能なニトリラーゼ酵素の能力が同時に決定される。更に、これらのニトリラーゼ酵素を、(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸の生産について、ヒドロキシペンタナールアミノニトリルに対してスクリーニングし、有望な酵素を最適化する。ラセミ化条件を確立したならば、ニトリラーゼ酵素をその活性に対してスクリーニングする。更に、生産物の速度論的変換に対する最適化を行う。
α-アミノニトリルのα-アミノ酸への加水分解において、複数の鏡像選択的ニトリラーゼが同定された。これらの酵素は、特定のアミノニトリルにおける目的のエナンチオマーに対する選択性を有するが、候補となるニトリラーゼの更なるスクリーニング、開発及び比較において制限となる要因は、反応条件におけるアミノニトリル基質のラセミ化速度である。
芳香族アミノニトリルのラセミ化
第一段階は、モデル基質であるフェニルグリシンを用いた芳香族ニトリルのラセミ化反応条件の確立である。ラセミ化の方法には以下のものが含まれるが、これらに限定されない。これらの商業的な応用性に応じておおよその優先順位が決定される。
(1)反応pH の操作。ラセミ化は高いpHにおいて迅速に行われることが示されているため、このアプローチではpH>10において活性及び選択性を示すニトリラーゼの発見及び最適化が要求される。
(2)低いpHでラセミ化を促進し得るアルデヒド、ケトン、弱塩基、樹脂、金属イオン、ルイス酸等の既知の化学的ラセミ化試薬の添加。
(3)容易にラセミ化され得るN-アセチルフェニルグリシノニトリルのようなN-アシル化アミノニトリル誘導体の合成。N-アセチルフェニルグリシノニトリルの場合、アセチル基を除去する選択的D-アシラーゼは、ニトリラーゼ生産物の光学純度を増加させるであろう。
(4)疎水性有機溶媒相において塩基により触媒されるラセミ化が生じ、水相において酵素的加水分解が行われる二相系の使用。
(5)ニトリラーゼ及びアミノニトリルラセマーゼの二種の酵素を含む二酵素系の使用。現在、一種類のアミノ酸ラセマーゼが商業的に利用可能であり、この酵素がフェニル-及びフルオロフェニルグリシノニトリルに対する活性の試験に利用されるであろう。既知のアミノ酸ラセマーゼ、ヒダントインラセマーゼ、若しくは同定されているその他のラセマーゼと相同性を有する遺伝子が遺伝子ライブラリー中より検索されるであろう。
このラセミ化条件が確立されると、これらは、標的基質である4-フルオロフェニルグリシノニトリル (FPGN) のラセミ化条件の開発における基礎を提供する。FPGNは、モデル基質よりも不安定であると予想される: よって、FPGは、より迅速にラセミ化されるが、分解反応もまたより速やかに起こると思われる。これらの反応における試験酵素の寛容性及び/又は機能が評価される。最終的なスクリーニング法の最適化には標的基質、試験されるニトリラーゼ、及び基質のラセミ化のための条件が含まれる。
遂行された試験により、フェニルグリシノニトリルはpH 10.8において容易にラセミ化されることが立証された。しかし、このような厳しいpH 条件下で活性を示す既存の酵素は同定されていない。このような条件下においても活性を示すニトリラーゼをスクリーニングするために、高アルカリ環境に由来する試料が利用される。このような酵素が発見されると、この酵素の配列が決定され、クローニングされ、この酵素のスクリーニングが行えるような凍結乾燥細胞溶解物が調製される。
脂肪族アミノニトリルのラセミ化
モデル脂肪族アミノニトリル化合物であるペンタナールアミノニトリルをラセミ体として合成する。光学的に濃縮された試料を以下に示した方法のうちの一つを利用して調製する: (i) 調製的キラルHPLC; (ii) ジアステレオマー塩分離; (iii) ジアステレオマー誘導体化、又はカラムクロマトグラフィー; (iv) L-N-BOCノルロイシンからの合成。これらの化合物の検出にはHPLCアッセイが利用される。
HPLC アッセイ
(S)-2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサン酸の検出にはHPLCアッセイを利用する。プレカラムを用いる誘導体化を含むアッセイ法が利用される。
スクリーニング/ 特性決定
ニトリラーゼを2-アミノ-6-ヒドロキシヘキサンニトリルに対してスクリーニングする。25 mMより高濃度の基質に対して良好に作用する酵素に対して、スケールアップした反応を行う。その他の酵素の基質/生産物に対する寛容性及び安定性を試験する。
ニトリラーゼをスクリーニングし、ヒット酵素の最適pH及び温度、反応条件下で鏡像選択性、及び安定性を分析する。
酵素の進化
目的の特性を示す標的酵素をGSSMTMのために選択する。標的酵素への変異導入後、生成した変種を、ハイスループットスクリーニング技術を利用して、その基質に対してスクリーニングする。HPLCによるポジティブ変種の確認後、変種の特性を更に増強するために、個々のポジティブ変種を組み合わせ、可能な添加物又はそれらの協調効果を評価する。
これに加え、その反応系における活性、鏡像選択性、及び安定性を含む目的の特性により選択されたリード酵素の組み合わせによりGeneReassemblyTMが行われるであろう。
実施例 17: (S)-フェニル乳酸の鏡像選択的生産のためのニトリラーゼの最適化
5種類の異なるニトリラーゼ基質の鏡像選択的加水分解についてニトリラーゼを同定した。これらのニトリラーゼを単離し、選択された基質に対して最適化した。この最適化には、反応工程の最適化及び指向性進化が含まれている。具体的には、(S)-フェニル乳酸の生産を特異的に触媒する酵素の特性を分析し、最適化した。これは、主として、高い鏡像選択性を維持したままその酵素活性を改良することを目的として行った。これらの酵素に対する反応条件の検討も行った。
Figure 0004528872
指向性進化実験により得られた変種をスクリーニングするためのハイスループットアッセイの開発を行った。ハイスループットスクリーニングのための二種類の非キラル及び二種類のキラル比色アッセイを開発し、ニトリラーゼの指向性進化に使用した。
(S)-フェニル乳酸の生産において高い鏡像選択性を示すニトリラーゼとして配列番号103、104が同定された。配列番号103、104の特性決定により、この酵素はpH 8、37℃で最適な反応性を示すことが確認された: 反応開始物質であるフェニルアセトアルデヒド及びその生産物であるフェニル乳酸は、各々5 mM及び30 mMまで酵素活性に影響を与えなかった。拡大された規模での酵素反応におけるee値は95 %であった。
実施例18: ニトリラーゼ酵素をコードする核酸の指向性進化
酵素全体をカバーする単一アミノ酸置換のライブラリーを作製するため、nitB 遺伝子(GenBank Accession No. AX025996、from Alcaligenes faecalis)に対して遺伝子部位飽和変異法(GSSMTM)を行った。指向性進化に利用した「親」nitB 遺伝子の配列は、配列番号 103、104に示されている。nitB 変種のライブラリーは、GSSMTMにより作製した。このnitB 変種のライブラリーを、全細胞による増加したヒドロキシメチルチオブチロニトリル(HMTBN、ニトリラーゼ基質)活性を指標にしてスクリーニングした。この基質を用いたニトリラーゼ反応における生産物は、ヒドロキシメチルチオ酪酸(HMTBA)である。
アッセイは、37℃において、100 mM HMTBN及び100 mMリン酸カリウム (pH 7)の存在下で行い、その変換率は、約30-40 %であった。HMTBN の変換の定量には二種類の方法を使用した。一つは生産されたHMTBSをHPLC分析により直接測定する方法、もう一つは、前述された蛍光性シアニドアッセイを利用した残存HMTBNの非直接的検出法である。
推定されたnitB上昇変種に対して、その増加した活性を確認するため二次アッセイを行った。この二次アッセイにおいて、上昇変種及び対照となる野生型のクローンをフラスコにより振とう培養し、酵素の発現を誘導した。この培養物を、100 mMリン酸カリウム (pH 7)で洗浄し、660 nmでの吸光度が同一となるように懸濁した。その標準化された細胞懸濁液を用いて、最初のアッセイと同一の条件下において、速度論的解析実験を行った。増加したHMTBN活性が確認された推定の上昇変種の配列を決定し、この増加した活性が宿主の変異によるものでないことを確認するため、同じ発現用宿主に形質転換後、その活性を再度試験した。
nitB のGSSMTMによる上昇変種としてnitB G46Pが確認された。この変種は、アミノ酸46 がグリシン(GGT)からプロリン(CCG)に置換されていた。この変種の全細胞によるHMTBN活性は、25℃及び35℃での反応の両方において、野生型 NitBの活性に比べて約50 %増加していた。有用なG46P変種の同定において、nitB G46Pを鋳型とした二重変異種のプールを作製するためにGSSMTMを再度使用した。これらの変種は、全て、G46Pの変異に加え、更にもう一ヶ所のアミノ酸置換を様々な位置に含んでいる。nitB G46P よりも高いHMTBN活性について二重変異種をスクリーニングした。変異工程、及び有用な変種の同定工程を更に迅速に行うため、二重、三重及び四重変異種を作製した。いくつかの有用な変種を同定及び単離した後、二重変異種を作製するためにこれらを混合した。これらの中で最高の特性を示したものは DM18であった。三重変異種を作製するための鋳型としてDM18を使用した。最も高い活性を示した三重変異種は、TM3であり、これは、四重変異種を作製するための鋳型として使用した。最も高い活性を示した四重変異種は、QM2 であった。これらの変異は、以下の表に要約されている。
Figure 0004528872
これらの変種の特性は、先ず、全細胞を用いたHMTBNに対する活性の測定により解析した。100 mMのHMTBNにおいて、QM2によるHMTBSの生産量は親遺伝子に比べて1.2倍高かった。一方、200 mMのHMTBNにおいて、QM2によるHMTBS の生産量は親遺伝子に比べて3.6倍高かった。HMTBNの濃度を100 mMから300 mMに増加させたとき、これらの変種による生産性は顕著に増加した。TM3は270 分後に基質を完全に変換し、DM18及びSMの両酵素は同じ時間後に75%以上の変換率を示した。NitBの活性/生産性に対するHMTBN 濃度の影響について更に検討するため、400 mM及び528 mMのHMTBNを用いて幾つかの変種をアッセイした。これらの基質濃度においてNitBは、本質的に活性を示さないが、これらの変種は、強い活性を有していた。具体的には、これらの高い基質濃度における活性は200 mMの基質濃度における活性とほぼ同一であった。よってこれらの変種は広い基質濃度に渡って利用でき、実用面での柔軟性は親NitB遺伝子産物よりもはるかに高い。
これらの変種は親遺伝子よりも発現レベルが高く、QM2及びTM3は、また、SDS-PAGE 分析によると、野生型に比べ可溶性酵素の比率が高かった。安定性に関しては、25℃及び37℃の両条件において、全ての酵素が本質的に同じ安定性を示した。
最後に、これらの変種に対するコドンの最適化を行った。このアプローチは、コドンを最適化し、それによって特定の宿主細胞内での発現レベルを増加させるためであった。これは言い換えると、細胞当たりの酵素活性の増加である。これにより、コドンが最適化された変種における全細胞での酵素活性が対照に比べ増加した。活性の増加率は、約2倍であった。E. coliによる発現系を使用した。
実施例19: ニトリラーゼの触媒反応により生産された化合物の選択例
図15A-Pに列挙されている化合物は、本発明の酵素及び/又は方法を利用して、ニトリラーゼの触媒反応により生産し得る、選択された化合物である。
更に、以下の化合物はニトリラーゼのStrecker 形式の反応により生産され得る化合物である。本発明のニトリラーゼを利用することにより、各々のアルデヒド又はケトンから、100種以上のアミノ酸や多数の新規薬剤が生産される。例えば、本発明のニトリラーゼを利用して合成され、多量に市販されている薬物にはホモフェニルアラニン、VasotecTM、VasotericTM、TeczemTM、PrinivilTM、PrinzideTM、ZestrilTM、ZestoreticTM、RamaceTM、TarkaTM、MavikTM、TrandoaprilTM、TrandolaprilatTM、ALTACETM、ODRIKTM、UNIRETICTM、LOTENSINTM、LOTRELTM、CAPOTENTM、MONOPRILTM、TANATRILTM、ACECOLTM、LONGESTM、SPIRAPRILTM、QUINAPRILTM、及び CILAZAPRILTMが含まれる。その他のキラル薬物には、DemserTM (α-メチル-L-チロシン)、AldochlorTM、LevothroidTM、SynthroidTM、CytomelTM、ThyolarTM、HycodanTM、CuprimineTM、DepenTM、PrimaxinTM、MIGRANOLTM、D.H.E.-45、DIOVANTM、CEFOBIDTM、L-DOPA、D-DOPA、D-αメチル-DOPA、L-αメチル-DOPA、L-γ
-ヒドロキシグルタミン酸、D-γ-ヒドロキシグルタミン酸、3-(2-ナフチル)-L-アラニン、D-ホモセリン、及び L-ホモセリンが含まれる。
更に、本発明のニトリラーゼ酵素は以下のアミノ酸の合成に有用である。これらのアミノ酸の多くは薬剤として利用される: D-フェニルグリシン、L-フェニルグリシン、D-ヒドロキシフェニルグリシン、L-ヒドロキシフェニルグリシン、L-三級 (tertiary) ロイシン、D-三級 (tertiary) ロイシン、D-イソロイシン、L-イソロイシン、D-ノルロイシン、L-ノルロイシン、D-ノルバリン、L-ノルバリン、D-2-チエニルグリシン、L-2-チエニルグリシン、L-2-アミノ酪酸、D-2-アミノ酪酸、D-シクロロイシン、L-シクロロイシン、D-2-メチルフェニルグリシン、L-2-メチルフェニルグリシン、L-チエニルアラニン、及び D-チエニルアラニン。
本発明のニトリラーゼ酵素は、以下の天然アミノ酸の合成において有用である: グリシン、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-システイン、L-メチオニン、L-セリン、D-セリン、L-スレオニン、L-リジン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-アスパラギン、L-グルタミン、及び L-プロリン。以下に示された化合物は、本発明のニトリラーゼ酵素により生産される非天然アミノ酸の例である: D-アラニン、D-バリン、D-ロイシン、D-イソロイシン、D-フェニルアラニン、D-チロシン、D-トリプトファン、D-システイン、D-メチオニン、D-スレオニン、D-リジン、D-アルギニン、D-ヒスチジン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-アスパラギン、D-グルタミン、及び D-プロリン。
更に、本発明のニトリラーゼ酵素は、3-ヒドロキシ-グルタロニトリル(55億ドルの市場規模)を含むキラル薬剤と同様に、TaxotereTM、LIPITORTM、BAYCOLTM、及び LESCOLTM などのその他のキラル薬剤の合成を含む非-Strecker 型化学反応においても利用できる。薬剤でないキラル生産物の標的にはPantenolTM、L-ホスフィノスライシン(phosphinothricin)、D-ホスフィノスライシン、D-フルオロフェニルアラニン、及び L-フルオロフェニルアラニンが含まれる。最後に、ニトリラーゼはサルコシン、イミノ二酢酸(iminodiacetic acid)、EDTA、α-アミノ酪酸、及びβ-アラニンなどのキラル中心を持たない非アミノ酸系化合物の生産にも利用できる。
図16A-G に示されている化合物は基質及び本発明のニトリラーゼ酵素及び/又は方法を利用して生産される生産物の例である。基質と生産物の化学構造が示されている。ここに示されている化学反応は、本発明のニトリラーゼにより触媒される反応例であるが、これらに限定されない。
実施例20: 配列番号210の変種ポリペプチドを利用した例示的な調製法
ニトリラーゼ変種1506-83-H7Aの配列は、残基190のアラニンがヒスチジンで置換された配列番号 210である。コドンレベルでは、生じている変異はGCTのCATへの変異である。この変種は、3-ヒドロキシグルタリルニトリル(HGN)の(R)-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸への変換において、改良された鏡像選択性を示した。
この変種は、室温における100 mM リン酸ナトリウム緩衝液中で上記の変換を行うことが立証されている。この変種は、その他の温度及び緩衝液系において付加的な改良された特性を示す能力を有し得る。この特性の例として、これに限定されないが、改良された反応速度、 % ee値及び安定性が含まれている。具体的には、この改良された特性は速い反応速度、高い % ee値及び高い安定性であり得る。改良された特性は野生型酵素に比べ少なくとも25 %、30 %、35 %、40 %、45 %、50 %、55 %、60 %、65 %、70 %、75 %、80 %、85 %、90 %、又は95 % 増加、若しくは減少し得る。
この変種は、10 mMから3 Mの基質(HGN)濃度において、高いee値で生産物を生産することができることが示された。これよりも高い濃度又は低い濃度の基質も利用可能である。95 %又はこれ以上のee値で反応は行われる。野生型酵素と比べ、この酵素のee値は少なくとも25 %、30 %、35 %、40 %、45 %、50 %、55 %、60 %、65 %、70 %、75 %、80 %、85 %、若しくは90 %以上であり得る。
本発明において、配列番号 として示された配列の変種は、発現ベクター中にクローン化される。例えば、核酸配列配列番号195、205、207、209、OR 237 の変種及びアミノ酸配列配列番号210 の変種をコードするヌクレオチドが、例えば、これに限定されないが、pSE420(E. coli 発現ベクター)やpMYC(シュードモナス発現ベクター)などの典型的なベクターに挿入され、クローン化される。
実施例 21: 本発明の変種を用いた調製
室温 (〜22℃) において、攪拌されているニトリラーゼ細胞溶解物(150 mg タンパク質となるように標準化)を含む 2.12 mlの100 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7)に、3-ヒドロキシグルタリルニトリル(1 g、9 mmol)を一滴ずつ添加する。この3 M反応物を、室温にて24時間、電磁攪拌機で攪拌する。TLC(薄相クロマトグラフィー)及びGC(ガスクロマトグラフィー)を使用して反応の進行状態を確認する。この反応は24時間以内に完了するはずである。
本明細書で考慮されるその他の変種には、以下の変種が含まれているが、これらには限定されない: N111S; A190H、S、Y又はT; F191L、V、M、D、G、E、Y 若しくは T; M199E、又はL; D222L; A55K、G、又はQ; I60E、又はこれらの組み合わせ。
実施例22: 鏡像選択的変換に対するスクリーニングアッセイ
鏡像選択的変換スクリーニングするための新規な方法、例えば、反応により得られる生産物のee値(%)を測定できるような、プロキラル基質のキラル化合物への鏡像選択的変換をスクリーニングするための新たな方法を開示する。この方法は、ジアステレオマー過剰量 (diastereomeric excess、 % de)を決定するためにも適用できる。
例えば、ある分子中の2つのプロキラル又は鏡像異性化部分のうちの一つを、例えば、酵素などの選択的な触媒により、例えば、重同位体又は軽同位体などを利用した修飾によりラベル化し、選択的触媒による前記2つの部分のうちの一つの部分の修飾を質量分析(MS)により確認する。
15N-(R)-HGN (R)(図17に示されているように)または15N-(S)-HGNに対して例示的なニトリラーゼ反応を行い、可能な二種のラベル化酸生成物と非ラベル化酸生成物の各々の量を分析することにより、その酵素の鏡像選択性が決定できる。
Figure 0004528872
このスクリーニング実験は何れの方向においても行うことができる。このスクリーニング実験は、15N-(R)-及び(S)-HGN部分の両方に対して利用できる。実際には、先ず、ラベル化により如何なる人工的変化も起こらないことを確認するため、両方の化合物について調べるべきである。
Figure 0004528872
ニトリラーゼによる変換反応により得られるee値を計算するために以下の例示的な式を適用することができる:
% ee = {[130]-[129]}/{[130]+[129]}。
ここで軽い酸 (129)及び重い酸 (130)の各々の濃度は、質量分析で得られる標準曲線とピーク面積との相関により決定されるか、又は129及び130の各々の質量分析で得られるピーク面積値の直接的な比較により決定される。二種のエナンチオマー(ラベル化及び非ラベル化物質)の相対量を決定するために利用される実際の質量単位は、どのように質量分析機が調整されたかに依存する。
ある場合において、質量分析により得られた % ee値は、液体クロマトグラフィーなどの他の分析方法により観察された値と異なっていることがあり、これは、試料中の天然同位体に由来するバックグラウンド又は夾雑物質によるピークに起因している。しかし、これは、スクリーニングで得られる最終的な結果には影響しない。軽い酸及び重い酸の定量により得られた例示的な標準曲線を図14A及びBに示す。
以下の反応は、例えば、15N-(R)-HGNを調製するための合成経路であり、商業的に利用可能な開始物質を用い、この分野で公知の化学技術を利用する。
Figure 0004528872
二種の可能なエナンチオマーの各々の量は、ポジティブモード又はネガティブモードにおける質量分析の何れかによって、若しくは親分子の質量又はフラグメントの質量分析の何れかによって確認される。
実施例23: 本発明の例示的な酵素の安定性及び活性
酵素の安定性
野生型酵素(配列番号209 及び 210)と配列番号209及び210の変種A190H との比較を行った。この実験において、各々の酵素を、10 mg/mlとなる水溶液中で二種類の異なる基質、アジポニトリル又はヒドロキシグルタリルニトリルの存在下、4℃又は21℃で1、25、50、75、及び150 時間インキュベートした。全ての条件下において、両方の酵素は、150 時間その活性を保持していた。ニトロプルシッドBertholet アッセイ[例えばFawcett、J. K. & Scott、J. (1960); J. Clin. Path.; Vol. 13、pg 156を参照]によれば、野生型酵素は、アジポニトリルに対して強い活性を示し、変種酵素(A190H)は、ヒドロキシグルタリルニトリルに対して強い活性を示すことが確認された。
鏡像選択性の増加したGSSM変種
Figure 0004528872
E. coliにより発現されたニトリラーゼの全細胞系での100 mMによる反応を行い、36 時間で反応が完了した。ニトリラーゼを含む細胞溶解の凍結乾燥物上澄を用いた2.25 Mによる反応を行った。記載されている全ての %ee値は、三回の測定で得られた値の平均値とその標準偏差である。反応の完了に要した時間は、TLC により概算した。
具体例:
100mM HGNによるニトリラーゼ活性アッセイ
ニトリラーゼのポジティブ変種であると推定された変種を三つ組でアッセイした。各々の形質転換体を、5 mlのLB培地(100μg/ml のアンピシリンを含む)中で37℃、220 rpmにおいて18 時間培養した。一夜培養した培養液を、二倍に希釈し、ニトリラーゼの発現を誘導するため0.1 mMのIPTGを加えて37℃ 、220 rpm において6 時間培養した。細胞を遠心分離により回収し、100 mM リン酸ナトリウム(pH 7)で洗浄後、1 mlの100 mM HGNを含む100 mMリン酸ナトリウム(pH 7)に懸濁した。反応は、22℃において少なくとも36 時間、穏やかに攪拌しながら続けた。反応の進行状態は、TLC により確認した (1:1 酢酸エチル/ヘキサン。ニトリルのRf 値は0.5であり、酸のRf 値は0.0 である)。細胞、及びその他の不溶物質を遠心分離により除き、凍結乾燥を行う前に一容量のメタノールで処理した。凍結乾燥物は、メタノールに懸濁後、ガスの発生が終わり、GC 分析のためのメチルエステルが調製されたことを示す黄色が持続するまでTMS-ジアゾメタン(2 M のヘキサン溶液、10 倍量)で処理した。(R)-(-)-3-ヒドロキシ-4-シアノ酪酸を95 % ee又はそれ以上で生産する選択されたニトリラーゼ変種の2.25 M HGNに対する活性を評価した。
2.25M 3-HGNによるニトリラーゼ活性アッセイ
3-HGN (0.2 g、1.8 mmol、3M)を、22℃において、0.6 mlの100 mMリン酸ナトリウム(pH 7)に懸濁した。細胞溶解物(6 mg ニトリラーゼとなるように標準化)を酵素濃度11 mg/mlとなるように調製し、22℃、100 rpmにおいて反応を行った。反応の進行状態は TLCにより確認した(1:1 酢酸エチル/ヘキサン。ニトリルのRf値は0.32であり、酸のRf値は0.0である) 。反応混合物を、凍結乾燥を行う前に一容量のメタノールで処理した。凍結乾燥物をメタノールに懸濁後、GC 分析のためのメチルエステルを調製するためにTMS-ジアゾメタン(2 M のヘキサン溶液、10 倍量)で処理した。
多数の試料をスクリーニングするための新規のハイスループットLC/MS 法に関する説明:キラル活性のための超ハイスループット一次スクリーニング:
GSSMライブラリー中の特定の集団を、自動化コロニー摘み取り機により、40 μlのLB(Luria-Bertani)培地(100μg/ml のアンピシリンを含む)を含む384-ウェルプレート中に整列分注し、37℃、湿度85 %において培養した。ニトリラーゼの発現を誘導するため0.1 mMのIPTGを加え、37℃にて24時間培養した。各々のプレートのレプリカをとり、-80℃での保存用に20 %グリセロール溶液を調製した。各々の384-ウェルプレートに10 mMの15N-(R)-1基質を添加した。このプレートを、37℃、湿度85 %において三日間培養した。細胞及びその他の不溶物質を遠心分離により除き、その上澄みをMS 分析に先立ち17,576 倍に希釈した。
ハイスループット分析には、LC/MS イオンスプレー法を以下の様式で使用した。CTCPAL自動サンプラー(Leap Technologies、Carrboro、NC)を用いて384-ウェルプレートからの液体試料をフローインジェクションすることによってハイスループットスクリーニングを行った。71 %アセトニトリル、及び29 % 水(0.1 %の蟻酸を含む)より成る定組成溶液を、LC-10ADvp ポンプ (島津製作所、京都) により、LC-18 カートリッジ (Supelco、Bellefonte、PA) を通じて流速2.2 ml/分で流した。試料は、API 4000 TurboIonスプレー三重-四重極質量分析計(Applied Biosystems、Foster City、CA) で分析した。分析試料のイオンスプレー及び多重反応測定(MRM、Multiple Reaction Monitoring)は陰性イオンモードにより行い、各々の試料の分析は60秒とした。
野生型酵素(配列番号209 及び 210)を有するE. coliの形質転換体を活性のポジティブコントロールとして、空のベクターを有するE. coliの形質転換体を活性のネガティブコントロールとして利用した。質量分析により決定された、ポジティブコントロールである野生型酵素の、15N-(R)-1 と 15N-(S)-1 に対する % ee値は同一であったため、顕著な同位体効果は存在しないことが立証された。
A190H変異を有する配列番号209 及び210に対する反応パラメータの効果
Figure 0004528872
反応は3M HGN の存在下で、150mg/ml のタンパク質 (酵素濃度 〜49mg/ml) を用いて行った。三回のGC 分析により % ee値を決定した。
本明細書には、その特定の好ましい特性に関する詳細が記述されているが、これらの改変及び改良は、本明細書及び請求項に記載された本発明の精神及び範囲内にあるもとして理解されるであろう。

Claims (20)

  1. (a)一以上の変異を有する配列番号195の変種配列と少なくとも90%同一の配列を有する核酸であって、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、
    配列番号195の部位163-165がAAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAGで置換されている;
    配列番号195の部位178-180がGAA又はGAGで置換されている;
    配列番号195の部位331-333がTCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGCで置換されている;
    配列番号195の部位568-570がCAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG又はACGで置換されている;
    配列番号195の部位571-573がTTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACGで置換されている;
    配列番号195の部位595-597がGAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGで置換されている;
    配列番号195の部位664-666がTTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGで置換されている;
    または、
    前記変異が前記置換のいずかの組合せである、前記核酸、
    または、
    (b)一以上の変異を有する配列番号196の変種と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸であって、
    配列番号196の残基55がリジン、グリシン、又はグルタミンで置換されている;
    配列番号196の残基60がグルタミン酸で置換されている;
    配列番号196の残基111がセリンで置換されている;
    配列番号196の残基190がセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニンで置換されている;
    配列番号196の残基191がロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニンで置換されている;
    配列番号196の残基199がグルタミン酸、又はロイシンで置換されている;
    配列番号196の残基222がロイシンで置換されている;または、
    前記変異が前記置換のいずれかの組合せである、前記核酸、
    または、
    (c)(a)または(b)に相補的な核酸、
    を含む、単離、合成または組換え核酸。
  2. 一以上の変異を有する配列番号195の変種と同一の配列を有する核酸を含む、単離、合成または組換え核酸であって、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、
    配列番号195の部位163-165がAAA、AAG、GGT、GGC、GGA、GGG、CAA、又はCAGで置換されている;
    配列番号195の部位178-180がGAA 又はGAGで置換されている;
    配列番号195の部位331-333がTCT、TCC、TCA、TCG、AGT、又はAGCで置換されている;
    配列番号195の部位568-570がCAT、CAC、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、AGC、ACT、ACC、ACA、TCA、TAT、TAC、ATG 又はACGで置換されている;
    配列番号195の部位571-573がTTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、GTT、GTC、GTA、GTG、ATG、ACT、ACC、ACA、GAT、GAC、GGT、GGC、GGA、GGG、GAA、GAG、TAT、TAC、又はACGで置換されている;
    配列番号195の部位595-597がGAA、GAG、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGで置換されている;
    配列番号195の部位664-666がTTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGで置換されている;
    または、
    前記変異が前記置換のいずれかの組合せである、
    前記単離、合成または組換え核酸。
  3. 請求項1記載の核酸を含む、宿主細胞での複製が可能な核酸ベクター。
  4. 請求項1記載の核酸を含む宿主細胞。
  5. 請求項3記載の宿主細胞を含む宿主生物。
  6. 固相支持体に固定化された、請求項1記載の単離、合成又は組換え核酸。
  7. 固相支持体が、ゲル、樹脂、ポリマー、セラミック、ガラス、微小電極、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項5記載の単離、合成又は組換え核酸。
  8. (a)一以上の変異を有する配列番号196の変種と少なくとも90%同一の配列を有する、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドであって、
    配列番号196の残基55がリジン、グリシン、又はグルタミンで置換されている;
    配列番号196の残基60がグルタミン酸で置換されている;
    配列番号196の残基111がセリンで置換されている;
    配列番号196の残基190がセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニンで置換されている;
    配列番号196の残基199がグルタミン酸、又はロイシンで置換されている;
    配列番号196の残基222がロイシンで置換されている;または、
    前記変異が前記置換のいずれかの組合せである、前記ポリペプチド、
    または、
    (b)一以上の変異を有する配列番号196記載の配列を有するポリペプチドであって、ニトリラーゼ活性を有し、
    配列番号196の残基55がリジン、グリシン、又はグルタミンで置換されている;
    配列番号196の残基60がグルタミン酸で置換されている;
    配列番号196の残基111がセリンで置換されている;
    配列番号196の残基190がセリン、ヒスチジン、チロシン、又はスレオニン、残基191のロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸、チロシン、又はスレオニンで置換されている;
    配列番号196の残基199がグルタミン酸、又はロイシンで置換されている;
    配列番号196の残基222がロイシンで置換されている;または、
    前記変異が前記置換のいずれかの組合せである、前記ポリペプチド、
    または、
    (c)ニトリラーゼ活性を有し、残基190における変異を含み、アラニンが水素結合性アミノ酸またはペプチド擬似体残基で置換された、配列番号196記載の配列を有するポリペプチド、または、
    (d)ニトリラーゼ活性を有し、残基190における変異を含み、アラニンが疎水性アミノ酸またはペプチド擬似体残基で置換された、配列番号196記載の配列を有するポリペプチド、を含む、単離、合成又は組換えポリペプチド。
  9. 請求項8記載のポリペプチドに特異的に結合する精製抗体。
  10. (a)請求項8記載のポリペプチドを少なくとも一つ含む酵素の、液体又は乾燥品である酵素調製物、または、
    (b)固相支持体に固定化された、(a)記載の酵素調製物。
  11. ニトリラーゼ活性に適した条件の下で、請求項8記載のポリペプチドの少なくとも一つ、又はニトリラーゼ活性を有するそれらのペプチド疑似体をニトリルと接触させることを含む、ニトリルのカルボン酸への加水分解方法。
  12. 分子のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分のカルボン酸への加水分解方法であって、ニトリラーゼ活性に適した条件の下で、請求項8記載のポリペプチドの少なくとも一つ、又はニトリラーゼ活性を有するそれらのペプチド疑似体を前記分子と接触させることを含む、分子のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分の加水分解方法。
  13. シアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を有する分子と、請求項8記載のアミノ酸配列の少なくとも一つを有するポリペプチド、又は、鏡像選択性ニトリラーゼ活性を有するそれらのペプチド疑似体と前記分子とを混合することを含む、キラルアルファヒドロキシ酸分子、又はキラルアミノ酸分子の作製方法。
  14. 組成物又は前記組成物の中間体の製造方法であって、前記組成物または中間体のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を含む前駆体を、請求項8記載のポリペプチドの少なくとも1つ又はニトリラーゼ活性を有するそれらのペプチド疑似体と混合すること、および、前駆体中のシアノヒドリン部分又はアミノニトリル部分を加水分解することを含む、前記製造方法。
  15. (R)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸または(S)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸またはそれらの組合せの製造方法であって、
    選択的に(R)- 光学異性体または(S)-光学異性体を生成して(R)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸または(S)-エチル-4-シアノ-3-ヒドロキシ酪酸を生成する、請求項1記載の核酸によりコードされるポリペプチドの少なくとも一つ、または請求項8記載のポリペプチドの少なくとも一つまたはこれらのいずれかの組合せとヒドロキシグルタリルニトリルとを接触させることを含む、
    前記方法。
  16. (R)-マンデル酸または(S)-マンデル酸またはそれらの組合せの製造方法であって、
    マンデルニトリルと請求項8記載のポリペプチドの少なくとも一つ、請求項1記載の核酸によってコードされるポリペプチドの少なくとも一つ、これらのいずれかの組合せ、または、ニトリラーゼ活性を有するペプチド疑似体、とを混合することを含む、前記方法。
  17. (S)-フェニル乳酸誘導体又は(R)-フェニル乳酸誘導体の製造方法であって、フェニルラクトシアノニトリルと請求項8記載のポリペプチド少なくとも1つ、請求項1記載の核酸によってコードされるポリペプチドの少なくとも一つとを混合すること、を含む前記方法。
  18. 以下を含む、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドの作製方法:
    a) 宿主細胞によりポリペプチドが生合成される条件下で請求項1記載の核酸を宿主細胞へ導入すること;および、
    b)生合成されたポリペプチドを回収すること。
  19. 以下により請求項1記載の核酸を改変することを含む、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸変種であって、天然に存在するものとは異なる、改変された生物学的な活性を有する前記変種の製造方法:
    i.1つ以上のヌクレオチドを、天然又は非天然ヌクレオチドを含む、異なるヌクレオチドで置換する;
    ii.1つ以上のヌクレオチドを削除する;
    iii.1つ以上のヌクレオチドを挿入する;または、
    iv. i〜iiiの組み合わせ。
  20. 請求項1記載の核酸および緩衝液を含むキット。
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