JP4523478B2 - 帯域通過フィルタ及び高周波モジュール、並びにこれを用いた無線通信機器 - Google Patents
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Description
UWBは3.1GHz〜10.6GHzを通過帯域とし大容量のデータ転送を実現する。
このUWBと、データ通信手段の一つとして用いられる無線ローカルエリアネットワーク(以下W−LAN)とを比較すると、通信距離とデータ転送速度が違っている。W−LANでは、通信距離30〜100m、送信電力500mW、通信速度約11Mbpsであるのに対して、UWBでは通信距離は10mと短いが、送信電力は100mWと低消費電力であり、また通信速度は、通信距離10m前後で100Mbps、通信距離2m以下では480Mbpsとより高速のデータ通信が可能である。
このように、UWBの一つの特徴は、広帯域を用いることである。その比帯域(帯域幅/中心周波数)は、40%以上、場合により110%が要求される。
また、UWBの平均送信電力密度は−41.25dBm/MHz未満と低い値に規定されている。ここで、−41.25dBm/MHzは、波源から3mの距離において電界強度54dBμV=500μV/mを発生する放射電力に相当する。
FCCが規定した屋外環境下におけるスペクトルマスクの一例をあげると、3.16GHzから4.75GHzにかけての通過帯域の送信電力を基準(0dB)にして、3.1GHzで−20dB、1.61GHzで−30dBとなるように規定されている。また、実質的な使用条件においては、W−LAN(802.11.a)との間の影響を考慮する必要があり、5.15GHzの減衰が要求されている。
近年、通信分野において、低損失かつ高減衰が必要な狭帯域フィルタとして、高いQ値が得られる水晶や圧電磁器をベース材料としたSAWフィルタやBAWフィルタが用いられているが、それらの比帯域は中心周波数2GHzにおいて3〜4%以下、帯域幅は0.06〜0.08GHzと、UWBの帯域幅と比べて2桁ほど狭い。これらの帯域幅は、水晶や圧電基板の電気機械結合係数より決まっており、帯域幅を広げることは材料的観点から困難である。
前記入力部及び出力部には、第1及び第6の共振器に結合された第5及び第6のキャパシタ素子またはインダクタ素子を用いる。この場合、素子の定数を所定値に設定することにより、入力部及び出力部において信号の出し入れの際に強い結合を得ることができるので、帯域通過フィルタの通過損失を少なくすることができる。
前記共振器は、例えばストリップ線路、マイクロストリップ線路又はコプレーナ線路で構成することができる。
また、前記共振器を、複数の誘電体層を積層した誘電体多層基板の内部に形成することができる。誘電率の高い誘電体を用いることによって、帯域通過フィルタの小型化、低背化を図ることができる。
前記グランド電極同士の間隔Dは1.0mm以下であることが望ましい。これにより、誘電体多層基板の厚みを薄くすることができる。
図1は、本発明の帯域通過フィルタの回路構成を示す図である。
帯域通過フィルタは、上下に積層された6枚の共振器21〜26を備えている。この共振器21〜26は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路又はコプレーナ線路により構成される。
この配置により、4枚の共振器25〜25は、互いに電磁気的に結合し、特に誘導結合が強くなっている(図1にMで示している)。
共振器21,26の非接地端は、それぞれキャパシタ素子C5,C6を介して入力電極IN、出力電極OUTに容量結合されている。これらの容量結合された部分を「入力部」、「出力部」という。
前記6枚の各共振器21〜26の長さは、すべて1/4波長としている。
この構造により、4枚の共振器22〜25同士で強い誘導結合を得ることができ、通過帯域の広帯域化を図ることができる。また、4枚の共振器22〜25を対向させて並べることにより、帯域通過フィルタの小型化を図ることもできる。
この構成を、図1と比較すると、共振器22〜25の非接地端が、キャパシタ素子C7〜C10を介して接地されている。このことにより、共振器22〜25の実効長の一部がキャパシタ素子C7〜C10により置換され、当該共振器22〜25の長さを1/4波長未満とすることができる。
次に、図1、図2で説明した帯域通過フィルタの製造方法を説明する。
帯域通過フィルタは、複数の誘電体層を積層した誘電体多層基板の各誘電体層上に、前記共振器を形成した構造となっている。
各誘電体層は、例えば、低温焼成用のセラミックス(LTCC; Low Temperature Co-fired Ceramics)で形成され、各誘電体層に形成される導体層は、銅や銀などの低抵抗導体によって形成される。
また、各誘電体層には複数の層にわたって、上下の導体層を接続するために必要なビアホール導体が適宣形成される。
なお、前記図1、図2の帯域通過フィルタでは、共振器21〜26の端部を接地する必要がある。
このため、以下に説明するように、各共振器21〜26の端部を接地するための接地パターンを、共振器21〜26を構成する各導体パターンの上下の誘電体層に設けるとよい。なお、接地パターンは、上面もしくは下面、また共振器と同一平面に形成してもよい。
17は誘電体多層基板であり、その内部に、後に図5を用いて説明する配線パターンが引き回されている。
E1,E2はグランド電極であり、INは入力端子電極、OUTは出力端子電極を示す。入出力端子が反対になった場合でも本発明の帯域通過フィルタは同様に機能する。
図5は、誘電体多層基板17の表裏面及び誘電体内部の配線パターンを分解して示す図である。上から表層、第2層〜第12層、裏面のパターンをそれぞれ示している。
7層目には、矩形状の共振器21から共振器26までが、平行に配置されている。このうち、共振器21から共振器26までは、強い結合が得られるように、エッジ同士が近接して配置されている。共振器21〜26は、長さ方向の一端がグランド電極E3に接続されている。
6層目において、入力電極INと出力電極OUTが形成されている。入力電極INは、誘電体の側面を介して裏面にまで延長され、出力電極OUTも同様に、誘電体の側面を介して裏面にまで延長されている。
また、6層目において、7層目に配線した第1の共振器21と、第2の共振器22との間で、第1のキャパシタ素子C1を形成するための電極27が設けられている。また、7層目に配線した第5の共振器25と、第6の共振器26との間で第4のキャパシタ素子C4を形成するための電極29も設けられている。
8層目において、入力電極INは、6層目と同様に、誘電体の側面を介して裏面の入力電極INに接続されている。出力電極OUTも同様に、誘電体の側面を介して裏面の出力電極OUTに接続されている。
8層目に形成された電極28は、7層目の第1の共振器21と第3の共振器23との間で、第2のキャパシタ素子C2を形成するものである。電極30は、7層目の第4の共振器24と第6の共振器26との間で、第3のキャパシタ素子C3を形成するものである。
前記電極33は、7層目に配置された第2の共振器22とビアを介して接続されている。また、電極36は7層目に配置された第5の共振器25とビアを介して接続されている。
以上の構成により、通過帯域3.1〜4.9GHz、比帯域40%程度、5.15GHz、2.48GHzに高い減衰特性をもち、かつ小型である帯域通過フィルタを得ることができる。
図によれば、無線通信機器は、ベースバンド信号を処理するベースバンドIC45、高周波信号を処理するRFIC44、送受信を切り替える高周波スイッチ41、平衡信号と不平衡信号を変換するバラン43、帯域通過フィルタ42及びアンテナより構成される。
帯域通過フィルタ42は、UWBの送受信信号の帯域を通過させ、帯域外の信号をシャープに減衰させる本発明の帯域通過フィルタである。この機能により、送受信信号を減衰させることなく、他のシステムとの相互干渉を防止することができる。
その結果、図7に示すように、通過特性S21及び反射特性S11のグラフが得られた。
図7によると、3.16GHz(m1で示す)から4.75GHz(m2で示す)の約1.5GHzの帯域内で通過損失が1.5dB未満である。また、W−LANのIEEE.802.11bが存在する2.5GHz(m3で示す)において30dB以上の減衰が得られた。従って、約0.6GHzの狭い周波数帯域で20dB以上の減衰量が得られている。一方、W−LANのIEEE.802.11.aが存在する5.15GHz(m4で示す)において38dBの高い減衰量を示しており、約0.4GHzの狭い周波数帯域で20dB以上の減衰量が得られている。さらに周波数5.15GHz以上においても20dB以上の減衰量を10GHzまでにわたって示した。
次に、本発明の帯域通過フィルタを、Agilent Technologies社の回路シミュレータADSを用いて、誘電率9.4のセラミック基板の条件にてシミュレーションした。
図8によると、誘電率9.4、誘電体厚みが0.9mmの誘電体において、通過帯域内の損失が1.44dBとなる。また、誘電体厚み0.86mmにおいて、挿入損失が1.5dB以上となる。誘電体厚み0.9mmに換算した場合、誘電率9.83で挿入損失が1.5dBとなる。したがって、本発明の帯域通過フィルタに用いる誘電体の誘電率は、10以下であることが望ましいことが分かる。
ここでの検証には、Q=163の共振器を用いた。
図9は本発明の通過帯域フィルタの挿入損失と、分布定数線路のQの関係を示した図である。分布定数線路のQ値を上げることで、帯域通過フィルタの損失が小さくなることがわかる。分布定数線路のQ値は、線路の高周波における導電率をあげることで向上する。
なお、ここでは通過帯域として、UWBの一方式であるMB−OFDM方式を例にしてあげたが、別の方式であるDS−CDMA方式の低周波側の通過帯域である3.1GHzから4.9GHzにおいても同様に議論できる。本発明の帯域通過フィルタの、第1から第6の共振器の長さ、第1〜第10のキャパシタ素子の容量を調整することによって、DS−CDMA方式のUWBにおいても用いることが可能になる。
Claims (11)
- それぞれ一端が接地される、長さが略1/4波長である第1から第6の共振器と、前記第1の共振器の非接地端に結合される入力部と、前記第6の共振器の非接地端に結合される出力部とを備え、
前記第2から前記第5の共振器は互いに電磁気的に結合され、
前記第1の共振器の非接地端と前記第2の共振器の非接地端とが第1のキャパシタ素子で容量結合され、前記第1の共振器の非接地端と前記第3の共振器の非接地端とが第2のキャパシタ素子で容量結合され、前記第4の共振器の非接地端と前記第6の共振器の非接地端とが第3のキャパシタ素子で容量結合され、前記第5の共振器の非接地端と前記第6の共振器の非接地端とが第4のキャパシタ素子で容量結合され、
前記入力部及び出力部は、第5及び第6のキャパシタ素子又は第1及び第2のインダクタ素子を介してそれぞれ前記第1及び第6の共振器に結合される帯域通過フィルタ。 - 前記第2から第5のいずれかの共振器の非接地端がキャパシタ素子を介して接地され、当該共振器の長さが1/4波長未満である請求項1記載の帯域通過フィルタ。
- 前記共振器を構成する導体板の形状が矩形状である請求項1又は請求項2記載の帯域通過フィルタ。
- 前記共振器がストリップ線路、マイクロストリップ線路又はコプレーナ線路である請求項1又は請求項2記載の帯域通過フィルタ。
- 前記共振器が、複数の誘電体層を積層した誘電体多層基板の内部に形成されている請求項1又は請求項2記載の帯域通過フィルタ。
- 前記誘電体層の誘電率が、3.1GHz〜10.6GHzで10以下である請求項5記載の帯域通過フィルタ。
- 前記誘電体多層基板の上面及び下面にそれぞれグランド電極が配置されている請求項5記載の帯域通過フィルタ。
- 前記グランド電極同士の間隔Dが1.0mm以下である請求項7記載の帯域通過フィルタ。
- 前記第5及び第6のキャパシタ素子の静電容量が0.5pF以上1.5pF未満である請求項1記載の帯域通過フィルタ。
- 請求項1から請求項9のいずれかに記載の帯域通過フィルタを有する高周波モジュール。
- 請求項1から請求項9のいずれかに記載の帯域通過フィルタ、又は請求項10に記載の高周波モジュールを用いた無線通信機器。
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