JP4521744B2 - 透過型ホログラム光学散乱素子及びそれを用いた反射型ホログラム光学散乱素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透過型ホログラム光学散乱素子及びそれを用いた反射型ホログラム光学散乱素子に関し、特に、投影スクリーン、白色拡散板、白色拡散反射板等に適したホログラム光学散乱素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、透過型体積ホログラムとその背面に配置した反射層からなる液晶表示装置用の拡散反射板は、特開平9−222512号等において公知である。また、透過型体積ホログラムからなる投影スクリーン、拡散板も特開平11−295507号等において知られている。
【0003】
これらの透過型体積ホログラムは、すりガラス、乳白色板等の拡散板を透過物体とし、フォトポリマー等の体積ホログラム感光材料にその透過物体からの拡散光を物体光とし、同じ側から参照光を同時に入射させて干渉記録した透過型ホログラムである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、通常の透過型体積ホログラムは回折の波長依存性が少ないが、ピーク波長が存在し、そのピーク波長を中心にして回折効率が減少してしまい、これを投影スクリーン、拡散板等に用いると色再現性が必ずしも良くない。
【0005】
従来は、このような光学散乱素子として用いられる透過型体積ホログラムとしては、例えばG(緑色)の1波長でこのような散乱性の透過型体積ホログラムを記録するか、あるいは、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3波長で記録するかの方法がとられていたが、前者の場合は上記のようなピーク波長を中心にして回折効率が減少してしまい色再現性が良くないという問題がある。また、3波長で記録する場合は、後記の例で示すように、異なる色の干渉縞により再回折が起き、回折効率が低下する問題がある。
【0006】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透過型体積ホログラムからなる光学散乱素子の記録波長を2つにすることにより、色再現性を良くし回折効率が低下するのを防止した透過型ホログラム光学散乱素子及びそれを用いた反射型ホログラム光学散乱素子を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の透過型ホログラム光学散乱素子は、体積ホログラムに拡散光を物体光として入射させ、その物体光同士の干渉縞あるいは、その物体光と同じ側から入射させた参照光との干渉縞が記録されてなる透過型ホログラム光学散乱素子において、
回折効率のピーク波長が2つあることを特徴とするものである。
【0008】
この場合に、回折効率のピーク波長が青色領域と赤色領域に存在することが望ましい。
【0009】
また、この透過型ホログラム光学散乱素子は、ピーク波長に対応する2つの波長で二重記録されてなるか、その2つの波長それぞれで記録された2つのホログラムが積層されてなることが望ましい。
【0010】
このような透過型ホログラム光学散乱素子は、例えば、投影スクリーン、白色散乱板として用いることができる。
【0011】
本発明の反射型ホログラム光学散乱素子は、体積ホログラムに拡散光を物体光として入射させ、その物体光同士の干渉縞あるいは、その物体光と同じ側から入射させた参照光との干渉縞が記録されてなり、回折効率のピーク波長が2つある透過型ホログラム光学散乱素子の裏面に反射層が配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
この場合に、透過型ホログラム光学散乱素子の回折効率のピーク波長が青色領域と赤色領域に存在することが望ましい。
【0013】
また、その透過型ホログラム光学散乱素子が、ピーク波長に対応する2つの波長で二重記録されてなるか、その2つの波長それぞれで記録された2つのホログラムが積層されてなることが望ましい。
【0014】
このような反射型ホログラム光学散乱素子は、例えば、反射型投影スクリーン、白色散乱反射板として用いることができる。
【0015】
本発明においては、回折効率のピーク波長が2つあるので、可視域全域にわたって回折効率が高く波長依存性が小さい透過型ホログラム光学散乱素子が得られ、明るく色再現性の良い投影スクリーンや白色拡散板、白色拡散反射板等として使用できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の透過型ホログラム光学散乱素子及びそれを用いた反射型ホログラム光学散乱素子を実施例の説明に基づいて説明する。
【0017】
まず、1波長記録と3波長記録の散乱性の透過型体積ホログラムの回折効率の波長依存性を具体例に基づいて説明する。図4は、屈折率n=1.52で厚さ6μmのフォトポリマーに屈折率変調Δn=0.04で記録した透過型拡散板の回折効率の波長依存性を示す図であり、記録波長は553nm、参照光入射角40°で記録している。この図4から明らかなように、回折効率は、波長400nmから700nmにわたって波長依存性が比較的小さく、ピーク波長での回折効率は極めて高い。しかしながら、G領域のピーク波長を中心として両側に回折効率が減少して行き、Gに比較してRとBの回折効率が低い。そのため、色再現性は必ずしも良くない。
【0018】
図5は、記録波長は457.9nm、参照光入射角40°で、屈折率n=1.52で厚さ10.5μmのフォトポリマーに屈折率変調Δn=0.021で記録したB用透過型拡散層と、記録波長は553nm、参照光入射角40°で、屈折率n=1.52で厚さ9μmのフォトポリマーに屈折率変調Δn=0.03で記録したG用透過型拡散層と、記録波長は647nm、参照光入射角40°で、屈折率n=1.52で厚さ8μmのフォトポリマーに屈折率変調Δn=0.037で記録したR用透過型拡散層とを重ね合わせた透過型拡散板の回折効率の波長依存性を示す図である。この図5から明らかなように、3層総合の回折効率は、波長400nmから700nmにわたって波長依存性は比較的小さいが、回折効率は余り高くない。その理由は、1層で回折された拡散光が別の層で再度回折されるため、総合の回折効率が低くなるからであり、1層に多重記録する場合にも同様の現象が起き、同様に回折効率が余り高くない。
【0019】
これに対して、図3は、2波長記録の散乱性の透過型体積ホログラムの回折効率の波長依存性の1例を示す図であり、図5の3波長の中、G用透過型拡散層を省いた構成に相当する。すなわち、記録波長は457.9nm、参照光入射角40°で、屈折率n=1.52で厚さ10.5μmのフォトポリマーに屈折率変調Δn=0.021で記録したB用透過型拡散層と、記録波長は647nm、参照光入射角40°で、屈折率n=1.52で厚さ8μmのフォトポリマーに屈折率変調Δn=0.037で記録したR用透過型拡散層とを重ね合わせた透過型拡散板の場合であり、この図3から明らかなように、2層総合の回折効率は、波長400nmから700nmにわたって波長依存性は比較的小さく、回折効率のピークはB領域とR領域の2波長にあり、その間のG領域においても、図5の3波長記録の場合より高くなっている。その理由は、B用透過型拡散層とR用透過型拡散層との回折効率の高い波長領域が相互に重ならないので、再回折がほとんど起こらないからである。1層に二重記録する場合にも同様である。なお、G領域の相対的な回折効率はB領域、R領域より低いが、人間の眼の比視感度のピークがG領域に存在することを考えると、人間が感じる色の再現性を良くする上ではこれは望ましいことである。
【0020】
このように、回折効率のピーク波長が2つあることにより、可視域全域にわたって回折効率が高く波長依存性が小さい透過型ホログラム光学散乱素子が得られ、明るく色再現性の良い投影スクリーンや白色拡散板として使用できる。
【0021】
図1(a)に、このような透過型ホログラム光学散乱素子1の拡散特性を模式的に示す。上記のような回折効率のピーク波長が2つある透過型ホログラム光学散乱素子1に前面側から所定の入射角で投影光あるいは照明光の白色光3が入射すると、裏面側に拡散角θで略白色の拡散光4が回折される。
【0022】
図1(b)は、上記のような特性の透過型ホログラム光学散乱素子1の裏面側に反射層2を一体に配置した本発明による反射型ホログラム光学散乱素子の拡散特性を模式的に示す図であり、上記のような透過型ホログラム光学散乱素子1に前面側から所定の入射角で投影光あるいは照明光の白色光3が入射すると、図1(a)のように、裏面側に拡散角θで略白色の拡散光4が回折されるが、その拡散光4は反射層2で前面側に反射され、前面側に拡散角θで略白色の拡散光4が出ることになる。
【0023】
さて、このような特性の透過型ホログラム光学散乱素子1を作製するには、特開平9−222512号や特開平11−295507号等においてよく知られている配置で撮影すればよい。図2(a)、(b)に代表的な撮影配置を示す。図2(a)の場合は、フォトポリマー等の体積ホログラム感光材料10を用意し、そのホログラム感光材料10に面してすりガラス、乳白色板等の拡散板5を配置し、その拡散板5を例えばB領域の波長とR領域の波長との2波長からなる照明光6で照明するか、照明光6の波長をB領域とR領域で切り換え、それに伴ってホログラム感光材料10を交換しながら、拡散板5を透過して拡散光7となった光を物体光とし、同じ側から所定の入射角で物体光7と可干渉な参照光8を同時に入射させてホログラム感光材料10中で干渉させて二重記録するか、交換した別々の層に記録し、2つの層を積層することにより、図1の透過型ホログラム光学散乱素子1が得られる。
【0024】
図2(b)の場合は、フォトポリマー等の体積ホログラム感光材料10を用意し、そのホログラム感光材料10に面してすりガラス、乳白色板等の拡散板5を配置し、その拡散板5を例えばB領域の波長とR領域の波長との2波長からなる照明光6で照明するか、照明光6の波長をB領域とR領域で切り換え、それに伴ってホログラム感光材料10を交換しながら、拡散板5を透過して拡散光となった光7をホログラム感光材料10に入射させ、拡散光7同士をホログラム感光材料10中で干渉させて二重記録するか、交換した別々の層に記録し、2つの層を積層することにより、図1の透過型ホログラム光学散乱素子1が得られる。
【0025】
以上、本発明の透過型ホログラム光学散乱素子及びそれを用いた反射型ホログラム光学散乱素子を実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の透過型ホログラム光学散乱素子及びそれを用いた反射型ホログラム光学散乱素子によると、回折効率のピーク波長が2つあるので、可視域全域にわたって回折効率が高く波長依存性が小さい透過型ホログラム光学散乱素子が得られ、明るく色再現性の良い投影スクリーンや白色拡散板、白色拡散反射板等として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による透過型ホログラム光学散乱素子と反射型ホログラム光学散乱素子の拡散特性を模式的に示す図である。
【図2】本発明による透過型ホログラム光学散乱素子の代表的な撮影配置を示す図である。
【図3】本発明による2波長記録の散乱性透過型体積ホログラムの回折効率の波長依存性の1例を示す図である。
【図4】従来の1波長記録の散乱性透過型体積ホログラムの回折効率の波長依存性の例を示す図である。
【図5】従来の3波長記録の散乱性透過型体積ホログラムの回折効率の波長依存性の例を示す図である。
【符号の説明】
1…透過型ホログラム光学散乱素子
2…反射層
3…白色光
4…拡散光
5…拡散板
6…照明光
7…拡散光
8…参照光
10…体積ホログラム感光材料
Claims (10)
- 体積ホログラムに拡散光を物体光として入射させ、その物体光同士の干渉縞あるいは、その物体光と同じ側から入射させた参照光との干渉縞が記録されてなる透過型ホログラム光学散乱素子において、
回折効率のピーク波長が青色領域と赤色領域の2つにあることを特徴とする透過型ホログラム光学散乱素子。 - 前記ピーク波長に対応する2つの波長で二重記録されてなることを特徴とする請求項1記載の透過型ホログラム光学散乱素子。
- 前記ピーク波長に対応する2つの波長それぞれで記録された2つのホログラムが積層されてなることを特徴とする請求項1記載の透過型ホログラム光学散乱素子。
- 投影スクリーンとして用いることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の透過型ホログラム光学散乱素子。
- 白色散乱板として用いることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の透過型ホログラム光学散乱素子。
- 体積ホログラムに拡散光を物体光として入射させ、その物体光同士の干渉縞あるいは、その物体光と同じ側から入射させた参照光との干渉縞が記録されてなり、回折効率のピーク波長が青色領域と赤色領域の2つにある透過型ホログラム光学散乱素子の裏面に反射層が配置されていることを特徴とする反射型ホログラム光学散乱素子。
- 前記透過型ホログラム光学散乱素子が前記ピーク波長に対応する2つの波長で二重記録されてなることを特徴とする請求項6記載の反射型ホログラム光学散乱素子。
- 前記透過型ホログラム光学散乱素子が前記ピーク波長に対応する2つの波長それぞれで記録された2つのホログラムが積層されてなることを特徴とする請求項6記載の反射型ホログラム光学散乱素子。
- 反射型投影スクリーンとして用いることを特徴とする請求項6から8の何れか1項記載の反射型ホログラム光学散乱素子。
- 白色散乱反射板として用いることを特徴とする請求項6から8の何れか1項記載の反射型ホログラム光学散乱素子。
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