JP4508410B2 - 熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムまたはシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性、成形性、柔軟性等に優れ、かつ引張り時や折り曲げ時に白化せず、さらに透明性を具備した熱可塑性樹脂組成物のフィルムまたはシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル酸エステル系樹脂はプラスチックの中でも特に耐候性および透明性に優れているため、種々の分野で使用され、たとえばシート、フィルム状に成形し、プラスチック、木材、金属など種々の材料にラミネートして基材の劣化防止、美観の維持などのために広く用いられている。前記フィルムはフィルム成形性および耐衝撃性を良くするために、通常、メタクリル酸エステル系樹脂にゴム成分を分散させる、グラフト重合体にする際にグラフト層およびフリーポリマー部分の柔軟化を行う、などの方法が、また耐衝撃性を向上させるためにグラフト層およびフリーポリマー部分の組成を多段に分ける方法が行われている(特公昭47−13371号公報、特公昭50−9022号公報)。さらに、耐衝撃性、折曲白化性を改善する目的でゴム状重合体成分の内層部のTgを10℃以上にすることも提案されている(特公昭59−36645号公報、特公昭59−36646号公報)。
【0003】
しかしながら、これらの方法では未だ耐衝撃性が低く、フィルムをラミネートした場合に基材が割れたり、折り曲げ時や引張り時に白化するという現象が起こる。さらに、ゴム成分を増量して耐衝撃性を向上させても成形性の低下、透明性の低下、耐可塑剤移行性の低下により商品価値が損なわれやすいという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、耐候性、成形性、柔軟性等に優れ、かつ引張り時や折り曲げ時に白化せず、さらには透明性を有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルからなる共重合体と、メタクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体とを組み合わせることで、耐候性、成形性、柔軟性等に優れ、かつ引張り時や折り曲げ時に白化しない熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムまたはシートとなることを見出し、本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、(a)アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体5〜95重量%と、(b)メタクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体95〜5重量%からなる熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムまたはシート(請求項1)、
共重合体(a)がフリーポリマー(a−1)と、内層部(コア部)と外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト重合体(a−2)とからなることを特徴とする請求項1記載のフィルムまたはシート(請求項2)、
共重合体(a)が内層部(コア部)と外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト重合体(a−3)であることを特徴とする請求項1記載のフィルムまたはシート(請求項3)、
コアシェル型グラフト重合体のコア部の重量平均粒子径が500〜1900Åの範囲であることを特徴とする請求項2又は3記載のフィルムまたはシート(請求項4)、
ブロック共重合体(b)のメタクリル系重合体ブロックがメタクリル酸メチルを主成分とし、アクリル系重合体ブロックがアクリル酸ブチルを主成分としてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のフィルムまたはシート(請求項5)及び
ブロック共重合体(b)が原子移動ラジカル重合により製造されたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のフィルムまたはシート(請求項6)に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に使用しうるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルからなる共重合体(a)の形態は、ランダム共重合体、交互共重合体、枝部および幹部を含有する櫛形グラフト共重合体、内層部(コア部)および外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト共重合体、およびアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルからなる内層部(コア部)の存在下にアクリル酸エステルを含むメタクリル酸エステルを多段階的に追加重合して得られる共重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルからなる単量体混合物を多段階的にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの組成を変化させながら追加重合して得られる共重合体(グラジエント共重合体)、中心部および中間層部および外層部を含有する三層コアシェル粒子型グラフト共重合体、などがあげられる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらは組み合わせるブロック共重合体の性質に応じて用いられ、フィルムまたはシートの成形性、成形したフィルムまたはシートの透明性、および引張り時や折り曲げ時の耐白化性の点では、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、グラジエント共重合体などからなるフリーポリマー(a−1)と、内層部(コア部)と外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト共重合体(a−2)とからなるのが好ましく、成形したフィルムまたはシートの耐衝撃性等の点では、内層部(コア部)と外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト共重合体(a−3)とからなるのが好ましい。また、前記、コアシェル型グラフト共重合体(a−2)および(a−3)は、コア部の重量平均粒子径が500〜1900Åの範囲であることがフイルムあるいはシートの透明性の点で好ましい。
【0007】
本発明のフリーポリマー(a−1)は、ゲル分を有さない重合体であり、その重合形態はランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、グラジエント共重合体などからなるが、重合の簡便性の点で、ランダム共重合体が好ましい。(a−1)に用いられるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの割合は特に限定されないが、得られる(a−1)のガラス転移温度、屈折率、成形性、透明性、耐衝撃性、コアシェル型グラフト重合体(a−2)または(a−3)とブロック共重合体(b)との相溶性のバランスから例えば、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの使用量の重量比(アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル)5/95〜95/5の範囲で決定すればよい。
【0008】
前記フリーポリマー(a−1)に用いられるアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸-n-ペンチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-n-ヘプチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等を挙げることができる。成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性の点では、アクリル酸アルキルエステルやアクリル酸グリシジルエステルが好ましく、耐油性の点では、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピルが好ましい。さらに、重合速度の点で、アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜8が好ましく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい。
【0009】
前記の中でも、成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性および入手しやすさの点で、アクリル酸−n−ブチルがより好ましい。
また、本発明のフリーポリマー(a−1)に用いられるメタクリル酸エステルは、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸-n-プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸-n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸-t-ブチル、メタアクリル酸-n-ペンチル、メタアクリル酸-n-ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸-n-ヘプチル、メタアクリル酸-n-オクチル、メタアクリル酸-2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等を挙げることができる。成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性の点で、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、耐油性の点で、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピルが好ましい。さらに、重合速度の点でメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、例えば、代表例としてメタクリル酸メチルが挙げられるが、その他にメタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0010】
前記メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい。前記の中でも、フィルムの成形性および入手しやすさの点で、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0011】
(a−1)に用いられるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの組み合わせを例示すると、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸-2-メトキシエチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸-2-メトキシエチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。その中でも、フィルムの成形性および入手しやすさの点でアクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルが好ましい。
【0012】
本発明のフリーポリマー(a−1)のガラス転移温度(Tg)は、成形したフィルムまたはシートの成形性や柔軟性等の点から、25〜100℃の範囲であることが好ましく、45〜90℃の範囲であることがより好ましい。ガラス転移温度が25℃未満では成形性が低下する傾向があり、100℃を越えると成形したフィルムまたはシートの柔軟性や耐衝撃性が不充分となる傾向がある。
【0013】
前記、重合体のガラス転移温度(Tg)の設定は、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行うことができる。なお、上記ガラス転移温度(Tg)はDSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0014】
1/Tg=(W1 /Tg1 )+(W2 /Tg2 )+…+(Wm /Tgm )
W1 +W2 +…+Wm =1〔式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表し、Tg1 、Tg2、…、Tgm は各重合単量体のガラス転移温度を表す。また、W1、W2 、…、Wm は各重合単量体の重量比率を表す。〕
前記共重合体(a)がフリーポリマー(a−1)と、内層部(コア部)と外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト重合体(a−2)とからなる場合、(a−2)に用いられるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの割合は特に限定されず、得られる(a−2)のコア部およびシェル部のガラス転移温度、全体の屈折率、成形性、フリーポリマー(a−1)やブロック共重合体(b)との相溶性のバランスから決定すればよい。
本発明のコアシェル型グラフト重合体(a−2)に用いられるアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸-n-ペンチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-n-ヘプチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等を挙げることができる。成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性の点では、アクリル酸アルキルエステルやアクリル酸グリシジルエステルが好ましく、耐油性の点では、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピルが好ましい。さらに、重合速度の点で、アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜8が好ましく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい。
【0015】
前記の中でも、成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性および入手しやすさの点で、アクリル酸−n−ブチルがより好ましい。
【0016】
また、本発明のコアシェル型グラフト重合体(a−2)に用いられるメタクリル酸エステルは、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸-n-プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸-n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸-t-ブチル、メタアクリル酸-n-ペンチル、メタアクリル酸-n-ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸-n-ヘプチル、メタアクリル酸-n-オクチル、メタアクリル酸-2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等を挙げることができる。成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性の点で、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、耐油性の点で、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピルが好ましい。さらに、重合速度の点でメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、例えば、代表例としてメタクリル酸メチルが挙げられるが、その他にメタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0017】
(a−2)に用いられるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの組み合わせを例示すると、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸-2-メトキシエチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸-2-メトキシエチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。その中でも、フィルムの成形性および入手しやすさの点でアクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルが好ましい。
【0018】
前記メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい。前記の中でも、フィルムの成形性および入手しやすさの点で、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0019】
前記フリーポリマー(a−1)およびコアシェル型グラフト共重合体(a−2)に用いられる、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルは、異なっていてもよく、同じでもよい。
【0020】
また、(a−1)および(a−2)は、別々に重合した後に配合してもよく、同一重合機にて(a−2)を重合した後、(a−1)を重合することもできる。製造工程性やコストなどの点から、同一重合機にて(a−2)を重合した後、(a−1)を重合するのが好ましい。
【0021】
本発明のコアシェル型グラフト共重合体(a−2)は、成形したフィルムまたはシートの成形性や柔軟性等の点から、内層部(コア部)のガラス転移温度が25℃未満であり、外層部(シェル部)のガラス転移温度が−35℃〜25℃の範囲であることが好ましい。
【0022】
前記、重合体のガラス転移温度(Tg)の設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行うことができる。なお、上記ガラス転移温度(Tg)はDSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0023】
前記コアシェル型グラフト共重合体(a−2)中のコア部とシェル部の割合は、とくに限定されないが、このグラフト共重合体(a−2)全体の重量を基準にして、コア部が10〜80重量%、シェル部が90〜20重量%であることが好ましく、コア部が20〜65重量%、シェル部が80〜35重量%であることがより好ましい。コア部が10重量%未満では耐衝撃性付与効果が低下する傾向があり、また、80重量%をこえるとフリーポリマー(a−1)およびブロック共重合体(b)と混合した場合の分散が不充分となる傾向がある。
【0024】
前記共重合体(a)中のフリーポリマー(a−1)とコアシェル型グラフト重合体(a−2)の割合は、特に限定されないが、この共重合体(a)全体の重量を基準にして、(a−1)が20〜70重量%、(a−2)が80〜30重量%であることが好ましく、(a−1)が30〜60重量%、(a−2)が70〜40重量%であることがより好ましい。(a−1)が70重量%を越えると、フィルムの耐白化性や柔軟性が低下し、20重量%未満では、成形性が低下する傾向がある。
【0025】
前記共重合体(a)が内層部(コア部)と外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト重合体(a−3)からなる場合、(a−3)に用いられるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの割合は特に限定されず、得られる(a−3)のコア部およびシェル部のガラス転移温度、全体の屈折率、成形性、フリーポリマー(a−1)やブロック共重合体(b)との相溶性のバランスから決定すればよい。
【0026】
本発明のコアシェル型グラフト重合体(a−3)に用いられるアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸-n-ペンチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-n-ヘプチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等を挙げることができる。成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性の点では、アクリル酸アルキルエステルやアクリル酸グリシジルエステルが好ましく、耐油性の点では、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピルが好ましい。さらに、重合速度の点で、アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜8が好ましく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい。
【0027】
前記の中でも、成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性および入手しやすさの点で、アクリル酸−n−ブチルがより好ましい。
【0028】
また、本発明のコアシェル型グラフト重合体(a−3)に用いられるメタクリル酸エステルは、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸-n-プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸-n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸-t-ブチル、メタアクリル酸-n-ペンチル、メタアクリル酸-n-ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸-n-ヘプチル、メタアクリル酸-n-オクチル、メタアクリル酸-2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチル等を挙げることができる。成形してなるフィルムまたはシートの耐衝撃性の点で、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、耐油性の点で、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピルが好ましい。さらに、重合速度の点でメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、例えば、代表例としてメタクリル酸メチルが挙げられるが、その他にメタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
前記メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい。前記の中でも、フィルムの成形性および入手しやすさの点で、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0029】
(a−3)に用いられるアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの組み合わせを例示すると、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸-2-メトキシエチル/メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸-2-メトキシエチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。その中でも、フィルムの成形性および入手しやすさの点でアクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルが好ましい。
【0030】
本発明のコアシェル型グラフト共重合体(a−3)は、成形したフィルムまたはシートの柔軟性や耐衝撃性等の点から、内層部(コア部)のガラス転移温度が25℃未満であり、外層部(シェル部)のガラス転移温度が25℃以上であることが好ましい。
【0031】
前記、重合体のガラス転移温度(Tg)の設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行うことができる。なお、上記ガラス転移温度(Tg)はDSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0032】
前記コアシェル型グラフト共重合体(a−3)中のコア部とシェル部の割合は、とくに限定されないが、このグラフト共重合体(a−3)全体の重量を基準にして、コア部が10〜80重量%、シェル部が90〜20重量%であることが好ましく、コア部が20〜65重量%、シェル部が80〜35重量%であることがより好ましい。コア部が10重量%未満では耐衝撃性付与効果が低下する傾向があり、また、80重量%をこえるとブロック共重合体(b)と混合した場合の分散が不充分となる傾向がある。
【0033】
また、コアシェル型グラフト共重合体(a−3)は、ブロック共重合体(b)と混合した場合の分散が不充分となる場合や、成形性が低下する場合には、フリーポリマー(a−1)と組み合わせて用いることもできる。
【0034】
前記コアシェル型グラフト重合体(a−2)および(a−3)のコア部の重量平均粒子径は、300〜3000Å、好ましくは400〜2500Å、さらに好ましくは500〜1900Åの範囲である。重量平均粒子径が300Å未満では、耐衝撃性が低下するので好ましくなく、3000Åを超えるとフィルムまたはシートの成形性が低下したり、成形したフィルムまたはシートに透明性が要求される場合に透明性が低下するので好ましくない。重量平均粒子径は動的光散乱法によって測定される。
【0035】
本発明で用いられるコアシェル型グラフト共重合体(a−2)および(a−3)を構成するコア部は、後述する架橋剤、および/または、グラフト交叉剤に由来する部分を含有するものであってもよい。
【0036】
前記架橋剤とは1分子内に複数の官能基を有する化合物であって、複数の官能基の反応性が同じものであり、前記グラフト交叉剤とは1分子内に複数の官能基を有する化合物であって、複数の官能基の反応性が異なるものである。架橋剤は同一重合体成分中に架橋結合を生じさせる目的で使用し、グラフト交叉剤は、異なる重合体成分間に交叉結合を生じさせる目的で使用するが、実際の作用においては、架橋剤が異なる重合体成分間に交叉結合を生じさせるばあいもあれば、グラフト交叉剤が同一重合体成分中に架橋結合を生じさせるばあいもあり、両者の作用の区分は明確でない。
【0037】
前記架橋剤および/またはグラフト交叉剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートまたはこれらのメタクリレートをアクリレートにしたもの、ジビニルベンゼン、ジビニルアジペートなどのビニル基含有多官能性単量体、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル基含有多官能性単量体などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0038】
前記架橋剤および/またはグラフト交叉剤は、(a−2)および(a−3)成分のゲル含有率および樹脂成分単量体のグラフト率に影響を及ぼす。その多官能性単量体の使用量は(a−2)および(a−3)成分に使用される単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。使用量が0.1重量部より少ない場合には、透明性あるいは耐可塑剤移行性が低下し、20重量部を超える場合には伸度や耐衝撃性などが低下する。
【0039】
また、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムまたはシートに、透明性が要求される場合は、前記共重合体(a)の屈折率を用いるブロック体(b)の屈折率に一致させることで実現でき、共重合体(a)とブロック体(b)の屈折率の差が0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。さらに、成形したフィルムまたはシートに優れた透明性が必要とされる場合には、0.01以下であることが特に好ましい。本発明の共重合体(a)の屈折率(nD)は、下記の式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行うことができる。なお重合体の屈折率(nD)は、光源としてナトリウムランプのD線を使用して測定したものである。
(nD)=(nD1+nD2+…+nDm)/(W1+W2+…+Wm)
W1 +W2 +…+Wm =1〔式中、nDは重合体部分の屈折率を表し、nD1、nD2、…、nDmは各重合単量体の屈折率を表す。また、W1 、W2 、…、Wm は各重合単量体の重量比率を表す。〕
本発明の共重合体(a)の製造方法は特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、製造コストが安価で、反応熱を除きやすいという点から、乳化重合法で製造するのが好ましい。
【0040】
前記乳化重合法においては、通常の重合開始剤、とくに遊離基を発生する重合開始剤が使用される。このような重合開始剤の具体例としては、たとえば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物や、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物などが挙げられる。さらに、アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤も使用される。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0041】
これら重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄などの還元剤と組み合わせた通常のレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
【0042】
前記乳化重合に使用される界面活性剤にも特に限定はなく、通常の乳化重合用の界面活性剤であれば使用することができる。例えば、アルキル硫酸ソーダ、アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ、ラウリン酸ソーダなどの陰イオン性界面活性剤やアルキルフェノール類とエチレンオキサイドとの反応生成物などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じて、アルキルアミン塩酸塩などの陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
【0043】
このような共重合により得られる重合体ラテックスから、通常の凝固(たとえば、塩を用いた凝固)と洗浄により、または噴霧、凍結乾燥などによる処理により樹脂組成物が分離、回収される。
【0044】
本発明に使用しうるメタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体(b)は、メタアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(A)とアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1つ含有するブロック共重合体である。
【0045】
前記ブロック共重合体(b)は、A-B型のジブロック共重合体、A-B-A型のトリブロック共重合体、B-A-B型のトリブロック共重合体、(A-B)n型のマルチブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体である。これらの中でも、フィルムまたはシートの成形性や成形したフィルムまたはシートの柔軟性の点から、A-B型のジブロック共重合体、A-B-A型のトリブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましい。
【0046】
前記ブロック共重合体(b)の構造は、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体であり、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、熱可塑性樹脂組成物の加工特性や機械特性などの必要特性に応じて使い分けられる。
【0047】
ブロック共重合体(b)の数平均分子量は特に限定されないが、30000〜500000が好ましく、更に好ましくは、50000〜400000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるため、必要とする加工特性に応じて設定される。分子量はクロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC法によりポリスチレン換算によって測定される。
【0048】
前記ブロック共重合体(b)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定がないが、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8を越えるとブロック共重合体の均一性が低下する傾向がある。
【0049】
ブロック共重合体(b)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の組成比は、ブロック(A)が5〜95重量%、ブロック(B)が95〜5重量%であり、シートまたはフィルムの成形性、柔軟性、耐白化性等の点で、好ましくは、(A)が10〜80重量%、(B)が90〜20重量%であり、さらに好ましくは、(A)が20〜70重量%、(B)が80〜30重量%である。(A)の割合が5重量%より少ないとフィルムまたはシートの成形性が低下する傾向があり、(B)の割合が10重量%より少ないと成形したフイルムまたはシートの柔軟性が低下し、引張り時や折り曲げ時の耐白化性が低下する傾向がある。
【0050】
ブロック共重合体(b)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(A)は、メタアクリル酸エステル50-100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0-50重量%とからなる。
【0051】
(A)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸-n-プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸-n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸-tert-ブチル、メタアクリル酸-n-ペンチル、メタアクリル酸-n-ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸-n-ヘプチル、メタアクリル酸-n-オクチル、メタアクリル酸-2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
【0052】
(A)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸-n-ペンチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-n-ヘプチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、組み合わせる共重合体(a)との相溶性によって好ましいものを選択することができる。
【0053】
(A)のガラス転移温度は、25℃以上であり、好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上である。ガラス転移温度が25℃より低いと、成形したフィルムまたはシートの成形性や耐熱性が低くなる傾向がある。
【0054】
前記ブロック共重合体(b)を構成するアクリル系重合体ブロック(B)は、アクリル酸エステル50-100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0-50重量%とからなることが好ましい。
【0055】
(B)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸-n-ペンチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-n-ヘプチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、成形したフィルムまたはシートの柔軟性、耐白化性および入手しやすさの点で、アクリル酸-n-ブチルが好ましい。
【0056】
ブロック(B)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸-n-プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸-n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸-t-ブチル、メタアクリル酸-n-ペンチル、メタアクリル酸-n-ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸-n-ヘプチル、メタアクリル酸-n-オクチル、メタアクリル酸-2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、ブロック(B)に要求されるガラス転位温度によって好ましいものを選択することができる。 (B)のガラス転位温度は、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは-20℃以下である。ガラス転位温度が25℃より高いと、成形したフィルムまたはシートの柔軟性、耐白化性が低下する傾向がある。
【0057】
ブロック共重合体(b)を製造する方法としては特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられ、リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
【0058】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0059】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(例えば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1-1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0060】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましく、A-B-A型のトリブロック共重合体、B-A-B型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用するのが好ましい。
【0061】
一官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H5-CH2X、
C6H5-C(H)(X)-CH3、
C6H5-C(X)(CH3)2、
R1-C(H)(X)-COOR2、
R1-C(CH3)(X)-COOR2、
R1-C(H)(X)-CO-R2、
R1-C(CH3)(X)-CO-R2、
R1-C6H4-SO2X
(式中、C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。R1は水素原子または炭素数1-20のアルキル基、炭素数6-20のアリール基、または炭素数7-20のアラルキル基を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。R2は炭素数1-20の一価の有機基を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0062】
二官能性化合物としては、たとえば、式:
X-CH2-C6H4-CH2-X、
X-CH(CH3)-C6H4-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-C6H4-C(CH3)2-X、
X-CH(COOR3)-(CH2)n-CH(COOR3)-X、
X-C(CH3)(COOR3)-(CH2)n-C(CH3)(COOR3)-X、
X-CH(COR3)-(CH2)n-CH(COR3)-X、
X-C(CH3)(COR3)-(CH2)n-C(CH3)(COR3)-X、
X-CH2-CO-CH2-X、
X-CH(CH3)-CO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-CO-C(CH3)2-X、
X-CH(C6H5)-CO-CH(C6H5)-X、
X-CH2-COO-(CH2)n-OCO-CH2-X、
X-CH(CH3)-COO-(CH2)n-OCO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-COO-(CH2)n-OCO-C(CH3)2-X、
X-CH2-CO-CO-CH2-X、
X-CH(CH3)-CO-CO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-CO-CO-C(CH3)2-X、
X-CH2-COO-C6H4-OCO-CH2-X、
X-CH(CH3)-COO-C6H4-OCO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-COO-C6H4-OCO-C(CH3)2-X、
X-SO2-C6H4-SO2-X
(式中、R3は炭素数1-20のアルキル基、炭素数6-20アリール基、または炭素数7-20アラルキル基を表す。C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。C6H5はフェニル基を表す。nは0-20の整数を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0063】
多官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H3-(CH2-X)3、
C6H3-(CH(CH3)-X)3、
C6H3-(C(CH3)2-X)3、
C6H3-(OCO-CH2-X)3、
C6H3-(OCO-CH(CH3)-X)3、
C6H3-(OCO-C(CH3)2-X)3、
C6H3-(SO2-X)3
(式中、C6H3は三置換フェニル基(置換基の位置は1位-6位のいずれでもよい)を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0064】
また、重合を開始するもの以外に官能基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端に官能基が導入された重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0065】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基などと結合しており、炭素-ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御できる。
【0066】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体があげられる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体がより好ましい。
【0067】
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。銅化合物をもちいる場合、触媒活性を高めるために2,2′-ビピリジルおよびその誘導体、1,10-フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2-アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も、触媒として好ましい。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
【0068】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。前述したように、無溶媒で実施する場合は塊状重合となる。一方、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。
【0069】
また、前記重合は、室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、50〜150℃の範囲である。
【0070】
前記重合により、ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応による結合する方法などがあげられる。これらの方法は目的に応じて使い分ければよいが、製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0071】
本発明に使用される共重合体(a)とブロック共重合体(b)の配合量は、共重合体(a)が5〜95重量%およびブロック共重合体(b)が95〜5重量%であり、フィルムまたはシートの成形性や成形したフィルムまたはシートの柔軟性や耐白化性等の点で、(a)が30〜70重量%および(b)が70〜30重量%がより好ましい。ブロック共重合体(b)の配合量が5%重量以下では、フィルムまたはシートの成形性、成形したフィルムの柔軟性、耐白化性の改良効果が低くなる傾向があり、95重量%以上では、成形したフィルムまたはシートの成形性等の特徴が出しにくい傾向がある。フィルムあるいはシートの厚みについて厳格な規定はないが、厚み1〜300μm程度を一般にフィルム、厚み300μmを越えて20mm程度までをシートとよぶ。
【0072】
本発明の共重合体(a)と、ブロック共重合体(b)からなる熱可塑性樹脂組成物を配合し製造する方法としては、バンバリーミキサー、ロールミル、二軸押出機などの公知の装置を用い、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。賦形されたペレットは、幅広い温度範囲で成形可能である。
【0073】
さらに、この熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、共重合体(a)とブロック共重合体(b)の他に、他の重合体や安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤などを配合しうる。具体的には、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、EPR、EPDM等の重合体;トリフェニルホスファイト、ヒンダードフェノール、ジブチル錫マレエートなどの安定剤;パラフィン系オイル、ポリブテン系オイル、軽油、スピンドル油、マシン油、アマニ油、ゴマ油、ヒマシ油、ツバキ油、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、トリクレジルホスフェートなどの可塑剤;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどの滑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどの難燃剤;酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの顔料;ガラス繊維、アスベスト、ウォラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤などがあげられる。
【0074】
フィルムまたはシートの成形には、上記熱可塑性樹脂組成物を、押出し成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、射出成形などの任意の成形加工法によって成形加工することができるが、製造工程性、コストなどの点から押出し成形法によりシートを成形するのが好ましい。押出し成形は、Tダイ、リングダイなどの所望の形状・寸法のダイから溶融押出しし、冷却することにより行なうことができる。なお、押出しと同時または押出し後に一軸または二軸方向に延伸することも可能である。
【0075】
以下、本発明において、所望とされる物性に応じた設計を例示するが、発明の範囲はそれらに限定されない。
【0076】
本発明において、所望により、透明性、柔軟性および耐白化性のバランスに優れたフィルムまたはシートが必要とされる場合、フリーポリマー(a−1)、コアシェル型ブロック共重合体(a−2)およびブロック共重合体(b)がアクリル酸−n−ブチルとメタクリル酸メチルからなり、(a−1)のガラス転移温度が60〜80℃であり、(a−2)中のコア部とシェル部の割合が、(a−2)全体の重量を基準にして、コア部が60重量%、シェル部が40重量%であり、共重合体(a)中の(a−1)と(a−2)の割合が(a)全体の重量を基準にして、(a−1)が50重量%、(a−2)が50重量%であり、ブロック体(b)中のメタアクリル系重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の割合が、(b)全体の重量を基準にして(A)が30重量%、(B)が70重量%であり、共重合体(a)とブロック共重合体(b)の割合が、熱可塑性組成物全体の重量を基準にして、(a)が55重量%、(b)が45重量%からなるようなフィルムまたはシートが好ましい。
【0077】
また、所望により、耐衝撃性および、柔軟性に優れたフィルムまたはシートが必要とされる場合、コアシェル型ブロック共重合体(a−3)およびブロック共重合体(b)がアクリル酸−n−ブチルとメタクリル酸メチルからなり、(a−3)中のコア部とシェル部の割合が、(a−3)全体の重量を基準にして、コア部が50重量%、シェル部が50重量%であり、ブロック体(b)中のメタアクリル系重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の割合が、(b)全体の重量を基準にして(A)が30重量%、(B)が70重量%であり、共重合体(a)とブロック体(b)の割合が、熱可塑性組成物全体の重量を基準にして、(a)が55重量%、(b)が45重量%からなるようなフィルムまたはシートが好ましい。
【0078】
さらに、所望により、透明性、成形性および耐白化性に優れたフィルムが必要とされる場合、フリーポリマー(a−1)、コアシェル型ブロック共重合体(a−2)およびブロック共重合体(b)がアクリル酸−n−ブチルとメタクリル酸メチルからなり、(a−1)のガラス転移温度が60〜80℃であり、(a−2)中のコア部とシェル部の割合が、(a−2)全体の重量を基準にして、コア部が60重量%、シェル部が40重量%であり、共重合体(a)中の(a−1)と(a−2)の割合が(a)全体の重量を基準にして、(a−1)が50重量%、(a−2)が50重量%であり、ブロック体(b)中のメタアクリル系重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の割合が、(b)全体の重量を基準にして(A)が60重量%、(B)が40重量%であり、共重合体(a)とブロック共重合体(b)の割合が、熱可塑性組成物全体の重量を基準にして、(a)が20重量%、(b)が80重量%からなるようなフィルムまたはシートが好ましい。
【0079】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0080】
また、以下の記載における略号は、それぞれ下記の物質を示す。
B A;アクリル酸ブチル MMA;メタクリル酸メチル。
【0081】
製造例1(MMA-BA系フリーポリマーおよびMMA-BA系コアシェル型グラフト共重合体)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、モノマー追加装置、還流冷却器を備えた8l重合器に蒸留水200重量部、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.0重量%を加えた後、アクリル酸ブチル85重量%及びメタクリル酸メチル15重量%と、架橋性単量体としてトリアリルイソシアヌレート0.1重量%を含む単量体混合物30重量部と、これにあらかじめ溶解させたキュメンハイドロパーオキサイド(0.1重量%対単量体混合物)を加えて重合器内に注入し、窒素気流中で攪拌を行いながら重合温度を40℃に設定する。その後少量の水に溶解したナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(0.1重量%対単量体混合物)の溶液を徐々に加えて重合を開始し、約4時間で添加率が95%以上となったので重合を完了した。このようにして得た架橋弾性体エマルジョンのゲル含量は96.4%、膨潤度は7.3で、エマルジョンの平均粒子径は1450Åであった。次に重合温度を80℃に昇温し、メタクリル酸メチル50重量%及びアクリル酸ブチル50重量%を含む単量体混合物20重量部と触媒としてキュメンハイドロパーオキサイド(0.3重量%対単量体混合物)を前記単量体混合物に溶解する。これと別にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(0.2重量%対単量体混合物)を少量の水に溶解し、事前に重合器内に添加しておく。その後、単量体追加ポンプにて窒素気流中、攪拌下に前記単量体混合物を約2時間で追加し(a−2−1)を得た。さらに引き続き、(a−2−1)の存在下、メタクリル酸メチル80重量%及びアクリル酸ブチル20重量%と触媒としてキュメンハイドロパーオキサイド(0.3重量%対単量体混合物)を溶解した単量体混合物50重量部を同じく追加ポンプで約4時間で追加し(a−1−1)の重合をおこなった。このようにして得た重合終了液を塩化カルシウム溶液で塩析し、水洗、乾燥を行い、共重合体(a−1)の乾燥粉末を得た。
(架橋弾性体のゲル含有率)架橋弾性体を100メッシュ金網上に所定量採取し、メチルエチルケトンに48時間浸漬し、減圧乾燥してメチルエチルケトンを除去した後、恒量になった重量を読みとり、次式により算出した。
ゲル含有率=(ア)×100/(イ)
(ア):再乾燥後の重量 (イ):採取サンプルの重量
(ガラス転移温度)「ポリマー・ハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience,1989]」に記載されている値(MMA;105℃,BA;−54℃)をフォックス(Fox)の式を用いて算出した。
【0082】
製造例2(MMA−BA系ブロック共重合体)
MMA−BA−MMA型ブロック共重合体を得るために以下の操作を行った。
500mlのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、臭化銅1.25g(8.7mモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)20mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌した後、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.63g(1.7mモル)、アクリル酸ブチル89.4g(100.0ml)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.18ml(0.9mモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりアクリル酸ブチルの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。アクリル酸ブチルの転化率が95%の時点で、メタクリル酸メチル38.4g(41.0ml)、塩化銅0.86g(8.7mモル)、ジエチレントリアミン0.18ml(0.9mモル)、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)123.1mlを加えた。同様にして、メタクリル酸メチルの転化率を決定した。メタクリル酸メチルの転化率が85%、アクリル酸ブチルの転化率が98%の時点で、トルエン150mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。 反応中常に重合溶液は緑色であった。
【0083】
反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体(b−1)を得た。
得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが115000、分子量分布Mw/Mnが1.50であった。またNMRによる組成分析を行ったところ、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル=72/28(wt%)であった。
(分子量・分子量分布)
クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行い、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(ブロック化率)
エタノールを用いて、可溶分と不溶分に分離し、可溶分をホモポリアクリル酸ブチルとして除いた。次に、クロロホルム/エタノールの重量比が15/85の混合溶液を用いて、可溶分と不溶分に分離し、不溶分をホモポリメタアクリル酸メチルとして除いた。残った可溶分をブロック共重合体として、その重量分率をブロック化率とした。また、1H-NMRにより、ブロック共重合体中のポリアクリル酸ブチルとポリメタアクリル酸メチルの重量分率を確認した。
(ガラス転位温度)
JIS K7121に従い、DSC(示差走査熱量測定)を用い、20℃/分の昇温速度で測定した。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。実施例及び比較例中の測定、評価は次の条件及び方法を用いて行った。
【0084】
(引張り特性)JIS K6251に記載の方法に準拠して、0℃において、n= 3で測定した値の平均値を採用した。
【0085】
(耐白化性)成形したフィルムを前記記載の引張り試験を行い、引張り試験後の破断部の白化を評価した。
(透明性)日本電色工業株式会社製のヘイズメーターを用いて 、常法により、50μmの厚みのフィルムの全光線透過率(TT)、曇価(ヘイズ)を測定した。23℃で測定し、単位は%である。
【0086】
実施例1
ブロック共重合体としてMMA-BA系ブロック共重合体である(b-1)を33重量部、フリーポリマーとコアシェル型グラフト共重合体とからなる共重合体として(a−1)を67重量部、安定剤としてイルガノックス1010(チバガイギー株式会社製)0.2重量部配合し、設定温度200℃で5分間ロール混練した。得られた混練物を、設定温度200℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用のシートを得た。得られたシートは柔軟で透明なシートであった。得られたシートの引っ張り特性を以下の方法によって測定したところ、弾性率257MPa、破断強度20MPa、破断伸び83%であった。引張り試験後の破断面にほとんど白化が見られなかった。
さらに、上記2mm厚さのシートを200℃で熱プレス成形し、厚さ250μmのフィルムにして透明性の測定を行ったところ、TTが93%、ヘイズが4%であった。
【0087】
実施例2
ブロック共重合体としてMMA-BA系ブロック共重合体である(b-1)を67重量部、フリーポリマーとコアシェル型グラフト共重合体とからなる共重合体として(a−1)を33重量部、安定剤としてイルガノックス1010(チバガイギー株式会社製)0.2重量部配合し、設定温度200℃で5分間ロール混練した。得られた混練物を、設定温度200℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用のシートを得た。得られたシートは柔軟で透明なシートであった。得られたシートの引っ張り特性を以下の方法によって測定したところ、弾性率6.4MPa、破断強度13MPa、破断伸び167%であった。引張り試験後の破断面に白化は見られなかった。
【0088】
さらに、上記2mm厚さのシートを200℃で熱プレス成形し、厚さ184μmのフィルムにして透明性の測定を行ったところ、TTが93%、ヘイズが9%であった。
【0089】
比較例1
実施例1においてブロック共重合体を添加しないこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートは透明なシートであった。得られたシートの引っ張り特性を評価したところ弾性率688MPa、破断強度29MPa、破断伸び33%であった。引張り試験後の破断面に白化が見られた。
【0090】
さらに、上記2mm厚さのシートを200℃で熱プレス成形し、厚さ242μmのフィルムにして透明性の測定を行ったところ、TTが93%、ヘイズが4%であった。
比較例2
実施例1においてグラフト共重合体を添加しないこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートはタック感のあるゴム状シートであった。引っ張り特性を評価したところ、弾性率0.8MPa、破断強度12MPa、破断伸び423%であった。引張り試験後の破断面に白化は見られなかった。
さらに、上記2mm厚さのシートを200℃で熱プレス成形しフィルム化したところ、ゴム状であることから取り扱いが困難であった。
【0091】
【発明の効果】
実施例1、2および比較例1、2で表わされるように、本発明の熱可塑性組成物を成形してなるフィルムまたはシートは柔軟性、折り曲げ時や引張り時の耐白化性等に優れ、更に透明性を具備させることも可能である。
Claims (4)
- (a)アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体5〜95重量%と、(b)メタクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体95〜5重量%からなる熱可塑性樹脂組成物であって、
共重合体(a)が、内層部(コア部)と外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト重合体(a−2)を含み、
コアシェル粒子型グラフト重合体のコア部の重量平均粒子径が500〜1900Åの範囲である組成物を成形してなるフィルムまたはシート。 - 共重合体(a)がフリーポリマー(a−1)と、前記コアシェル粒子型グラフト重合体(a−2)とを含むことを特徴とする請求項1記載のフィルムまたはシート。
- ブロック共重合体(b)のメタクリル系重合体ブロックがメタクリル酸メチルからなり、アクリル系重合体ブロックがアクリル酸ブチルからなることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルムまたはシート。
- ブロック共重合体(b)が原子移動ラジカル重合により製造されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムまたはシート。
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